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屋外用作品への配慮
2005/05/20

屋外用作品への配慮

屋外用の工作物は屋内用の工作物に比べると精度をとやかく言わなくても実用になる点はあるものの、屋内用では問題にならない充分な配慮が必要な部分もある  そしてそれらの配慮によってより長期間使えるものに出来る。 そこで屋外用に廉価で使いやすいツーバイフォー、ワンバイフォーの材料を使った時の配慮点について解説してみたい。


1.反りの問題

市販されているツーバイフォー材、ワンバイフォー材の乾燥度合いはあまり良いとはいえないようである。 乾燥度が不十分であると製作した後に太陽の直射日光に晒されて乾燥が進みそれにつれて材料の購入時にはなかった、或いは目立たなかった反りが発生する可能性は非常に大きい。 これについては十分乾燥させて出た反りを削り落としてやる完成後反りが出てきたら分解して反りを軽減するような対策をして組み立てなおす反りが出ても問題のない構造を考える、というのが対策法だが、最後の反りが出ても問題のない構造を考えるというのはかなり難しい高等戦術で、前の2つがアマチュアにとってはやり易いソリューションになると思う。

 対応策の前に反りのメカニズムを簡単に説明しておこう。
 左の図の左は購入した時には全く反りが出ていなかった木材
 の木口を表す。 ところで図に示したように年輪の凸側の面を
 木表、凹側の面を木裏と呼ぶ。

 丸太の状態で表面側であった面が木表、中心側であった面
 が木裏となる!と考えると良い。
 こうしたときに乾燥が進むとこの板はどのように反るかと言うと
 必ず真中のように木表が凹むように反ってくる。

 その理由は丸太の周辺に近い方が含水量が多いのだが、
 水分の減少に伴いより多く収縮するためである。
 別な見方では年輪の曲率半径が大きくなる方向に反る!
 と考えても良いだろう。

ところでベテランの大工さんによると板を貼る時には必ず木表が表面になるように貼るのが正しいそうである。 なぜそうなのかについてはとうとう教えてもらえなかった。 ご存知の方がいたら是非教えていただきたいと思う。

木表が表面に来るように貼ると図のように反ってくるのだが、こんな反りを軽減する方法のひとつとして右のように予め木表に年輪と平行に溝を切ってやる方法がある。 但し実際には電動トリマーを使わないとこの溝を切り込むのはかなりの手間になるので、一般的とは言いがたいかもしれない。

理想的な反りを減少させる方法としては、買ってきた材料を直ぐに使わないで乾燥させ真中の図のように反りが出きってから板を削って平らにすればよく、この場合更なる反りの出具合はかなり減少するが、木材を買ってきてすぐに製作とはならない煩わしさが残る。
山小屋風の郵便ポストを作った際にはこれに準じたやり方をした。 方法としてはかなり屋外で寝かされて反りが出きっていると思われた荒材を購入し自分で板の両面を削って使った例だ。 板を削る手間は掛ったが製作依頼された方によれば、その後の反りは出ていない模様である。


多数の板を貼って扉を作る場合など、1枚1枚の板の僅かな反りの集合が扉の捩れになることがある。 板の反りが原因である場合には(角材などでは困難だが)、一度ばらしてしまって反りで隙間が出る部分に何かを挟むか、反りで出来た隙間を残すようネジを締め直せば、扉など大きな面の捩れを軽減することは可能である。 上の図はその辺りの考え方を示しているが、ばらした時に木表の反りの部分を削ってしまえば更に良い。

この方法を取る時にはネジを緩めて解体できることが条件になるので、エポキシ接着剤で接着してしまうような場合には応用できない。 メリットとしては木材を買ってきていきなり製作に入れ、実際に反りの出具合を確認してから問題個所だけを修正できる。
この方法は私が良くやる方法で、再組立てする前に再塗装も施してしまえば木部の保護も強力になる。


2.耐久性を高める配慮

屋外用工作物の耐久性を決める要素には温度に起因するもの、直射日光に起因するもの、虫害に起因するもの、そして水濡れに起因するものがあるが、中でも水濡れに起因する問題は最も重要である。 しかも水濡れ問題があるとそれは温度や虫害にも密接に関連しているので尚更である。 極端なこと言えば水濡れ問題を解決できれば、屋外工作物の耐久性は実用上問題なくなるといって良い。

その水濡れに対する耐性を増大させる最も効果的な方法は塗装であり、屋外用の塗料の場合防虫剤も入っているので一挙両得と言える。 但し屋外用塗料とはいってもピンキリであり、どの塗料でも同じような効果があるわけではない。 なかでも水性塗料か否かはかなり大きく、水性塗料を使った場合は1年も持たない場合すらありうる。

水性塗料は環境に優しい人体に優しい刺激臭が少ない、などとは言っていられない。 何しろ直射日光で容易にひび割れを起こしやすく物理性能の悪い塗膜では長期間の木材の防腐・保護効果は期待できない上に、下手をすると油性塗料よりも高いときているからだ。 (セールストークに支えられているだけの実用性のない塗料だと思う。 実際の粗末な有様は後ほどご覧頂きたい。)

ところで塗装すれば木材を保護する効果は高まるものの木材の水に対する特性を考えて構造や設計を工夫すると更に耐久性をアップできる。

 左の図は板を表したものだが黄色で示した
 面の部分、木口と呼ばれるピンクや緑の部
 分と3つに分けた時に、水に対して弱い部分
 はどこだろうか?

 答えはピンクの部分であり、黄色の部分と緑
 色の部分はあまり差がなく何れもピンクの部
 分よりも耐性がある。
 その理由は木材が含む導水管にある。
 木が生きて育つためには地中から水を吸い
 上げて葉っぱの部分で空気中の2酸化炭素
 と光合成を行う必要があるのだが、この為に
 沢山の導水管が根っこ → 幹 → 枝 → 葉っ
 ぱへと水を送るために存在している。

導水管は木を切り出した後でも細いパイプとして存在し、毛細管現象により大変水を吸い上げやすい。  ピンクの部分は木の断面部分であり導水管の切断面が密集している部分で黄色や緑の部分と大きく構造的に異なる。

 従ってこの面が地面に接していたり雨で濡れ
 て乾燥しにくい状態におかれると、他の部分
 よりより早く木材内部に水が沁み込みやす
 く、腐ったり高湿度を好む害虫、カビなどに
 犯される可能性が高い。

 よってピンクの面を地面に直接触れさせな
 い、或いは触れさせても接触面積を抑えると
 か乾燥し易いような構造を考えると良い。
 具体的な構造例としては左の図のようなもの
 が考えられる。

 下に石を挟むのは組立て後でも出来る簡単
 なことだからぜひともしておきたい。
金属棒を打ち込む方法は太い建築用のステンレスボルトをボルトより若干細い穴をあけた後で捻じ込めばよい。 硬い地盤の上に置く場合には有効な方法だし捻じ込み量を調節すれば斜面でも使える。 導水管の断面部分が地面に触れないように横木を固定する方法は、2本足工作物の倒壊防止の役目も果たし有効だが、横木が地面に接触する面積を少なくすると更に良い。

 以上は地面に接触する部分の配慮だが、そ
 れ以外の部分でも左の図のような構造上の
 配慮は腐れ防止に効果的だ。

 金属加工は面倒だが木口が上を向いている
 部分に、薄い銅板やステンレス板(0.1mm以
 上あれば十分)
でキャップを作って被せてや
 れば完璧だ。

 また板であっても水に強い面で覆ってやる方
 法も考えられる。

 複数の板を水平に貼る時には隙間なくびっし
 りと貼るのは、板と板の間に水が溜まってい
 る時間が長くなり腐りやすくなるので、若干
 の隙間を設ける方が良い。
 更に水平面を少なく出来れば板の上に水が
 溜まったままとなるのを防止できるから更に
 良い。

実際には上記の対策を厳密に守るのは難しい場合が多いが、構造上少しでもこれらの配慮をすることにより次に述べる塗装による耐性アップ効果が増大することは間違いない。


3.塗装について

既に塗装の重要性について前項にて簡単に触れてしまったので、更にグタグタと述べるよりも私がここ数年で作った作品の塗装テストの結果をお見せしようと思う。 以下のテストはあくまでも定性試験であり、テスト期間が同じではなくしかもサンプル数はそれぞれひとつしかないから、それらの結果で総てを語るのは乱暴そのものだ。  しかし傾向値としての何かが出ているのは間違いないので、そのような観点でご覧頂きたい。

テストに使った作品は以下のとおりだが詳細及び完成当時の色などはそちらの解説を参照されたい。 また午前9:00に撮影した関係で全般的に赤味が強い傾向にあるのをご承知おき願いたい。

  製作テーマ名 製作年月 使用した塗料
1.プランターボックス1 2002年6月 某社の屋外用ステイン系油性塗料
2.花車 2003年2月 某社の屋外用ステイン系水性塗料
3.プランターボックス2 2004年6月 和信ペイント屋外用ステイン系油性塗料
4.物干し用収納庫 2004年7月 和信ペイント屋外用ステイン系水性塗料
4.園芸用作業台/収納庫 2004年8月 和信ペイント屋外用ステイン系油性塗料

プランターボックス1
今回の中では最も経過期間が長く3年経っているが、製作1年後に実は塗膜が傷んでいる様なので再塗装しその後2年ほど経った。

元の色より黄色味が失われているようで、塗膜の傷みはかなりありそうだ。

上面はこのようにひび割れを起こしており、再塗装するのであれば一度塗膜を剥がさないとならないだろう。

油性塗料で1年後に再塗装した割には塗膜が弱そうで私としては不満足な結果である。

プランターボックス2
こちらはほぼ1年を経過したもので、和信ペイントのガードラックを使用。 僅かに退色感があるが塗膜の状態は良好なようだ。

艶は殆どないのだが、細かなひび割れなどが発生していないため、木材保護は未だ有効と見てよいと思う。

どの角度から見ても塗膜が痛んだ様子はない。 プランターボックス1の場合1年で傷みを発見したのとはかなり違う。

塗膜の状態を見たくて強拡大の1枚。 退色を除けば昨日作ったような感じだ。

花 車
こちらは2年を過ぎた水性塗料で仕上げたもの。 1年後にひび割れを発見したので再塗装をしたのだが、こんな距離から見ても塗装の傷みは激しく製作当時の面影はない。

塗膜表面は白っぽくなり擦ると簡単に削り取れてしまうくらい傷んでいる。

細かなひび割れが横方向にかなり見える。 プランターボックス1ではここまで傷んでいない。

後部から見たところだが、隅に見える白っぽいのはカビのようだ。 防腐効果が殆どないのだろう。

園芸用作業台収納庫
製作後1年近く経っており和信ペイントのガードラック使用だが、ほとんど変化なしといってよい。

そりの出やすい天板部分にも変わりはなく無論ひび割れや塗膜傷みも見つからない。 白っぽく見えるのはここに乗せていた植木鉢の底の土。

扉周りにも変形はなく全体として再塗装の必要性はないようだ。

天板の木口のアップで慌てて木裏を表面にして固定されているが反りはない。 沁みこんだ塗料の防水効果と塗膜にひびが入っていない証拠だ。

物干し用収納庫
こちらも1年近く経過しているがテスト的に和信ペイントのガーデンエコカラーという水性塗料を使った。 遠くで見ればどうということないが?

扉の表面が白っぽくなり塗膜がかなり弱くなっているのを発見した。

屋根の左端は最悪。 反りのサンプル(木表が凹むように反る)みたいになってしまった。 板のひび割れがかなり進んでいる。 何のための塗装かこれでは???

それを上から見たところ。 そこここの塗膜が剥がれ木肌が露出している。 この部分の板を入れ替えて再塗装しないとならない。

如何だろうか? 厳密な比較とは言い難いが私の感想としては、

 ・ 水性塗料は仮に同一メーカーの製品であっても油性塗料に比べかなり劣ると言わざるを得ない!

 ・ 水性塗料の塗膜は1年も持たない可能性がある。(上の2つの例は何れも1年以内にひび割れを生じている。)

 ・ 油性塗料でも屋外環境は大変厳しく2-3年で保護効果がなくなってしまうと思われる。

 ・ 和信ペイントのガードラックは退色が見られるものの、塗膜はかなり丈夫なような気がする。 現在1年経過の状態
   なので更に経過した時の観察を続けるが、過去に使った某社の油性ステイン系塗料より物理特性が良いのを確認
   している。


といった所だろうか。

以上をご覧になってまだ屋外工作物に水性塗料を、「乾燥が速いから!」「扱いが楽だから!」「刺激臭がないから!」などの理由で使われる方が居たとしても私はとやかく言わないが、ここにひとつの事実が間違いなくある。

上記中プランターボックス2園芸用作業台/収納庫に使った和信ペイントガードラックは、三共製薬とのコラボレーションで開発した防腐剤を含む屋外用油性ステイン系塗料で大変良好な結果を得ているため、mini-Shopで扱っており是非ともお試し願いたい。

こう書くと、「塗料を売りたいためにそれを強調するような解説を加えたんだ!!」と考えられる方が出てくるかもしれないが、話は逆だ。 過去数年色々試してよい結果が出たのと入手性が悪いためにmini-Shopで販売するようにしたまでで、因みに同じ和信ペイントでも水性タイプの塗料は請われても販売する気はない。 (こちらから買い物かごに移動できます。)

但し刺激臭がかなりあるので塗装作業は必ず屋外ですることと、防腐効果が高いということは生体(犬、小鳥、ウサギ)への悪影響がある可能性があるため、それらの小屋の塗装にはお奨めできない。



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