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台所用収納家具
   
2006/03/03

構 想

 今回のテーマも依頼されたものですが、電気炊飯器とトースターを並べて上に置ける台所の収納
 家具を作って欲しい!というのがその趣旨です。 ただ漫然と箱を作ってその中に収納棚や引出し
 を配するのも脳のない話なので、薄型の計量米びつをその中に組み込むことと、収納部の扉のひ
 とつが緊急用の物置き台となる仕掛けを入れることを提案し、更に熱いものを載せても問題ないよ
 うタイルを嵌め込んだ部分も考えることにしました。(左の構想図を参照ください。)

 ここで使おうとしている計量米びつはマッキンリーという会社の製品で、台所の隙間収納に組み込んで10年以上使用実績のあるものです。 特徴は幅が10cmしかない超薄型ですのでスペース利用効率を上げられますが、倒れやすいですからそれなりの使い方の工夫が必要です。

さて依頼主の話を良く聴くとどうも長期間使う可能性はあまりなさそうです。(最長でも5年?) そこで安く作ること!を重要項目として追加します。 このために元々このテーマは日曜大工入門用のテーマと考えていたのですが、少々手間の掛かる複雑な組み上げ方をするために止めた次第です。
(安くするためには材料コストを先ず押さえないとなりません。 その為に強度や外観の低下をさせたくないため手間の掛かる構造になります。 構想図では一見プリンター置き台と似た感じのようですが、かなり複雑になります。)

材料はワンバイフォー材MDF2.7mm カラー合板5.5mm シナ合板を組み合わせてコストを押さえながら十分な強度と外観を確保しようと考えています。 安く上げるために引出しもスライドレールではなく木製のレールとします。 さすがにスライド蝶番、フォールダウン蝶番、ステーなどの金物はケチれませんが、計量米びつを除く材料代が\8,000程度に収まればと考えています。

構想図の中で計量米びつは米の補充が上面からになるため、キャスターを取り付けた台の上に固定し前後に移動可能とさせます。 この米びつは中央に配したワンバイフォー材に挟まれたようになるため米びつが倒れる心配もなく、また家具全体の横方向の撓み防止にも繋がります。 ワンバイフォー材は左右の側板や天板にも使いますが、天板はワンバイフォー材を貼り合わせた自家製の集成材とすることを考えています。 その他の部分はMDFが主になりますが、外側に露出する部分でカラー合板を使うことを考え塗装コスト低減に繋げようとしています。

上部右側扉は手前に倒れるようにし、その状態で6-7kg位の物を載せても問題ないようにします。 その面にタイルを嵌め込んで熱対策をします。 同じような熱対策は天板にも組み込んでやるかもしれません。  こうすることにより加熱したフライパンの一時的な置き場になるという寸法です。

前面の意匠周りをどうするかはまだ迷っていますので構想図では引出しの前板が中央の図と左の図で違っていますが、これはご愛嬌と考えてください。  電気がまやトースターまで内部にしまいこんでしまえば雑然とした感じがなくなりますが、放熱の問題や吹き出る水蒸気の問題などあり、この部分は上置きタイプとしておいた方が無難でしょう。

ただ今ネットで計量米びつを注文中ですので、それが到着次第最終設計に入ります。



2006/03/10

詳細検討・設計

今回の製作に使う特殊部材が入手できましたので、それを元に細部の検討・設計を進めました。
まず計量米びつ(型番:RN-369)ですが、これまで使ってきたステンレス製の10kgタイプと箱の材質が鉄板塗装に替わり容量が6kgになったこと以外は構造上は殆ど同じです。 この薄型の計量米びつはこちらよりメーカー直販が可能です。

唯一違う点は無洗米に対応ということで、標準では通常の白米用のプラスチックアダプターが底部に嵌め込まれており、無洗米を使うときにはこれを外すとの記述がありました。  私は無洗米と通常の白米とどこが違うのか(外形上)知りませんが、無洗米のときと白米のときとでは計量の部分に何らかの補正を加えているような気がします。

またメーカーであるマッキンリーのホームページでは全く触れていなかった機能を発見しました。 それは前面のレバーを押し下げると約1合の米が取り出せるのですが、レバーを押すたびにLEDを使った赤いインジケーターが次々と点灯してゆきます。 そして4回押すと4個のインジケーター全てが点滅するようになっています。

この意味は1回に取り出せる最大容量は米を取り出すトレイで決まり、それが4合であるためそれを超えないようにとのインジケーターのようです。 但しインジーケターのみでそれ以上取り出せないようロックが掛かるわけではないので注意を要することには変わりはありませんが、米を取り出すトレイは不透明のプラスチックでどの程度溜まったのか見えませんし、少なくとも4回目までは何回押したかが判りますので便利には違いありません。

 さて本体上部右側の手前に開く扉にはフォーリングヒンジという変わった蝶番を使います。
 この蝶番を使う最大のメリットは、通常の蝶番を使ったときには扉の下に蝶番が見えてしまう取り
 付け方になりこの部分が隙間になりますが、フォーリングヒンジを使えば全被せスライド蝶番に似
 たような扉の収まりになります。 しかも開いた状態で扉と置くの底板との隙間は僅少に且つフラッ
 トになるため見栄えがよく余計な出っ張りもありませんから使い勝手もよいという良い事尽くめで
 す。

 但しフォーリングヒンジで扉を支えるのはOKとしても、この上に重い物を載せるのは蝶番の強度上
 無理があります。 そこで左右にステー(棒タスキ)を2本付けて強度アップを図ると共に扉が水平
 な位置で止まるようにします。  このステーはクローム鍍金をされた鉄棒にプラスチック製のスライ
 ダー・ストッパーと組み合わされていますが、このスライダーがまた面白い機構をもっており、開き止めに近くなるとブレーキが掛かるようになっており、扉がバターンと開くことのないようになっています。  その機構は大変簡単で柔らかいプラスチック製のブレーキ(ナイロンかな?)の摩擦力をネジで調節するようになっています。

これら金具が高価であればどうということは無いのですが、フォーリングヒンジは1個\240.-、ステーは\400.-でしたのでその特殊な構造の割には安く感じ嬉しいところです。  以上の部材については次の写真もご覧下さい。

容量6kgの計量米びつ。 幅が10cmと大変スリムで置き場所を喰いません。 このモデルは無洗米対応にもなっています。

レバー一押しで約1合の米が出てきますが、その都度4個並んだLEDインジケーターが点灯して行きます。 これは2回押した後です。

計量米びつの底部。 4隅の四角い脚を台座に落とし込んで固定する予定です。 右端の電池ホルダー(単三2本)も当たらないように欠き取る必要があります。(後述)

手前に開く扉に使う2種類の金具。 上がフォーリングヒンジで下はブレーキ付き棒タスキ(ステー)です。

ステーの拡大写真。 中央に見えるネジ(ナイロン製?)を回すとブレーキの効き具合が調整できる優れものです。

フォーリングヒンジの動き具合で、全被せスライド蝶番に似た大変変わった動作をします。 



詳細設計

 主要部材の寸法、収まりが判りましたので、早速詳細設計に入りました。  左の図をクリックする
 と全貌がご覧いただけます。  なにやらかなりややこしそうですが、ここまで描き上げておかない
 と部材寸法図の描き出し、板取りの検討には入れません。  当然ながら構想段階の寸法とは微
 妙に違いが発生しています。

 主要なところを説明しておきますと、側板は全てワンバイフォー材を使います。 これの最大のメリ
 ットは安いことですがこれまでの経験によると販売されている状態での寸法精度はいまいちで、例
 えば幅は89mm ±1mm位のブレが、厚みについても19mm ±0.5mm位のブレがあるのは普通です。  従ってこの収納家具の内寸幅と奥行きが寸法図どおりになるよう実際の製作時には注意する必要があります。

天板はワンバイフォー材を5枚貼り合わせで作りますが、販売されている材料は殆ど面取りがされていてそれを並べて貼りあわせたのでは、シャープな感じにはなりません。  そこで面取りされている部分を切り落としてしまい89mmの幅を78mmまで詰めて貼りあわせるという魂胆でいます。 この切断はホームセンターでやってもらった方が簡単で正確に出来るでしょう。

それと側板は枠構造になりますので、中にあいた部分は2.7mm厚のカラー合板を貼り付けて埋めてしまいます。 裏板もカラー合板を使います。  棚板は固定部分に15mm MDF、可変棚に12mm MDFを使います。 扉は9mm MDF5.5mm厚のシナ合板で縁取りし14.5mm厚としたものを考えていますが木口部分には木口テープを貼ってやります。 但し手前に開く扉だけは強度の問題もあるので、15mm厚シナ合板とします。  引出しの材料は12mm厚シナ合板とカラー合板を側板に、底板は4mm厚のシナ合板とします。 ということで板材の材料費は大きさの割にはかなり安くなるはずです。

接合法については側板に固定するMDFの固定棚はネジ止めできませんので(MDFはネジが簡単にバカになる。)6mm木ダボと木工ボンドを使います。 ネジの先端がワンバイフォー材となる場所はネジ併用の木工ボンドにしますが、ネジの頭はパテで埋めてしまいます。

塗装についてはカラー合板を使う部分はその色をそのまま使い、MDFの面はペイント仕上げにします。 ワンバイフォー材の表面とシナ合板の面は十分に研磨後油性ニス仕上げを考えています。  引出しは無塗装のままです。 こうしますと塗装面積はかなり少なくなるので、これもかなりのコストダウンに繋がるはずです。

 引き出しについてはコストダウンの観点から今回は木製レールを使います。
 こうしたときのデメリットは引き出し出し入れの摩擦抵抗がスライドレールを使ったときより大きい点
 ですが、引出しの箱の幅は22mm近く大きくなるので目いっぱいスペースを利用できる点はメリット
 になります。
 尚引き出し部分の詳細は左の図の通りですが、これと同じ構造の引出しの詳細解説と実例が、
 こちらにありますので参照ください。 木製レールとは言え既に100個近く作って耐久性、実用性共
 に十分確認している構造ですので安心して使えます。



2006/03/17

製作 1

いきなり最も手間の掛かる作業で、ワンバイフォー貼り合わせによる自前の集成材を作ります。 これは天板となりますが、くわえ幅400mm以上のクランプが必要で、ここでは
自作の中型クランプ3本を使用しています。 このクランプはこの後の作業でも必需品です。

これに使う材料は長さを700mm、幅を78mmになるようホームセンターでパネルソーで切断してもらっています。 それを5枚貼り合わせるので設計値の幅より2mm程大きくなりますが、5枚を接着後に電動トリマーにて所定の寸法になるよう削ってやります。 ワンバイフォー材SPF材)はどんなに選別しても僅かな反りや節などの難が残ってしまいますが、反りにより接合面に出来る段差は貼りあわせ後電動サンダーに#60のペーパーを付けて削り落とします。 これは想像以上にうまく出来るもので、あたかも仕上げカンナを掛けたかのような綺麗な面になります。 また節については出来るだけ少なくなるようにし、それでも残る節はデザインの一部と割り切る必要があります。

4枚の側板は全てワンバイフォー材をロの字型に貼り合わせますが、単純に貼り合わせたのでは強度的に心もとないので、の木ダボを1箇所辺り2本ずつ使いました。 この貼り合わせにも自作中型クランプを使いました。   ここで注意がひとつあります。 ワンバイフォー材の幅は結構ばらついており、公称89mmがノギスで測ったところ87-89mmの間にありました。 そこで枠の横部分の長さを設計値よりも4mm長くして切断して組み上げました。 当然ながら総幅は設計値よりも広くなりますが、これは接着後電動トリマーにて所定の寸法に削ることで全ての側板枠の幅を設計値に合わせています。 接合面の完全硬化には12時間必要ですので一晩寝かせた後に出来た枠の表面を#60を付けた電動サンダーで研磨して段差や面の荒れを落とすと共に、電動トリマーで幅の修正をしています。

実際にやってみると結構時間が掛かるもので、以上の天板と側板(合計5点)が組み上がり1次研磨、枠外寸の調整切削が済むまでにほぼ3日掛かっています。  しかし手間が掛かっても良いから材料コストを抑えて外観が粗末にならないように!というのがこのテーマのメインコンセプトですから止むを得ないところです。

5枚の板を並べて仮圧着。 パネルソーで切断しているので直角度は問題ないはずですが、念のために曲尺を当てて反っていないことを確認しておきます。

真中のクランプを一度緩め全ての板に木工ボンドを塗って並べました。 そして真中のクランプを締め上げ、

両端のクランプを締め上げますが、板同士の段差やずれが最少になるよう調節しておきます。

一晩寝かせて完全に接着した部分が硬化しました。

但し板の反りのため場所によっては接合部分の段差が1mm弱あり、面が粗い部分も沢山ありますので、#60ペーパーを付けた電動サンダーで研磨します。

同じ部分ですが段差は見事無くなり、表面の粗い部分も無くなりました。 平均して0.7mm程削り落としたと思います。 尚#240以上の仕上げ研磨は後でやります。

4組の側板の枠を組立て開始です。 設計図に対して右上の幅の狭い板は4mm長く切断し、ワンバイフォー材の幅のばらつきに対処します。

その幅の狭い板にのダボ穴をあけます。 木目と平行になる木口部分は穴あけの際ドリルが滑って位置がずれやすいため、意識してこの部分からあけます。

ご覧のように左の穴は中心から上にずれてあいてしまいましたが、相方の穴をずれたなりにあければ問題ありません。

マーキングポンチを挿入して接合の相方部分に印しをつけます。

そして印しのついた所に穴をあけます。 この面は木目と直角方向なのでドリルは横滑りを殆どしませんから、相対的な穴の位置はずれません。

そして木ダボを挿入し木工ボンドで接着し中型クランプで圧着します。 枠の捩れが出ないよう十分調整することと、はみ出た木工ボンドは速やかに拭き取っておきます。

同じ要領で4枚の枠が完成しました。 この後#60のペーパーを付けた電動サンダーでそれぞれの枠の両面を研磨して段差や面の荒れを取り除いておきます。

横の短い板は4mm長く切断したため、枠の外寸幅は設計値の371mmより大きくなっています。 そこでガイド板をクランプで固定し10mmのストレートビットで削って幅を詰めます。

切削される位置はガイド板から 45-(ビットの直径÷2)ですので、ここでは40mmにセットしています。 但しこれはリョービのトリマーを使った場合です。

4面ともトリマーにより寸法調整を済ませました。 このためワンバイフォー材独特の面取りは殆ど削られてしまいました。

それぞれの枠の外寸は設計値に対し±0.5mm以下に収まりました。 また直角度は曲尺で測りドンピシャに追い込めています。 ここまでに3日近くを要していますが、まだ枠の加工作業は続きます。(枠さえ出来てしまえば後は簡単な作業ですが?!)




2006/03/24

製作 2

側板枠の加工の続きを進めました。 外寸の調整が終わっていますが、真中の空いたところをカラー合板を貼って埋めるため、コロ付シャクリビットで深さ2.8mmの段差を掘り込みました。 ここで使ったビットは昨年販売した15本組みで\14,700.-に含まれたものを使っていますので、削り幅は6mmとなり設計値とは異なりますが、mini-Shopで販売しているSKY-12.7Gを使うとほぼ設計値と同じ9.5mm幅になります。 またガイドを使うのであればストレートビットを使って同様の加工をすることも可能です。

外側に面する側板の内側角はコロ付サジ面ビットで化粧加工しています。 R6.3mmでしたが厳密ではありませんから例えば廉価なハイストリマービットシリーズのサジ面ビット TRB-16HR9.5mm)を使っても良いでしょう。

これらの加工をした上で枠4枚と天板の全ての面を電動サンダーに#120ペーパーを付けて研磨し更に#240に替えて仕上げ研磨しました。 こうして出来た部材の表面は完全につるつるになり、塗装前の下地として十分なレベルになります。

この後2.7mmカラー合板を現物合わせで切断し接着しましたが、コーティング面に接着剤を塗るので木工ボンドではなくボンドG17クリヤーを使っています。 接着剤硬化後にニッケルダボメスを埋めみ、端材のシナ合板18mmを切断した木製レールを木工ボンド併用でネジ止めしました。  これで側板の予備加工はすべて終わりです。 15mm MDFから切断した固定棚と側板を木ダボを使って接合します。  但し固定棚中右上の棚だけは予めフォーリングヒンジを埋め込む穴を30φフォスナービットであけておかねばなりません。

天板は設計図面にはない追加加工を施しています。 天板の周りには5mm厚、幅30mmのヒノキ材を貼り付けて一見30mmの厚板を使ったようにお化粧しようと思いますが、手前には高さ12mm、奥行き15mm弱の隙間がヒノキ材の裏側に出来ます。 この為ヒノキ材前面が割れてしまう可能性があるので、この部分に12mm合板を切断し下駄とし貼り付けることにしました。 

また設計段階では天板が取り付く部分は3枚の側板の上端のみとなっていましたが、組み上げ時にワンバイフォー材の反りが原因で上方が2-3mm開く狂いを生じることが判りました。 これを補正しておかないと特に引き出しまわりで問題を起こす可能性があるのと正確に天板を固定するのが難しいので、12mm厚合板を30mm幅に切断し側板の間の前後に補強板として接着しました。 この結果組立て終了後の本体各部の寸法の精度は±0.5mm以内に収まっています。 

側板4枚と固定棚4枚の接合は真中下部があいているという少々変則的な構造になっていますので、組立て順序と作業方法を良く考える必要があります。 またMDFはネジがバカになりやすい問題があるので、の木ダボ併用の接着にしています。 
そして中型クランプを使って完全な圧着保持をしたため横揺れが殆どない強固な本体が出来上がりました。

今週は春分の日があったためフルに3日間作業が出来るはずでしたが、WBC決勝戦が春分の日にあったためさすがに日曜大工に専念できず、実働2日間でここまで進んでいます。

今回使ったトリマービット。 左から10mmストレートビットで刃渡り20mmで側板枠の外寸調整に使用、化粧加工用のサジ面ビット、段差を削り込むのに使ったシャクリ面ビットです。

サジ面ビットによる化粧加工を施した状態です。 ワンバイフォーとカラー合板の段差が16mm程あったのが10mm弱に減少しスリークな感じが出てきます。

シャクリ面ビットで削りこんだ後です。 彫りの深さ2.8mmは事前に試し切削をしノギスで測定し確認する必要があります。

カラー合板は厚さ2.7mmですので、切削部分に当てると段差がゼロかカラー合板が僅かに沈むようになります。

カラー合板を現物合わせで切断し枠に接着しました。 カラー合板のコーティング面を貼り付けるので、ボンドG-17クリヤーを使用しました。

貼った部分のアップ。 これは内側ですがカラー合板は面一に貼られています。 一種のフラッシュ構造(太鼓張り)です。

高さ可変となる棚の為にニッケルダボメスを打ち込みました。 可変棚は4枚ありそれぞれ3段ずつ調整可能としたので、48個のメスダボを埋め込んでいます。

更に18mmシナ合板を12mm幅に切断した木製レールを木工ボンド併用のネジ止めで固定しました。  積層面にネジを打つのでの下穴をあけています。 さもないと合板は必ず割れます。

15mm MDFから固定棚と高さ可変棚合計8枚を手引きノコギリ(翔250)で切り出し、カンナで寸法調整、角度調整、木口の直角度調整をし、寸法誤差0.2mm以下、直角度を曲尺での検出限界まで追い込みました。

フォーリングヒンジの収まり図。 赤線の左側が扉側、右が固定側になります。 固定棚の手前から9mmの位置に30φ深さ3mmの穴をフォスナービットであければよいことになります。

右上の収まり図に従い棚板手前から9mmの位置に30φ、深さ3mmの穴をあけます。 深さコントロールと垂直度出しの為に殿堂ドリルアタッチメントを使います。

30φのフォスナービットを使いましたが、このようにビットの一部がはみ出るようなあけかたでも、フォスナービットなら大丈夫です。

深さ3mmの座繰り穴があきました。 ビット先端の部分を除き底面を平らに削れるのがフォスナービットの特徴です。

そこにフォーリングヒンジを落とし込んでみました。 無論ばっちりで、フォスナービットを使えば簡単にこのような加工が可能であることがお判りいただけると思います。

それから8φの木ダボの穴をあけましたが、深さ15mm19mm厚の板に対して突き抜けかねない深さですので、電動ドリルアタッチメントの深さコントロールが大活躍しています。

そして本体の組み上げ開始。 まず右上の一番大きな固定棚と中央右の低い側板を固定します。 ここだけはネジ併用の木工ボンド接着です。

それに右側の底の板を木ダボ接合しました。 (右側の立っている部分)

引き続き右端の側板をやはり木ダボ接合し、中型クランプで圧着保持しています。 この時接合部の直角度が正しく取れていないとなりません。

左の側板と中央の長い側板の間に固定棚板2枚を木ダボで接合し同様に中型クランプで圧着保持しています。 少し右側に置かれた先ほど組み立てた部分とこのあと接合します。

設計図にはなかったのですが、天板手前に12mmシナ合板を切った下駄を履かせて、5mm厚のヒノキ材が割れないよう追加加工しました。

その下駄部分を天板手前裏側に木工ボンドで接着。 22mm隠し釘で圧着保持しています。

左右のブロックを連結しました。 但しこの状態では側板上部の横方向の寸法は反りの為に2-3mm狂っていることが判りました。

そこで30mm幅に切断した12mm合板を上部の側板の間に挟み込み木工ボンドで固定しました。 これで反りによる寸法誤差はほぼ解消しました。

そして天板を木工ボンドで接着しましたが、矯正に追加した板から25mmのネジで裏から天板に締めこんで圧着保持しています。

履かせた下駄の部分はこのような按配です。 この上にヒノキ材が被ってお化粧するわけです。

右側中段から下。 フォーリングヒンジ用の座繰り穴が見えます。 また左手下の空間に計量米びつが入ります。

本体の残る加工はヒノキ材で天板木口をお化粧するだけとなりました。 折からWBCの決勝戦と言うことで半日そちらの観戦で作業が中断しましたので遅れ気味ですが、製作開始後5日を費やしてここまで来ています。 




2006/03/31

製作 3

今週は引き出しの箱の製作から手を付けています。 後ほどお見せする写真では速やかに進んでいるように思えますが、実際に
は慎重で念入りな作業が求められます。 それらは、

  *寸法精度の高い材料の切断0.2-0.3mm以内)
  *直角度が正確に出ていること(曲尺での検知限以内)
  *切断した木口面の直角度

  *正確な接合位置

の4点で、大工作業の基本中の基本ですが、特に引出しでこれらが守られていないと捩れが出たりいびつになったりして、引出し
の出し入れがスムーズにならなかったり、修正によりやたらに隙間やがたの多いものになってしまいます。 切断精度と直角度の確保はカンナを使って一削りごとに曲尺で確認したくらいですから、結構作業時間は掛かかっています。

さて引き出し側板は幅31mm厚さ12mmの板2枚をカラー合板で内張りするスタイル(コーティング面が内側)で作りますが、12mm厚の板はたまたま手持ちにあった古いさわら材から切り出しました。 充分に枯れ切った材料ですから反りもなく都合よいのですが、表面が汚れていて厚みもノギスで測ったところ12.6mmと厚すぎるため#60ペーパーを付けた電動サンダーで汚れ共々削り落し所定の厚みとしたあとで#120#240のペーパーで仕上げています。 なにもこんな面倒なことをしなくても12mmシナ合板を切断すれば簡単に済むのですが、その場合レールとこすれ合う部分が合板では積層部分となり摩擦が増大するので、ムク材使用は意味があります。 但し合板を使っても摩擦低減の為に敷居すべりでも貼ればこの問題は解決できますし切断面を#240-#400のペーパーで研磨すればかなり摩擦は減少します。

ムク材を幅31mmに切り出すにはタテ引きをせねばなりませんが、12本を切り出すのに4.5mも手引きノコでムク材のタテ引きというのはぞっとするほどしんどい作業ですので、以前に製作した電動サンダー(CJ-250)用の直線切りガイドを使っています。 この為作業はかなり楽に進みしかも直線性がよく寸法精度も+0.2〜0.4mmが確保できています。 12mm厚程度まででしたら抜群の実用性を持っていると改めて感じた次第です。

木製レールを使った引出しについては前にも触れたように、こちらで設計法を含む詳細解説をしていますので、ここでは作業経過の写真をお見せするだけにしておきます。

引出しの枠の組立てが済んだら完全に木工ボンドが硬化するまで寝かせます。(私は一晩寝かせました。)  その後本体に挿入して前後のスライドの具合を確認します。 不幸にしてスムーズに動かない部分がありましたら、#240ペーパーを棒に巻きつけて調整をせざるを得ません。 これが済んだら底板を4mmシナ合板から切り出して貼り付けて引き出しの箱部分が完成です。

次に天板の周りにヒノキ材を貼り付けました。 こんなことまで面倒な!とお考えになるかもしれませんが、お世辞にも美しいとは言えないワンバイフォー材の木口部分を隠し、しかも天板の板厚が30mmに見える加工ですから見栄えをよくするには大変効果的です。

次に計量米びつを載せる台を作りました。 材料は15mmシナ合板ですが、安いMDFを使っても一向に構いません。 所定の寸法に切断後四隅のカット、電池ホルダー部分の穴あけをジグソーでやった上で、裏にナイロンキャスターを取り付け前面に化粧板を貼り付けます。 米びつのセットは4個の脚を台の切り欠き部分に落とし込むだけです。 倒れるのが心配であれば両面接着テ−プで貼り付けても良いでしょうが、貼り付けても台と一体での倒れやすさは余り変わらないでしょう。

本体塗装も平行してやろうかな?と一時は考えていましたが、扉などの塗装といっしょにやった方が効率よく色合わせもしやすいので、結局塗装はまだ開始していません。 次回には扉の加工・取り付けそしてうまくすれば塗装の一回目まで進めればと考えています。

側板の切り出しですが、ムク板の長い縦引きは手引きノコではしんどいので、
CJ-250用に作った直線切りガイドを使いました。

切断中のクローズアップですが、墨線に左側の縁が沿っています。 切断精度は+0.2〜0.4mmとジグソーでの切断では申し分ありません。 この後カンナで削ってドンピシャ寸法にしています。

2枚の側板をカラー合板で連結します。 木工ボンドによる接着ですが、圧着保持はクランプを使っています。

この接着時には12mmの板がカラー合板の端から12mm突出することと、隙間に厚さ18mmの合板を挿入したとき0.5-1.0mmの僅かな隙間(黄色矢印先)が出来ていることです。

出来上がった1セットの引き出し側板。 上が内側の面で下が外側の面になります。

貼り付けの終わった側板と前後の板12mmシナ合板)3セット分。 慎重に進めたためこれらの切断だけで1日掛かりました。

引き出し前後の板に側板を木工ボンドで接着し36mm隠し釘を打ち込み圧着保持します。

出来た枠は角の直角度が出るよう調整そして捩れが出ていないことを確認して一晩寝かせます。

隠し釘の頭を落とし本体のレールに挿入して出し入れのスムーズさを確認します。 スムーズさがなければ#240サンドペーパーで削って調整しないとなりません。

天板の周りに貼る5mm厚幅30mmのヒノキ棒の突合せ部分は45度切断ジグを使い切断しました。 材料が薄く幅が狭いので、ソーガイドは使えません。

天板の周りに木工ボンドで貼りましたが、仮釘を使って圧着保持しています。

ヒノキ棒の端を45度に切断して突き合わせた部分はこんな具合です。

引出しの箱に底板4mmシナ合板)を接着しました。 圧着保持には隠し釘22mmを使っています。

引出しの納まり具合。 僅かな引出しと側板の間や引出しの溝とレール下面の間に出きる隙間がお判りになるでしょうか?

計量米びつの台を15mm合板から切り出しキャスターを取り付けました。 キャスターの全高が35mmありますので、台上面と床の高さは50mmになります。

逆さに立てた計量米びつはこんな具合ですが?

台はこのように嵌り込むことになります。 これだけで前後左右にずれたり動いたりすることはありません。

5.5mm厚の合板を切断し飾り前板を貼り付けて本体の所定の位置に収めました。 米びつの前後移動も問題無しです。

残る作業は扉、引き出し前板、最下部の化粧前板、高さ可変棚の切り出しとなっています。 天板角もトリマーで成形しもう少しお化粧したいと考えています。




2006/04/07

製作 4

扉や引出し前板は厚み16mmですが、12mm厚の板に4mm厚のシナ合板を貼り付け16mmの厚さにします。 扉のうち右上の手前に開く扉だけは12mmシナ合板を使い後の部分は12mmMDFです。 手前に開く扉だけシナ合板を使うのは棒タスキをネジ止めする必要があるのでネジがバカになりやすいMDFを避けたのと、この表面はニス仕上げとして木目調にしたかったためです。

尚この扉の場合は4mmシナ合板を真中に200 x 300mmの空間を残して周りだけに貼りましたが、これで出来る4mmの窪みには100mm角タイルを6枚貼り付けます。 タイルの厚みは5-6mmあると思われますのでタイル面は突出するわけですが、これは
フライパンの大きさは200φ以上ありタイル面が出っ張っていないと塗装面に加熱したフライパンが接触してしまうことを防ぐ意味があります。

左側の扉と引き出し前板は縦方向の木目が通るよう、幅298mm、高さ900mmMDF4mmシナ合板を60mm幅に切断し両端の飾り貼りを先に済ませてから4つに切り分けます。 こうすれば否が応でも縦方向が揃って綺麗に見えます。 扉の部分は4mmシナ合板を貼る前に全被せスライド蝶番を取り付ける穴を35φフォスナービットで抜き穴としてあけておきます。 スライド蝶番の穴は深さ11mmが推奨値ですが12mm厚の板と他の板を貼り合わせるときには12mm部分に抜き穴としてあけてしまうほうが簡単です。

取り付けに関しては初めて使うフォーリングヒンジを先に取り付けました。 スライド蝶番のように取り付けてからの位置調整は出来ませんので慎重にやらねばなりません。 これを決めてから見切りが揃うように引き出し前板、2枚の扉を取り付けてゆきます。

 次に棒タスキを傾斜角度が45度になるよう固定しました。 これが視覚的のみならず強度的にも良
 いはずです。 そして出来るだけ手前の方に取り付けるほうが耐荷重では有利です。

 しかしこのように取り付けると内部の棒タスキ先端が跳ね上がることが判りました。 但し天井には
 当らないようですが、こうなるとメスのニッケルダボの中段と上段は使えなくなります。

使えなくなる棚ダボを中間だけに限定したとすると棒タスキの傾斜を30度程度にしないとなりませんが、これは見た目で安定感を損なうだけでなく実際のところ強度的にも不利になります。 また棒タスキの問題には直接関係ないのですが、そもそも上段と下段位置では高さが低くて奥行きが深い使いにくい棚になってしまうことにも気づきました。

考えあぐねた結論は、メスニッケルダボは下段のみ生かし下段の棚が使いにくいのは、後で箱を作ってこれを出し入れすることで
解決することにしました。 これらは事前の検討不足の結果であり暫し反省でしたが、初めて使う材料には予測困難な落とし穴が待ち受けているものです。

残る扉や前板はこれまで数多く製作し経験した部分ですから問題は全くなく取り付けは進み、下部の化粧板も貼って隙間や見切りの調整を済ませるところまで進みました。 今週はピンホールカメラの試写を兼ねて桜見物に土曜日を丸一日使いましたので若干遅れ気味ですが、残るは天板角の成形、木口テープの貼り付け、つまみの取り付け、可変棚の加工で本体作業は終了です。

右上の扉は12mmシナ合板に200 x 300mmを残して周辺に4mmシナ合板を貼り付けます。 その板は台形に現物合わせで切断し角を突き合わせます。

最後の1枚を接着中ですが、それぞれの接着にはクランプで確実な圧着保持が肝要です。

完成した扉。 周辺は16mm厚となります。 真中の窪み部分には、100 x 100mmのタイルを6枚貼り付けますが、タイル面は約1mm突出します。

次に左右の片開き扉と引き出し前板の加工ですが、298 x 900mmに切断した12mmMDFにスライド蝶番固定用の穴を35φフォスナービットであけます。

その穴をふさぐように1枚のMDFに幅60mmに切った4mmシナ合板を端に貼り付けます。 これも圧着保持が必要です。

両側に4mmシナ合板を貼り終えました。 これを扉の高さ、引出し前板3枚の高さで切り分ければ、木目がそろった左側の扉と引き出し前板が出来上がります。

右上の扉に所定の穴をフォスナービットであけフォーリングヒンジを固定し本体に取り付けました。 更に棒タスキもご覧のように取り付けています。

棒タスキは見た目のバランスが良く耐荷重で最も有利であろう45度の傾斜になるよう計算の上固定しています。

開いたところの全体はこんな感じです。

閉じた状態ではこちらのようになります。 ここまでは全く問題がないのですが?

裏側から見た扉を開いた状態。 棒タスキは勿論延びきっています。

扉を閉めると棒タスキの先端は上方に突出して天井には当っていませんが、上のダボに載せた棚板に干渉してしまいます。 つまり下のダボ1箇所のみしか棚受けとして機能しません。

左側の引き出し前板と扉を切り離します。 そのままの順序で使えば木目が揃います。

引き出し前板を正確に取り付ける方法。 3mmのドリルで2箇所ネジ穴をあけておきます。 また仮止めの両面接着テープを貼り付けておきます。

一番下の引出しから。 引出しの箱は奥に押し込み前板を右の扉の下面に合わせて位置を決め、裏側から引き出しを押して前板と両面テープで接着させます。 そして引き出し全体をそっと取り出して内側からネジで締めこめばOKです。

同様に上段と中段の前板を貼りますが、加工が正確に出来ていれば、1.5-2.0mmの隙間がこのように出来ます。 隙間が大きいようですが後で木口テープを貼りますので、1mm近く隙間は少なくなります。

引き出し前板、天板、左上と左右の扉の間の隙間は若干のばらつきが出るので、カンナで削り微調整した後で替刃式ヤスリで切断面のざらつきを落としました。 下部の幕板も貼リ終わりました。 中間の固定棚は左右で9mmの段差がありますが、実はこのように見切り線が横に通るための意識的な段差でした。

まだ可変棚を入れてありませんが、収納部分を全部開くとこのようになります。 妙にに捩れている部分や大きな狂いはありませんので、ほっと一安心といったところです。




2006/04/14

最後の仕上げと立ち往生

残る本体の加工である天板の角成形は色々悩んだ挙句45度角面ビットで単純に斜めに落とすことにしました。 ボーズ面、片ギンナン、ギンナン面も考えたのですが、化粧貼りの厚みは5mmしかないためそれらでは余りアクセントになるような彫りこみは出来ないのでは?と考えた次第です。

ツマミはU字型をしたmini-Shopでも販売しているSP-001シリーズのシルバー色を計量米びつを除き縦使いとしました。 このツマミはお気に入りのひとつですがアルミ製の質感はよく見かけるプラスチック製のものとは格段に違い、この小さなツマミを取り付けるだけで全体がきりっと締まります。

また問題の手前に開く扉の棚下に箱を作って収めました。 単純に箱を出し入れすると棒タスキやタイルの出っ張りに当りますので、左右にL字型の木製レールを取り付けてその上を滑らせることにより当りがなくなり使い勝手がよくなるようにしています。

またこの扉の上部にマグネットキャッチを取り付けて扉をロックするようにしましたが、厚みが10mmしかない薄型のものを使用し物の出し入れの邪魔にならないようにしています。

更に扉、引き出し前板の木口にはシナの木口テープを貼りました。 これにより見栄えが格段に良くなるだけでなく隣どおしの 隙間も1mm前後となり精密加工をしたかのような外観に変わります。

と、ここまでとんとん拍子にやってきてさて塗装前の最後の仕上げ研磨を屋外でやろう!と思ったら天候が不安定。 既に傷をつけないよう一人で持ち上げて運ぶのは無理な重量になっていますから家内の手を借りねばなりませんし気楽に屋外へ出し入れできるものではありません。  3-4時間は研磨作業に費やす必要があるので結局あきらめて、別項の接合強度試験に時間を費やすことにしました。

まあ塗装に関しては別な作品でかなり詳しく解説していますからいまさら取り立ててご覧頂きたい場面もないので、次週に簡単に報告することにします。

天板角は45度角面ビットで斜めに削りました。 化粧の板の厚みが5mmですので、斜めにカットされた長さは約7mmとなります。  ボーズ面よりもこの場合強めのアクセントになるのではと思います。

扉、引き出し前板の木口面はシナの木口テープを貼り化粧しました。 ぐっと高級感?が出てきます。縦使いのツマミは指を掛けやすく使いやすさで大変具合が良いです。

手前に倒れる扉は上部にマグネットキャッチでロックします。 厚みが10mmという薄手のものを使用しました。

依頼主から支給されたタイルを並べました。 貼り付けは塗装が終わった後でやります。 追加で作った箱も見えます。

その箱はこのようなL字型のレールの上を滑り、引き出したときに棒タスキや出っ張ったタイルに当らないようになっています。

残るは塗装のみでそのための仕上げ研磨を外でしたいのですが、天候不順で中断を止む無くさせられています。




2006/04/21

完成まで

やっと天候が安定したのを見計らい一気に全体の仕上げ研磨そして塗装と進み完成いたしました。

塗装前の仕上げ研磨は#400ペーパーを使って全面を磨きました。  そして塗装は油性ウレタン着色ニスのチーク色を主としてそれにエボニー色とけやき色を5%ずつ加えて色の調整をしたものに薄め液を15%程度加えたものです。  これですと色付きがかなり少ないので、天板は3回、その他は2回塗りして濃度の調整をしています。

一番下の幕板部分だけはオークを15%加えて暗めにしたものを3回塗りにしました。  1回塗るごとに7時間寝かせますので大変時間が掛かります。 それでは時間が掛かって面倒だな? と思われる方も多いと思いますが、薄めにしたニスの方が塗り斑、着色斑何れも出にくくなりますので、仕上がりを大事にしようと考えたら絶対不可欠だと私は考えています。

求めている色の濃度が出たところでクリヤーニスを同様に10%の薄め液で希釈し調色の終わった表面部分以外に内部やMDFの表面に充分沁み込ませています。 この内部とMDFの表面にニスを塗るのは、美しくするというよりも吸湿性を抑える層を形成する!というのが目的です。 外部から見えるMDFの面は最終的にスプレー塗料で仕上げますが、そのまま吹き付けると吸い込み量が多すぎてなかなか滑らかな仕上げが出来ないので、サフェーサーの役目をクリヤーニスがしています。

最後にお馴染みの処理となった油性ウレタン艶消しニスを1回塗って、透明感があって格調高いニブーイ艶が残る状態になりました。 そしてクリヤーニスを塗ったMDFの外部に面するところはアクリルラッカー系のスプレー塗料で塗装しています。  使った色はカラー合板の淡いクリーム色や計量米びつの色に合わせた艶消しですので、カラーコーディネートはうまく出来たと思います。

以上で塗装作業が終わりです正味2.5日ほど掛かりました。 外していた蝶番、ツマミなどの金具を取り付けタイルを変性シリコーン系の接着剤で貼り付けて完成です。

製作に着手してほぼ1ヶ月掛かりました。 週に2日強使っていますので実働は9日間くらいですが、その内1/3は材料の予備加工に費やしています。 これは最初にお話したように材料費を抑えようとワンバイフォー材を主に使ったためです。

仮にシナ合板や市販の集成材だけで作っていたとしたら所要日数は2/3程度の実働6日間には短縮できたと思います。 (無論材料費はグーンと上がってしまいますが?)  どちらが良いか? 作りやすさでは絶対に後者の方に軍配が上がりますが、労賃ロハで考える日曜大工としては材料費の安い魅力も捨てがたく悩ましい命題です。

着色ニスで調色後クリヤーニスを塗った状態。 天板の艶はかなり出ています。 合板では問題に余りならない吸湿による問題を抑えるため全ての部分を塗装しています。  MDF部分にも充分にクリヤーニスを染み込ませて湿気を吸うのを抑えています。

色味が上の写真と同じになるようつや消しニスを塗って一晩寝かし同じ時刻に撮影しました。 天板の反射の具合が明らかに違います。 ぎらぎらした感じがなく反射光は拡散されてニブーイ光を放っています。 またこの写真では下部の幕板がかなり濃い目になっているのが判ると思います。

MDF剥き出しの部分をマスキングをした上でアクリルラッカースプレーで塗装しました。 ニスでサフェーサーとしての下地を作ってありますから、2回塗りで表面は滑らかになっています。  そしてツマミ、蝶番など金物を再度取り付けて完成です。

特に説明を要しないと思いますが、全ての収納部を開いたところです。 右側中断の手前に開いた扉にはタイルを貼ってあるので加熱したフライパンを一時的に置くことも可能です。

引き出し前板両端は厚い1枚板のように見えますが、そうでないことは前の方の写真を見ると判るでしょう。

よく見ると前板両端の板の部分は上下に木目が通っています。 組立ての段階で触れた簡単なことですが、綺麗に見せるテクニックのひとつです。

全てムク材のように見えますが、純粋なムクの部分は安価なワンバイフォーだけです。  しかし、だからと言ってチープには見えません。

私がお気に入りの七分艶の油性ウレタンニス仕上げの反射の様子です。 格調の高さが判ると思います。

天板上面。 1枚板ではなく自家製のワンバイフォー材による集成材。 矢印の先が貼りあわせ面です。

6枚の 10 x 10cmのタイルを貼ってあり、その面は数ミリ突出しているのでこの上に熱い物を載せても塗装面は大丈夫です。

安い材料を使いながら手間を掛けて(高度な技術は不要!)決してチープではない物に仕上げる色々なテクニックを紹介したつもりですが、疑問点があらばご質問をお寄せください。
----- 完 -----


 
  
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