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バスレフ型トールボーイスピーカー
   
2003/10/31

 構 想
 私の娘からスピーカーシステムを作って欲しい!との要望がありました。 聞いてみると今まで使っ
 てきたスピーカー(口径13cmの2Way)のエッジがぼろぼろになり使えなくなってしまったそうです。
 ぼろぼろになったエッジはウレタンフォームのものでかなりのスピーカーに使われていますが、10年
 前後で必ず駄目になる部分です。

 ほい判った!と答えたものの、「設置面積が小さい方が良い。」 「高さは90cm位まであっても良
 い。」と、トールボーイスタイルを示唆しているだけで、無論使うユニット、口径、構成は全てお任せ
 です。 さあどうしたものかと検討開始しました。

 娘は趣味でアルトサックスを演奏している関係で聴く音楽の多くはブラス系の楽器が主となったも
 のが多く、カテゴリーで言うとジャズが多いそうです。 ということは、中高音のメリハリが重要にな
 ってくるはずですが時にはオーケストラを聴く事もあるのでかなり使うユニットの選択は慎重にする
 必要があります。

 先ず口径ですが聴き方が大音量ということはなく設置場所をかなり気にしているので小口径とする
 ことにし、12cm辺りのユニットに収まりそうです。  12cmというとかなり小口径ですが、最近の
 ユニットはミュージックパワーで40-50Wの耐入力がありますから一応問題なさそうです。
 入手性が良いのはFostexに限られますが、候補となりそうな口径12cmを調べてみると次のよう
 になりました。

モデル 定価 口径 タイプ 能率 耐入力 特 徴 f0 m0 Q0
FE127E \4,500 12cm 全域型 91dB/W/m 45W 防磁対策、布エッジ 70Hz 2.9g 0.43
FF125K \4,200 12cm 全域型 92dB/W/m 50W 布エッジ 70Hz 4.0g 0.25
FX120 \10,500 12cm 全域型 89dB/W/m 30W バイオセルロース、ケナフ振動板 65Hz 5.3g 0.46
F120A \16,500 12cm 全域型 89dB/W/m 30W アルニコマグネット 65Hz 4.7g 0.44
FW127 \8,500 12cm ウーファー 87dB/W/m 50W 防磁対策、PPコーン 45Hz 7.0g 0.35


一覧表の中で特徴の右側はそのスピーカーの性能をあらわす定数でボックスの設計に必要な数字で、一般的に次のような傾向があるとご理解ください。

    f0: 最低共振周波数の値で数値が低い方が低音の再生能力が高くなります。

    m0: 振動板の実効質量でこれが大きいとf0が下がる傾向になりますが、能率も下がります。

    Q0: この数値が小さいと低域の周波数特性はだら下がりとなり、小さな箱でも低音を再生しやすくなります。

さてどれを選択するかは結構難しい作業です。 

ここには掲載しませんがメーカー発表の周波数特性カーブを比較すると、FF125Kは最もハイ上がりの傾向にあり、中興音がかなり強調されそうです。 ブラスには良いかもしれませんが、オーケストラにはどうかと思われます。  FE-127Eもその傾向がありそうですが、FF125Kほどではなさそうです。

オーケストラを重要視(帯域バランスの良さ)を考えるのであれば、F120AFX120FW127辺りが候補になりそうです。
箱の大きさから考えると、FX120F120AFE127Eを選ぶと大きめとなり、希望のサイズでは箱が小さすぎることになるかもしれません。

設置場所がテレビの横なんてことになると、防磁対策のされたFE127EFW127ということになります。

予算を押さえようというのであればFF125KFE127Eということになり、予算度外視であればF120AFW127ということになると思います。FW127は単体では安いがトゥイーターとネットワークを必要とするのでトータルでは最も高くなります。)

使用ユニットを絞り込むのは簡単に出来そうにないので先にバスレフ方式で設計してみることにしました。  当初はこれほどユニットの選択に迷うとは考えられませんでしたので、漠然とダブルバスレフ方式を採用しようかと考えたのですが、ユニットのパラメーターが変化した時の設計定数の変化も多いので、より単純なバスレフタイプに変更しました。(バスレフタイプとダブルバスレフに関する概要は、巻末にて説明しています。)

想定するボックスサイズを外形で、160 x 160 x 900mmのトールボーイと仮に決めます。  使用する材料を18mm厚の集成材とすると内容積は、124 x 124 x 864mm = 13,285mm3 (13.3リットル)となりますが、ユニットの体積、低音輻射のポートの容積、吸音材の体積を差し引くと約10リットル程度まで減少します。

そこで内容積を10リットルのボックスとして上記のユニットそれぞれのベストなポート定数(理論値)を計算してみました。 簡単に比較できるようポートは60φの円筒型としています。 それらの一覧は次のようになります。

モデル 箱の容積 ポート共振 f ポート直径 ポート長さ 備  考
FE127E 10リットル 65Hz 68mm 168mm 65Hz迄再生可
FF125K 10リットル 100Hz 68mm 54mm 100Hz迄再生可。中低音にディップが出来る?
FX120 10リットル 56Hz 68mm 237mm 56Hz迄再生可
F120A 10リットル 57Hz 68mm 228mm 57Hz迄再生可
FW127 10リットル 45Hz 68mm 384mm 45Hz迄再生可だが中低音にややディップが出る?


計算結果を見るとFF125Kだけ大きく離れた値が出ています。 実はこのユニットはバックロードホーン用に向いた性格を持っているスピーカーであるためで、バスレフタイプにはあまり適していません。  ということで、FF125Kは候補から外すことにしました。

残る4機種から絞るのも良いのですが、我が家にはAVサラウンド用及び書斎でのBGM用にFW127を合計7本使っています。 従って追加出費無しにFW127は無条件で試せるので、FX120FA120AFE127Eの何れかの選択になるといってよいでしょうが、無駄な出費はしたくないのでもう少し悩むことにして、箱そのものを複数のユニットに対応できる構造とすることにし、最後の最後に使用ユニットを絞り込むことにします。

具体的にはポートの長さが可変になればよいわけで、一番短いFE127E用の168mmから一番長いFW127用の384mmまで可変出来れば良いことになります。 実際には理論値に対して若干短くしたり逆に長くしたりしたほうが聴感上良いこともありますから、ここでは100-400mm位を想定することにします。


設 計
基本構想が固まりましたのでボックスの設計を開始しました。 
(下の図をクリックするとフルサイズの図面がご覧になれます。)

 高さ936mm、幅/奥行き共に156mmのトールボーイタイプとし高さにより内容積を稼いでいます
 が、この高さでソファーに座った時スピーカーユニットの高さが耳の位置よりも若干低くなるという
 意味を持っています。  台座の大きさは幅210mm、奥行き240mm位となるでしょうから設置場
 所には困らないと思います。

 材料は18mm厚集成材を考えています。 問題の構造ですが、パスレフポートの開口を裏板に出
 すことにし、ポート断面の幅は120mm高さが30mmとしました。(先ほど計算した時のポート直径
 68φと同一面積になります。)
  ポート幅120mm = ボックスの内幅となっていますので、もっとも
 簡単にポートを形成できます。 このポートは底板に沿わせて垂直に立てた構造とし、その長さを
 変える事により共振周波数の調節をします。 計算上の各ユニットのポートのこの部分の高さを図
 示しておきました。

 このポートの縦の隔壁部分を裏板を外すことにより交換可能にしようと考えています。 こうしてお
 けば数種類のユニットに対応可能なボックスとなります。

 さてこの箱でポートがしめる部分の残りの容積を計算してみると、FE127Eの場合11.6リットル、
 F120A/FX120Aの場合11.2リットル、FW127の場合10.3リットルとなりました。
 ここから更にスピーカー自身の体積と吸音材の体積を差し引くとほぼ設計値に近い値になります。


2003/11/07

設計一部変更

バスレフのポート部分をどのように可変させるかについて暫し考えたのですが、縦の仕切り板を交換する方法がどうもややこしい構造になり、しかもいたずらに内容積を減らしかねないことになりそうで他の方法を検討した結果、現在ではホームセンターで容易に手に入る下水用塩ビパイプを使うことにしました。 

下水用の塩ビパイプには色々な内径がありますが、55mm径をここでは選ぶことにします。 パイプの肉厚が2mm位しかありませんから若干強度不足の感がしますが、これによる余計な共振があるのなら外側にコーキング剤でも塗りつけてダンプしてやるつもりです。 それでも心配ならば高水圧を扱う上水道用の塩ビパイプを使えばよいのですが、少々大袈裟すぎるような気がします。

 箱の裏板から内部で上を向くようにパイプを直角に折り曲げねばなりませんが、ここにはエルボと呼ばれる
 部品を使います。 (左の図をクリックしてください。)
 ノギスを使って採寸しエルボの断面を描いた結果、裏板面からエルボの中心を通る線の長さは縦のパイプ
 の継ぎ目まで77.6mm(赤一点鎖線部分)であることが判りました。 

 一方ポートの直径が変る為候補となる3つのユニットの設計値を計算し直した所次のようになりました。
 これらから77.6mmを差し引きmm単位に四捨五入した値がパイプの直管部分の長さ(赤字)になります。

モデル 箱の容積 ポート共振 f ポート直径 ポート全長 直管部分 備  考
FE127E 10リットル 65Hz 55mm 117mm 39mm 65Hz迄再生可
FX120 10リットル 56Hz 55mm 166mm 88mm 56Hz迄再生可
F120A 10リットル 57Hz 55mm 160mm 82mm 57Hz迄再生可
FW127 10リットル 45Hz 55mm 273mm 195mm 45Hz迄再生可だが中低音にややディップが出る?


 以上の計算結果を元に直管パイプの長さを3種類39mm、85mm、195mm)にまとめ、FX120F120A
 は平均値の85mmとして考える。)
、裏板にポートが取り付く部分の詳細はこちらのように変更しました。

 このL型のパイプポートは、385 x 120mmの裏板の一部を切り取った部分に嵌めこみ、この板を六角ボ
 ルトで固定することで取り外し可能とします。(図の濃い茶色の部分)  この板の部分を取り外した上で
 直管パイプ部分のみを抜き差しして調整するも良し、また数種類の長さの直管パイプを取り付けたユニット
 を作っておいて、ユニットごと交換という手もあります。 

 先ほど述べたパイプが余計な振動をするようであれば振動を押さえる(デッドニング)も容易に施せますし、
 上下方向に385mmの開口が出来ますから吸音材の量の調整も簡単に出来るでしょう。

 なにやら良いこと尽くめのようですが、裏板を取り外せる構造は隙間を作ってしまう可能性がありますの
 で、多目の六角ボルトでがっちり固定することと隙間を作らない丁寧な組立が必要ですが、それ程難易度
 の高い工作にはなりますまい。

 考えてみるにこのようなプラスチックパイプを曲げた構造のバスレフポートを昔JBLのスピーカーで見たことがあります。 だからといってこれが音の良くなる要因の一つになるかどうかは不明ですが、決して私のオリジナルでないことは確かです。



2003/11/14

製作開始 (第一楽章)

製作の様子をお伝えする前に最終的に購入した集成材についてちょっと触れておきます。
松の集成材にしようと決めていたもののどの種類の松にするかホームセンターで暫し迷いました。 数軒のホームセンターを覗いたのですが、パイン系の集成材としては、メルクシパイン(インドネシア産)ラジアタパイン(ニュージーランド)ロッジポールパイン(アメリカ産)が主力のようです。 

 メルクシパインとラジアタパインは節が見当たらず綺麗ですが、木目はメルクシのほうが間隔が狭く一見
 綺麗に見えます。 一方ロッジポールパイン集成材は小節がかなり目立ちます。 
 やっぱり節のないほうがいいかなあ!とメルクシに決めかけたとき、何でメルクシパインやラジアタパイン
 に節が見当たらないのか?と疑問になりました。  答えは簡単でメルクシ、ラジアタの両集成材は節の
 部分を避けた短い棒を貼りあわせているのに対し、ロッジポール集成材は長い棒(182cmでその間に節
 が必ず含まれる。)
を寄せ集めた作り方をしています。

ということは、木目の方向がばらばらな為カンナが掛けにくいとされる集成材ですが、木口にカンナをかけることは問題なく出来ます。 また貼りあわせた1本の棒の幅が44mmとメルクシパインの30mmより50%近くもあります。  ということは接着面は比較にならないほどロッジポール集成材のほうが少ないはずで(恐らく50%以下)、これは音質上もかなり効きそうです。  

どういうことかというと、過去に合成木材(合板、ランバーコア、集成材、チップボード、MDFなど)で音質の違いを調べてみた所、接着剤や合成樹脂の硬化剤の使用量が少ないものの方が音がよくなる傾向を示すという経験をしています。  その原因を追求・解明したわけではありませんが、よりムクに近い方(接着剤の量が少ない)がスピーカーボックス材料として音の響きがよくなるのではないかと考えています。

かような次第でロッジポール集成材に最終的に決めました。 この場合節に悩まされる可能性がありますが、何とかそれらは克服することにします。 ところで購入したロッジポール集成材は450 x 1820 x 19mmでした。 設計時には18mm厚として考えていたために再び設計図を修正、加筆した上で板取図を作成し縦引きだけはホームセンターで加工してもらいました。

その後の様子は以下の写真でご覧ください。

縦引きはホームセンターにお願いし、横方向をゼットソー8寸目で切断した全材料。 但しBDは未だ繋がったまま。

スピーカーユニットが決まっていないので、前面を除いて穴あけを要する部材をジグソーで加工しました。

EDを重ねて位置を調整しクランプで固定した上で、のドリルで止めネジの下穴を14箇所あけました。

クランプをはずしDの下穴位置に10φ深さ5mmの座繰りをしました。(ネジの頭が飛び出ないためです。)

その上でのドリルで貫通穴をあけます。

一方Eの下穴位置には7.5φの貫通穴をあけます。M5の鬼目ナット用に7.5φが最適な穴径です。)

M5 15mm鬼目ナットを六角レンチで締めこみます。 0.5mm程鬼目ナットの表面が沈んだ辺りがベスト。

EDM5 30mm六角ボルトで締結しました。 左に見える出っ張り部分は、Bに接合する部分です。

  その他の部材をこれから組み立てる位置に並べました。 下の丸穴にはエルボが、上のほうの四角の穴にはターミナル
  が取り付けられます。



2003/11/21

製作(第一楽章)の続き

いよいよ本体の組立てに入りました。 木ダボ14本ずつによる側版2枚の裏板への接合が最大の難所と想定して掛かりましたが、案の定でした。

一番の問題は木ダボ穴の位置が微妙にずれてしまう現象で、ボール盤で穴をあけるのとは違いハンドドリルで穴をあけると中心がずれやすいという原因からきていますから、多少の裏技と言うか荒業をも交えて対処するしかありません。 また組み始めてからエッ!という問題もありました。 側板が反っていて裏板に密着してくれないのです。 そこで持っている50mmクランプとハタ金それぞれ8本全てを使って何とか密着度を確保しました。  

この反りの問題は更に続き裏板接合後に確認したところ、前板が取り付け面の幅が中央では端よりも2.5-3.0mmも膨らんでいることが判りました。 対処法として前側の中央に板をはさんで接着し反りを強引に押さえました。 これで解決と思いきや後の作業中に一部が割れる現象まで出て抜本的な対策をすることになりました。 

  集成材の反りは割れたり貼りあわせ面が剥がれる原因になります。 これは湿気を吸ったり吐き出したりに伴う収縮によるとされております。 そこで万全な対策として、反りの原因となる吸湿性を押さえる(ニスの塗装)ことと、反りを機械的に押さえる(補強)の両面で対処することにしました。 この塗装は綺麗に仕上げるよりもニスが十分沁み込んで湿気を少しでも遮断してくれることを期待するわけですから、うすめ液を10%程度加えて染み込みを促進させています。

ニスが乾燥後前板を木ダボ24本で木工ボンドと共に接着しました。 木ダボの位置ずれから来る嵌め込みには先日作った大型クランプで解決しハタ金8本で硬化まで保持しています。  ここまでの所要時間約20時間で、平日の夜も使って何とか終了しています。

ポート固定板へのエルボ接着にはエポキシパテを使いました。 パテの名のとおり本来は深い穴などを埋めるのに使われますが接着力は無論ありますし、硬化後の目やせ(体積が減る現象)が出ないのと、通常の接着剤のように垂れることが決してなく隙間に詰め込むのも容易です。 硬化速度は遅く20℃で実用強度に達するのは5時間、カチカチに固まるには12時間以上かかりますので、慌てて作業することもなくエルボを固定できます。

スピーカーユニットは2WayのFW127FT27Dの組み合わせにして欲しいとの連絡がありました。 私にとっては随分使ったユニットであり新鮮味が薄いのですが、細身のトールボーイにした時の音色がどうなるかが楽しみです。 防磁対策が重要点ということでしたが、このユニットは明るく明快でバランスの取れた音色を出しやすく、曲を選ぶような事も少ない傾向にありますから良い選択だと思います。

ということで何とか音が出るようになるまでの作業は終了しました。 それらの経過は以下の写真でご覧ください。

DEに固定したままBにネジ3本併用で接着。 下側の横から見た写真はBDの境目が直角になっていませんが、外し易くするため意識してそう切断しています。

裏板上端に上板を固定する桟をネジ2本併用で接着しました。

裏板に底板の接着でネジ3本併用ですが底板は板厚だけ突出するので端材をあてがい位置を確認しています。

固定が終了した底板と裏板部分です。

次に裏板に上板をネジ3本併用で接着しましたが、直角が出なかったので端材で保持してあります。

側板に6φの木ダボ穴を14個あけました。 (木ダボ穴あけの詳細は、こちらを参考にしてください。)

上側のダボ穴8箇所に位置決めジグを挿し込み、裏板のブロックの穴位置を決めます。 その後一番右だけを残し、位置決めジグを外して下側の穴に移動します。

下半分の7箇所の穴位置決めを同様にしますが、左端のジグの位置は既に決まっていますからそれがずれないよう注意します。 


 註: このあと穴あけですが、ジグで決めた位置に正確にたくさんの穴をあけるのは難しく、これだけダボの本数が多いと
    穴の位置の僅かなずれがあっただけで嵌め込みが不能になることがあります。 従って裏いたブロックと側板にあけ
    た穴全てを、ドリルの味噌すり運動により僅かに大きくしておきます。 
    (これはダボ穴が少ないときにはやらない裏技或いは荒技?です。)



側板の木ダボ穴に木工ボンドを少し流し込み木ダボを穴の底まで打ち込みます。 裏板ブロックの木口に木工ボンドを塗り穴位置を合わせて押し込みます。

続いて反対側の側板に木ダボを打ち込み同様にして裏板ブロックを接合します。

50mmクランプとハタ金8本を使って密着度を上げます。 1箇所を一度に締めると歪んでしまったり材料が割れる危険性があるため少しずつ締めてゆく必要があります。

接合後側板の前側木口が2.5-3.0mm膨らんでいるのを発見。 対処法として端材を切って挟み接着しました。

 
バスレフポートとなるエルボをエポキシパテで固定しました。 あまり綺麗ではありませんが、隙間に完全にエポキシを詰め込みました。

こちらは表側。 エルボの端面はポート板と面一になっています。 はみ出たエポキシは後で削り取ります。


 エルボを固定したエポキシパテが硬化した後にスピーカーターミナルをネジ止めしようと捻じ込み出したらピシッ!!との
 音。 何ぞや?と覗き込んだところスピーカーターミナル取り付け窓の所にひびが入ってしまいました。 

 側板の反りを強引に矯正しながら接着した皺寄せが裏板縦方向の一番短いこの部分に来てしまったようです。  暫し
 善後策を考え取り敢えず液状の瞬間接着剤を流し込んでハタ金で締めて割れた隙間は密着しましたが、次に弱い部分
 が割れてくる危険性があります。 また湿度の変化による収縮で同様なことがどこにでもおきる可能性があります。

 そこであらかじめ考えていた吸湿性を押さえる内部塗装の前に、割れ止めの補強を追加することにしました。




上板と底板の木目と直角方法に補強の棒(計3本)を追加しました。

ターミナル板の上下にも木目と直角方向に補強板を2枚追加しました。

スピーカーの取り付け部分もやばいと考え、スピーカーユニットの穴をあけた後その横に棒を2本貼り付けました。

その上で内部は薄めたウレタンニスを十分に沁み込ませ、湿度変化による収縮を押さえようとしました。

2Wayであるためネットワークが必要ですが、市販の穴あき基板に必要部品をボンドG17で貼って裏側で結線しました。 (ネットワーク詳細はこちらです。)

出来たネットワークを箱の中に固定しました。 この位置はウーファーの真後ろになるので後からの取り外しも可能です。

台座を貼りあわせました。 厚さ38mmになるのでかなり分厚い感じになります。

同じような工程なので詳細は省きますが、木ダボ20本を使い先日作った大型クランプとハタ金8本で前板を貼り付けました。

   スピーカーユニットとスピーカーターミナルを箱に取り付けて台座を仮に固定し、第一楽章が終了です。

ユニット部のクローズアップ。 Fostex FW127FT27D の組み合わせ。

仮のセットアップがすみ、第二楽章に入る準備OKです。



2003/11/28

音のチューニング (第2楽章)

組立て終了した箱は割れ、剥がれ防止の為に当初考えていたよりも遥かに響きが押さえられたものとなりました。 例えば天板を拳で叩いてもあたかもコンクリートを叩いているような感じです。 側板も前後の板もカツカツと響きがかなり押さえられた音しかしません。 従って箱の不要な響きによる音質の劣化は少ないはずです。 逆に箱をうまく鳴らすことも難しい訳で、スピーカーユニットの音そのもので音質が決まる傾向が強くなります。

ということは、チューニングの段階でいじれる部分は、

   ・吸音材による箱内部の共振の抑制(ダンプ)。
   ・バスレフポートの長さを調節することによる、低音輻射の調整。
   ・ネットワークの定数や結線時の極性変更による調整。


の3点が主となります。 但しここで使ったネットワークは、同じユニットを過去に7セットも使った実績があるため、ウーファーとトゥイーターの接続に関する最適化の実験は十分にあるため、いじらないことにしました。 従って、吸音材の量と貼り付ける場所の選定、そしてバスレフーポートの調整だけを行いました。

 吸音材は特殊な物ではなく、建築用の粗毛フェルトです。 1m四方で\700.-
 で買える物ですから、スピーカーボックス用の吸音材として売られている物より安
 いです。  吸音材は箱鳴きを押さえる目的と内壁の対向面で起きる共鳴を押さ
 える目的の2つで使用するわけですが、前述のように箱鳴きの量は少なくしかも
 良さそうな響きですので、これを完全に殺してしまうのは決してよくありません。
 よって内部で発生する共鳴を押さえることに特化します。

 実際の所吸音材無しで鳴らした所、中低音の凄まじい共鳴音がポートから出てきていることが確認できま
 した。 幾つかのCDでこれを聴いてみた所、Dreams Come TrueLove Love Loveで出てくるバック
 の演奏で、元の楽器の音が判らないくらいの激しい共鳴音がプォープオーと出てきます。(私がスピーカー
 をチューニングする時は全てのジャンルの音楽を使います。)
 
 このCDを共鳴音ダンプのテストレコードとすることに決め、吸音材の量と貼り付け位置を調整しましたが、
 結果としては今回も、「対向面のどちらかにだけ吸音材を貼る。」という私の基本セオリーから外れませ
 んでした。  実は箱の横断面が正方形になっているため(音響理論上は余りよいことではない。)、相当
 吸音材を使わねばならないだろう!と考えていたのですが、片方の側板全面と前板のスピーカーユニット
 から下の部分、そして底の部分に貼り付けることによりポートから聴こえたプォープォーは消えました。
 更に他のCDで共鳴抑制効果を確認しながら、10時間近くユニットのエージングをしました。

次がバスレフポートの調整です。 Fostexのバスレフ型スピーカーの推奨賞ボックスには2種類あり、何れも6リットルの容積ですが、ポートのチューニング周波数は60Hzのものと70Hzのものがあります。 それに対し今回設計した物は容積が約10リットルと大きく、ポートの設計時に算出した共振周波数は45Hzとかなりの開きがあります。  過去の経験からすると予測としては低域の伸びたワイドレンジとなるものの、70-120Hz辺りのエネルギーが不足し低域の量感が不足する可能性があります。

てなことを考えながら、設計値のパイプ長(195mmとそこから50mmずつ短くした、150mm100mm50mmを切り出しテスト開始しました。 それらの共振周波数を略算した所、150mm48Hz100mm54Hz50mm63Hz、そして追加パイプ無しで75Hzとなっています。

 さてそれらのパイプですが、左の写真のようにチューニング中はエルボの外側に挿し込みます。
 何とも妙なスタイルになりますが、パイプの交換は楽に出来ます。
 色々付け替えて試聴してこれで良し!!となったら、ポート板を外しパイプを内側に挿し込みし直して
 ポート板を取り付ければ最終スタイルとなります。  板を組み合わせたポートの長さ調整は面倒なもの
 ですが、この方法であれば容易に納得行くまで調整を追い込めます。

 その後約80枚程のCDをとっかえひっかえ聴きながら、パイプを挿し替えて聴いているうちにこれは素晴らしいスピーカーが出来たということに気が付きました。 パイプを挿しこまない状態では中低音が盛り上がったというか男性ボーカルの下のほうまでかぶりが発生しボワーンというような感じの音ですが、パイプ長を長くしてゆくに従い低音がぐっとしまってきて、所謂低音が出ていますよ!!というような見せ掛けの物ではない感じに変わってゆきます。

設計値の195mmにしたときには流石に低域のエネルギー感が薄れてきてバランスが悪くなり、トーンコントロールで若干持ち上げたくなりますが、かなりの低域再生能力です。 音圧レベルは低いものの40-50Hzの低音も12cm口径としてはかなり出ており、本当の重低音の入っているレコードを聴いているとだんだん気持ちが悪くなってきます。(低音公害の一種です。)

娘がよく聴く音楽にオプティマイズするため更にパイプを替えて聴き込みましたが、最終的には100mmのパイプを使用することにしました。 チューニング周波数は54Hzということになるわけですが、Fostexの推奨ボックスとはかなり離れた仕様になりました。 このままでクラシック音楽を聴いてもワイドレンジ感の高い再生が可能ですし、かなりしまった低音ですがポップス系やジャズを聞いたときのパンチ力も相当なものです。

実際の所私がこれまで作ってきた推奨ボックス準拠の箱とは質的に格段に上であり、それらを全て作り直したくなった位のショックがありました。

音質上でバスレフポートのチューニング以外にも特筆すべき点がありますが、小口径の特徴がそのまま生かせたというか音像定位のシャープさが優れています。 これには箱鳴きが少ない点もかなり貢献しているはずですが、楽器一つ一つの音がかすみ無く分解しボーカルもやたら大口になりません。  箱作りではかなりてこずった部分もありましたが苦労した甲斐があったと実感しています。

 最終確認としてLeonard Slatkin指揮 Saint Louis Symphony Orchestraの組曲ペールギュントを
 聴きチューニングを終了としました。(レコードNo. Telarc CD-80048)

 (このCDはTELARC Records製ですが、短い演奏時間の中で極々繊細な音。 うっかりするとスピー
 カーが簡単に破壊される超ワイドダイナミックレンジ。 おどろおどろしい重低音。 などが、フルオーケスト
 レーションが本来求める帯域の広さ、バランス、滑らかさと共に確認でき、名演奏ということではなく音質テ
 ストにもってこいの一枚です。)




2003/12/05

塗装 その1(第三楽章)

予想外に高いレベルで音がまとまってしまったので再び日曜大工らしい作業に入りました。 最後の塗装と言うわけですがその前に下地作りをせねばなりません。 今回の材料が集成材ということで90度接合の部分に出来てしまう僅かな段差(手作りの場合この段差の発生を少なくするのは非常に困難!)を完全に無くしてしまおう。 という大きな目論見があります。

何をいまさらと言われそうなのですが、実はシナ合板を使っていたときにはこれが出来なかったのです。 というのはシナ合板と言う名はついているものの実体はラワン合板の表面に目分量では0.3-0.4mm位のごく薄いシナを貼った言わばシナの突き板なのです。 従って接合部に段差があった時にこれを完全に無くそうなどとカンナやサンドペーパーで削り出したら、あっという間にシナの部分は無くなってラワンの地が出てきてしまいます。 従って恐る恐る作業をしなければならなかったわけです。  集成材は厚み方向に関してはムクですからそんな遠慮はせずとも削り込むことが可能です。 但しカンナで削るのは逆目を作るだけですから、電動サンダーでということになります。

ということでめったに使わない極めて粗い#60のペーパーを使いやおら削り出しました。  そう言えば派手に表面を削るもう一つの理由があります。 それは接合面に僅かに沁み込んでいるであろう木工ボンドです。 TQWTの塗装のときもそうでしたが拭き取りきれなかった、或いはシナに沁み込んでしまった木工ボンドが着色できず白っぽい斑を作りましたが、今回もその可能性はあるわけで(目を凝らしてみても見えないのです。)、その部分を削ってしまおうと言う魂胆なのです。 従って削る量は測定できませんが気持ちとしては0.5-1.0mmの大きな量になります。  しかしそれは大変と言うことは決してなく2本の箱の段差取りに要した時間は2時間程で終わりました。

この研磨終了後には指で接合部を触っても段差は全く感じなくなっています。 削り量が多い所では1mm近くありましたので電気の力と#60ペーパーに敬服そのものです。 ところがその次に#120のペーパーに替えて2次研磨をしようとしたところ雨がぱらぱら!  そうです、ペーパー研磨は研磨屑が舞い上がるので屋外でするしかないのですが、雨が降ってきては続行不能です。

仕方なく材料・道具を家の中に入れて研磨屑が舞い上がらない手研磨で行こうと始めたのですが、これは非能率で全く駄目!! そして家内が外出した隙を狙って電動サンダーで強行。 少しでも研磨屑を吸い込んでくれるだろうと掃除機をフル運転し吸い込み口をサンダーの近くに置いて作業を進めました。 何とか家内が戻ってくる直前に作業は終わったものの後がどうなったかは想像ください。 リビングルームの床・壁・天井そして置いてあったもの総てを掃除せねばならない羽目になり、流石の家内もいささかご機嫌斜めとなってしまいました。

それから天気はぐずつき気味で12月だと言うのに台風まで接近してくる始末。 #240による仕上げ研磨をしてからでないと塗装に入れませんので、とうとう塗装は出来ずじまいでした。 よって以下の写真は#120の中間研磨が終わった状態ですが、技術の問題でなく電気の力で簡単に段差削りが出来ると言う例としてご覧ください。

横からクローズアップした前板張り合わせ部分。 接合面の段差は無い上継ぎ目がはっきりと判らない。

継ぎ目がはっきりと判る節が入った部分だが、集成材の継ぎ目に見えないこともない。 面はまだきめ細かさ不十分。

裏から見た最上部。実は裏板は0.2-0.6mm引っ込んでいたのだが、完全面一になった。

その一部のクローズアップ。 音響的に問題となる隙間は無論無くほぼ完璧だと思われる。

このような角にでた節が数ヶ所あるためトリマーで丸めようかと考えたのだが、欠けるのが怖くて断念した。

ポートの周りにはエポキシがこびりついていたのだが、ご覧の通り皆目なし。 これなら裏板のニス塗装も問題なさそうである。



2003/12/12

塗装 その2(第三楽章)

晴れたのをこれ幸いと#240でペーパー掛けをし(無論電動サンダーで)表面は見事につるつるになりました。

配色については、本体は白木を生かしワインレッドのフロントグリル、台座はマホガニー色ということになり、ポアステインの白を本体に、マホガニーブラウンを台座に使うことにしました。

本体に白を使ったのは、木目を完全に残しながら白木の感じがいつまでも残るようにしたかったからです。 一見白木のままなら着色無しでニスを塗ればと思われるかもしれませんが、それではニスの持っている淡い黄色と、木材が濡れたときに色が黄変してしまう現象とがかさなり黄ばみます。 更に日焼けによりこの黄ばみは増加します。 それらを防ぐために白のステインが効果的で、このあたりはベッド横の収納棚で実証済みです。

目的がそのようなことなので、着色には刷毛を使わずぼろきれで擦り付け余計なステインは拭き取り薄めの着色としています。 
マホガニーブラウンの台座は同じくぼろきれで擦り付けましたが、こちらは2回塗りとし若干濃い目にしてあります。

塗装はこれまた私の定番である1液性ウレタンニス「速乾ドリーム」の半艶2回塗りです。 1回目が終了後2時間経ってから#400ペーパーで表面の軽いざらつきを落としました。 着色から2回目の塗装が終わるまで7時間。 乾燥時間の早い塗料のありがたさです。

また本体内面、取り付け穴の切り口など未塗装部分は、1回塗りですがたっぷりとニスを沁み込ませ生木が露出している部分は全くなくなりました。  これで湿度の変化により発生する木の収縮はかなり押さえられるはずです。

台座はマスキングテープを使って本体の固定位置をしるし、合成ゴム系接着剤G17で本体にはり更に本体内側から45mmのネジ4本でがっちりと固定しました。

その後外してあったネットワーク、吸音材、スピーカーユニット、端子盤を固定し最後にポート板の固定枠との間に3mm厚の固めのスポンジテープを貼りポート板取り付け時の隙間が完全になくなるようにしました。 こうすると24本の六角ボルトを強く締めこんでもポート板は裏板より0.4mm程度浮き上がりますが、隙間が出来ないことの方が重要ですので止む無しとしています。

以上で本体は完成しました。 但しフロントグリルの製作には入れなかったので完成は1週間後れることになってしまいましたがクリスマス前には娘に間違いなく手渡せそうです。 以上の経過は以下の写真をご覧下さい。

#240ペーパーで下地研磨後白のステインで本体を着色。 画面右手は未着色です。

着色前と後の違い。 ごく薄く着色していますが、これだけ差があります。

着色終了の全部材。 台座はマホガニーブラウン色です。

フロントグリルはワインレッドのジャージーで作るのでそれを引っ掛けてみました。

半艶のニスを2回塗った表面。 やけに白っぽいのは反射のせいです。

右側枠内は着色無しでニスを塗っておりますが、これだけ色が変わってしまいます。

ポート板の裏と表ですが、裏は着色無しのニス塗装でやはり色の違いが判ります。

3mm厚のスポンジテープを隙間防止のために貼りました。 ポート板を強く締め付けて固定すれば、隙間は完全にゼロ。

低音調整で決定したストレートパイプをエルボ内部に挿しこんでポート板を固定します。

座板手前のエッジのクローズアップ。 上半分は反射のため鈍い光を放っています。

本体固定位置をマスキングテープでしるし、ボンドG17を塗って本体を載せ本体中側からネジで固定。

台座を固定し終わった所。 台座面への反射で半艶であることが判ります。

  スピーカーユニット、吸音材、ネットワーク、端子盤を元通りに取り付けて完成した本体です。 残りはフロントグリルの
  製作のみとなりました。



2003/12/19

フロントグリルの製作(コーダ)

 ボックス本体の手前の角をトリマーで丸く落とそうと当初は考えていたものの(実際イメージ図ではそのよ
 うに描いていた。)
節が幾つか角に存在しトリマーでカットした時に大きな欠けを作りそうで止めてしまった
 のだが、直線の組み合わせだけではなんとも面白くないので、フロントグリルには変化を持たそうと考えて
 いました。

 Excelの画面で10数とおり描きましたが、幅を本体より20mm狭くし高さを325mm位にするとバランスが
 良さそうに見えました。 更に上面は直線とするもののグリル下の部分を楕円曲線とし、グリルの上の角
 以外は丸くトリマーでカットするということで変化を出すことにしました。

 と、そこまでは順調に行ったのですが、このぐりるをどう作るかハタと迷いました。 というのは幅を本体より
 20mm狭めたので、ウーファーの開口部の所は12mm位しか残りません。 かなり強度が落ち無理すると
 折れてしまう危険性があります。 だからといってウーファーの開口部を小さくすると中音域でがメガホン効
 果のため音質を悪くする原因になります。(計算上は1.5KHz近辺に妙な共鳴が発生する可能性あり。)

 そこで端材の棒を貼り合せて作るのをやめ12mm厚の一枚板を使いウーファー、
 トゥイーターの開口部分も丸穴として開口面積を稼ぎながら強度も確保するという
ことにしました。 私が使うのであればグリルを外す時に強度があまり取れないことが判りますから壊さな
いよう気を使えますが、他の人が使う場合はこんな点も考えねばなりません。

似たような理由でグリル固定の方法も値段が高いのですが(2台分で\800)、プラスチック製のスピーカー
グリル用に作られたキャッチを使用しました。 そういった意味では、TQWTミニタワースピーカーで紹
介したグリルよりも遥かに材料費が掛かっていますが、そのくらいの価値がある音質を得られていますから贅沢とは言えないでしょう。

まあフロントグリル製作にも色々な方法があるという程度に考えてください。 一般には折角スピーカーを
自作してもフロントグリルはないがしろにしている例が多いですが、スピーカーむき出しは決してインテリア
には溶け込みません。 最終的な仕様となったTQWTではグリル付と無しではこの傾向が更に強くなって
いると思います。

さて作業の様子は以下の写真をご覧下さい。

図面どおりに12mm厚シナ合板から切り出したフロントグリル。 反りが怖いのでここだけは合板の登場です。

今回使ったキャッチ。 左のオス側がグリルに取り付けられ右のメス側は本体に埋め込みます。 

写真では見えないのですがキャッチを取り付ける位置には鉛筆で丸が書いてあり、その中心に1.5mmの貫通穴をあけます。

本体のグリル取り付け位置に置いて貫通穴からドリルで本体に軽く印を付けます。

その印の所に10φのドリルで深さ11mmの座繰り穴をあけました。

そしてキャッチメス側を玄翁で叩き込んで本体側の加工は終了です。

グリルにキャッチのオス側をネジ止めし本体に取り付けました。 スピーカーが見える穴は大きい方が良いのでグリルが壊れないぎりぎりまで大きくしています。

真横から見るとグリルは7mm浮き上がっており、グリルはスピーカーには接触していません。

出来上がったグリルの外側をつや消し黒で塗装し、ジャージーを貼りました。 ジャージーの貼り方はTQWTやミニタワースピーカーの詳細をご覧下さい。

フロントグリルありと無しの最終的なスピーカー上部のルックスです。

すべての作業が終了したバスレフ型トールボーイスピーカー。 ぎりぎりで約束の期限に間に合いました。

TQWT、ミニタワースピーカーと比較試聴しながら最終確認。 格が一段上のオールマイティースピーカーという印象です。



この作品の材料費はほぼ\40,000.-掛かっており今年作ったスピーカーの中ではもっとも高価です。 箱の材料、スピーカーユニットを始め上のランクものを使っているのがその理由ですが、仮に完成品を購入したいとしても最近のスピーカーシステムでムクや集成材を使った箱は量産品では皆無ですから、特注でない限り入手不能です。 その場合にはとんでもない価格になるでしょうから、スピーカー作りは日曜大工ならではの醍醐味を味わえるテーマのひとつに違いありません。

----- FINE -----



追記:

バスレフ方式とダブルバスレフ方式についての概略。

 スピーカーボックス作りにおいて如何に良好な低
 音を再生できるかが関心事であり実に様々な提案
 がされてきている。
 バスレフ方式もそのひとつで現在もっともポピュラ
 ーな構造の箱といってよい。

 バスレフとはBass Reflex: 低音輻射)の読みを
 詰めたもので、その構造は密閉された箱に開口部
 (ポートと呼ぶ)が取り付けられたもの。
 このポート内のでの共振周波数となる音はその振
 動方向がスピーカーユニットと逆になり、通常はス
 ピーカー背面から出た音は前面の音と打ち消しあ
 ってしまうのに対し強めあうことを応用している。

 密閉された箱にスピーカーが取付けられた場合に
 は低域はだら下がりとなる傾向があるが、バスレ
 フの場合にはスピーカーの共振周波数0)の10%
 位低い領域まで再生レベルが保たれる。

 設計は比較的簡単でユニットに適した箱の容積と
 ポートの容積を算出すればよい。

ダブルバスレフとは箱の中が2つの部屋に分かれており、低域共振させるポートが2つそれぞれの箱に取付けられて2つ目のポートは外部に露出している。 考え方としては増強したい低音レンジを2箇所設定しより広範な低音再生を狙った物といえるが、設計理論が確立していないことがありカットアンドトライ的な要素や質が変化するパラメーターがバスレフ方式より多く存在する為に、良好な性能を確保するのは難しい。

本稿では当初ダブルバスレフを考えたが、複数のユニットに対応可能という条件を設定した為最終的にはバスレフ方式とした。

 
  
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