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8cmバスレフスピーカー
   
2003/01/27

構想

年初に口径8cmのスピーカー2種類の製作構想をアップしたというのに、何と我が息子がパソコンに繋いで使う質の良いスピーカーを作って欲しいと、FostexFE-87Eを購入してきて置いてゆきました。 

 何しろ予算の制限無しで1年前に12cm 2Way ダブルユニットのス
 ピーカーを依頼されて製作しており(左の写真)、音には結構うるさい
 相手ですからFE-87Eになにを期待しているのか話を聞くと意外にも
 オーソドックスな方が良いとのことで、現在構想段階の2種類には余
 り興味がなさそうです。

 そこでバスレフ型でどんなサイズになるか手短に計算して内容積約
 5リットルと余りコンパクトにはならないことや、低音の量感もそれほ
 ど期待できない旨説明したのですが、それでよい!ということにな
 り、一番後に来た本テーマを先に手がけることになりました。

 まあFE-87Eの比較的癖の少ない中音を大事にしてその上下を可
 能な限りうまく再生できれば良いだろうと考えておりますが、他の2
 つの未着手スピーカー、或いは既に作った8cm2機種などの鳴き比
 べも興味深いことになりそうです。

 私自身が使うバスレフ設計の計算式で算出した箱の概要は前述の
 ように内容積が5リットルですが、ポートの共振周波数は90Hzとなっています。 面白いことにFostexが発表している標準バスレフボックスの内容積も5リットルで、ポートの共振周波数99Hzとかなり近似しています。

 私は80-150Hzにふくらみを持たせて低音の量感を稼ぎ、それ以下の帯域の再生はすっぱりと
 あきらめる!
という設計思想を取りましたが、同じ考え方がFostexの設計にもあるように感じられ
 ます。  それでは不満足な結果が出るのでは?と心配される方が多いかもしれませんが、低音
 の量感は基音の再生が出来ずともその倍音(例えば40Hzの低音の場合、80Hz120Hz・・・・
 を指す。)
がうまく再生できれば、低音感はかなり得られます。
 ラジカセでまともな低音が出せるはずがありませんが、それでも楽しめるのは同じ理由です。

 ということでスピーカーユニットの体積、ポートの体積、吸音材使用
 等による目減りを考慮して、左のような寸法で作ることにします。
 なにやら前後に長いですが、正面から見て小さくしたかったことと、
 理由はいまだにはっきりしないのですが、奥行きのあるボックスの
 方が音色に好結果を得やすいという過去の経験によるものから来
 ています。 (尚板厚は15mmです。)

 ポートは背面に取り付けますが、断面40φ ポート長59mmです。 参考までに右の図はFostexが公表している5リットル標準バスレフボックスです。
私が構想しているものと設計上は非常に似通っていますが、箱のアスペクト比がずいぶん違います。 どのように音質上の違いが出るのでしょうか? 興味あるところです。



2006/02/03

最終設計と製作開始

 最終設計といっても実際に手に入れる材料に合わせて、
 各部寸法の微調整を施しただけです。
 板材は拘り12cm 2 Way スピーカーで好結果を得ていた
 ラジアタパイン集成材を使いますが、構想段階で考えてい
 た15mm厚ではなく14mm厚になることが判り、外形寸法
 を変えることなく微調整を加えました。  販売されている
 サイズの中で、200 x 910mm300 x 1820mm 各1枚
で比較的無駄が少ない板取になります。

その最終寸法図は上の図を、全部材詳細は右の図を参照ください。 図中に描かれた青の両端矢
印の線は木目方向を表しています。 尚どちらの図面でも端子盤の位置だけは描いてありますが、
使用するものに合わせて適当な穴をあけます。

板と板の接合は総ての木ダボ併用で木工ボンドによる接着ですが、外観的なことを考慮し天板の木口と背面を除き接合部分が見えないように考えてあります。 天板だけは例外ですが、敢えて天板の周りを僅かに突出させてデザイン的な処理ををしています。
それと直線だけの構成では面白くないので前面は外観上曲面とすることにしました。 アクセントにとして貼り付ける飾り前板とフロントグリルの加工がやや面倒になりますが、難易度が高いというところまでは行かないでしょう。

ということで早速製作に取り掛かりましたが、今回の部材切断はポート用の部材を除きラジアタパインを購入したホームセンターに依頼してしまいました。  その手間賃は\700程で済みましたが、大変信頼性の高い切断サービスで切断誤差は0.2mm程度という高レベルのものです。 無論自分で切断してカンナで仕上げれば同じ精度のものは出来ますが、並行して取り掛かっているトイレットペーパーホルダー付収納の事もあり時間節約でそうしています。

何でも自分でやらないと本格的な日曜大工ではない!という考え方をする方もいますが、実用性を重んじる私のやりかたでは、別に拘りはありません。 但し曲線切りや抜き穴は精度が出しにくいので嫌がるところが多く、自分で加工しています。

スピーカー作りは単純に箱を作ればよい!というものではなく、集成材を使ったときのトラブルの防止のため余計な作業もあるため完成までには至っていませんが、作業の様子は以下の写真と説明を参照ください。

ホームセンターで切断してもらったラジアタパイン集成材。 手抜きではなく時間と費用を考えた合理的な方法だと思います。

前板と裏板の2次加工。 電動ジグソーCJ-250)で切り抜き、替刃式ヤスリ2種類(平のM-20GPと丸DP-1000で仕上げました。

電動ドリルアタッチメントを使って底板と前板/背板接合部分に、深さ10mm木ダボ穴あけ。 穴の深さをプリセットできるので便利です。

その穴にマーキングポンチを嵌め込みます。

接合する相方(これは背板の下部)を上に軽く当てて位置をよく確認したらぐっと押し込みます。

木口面にマーキングポンチによる円錐状の凹みがつきました。

そこに深さ22mmの穴をあけます。 このスタイルで穴あけをすると実用上問題の少ない垂直出しがしやすいです。
こうして背板と前板の下部に同じ方法で穴をあけておきます。

次にバスレフポートの部分を9mm合板から作り木工ボンドで接着しますが、180mmハタ金を使って圧着保持しています。

それを背板内側に貼り付けました。 こちらもハタ金を使って圧着保持しています。

ハタ金の圧着保持をしたまま底板と前板/背板を木ダボで接合。 自作中型クランプで強く締め上げ、接合部分を完全に密着させています。 接合分の直角度出しと捩れが発生しないよう注意。 (このまま5時間放置)

前板、背板と底板が接合されました。 側板が接合される部分の角に万が一段差がある場合には、完全に削り落として修正しないと先には進めません。 (その修正の為に寸法が若干変わるよりも重要です。)

側板を貼り付ける木口に木ダボ位置を印して深さ22mmの穴をあけます。 私は11本の木ダボを使いました。

穴をあけ終わったらマーキングポンチをその穴に挿入します。

そしてそっと側板を載せて位置の調整をしてOKとなったら上から押さえ付けてマーキングポンチによる印しを付けます。

深さ10mmの穴あけで、再び電動ドリルアタッチメントの活躍です。

木ダボを叩き込んで接着剤を塗りつけて接合の準備がOK。

板を当ててその上から玄翁で叩きこんでやりますが、これだけでは密着させるのは不可能です。

ちょっとやりすぎとお思いかもしれませんが、11本のハタ金で圧着保持しました。 無論隙間の発生は全くありません。


 ちょっぴり補足
 スピーカーボックスの組み立てで最重要項目は十分な強度を保ちながら全く隙間無く接合することです。
 その理由は音質に影響するからでこれを決して甘く見てはなりません。 この辺りはトリマー収納ボックスやA4サイズの
 箱を作ったときの組み立て方と全く異なります。 正確に接合するのであれば木工ボンドに隠し釘併用による接合の方が
 遥かに優れていますが、完全密着接合を求めるためここでやっているように木ダボ併用の木工ボンド接着で、クランプ・ハ
 タ金などによる十分な圧着保持をするかネジによる締め付けの必要が出てきます。 

 外観に拘らない! 或いは作業に自信が無いのであれば、隠し釘を使って正確な接合をした上でネジで締め付ける方法
 を取れば、木ダボ接合よりも簡単に作業できますし、音質的に好結果を得られます。



5時間以上放置して片側の側板貼り付けが終了です。

反対側の側板も貼り付けが終わりました。 実は設計時点では側板の木目方向は縦で考えていました。 しかし何となく横の方が収まりがよさそうで側板は正方形でしたので最終的に木目を横方向に貼り付けました。 こんな距離からでは一見完璧な精度の高い接合がされているように見えるのですが?

接合部分の僅かな段差、はみ出たまま固まってしまった木工ボンド、接着時の汚れなどこのままではまずい部分が結構あります。


 完全にぴったりと隙間無く接着することを優先し位置精度は若干目をつぶっているため、接合部分の段差が若干発生して
 いますし、木工ボンドの拭き取りも完全ではありません。(どだいハタ金の裏などは拭き取りようがありません。)
 また接着時の汚れ(上の写真は新聞紙がくっついてしまったもの。)もあり、このままでは完成度が大変低いです。

 そこでサンドペーパーで研磨してこれらの問題を取り去るのですが屋外での作業になり、今日は雨模様なので今週はこ
 こで作業を止めます。  しかしサンドペーパーによる研磨は0.5-1.0mmも削り取ってしまうかなりの荒療治であり、
 合板やランバーコアの場合には使えないテクニックです。(コンマ数ミリの表面材は無くなってしまう!)






2006/02/10

製作の続き

接合面に発生する僅かな段差を無くすことと、はみ出たり表面にくっついてしまった木工ボンドを剥がす作業に入りました。 私の取っている方法は段差で木口が出っ張っている部分は、電動トリマーにコロ付かさ付目地払いビットMB-12.7G)を使って削り落とし、木口が引っ込んでいる部分と木工ボンドの削り落しには電動サンダーS-5000)に先ず布地ペーパー#60を取り付けてやります。 完全に段差が無くなり木工ボンドも削り取れたらペーパーを布地#240に替えて仕上げ研磨します。 若し表面に研磨痕(粗目のペーパーによる研磨傷)が多ければ#240の前に#120を使うと短時間で研磨痕は取れます。

電動トリマーが無ければ大きな出っ張りは粗目の木工ヤスリで出っ張りが0.5mm程度になるまで落し、後は電動サンダーを使えばよいでしょう。 研磨の主役は電動サンダーでこれは想像以上に作業性が良く1.0mm程度削るのもさして時間が掛かりません。
この研磨作業はスピーカーの音質には関係ない作業ですが、外観においては大きな違いが生じますので、面倒がらずに丁寧にやりたいものです。

尚この研磨では木工ボンドを完全に削り落とすことが大変重要ですが、ただ削っただけではきちんと取り除けたのかどうか判りません。 その確認に簡単・確実な方法がありますが、それは後ほどの写真をご覧下さい。

研磨が終了したら飾り前板を貼ってしまいます。 そして飾り前板の横に出る僅かな出っ張りをコロ付かさ付目地払いビットで削り落とした上で表面を凸曲面に仕上げますが、カンナでおおまかなカーブを削りだし、電動サンダーに#60を取り付けて削り込み、テンプレートをあててOKとなったらペーパーを#240に替えて磨き上げてやります。

また天板も前縁を凸曲面に仕上げますが、テンプレートを貼ってジグソーで切断、替刃式で仕上げ研磨とします。

そこまで出来たら細かな木屑を全て払い落とし、箱の内部を油性ニスで2回塗りします。 この目的は集成材が湿気を吸ったり吐き出したりすると膨張・収縮が繰り返されて、集成材の貼り合わせ面が剥がれてしまう問題を防止するためですので、塗り斑や刷毛斑は気にすることなく、十分にニスを沁み込ませる事に留意します。 尚天板の内側も最終的にはニスを塗るのですが、片面だけ塗ると板が反ってしまいますので、天板貼り付け後にします。(後掲の写真で如何に反り易いかがご覧いただけます。)

ニスが乾燥しましたら天板を貼り付けますが、この接合にも木ダボを使いました。 前の接着と同様隙間が出ない完全な密着が重要ですので、ハタ金やクランプで十分に圧着保持します。 設計時点で天板の横は3mm出っ張るようにしてあり、これを削り込んで2mm程度の出っ張りにするため、接合時の位置精度はそれほど深刻に考える必要ありません。 強いて言えば背面で天板木口が僅かに出っ張る程度にして置けばよいです。

残るは表面の塗装作業とフロントグリル作りですが、ここまで出来れば試聴が可能ですのでユニットと端子盤を固定して音出しをしました。 まだエージングが必要なために荒っぽさが目立ちますが、素性の良さは見え隠れしています。

接合部の木口突出はコロ付かさ付目地払いビットを使えば簡単に落とせますが、修正研磨の主役はなんと言ってもこれS-5000 ミニサンダー)です。 片手操作が通常のサンダーより遥かに楽に出来るのでもう一方の手は作品を押さえることに専念します。 

 上は先週お見せした研磨前で、下が研磨後に同じ部分を撮影したものです。 電灯光下と自然光によるカラーバランスの
 違いがありますが、綺麗に段差が無くなっている事がわかると思いますし、右の写真では接着時にくっついてしまった新聞
 紙も削り取られています。

 はみ出たり表面にくっついてしまった木工ボンドが完全に削り取られたかどうかのテストです。 左の写真はそのままです
 が、右は表面を水で濡らしたものです。 この例では木工ボンドは全く残っていません。

 水で濡らしていない左の写真では一見全く問題ないように思えますが、水を濡らした右では矢印の先に縦にうっすらと白っ
 ぽいものが見えます。 この白っぽいものは木工ボンドの皮膜で、更に削りこむ必要があります。

 この木工ボンドの検出方法は大変簡単ですが大変鋭敏です。 左の写真はやはりなんともないように見えるのですが、
 水で濡らした右では2箇所白っぽく浮き上がりました。 上の矢印は付着した木工ボンドの塊が取りきれなかったもので、
 下の矢印は集成材を製造時の貼り合わせ部分の隙間にある接着剤です。 後者は落とす手立てがありませんが、前者
 は更に削り込んで落とせます。

飾り前板を貼り付けましたが、この前に飾り前板の上の木口だけは替刃式ヤスリで磨き上げておきます。左右は1mmずつほど出っ張るようになっていますので、その出っ張りは完全接着後にコロ付目地払いビットで落とします。

曲面をできるだけ正確に切削・研磨するための2種類のテンプレートを印刷し、天板の前縁と端材の5mm厚MDFに貼り付けました。 テンプレートの実物大図面はこちらです。

天板前縁はジグソーでテンプレートの線の少し外側をジグソーCJ-250)で切断し、替刃式ヤスリM-20GP)で仕上げました。

余談ですが型紙を剥がすために水で濡らした天板前縁(右側手前)は水を吸って膨張しこんなに反ってしまいました。 完全乾燥すれば元に戻るもののこの性質は要注意です!

端材のMDFで作ったテンプレートはジグソーで切り抜き替刃式ヤスリDP-1000RS-310P)で成形しました。

飾り前板はカンナで角を落としますが、テンプレートを当てて形状が近しくなるよう確認しながら進めます。

削りすぎは禁物。 このようにテンプレートを当ててあと0.5mm位かなー? のところで止めます。

その後で電動サンダーS-5000)#60のペーパーを付けてテンプレートの曲線どおりになるよう研磨してペーパーを#240に替えて仕上げます。 尚角はサンダーでは削り過ぎ易いので、替刃式ヤスリで成形します。

夕食後に15%の薄め液を加えた油性ウレタン透明ニスを箱の内部だけ2回塗りしました。 刷毛斑塗り斑等は一切気にする必要無しです。

スピーカーや端子盤取り付けの木口も忘れずに。 1回目は特にたっぷり沁みこませてやり、寝る前にもう一度塗っておけば翌朝には次の作業に入れます。

箱本体組立作業の最後の工程、天板貼り付けです。 ご覧のように木ダボ12本を併用した木工ボンド接着です。

圧着保持には手持ちのハタ金やクランプは短くて使えませんので、自作中型クランプを使用。 これでもかというくらいネジを締め上げて密着度を確保しています。

5時間後にスピーカーユニットと端子盤を固定し、取り敢えず試聴できる状態になりました。 とは言っても暫くはエージングをしないと本当の音にはなりませんので、比較試聴はまだ先です。




2006/02/17

製作の続き 2

スピーカーユニットと端子盤を外し、#400ペーパーをハンドサンダーに付けてもう一度全体を研磨し、塗装に入りました。  今回はチーク色油性ウレタンニスを2回塗り、透明の油性ウレタンニス1回塗り、つや消し油性ウレタンニス1回塗りの計4回塗りとしております。 また一度に全体を塗るのは不可能ですので、天板とその縁、背面、前面スピーカー周りは6時間後に別工程としています。 従って1回塗りに2工程取りますので6時間の乾燥時間を考えると、1回塗り辺り12時間掛かるということで、4回塗りが終わるには計48時間を使うことになります。

そんなに時間が掛かるのではとてもたまらない!というのであれば、水性ウレタンニスを使えば1/5位に短縮可能ですが、ことスピーカーの塗装の場合、音質的には油性ニスが最適だと言われていることも覚えておいて良いと思います。

どちらにせよきちんと塗装することは集成材の持つ湿度変化で起きる問題を抑えるためにも絶対に必要なことです。

この後スピーカー周りの部分とポートの内壁をつや消し黒のペイントで塗りつぶしました。 そして内部に吸音材(ミクロンウール)を挿入しますが、音波が反射する対向面の片側だけに貼り付けました。 吸音材を沢山使った方が良い!という考え方もありますが、私は箱の持つ良い響きを殺さずに内部に発生する定在波(鳴き竜現象)を抑える目的だけの方が良いと言う考え方ですので、定在波だけを抑える最小限の量を基本とすることが多いです。

塗装作業にかなり時間を費やしたのと、趣味の領域の新型ピンホールカメラの製作構想にも時間を掛けたこともあって、フロントグリルはまだ完成していません。 その辺りは比較試聴結果と合わせ、次回にお知らせいたします。

お昼時に塗装のスタート。 チーク色油性ウレタンニスに薄め液を20%加えかなり薄くしたものを塗りました。 これは薄い色を求められていることと着色斑の防止に大変効果があります。

スピーカー周りはこのように塗料が周りこんでしまいこのままでは着色斑になりますが、最後につや消し黒で塗りつぶすので問題ありません。

6時間後(日の沈む少し前)にひっくり返して天板とその縁、そしてスピーカー周りを塗装して1回目が終了です。

更に6時間後(寝る直前!)に2回目の塗装をしました。 塗膜が薄いのでこの間研磨はしていません。 色味が1回目よりほんの少し濃くなりました。 これで一晩寝かします。

翌朝天板とその縁、そしてスピーカー周りの2回目の塗装をしています。 天板や前板などで1回目では白っぽさが残っていた部分も色載りしています。

昼食後、スポンジ研磨剤(極細目 #320-#600)で軽く研磨し、透明油性ウレタン艶ありニス(+10%の薄め液)で塗装、更に感想後つや消しニス(+10%の薄め液)と続け合計約50時間でニス塗りは完了しました。

これはチーク色ニス2回そして透明ニスを1回塗った状態で、ご覧のように表面はぴかぴかで良く反射します。

同じ部分につや消しニスを更に塗ったあとで、にぶーい艶のため反射はかなり抑えこまれています。

天板角部分のアップ。 つや消しニスによるこのなんとも言えないシックで格調高い質感が私は大変好ましく思っています。

殆ど艶がないということは実は塗装斑も目立ちません。 塗装技術が2段階特進したのでは?と良い意味の勘違いをするかもしれません。

塗装作業最後はスピーカー周りとポート内部をつや消しの黒で塗ります。 このように塗装しない部分をマスキングテープと新聞紙で覆いスプレー塗料で2回塗りしました。

乾燥後新聞紙とマスキングテープを剥がしました。 これで塗装作業は無事終了です。

スピーカーユニットを取り付け吸音材を貼り、端子盤への接続も完了しました。 後は比較試聴とフロントグリル製作を待つのみです。




2006/02/24

製作の続き 3

 今回作るグリルは横方向に緩く凸面となっています。 実はジャージーで覆って正確な凸面を出すのは不
 可能です。 しかし縦方向に多数の桟を入れてやればかなり曲面に近づけることが可能ですので、ちょっ
 ぴり面倒ですが9本の厚さ3mmの桟を入れることで設計しています。
 本当はもっと薄い方が音を阻害しない点でよいのですが、市販の細い棒にはそのようなものがなかったの
 で厚さ3mm、幅10mmのヒノキ棒を使っています。 (左の図参照)

 上下の側板はカマボコ状の形になり、ここに9本の桟を嵌め込む溝を切り込みます
 が、この加工にはトリマーを使いました。 作業性の良さと正確さで他の方法より
 遥かに効率的です。  グリルの組立ては全て木工ボンドによる貼り合わせです
 が、最後の桟を嵌め込んで接着するのを除きハタ金で圧着保持しています。
大げさな感じがしないではありませんが、接着力に大きな違いが生じます。 (右の図は部材寸法図)

組立てが終わったグリルは所定の寸法になるようカンナと替刃式ヤスリを使い成形しました。 桟の部分は
10mm幅をそのまま嵌め込んでいて端の方になればなるほど突出しますので、これをカンナで削るわけで
すが、接着剤が完全に硬化した後はかなり全体の強度が上がりしかも掴みやすくなりますので、所定の幅
に桟を削ってから嵌め込むよりも作業がしやすいと思います。

こうして出来たグリルにジャージーを巻きつけてG-17クリヤーで接着すればフロントグリルは完成します。
このグリルはスピーカー本体の上下のの出っ張りの間に挟み込むだけで固定します。 ジャージーを貼った
後に適度な摩擦で嵌り込むようグリル外寸は1mm小さく作られています。

カマボコ状に少し大きめに切断した4枚の上下の側板を挟みトリマーで溝堀の準備をしました。 沢山見える線は切断位置やガイドの位置を表す線です。 両側に挟んだ板は厚みが14mmあります。

一番右端の溝を彫る為にガイドをセットしたところです。 後は3mmのストレートビットで10mm掘り込めば側板には4mm掘り込まない部分が残ります。

9本の溝を彫り終わったところです。 ご覧のように手前の押さえ板から掘り込み、終わりは上側の押さえ板の途中までになっています。

こうして溝を彫り終わった上下の側板。 トリマーを使ったこの方法は切削の正確さと作業時間の速さでベストだと思います。 

グリルを作るほかの部材も切り出しいよいよ組立ての開始です。

まず背板の端上面に左右の側板5.5 x 5.5 x 113mm)を接着しハタ金で圧着保持します。

2時間後にに上下の側板を背板の上下断面に接着しハタ金で圧着保持します。

更に2時間後に9本の溝に桟を嵌め込み接着します。 これだけは圧着保持する必要はありませんが、背板が反ってきますので、それを強制的に補正するためハタ金で逆反りの力を加えています。

挿し込んで接着したヒノキ棒は全て幅10mmですから、このように端は突出します。(上) それをカンナで削って、替刃式ヤスリで所定の形に成形します。(下)

スピーカーのグリル固定部分内寸よりグリルの外寸は、1mm小さくなることを確認しておきます。

フロントグリルの前面側だけをつや消し黒のスプレー塗料で塗装します。

そしてジャージーをボンドG-17クリヤーで貼り付けました。

ジャージーを貼った接着剤が完全に乾燥後、フロントグリルを挿し込んで(圧入)8cmバスレフスピーカーシステムは完成しました。 いまどきムクに近い材料で作られたボックスを商品として生産しているメーカーはありませんから、自作のみで実現できて楽しめる領域です。

同じ系列のユニットを使った3種類のスピーカー(左から音響迷路型TQWT、今回作ったバスレフ型間の比較試聴の様子です。 その結果については下の解説をお読みください。


比較試聴の結果

完成したFE-87Eバスレフスピーカー(バスレフと呼びます。)は、前の製品のFE-87を使ったミニタワー(TQWTと呼びます。)小型音響迷路型(音響迷路と呼びます。)と比較試聴しました。 使用したアンプは小型オーディオコンポとしては比較的上のクラスのDENON DRA-F101(AM/FM Receiver)DCD-F101(CD Player)で、安物ばかりになってしまったミニシステムの中で、数少ない大人のミニコンポと言えるでしょう。


 今回製作したバスレフ型

 3種類の中では最も中庸で際立った魅力こそありませんが、癖もない優等生的な音がします。 中音についてはボーカルの
 分別能力は音響迷路に譲るものの、どんなソースを聴いてもヒステリックにならずハイエンドまで再生します。
 低音の量感はTQWT程ではありませんが、所謂量感に左右されやすいレンジに膨らみをもたせた効果は十分出ています。
 ブックシェルフタイプですので、周りを本で囲まれたような置き方をするとバッフル効果が出てきて更に低域の量感は上がる
 でしょうが、ボーカル領域に中低音が被ってくるかもしれません。



 TQWT

 このスピーカーは曲者です。 TQWTの宿命とも言える洞穴効果の影響が残り、他のスピーカーよりもより中低音の残響音
 が残ります。 言ってみればライブ(反響の大きい)な部屋で聴いたように聴こえ、これが音の奥行き感を増大しています。
 このためにボーカルの分解能は他より悪いのですが低域の迫力は3種類の中では圧倒的に高く、なんとなくフワーッとした
 そして屈託なく鳴り響く耳障りでない音の出方と共に、大きな魅力として評価できます。



 音響迷路型

 このスピーカーも曲者です。 コーラスを聴くと最高!という極めて高い分解能が中音にあり、まるで「ボーカル分析器!」
 です。 多分FE-87の持っている中音の良さが最も出ているスピーカーだと思います。 それはバスレフにおける低音の高
 い方の音やTQWTの洞穴効果などによる中音悪化の影響を受けていないためだと思われます。
 但し音楽ソースによってはヒステリックに聴こえることがあり、ソースを選ぶ傾向があります。 また低音については結構下ま
 で伸びているのですが、音量レベルが低いのでかなりバランスが悪く聴こえます。 ためしにバスブーストを6dB掛けてみた
 ところバランスが良くなりましたが、耐入力が低下しますから音量は余り上げられません。




結論としてどれがベストと決め付けるのは困難です。 体調が良くてそれこそ音楽ソースのあら探しをしようと考えたら、また再生レンジの狭いコーラスを聴こうとしたら音響迷路が絶品ですが、音楽を聴くことに集中せずながら的に楽しみたいのであればTQWTということになります。 バスレフはソースを選ばず素直さでは特筆に価しますので、これ1本!、或いは初めてスピーカーを作る!という場合には、完成後の満足度は最も高いのではないかと思います。

ほぼ同じユニットでも箱の形式の違いにより随分と表情が変わってしまいますので、如何にスピーカーユニットの持っているポテンシャルを発揮させるかとなると、大変面白い奥の深い領域です。

----- 完 -----

 
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