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引出し付き収納BOX
2004/03/12

 「引出し付き収納BOX」

 我が家はツインベッドを利用していてその間の枕元に既製品の小型の引出し付き
 ボックスを置いておりますが、このボックスの存在のため困ったことがあります。

 それはベッド自身に引き出しが付いていてベッド下を収納スペースとして使えるよ
 うになっていますが、このボックスがあるためそれぞれのベッドの外側に引出しが
 出るように置かれています。 しかし片側だけで46cmのスペースがないと引出し
 が外せないのですが、合計92cmのスペースが残らず、ベッドを動かさない限り
 引出しが外せない!という問題があります。

 2つのベッドの引出しをそれぞれ中側に持ってくれば解決するのですが、そうする
 ためにはベッドに挟まれた収納ボックスを抜かなければなりません。 それではそ
 こにおいてある電気スタンドや目覚ましの置く場所がなくなってしまい不便です。

 そこで2つのベッド端に載せるタイプの収納ボックスを作り以上の問題を解決する
 ことにしました。 余ったボックスは他の部屋で使うことにします。

さて設計について具体的なお話をする前に何故この題材を「日曜大工入門テーマ」としたかについて若干触れておきます。

引出しは収納手段として極めて有効な構造だと私は思います。 その使い勝手は棚以上だと思います。 特に自作する場合には使う人の好みで幅、奥行き、高さの自由度が大変高いですから、市販の家具では考えられないような引出しが作れます。 その一例として、幅450、高さ300、奥行き550mmなんていう大きな引出しを洗濯籠などを保管するために作った例もあります。

 ここではスライドレールを使用した引出しを簡単に設計する方法を
 ご紹介しその手法を使った例としてベッド横の収納ボックス製作解
 説という形で進めます。

 左の図が標準化した引出しの外観イメージを表しています。
 高さ引出しの段数の自由度はかなり高いです。 幅をどこま
 で広げられるかは、スライドレールの耐荷重で決まりますが、
 400mmスライドレールで最大25kgまで耐えられるのでそれを一応
 の目安としましょう。

 奥行きはスライドレールの長さで決まりますが、300mmから
 600mm50mm刻みでありますから、その中から選ぶのが
 賢明でしょう。
 高さは引き出しの段数とそれぞれの引出しの高さで決まりお好み
 次第です。 今回作るような小型の物ばかりでなく、例えば幅が
 900mm奥行き450mm、引出しが1段辺り150mm10段の整理
 ダンスのような物にも対応できます。

 唯一の条件として知っておきたいのは、引き出し前板が側板に完
 全に被ることと前板の上下は被り無しの構造であることです。 
 図のように天板の部分と下の幕板部分は任意です。

 標準化された引き出し部分の設計法は左の
 図のとおりで、四則計算だけで任意のサイズ
 が設計可能です。

 唯一の条件はアトムリビンテックの2段式スラ
 イドレール新17S底受けタイプを使うというこ
 とで、アトムリビンテックでも他のシリーズを使
 うと各部の値が変わってしまいますし、メーカ
 ーが変われば無論適用できません。

 このスライドレールは私が作った、
 寝室のクローゼット個室1の収納家具
 個室2の収納家具で合計36個、更にパソコン
 テーブル3個所にも使用している十分な実績
 があり、信頼性の高いものです。

 実際に設計する時は全体の大きさから詰めて
 いっても、或いは引出し1個の大きさを決めた
 上で段数を決め全体がどうなるかを決めても
 構いません。 実際には両方の手法でうまい
 サイズを決定することになると思います。

 図中15mm6mm22-24mmと記載されて
 いる寸法は変更できません。
 これらは引き出しの取り外しや、上下の引き
 出し同士がぶつからないようにそしてスムー
 ズに作動する上で重要な寸法です。

 特に22-24mmの値はこれより小さくなると
 引き出しの出し入れが不能になる可能性が
 ありますので、要注意です。

 右側に並んだ寸法はそれぞれの引出しの位
 置を表します。 赤線の枠は前板を表現して
 おり、高さは左側のFHということになります。

 またピンクの線で示している寸法は、側板に
 固定するレールのネジ位置の高さです。

 の値は1-1.5mmとなっていますが、初めて作る場合には1.5mmを使ったほうが良いでしょう。  1mmとなると隙間は極僅かで大変見映えも良くなりますが、加工・組立て誤差が厳しくなります。

参考例として引き出しの箱の高さ(h)が12cm5段(a)、引出しの幅(W)が32cm、側板を18mm厚の板で作るとするとすると、

H = (21 + h) x a = (21 + 120) x 5 = 705mm

総幅は、W + (22〜24) + 側板の厚み x 2 = 320 + (22〜24) + 18 x 2 = 378〜380mm

となりますが、天板と幕板の長さを足すと机の横に並べる袖机のような大きさになります。


ベッド横の収納ボックスの詳細設計

 上記で述べた設計手法をそのまま当てはめ、更に2つのベッドにまたいだりヘッドボードに挟み込む構造
 を加味した物が左の外観図詳細寸法図部材寸法図となっています。

 上下の高さをあまり取れないので、2段の引出しは深さがそれぞれ60mmですが、上に15mmの空間が
 ありますから、高さ75mm迄の物は収められることになり十分だと思います。 というよりこれまで使って
 いた深さ85mm3段のものより使い勝手は良くなるのではと思います。

 全体の重量がそれほど重くありませんから、2つの引出しを両方とも引き出すと重心が手前に移動して
 お辞儀するように倒れる心配がありますが、後ろ側をヘッドボードに挟み更にこの上には重量3.5kg
 電気スタンドが載りますので倒れる心配はなくなります。

 切り出す部材は18点で天板だけはヘッドボードに挟む構造とするため一部の角を落としますが、残りは
 長方形です。 板取りを考えずに設計していますから、無駄が出ないような材料をこれから物色します。



2004/03/19

製作詳細

具体的な引き出し製作の手順と勘所を前掲のベッド横の収納ボックスの設計図に基づき説明してまいります。 前にも申し上げたとおりこのテーマの主目的は引出しをうまく作る方法ですので、それ以外の部分の説明はかなり省きます。
以下の一連の写真とそれらへのコメントをご覧ください。

切断した全部材。 切断精度は0.5mm以下に仕上がっていますが、面倒であればホームセンターで切断してもらうと良いでしょう。

最初に引き出し枠の組立てで、側板の端から6mmの位置に36mm隠し釘を打ち込みます。

曲尺を使い端から6mmを測りながら打ちこんでいます。 隠し釘は曲げて打ち込んでも普通の釘のように横から叩いて修正は出来ませんから慎重に!!(横から叩くと頭が折れてしまいます。)

反対側に1.5mm前後釘の先が飛び出るようにするのが、正確に組み上げる秘訣です。

前後の板の木口に木工ボンドを塗り側板の端を当ててずれが出ないよう指で触って確認し、上から押さえつけると飛び出た釘が刺さりずれにくくなります。 その後釘を包んでいるプラスチックがやや潰れる位まで打ち込みます。

組み上がった枠は平らな所においてゆがみがないかまた曲尺を当てて直角が出ていることを確認します。 もしもゆがみが大きいとしたら、切断誤差か組み上げ誤差が大きいことを意味します。

その上に底板を被せ適当な重しを載せて2時間放置します。

底板を木工ボンドで貼り付けますが、22mm隠し釘で密着度を上げます。 隠し釘を打つ間隔は10cm位です。 これで2時間たったら釘の頭を玄翁で横から叩いて折り、引出しの箱は完成です。

ここで説明している引出しの箱の構造と組み立て方は私の多数の製作経験で最もアマチュア的で作りやすくしかも強度が高く取れる手法だと考えています。 

量産された引出しの箱は決まって枠に切られた溝に底板を嵌め込む方法をとっていますが、深さが浅くなり機械加工でないと精度が出ず強度もとりにくいです。 底板べた付けは一見格好悪そうですが、レールを取り付け前板を貼ってしまうと背面を見ない限り判らなくなります。

また隠し釘を使って接合していますが、接着時の密着度を上げるのに大変有効でアマチュアは隠し釘を使うことは殆どないと思いますがお勧めしたい手法です。 他の密着度を上げる方法は大型のクランプやハタ金ということになりますが、引出しを沢山作る時には滅多に使わない大型の高価なそれらの道具が沢山要るので実際的ではありません。 

尚隠し釘は接着剤硬化後頭を落としますので、呼称サイズより5mm短くなります。


2枚の側板にレールを固定しました。 上が左の側板で下が右の側板、また車輪が見える側が前方になります。 ネジ穴は7箇所もありますが、前後中央の3箇所で十分。
使用レールはアトムリビンテック 新17S-D-D-400です。

レール固定には3φ16mmのタッピングネジがベスト。 ご覧のように頭が飛び出ないよう正確に締め込みます。 飛び出ると引き出し側レールとの接触のトラブルの原因になります。

この作品の場合には底板に側板を載せる形で固定しますが、35mmスレンダースレッドネジ4本で底側から固定しました。 (接着剤無しです。)

そして右側の側板を同様に固定します。 この時左右の側板の距離が引き出しの箱の幅 + 22〜24mmでないといけないことを思い出してください。 修正可能なように接着剤無しの接合としていますが、強度的には全く問題ありません。

木工ボンドが硬化した引出しの箱は隠し釘を落とした後レールの取り付く角をカンナで1mmほど削り、引き出し側レールを3本のネジで底から締め付けます。 写真の左側が奥のほうになります。

このときの注意は矢印部分に隙間が出来ないようにすることで、角をカンナで落とすのもそのためです。    ここに隙間が出来ると設計値の22〜24mmの値が小さくなったのと同様の効果があり、レールこすれの原因となります。

引出しの箱を収めて前後させて見ましょう。 軽くスムーズに動くようでしたらOKです。 側板が垂直でなく上すぼまりの場合は上の引出しだけ左右が擦れて渋くなるかもしれませんが、その場合には上板固定の時に調節します。

一番手前に引き出すとここまで出てきますので、奥のものにも手が届きやすいです。

引き出しレール部分のアップ。 左側は引き出し側のレールが本体側レールの車輪に被るようになっています。

右側か引き出し側レールは本体側レールの車輪に載っているだけです。 

写真の実例では本体と引出しの箱の間の左右の隙間合計がジャスト22mmとなっています。 隙間が22mmより大きくなった時には右側の引き出し側レールの載っている位置が左にずれるだけで問題はありませんが、22mmより小さくなると引き出しレールが車輪に接触してスムーズに動かなくなることを示しています。 設計方法の項目でもこの点について言及していますが、絶対条件ですので注意してください。


上板を固定して引き出し前板の固定。 まず厚紙を切ったスペーサーを挟み、前板の隙間が均等になるよう調整します。

引き出し前部分に2ヶ所の貫通穴をあけて下の引出しだけを入れます。 下にはボール紙スペーサーをおきます。

前板を載せて横方向の位置を調整しOKとなったら写真のように引出しの箱と前板を共掴みして抜き、箱の内側から4φ貫通穴に3.3φスレンダースレッドネジを挿し仮固定します。
(ネジの頭がもぐらないよう注意!)

前板を固定した引出しを下段に入れ、上の引出しの箱を挿入後前板の上にボール紙スペーサーを載せてから上の前板を当てます。 位置が決まったら左手で前板を押さえ、右手は後ろから箱を押して前回と同様に前板と箱をつかみ引き抜いて前板を中からネジ止めします。

前板をうまく調節しながら固定するのは難関のひとつです。 私が試行錯誤の中で最も簡単で確実な方法がこのやり方で、トリックはの穴と3.3φ25mmのネジの組合せにあります。

上記の方法で前板をネジ止めし前板の付き具合を最終確認したら、引出しを外して前板のネジを抜き前板に木工ボンドを塗って再びネジ止めします。 無論ネジ穴の位置がずれないようにです。  そして引出しを収めて前板の位置関係をチェックします。

多分僅かにずれていると思いますが、3.3φのネジに対しの穴のために前板を軽く叩けば僅かな調整が可能です。 
木工ボンドが固まる前におちついて全前板の最終位置微調整をすることが出来ます。 従ってここで使うネジは仮止めの意味合いが強く、ネジの頭がもぐらないように!との注意書きは適度な横方向のガタを残したいためです。  

このネジの頭が嫌であれば、木工ボンドが固まってから抜いてしまいパテで埋めてやれば良いでしょう。

尚最上段の引出しの箱と前板をつかみ出す方法は小さな物の場合ここで述べた方法でよいのですが、大きい場合には2人掛りでやるか厚めの強力な両面接着テープを引き出しの箱に貼り付け、前板の位置を調整してそのテープに貼り付けて引き出すという手を使えます。

引出し作りの最も重要な工程が終了したベッド横の引き出し付き収納ボックス。 残るはお化粧加工、ツマミの取り付けそして塗装ということになります。



 2004/04/09

 仕上と塗装
 先週お知らせしたラッキーパズルと共に塗装しようということで、仕上げ加工に入りました。
 四角四角の極めて単純な形だったのと集成材を折角使ったのでトリマーで成形しました。

 コロ付きボーズ面ビットを使って引き出し前板の角は丸く成形しましたが、天板の周りは少し変化
 をつけるため下方向に1mm深く切り込ませて段差を作り、片銀杏面としています。
 両方に段差をつけたものが本来の銀杏面ですが、専用の銀杏ビットが要るのに対しボーズ面ビッ
 トはこうした応用が効くので便利です。

 成形終了後#240のペーパーで全体を研磨し塗装の下地作りをしました。
 塗料は木目が美しく映えるため私が最も好んでいる油性ニスで、今回は和新ペイントのつや消しクリヤーを使っています。 このつや消しクリヤーは艶がかなり押さえられてしっとりとした格調の高い感じに仕上がりますが、つやありタイプに比較して刷毛斑や塗り斑が目立ちにくいという特徴があり、塗装がうまく出来ない!という方に是非とも試していただきたいものです。 ウレタンタイプですし塗膜はかなり丈夫で屋外工作物にも使えます。

着色は水性の着色剤であるポアステインでこれまた私の定番材料です。 色はチェスナットを使いました。 ベッドの木部の色にかなり近しい色になるので混色はせずにチェスナットの単色です。 これを原液のまま1回塗りとしていますが、原液のまま塗ると着色斑を作りやすいので慣れない方は水で薄めて濃度を確認しながら塗り重ねると良いでしょう。(塗り重ねは1時間後にやります。)

ステインの乾燥は完全にしておきたいので私は5時間は寝かせることにしていますが、その後ニス塗り前に#240のペーパーで軽く表面を研磨します。 これは水を吸い込んだ木繊維が起き上がることによるざらつきが出るためで、このざらつきを取るのが目的ですから掛け過ぎて木の地肌が出てこないよう注意します。

ニスは蓋を開ける前に十分に振って攪拌する必要があります。 つやありのニスと違い含まれているつや消し剤が沈殿しやすいからで、これを怠るとつや斑を生じることになります。 それと攪拌した後にキャップにあけたニスにペイント薄め液を5-10%加えて希釈します。 こうすることにより伸びが大変良くなり塗り斑や刷毛斑は厚塗りしない限り殆ど生じないでしょう。(技術の問題ではありません。 これらを守れば必ずうまく行きます。)

ニス塗りは薄く均等になるよう心がけることが総てで、間違ってもニスがよどんで溜まることがないようにすればうまく行きます。
乾燥には最低でも7-8時間置くことをお奨めします。 出来れば一晩寝かした方が良いです。
そして2回目の塗装前に#240のペーパーで表面の僅かなざらつきを落としてやります。 2回目の塗装が終わり5時間以上寝かせれば使える状態になります。 くどいようですが塗装に自身のない方でも以上の手順をしっかり守れば吃驚するくらいの仕上がりに間違いなくなります。

各工程の写真を以下に掲げておきますので、それらの変化を良くご確認ください。

トリマーで上板の周囲と引き出し前板の周囲を削り落としました。 上板は片銀杏面で引き出し前板はボース面です。

上板角のクローズアップ。片銀杏面による段差がお判りいただけると思います。 同じ部分の着色後、塗装後の変化が後ほど見られます。

こちたは引き出し前板の角ですが、ボーズ面ですので単純な曲面です。

使用した塗装材料。 チェスナット色ポアステイン、つや消し油性ニス、薄め液、40mm22mmの刷毛で何れもmini-Shopで扱っています。 120mlの小さな容量のニスですが、収納ボックスとラッキーパズルの各2回塗りが出来ました。

ステイン着色が終了した全景です。 ステインは原液のまま1回塗りとしていますが、ここまで濃く着色できます。

着色が終了した上板の角。 白っぽく見えるのは光の具合です。

1回目のニス塗りが乾燥しかかった所。 これでもしっとりした感じがもう伝わってきます。 奥に見えるのは同時に塗装したラッキーパズルで手前は引き出し前板部分。

上板角の1回目塗装後のアップ。 ほんのりとした艶が出てきています。

同じく引き出し前板のアップ。 木繊維が直角に切断される木口はステインを多量に吸い込むため濃度が高くなり黒っぽくなります。

2回塗り終了後の天板角。 より深みが増しにぶい艶がしっとりした感じが増してきました。 随分変わるものです。

引き出し前板角のアップはこんな感じで、みているうちにブラジリアンローズウッドがこんな色調だなー!と思い出しました。 

塗装していない引き出し内部とのコントラストの高さがまぶしいくらいです。


正面から見たところ。 格調高くとてもメルクシパイン集成材とは思えない素敵な仕上がりとなりました。

いよいよ設置します。 こちらはbeforeで引出しが外側に出ます。

こちらはafterで引き出し以外に大きな変化はないように見えます。

これがbeforeで収納BOXが暗いですが床にじか置きです。

暗くて判りにくいですがベッドの端に載せたafter。 やや幅が広くなっています。


 これなら判ります。 製作した収納ボックスの引出しとベッド下の引き出しを全部引き出した所で、互いに干渉しません。



一応これで終了なのですが引き出しにツマミをまだ取り付けていません。 手許にあったものを流用し様かと考えたのですが、イメージが合わないのでやめました。 そのうちに適した物を見つけようと思います。 引出しの製作は以外に簡単なものです。 それと完成度は塗装で決まるといって過言ではありませんが、塗り斑が目立ちにくいつや消しニスはその意味で好適な塗料です。 つや消しと入ってもニブーイ艶が残りこれがかえって格調の高い感じを出してくれます。
----- 完 -----

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