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電話台
   
2005/01/21

構 想
近所の方から大まかな希望みたいなものは昨年末に聞いていたため今年の日曜大工プランのひとつに入れておいたテーマですが、幕の内があけたとたんに希望されている内容が明確になりました。  そこで急遽それらの希望をもとに構想をまとめて設計図を起こし見積りを出して検討してもらうことになりました。

 左がその外観図でクリックすると拡大した外観図及び細部の寸法図がご覧になれます。
 基本的にかなりシンプルな構造で、天板は21mm厚パイン系集成材、それ以外は18mm
 12mm4mmのシナ合板を使います。

 サイズが幅430mm、奥行き330mm、高さ800mmでFAX電話が上に載り、収納部分は
 奥行き300mmの引出しが計5個に片開きの扉付き収納棚と、大きさの割に収納部の多い
 部類に入ります。  これは価格優先の既製品とは一味違うところを出すべく私が拘った所
 から来ております。  その5つの引出しは工夫した構成ですので注釈を加えておきます。

 一番上の引出しは前板の高さが36mmしかありませんが、これはライティングボードです。
 このお宅の電話はFAX電話で親機はコードレスではありません。

従って親機で電話を受けた時その近くに書き物をする場所があったほうが便利ですが、予定の電話台の天板の大きさはFAX電話が丁度乗る大きさですのでその場所がありません。 そこでライティングボードを引出しとして付けた訳です。

この引出しは2段式スライドレールを使いますがそうすると引き出しの上に15mmの空きスペースが必要になります。 この空間がもったいないので、ライティングボードの一部に窪みを設けて、ボールペンなどの筆記用具、クリップ、ホッチキス、メモ帳などを保管できるようにしてやろうという魂胆でいます。

二番目は深さ50mmの引出しです。 これも上に15mmの空間があるので最大75mmまでの高さの物が収納できます。

三番目と四番目は深さが100mmある引出しで上部の空間を足すと125mmまでのものが入ることになりますが、大き目の封筒を立てて保管できます。(これは依頼主の希望です。)

五番目の引出しは既製品には先ず見当たらない幕板部を利用した引出しで、私は有効に空間を利用するため結構採用します。 この引出しは50mmの深さしかありませんが、A4サイズのコピー用紙500(1パック)が横置きで丁度入る厚みで、FAX電話が普通紙対応なのでコピー用紙の格好の保管場所になります。 尚この引出しだけはスライドレールを使わず引出しの底に敷居滑りを貼り付け床の上を滑らせて出し入れします。

三番目の引出しと四番目の引出しの間には内寸で高さ330mmの収納棚があります。 これは電話帳などA4サイズ近辺の物を保管するスペースですが、こういった棚はなるべく床から離したほうが使いやすいので、棚板の高さは床から約200mmとしてあります。  この200mmとうのは別な理由からも来ています。

それは壁コンセントです。 この電話台の背面の壁面には電灯線と電話線の壁コンセントがあり、床から200mm-320mmの間は電話台側を引っ込ませないとなりません。 それが引き出しの部分ですと引出しの奥行きが小さくなって面白くありませんが、電話帳などの幅は250mm程あれば十分な為、ここだけ引っ込ませても支障ないことになります。 ということで棚の高さを200mmとしたわけです。

以上のような背景がありますので、単に空間利用効率が高いというだけではなく、合理性に溢れた設計と言えると思います。
製作費用だけでは物語れない自作の醍醐味そのもので、家具屋さんに特注したら恐らく5万円は軽く請求されるのではないかと想像します。 以上の内容を依頼主に確認してから製作に入りますのが、次回にはその様子をお伝えできるでしょう。



2004/02/04

製作その1

依頼主からのOKの返事とシナ合板が配達されたのでようやく製作開始となりました。 今回は板取りの関係で予め切断してもらうことなく3 x6サイズの18mmシナ合板をそのまま納入してもらったため、場所塞ぎ防止のため本体から製作開始しました。

翔265による手引き切断も同時進行しているおもちゃ箱での切断で忘れかけていた勘を取り戻し、0.3mm以内の誤差で切断できるようになり特に問題もなく終わりました。  殆どの作業が他のテーマで詳細解説しているものですので写真共々詳細は省いてご紹介してまいりますが、基本的にはネジによる締結を極度に避けた組み方をしています。 その理由は重過重となるものではないことと外観最優先ということですが、この為に自作のクランプがフルに活躍することになります。

今週は本体の基本組立てまでで5枚の板の貼りあわせだけですが、ひずみ発生や直角出しの精度はこの段階で決まってしまい後での修正は」出来ません。 切断の精度でほぼそれらは決まってしまいますから、切りっぱなしで組み上げるのではなくカンナで慎重に調整してから組み上げることが肝要です。  自画自賛ながら組み上げ後の各部の寸法は設計値に対し0.5mm以下の誤差、角度の狂いは50cm0.5mm以下に納まっています。 この辺は人の為に作るわけですから特に妥協を許さず進めています。

それらの様子は以下の写真をご覧ください。

手引きノコで切り出した本体の部材。 左上だけは天板となる集成材で、残りは18mmシナ合板。 全て手引きノコ翔265により切断しその後カンナで調整し直線、寸法、直角の精度を確保しています。

木ダボ接合の為の穴あけとスライドレール本体側を側板に固定し終わったところです。 接合の主役は木工ボンドです。

2枚の固定棚の片方を木ダボ、木工ボンドで側板に取り付けました。

更に反対側の側板を同様に固定棚に接合します。

そっと作業台まで運んで立てて自作木製中型クランプで、固定棚の位置2箇所を挟み締め上げました。 この時直角の確認調整、歪みの除去等の調整をしておきます。

接着剤完全硬化のため一昼夜寝かせた上で上板を載せてライティングボードも挿入してみたところです。 各部の問題は無さそうです。

ライティングボードはスライドレールを固定すれば装填可能ですので試してみました。 収納位置の状態です。

こちらは引き出したところ。 板だけの引出しですからもう完成同然ですが、筆記用具入れの二次加工がまだあります。



2005/02/25

製作その2

なんとまあ風邪の為に3週間も間があいてしまいました。 自分のものならいざ知らず依頼されているものですから完成を急ぎたいところですが、ノコギリ引きの勘が完全に戻っていないこともあり、まだ加工組立作業の一部が残っていますが、完成後のフォルムがどのようになるかをご覧いただけるところまでは終わっています。

今回天板の加工において周り縁を取り付け集成材木口のざくざくした余り美しくない部分を覆う加工をしていますが、その作業ではトリマー無しで大変シャープな直線と滑らかな曲線を加味した成形を施しています。 使った道具はカンナとヤスリだけですが、目論見どおりの外観になったと考えています。

また外観を大きく左右するツマミにはアルミをU字型に成形したシルバー色のものShopで販売している物です。)を使用していますが、全体的にシンプルなデザインの中でこれまたきらりとしたアクセントになっていると思います。

作業の中で他のテーマで詳しく説明している部分は省いておりますので、そのつもりで以下の写真をご覧ください。

天板の集成材を木ダボを使いながら本体に接着しました。 密着度を高めるためにまたまた中型木製クランプを使っています。

クランプが集成材に密着している部分のアップです。 ここに見える集成材の木口は綺麗でないので更に加工します。

引き出しを構成する枠を12mmシナ合板から切り出しました。 寸法精度は切断後に±0.2mm程度までカンナで追い込んでいます。

36mm隠し釘で圧着保持しながら接着した枠。 左右がレールの取り付けられる側です。

右下角のアップ。 言うまでもありませんが、角の直角度は非常に大事です。

継ぎ目の僅かな出っ張りを替刃式ヤスリで平らにしました。 丁寧な加工が仕上がりに寸法精度となって効いてきます。

底板を接着。 22mm隠し釘で圧着保持しています。

底板は設計値より1mmずつ大きく切断しているので、このように僅かに出っ張っています。

2時間後隠し釘を落とし底板の出っ張りを替刃式ヤスリで落としました。 更にレールが取り付く角(矢印)を軽く落としました。(レールの馴染みを良くするため。)

引き出し側レールを固定して、本体に収めてみました。

矢印の先の隙間を見てください。 実はライティングボードの幅は設計値より1mm近く幅が短いのですが、この2段式レールの場合隙間の広がりで逃げてくれるので致命的な失敗には繋がりません。 このレールの使いやすいところです。

本体底の部分です。 一番下の引出しはレールが無く床の上を滑らせるだけであることが判ります。 後ほどこの引出しの底には敷居スベリを貼って傷付き防止とします。

前板は木目横方向で完全に連続させるため、大きな18mm合板から切り出します。

こちらは切断後で左が上になりますが、引き出し前板3枚、扉、下の引き出し前板と連続します。

扉となる板に全被せスライド蝶番を2個取り付け所定の位置に固定しました。 更に天板の周り縁を米栂の板から切り出し貼り付けました。

周り縁は左右手前の3方で、接着剤で固定ですが、隠し釘では穴が目立ちすぎるので仮釘で圧着保持しています。

左手前のアップですが、ソーガイドを使って45度に切断し突き合わせてあります。 周り縁は天板面より1mm低くし変化をつけました。

2時間後に仮釘を抜きカンナと替刃式ヤスリM-20GPで成形しました。 あたかもトリマーで仕上げたかのような感じになったと思います。

前板の仮固定です。 ライティングボードは6φ木ダボ2本併用で接着しますので、ボードの木口に穴をあけた後マーキングポンチを嵌めこんであります。

その上に前板を押し込みますが、Shopで売っている30cm曲尺(厚み1mmにビニールテープを巻き1.5mm厚としたものを上に挟み、隙間を所定の値にしています。

木ダボを挿し込みライティングボードのツマミ固定穴位置を使い25mmスレンダースレッドネジで仮固定します。(接着剤は使わない) その下の前板を所定の隙間を取りながら当ててツマミネジ穴を利用して仮固定します。(これも接着しません。)

同様にして全ての前板をつまみ固定穴を利用し仮固定して、隙間が均等に出ていることを確認します。 この調整が出来栄えに大変影響しますので、念入りにしたいものです。

OKとなったら、それぞれを引き抜いて、引き出し内側から25mmスレンダースレッドネジ2本で固定します。 そしてツマミの取り付け穴に締め付けたネジを緩めて、の貫通穴をあけてツマミを固定します。

こうして仮固定が終了した電話台の上部です。

最下部の引き出し前板は12mm合板から切り出した2枚を貼り合せて引き出しに接着しますが、これはまだあててあるだけです。

最上部のアップ。 全体的にシンプルなデザインの中で、U字型のツマミと天板の縁の丸みや段差が適度なアクセントになったと思います。

加工・組立てがほぼ終了した電話台。 残る作業は木口テープ貼りとライティングボードの筆記用具トレイ部分、そして裏板貼りとなりました。 そして塗装が済めば完成です。





2005/03/04

製作その3

このテーマの最終回ですが塗装に入る前に気が変ってライティングボード部分を作り直しました。 何故そのようなことになったのかと言うと、構想として初期の段階からライティングボードの左端に筆記用具のトレイを仕込むつもりでいました。  そしてその方法として市販のプラスチッケ製のトレイを購入しライティングボードに穴をあけて嵌め込もうと考えていたわけです。 そのようなトレイは100円ショップも含めて適当な物があるだろうとたかをくくっていたのですが、あにはからんや適当な物がどうしても見つからないのです。

そこで考え方を変更しトリマーでトレイを削り込んでやろう!ということにしたのですが、シナ合板はこの目的には最悪で、断面や彫りこんだ底の面はかなりみっともなくなります。 幸い18mm厚の集成材があったのでこの部分を作り直し!というのが気が変った経過です。

これは私の拘り(トレイ無しだと筆記用具を載せたままでは後ろに転がり落ちる心配がある!)が最も大きい理由ですから、ここまで面倒なことをしなくても良いとは思います。 簡単には彫りこむのではなく細い棒で枠を作って貼り付ける手もあります。

そんな拘りを最終段階で持ちましたが、木口テープを貼り塗装前のペーパー掛けを済ませニス塗り2回塗りで無事製作は完了しました。

ニス塗りではステインによる着色のステップを入れず、チーク色着色ニスを薄くして1回目の塗装としました。 これは依頼主の色の好みがかなり薄いところにあったためで、単に薄め液で薄くしたのではニス成分が少なくなりすぎるので、チーク色のニスに同量の透明つやありを加えて攪拌した後に薄め液を10%加えるという方法で調整しています。 また2回目はつや消しクリヤーを同様10%の薄め液を加えて使いました。

以上の中でトリマーによるトレイの加工(窪みを削りだす!)に関しては、初めてのチャレンジですのでこの方法がベストとは言えません。 本格的にはトリマーを逆さに固定したトリマースタンドの利用が順当でしょうがそのような物は無いので、2種類のトリマービットと即席のジグとも言える切削ガイドを材料と共に作業台にネジ止めしてやりました。  出来栄えは完璧とは言えませんがまあまあの感じにはなってると思います。

それら最後の作業の様子は以下の写真をご覧下さい。

切削ガイドがないと正しくくりぬくことが不可能ですので、トレイのエッジから39mm離れた所にトリマーの台座を沿わせるガイド枠を取り付けて12mmU溝ビットで外周を彫りこみます。

次にガイド枠を8mm内側に寄せて再固定し、ビットを15mmストレートビットに交換して底を平らに削り取ります。(かなり慎重に作業しないとなりません。)

薄く見えるトレイ枠の線から39mm離れた位置に端材の棒をガイド枠として固定しました。 これはトリマー台座が90mm幅でトリマービット径が12mmから計算したものです。

12mmU溝ビットで先ずトレイの外周を彫り込みました。 深さは8mmです。

中のほうもU溝ビットで削ってみましたが、このように底は平らにするのは大変です。 そこでガイド枠をトレイ外周から31mmの所に移動しました。8mmずつ移動したことになります。)

そして15mmストレートビットに変えて(彫りの深さは8mm。)底の部分を削り落としました。 先ほどのU溝ビットとの境目の部分に僅かな段差があり、底面も完璧な平面にはなっていませんがまずまずの感じです。

#60ペーパーで段差を落とし、更に#120ペーパー、#240ペーパーと研磨して視覚的には滑らかで平らな底になりました。(指で触ると完全な平らにはなっていないのですが!)

作り直したライティングボードを取り付けました。 筆記用具はこのように納まり、転がり落ちることはなくなります。

今回使った3種類のニス。 左からチーク色、つやあり透明、つや消し透明で、1回目はチークとつやあり透明を等量混合し10%の薄め液を加え、2回目にはつや消し透明を使います。

試し塗りの結果で、左がメーカーサンプルで下の細い帯状が1回目、その上が2回目です。 右は今回混合したニスの1回塗りで、かなり薄くなっていることが判ります。

1回目の塗装が終わった様子で、塗面積は大きくないので短時間で済んでいます。

やけに光っていますが、これはまだ表面が濡れている状態のせいです。 1回目ではこれほどの艶は出ません。

左がシナ合板に塗った物、右はライティングボードに使ったメルクシパイン集成材で、木材の色の違いで同じニスを塗ってもこんなに色が変ってしまいます。

トップボードはラジアタパイン集成材ですが、こちらもかなり着色濃度が上がりました。

1晩寝かした後#400ペーパーで軽く研磨してつや消しクリヤーを塗り6時間寝かせて完成。 前板を最終的に木工ボンドとネジで固定しました。 大変シンプルな外観と白木に近い薄い着色がポイントになっています。

左真横から見た所。 合板の木口にはシナの木口テープを貼ったので、ムク板のように見えます。

丈夫のアップ。 天板を見るとつや消しとは言ってもニブーイ艶があります。 ツマミSP100シルバー)もこのデザインと色調にはぴったりだと思います。

天板角のアップ。 滑らかな曲面がシンプルなデザインの中で変化とアクセントになっています。

最上段の引き出しのライティングボード。 筆記用具とメモ帳などがこのように置いたまま閉じることが出来ます。

その下3つの引出しと本棚部分をあけたところ。 これはかなりの収納能力になります。

底部に仕掛けた引出しはいかにも引出しがあります!という感じにならないようツマミは板を切って貼ってやりました。
普通紙使用のFAXのため、コピー用紙ひとしめ(500枚)が納まります。

依頼主のお宅での設置状況。 明るい暖色系色調のダイニングキッチンの一角です。 電話台の明るめの仕上げがなるほど旨く溶け込んだように思います。



最後に一言申し上げると、ライティングボードの窪みの加工を除けば、特殊な道具や工具は一切使わずに市販されている家具に充分対向できる出来栄えのものが作れます。  また家具の持つ基本機能を全部含んでいますから(スライドレールによる引出し、スライド蝶番による扉、木口を綺麗に仕上げる木口テープ貼り等)、ここで使ったテクニックは大型の家具にも応用できます。
これらを踏まえて設計手法や手順をもう一度ご覧いただければと思います。
----- 完 -----

 
  
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