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家具自作を薦める理由
2006/07/21 以前D.I.Y.雑談に掲載されていたものを再編集。
VIC's D.I.Y.の中で紹介している作品は様々あるものの、私が皆さんに最も実現していただきたいと考えているテーマは大型作り付け収納家具の自作である。 無論いきなりこれにチャレンジというのが無謀と考えるのであれば、予行演習としてもっと小さな物から入っても構わないが、究極的には大型収納家具にチャレンジして頂きたいと願っている。
これには大変明確な理由があり、
「自己紹介」
でも簡単に触れているがここではもっと突っ込んだそれらの背景をお伝えしようと思う。 自作したほうが良いメリットを羅列してみると、
1.日曜大工のテーマの中で最も投資効率が良いテーマ。
2.自立型家具より材料費が割安、作り方が容易、空間利用効率も良い。
3、使用者の好みに合わせた使いやすい収納構造を実現できる。
4.実用性が高い割にはたいした工具・道具を必要としない。
5.大きいからと言って難易度が高くなるわけではない。
といった所にある。
これらについて2回に渡り詳しく解説し、更に多くの方の実現に役に立てればと考える次第だ。
1.日曜大工のテーマの中で最も投資効率が良いテーマ。
投資効率が良いというのは損得勘定そのものだ。
どの位得した気分になれるかというと幅があるものの、自作するの
に比較して特注するとしたら
5
倍から
10
倍の費用が発生すると思っ
て間違いない。 私がこれまでに作った大型収納家具は全部で
28
点程あり、その内の
18
点をサイトで紹介しているが、それら
18
点の収納家具中
10
点を大雑把な構想図面を基に特注するとして見
積もり依頼したら
1000万円
を超え肝を潰して自作する事を決めた。
そしてその後製作したサイトに掲載している
10
点の家具製作に支
出した材料費は累計で約
115万円
で、材料費という観点からする
と
10倍
近い差がある。
(
885万円強
安く手に入ったわけだ!)
無論材料費だけではなく製作に使用する工具・道具の出費も考え
ねばならないが、私の使っている工具は新品で揃えても恐らく
15
万円
程度の出費であり、大半の工具・道具が一生物である事を考えると造れば作るほどその費用負担は小さくなるし、仮に製作後捨てたとしても充分お釣りが来る。
何故このように安くできるかというと、人件費を無視して計算
している点にある。 大量生産する既成家具と違い作り付け
収納家具は手作業、手作り部分が大変多くなり人手間が掛
かる。
例えば私の実例で幅
3.6m
(2間)
高さが
2.4m
(床から天井
まで)
最大奥行き
60cm
の家具で
16万円
の材料費で製作
したものは、特注の見積もりでは
70万円
と言われた。
私の想像による内訳は材料費
10万円
、製作期間3週間
(作
業時間
120
時間)
、人件費、設計費、諸経費、利益を含む
時間あたりの請求費用を
\5,000.-
と見て
60万円
となる。
プロの家具屋の方が材料を安く仕入れられるのは当たり前
だから、自前の
16万円
と
10万円
の差は仕方ないとしても
それ以外の
60万円
が問題なのだ。
その部分を
0
として計算できるのが自作なので、製作完了
までに何ヶ月間掛かろうとも
(その間の不便さは別!)
、人
件費が発生しないから、誰が取り組んでもこのメリットは享
受できる。 そして購入材料代が割高であろうとデメリット
にはならない。
2.自立型家具より材料費が割安、作り方が容易、空間利用効率も良い。
これは実際に作ってみると実感として判るが、作り付けとすることにより材料費を節減できるだけでなく製作も容易になる。
先ず材料費の節減だが、作り付けや埋め込みという構造を取ることにより、家具の背面は壁そのものとしてしまうことが出来る。 自立型の家具だとそういうわけには行かない。 例えば
DVD/CD収納家具
は自立型の為に背面処理が必要で余分な材料を使っているし、仕上げとしての塗装面積も大きく、壁の間に嵌め込んでしまう場合には不要な側板の外側の塗装、背面の塗装も必要だ。 これらは結構材料費に影響する
もっと大きな作り付けタイプの優位点は強度確保の方法・作業が大変楽なのである。 自立型であると横揺れ防止の為にそれなりの構造、的補強を考えねばならないが、壁と壁の間に収納家具を設置する場合には両端の側板を壁に固定してしまうだけで完全な横揺れ防止が出来る。 無論地震対策も壁や天井に締結するのが容易だ。 空間利用効率は作り付け収納家具の場合床から天井までを全て利用するので全く無駄がないのに対し、移動・搬入可能とするために床から天井までの高さとは出来ない自立型と根本的に違う。
ある時、
作り付け収納家具は生活の変化に応じた変更・移動がしにくいから、通常の家具のほうが便利だ!
とのあるインテリアコーディネーターの意見を聞いたことがある。 しかし大型家具なんて生活の変化に応じて設置場所を変えるような代物ではないし、あり得るとすれば別な家具への買い替えだと思う。 自作の作り付け家具で生活の変化に合わなくなったらその時は取り壊してまた作り直せばよいし、16万円で家具を買い換えたと思えばよいわけである。 特注の家具であれば買い替えは70万円の投資ということになるからそう気軽にやるわけにもいかないだろう。 その意味ではインテリアコーディネーターの考え方は同調できるが、自作する場合は費用のベースが全く違う。
3、使用者の好みに合わせた使いやすい収納構造を実現できる。
これは容易にご理解願えると思う。 収納の仕方には棚を使うのと引出しを使うの2つに分けられるのだが、それぞれ最適な奥行きや高さ、幅の寸法があるし、空間を最大限利用することも無論容易だ。
ご存知だろうか? 既成の家具で引き出しの奥行きがその家具の奥行きと等しくない物が結構多い。 引出しを閉じた状態では判らないのだが、開けてみると、
あれっ!たったこれだけしか奥行きがないの?
というのを結構見かけるのだ。 むろんこの場合引出しの後側は使えないデッドスペースとなっている。 こうなっている理由は材料費をケチっているとしか思えない。
またごく浅い引き出しや逆に深い引き出しなんているのも収納する物次第で大変使い勝手が良いものだ
が、これも自作の場合には自由に設定できるが、既製品では使い方を特定できないからそのようなもの
は殆ど見当たらない。
(左の写真参照)
棚にしてもそうだ。 サイズの問題は別としてねじ込みの棚ダボで棚の高さが可
変できるタイプは、そのメス側の棚ダボが多いほど高さ可変の自由度が高まる
のだが、これまた材料費をケチって粗い間隔で埋め込まれていたとすると殆ど意味がないのだ。 自作であれば埋め込むダボの数は任意だし多少増やしたところでその金額は高が知れている。
(
mini-Shop
で販売しているメスのニッケルダボは2006/07/21現在で、1個
\11.-
)
棚板1枚に4個使うので高さ可変を10段増やしたところで
\440.-
にしかならない。
(右の写真参照)
収納家具を作る前に収納する物品の種類と量を分析して最も効率よいスペースの使い方とサイズ決定の検討はかなり楽しいものとなる。 そして念入りに検討すればするほど完成後の満足度は高いから、この事前検討段階では製作に直接携わらない家族も含めて実施したいものだ。
4.実用性が高い割にはたいした工具・道具を必要としない。
以下に羅列するのは以前メルマガに、
「道具に金を掛ける事は重要でない話」
として載せた是非とも欲しい道具とおおよその市販価格である。
そして重要なことはこのサイトで紹介している収納家具はこれらの道具で作った物だけで作ったと言うことだ。 私の使っている道具の詳細は
こちら
で紹介しているので併せてご覧頂きたい。
道具名
コメント
実売価格
道具名
コメント
実売価格
切断する道具
マーキングポンチ
(6φ 8φ)
\700
替刃式ノコギリ
普通の刃とそれより細かな替刃があればよい。
\1,700
フォスナービット
(35φ)
\1600
電動ジグソー
曲線切りに絶対必要
\6000〜\11000
センターポンチ
\400
ジグソー替刃
木工仕上切りと曲線仕上切りはMUST
\1000
測る道具
切削する道具
曲尺
(50cm)
\2000
替刃式カンナ
58mmか50mmがあれば十分
\2500
コンベックス
(25mm幅 5.5m)
\2100
カッターナイフ
稀に使う補修用
\500
150mmノギス
\1800
研削する道具
挟む道具
電動サンダー
\7200
クランプ 50mm
最低8個は欲しい
\3200
替刃式ヤスリ
平中目
\1000
クランプ 75mm
最低2個は欲しい
\1100
替刃式ヤスリ
丸中目
\1000
クランプ 100mm
最低2個は欲しい
\1600
替刃式ヤスリ
丸中目小
\700
7.その他の道具
サンドペーパー
(紙/布/空研ぎ #60 #120 #240 #400)
\500
玄翁
225g
\1000
穴あけとネジ締めの道具
収納ボックス
\3000〜\5000
電動ドリルドライバー
\4400〜\10000
ブラシ
(木屑などをはらうのに使う)
\1000
ドライバーセット
ラチェット式
\2000
自作する道具
四つ目ギリ
\400
工作台
(サイトで紹介している物2つ)
\2000
木工ドリル
(5φ 6φ 8φ 8.5φ 10φ)
\3000
中型木製クランプ
(サイトで紹介している物3つ)
\1000
購入価格の多少のブレがあっても以上の合計は
\100,000.-
でお釣りが来る。 前回に説明した材料費と特注した時の大きな出費の差を思い出して欲しい。 ちょっと大型の収納家具を特注せずに自作すれば、
10万円
は簡単に回収できるし、ましてや数箇所に収納家具を作ったとしたら工具・道具に投資した額なんてたかが知れているのである。
だからといって道具にもっとお金を掛ける手は損得勘定や実用性を重んじる私の発想にはない。
上記以外の道具を買うとなると、
1.専用工作室が必要になる木工機械
マンション住まいを始め設置場所の問題があると使えない。
(私もそうだ!!)
2.刃研ぎなどを始めとした手入れが難しい道具
大変優秀なのだがプロ用の伝統工具に多い
3.使用頻度が低い道具
半年に1度しか使わないとしたら別の方法を考えた方が良い!
というような道具・工具が大半であるからだ。
無論プロがやる手法そのもので作ろうとしたり、特殊/複雑な加工をすると
(一例として、面のカンナ掛けやホゾ穴あけなど)
必要な道具は増えるがせいぜい電動トリマーを検討する程度で、プロの作業・加工方法ではないアマチュアソリューションでの実現を私は考えているから殆ど不要だと思う。 従って工具・道具の費用負担率はかなり少ないのだ。
5.大きいからと言って難易度が高くなるわけではない。
製作する対象が大きくなると難易度が上がってくると勘違いされている方が大変多い。 結論から言うと大きさは余り難易度に繋がらないのである。 強いて言えば大型収納家具の製作過程で、体力や力仕事を必要とし一人ではにっちもさっちも行かないことがあり得るが、それは難易度とは違う。 ここでいう難易度は実用上十分な精度の物を作る容易さであって、力技を要る要らないとは違うのである。 もうひとつ大型とは言っても製作後に運ぶ必要はない作り付けだから、力仕事が出てくる局面は数少ない。
このサイトに掲載している作品の中で難易度の高い実例を挙げると、
DVD/CD収納家具
、
回転式CDラック
、
A4サイズの箱
などが代表的なもので、緊張が連続する精密加工・組立てと忍耐力を要求するが、大型の作り付け収納家具ではそのような作業は不要である。
極端なことを言えば
2-3mm
の切断誤差や組立て誤差が生じても、出来上がってしまったら気が付くこともなくそして実用上困る事もまず起きないケースすらある。 むしろ家屋そのものが高い精度で組みあがっていることは殆どないから
(具体的には壁面や床面のうねり、場所によって変化する天井高のバラツキ、垂直度の狂いなどで、大工さんというのはごまかしの天才!ではないかと思う位だ。)
、はめ込み式の収納家具の場合臨機応変にそれらに対処するかを考える必要があり、精度だけ追いかけても無意味である。
(といっても設計はきちんとしないといけないが。)
また難易度を低くするための手法として、スライド蝶番やスライド
レールを積極的に採用したい。 出鱈目でもよいというわけでは
ないが、完成後に扉の納まり具合を調整できるスライド蝶番の利
点や引出しの幅とその取り付け本体の隙間に精密さを要求しな
い2段式スライドレールも大変有難い。
実際に試された読者から、
「スライド蝶番やスライドレールの
有難さを使ってみて初めて理解しました!」
とのコメントも頂い
ているくらいだ。 スライド蝶番の詳しい使い方は
こちら
から、
スライドレールの詳しい使い方は
こちら
からご覧いただける。
スライド蝶番の例
スライドレールの使用例
また物理強度が高く加工性が良く価格が手頃な合板の使用を私は家具製作上推奨しているが、唯一の欠点と言うか綺麗でない木口の解決策として木口テープの採用も、下手に集成材やムク材などを使うよりも難易度は低くなり最高の仕上がりになる。 木口テープの使い方は
こちら
からご覧頂きたい。
以上5項目について私の考えていることを述べてきたが、作り付け大型収納家具は日曜大工の中で最も実益があり生活をよりしやすくするテーマとして是非ともお奨めであり、実現に向けて多くの方に試していただきたいと考えている。 疑問点があらば遠慮なくお便りを寄せられたい。
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