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隙間収納家具
   
2005/05/27

構想

 最近引っ越した借家のダイニングキッチンの一角に隙間があり、収納を改善したいので隙間家具を作って
 欲しいのだが?という打診が最近あり、現在2つの製作テーマが進行中なのですが引き受けてしまいまし
 た。 その一角とは左の写真のようで、内寸で幅、奥行き40cm、高さが182cmありその上には吊戸棚が
 あります。 現在は仮にということでキャンバス製物入れの上にFAX電話を置いてあるという状況です。

 要望としては現在も置いてあるFAX電話をうまく収納したいということと、ご夫婦でパソコンを運用しインター
 ネットを活用している関係でADSL契約を結ぶ予定なのだが、モデムとそこから別な部屋に配信するための
 無線LAN機器をうまく収納し、日用雑貨を始めとした収納もうまく出来ると良いのだが?というものでした。

 上で述べたように設置スペースは縦に細長いスペースで左側は壁、右側は食器戸棚に接するので左右
 はよいとしても、前後に倒れやすくなる可能性が大です。 借家ですので安易にあちこちにネジ止めという
 わけにも行かないので、上にある吊戸棚に密着させる構造で倒壊防止を考えねばなりません。
 また高さ182cmというと乗用車で運ぶのは難しいので2分割構造も考えておかねばなりません。

 その辺りは後で考えることとし先ず構想としての収納部分のレイアウトを幾通り描き上げて送って検討して
 頂いた結果構想としては左の図のようなものにまとまりかけています。

 上段は内寸の高さ418mmの収納部で高さ可変の棚が入り2段の棚にします。 中段は下にFAX電話を
 置き、上はガラス扉付きの棚でFAX電話にアクセスする関係上この棚の奥行きは245mmに抑えます。
 また棚板を1枚入れて高さ可変とします。 多分ここは飾り棚として使えるでしょう。
 下段は今年始めに作った電話台とよく似ていて、上からライティングボード、深さ60mmの引出し、深さ
 110mmの引き出し、本棚、深さ110mmの引き出し、深さ60mmの引き出しとしています。

 また本棚の部分はA4サイズの本(電話帳など)を考えていますが、その奥に130mm程度の空間が出来
 ますので、ここにモデム、無線LANの機器を置くというアイデアです。

 引出しの奥行きを400mmとすると全体の奥行きが大きくなり過ぎるので350mmとします。
 この為28mm程度の隙間が引出しの後ろに発生しますが、これをケーブルパスとして利用すればよいと
 考えています。
 送っていただいた設置場所の写真は正面から撮影されていたので、この構想図を設置場所に嵌め込んで
 みたのが、左の写真です。 右側の食器戸棚との見切りを考えて寸法の微調整をし、塗装するニスの色
 やツマミの質感を食器戸棚に合わせれば、この部分を嵌め込んだのではなく食器戸棚を延長して一体化
 したようなイメージで仕上げられるかもしれません。  その辺は今後の課題として考えることにします。

 問題はいつ着手できるかで、ウェルカムボード、スライド・回転式収納棚の後というのが順調な所ですが、
 早くても6月末くらいでしょうか? 早く着手できた方が良いに決まっていますが、私の体はひとつしかない
 ので悩ましい所です。   ということで最終設計や製作着手は少々お待ちください。




2005/07/22

最終設計

スライド・回転式収納家具の遅れで着手が1ヶ月近く遅れましたが、最終設計はごく僅かな寸法の微調整で進めることになりました。  その僅かな微調整とは、この家具を設置するイメージ写真を見て判るとおり、右側にある食器戸棚との見切りを合わせてやることです。

その最終寸法がどうなったかは皆さんにとっては大きな問題ではないので、既にお見せしている寸法図は変更いたしませんが、ひとつだけどうする?という問題が出てきました。

それはどうやって運ぶのか? です。 私の愛車プジョー306は何年経っても飽きの来ないデザインと、ステータス性はないけれどもピカ1の運動性能がお気に入りなのですが、ヨーロッパ車に良くある前座席の背もたれが前に倒れない、またはリクライニングしない構造の為、長尺物が入らないのです。

構想段階ではこれを解決する為に上下2分割にしようと考えていましたが、その締結部分に使うスマートな金具が見つかりません。 どうしようかと考えあぐねていた時に、プリンターの置き台を製作するため3 x 6MDFを縦に半裁にしてもらいホームセンターから運べたことを思い出し、組立て式構造にしてしまえばよい! と気が付きました。 

 組立て式にした場合使用するボルトは頭が薄くて大きな物を使い、側板の表面を少し座ぐってやれ
 ば前面から見えなくなります。 設置時のイメージ写真を見て判るとおり、この家具の左右は壁か
 食器戸棚になるわけで、そのボルトの存在は全く判らなくなります。

 こういった家具の締結用に使われるボルトやナットは少々特殊な物で、どうやら太さはM6に統一さ
 れていますが左の写真が代表的なものです。 左の上段は鉄製でクロメート処理をした物で、少し
 でも見栄えを良くする為にプラスチックのキャップを被せられる構造になっています。
 左の下段はブロンズ色にメッキされており、そのままでも外観を損なわないような意匠性を持って
 おり、デザインを合わせたナットもあります。

 これらと組み合わされるナット類が右側で、上段は板と板の締結用です。 中段の物は私が良く使
 う鬼目ナットで、木口に板を締結する際に使えます。 下段は特殊な形状をしていますが、鬼目ナ
 ットでは材料が柔らか過ぎて巧く締結できない場合に便利で、ログナットと呼ばれています。

 ということで、本テーマはこれまでに製作した家具では採用しなかった、組立て式の構造を採用することにします。

そんな面倒なことをする必要ないじゃないか? との声も聞こえそうですが、完全分解してしまう今回の構造以外に大型家具を作るのには、複数のユニットを作ってそれらを締結して最終的なサイズにする! という作り方があります。  その際これらのボルトを使用することにより、大変スマートに組立てられ、分解が容易に出来るため後日に違う組み立て方が出来るとか、運ぶのが楽
になるというメリットがあります。 従って家具作りの中でのひとつのアイデアとして知っておいて損なことは決してありません。


2005/08/05

製作開始

シナ合板を既に発注しましたが、18mmシナ合板は入荷が遅れるので、それを使わない引出しと扉の部
分の製作から入りました。  作業に必要な詳細寸法を描き入れた最終寸法図は右図をクリックすると
ご覧になれます。

 引出しの製作方法に関しては他のテーマでやっている方法と全く同じで、標準的
 な設計法については引き出し付き収納ボックスで解説しています。
 そして引出しの箱作りは最も簡単なロの字の枠を作って底板を貼り付ける!とい
 う方法を取っています。



 実はこの方法に対し、強度に疑問がある? 既製の家具の引出しの箱の作り方は違うと思うのだ
 が? 本格的な作り方ではないような気がする?
 といった疑問点が過去に寄せられています。
 確かに私がやっているような作り方はプロはやりませんし、市販品でも先ず見当たりません。
 しかしながら幾つかの理由でこの作り方がアマチュアの方法としてはベストであると私は信じております
 ので、その理由に付いて解説しておきます。

強度の問題
質問された方の強度に関する疑問は底が抜けやしないか? という点にありますが、これまでに作った引出しは数百個にもなりその中にはかなり重荷重のものも含まれているものの、底が抜けたということは1件もありません。  従って負荷試験をしたわけでは」ありませんが、十分な強度を持っていると思います。

市販品などの引出しの底板は側板に彫られた溝に嵌め込む方法が殆どですが、この場合落とし込むだけで接着することは先ずしておりませんから、むしろ市販品の引出しの方が底が抜ける可能性が高いと私は考えています。  特に底板を嵌め込む溝が浅いとその危険性が高くなります。


見栄えの問題
底板をロの字の枠に貼り付ける方法ですと組立て後横から見ると底板の断面が見えて格好悪いのでは? との声がありました。 これは全くの誤解でして、横から見たときに底板の断面は全く見えなくなります。 というのはその部分にはスライドレールが被さってしまう為です。  標準的には別ピースの前板をはりますので、前面の底板断面も見えません。  唯一底板断面が見えるのは後面ですが、実際には引出しを手前に引いても見えるところではありませんので、これが見苦しくて問題だと言う方はまずいないでしょう。

加工・組立て精度と特殊工具の問題
市販品に見られる底板を嵌め込む部分の溝の深さと底板のサイズの精度はかなり高くしないとなりません。 その間の隙間が大きいと引出しが長方形ではなく平行四辺形に歪む可能性があるからです。  そして何と言っても溝彫りに電動トリマーが必要になります。  電動トリマーは沢山の高価なトリマービットを購入して初めて生きてくる宿命を持っていますから、誰もが所有とは行き難い工具です。

それに対し私のとっている方法なら電動トリマーはいりません。 引出しの箱の製作に必要な工具は、ノコギリ、カンナ、玄翁、木工ヤスリ、という日曜大工の基本工具だけで作れます。 工作精度は一部の板長さ切断で重要で、その調整もカンナで簡単に出来ます。 実益を重んじるのであればこれはたいへん大事なことだと私は考えています。

スライドレールの固定上の優位性
 実はこの理由は大変大きいのです。 左の図をクリックすると底板を貼り付けてその後にスライドレー
 ルをネジで固定した時にどのようになるかが判ります。 レール固定のメーカーの推奨は3φ16mm
 タッピングネジですが、レールの隅から7mm離れたところにネジ穴がありますので、先端は12mm
 の側板に刺さりこみ、ネジが突出することがなく大変収まりが良いです。 これは底受け式レールを使
 った場合のことであり、横受け式の場合にはネジの先端が箱の内部に突出してしまう為もっと短いネジを使う必要があります。 そしてそれはレールの耐荷重が下がる原因となりますし、レールの取り付け精度も底受け式よりも悪くなります。

私が底受け式を推奨している理由はこんなところにあるのですが、一方市販品に見られる引出しの場合、底受け式のレールの収まりはいまいちの外観になりますしネジが底板と干渉し易く、このために効きが悪くなる可能性もあります。 恐らく横受け式のほうが収まりが良いでしょうが、その場合には取り付け精度と耐荷重の問題があります。


以上が私が採用している引出しの箱の組み立て方がアマチュアの製作法としてはベストと信じている詳細な背景で、10年以上に渡りトラブルフリーでしかも作りやすいという実体験積み重ねの結果です。  引出しの箱作りのステップは後ほどの写真をご覧下さい。

 さて扉の中で奥に落とし込む中段の扉は、ロの字型の枠を作ってガラス板を嵌め込む構造です。
 市販の家具で見かける構造は、ムク板で作った枠にガラスを嵌め込む部分を彫りこんで裏から細い棒を固
 定して押さえますが、ここでもそういった特殊工具無しで作り完成後は見栄えもよい方法を取ります。

 その方法は、9mm3mm5.5mmの合板を交互に貼り合せ、最終的には厚さ約18mmとします。 木口
 部分には木口テープを貼りますので、出来上がるとムク板で作ったように見えます。

この部分は左の詳細図を見ても判り難いかもしれませんが、組立て過程の写真もご覧になり構造を理解していただけたらと思います。 尚詳細図の部材寸法図に記載してある赤の太い数字は0.2mm以内の誤差で切断する必要があります。 その他の寸法は設計値よりも0.5-1.0mm大きく切断したほうが、仕上がり寸法の調整がしやすくなります。

引出しを作る部材を切断しました。 ほぼ正方形が底板で、その右側は深い引出し用、下が浅い引出し用です。

引出しの側板の端から6mmの位置に36mmの隠し釘を2本ずつ打ち込みます。

隠し釘の先は1-1.5mm程飛び出るように打ち込んでおきます。 これは正確な接合の秘訣で、普通の釘では駄目です。

前側(または後ろ側の板)に木工ボンドを塗り、その上に側板を載せて指で触りながら正確な位置調整をしOKとなったら側板を押し込むと隠し釘の先が刺さり横にずれなくなります。

そうしたら玄翁でプラスチックの部分がややつぶれるまで打ち込みます。 同じ要領でロの字の枠を作ります。

出来上がった枠の角は正確な直角になるよう充分に調整してやります。

4つの枠が出来上がりました。 木工ボンドが硬化するまで最低でも2時間は寝かせる必要があります。

次に底板を木工ボンドで貼り付けますが密着保持の為に、22mm隠し釘を打ち込みます。 枠の直角が狂わないよう注意が必要です。

3時間経過したら総ての隠し釘の頭を折ってしまいます。 写真のように玄翁で横から払うように叩けば簡単に折れます。

その後接合部の僅かな段差や木口面を木工ヤスリで削って滑らかにします。 替刃式(M-20GP)が作業性や効率が良くお奨めです。

研磨が終了した所です。 既にかなり丈夫な箱になっていますよ!

引き出し側スライドレールを固定しました。 取り付けネジは1本辺り3本で底側のみで充分です。550mm600mmでは4本使う。)

これは前面右側のクローズアップ。 矢印の部分に隙間が出来ると箱の横幅が大きくなったのと同じになりますので、注意が必要です。

念のために引き出しの箱の幅を計りました。 設計値どおり341mmドンピシャに仕上がっています。

こうして4つの引出しは前板貼りを残して完成しました。 一番下の物はレール無しで床の上を滑らせて使う引出しのため横幅が広くなっています。 以上が標準化された私の引出し作りの手順です。

こちらは貼り合せ方式のガラス扉を作る部材です。 左から前面用9mm厚2種類、中間用3mm厚2種類、そして後ろ側5.5mm厚2種類です。

それらを積み重ねました。 この写真は後ろ側から見ています。

そのクローズアップで3枚の板が交互に重なり合うようにします。

前面と中間の板を所定の位置に木工ボンドで貼り付けました。 これは後ろ側から見たところです。 左右の板は矢印の位置にそれぞれ貼り付けます。

貼り付け開始! 最初が最も肝心で直角が正確に出るよう念入りに調整します。 そしてクランプでしっかりと固定します。

そうしたら次の角の接着に移りますが、右側の未接着部分に残りの板を挟み接合位置の確認をしながら、固定します。

そうしたら残りの2ヶ所を接合し、木工ボンド硬化の為に2時間寝かせます。

後ろ側の板を所定の位置に貼り付けてやります。

貼り合せが終った扉枠です。 左側が前面から見たところで、右側は後ろ側から見たところです。 前の方で部材の切断を一部寸法は除いて少し大きめに切る!と解説しています。  じつはこのようなやり方をすると内寸を所定の寸法に押さえながら組み立てるために、外周に段差が生じまが、後ほどカンナで成形して寸法出しをします。




2005/08/12

製作の続き1

扉枠の合板3枚貼り合せが終りましたが内寸を押さえながら組み立てると外寸に狂いが生じますし、外側の貼りあわせ面にはどうしても凸凹が出来てしまいます。 木工ボンドが完全硬化する12時間後にこれらの修正をカンナで削ることにより行います。 その後替刃式木工ヤスリにて削った面を滑らかにし削り屑を十分払った上でシナの木口テープを貼りました。

これであたかもムク材で作ったかのような仕上がりとなります。  特殊な工具は一切必要とせず、替刃式ノコギリ、クランプ、カンナ、替刃式木工ヤスリ、カッターナイフの使用で完成する作業のやり方は大変応用が効きますので、マチュアの作業手法として覚えておいて損のない手法でしょう。

これまでの経験では貼り合せが完了した外周は、正確に貼りあわせたつもりでもこのように凸凹が生じます。 

この凸凹をカンナで削り外周の寸法や直角度を出してやり、更に替刃式木工ヤスリで表面を滑らかにしました。

その上にシナの木口テープ22mmを貼り付けて仕上げました。 木口テープの貼り方についてはこちらを参照ください。

こうして組立作業が終った扉枠。 この後は塗装、蝶番取り付け、そしてガラスを嵌め込めば完成です。


 さていよいよ本体の加工に入ります。 本体の加工組立作業で大事な部分は何と言っても組立て式とする
 部分です。 構想段階の説明でお見せした特殊ネジの中で、セットキャップボルトと鬼目ナットを使うことに
 しました。 何れもM6のネジが切られてあるもので、ボルトは長さ30mm、鬼目ナットの長さは鍔付き
 13mmの物を使用しています。 (左の写真参照)

 この家具の固定棚は5枚ありますが、中間の奥行の浅い棚は木ダボで支えるだけとし残りの4枚の棚をそ
 れぞれ2本ずつのセットキャップボルトで左右から固定します。 従って16本のボルトを使うわけですが、収納棚自身の荷重はそれ程高いものではないと予測していますので、30mmのボルトとしました。 収納棚の荷重が大きい場合にはボルト及び鬼目ナットの長さを長くすることにより、より高い締結強度が取れます。

 そのセットキャップボルトと鬼目ナットを使ったT字型の締結部分の詳細は左の図のようになります。
 固定棚板に鬼目ナットを埋め込みそれに側板をボルトで固定するわけです。 棚板には直径8.5-9mm
 穴とし深さ16mmの穴をあけ、側板には直径7mmの貫通穴をあけてやりますが、表面は直径15mm
 深さ3mmの座繰り穴をあけてボルトの頭が側板表面より沈むようにしました。

 こうすれば収納棚設置時にボルトの頭が壁や隣の家具に擦れて傷を付けることがなくなります。 従って
 そのような配慮が不要である場合にはこの座繰り穴は必要ありません。 またその場合にはボルトの頭むき出しではなく、化粧用のキャップを被せると体裁の良いものになります。

これらの穴あけは難しいことは全くありませんが、穴の位置合せは重要ですので、即席のジグを作って作業した方が確実です。 それらの様子は以下の写真をご覧下さい。

加工作業を容易にする即席一過性のジグ。 後側のように18mmの板を安定して立てる目的のもので、2つ作ります。

固定棚2箇所をジグに挟んでその上に側板を載せます。 側板には予め棚板固定位置を印ししておきます。

その上から固定ボルト位置に2mmのドリルで貫通穴をあけました。 ドリルの先は棚板にも届いており、更に太いドリルで穴あけをする際の目印になります。

側板側には先ず15φのフォスナービットで深さ3mmの座繰り穴をあけます。 電動ドリルアタッチメントを使えば容易に深さの調整が出来ます。

その中心にの貫通穴をあければ側板側の加工は終わりです。

2mmのドリルで印が付いた棚板には8.5φ 深さ16mmの穴をあけてから鬼目ナットを六角レンチで締めこみます。

鬼目ナットの鍔の部分が表面から僅かに沈んだ所まで締めこめばOKです。

そしてセットキャップボルトで側板と棚板を締結しました。(赤矢印の所) ボルトの締め込みには10円玉が丁度手頃で、組み立て解体も容易です。

締め込みが終ったセットキャップボルトの頭部分で、側板表面よりも沈んでいます。

残る2枚の固定棚を同様の手順で固定しました。 締結部分の強度はかなり低いので無理な力が加わらないよう充分な注意が必要です。

次に裏返しをして反対側の側板を固定する穴あけを同じ手順でします。 今回は棚板を仮に押さえるジグの使用は不必要です。

穴あけ後スライドレール本体側を所定の位置に固定しました。 これで本体の仮組み立てが出来ます。

組み上がった本体に既に作った引出しの箱を挿入しました。 この状態では木ダボやネジ併用で接着した場合と比較するとかなり横方向のたわみが出やすいですが、最後に裏板を貼ることにより横方向への撓みは殆どなくなるはずです。

本体下半分の引き出し部分を斜めから見たところです。 以前に製作した電話台と同じレイアウトになっています。




2005/08/19

製作の続き2

本体の組み立て構造には問題がないことを確認しましたので、再びばらして残る本体側板の加工作業を進めました。 それらはメスのニッケルダボ埋め込み、スライド蝶番の座金取り付け、木ダボの埋め込み、そして木口テープ貼りでここでは詳細解説を省きますが、もしも詳しく知りたいという方は、

   1.スライド蝶番の使い方

   2.ニッケルダボの使い方

   3.木ダボの使用方法

   4.木口テープの使い方

をお読みください。

その後引き出し前板5枚、扉2枚、中段の奥行の浅い棚板2枚、ライティングボードの切り出しと窪みの加工をして、扉2枚とガラス嵌め込み扉にスライド蝶番を固定する35φの座繰り穴をあけました。 

ここで再度組立てをし裏板を横揺れ防止の為に仮止めした上で、扉を取り付け引き出し前板を位置調整をしながら仮固定しています。 念には念を入れて各部の再点検をした上で分解し、固定棚1枚にはケーブルを通す穴を、下部の書棚部分奥に仕切り板を取り付けの桟を接着、そして裏板には放熱の穴やケーブルを外部に出す為の穴をあけてから、メスのニッケルダボを除く全金物を外し、塗装前の研磨、木口テープの化粧貼りと進み全加工作業が終了しています。

今回はここまでですが、次回に紹介する塗装は油性ウレタンニス塗りを考えており、着色ニスの混色によりチーク系の色を2回塗りで出した上で、艶消しニスで仕上げる3回塗装を予定しています。 両面を塗装しないとならない部分がありますので、「塗装 → 乾燥」の工程は6工程となり各工程は乾燥時間を含めて12時間掛りますから実時間で72時間、要領よくやっても4日間は掛るでしょう。

うまく行けば今月中に完成ということになります。 製作所要時間は1ヶ月以内になりそうですが、週に実作業時間は2日間程度しか使っていませんので短時間で完成できる部類に入りそうです。

本体を分解し側板内側の残る加工(メスのニッケルダボの埋め込み、木ダボ穴あけ、スライド蝶番座金の固定)を施しました。 写真の左側は右側板、右側が左側板で、下のほうから見たところです。

中段部分のクローズアップで、白矢印が上部扉用の全被せ蝶番、青矢印がガラス嵌め込み扉用のインセット蝶番、黄色矢印が各3個ずつ埋め込んだメスのニッケルダボで真中にはオスのダボを捻じ込んであります。 更に赤矢印が木ダボ用の穴でここに中段の奥行の狭い固定棚が嵌りこみます。(分解組立て構造を維持する為接着はしません。)

こちらはガラス付き扉の蝶番固定穴ですが間違ったわけではありません。 黄色線で示したガラス外周には当たらないようにぎりぎりの設計をしたまでです。

そしてまた組み立てようとしていますが、下から2番目の幅の狭い棚は木ダボ嵌め込みにより固定します。

一方こちらはライティングボード、トレイ部分の加工の準備が終わったところで、固定した枠がトリマーのガイドになります。

板厚が14mmありますが、45度のV溝ビットで深さ13.5mmの溝を彫りました。 この深さはこのビットの限界です。

板厚より0.5mm浅い溝ですので内部は簡単に抜けます。 このあとペーパーでバリや僅かな切削斑を落としてやります。 切削速度を上げられなかったので焦げ目があちこちにあります。

その後裏に4mmの合板を貼り板厚は設計値の18mmに、トレイ部分は深さ14mmのお皿となります。 以上の加工はかなり難易度の高い加工です。 残る焦げ目は濃い目の着色により消します。

ライティングボードの前板は6φ木ダボ3本と接着剤で固定します。 (接着は塗装後ですが。)

そして本体に挿入するとこんな具合になります。

他の引出しの前板は位置を充分に確認した上で、内側から3.3φ 25mmのネジ2本で仮固定します。

最下部の引出しの前板だけは12mm厚の合板で作り、取っ手を兼ねた横板を上に貼り付けます。

扉と引出しの位置調整、隙間の出具合をもう一度確認し、必要とあらばカンナや木工ヤスリで念入りに調整しておきます。

そしてツマミを固定しました。 この後またまた分解しこの家具の中に設置するインターネット用ルーター、無線LAN、モデム等の機器が出す熱の放熱の為の穴、ケーブルを通す穴、目隠しの板の細工をしました。

これは右側の側板の内側ですが、目隠し板を固定する桟を接着しました。 板の固定は塗装後ベルクロ(マジックテープ)を貼ってやります。

目隠し板はこのようになります。 この板の左側に無線LAN、インターネット接続用のモデム、ルターが置かれ、右側は本棚です。 上のほうの丸穴に指を引っ掛けて引っ張れば外れる仕掛けです。

FAX電話の載る固定棚の奥に電源ケーブル、電話線が通る穴を切り取りました。

裏板にはこのような細工をしました。 上2列の5つずつの穴は内部に入れる電子機器の放熱用の穴で、下の四角い穴はケーブルを外部に出す為の穴です。



2005/08/26

塗装そして完成

いよいよ塗装に入りますがその前に私の塗装下地作りのペーパー掛けのやり方についてちょっと触れておきます。  なんていうことのない作業で難易度も高くありませんが、長年色々試してみてこれが一番作業性がよいという結論の方法です。

所謂バックヤードと称する場所で作業していますが、家屋と土地の境界線の間が約1.8m、その間にうなぎの寝床の物置(奥行45cmと反対側にはゴミ箱(奥行40cmがあるため実スペースは95cmしかありません。 しかし45cm幅までの板であればこのスペースで充分に作業が出来ます。 方法としては作業台を2台並べてその上に研磨する材料を載せます。 作業台は幅が30cmありますので45cm幅くらいまでなら充分支えられますし作業台が2つあれば、240cmの長さの板でも安定して支えられます。

これは重要な意味をもっています。 私の場合戸建て住宅なので屋外ですが、マンション住まいの方の場合ベランダのスペースがこれに相当します。 多分ベランダの奥行が90cm以下というのは少ないでしょうから、作業台を使えばベランダで同様な作業が出来ることになります。

また重要なのは作業台の高さで、手引きノコギリを使いやすいよう高さ40cm前後にしていますが、この高さは電動サンダーを使うときに体重を掛けやすく研磨圧のコントロールに力を必要としません。 市販されている一見格好良くて便利そうな作業台は高さが70cm前後と高いため、この上に材料を載せて電動サンダーでペーパーを掛ける際に研磨圧を上げようとすると体重を掛け難い為短時間で疲れてしまうでしょう。  私が市販されている作業台を全く評価しない理由はここにもあります。 

さて塗装で一番頭をひねったのは色出しでした。 この隙間家具が設置される右側には食器戸棚があります。 そしてその色に合わせたいのですが、既製の色では合いそうもないのです。 近しい色はチークかウォールナットなのですが、チークでは赤味がやや強過ぎる。 ウォールナットでは色味は良いが濃度が濃すぎる感じです。 チークの赤味を押さえるのは非常に難しく、またウォールナット色の濃度を例えばクリヤーニスを追加して薄くすると今までの経験では色の深みが減少します。 そこで何種類かの混色の実験ををした結果、パインイェロ-を15に対しエボニー(こげ茶色)1加えることで丁度良い色(チーク色の赤味が薄れてウォールナットよりは薄くて深みがある。)が出ることが判りました。

こういった混色は迷いだすと果てしがありませんが旨く行ったときは正に自分だけの色となるわけで、面倒と言えば面倒ですが私にとっては楽しい作業になりつつあります。

計算上の今回の塗装面積は6.5uありますが、20%の薄め液を加えて3回塗りとして1リットル強のニスを用意しました。 メーカー発表の量よりもかなり少なめですが、1回辺りの塗膜が薄いことが原因で過去の経験による補正が入っています。 そして一部の部材は4回塗りする部分もあり結果としては丁度良い量になっています。 その後私の好きな艶消しニスで仕上げて上品な感じを出しています。

塗装に際しては場所の確保が問題でした。 というのは殆どの作品が組み立ててから塗装したのに対し今回はどうあっても完全にばらして塗装しないとならないからです。 それほど大きなものではないのにも拘らず、2部屋を使う羽目になりました。  今でこそ子供全員が独立しているので、空き部屋を家内や私の作業場(プレイングルーム?)として使っているため何とかなりましたが、子供さんがいる方ではこのようなやり方は採用し難いと思います。

結局4日間塗装の為に2部屋占領しましたが、無事終了しガラス板を購入して最後の組立をして確認をしました。 次の土曜日には納入を予定しています。

作業台2つをバックヤードに持ち出して電動サンダーによるペーパー掛け。 市販の作業台は高すぎて体重をかけて研磨できず疲れます。 また作業面が小さくて長い板を安定して支えられませんが、作業台を2台使えば240cmの板でも問題なく支えられ具合の良い作業が可能です。

手間取った調色。 左からエボニー、パインイェロー、チーク、ひとつ置いてウォールナットのサンプルですが、パインイェロー15にエボニー1の比率で、間に見えている色を出しました。 一見ウォールナットに近いようですが、3回塗りでこの濃度であり2回塗りのウォールナットより薄めです。

塗装のメイン会場はこのように目いっぱい並べています。 組み立て前に塗装するため、大変場所を使います。

サブ会場は家内の部屋に侵略。 側板2枚を持ってきていますが変な置き方に見えるものの、この置き方が一番邪魔にならない?

これはライティングボードで、お皿の部分の切削で出来た焦げ目を隠す為エボニーを薄めに塗りました。 赤身が強いのは板の色のせいで、3回塗れば丁度良くなるでしょう。

2回目の塗装が終った所。 左上の写真と比較するとなるほど濃度が上がっているように見えますが、どうも期待していた濃度より低い気がします。

そこで混色テストしたカラーサンプルと比較しました。 ご覧の通り余りにも濃度が予定より低くなっています。 原因は塗膜が薄すぎる点にありそうですが、厚くすると途端に着色斑や塗り斑が出やすくなるので、ここは塗り回数を増やすことに覚悟を決めました。

4回塗りが済んで納得できる濃度となりました。 左のチーク色から赤味を抜いた、或いは右のウォールナット色を少し明るくした色になっています。

4回塗りで最終的な色になった大きな面のアップです。 場所によっては赤味が強い部分が見受けられますが、これは生地の色がその傾向にあったからで天然木の場合完全に均等に同じ色にはなりません。 こういったごく僅かな色の乱れが塩ビシートの木目では絶対に出ない美しさのひとつと言えます。 この後艶消しニスを塗って上品な半艶とします。

所定サイズに切断してもらったガラスを購入し、扉に落とし込みました。 3mm厚ですので、ぴったりサイズです。

5.5mmシナ合板を幅14mmで切断しネジ止めしました。 この固定方法ですとガラスのがたつきは全くありません。 この後押さえ板を着色ニスで塗装します。

これが我が家での最終組立となりました。 無論総ての作業が終っています。 上のほうが下のほうよりも赤っぽい感じですが、これは光の加減です。 記録の為に各部のクローズアップを撮影しましたので、以下にお見せします。

中央のFAX電話を載せる部分。 FAX電話のディスプレーが見えるように中間の棚は引っ込んでいます。 単純でのっぺりとした感じになり易い外観に奥行感を与えています。

ワーキングスペースとなるライティングテーブルを引き出した所。 電話で話ししている間にメモを取ることが可能。

テーブル内のトレイ部分に筆記用具数点が収まり、テーブルの出し入れで転がりだす心配はありません。

合板の木口部分は総て木口テープを貼りましたので、ムク材で仕上げたように見え大変綺麗です。

私のお気に入りのツマミSP-100 シルバー色でmini-Shopにあります。)を今回も採用しました。 チープ感が漂い易いプラスチックではないのでキリリと引き締まります。

下段の3つの引出しと書棚部分の並び。 常識的な横方向ではなく木目を縦に見せていますが、1枚板から切断し繋がりがあるのでデザイン的にまとまっています。

キャッチ付き蝶番は扉を閉めるときにバターンと大きな音を出すので、その音を軽減する為クリヤーパンポンmini-Shopで販売しています。)を扉に貼り付けてあります。

底部の隠し引出し?にはA4サイズのコピー用紙ワンパック500枚が丁度収まります。

製作解説は以上ですが、次回には搬入と設置の様子を簡単にお知らせいたします。 尚本製作で使った特殊なボルトやナットはmini-Shopで販売しております。 必要個数をお買い求めいただけますが、一般的な小袋販売よりかなり格安になっておりますので是非ご利用ください。



2005/09/02

納入そして設置

台風が過ぎてまた暑くなった8/27に納入しました。 目論見どおり完全分解した隙間収納家具は余裕を持って我が愛車のハッチバックに収まりましたが、横方向にずれやすいので家内に応援を頼み後部座席で横に滑らないよう押さえてもらうことにしました。

納入先のご夫婦に簡単な組み立ての説明をした上で、後日解体・組み立ての参考になるよう私は手をつけずに組立をお願いしましたが、約30分で組み立て終了し、所定の場所に僅かな隙間を残して(左右約4mmずつ、上部2mm収まりました。 正に隙間家具そのものです。 そして無線LAN、インターネット用のルーターを設置・接続して納入完了となっています。 尚隣の食器戸棚との見切りも完璧に近く揃っています。  強いて言えばその食器戸棚との色味がかなり違いますが、記憶色に頼った結果でありこの点だけは止むを得ない所です。 左の隙間にはLANや電話ケーブルが通る為、数ミリの隙間にぴったりと挟まっていることもあって横揺れは完全にゼロとなっています。

私の車の後部座席2/3は完全に倒れますが、前の座席は倒れないので、このように積みました。 まだゆとりがありますが横滑り防止の為家内に後部座席で押さえてもらいます。

側板など長い板は助手席のこんな位置まで突出します。 よって横滑りを押さえてもらわないと私は安心して運転が出来ません。

納入先のご夫婦に組み立て方を簡単に説明した後お二人にやってもらいました。

約30分で背板まで固定して組み立てが終了。 後日必要とあらば、解体再組立をしても一向に差し支えありません。

左の予定場所に設置後の写真と右の構想段階で作成したイメージ図を嵌め込んだものとを見比べてください。 色味を除けば構想どおりであることがご理解願えるでしょう。

下部の本棚の奥にはこのようにインターネット関連機器や無線LANの機器が収まり蓋がされます。

右の食器戸棚との見切り線も食器戸棚の引き出しの上下の線でぴったりと合っています。

僅かなスペースですが目いっぱい空間の利用効率を高めながら、結構奥行感がありますのでせせこましく雑多な感じにはなっていないと思います。  隙間収納家具は特注或いは自作で初めて完成度が高まる大変面白いテーマです。

完全組み立て式という珍しい構造の家具製作を経験させてもらいましたが、ここでは紹介しきれていないものも含め、沢山の新たなノウハウが身に着いたと考えています。
----- 完 -----

 
  
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