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ヘッドフォーンアンプ3
   
2012/07/13

構想

  (ノギスの下左側が通常のDIP8、その右の小さい物がAD8397A
 ヘッドフォーンアンプのプラットフォームが完成したので色々なオペア
 ンプを試験していったところ大変興味あるものを発見しました。
 メーカーはアナログデバイセスで型番はAD8397Aです。

 電源電圧は±1.5V〜±12Vと電源電圧が低い方にずれていますが
 驚くべきはその低負荷駆動能力で、電源電圧±1.5Vで25Ωの低負
 荷でも動作OKとあります。 しかもレールトゥーレールタイプという出
 力電力が電源電圧ぎりぎりまで取り出せるタイプです。

 電池で動作させるポータブルヘッドフォーンアンプの場合高いインピー
 ダンス(100Ω以上)や低いインピーダンス(30Ω以下)に対して駆動
 能力が不足気味になります。 電源電圧を上げてしまえば解決できる
 部分も多いですがそうすると電池がかさばり重くなります。
 トランジスターのバッファーを追加して駆動能力を上げる例が多々見
 受けられますが、トランジスターバッファー段の性能(歪)がオペアンプ
 より悪くなりやすいようで面白くありません。 よってこのようなオペア
 ンプは救世主に思えるのでプラットフォームに乗せてテストしました。

これまでに購入したオペアンプの中では最も高価(\840.-)な上にこのパッケージはSOICという表面実装タイプですので慣れ親しんでいるDIP 8ピンに変換する基板やピンヘッダーも購入しないとなりません。
従って一個で合計\1,000.-を超える出費になります。

ところでDIP 8ピンに変換後は金メッキをした0.5φの脚になりますから、プラットフォームのICソケットに挿して実験できます。

そのテスト結果を以下にお見せしますが、先日御紹介した高性能の
LME49720をあっけらかんと負かしてしまう超優秀な物理特性を誇ります。(物理性能と音の良さは必ずしも一致するとは限りませんが?)

以前紹介したLME49720のデータも比較用に載せましたのでとくとご覧下さい。 電源電圧は±4.5Vと±2.7Vとしていますが、これは006P乾電池を使うと想定し、新品時の電圧(9.0V)と寿命が尽きた時の電圧(5.4V)での最大出力電力の違いを測定しています。 消費電流は当然最大出力電圧時の値ですが、通常のリスニングレベルでは17〜19mA近辺で余り変化しません。

動作
電圧
負荷
抵抗
AD8397A LME49720 出力
増加率
最大出力電圧 最大出力電力 消費電流 最大出力電圧 最大出力電力 消費電流
±4.5V
(新品)
300Ω 3.9V 50.7mW 21mA 2.4V 19.3mW 25mA 2.63倍
100Ω 3.8V 144mW 31mA 2.0V 39.2mW 30mA 3.67倍
50Ω 3.8V 289mW 47mA 1.6V 52.9mW 33mA 5.46倍
30Ω 3.7V 456mW 69mA 1.2V 48.2mW 33mA 9.46倍
16Ω 3.3V 681mW 104mA 0.8V 38.1mW 33mA 17.9倍
±2.7V
(寿命)
300Ω 2.0V 13.3mW 18mA 1.2V 4.7mW 23mA 2.83倍
100Ω 2.0V 40mW 23mA 1.0V 9.8mW 25mA 4.08倍
50Ω 2.0V 80mW 31mA 0.8V 13.2mW 27mA 6.06倍
30Ω 1.9V 120mW 41mA 0.6V 13.5mW 30mA 8.89倍
16Ω 1.8V 203mW 64mA 0.5V 13.2mW 33mA 15.4倍

LME49720が真っ青になるような結果です。 同じ負荷抵抗で得られる最大出力電圧はAD8397Aの方が大きいのですが、この時の消費電流はそれに比例して大きくなってはおりません。 これはエネルギー利用効率が良いため損失となって利用できないエネルギーが少ないためで、大変大きな利点です。 また負荷抵抗が小さくなると出力増加率がどんどん大きくなっていますが、これは正に低負荷駆動能力が高い事の表れです。

これを見ていて私はあることをふっと考えました。 それはエネループを6本使った電源で十分駆動できそうだな? というひらめきです。 充電時に7.2V、放電終了時に6Vと006Pの場合より電圧幅は狭くなりますが、駆動能力に問題は出ないはずです。 単四のエネループを使えば750mAHの容量ですから最大で35時間、音量を上げ気味にしたとしても30時間は持つでしょう。 006Pでしたら23時間位しか持ちませんし充電池ですから大変経済的です。 以下が実験結果一覧です。

オペアンプ名 動作電圧 負荷抵抗 最大出力電圧 最大出力電力 消費電流
AD8397A ±3.6V
(満充電)
300Ω 2.7V 24.3mW 19mA
100Ω 2.7V 72.9mW 26mA
50Ω 2.7V 146mW 37mA
30Ω 2.6V 225mW 52mA
16Ω 2.5V 391mW 81mA
±3.0V
(放電終了)
300Ω 2.3V 17.6mW 18mA
100Ω 2.3V 52.9mW 24mA
50Ω 2.2V 96.8mW 33mA
30Ω 2.2V 161mW 45mA
16Ω 2.1V 276mW 70mA

十分なゆとりを持って全ての負荷抵抗において必要な最大音量を得られます。  まだ電池を減らしても大丈夫そうなので、更にエネループ4本の場合のテストをしてみました。 以下はその結果です。

オペアンプ名 動作電圧 負荷抵抗 最大出力電圧 最大出力電力 消費電流
AD8397A ±2.4V
(満充電)
300Ω 1.8V 10.8mW 18mA
100Ω 1.8V 32.4mW 22mA
50Ω 1.8V 64.8mW 37mA
30Ω 1.7V 96.3mW 39mA
16Ω 1.7V 181mW 58mA
±2.0V
(放電終了)
300Ω 1.5V 7.5mW 17mA
100Ω 1.5V 22.5mW 20mA
50Ω 1.4V 39.2mW 26mA
30Ω 1.4V 65.3mW 34mA
16Ω 1.4V 123mW 50mA

放電終了電圧にて負荷抵抗300Ωの時にのみ必要な最大出力が得られませんでした。 しかし使用するヘッドフォーンをヘッドフォーンではなくイヤーフォーンにしたとすると、私の記憶では300Ωのイヤーフォーンはなく100Ωが最大ですので問題はないでしょう。(300Ωの音が良いと知られているヘッドフォーンはオープンタイプのため音漏れがあり、公共の場所での使用は適切ではありません。 また外形が大きすぎてポータブル用とは考え難いです。)

単四4本でしたら006Pより僅かに大きくなる程度で済み、電池寿命は長くポータブルとしてバランスの良い内容になりそうです。


それ以外に気が付いた事としては、

  1.周波数特性は方形波で確認しましたが、50KHzの波形も全く変形することなく再現しており、少なくとも500KHzまでフラットな
    特性が得られていると考えてよいでしょう。

  2.若干気になる点としてオフセットが少々大きいです。 ゲインが11倍の時には両チャンネルとも+48mV程出ており、ゲインを
    2.8倍に落としても+11mVあります。 このままではちょっと不安が残りますので、調整回路を追加する必要があります。

  3.電源ON時のポップノイズはプツンと出ますがヘッドフォーンを破壊するような心配はないでしょう。 OFF時にはポップノイズは
    発生しませんでした。

  4.上の表を見て判りますが、低インピーダンス負荷の場合の最大出力時の消費電流はかなりウ増加します。 オペアンプの
    耐性はかなりありそうですが、ポリスイッチを使った消費電流制限(例えば50mAのポリスイッチを使い100mA以上は遮断し
    て流さない。)
を追加する方が安全です。


ということで若干の宿題があるもののAD8397Aの良い所を引き出せるような設計を考えてポータブル版の真打ちの製作を進めたいと思います。



2012/07/20

基本構成・構造の検討

 プラットフォームでのテスト中に気付いた問題点を潰す前提で回路
 構想に入りました。

 まずオフセット電圧問題ですが、本格的なオフセット調整を考え始
 めると回路が複雑になります。 またDCサーボも考えたのですが
 これも回路が複雑になるのとオペアンプを1個追加するので消費
 電流が10mAくらい増加しますので、これも面白くありません。

 結局非反転増幅回路で入力に並列に入る抵抗と帰還抵抗の値を
 一致させてオフセット電圧を打ち消す方法と、帰還回路にコンデン
 サーを追加しDCの増幅度が1になるようにして、若干の残るかもし
 れないオフセット電圧はそのまま出力に出る(通常は増幅される)
 という手立てでどうかな?と考えています。

 左がその基本回路ですがR1とR2の値を一致させるのは、入力イ
 ンピーダンスを上げようとすると帰還抵抗に高い価が必要になり
 ノイズ発生上うまくないので入力インピーダンスは抑え気味にしな
 いとなりませんが、どこで妥協するかが問題です。
 C2のコンデンサーがあるとオペアンプの半転入力とGNDの間はDC的に無限大となるため、DCの増幅度は1になります。 このためオフセット電圧が若干残ってもそれが増幅されて出力に出ることがありません。  この回路には低域カットオフが2箇所出来ますが、 C2を大きめにして十分に低い周波数にすればよいでしょう。

実は通常のC2の無い状態でも、R2とR3の並列値 = R2xR3/(R2+R3) とR1を一致させるとオフセット電圧はキャンセルされるのですが、C2ありの場合よりもR1の値は更に小さくなってしまいます。(入力インピーダンスがより下がる。) またオフセット電圧はアンプのゲイン分だけ増幅されて出力されます。

プラットフォームで発見したもう一つの問題である大きな消費電流で自己破損する可能性を防ぐには、以前にも書いたようにポリスイッチを挿入する方法を第一に考えたいと思います。 50mAのポリスイッチであれば実際に作動する電流は2倍の100mAですから、実験結果からすると電池6本または電池4本で最大出力の時作動するようなことはありません。 出力端子の短絡の場合には即動作するだろうと思います。

ここで出力端子に直列に抵抗を挿入する方法も考えました。 このアンプの原型の提唱者であるChu Moy氏も発振防止として20〜50Ωを挿入した方が良いような事を言っておりますが、それ以外にヘッドフォーン端子をショートした時オペアンプに流れる電流を抑えてくれるので破損防止になります。

但しそうすることは内部インピーダンスが極めて低く低負荷駆動能力の高いこのアンプの一番の特徴を殺す事になるので、当面はポリスイッチで実験を進めます。

 以上を考えながら暫定的な回路図を描き上げてみました。 左の図がそれで勿論
 これが最終と言うわけではありませんし、ブロック単位での動作検証必要ですが、
 それなりにまとめたつもりです。

 オフセット対策については、前の図でR1、R2となっている抵抗は33KΩとします。
 この値が入力抵抗になりますが、私としてはこれ以下にしたくないと考えていま
 す。(このアンプが繋がる物への負荷が大きくなるので。) そしてR3は10KΩと
 しましたのでゲインは4.3倍となっています。

イヤーフォーンとして最も高いインピーダンスの100Ωで変換感度が100dB/mWの場合10mWの出力電力が最大音圧を得るのに必要ですが、その時の出力電圧は1Vになりますので入力電圧として230mVほど必要になります。 これも妥当な所だと思います。

先にも触れたようにこの回路にはハイパスフィルターが2箇所入りますが、トータルの低域周波数特性を決めるカットオフの高い方は10Hz、低い方が0.16Hzです。 10Hzのカットオフは十分に低いとは言えませんが、今までの経験からすれば低音不足に陥る値ではないと考えています。

肝心なアンプを構成する部材が多くない(1チャンネル辺り6点。)のに対し電源部を構成する部材は20点以上もあります。 電池部分から見て行くとまずスイッチがありますがこれはシーソー式に押した時だけ動作するモーメンタリートグルスイッチです。 このスイッチでFETが導通状態になるとオペアンプ(LM358N)が動作しこれがFETのON状態を維持しますからトグルスイッチから指を離しても電源ON状態のままとなります。

この状態はシャントレギュレーター(TA76432S)で作られるReference電圧(1.994V)より2番ピンに掛かる電圧が高い間は維持されます。 初期の電池電圧は4.8Vですが消耗するにつれて徐々に下がってきます。 これが4.0Vに下がった時に2番ピンの電圧は1.994V(計算上)になりますが、ここからチョイ下がると1番ピンの出力電圧は電池電圧近くまで上昇しFETはOFF状態となり電池の接続は遮断されます。 そしてスイッチがON側に倒されるまで勝手にONとはなりません。 これで電池の過放電が防止されます。

一方オペアンプ内のもうひとつのアンプは同じReference電圧を使いますが、検出する電圧は先の場合より若干下がった電圧になります。 このため電池電圧が高い時は青のLEDが点灯しますが、6番ピンに1.994Vが掛かる電池電圧は4.2Vに下がった時と計算され、これ以下では赤のLEDが点灯します。 つまり自動的にシャットダウンする前にLEDが赤に変わることを知らせてくれるわけです。 

その左側はTLE2426ILPというレールスプリッターで構成されたバーチャル2電源回路です。 これのお陰で40mA程度までの消費電流であれば正確な±2電源が確保されます。  ということでかなり使いやすく親切な電源回路になると思います。

 この回路に基づいた基盤のレイアウトを考えてみたのが左の図で、これはどの程
 度の大きさになるかを見たかったため作図してみたのですが、盛り込んだ機能を
 考えるとまずまずの感じがしています。

 1作目のヘッドフォーンアンプは66 x 66mmの正方形でしたが今回は50 x 80mm
 で厚みはほぼ一緒ですから体積的には僅かに小さくなります。
 大きな面積の側板を1.5mm厚程度のアルミ板に変えれば厚みが3〜4mm減りま
 す。

 唯一後退した点は音量調整を無くした点ですが、ポータブルの場合音源はiPod
 Nanoにほぼ固定されiPod Nanoが持つレベル調整を使えばヘッドフォーンアンプ
 の音量調整は不要です。

逆にプラス面としてはAD8397Aを使った性能アップ以外にエネループを使った長時間動作(30〜35時間)、電池電圧が4.2Vまで下がるとLEDの色が青から赤に変化します。 更に4.0Vになると自動シャットダウンし再度スイッチをONにしない限り復帰しません。 それと外部充電器を繋ぐコネクターを取り付け、これに充電器からのジャックを差し込むと電池への接続は自動的に切り替わります。 またTLE2426ILPを使った質の高い±電源が得られる。 などなど、機能をかなり増やしたにも拘わらず、大きさが小さくなり無論性能もぐんとアップというポータブルとしてバランスの良い内容になりそうです。

以上の電池4本タイプ以外にも電池6本タイプ、006Pタイプなども検討してみる必要がありますし、専用の充電器も考えないとならないでしょう。(充電するために蓋をはずして電池を出したくない!) 上記のオフセット減少回路の検証実験を経てそれら総合的な回路構想を詰めてゆくつもりでいます。




2012/07/27

基本構成・構造の検討 2

 その後細身の物が出来ないか? や、006Pを使った大きさを極限まで落とした
 物の検討をしてみました。 左は上から先週御紹介した単四エネループを4本
 使った減電圧検出回路が高精度になったもの、それを細身に出来ないかと電
 源回路を若干簡略化して42mm幅まで追い込んだ物、そして006Pを使った最も
 コンパクトな物のレイアウト図です。
 3つのレイアウトに共通しているのは、厚みを抑えるために3mm厚の木の板を
 使う所を1.5mm厚アルミ板に置き換えます。 従って木工作品の典型的な姿と
 は異なりますが、そのお陰で厚みが3mm減ります。

 また図面の左上にある数値は外寸より計算した体積ですが、3番目の006P
 仕様が最もコンパクトで続いて細身タイプ、高精度タイプとなっています。
 尚左の縮小図面の幅は3つとも異なりますが、縮小率を同じにして大きさの
 違いが判るようにしてあります。
 単純に動作精度だけを考えたら文句なく1番目が製作候補ですが、実用上
 問題が出ない範囲の精度のブレであれば、少しでもコンパクトであるほうが
 望ましいわけで、なかなか絞り込みは難しそうです。

 2番目は電源の減電圧検出回路がトランジスタのベースに掛かる電圧の変化を見
 るタイプにしていますが、そのままでは温度変化で検出電圧レベルが変化してし
 まうのでサーミスタを使って補正しようという考えです。
 100%補正は無理にしても0℃〜40℃位の環境で電池の終了電圧(1本辺り1V)
 0.95〜1.05Vのブレでおさまれば十分だと思います。 ±5%の許容値ということで
 すが実際の検出電圧はVbeの0.65V近辺ですから、Vbeが0.62V〜0.68V温度変化
 でブレても良いということになります。 カットアンドトライで何とかそのレンジに追い
 込む必要があります。

ところで006P仕様は1作目では115mm3ありましたから、そこから体積は1/4も減少していることになります。 機能的には他の物に対して電池の過放電保護は必須機能ではないので自動シャットダウンこそありませんが、第一作に対しレールスプリッターを使ったより安定な±2電源が含まれ、減電圧の色変化による表示機能が追加されており、連続動作時間も30時間近くまで見込めるので、電池代を気にしなければ魅力的です。

 以上の3種類の回路的な違いは電源回路のみです。 そこで3種類の電源回
 路だけを取り出してみました。 上から高精度型、簡易型、そして006P使用タ
 イプです。

 高精度型では温度変化に対して十分に安定なリファレンス電圧をシャントレギ
 ュレータで作りそれと電池電圧を比較しますので文句無く高精度です。
 また同様にLEDが青と赤の間で切り替わる電圧も同じリファレンス電圧を使う
 ので温度変化に対し安定しています。

 これに対し簡易型ではトランジスタのVbeの温度による変動をサーミスタで補
 償しようとしていますが、その精度を上げるには相当なカットアンドトライを必要
 とします。 そして精度そのものは上の方式には及びませんが、部品点数が
 減り大きな部品も無くなるので、ケースの大きさは若干減少します。
 (約2パーセントの減少だが細身になるので胸のポケットに入れやすいかも?)

 こう書いてゆくと高精度型と簡易型のどちらを取るかも非常に悩ましい!という
 のが率直な印象です。

 最後の006P型になると電源回路は大変簡単になりますが、性能に影響するバーチャル2
 電源は、レールスプリッターICを使ったものを確保しているので、他の2つと同等です。

 自動シャットダウン機能は使い切ったら捨てるだけの1次電池では必要な機能ではありま
 せんから電源を簡略化できているわけで、決して手抜きではありません。
 以上のような検討をしている時が最も楽しい時間かもしれませんが、既に述べたように3つ
 から絞り込むのは至難の業であり、ヘタをすると3つとも作ろう!何てこともあり得ます。


充電回路の検討

 上の3種類の中で最後を除いたものは充電器も一緒に作らないとなりません。
 というのはケースの構造上蓋を簡単に開けたり閉じたりするのは難しいので電池
 専用のコネクターを設け充電器への接続が自動的になされるようにしてあります。

 さてその充電回路ですが、電源としてはパソコンのUSB端子を利用します。 そう
 することで電源を簡略化できるためです。 充電方式は0.1Cの充電電流で12時間
 充電という、時間は掛かるが簡単で且つ安全度も高い方法にします。

4本の電池を直列にして充電しますので、DC-DCコンバーターで5Vを12Vまで引き上げてやります。 充電時間を制御するタイマーはもってこいのICを発見しましたので、4Vのツェナーダイオードで安定化してこのICを駆動します。 このICの動作は容易で、5番ピンを8番ピンに接続すると6番端子が充電時間の間だけハイレベルになります。 そこで6番ピンにトランジスタのベースをつなぎコレクターをFETのゲートに繋ぎます。 こうするとスタートスイッチを押すとFETは充電時間の間ON状態となるので、所定の電流がエネループに流れ充電できるという次第です。

充電電流の定電流化はLM317LZを使います。 回路図で16.7Ωとなっているのが電流値を決定する抵抗で、1.25÷16.7 = 74.9mA によります。

余計な消費電流を抑えるために表示系もシンプルで充電中に赤のLEDが点灯(点滅もせず1mAの電流で点灯するだけ。)としています。 よってLEDが消灯したら充電完了となります。 消費電流はUSBから取り出せる電流の上限が500mAとされており無理はできませんので極力抑えようとしていますが、現在のラフな計算では260mA位となっています。

ということで構想としてかなり進んではいますが、現在製作中のアンプ2種類のこともあり製作着手はまだまだ先になります。



2012/12/21

基本構成・構造の検討 3

基本構成・構造の検討 2から5ヶ月が経過していますがTV連動型アンプが完成しましたので、こちらのテーマに本腰を入れることにしました。 と言っても構想がまだ詰まりきっているとは言えませんので、更に突っ込んだ検討を加えました。

検討1
 そのひとつはオフセット電圧対策です。 既に提示しているオフセット電圧低減方法はパッシブDC
 サーボ回路とも呼ばれるようですが、左の図の上段には以前提示した回路とその右に交流レベル
 の動作と直流レベルの動作を記しました。 直流レベルではGainが1になるのでオフセット電圧が
 増幅されませんが、オフセット電圧を最小とするにはR1とR2が等しくなる必要があります。
 (ここでは47KΩとなっている。)   ところでR1はアンプの入力抵抗となりその前に繋がるDCカ
 ットコンデンサーやVRへの影響を考えると極力大きな値としたいところです。 一方R2はアンプの
 増幅度を決定する帰還抵抗ですがアンプの雑音発生を抑えるには小さな値の方が良好です。

 このような相反する条件があるので妥協をした回路定数となりやすいです。
さて下段の回路もパッシブDCサーボ回路でR3という抵抗が追加されただけですが、交流レベル動作ではR2とR3を並列にした値が上段のR2に相当するため、R2が大きくても帰還抵抗値となるR2とR3並列値は低く抑えられますから上段のような妥協の問題がありません。 一例として回路定数を計算してみましたが、上段では入力のVRの値の4.7倍を入力抵抗(47KΩ)とし、DCカットコンデンサーのカットオフを4.8Hzとし、アンプのゲインを5.7倍として計算してあります。 そして下段では同じ条件を守りながら定数を変更して、VRの値を3倍に、入力抵抗を5倍の150KΩ、DCカットのコンデンサーを0.7μFから0.22μFと小さくしたため、信号源に対する負荷が軽減され、ノイズ発生に影響する帰還抵抗値も1/10に下げられ!と良いことずくめとなっています。

検討2
2番目の検討はDC-DCコンバーターを使い乾電池2本で駆動する方法を前向きに使おうとしていることです。 電源電圧を変化した時のAD8397Aの駆動能力は±2.4Vの時に16Ωから300Ωの負荷に対し十分な駆動能力があることが確認されています。 ということはレールスプリッターに5V出力のDC-DCコンバーターを繋げば満足されます。

過去にLED駆動用に5V出力で最大200mAを取り出せる小さなDC-DCコンバーター(右写真参照)を使っておりますが指定入力電圧は0.7V〜5.0Vでした。 乾電池2本直列で最高3.0V、最低1.8Vですから使用可能範囲です。

このDC-DCコンバーターは余り上等な動作は期待できそうにありませんが、サイズが10x10x8mmと小さい、1個\500と格安でである点が魅力的であり、ヘッドフォーンアンプの消費電流は30〜40mAと小さいのでDC-DCコンバーターへの負荷は軽く問題はなかろうと思いますが、確認のために実験しました。 手持ちの62Ω2Wの抵抗をそのまま繋いだ場合(5.0V÷62Ωで81mAの電流が流れる。)と62Ω2本を直列にして負荷抵抗とした場合(5V時に40.5mA流れる。)で実験しました。
以下はその結果をグラフにしたものです。

このグラフを見て判ることは、124Ωの抵抗を繋いだとき(5V出力で40mAの消費電流となる。)は実際の使用時に近しい状態ですが、1.8〜3.5Vの入力電圧で出力電圧は4.94〜5.05Vとほぼ±1%の変動に収まっています。 62Ωの抵抗を繋いだとき(5V出力で81mAの消費電流となる。)では変動範囲が広がり±2%強になっています。 前者の変動範囲であれば全く問題ないと思うのですが、入力電圧の変化に対しリニヤーに変化しておらず波打っているのは気に食わないところです。

ところでコンバーターが発生する高周波ノイズは発振周波数が200KHz近辺なので、効果は未知数ながら遮断周波数73KHzのLCフィルターをレールスプリッター出力に挿入しアンプ部分に入る高周波ノイズを少しでも抑える画策をします。

 以上2項目を考慮に入れながら4種類の基板・ケース構造を
 検討しました。 左が回路一覧でアンプ部分が2種類、電源
 部分が4種類ありますが、これらの組み合わせで4種類作ら
 れています。

 まだ検討が継続されていますので変更は十分に考えられま
 すが、アンプ回路の違いはパッシブDCサーボの違いで、今
 後のレイアウトの追加検討で1種類に絞り込む予定です。

 電源の方は全てレールスプリッターを使って精度の高い
 ±電源を得られるようにしていますが、1.オートシャットオ
 フ、LEDによる電圧表示、充電器接続回路込みの最も複雑
 な物、2.そこからオートシャットオフ、充電器接続回路を省
 いた物、3.DC-DCコンバーターにレールスプリッターを組
 み合わせた単純な物、4.それにLEDによる電圧表示を追
 加した物の4種類です。

4種類の回路構成のあらまし

1.VR付き 単四エネループ4本使用
ニッケル水素充電池(エネループ)4本を電源としたもので最低電源電圧は±2.0Vになります。 オペアンプ動作実験では300Ωの負荷に対して放電終了時期に駆動能力不足になりますが、ポータブル用300Ωヘッドフォーンが無いためポータブル用途では問題ありません。  尚放電停止電圧を守らないと電池の寿命に影響するので、オートシャットオフ回路を入れました。 電池を4本使うため厚みが大きくなる宿命があり悩ましいところです。 尚この組み合わせだけはVRを内蔵していますが、他の組み合わせのようにVRを省いてケースを小さくする手も考えられます。 専用充電器も作らないとならないため製作難易度は最も高いです。

2.VR無し 単3アルカリ2本、DC-DCコンバーター使用
より大きな単3を使い電池寿命の長いのが取り柄です。 但し2本しか使わないのでケースはそれほど大きくありません。 電源電圧はそのままでは不足しますのでDC-DCコンバーターを使いますが、電池の寿命までほぼ5Vの安定した電圧を供給してくれます。 体積を抑えたかったのでチョークと対になるコンデンサーと電池電圧のLED色表示回路は入れてありません。

3.VR無し 単4アルカリ2本、DC-DCコンバーター使用
2.より更にケースサイズを小さくすべく電池を単4に変更しました。 また上で省略したフィルターコンデンサーと電池電圧をLEDの色で表示する回路も組み込んであり、全体のバランスが取れていてもっともコンパクトで薄い点が最大の売りでしょう。

4.VR無し 006Pアルカリ2本使用
レイアウト図の0.VR付き 006P使用(製作済みヘッドーフォーンアンプ 1.)と同じく006Pを使っていますが、VRを省いたもののパッシブDCを取り入れ、電池電圧をLEDの色で表示する回路も含めていますから充実度は高まっており、ケースがゴロンとした塊のような感じでないのも利点かもしれません。 但しパッシブDCサーボは妥協を強いられるタイプですので更なるレイアウトの検討が必要です。 

以上4種類と既に製作したヘッドフォーンアンプ1の大きさ、予測電池寿命、電池代などの比較を一覧にしました。

  電源 長さ
(mm)

(mm)
厚み
(mm)
体積
(cm2
電池寿命
(消費電流)
電池代
(時間辺り)
電池電圧
LED表示
DC-DC
コンバーター
音量調整
構想 0
製作済み
アルカリ
006P x 1
66.0 65.5 26.5 114.6 27時間
(20mA)
\11 X X
構想 1 エネループ
単4 x 4
88.4 54.3 27.4 131.5 37時間
(20mA)
極小
Auto OFF
X
構想 2 アルカリ
単3 x 2
85.3 49.3 21.3 89.6 65時間
(40mA)
\2 X X
構想 3 アルカリ
単4 x 2
85.3 46.7 20.8 82.9 27時間
(40mA)
\6 X
構想 4 アルカリ
006P x 1
93.0 44.2 25.7 105.6 27時間
(20mA)
\11 X X
青字は最も優位性の高い値であり、赤字はその反対の意味を示す。 電池の価格は4本単位で最も安かった物から計算した。

こうしてみると構想1.は大きいのが難点ですがVRを省いたらどこまで小さくなるかに興味がありますしランニングコストは文句なく第一位です。 構想2.は長時間運転重視であれば価値があり、電池代もエネループに続きます。 3.は最もコンパクトで薄く内容のバランスが良さそうです。 4.は電池代が掛かり余り魅力的ではありません。 中間の結論としては1.と3.で前者は省エネタイプとして後者はコンパクトさを取ってということでしょうか。 しかし何れも更なる内容とレイアウトの検討が必要です。



2012/12/28

基本構成・構造の検討 4

更に構想の検討を進めた中で非常に面白い回路を作りましたのでそれを本題の前に解説しておきます。 その回路とは簡易型LED電圧表示回路で、たった2本の抵抗を使うだけで実現できます。

 これまで電池電圧低下をLEDの色変化で表示するのに右の図のようなものを考え
 使ってきました。 そしてこの回路は定数を適当に選べば4.5V(乾電池3本)から
 9V(006P乾電池)などでうまく動作しています。

 ところが3Vの電池(乾電池2本)の場合終了電圧(1.8V)になる前に赤のLEDが光ら
 なくなってしまいうまくありません。 それを解決する回路が今回考えたもので、私
 がよく使っている3φの赤・青2色LEDに150Ωと5.6KΩを左図のように繋いだ、
 右の回路のトランジスタを抵抗に置き換え可変抵抗を削除したという回路です。

 その動作は、赤のLEDへの電流は青のLED向けよりかなり絞られるので、3Vの電
 圧を加えた時両方共点灯するのですが赤はほんの少ししか光っておらずほぼ全
 面的に青く見えます。  掛かる電圧が低下してくると青のLEDはVfが赤のLEDより
 高いため赤よりも明度の低下が早く進み2.6V近辺で青と赤の明るさはほぼ同等となります。

 更に2.4V程度に下がると青の点灯が終了し赤のみが光ります。 そして1.8V辺りより電圧が下がると赤の点
 灯も終了します。 したがって色と明るさの変化を見れば、おおよその電池電圧状態が判ります。

上の図をクリックすると電源電圧が3.0Vから1.8Vに変化した時の各抵抗両端の電圧変化、両LEDへの電流の変化をご理解いただけます。

若干の問題点としては消費電流が3.0V時に1.8mAあることで、150Ωの値を増やせば少なくなりますが、色が変化する電圧ポイントが高い方向にずれてしまいます。 本音は青と赤の点灯が反転する電圧はもう少し低いほうが使い勝手が良さそうなので、1.8mAはしかたなく許容しています。

電圧変化によるLEDの色変化の様子は以下の写真でご覧下さい。 以下の写真ではLEDの色が判るよう露出をかなり切り詰めました。 このため電圧計の表示が読めませんので、写真中の横線の上だけパソコンで明度を増して文字が読めるようにし下の写真に貼り付けました。 また2枚目の写真では手前のテーブルの反射がやはり露出不足で見えないので白線以下の明度をパソコンで上げています。

3Vの場合は極僅かに赤のLEDも点灯しているのですが、手前の机の上の反射光を見て判るよう全面的に青に見えます。 それに対し右の2.62Vに下がった場合は紫色に見えますが、赤・青それぞれ同じ明るさです。

そして2.4Vまで下がると青は消灯し赤のみになります。 光量はだいぶ下がっていますが、肉眼ではもっと明るく見えます。 更に1.8Vに下がった右では辛うじて赤く見える程度となり1.7Vになると赤も消灯します。



構想検討の本題について

 先週紹介した構想のうち006Pを使った4.はランニン
 グコストが高い、サイズ的な魅力も無いとい理由で候
 補から外すことにし、残り3種類に更なる検討を加えま
 した。 その中で共通事項としてケース構造をヘッド
 フォーンアンプ1と同じにしました。

 どういうことかというと、プリント基板は1mm厚アルミ板
 をロの字型に巻いた中に固定し、それを箱に落とし込
 み箱の底面でネジ固定するというものです。(左図)

 その箱は3mm厚の板をコの字型に貼り合わせて
 1.5mm厚アルミ板2枚で挟んで箱型にします。 こうし
 ておいてロの字アルミ枠と2枚のアルミ板が接触する
 様にしてやれば、アンプ部分は静電シールドされま
 す。 何で静電シールドなんかを考えるかというと、ヘ
 ッドーフォーンアンプ1の使用中にAM放送が混入した
 事があり、ポータブル用途では対策を講じないといけないと考えていたことによります。 

以上のケース構造を採用すると本体の厚みは自動的に3mm薄くなります。(3mm厚アガチス材が1.5mm厚アルミ板に変わることによる。) 但しケースの幅は中に1mm厚のアルミ枠が入りますから2mm大きくなりますので、更なる実装密度を高める工夫をしないとなりません。

ところで良いことばかりでなく先週までの構造検討ではフィルター回路に使うコイルを実寸の1/2で描いていたことが判り、構想2・と3・では基板を大きくしないとならず、この点はマイナス要素になります。

また出力端子に並列に直列CRを繋ぐゾーベルフィルターと称されるものを追加しました。 ヘッドフォーンは誘導性負荷ですから周波数が上昇すると負荷インピーダンスが上昇してしまいます。 これが原因で動作不安定になったり発振を誘発したりします。 ゾーベルフィルターを追加すると超高域でのインピーダンスはRに等しくなり不安定動作が解消できます。 これも外寸を大きくするマイナスポイントになりえます。

ということでプラス要素とマイナス要素が入り組んでいますがレイアウトを厳しく詰め直し、総論としては良い方向に向かっておりますのでそれらを一覧表にしました。 ここでは構想1.から構想3.までだけを一覧にしてあり、バックがピンク色は前回のものでそれらに対し追加検討をしたものは薄い空色のバックとしています。

  電源 長さ
(mm)

(mm)
厚み
(mm)
体積
(cm2
電池寿命
(消費電流)
電池代
(時間辺り)
電池電圧
LED表示
DC-DC
コンバーター
音量
調整
ゾーベル
フィルタ
構想 1-1 エネループ
単4 x 4
88.4 54.3 27.4 131.5 37時間
(20mA)
極小
Auto OFF
X X
構想 1-2 エネループ
単4 x 4
88.1 51.8 24.7 112.7 37時間
(20mA)
極小
Auto OFF
X
構想 2-1 アルカリ
単3 x 2
85.3 49.3 21.3 89.6 65時間
(40mA)
\2 X X X
構想 2-2 アルカリ
単3 x 2
85.9 54.3 18.3 85.4 65時間
(40mA)
\2 X
構想 3-1 アルカリ
単4 x 2
85.3 46.7 20.8 82.9 27時間
(40mA)
\6 X X
構想 3-2 アルカリ
単4 x 2
79.7 49.8 17.8 70.6 27時間
(40mA)
\6 X

 左は構想1-2、構想2-2、構想3-2のレイアウトで
 す。 また右は変更後の回路です。 上の一覧表
 共々ご覧下さい。

 充電池を使い経済性が高くオートシャットオフ付きの
 構想1の大きかった外形は小さくなり、体積は14.3%
 減となりました。 但し他の構想に比べると外形が
 大きいですが、DC-DCコンバーターの高周波ノイズによる影響がない正攻法でありランニン
 グコストが極めて安いのが魅力です。

 構想2-2では簡易型なれどLED電圧表示が追加されたのがプラスですが、フィルター用
 コイルの大きさを間違えて描いていたのを修正するのに電池と電池の間の基板を5mm広げ
 る必要がありケースの幅がその分広くなっています。 但し体積としては厚みが減っている
 ので若干減少していますしLED電圧表示も追加されたのはプラスです。

 構想3-2でも構想2-2と同じ問題がありますがLED電圧表示回路を簡易型に変更すること
 でケース幅の増加も3.1mmで済み、長さ、厚み、体積において最小寸法となっています。

以上は、構想1-2(省エネ/高機能)、構想2-2(長電池寿命)、構想3-2(コンパクトさ)と明確な方向性の違いがあり更に絞り込むのは難しいところで、もう少し悩んでから製作する仕様を決めようと思います。


 

2013/01/04

基本構成・構造の検討 5

年末の慌しい中でちょっぴり構想1.に使う充電器について再度考えてみました。 私の家では微弱電流長時間動作(電池寿命が半年以上)でない限りエネループを使うことにしています。 その本数は単三で約20本、単四で10本程です。 そして充電にはNC-MR58というリフレッシュ機能(放電機能)付きの物を2個使っています。 充電そのものは4時間以内に充電が完了する急速タイプですが、同時充電可能本数が単三は4本、単四は2本、また同時放電可能本数は単三・単四共に2本となっています。 この同時放電本数や単四の同時充電本数が2本であるため2個購入したといういきさつがあります。

現在の充電環境はこんな具合になっているので今回作るエネループ使用の構想1.で、電池の充電をどのようにするかが問題になります。 上で説明した充電器を使うとなると、外部で使うときには2個持ち歩かないと面倒です。(1個の充電器では4時間近く経ったら電池を交換する必要が有り寝ている間に充電とは行かず2つの充電器が欲しいわけです。) そして充電器の大きさは103 x 63 x 27mmで体積は175cm3ありますので、2個となると結構かさばります。 またヘッドフォーンアンプから電池を外さないとなりません。 そこで仮にですが、専用の充電器を設計してみました。 絶対条件は動作が大変デリケートで安全性を確保するのは困難な急速充電は避け、単純に1/10Cで12時間充電とすることにしました。(充電時間が長くても一度に4本充電できますから寝ている間に充電するのでさして問題ないでしょう。)

 左の図がその回路図ですが、入力はDC12Vのスイ
 ッチングタイプのACアダプター、充電出力はヘッド
 フォーンアンプに直接接続です。
 右が基板レイアウトで、ケースは3mmの板ですっぽ
 り覆う単純なものですが現在のサイズは64.5 x 41.6
  x 17.8mm、体積は47.8cm3で、ケーブルを含んで
 いないものの既存の充電器の1/3以下のコンパクトな物になりそうだとの感触があります。 この回路は以前考えた回路からDC-DCコンバーターを取り除いた物で、USB給電というと外部ではパソコンがないと充電できないので、12V ACアダプターを使うことに変更しました。

回路構成を簡単に説明しておきますと、入力のDC 12Vは2方向に別れます。 そのひとつは2SJ377を使ったスイッチング回路を通り充電電流を定電流化するLM317LZを通って充電する電池に進みます。 もうひとつの流れはツェナーダイオードで4Vに下げKD01Pという簡易型の長時間タイマーモジュールを駆動します。 ここではタイマーの遮断時間を12時間に設定し、6番ピンはタイマーON時にH、遮断時にはLに変わりますので2SC1815で2SJ377のゲート電圧をコントロールして充電電流のON/OFFを行います。 KD01Pはタイマーの精度があまり上等ではないようでホビー向けとされていますが、価格が\410.-(税込)と廉価ですし利用目的からいって十分な性能ではないかと考えています。

ひとつ気になっているのは内部で発生する熱を少なくするため充電電圧をぎりぎりに設定してロスを最小限にしたいのですが、まだ満足できる状態ではありません。 どういうことかというと、定電流(ここでは75mA)で電池を充電するに従い電池の両端電圧は上がってゆき満充電で最大となり約1.45Vになるようです。 とすると4本直列に接続すると両端電圧は5.8Vになるわけですが、それに繋がるダイオードの電圧降下(約0.65V)、LM317LZによる定電流回路でのドロップアウト電圧(1.8 V)にリファレンス電圧(1.25V)を合計した9.5Vが最低必要な充電電圧になります。 内部の発熱を抑えるにはACアダプターの電圧がこれより少し高い電圧であることが必要で10Vであれば内部損失は40mW以下ですから最善ですが、そんなACアダプターはありませんのでここでは12Vとしています。 よって9,5Vとの電圧差はLM317LZの中で熱損失となり(188mW)発熱します。 少々心もとないのでなんとか更にうまい方法がないかと思案中です。

こんな問題がありますが、所有している充電器、ヘッドフォーンアンプのサイズ比較は次の写真を見ると判るとおり専用充電器を作る方に多分収束するでしょう。

私の使っているエネループ用充電器。 単四はご覧のように一度に2本しか充電できないので、2台購入している。

充電器と現在構想中のヘッドフォーンアンプ(右)と充電器(中央)の比較。 充電時間が長い点を除けば圧倒的に構想中の充電器は小さくかさばらない。





2013/01/18

構想2、構想3は駄目?の話

構想2と構想はDC-DCコンバーターを使って1.8〜3.0Vを5Vに上げてオペアンプを駆動する考えでいます。 ということはDC-DCコンバーターが発生する高周波ノイズが悪影響を及ぼさないかどうかが重要です。 そこで採用予定のDC-DCコンバーターに150Ωの負荷(出力5Vの時に30mAの電流が流れます。)を繋ぎ、リップルフィルターの条件を変えて残るリップルを観測しました。 リップルフィルターの詳細は次のとおりです。 右の回路図も参照ください。

    1.DC-DCコンバーターに追加する外部リップルフィルターは無い。
    2.220μF 16Vを出力にパラレルに入れる。
    3.1000μF 16Vを出力にパラレルに入れる。
    4.47μHのチョークコイルをシリーズに2個追加する。
    5.47μHのチョークコイルの前後に0.1μFをパラレルに追加する。

5種類についてそれぞれの効果を確認しようというわけで、次のオシロスコープの波形をご覧下さい。 5つの波形は上の順序で並べています。

外部リップルフィルターを繋がない時で波長から計算した周波数は36KHz近辺、P-P値で100mV近くもある。

220μFのコンデンサーを繋いだ時にはP-P値で45mV近辺に下がったが1000Hz近辺の明らかなオーディオ帯域になった。 更に超高周波(50KHz辺り)のノイズ(或いは発振)がくっついた奇妙な波形になった。

コンデンサーの値を1000μFに増やすと500Hzの三角波のように変わり出力電圧はP-P値で40mVとなった。 また附帯するノイズは約77KHzと高い方にずれ、レベルも下がった。

更に47μFのチョークコイルを追加したが、約400Hzに下がり附帯ノイズレベルが若干増加した。

左はチョークコイルの前後に積層セラミックコンデンサー(0.1μF)を追加した時だが、附帯するノイズ(又は発振)のレベルが上がり目的とする効果が全くない。

このDC-DCコンバーターのメーカーの取り扱い説明書を読むと、発振周波数は200KHz近辺なっているのだが、それを彷彿とさせるような波形はどこにも存在しない。 またメーカー説明では、『出力電流が増大するとリップル電流も増大するので外部に100μF程度のコンデンサーを追加して欲しい』とあるのだが、その効果も良く判らない!というのが正直な感想だ。

写真に撮影した以外の条件も色々試してみた上にDC-DCコンバーターを別な物に変更して実験を続けたのだが、リップル周波数が低すぎでそのレベルが高すぎるという状況が改善される条件は発見できなかった。


以上の結果の総論としては、DC-DCコンバーターが発生するノイズは可聴周波数、それも耳に最もつきやすい領域に広がっておりレベルも無視できなく高いことから使い物にならないと断定し、このDC-DCコンバーターを使う構想2と構想3は残念ながらボツという結論としました。


構想5の創出

実現できそうな構想としては1.のみになってしまったわけだがコンパクトな物が欲しいなー!という願望は相変わらず残っています。 そこで頭をひねっている間にふっと浮かんだのはリチウムイオン充電池を使う方法です。 デジタルカメラに使われている殆どの電池はこのリチウムイオン充電池で、満充電で3.6Vか7.2Vの出力電圧というのが圧倒的に多いです。 それらの中でコンパクトカメラに使われる長方形でひらべったい物が大きさや電池容量の点で適当かもしれないと考えたためです。

こんなことを考えて我が家にあるデジカメの電池を調べましたが、リコーのCX-1というコンパクトデジカメに使われているDB-70という電池は、外形が36.5 x 40.5 x 7.0mm、体積は10.3cm3と大変小さく電池電圧は3.6Vで容量は940mAHとなっています。 ヘッドフォーン3の消費電流は平均30mAと見積もっているので30時間以上持つ計算になります。

 リチウムイオン充電池を使う上で極
 めて重要なのは過充電と過放電を
 しないようにすることで、これらを守
 らないと電池が破裂したり燃え上が
 る危険性があるといわれています。

 前者は使用するバッテリーのメーカ
 ーが提供する充電器を使いますか
 ら問題ありませんが、後者の過放
 電対策は、然るべき電圧に降下し
 たら無条件でシャットダウンするよう
 自動シャットオフ回路を組み込むこ
 とにします。

 左は容量が2000mAhのリチウムイ
 オンバッテリーの放電特性の例で
 すが、放電電流が少ないと電池電
 圧は高めになっています。
 2000mAhに到達した時点での電圧
 は放電電流が少なめの場合は3.3V
 近辺、放電電流が高めだと2.9V近
 辺になります。
 過放電による電池の破壊防止のた
 めには放電を2.7〜3.0Vで停止すべ
きらしいのですが、ここでは3.0〜3.2Vを放電停止電圧とするつもりです。

さてここまで確認できたので実際にヘッドフォーンアンプ3で使うオペアンプ(AD8397A)が3.0Vの電源電圧で満足できる動作をするかどうかの実験をヘッドフォーンアンプ2を使っていたしました。(ヘッドフォーンアンプ2は電源電圧±1.25Vまで設定可能。) 出力電力はオシロスコープでクリッピング直前の波形の電圧を読み取り計算しています。  その結果は以下のとおりです。

オペアンプ名 動作電圧 負荷抵抗 最大出力電圧 最大出力電力 消費電流
AD8397A ±1.5V
(放電終了時)
300Ω 1.06V 3.7mW 15mA
100Ω 1.04V 10.8mW 17mA
50Ω 1.03V 21.2mW 21mA
30Ω 1.01V 34mW 27mA
16Ω 0.97V 59mW 41mA
0.88V 97mW 81mA

この結果からすると300Ωのインピーダンス以外は十分な最大出力を取り出せることが確認できました。 前にも触れたように市販のイヤーフォーン/ヘッドフォーンでポータブル用では300Ωという仕様の物はありませんから、駆動能力での心配はありません。 また消費電流は負荷抵抗が小さくなると増大してゆき8Ωでは65mAになります。 8Ωのヘッドフォーン/イヤーフォーン市販品は殆ど見当たりませんが、そんな低インピーダンスでも駆動可能であることも確認できました。



2013/01/25

構想5、構想6、構想7の追加

今週の本題に入る前に、電源電圧±1.5Vでの試聴結果について触れておきます。 私の持っているヘッドフォーンの中からゼンハイザー HD650、AKG K172HD、エティモティックリサーチ ER-4S、ソニーのデジタルウォークマン付属のイヤーフォーンの5種類をヘッドフォーンアンプ2に繋いで数曲を聴き比べました。 クリッピング音を聴き分けるのにはエレキベースのピチカートが極めて判りやすいのでそれを中心に中高音でのクリッピングも確認しています。

結果として計算で得たものと全く同じ結果で、ポータブル用に不向きと考えていた300ΩのHD-650は大音量で容易にクリップしてしまい到底使いものになりませんでした。 インピーダンスが55Ωで若干感度が低いK172HDは、上等な美しい響きのHD650に対しフラット感が高い緻密な再生が身上で私はモニター用に使っていますが、これはクリップ無しに大音量をハンドリングできました。 ソニーの付属品のカナル型イヤーフォーンは締りのない低音ながらクリップしにくかったですが、多分インプーダンスは16Ωであろうと思います。 そして私が期待していたイヤーフォーンのER-4Sもクリッピングを起こさず大音量で楽しめました。

このイヤーフォーンは評価が人によりバラバラですが、どうやらそれらは装着感に起因しているようです。 というのはイヤーフォーンと外耳道は隙間なく密着しないと音漏れを起こし低域の再生は悪化します。 イヤーパッドは隙間無く長時間聴いていても痛くならないよう様々な工夫がされています。 しかし残念ながら外耳道は人により随分異なるようで、どんな外耳道にも合うイヤーパッドというものは無いようで、個人差が随分ありそうです。  従ってこれにより音質評価もかなり差が出るようです。

幸いにも私の場合ER-4Sの装着感は大変良く長時間聴いていても痛くなったりすることがなく、再生音の評価も高くなっています。

ともかく±1.5Vで殆どのヘッドフォーンがクリップなしで大音量を再生できることを確認した次第です。

 さて3.6Vのリチウムイオン充電池を使った例を構想としてまとめましたが、その過程でどうし
 ても気に入らない点がありました。 それは無駄なスペースが大きいことです。 現在は電
 池を回路基板の上に乗せる構造ですが、電池の厚みが7mmしかなくその上に5.5mmの空
 間がモロに生じます。 体積にして8.1cm3ありますが、先週、『厚みが2倍位あっても良い
 から、縦・横が小さくなると良い!』
と思った通りです。
 左は今回考えた構想を含む候補の4例で、リチウムイオンバッテリーを使った例は上から
 3番目ですが、その断面図に描き込んだピンク色の部分はその無駄な空間を表します。

 リチウムイオン充電池の選択の自由度はかなり低いのでやむなく悶々としていた時に、
 『満充電時3.6V、放電終了3.0V!というのはどこかで聞いたことのある数値!』
 ボケーっと考えていたのですが毎朝の6Kmの散歩中に、『それはニッケル水素充電池を
 3本直列にした時と同じだ!』
と思い出しました。

 そこで構想1の派生と新たな構想6の2通りでレイアウトを検討してみました。 構想1の派
 生ではケースの厚みを薄くすることに特化し24.7mmあったものを21.5mmとしています。
 左の図の最上段が1−2.でその下が今回追加した派生の1−3.となります。
 回路的には電源のレールスプリッターの前に入れた電解コンデンサーを削除したのと、ゾー
 ベルフィルター無しのヘッドフォーンアンプ2で全く問題が起きていませんのでゾーベルフィ
 ルターも削除しました。 電解コンデンサーの削除は少々過剰を補正したまでです。

 一番下の構想6ではLED電池電圧インジケーターをトランジスターを使わないタイプに変更し
 ました。 この場合トランジスターが減るだけでなく半固定抵抗も不要になります。 但し自動シャットオフ回路には温度補償付きのものとして放電終了電圧の正確さを確保しているつもりです。 それとここでもレールスプリッターの前の電解コンデンサーとゾーベルフィルターは省略しました。 これらによりケースの厚みは限界の19.3mmを得ています。

先にも触れたように3番目がリチウムイオン充電池を使った例ですが、前にも触れたようにケース厚みの限界は使用する部品で一番背の高い1μFのコンデンサー(高さ12mm)で決まり、1.5mmのアルミ板を使用するケース構造では19.3mmです。
[1μFコンデンサー(12mm)、基板厚み(1.5mm)、2枚の蓋(3mm)基板の裏のスペース(2mm)、ゆとり分(0.8mm)の合計。]

更に基板には電池が当たらないよう欠き取る構造にすると無駄な空間はなんと13.3cm3にも増えてしまいます。 これがコンパクトな電池を使っても体積が余り低下しない原因です。 またレイアウトの中でスペースセーブのためレールスプリッターも削除しましたので、中点電圧の不安定さが残ります。 リチウムイオン充電池の容量は940mAhあるので47時間もの長い間動作するのも魅力ですが、リコーはこの電池を使用するデジカメ(CXシリーズ)の生産を終了してしまったようなので将来的に電池の入手性の問題が出るかもしれません。

さてよりコンパクトにしようというアプローチも順調に進んでいるとは言えず少々もどかしさを感じていたのですが、ふっとアルカリ乾電池3本で素うどんのヘッドフォーンアンプを考えたら?とひらめきました。(これまた朝の散歩中にわいたアイデアです!)
どういうことかというと、アルカリ乾電池を使うのであれば電源のオートシャットオフはいりませんし電池電圧のインディケーターも不要です。 ついでにレールスプリッターを省き、パッシブDCサーボも省いてしまえば大幅に部品点数は減ります。 オフセット電圧対策は別アプローチを講じる必要がありますが、音質に影響しないようハゲタカをするアプローチです。

 そんな切り口からレイアウトを描いたのが左の図です。 コンパクトにするアプローチはケース
 の厚みから始めました。 先ずプリント基板に装填する部材の高さを抑えます。 従来使うこと
 を想定していた部材で一上背が高いのは1μF金属化フィルムコンデンサー(12mm)
 VR(11.5mm)電解コンデンサー(10.5mm)、ポテンショメータ(10mm)などですがこれらは全て
 使いません。 その次に高い物はと調べたらオペアンプモジュールで7.5mmでした。 これを通
 常のDIPパッケージのオペアンプに変えればもっと上背を低くできますが、変更すること自体本末転倒なので1.0mmのゆとりを加算し基板の上に乗る部品は8.5mm以下とします。 電解コンデンサーは上背が5mmと低いシリーズから選びました。 直径をあまり大きくできないので±それぞれ100μF 6.3Vの物を2本パラレルにして200μFにします。

 レイアウトの中で唯一大きくなった部品は入力コンデンサーで、0.15μF
 から1μFに変更しています。 これは新たなオフセット対策のため入力抵
 抗を22KΩに下げたのですが、同じカットオフ周波数とするため増加して
 います。  そのオフセット対策はR2R3の並列値とR1が等しくなるよう
 にする方法で、R2R3のここでの並列値は21.3KΩですが、それに近い
 22KΩとしています。

 こう書くと前の方で説明したアクティブDCサーボやパッシブDCサーボに
 よるオフセット対策と何が違うのか?という疑問が出てきます。
 その答えは、この簡易型のオフセット対策は入力抵抗を低くしてしまうこ
 とと、帰還抵抗などで雑音発生につながる高抵抗値を使わなければなら
 ない事にあります。 つまり左図のR1は理想からすれば低すぎる値です
 し、R2R3は高すぎる値で、いずれも妥協しています。 パッシブDCサー
 ボやアクティブDCサーボではそのような妥協はありませんが、より多くの
 回路部品が必要になります。

R2R3に高抵抗を使い雑音発生の点で不利になりますから、予め発生する雑音の状況を確認しておく必要があります。

さてケースの厚みは8.5mm + 1.5mm(基板)+ 2mm(基盤裏のスペース) + 3mm(アルミカバー2枚分) = 15mmとなります。
幅の方は単四の電池を3本並べた31.5mmに1mm厚のプラスチック板で囲んでやり33.5mm、それにケース側板の厚み(2枚で6mm)を加算すると39.6mmですが40mm丁度としておきます。

こうしておいて全部品が入るよう少しずつ伸ばして調整した結果92mmとした時にうまく収まりました。 また蓋の固定のためのネジ穴2箇所を確保しました。 これで体積を計算すると55.2cm3とかなり小さくなっています。 これを構想7−1としておきます。

以上を比較するため一覧にしたのが以下です。 以前の有力候補で残っていた1−2.も一応含めておきます。

  電源 長さ
(mm)

(mm)
厚み
(mm)
体積
(cm2
電池寿命
(消費電流)
電池代
(時間辺り)
電池電圧
LED表示
自動
電源OFF
音量
調整
ゾーベル
フィルタ
構想 1−2 エネループ
単4 x 4
88.1 51.8 24.7 112.7 37時間
(20mA)
極小
構想 1−3 エネループ
単4 x 3
88.1 51.8 21.5 98.1 37時間
(20mA)
極小 X
構想 5−1 リチウムイオン
充電池
92.4 46.3 19.3 82.6 47時間
(20mA)
極小 X X
構想 6−1 エネループ
単4 x 3
82.2 52.3 19.3 83.0 37時間
(20mA)
極小 X X
構想 7−1 アルカリ
単4 x 3
92.0 40.0 15.0 55.2 50時間
(20mA)
\5 X X X X

今回の比較では、構想1−3と構想7−1が魅力的に見えます。 間にあるリチウムイオン電池を使った物やエネループ単四3本は何となく中途半端に見えてしまいます。 これら2つを製作テーマとする可能性が極めて濃厚になってきましたが、もう少し悩んで結論を出すことにします。




2013/02/01

構想7ー2の追加

発想をバッサリと変えてまとめた構想7−1は大成功でしたが電池の太さは10.5mmなので、ケース厚みの本当の限界はアルミのカバー2枚(3mm)を加算した13.5mmになります。 ゆとりゼロで製作するのは無茶ですから0.5mmを加算した14mm厚を限界の厚みとして作れないかを真剣に考えました。 14mmからアルミカバーを取れば11mm、更に基板の厚み(1.5mm)と裏のスペース(2mm)を差し引くと7.5mmが残ります。 これを超える高さを持つ部材を洗い出すと、0.47μFコンデンサー(8mm)、そしてオペアンプ(7.5mm)でした。 そこでこれら2つの上背を低くする方法を考えました。 コンデンサーの方はオーディオ用と称したもので尚且つ上背を5mmに抑えたものとします。 オペアンプはパッケージが8ピンDIPでありながら3Vで動作しオーディオ用であれば良いわけです。

そこでおのれとばかり手当たり次第にオペアンプを調べ始めました。(調べた個数は500個を超えます。 暇人ですねー?!) 3V(±1.5V)で動作可能なオペアンプは結構出てきましたが、低電圧・省電力機器用でオーディオ用には不向きそうなものが続きましたがバーブラウンのOPA2350が引っかかりました。 以前AD8397を探し出した時も今回と同じ方法を取ったのですが、その時には見つけられませんでしたので、私が利用している販売店では最近扱いだしたのかもしれません。 バーブラウンというと私のお気に入りのOPA2134がありますが、型番からすると新しいモデルのようですのでもう少し調べてみようと使用頻度の高いOPA2134、LME49720、今回の主力であるAD8397と共にスペック比較をしてみました。

モデル名 形状 電源電圧 入力抵抗 出力抵抗 歪率 入力雑音 スルーレート 帯域幅 オフセット V
OPA2350 8P DIP 2.7〜5.5V 1013Ω 0.01Ω 0.0006%
(1KHz
2.5V p-p 600Ω)
5nV/√Hz 22V/μs
(0.8V p-p)
38MHz
(-3dB)
±0.15mV
AD8397 SOIC 3〜24V 87KΩ
(100kHz)
0.2Ω 0.0029%
(100KHz
1.4V p-p 25Ω)
4.5nV/√Hz 32V/μs
(0.8V p-p)
50MHz
(-3dB)
1.0mV
OPA2134 8P DIP 5〜36V 1013Ω 0.01Ω 0.00015%
(1KHz 3Vrms
600Ω)
8nV/√Hz ±20V/μs 8MHz
(-3dB)
±0.5mV
LME49720 8P DIP 5〜34V 100MΩ 0.01Ω 0.00003%
(1KHz 3Vrms
600Ω)
2.7nV/√Hz ±20V/μs 55MHz
(-3dB)
0.1mV

一応表中4つのオペアンプの中で最もスペック的に優れている物は青く表示していますが、測定条件がまちまちであったりはっきりしなかったりしているので、これらを見て良し悪しの判断はできませんが、5箇所が青く染まっているLME49720は大変良いスペックのようです。 但しオーディオの世界ではよくあることですが、『スペックが良いから音が良い!』とは限らない点は要注意です。
しかし何れもオーディオ用オペアンプとして評価できる優秀な物だと思われます。

今回目を付けたOPA2350は何といっても2.7V(±1.25V)から動作が保証されている点が光りますが電源電圧の上限は5.5V、つまり乾電池4本では電圧が高すぎて使えない点は要注意です。 ニッカド又はニッケル水素、エネループであれば4本までOKという変わり者とですが、パッケージが8P DIPですから下駄が不要で表面実装でない場合の最薄のヘッドフォーンアンプ製作を可能にしてくれます。

 左がその構想図ですが、構想7−1に比べて厚みが1mm減った以外の変化は少ないです。
 具体的には1.オペアンプが下駄無しで固定できるため高さが低くなる、2.入力に使っている
 金属化フィルムコンデンサーが0.5mm高すぎて当たるので、直径4φ高さ5mmの電解コンデン
 サーに変更、
3.オフセット電圧対策を簡略化、の3点です。  2番目は音質に与える影響が
 心配ですので、オーディオ用と標榜されている電解コンデンサーを使うつもりです。

オフセット対策、電解コンデンサー使用による音質への影響、電源ON/OFF時のポップノイズなどは実動試験をしてみないと確実なところは判りませんから、OPA2350を入手して他のオペアンプとの比較などをしてみる予定です。



2013/02/08

構想7ー2のオペアンプ動作試験

購入したOPA2350AD8397LME49720を比較すべくヘッドフォーンアンプ2に装着して電源電圧が±2.5Vの時と±1.5Vの時(LME49720はメーカーの推奨電源電圧下限が±2.5Vなので除く)に、負荷を300Ωから16Ωまで変化させた時の最大出力を測定しました。 結果を一言で言えば低電圧駆動で低抵抗負荷の駆動能力はLME49720より高くAD8397には及ばない!という事で、音質の良し悪しは別としてOPA2350を不採用とする理由は見当たりませんでした。 詳しくは以下の比較表及びグラフをご覧下さい。

動作電圧 負荷抵抗 オペアンプ名 最大出力電圧 最大出力電力 消費電流 オフセット出力
±2.5V 300Ω LM49720 1.06V 3.7mW 9mA 左: -3mV 右: -6mV
AD8397A 1.77V 10.4mW 17mA 左:+27mV 右:+26mV
OPA2350 1.73V 10.0mW 9mA 左: -1mV 右: 0mV
100Ω LM49720 0.95V 9.0mW 11mA  
AD8397A 1.70V 28.9mW 22mA
OPA2350 1.66V 27.6mW 13mA
50Ω LM49720 0.85V 14.5mW 13mA
AD8397A 1.70V 57.8mW 29mA
OPA2350 1.52V 46.2mW 19mA
30Ω LM49720 0.64V 13.7mW 15mA
AD8397A 1.66V 91.9mW 39mA
OPA2350 1.24V 51.3mW 25mA
16Ω LM49720 0.39V 9.5mW 15mA
AD8397A 1.63V 166.1mW 57mA
OPA2350 0.78V 38.0mW 27mA
±1.5V 300Ω AD8397A 1.04V 3.6mW 14mA 左:+25mV 右:+24mV
OPA2350 1.04V 3.6mW 8mA 左: +2mV 右: -2mV
100Ω AD8397A 1.03V 10.6mW 17mA  
OPA2350 0.99V 9.8mW 10mA
50Ω AD8397A 1.03V 21.2mW 21mA
OPA2350 0.92V 16.9mW 13mA
30Ω AD8397A 0.99V 32.7mW 27mA
OPA2350 0.81V 21.9mW 18mA
16Ω AD8397A 0.95V 56.4mW 39mA
OPA2350 0.64V 25.6mW 23mA

 比較を容易にするために表の背景とグラフの線を
 色分けいたしましたが、±2.5V、±1.5V、共に
 AD8397Aの低抵抗負荷駆動能力が大変優れて
 いることが判ります。

 これらの比較だけを見ているとOPA2350は大し
 た代物ではない!と断定しそうですが、オーディオ
 用として大変優秀で人気のあるLME49720よりも
 この比較条件(低電圧電源、低抵抗負荷駆動)
 おいては優れている結果が出ています。

 無論これらの比較は音質の良し悪しを見ているわ
 けではなく、オーディオ用として大事なスペックは
 他にも沢山あるので、LME49720の価値を下げ
 てしてしまう事はありませんが、電池3本だけで
 DC-DCコンバーター無しにヘッドフォーンを駆動し
 ようと考えたら、LME49720は役不足です。

 見方を変えると出力電流を十分高めることに特化
 したAD8397Aがその能力をフルに発揮した結果
 がここにあると言え、低抵抗駆動のスーパースタ
 ーです。 それには及びませんがOPA2350も、
 それに準じた使い方ができると思います。

 ところで上の表にはオフセット電圧を測定結果も入
 れました。 バラツキがあるので数個ずつ測定した
 いところですが、オペアンプのモデルの違いによる
 傾向は判ると思います。 FET入力段を持つオペ
 アンプの特徴であるオフセット電圧の少なさが、
 OPA2350にもあるように思います。

その点ではAD8397Aはヘッドフォーンを破壊するレベルではないもののオフセット電圧は減少させる手立てが必要です。
LME49720はバイポーラー入力にも拘らずオフセットを極小さく抑え込んでおり、安心して使えます。

更に測定ではありませんが、電源ON/OFFの際のショックノイズの出方を確認しました。 最も小さくフツッ、フツッという出方がLME49720で、ついでOPA2350でフチッ、フチッとほんの少しレベルが高い感じで、これらは特に対策する必要はないように思えます。 AD8397Aは少し大きめでプチッ、プチッとなりますがヘッドフォーンを壊すようなことはないでしょう。 このAD8397Aのショックノイズはオフセット電圧を抑え込めば減少するかもしれません。

音質について短時間ですが手持ちの数台のヘッドフォーンで聴き慣
れた5曲ほどを聴き比べてみました。 正直言ってAD8397Aのゆとり
感は素晴らしく高い分解能とクリヤーさを保っていました。 それに比
べるとOPA2350は出力レベルが高めの時ちょっぴりゆとりがないと
いうか落ち着かない響きになることが時々ありましたが、通常の音量
レベルでは問題なく、100Ωのイヤーフォーンでも十分に楽しめました。

LME49720は可もなく不可もなくというか、±12V以上で駆動した時
の落ち着いた正確な音の再現という優等生から、若干足元が危うい
ような部分が時にはあるという感じです。 電源電圧を上限である±17Vに近くした方が本領を発揮するように思います。

ということでまだまだ油断はなりませんが、OPA2350を使った最薄14mmのヘッドフォーンアンプを製作する意味が見えてきた感じでいます。 次回には製作仕様の結論を出したいと考えています。

(右は左から下駄を履かせたAD8397AOPA2350LME49720


少々脱線した追加実験

上の実験結果を見るとAD8397Aの低負荷抵抗駆動能力は抜きんでいます。 16Ω負荷の際には±2.7Vの電源電圧で何と160mWを超える出力となっていますが、この値はスピーカーを駆動できる領域に入っています。 但し消費電流が57mAまで上がってきており更に負荷抵抗を小さくするのはオペアンプを破壊する領域に入りそうです。 そこでふっと考えたのですが、A47型の回路(ボルテージ不フォロワーを並列に追加する。)にしたら電流供給能力が増えながら1個のオペンプへの負担が軽減されるのでは? ということです。

幸いヘッドフォーンアンプ2はこのような実験が簡単にできますから、『思い立ったが吉日!』とばかりに2個のAD8397Aを使って実験しました。 ところが残念ながら出力電流が倍増できるどころか逆に減少してしまいました。 そして妙な波形歪が発生しA47型のアンプをAD8397Aで組むことは意味ないことが判りました。 その理由はオプアンプの構造・設計に起因するのかもしれませんが、かなり特殊な回路を使っている可能性があります。AD8397Aのデータシートには回路構成や構造の事については一切記述無し。)

若しも出力電流倍増が可能であったなら、良質のミニミニ パワーアンプが作れるところだったので少々残念です。




2013/02/22

製作仕様の決定

事前の検討にかなり時間を費やしましたがヘッドフォーンアンプ3(低電圧駆動ポータブルヘッドフォーンアンプ)として次の2つの仕様で作ることにしました。

 1.AD8397A、TLE2426ILPレールスプリッター、単四エネループ3本使用。
   体積は98.1cm3と見積もられています。 電池3本を完全フラットに並べても他の部品の高さ
   が電池の太さよりあるため中間の電池を上にずらして3本を『へ』の字状に並べ、幅を少しで
   も狭くします。

   連続使用時間は37時間と見積もられており、放電停止は自動的に行われますが、そうなる
   までにLEDは青から赤へと色が変化しおおよその電池電圧が判ります。 充電は電池を外
                       さずに専用充電器(これも製作する。)を繋ぐことで行います。(充電時間は12時間)

 2.OPA2350、単四アルカリ乾電池3本使用。
   体積は51.5cm3とディスクリート部品を使った物としてはほぼ限界の大きさでしょう。
   Chu Moy アンプに近い単純構成ですが発振防止のゾーベルフィルターを入れてあります。
   電池3本を横に並べた厚み(14mm)、幅40mmなので胸ポケットに入れて使えます。 電池
   は使い捨てで連続使用時間は50時間と長く見込まれます。 電池寿命時に100Ωのヘッド
   フォーンに対し大音量供給不足がありそうですが、普通の音量では問題ないはずです。

上の縮小した図は同じ比率で縮小しているため、大きさの比較が判ります。 体積がずいぶん違いますが、これは厚みの違い(21.5mmと14mm)によります。 次回にはこれらの製作開始の様子をお伝えできると思います。 使う回路は既に何度か作ったことがあるものですから、いきなり基板の切り出しとそれへの部品固定から始まり、基板が完成後それに合わせてケースを製作するという手順の予定です。  別項で進めているヘッドフォーン4の方は様々な事前の検証実験がありますから、こちらの方が順調に進むと思います。

この先は2つのポータブルヘッドフォーンアンプの製作に分岐いたします。

  OPA2350を使った兎に角コンパクトさと省電力を追求したアルカリ乾電池3本タイプはこちらから、

  AD8397Aを使いエネループ3本使用で電気代ミニマム、高電流出力の高性能型はこちらから、

それぞれの製作ページに移動いたします。

 
  
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