2008/07/18
私は家具を作る際の材料選択を次の観点から行っています。
1.家具の大きさ
作る家具の大きさは選択する材料に大きく影響します。 アマチュアが作る場合所定の部材サイズとする為につぎはぎしなくて
はならないという自体を避けねばならないからです。 一般論として床から天井までの作り付け家具を考えるとしたら、一部の部
材の長さは2,400mm必要になりますし、幅についても900mm以上必要なんてこともあるでしょう。
入手性がまあまあでこれらを満足する部材は 4 x 8(シハチ)サイズの合板とランバーコアになります。 4 x 8サイズとは4尺
x 8尺のことで1尺は303mmですから、メートル法では1,212mm x 2,424mmの大きな板です。
もしも作るものが小さい場合には3 x 6サイズで間に合うかもしれませんが、板取りのことを考えると4 x 8サイズにしたほうが良
い場合もあります。(板取りに関しては次のテーマとして解説する予定。)
2.仕上げをどうするか
作った作品に対し無塗装というのは美しさが持続しないだけでなく表面を保護する観点からも望ましくないのできちんと塗装す
べきです。 その塗装には大きく分けて木目が見えなくなってしまうペイントによる塗りつぶしと、木目を美しく見せるニス塗りの
2つが考えられますが、塗りつぶしの場合には材料の木目が汚らしくても或いは木目が無いようなもの(例えばMDF)でも仕上
がり感には影響しませんが、ニス塗りの場合には材料の木目の美しさや色味のばらつきが結構見栄えに影響するので、材料
の選択には注意が必要です。
結論から言えばペイントで塗りつぶしなら何でもOK(合板、ランバーコア、MDF、OSB、集成材)ですが、ニス塗りをするとなる
とシナ合板、シナランバーコア、集成材、ムク材が候補に上がってきます。 ここで前者のペイント塗り潰しにはひとつ考えて
おくべき点があります。 それは木目は見えなくなっても木目による凸凹が残る場合で、これを消すにはパテで埋めればよいの
ですが、大きな面積になるとこの手間と作業時間も馬鹿になりません。
その観点で選択するとしたら、(シナ合板、シナランバーコア、MDF、集成材)とラワン合板やOSB等表面に深い凸凹のある
ものは外れてきます。
3.材料の強度
例えば棚を考えてみましょう。 厚み、幅、長さの3つのサイズを同じに定めても、使用する材料により実際に使用した場合の撓
みの出具合、曲げ強度などはかなり違ってきてしまいます。 一般には曲げ強度が高いものは撓みにくい傾向にあるのです
が、MDFは合板よりも撓みにくいにも拘わらず曲げ強度(破断に対する耐性)は低そうですし、集成材も曲げ強度はあまり良くは
ありません。 特に注意すべきは外観上の差が少ない合板とランバーコアで、結論から言えばランバーコアは曲げ強度、圧縮
強度共に合板より低いです。 また芯材が柔らかいせいでネジの効き具合にも問題があります。
強度という観点からは合板を選択するのが最も賢明!というのが私の結論ですが、軽荷重で使われる場合には集成材も選択
の範囲に入ってきます。 堅めのムク材も勿論良いのですが、価格が割高になるので気軽に使えないのが難点です。
4.径時変化による問題回避
製作完了時にはうまくまとまったていたはずなのに時間が経ったら(数ヶ月から数年)妙な隙間が出来たり反りがひどくなって
きた! なんていうことがあります。 これらら木材の収縮に起因する問題で、乾燥が不十分だった材料を使うと起き易く特に
ムク材には注意を要します。 しかし乾燥が十分な材料を使ってもひどい反りなどが発生することもあります。
例えば14mmの十分に乾燥したムク板と4mmの合板を貼り合わせたら、乾燥している秋後半から冬場と湿度の高い春後半から
夏では長さが数十センチの部分で6-8mmもの反りが発生した!なんていう失敗の経験が私にはあります。 木材は乾燥してい
る時には含む水分を吐き出して縮み、湿度の高い時には水分を含んで伸びる!を繰り返すために起きる現象ですから永遠に続
きます。 こんな点から異なる材料の組み合わせには要注意です。
以上述べたことをまとめたのが次の表です。
材料名 |
サイズ |
塗装 |
強度 |
収縮 |
価格 |
その他特記事項 |
シナ合板 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
△ |
最大1,212x2,424mm。 価格だけ不利だが? |
ラワン合板 |
◎ |
○-△ |
◎ |
◎ |
○ |
以前に比べると色味ばらつき美しさが良くない。 |
針葉樹合板 |
○ |
△-X |
◎ |
○ |
◎ |
独特の風合いをデザインとして生かせれば? |
シナランバーコア |
○ |
◎ |
△ |
○ |
○ |
見せ掛けに拘った、・・・らしき?材料 |
集成材 |
○ |
◎ |
○ |
△ |
○ |
収縮、強度の問題を抑えれば素敵な外観に! |
OSB |
○ |
X |
◎ |
◎ |
◎ |
塗装しても駄目!風合いを生かすしかない。 |
MDF |
○ |
◎-△ |
○ |
◎ |
◎ |
シート貼りや突き板処理するとメーカー品並に。 |
堅めのムク板 |
X |
◎ |
◎ |
△ |
X |
何としても価格が!! 大きな板が得にくい |
結論として極力手間を省きながら外観も素敵に仕上げられる大型家具自作向きの木材としては、シナ合板がベストだと私は考えます。 そして厚みは後日触れるテーマにも関連するのですが、18mm厚がもっとも適切でしょう。 中型・小型家具の場合薄い板(15mm、12mm)で十分な場合がありますが、材質的にはやはりシナ合板です。 価格が高めであるため尻込みする方が居られますが、物性の良さを考えると外観そっくりさんのシナランバーコアとの価格差より遥かに高質だと思います。
その次の優良候補としては集成材で、強度、反りの問題や接着部分の剥がれなどの問題はあるものの美しさと厚いものが得やすいので、カウンター材として有効です。
その他の材料は価格が安くてもうまく綺麗に仕上げたりするのにとんでもない手間が掛かり、初めて取り組む場合は失敗に繋がりやすい可能性があります。 例えば最近完成した廉価なMDFを使い綺麗に見せようとしたスライドトップテーブルは、何と7回塗りという手間の掛かる作業で何とか美しく見えるようになりましたが、リスクが大きく万人向けとは言えないと思います。
最後に材料の入手方法について触れておきましょう。 4 x 8サイズ 18mm厚シナ合板はホームセンターでは在庫している所は殆ど無いでしょう。 私は近くの材木店に取寄せてもらってきましたが、現在ではむしろインターネット通販で購入するのが手っ取り早いと思います。 そして所定のサイズに切断も済ませた上で購入するのがベストです。(価格的には送料負担があっても、ホームセンターで取寄せ購入するよりも不利になることは少ないと思われます。)
集成材、針葉樹合板、OSB、MDFについては現物を見て反りや木目などを確認したい所ですので、ホームセンターか近くの材木店ということになるでしょう。
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