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2008/08/22
大型収納家具を作るに際して単純な棚を作るのであれば別ですが、収納物を隠したければ扉が必要ですし、収納物によっては引出しを付けたいこともあります。 そのような際に使う金物としてスライド蝶番とスライドレールは絶対にお奨めの金物ですが、それらの使い方については別項で詳しく解説していますので、ここでは何故それらがお奨めかについて触れておきます。
尚スライド蝶番の詳しい使い方については
こちら
で、スライドレールの詳しい使い方については
こちら
で紹介していますので、そちらも併せてお読みください。
スライド蝶番について
蝶番というと誰でも知っているのは2枚の羽を回転軸に取り付けたスタイルのもので、入手性が良く
価格も安く手軽に使えます。 但しこのタイプの蝶番には2つの泣き所があります。 その第一が被
せタイプの扉を作りにくいことです。
スライド蝶番の例
左の図をクリックしていた
だくと蝶番を使った2種類
の例がご覧いただけます。
左側がインセット扉
(内側
に収めるの意。)
タイプで、
一番多く利用されているス
タイルです。 部屋の開き
戸も殆どこのタイプです。
右側は被せタイプと言って扉を固定する部分に覆い被さる
事からこの名前が付いていますが、このタイプでは扉を開
いた時に約扉の厚み分だけ外側に扉が突出します。
このために家具を壁にぴったりと寄せたりまたは別な家具をぴったりと接近して設置することが出来ません。 これを解決する羽を折り曲げたような蝶番も見かけますが、後述する問題の観点からこれらの蝶番は被せタイプの扉にしたい場合には不向きです。
一方スライド蝶番を使った場合にどのようになるかを表したのが左の図です。 スライド蝶番を使っ
た場合実は扉は妙な動き方をします。 簡単に言ってしまうと扉を開くに従い蝶番の回転軸は曲線
を描きながら移動します。 この回転軸が移動する
(スライドする。)
というのが名前の由来なのです
が、この為に被せタイプの扉で使った場合、完全に開ききるまで扉は家具の横の面から外側に突
出することがありません。
この為にスライド蝶番を使った家具では壁にぴったりと寄せても、
或いはその隣に別な家具をぴったりと付けて設置しても扉が当たる
ことがありません。
またスライド蝶番には半被せタイプと言って蝶番を固定する部分に
扉が50%前後被せるように工夫したものがあります。
これを使うと右の図の中央部分のように2枚の扉を半被せとして格
好良く収めることが可能になります。
スライド蝶番を使うもうひとつの大きなメリットがあります。 それは扉を固定した後に扉の位置調整
が簡単に出来ることにあります。 具体的には
横方向
、
縦方向
、
傾き
(回転)
、
前後
の4種類がドラ
イバー1本で可能です。 普通の蝶番で扉の取り付け位置を調整するとしたら兎にも角にも蝶番の
固定位置で決まってしまい後から調整するとなると蝶番を固定する部分に薄い紙を挟むなどしてや
らねばなりませんが、特に縦方向の調整はほぼお手上げになってしまうでしょう。
スライド蝶番の場合には各方向に対して数mm調整できるのが普通ですから、扉の製作で余程変な
作り方をしない限り収まりをドンピシャにするのは大変容易です。
スライド蝶番を使う際のデメリットがないかというと正直言っていくつかあります。 ひとつは蝶番取り付けは収納部の中になりますが、その部分の出っ張りで、全被せ → 半被せ → インセット の順でその出っ張る量は増えます。 もうひとつは35φの座繰り穴をあけないとならないことで、その為にフォスナービットが必要になります。 価格は\2,000弱ですからスライド蝶番の使用量が少ないとかなり割高になりますが、大型の家具になると扉の数も増えてきますのでその負担は薄まってしまうでしょう。
これらのデメリットがあるとは言え、作りやすさや扉の収めやすさの点で通常の蝶番とは月とスッポンの違いがありますので、容易に家具を作りたいのであれば、無条件でスライド蝶番をお奨めします。
スライドレールについて
引出しの自作と言うと昔はレールとして
細く切った棒を使いその上を滑らせる方
法が一般的でしたが、現在ではスライド
レールが安くなり、引き出す力が僅かで
済み使い勝手も良いため、スライドレー
ルの使用を是非ともお奨めします。
そのスライドレールにもピンからキリまで
ありますが、手始めには2段式ローラー
タイプの使用をお奨めします。
その理由としてはシビアーな工作精度
を要求しないこと、価格が最も安いこと
にあります。
mini-Shop
で販売している2段式スライ
ドレールは正にこのタイプでレール長は300mmから600mmに渡り50mm間隔であります。 私自身この2段式を寝室の収納家具(洋服・整理ダンス)に全面的に使用しています。
(上の写真はmini-Shopで販売している2段式スライドレールです。)
ここで
mini-Shop
で販売している2段式のローラータイプスライドレールを例にして動作などを簡単
に説明いたします。
左の図をクリックしてご覧下さい。 2段式ローラータイプスライドレールの動作原理を判り易く示した
ものです。 レールには引出し側レールと家具本体側レールの2つがあります。 引出し側レールに
はその一番奥にローラーが固定されており、このローラーは家具本体の上下のレールで挟まれて
います。 また家具本体側のレールの前側にもローラーがあり、その上に引出し側レールが乗っ
ているような構造になっています。
引出しを閉じた状態では家具本体側のローラーは引き出しの荷重のほぼ半分を引出し側レールから受けます。 同時に引出し側
のローラーには引出しの荷重の半分が掛かりますが、家具本体のレールがそれを受ける形になっています。
(最も上の図)
さて引出しを手前に引き出すと引き出しの重心は家具本体側のローラーに近づきますので、家具本体側への引出しからの荷重は
増加してきます。 そしてその分引出し側のローラーが家具本体側レールに対する荷重は減少します。
(真中の図)
引出しを最も引いた状態では引出しの重心は家具本体側ローラーよりも左側に移動します。 この場合には引出し側ローラーは
家具本体側の上のレールを押し上げるようになり、引出しの荷重はほぼ等分されて両ローラーに掛かります。 この時のローラー
やレールに対する荷重はテコの原理により最も高くなります。
(最も下の図)
非常に簡単な構造でローラーの転がり摩擦は大変小さいですから小さな子供でも引出しの開け閉めが出来てしまいます。 尚一番下の図の如く最も引出した状態でも引出せる長さはレールの全長よりも短い点に注意してください。
次に左の図をご覧下さい。 これは家具本体側の内寸と引出しの外寸幅の条件を表
しており、22mmから24mmの間になれば問題ありません。
(後で説明する外観的な
条件を許せば、更に間隔が大きくても問題ありません。)
こうなる理由は右の写真をクリックして下さい。
左側の写真に見えるローラーは家具本体に固定され
たレールに付いておりその上に引出し側レールが載
っているのですが、ローラーを挟むように乗っている
ので、引出しと家具本体の間隔は11mmの固定値に
なります。
一方右側のローラーの上にも引出し側レールが載っていますが、レール先端が曲が
っていないのでローラーを挟みません。 従って家具本体側が遠くなっても
(隙間が
拡大する。)
問題なく使用可能です。 但し無制限に隙間が大きくなることは出来ま
せんし、この上に貼り付ける前板が左右対称の位置からずれて何となくみっともなくなるので私は間隔の許容値を22-24mmとしていますが、26mm程度まで拡大しても実用上の支障はありません。
こんな理由で家具本体の内寸幅と引出しの外寸幅の差の許容値がかなりありますので、製作が容易になります。
最後に3段式のレールやスチールボールを使ったレールに付いて簡単に解説しておきます。 3段式でスチールボールを使ったレールは構造的にスライド長がスライドレールを折り畳んだ全長よりも長く出来ます。 従って引出しの箱全てが手前に出てきて出し入れがし易い構造のものが作れます。 またがたが殆どなく荷重が大きくなっても沢山のスチールボールで分散して受けるので、動きはスムーズで耐荷重も大きく取れるものが多いです。
但しスチールボールを使った場合、2段式ローラータイプのような横方向に逃げを設定することが出来ません。 従って家具本体内寸幅と引出し外寸幅の差の許容値は非常に少ないです。
(25.4mm±0.5mm位が多い。)
この為に製作難易度が高くなりますし構造が複雑になる分価格も高くなってしまいます。 こんなことより2段式のローラータイプスライドレールを使用してみることをお奨めする次第です。
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