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OPA2350 ヘッドフォーンアンプ
   
註) この製作解説は2種類のオペアンプで製作したポータブルヘッドフォーンアンプのひとつで、構想については共通事項として、
   こちらからお読みいただけます。


2013/03/01

OPA2350使用のヘッドフォーンアンプ製作

簡単なやつからやっつけよう?!とばかり、OPA2350を使う物から製作開始しました。
しかし簡単なやつ!はおー間違いでして、ぎりぎりまでコンパクトさを狙っているため加
工は高い精度が必要で(ノギスを使って±0.1mmの誤差に抑える。)、基板加工はもとよ
り、部品のハンダ付けも盛り上がりを1箇所ごとにノギスで確認しながら!という手間の
かかる作業です。

そのポイントはというと、ケースの厚み14mmは天板、底板の厚みを差し引くと11mmにな
ります。 基板の厚みは1.5mmですから、基板の裏側に2mmの隙間を設けると7.5mmが
残ります。(右図参照)  これが基板の上に許される空間ですが、部品中抵抗はリード
線を高さが最短になるよう折り曲げて7.0mm位になります。 これが浮き上がらないよ
う押さえながら半田付けしても最終的な高さは7.2〜7.4mmになります。

基板の裏側も2mmの隙間は厳しい値で、半田の量がちょと多かったり上に伸びるような
付け方をすると高さ2mmは簡単にオーバーします。 そこで半田付け全てが終わった後
に替刃式ヤスリ(M-20GP)で飛び出た部分を研磨しました。 結局半田付け面で一番
高いのは2本の0.1μF 積層セラミックのバイパスコンデンサーで1.8〜1.9mmです。

このような実体ですので今後問題になるのは天板・底板と基板の接触です。 設計上は1.5mm厚のアルミ板を使うことにしていますが、言うまでもなくアルミ板は電導体ですから隙間が少ないのは電気的接触(ショート)に繋がる可能性が大です。 そうならないためには薄い材料(1.2mmか1.0mm)に変える材質をプラスチックスに変える天板・底板の内側に薄くて丈夫な絶縁フィルムを挟む、の何れかを考えないとなりません。 

ケース本体の製作までに結論を出さねばなりませんが、1番目の案のプラスチックスへの変更はシールド効果が無くなるので採用したくありません。 2番目のアルミ板を薄い材料に変更するのは外観から重厚さが消えてしまうように思われますので、これもあまりやりたくありません。 3番目に関しては0.1mm位の電気的に安定していて物理的に丈夫なフィルムが手に入るとよいので、これから物色してみようかと思います。

ところで基板は3ヶ所の欠き込み加工をしないとなりません。 またその全面中央部のスイッチとLEDの取り付けは基板の上下でぎりぎりの振り分けをしています。 詳細は後ほど写真でお見せします。 基板に固定する部品は全部で23個(2個は裏付け)ですから高さを確認しながらのハンダ付けしなければなりませんが、じっくりやっても数が少ないので半日で終了しました。  そこまでの様子は以下の写真をご覧下さい。

基板の切り出しはこのような欠き込みがあり、加工精度も求められますので結構時間がかかりました。2つの大きな欠き込みは3.5φヘッドフォーンジャックが入る部分で、左中央の欠き込みはLEDの落とし込み用です。

前側中央はこのように組み立てられます。 中央の黒いのはトグルスイッチで、赤矢印先の透明な突起はLEDで裏側に固定されています。

その部分を反対にしてクローズアップしたのがこれです。
5箇所の黄色い矢印はトグルスイッチ固定の半田付け部分で、左の3つ並んだものが接続端子です。 LEDは脚を折り曲げてそれぞれ半田付けして固定しています。 脚を赤く塗ったのは極性(+側)の表示です。

真横から見るとこのようになります。 LEDは半分基板の欠き取り部分に埋まり込んでいるので、基板からの飛び出しは1.5mmになります。  この辺りの加工が最もシビアーで慎重さを要求されます。

全ての部材を取り付け終わりました。 真横から見るとはっきり判りますが一番高いのは抵抗で、ワイヤーの曲げ具合でバラつきますが、一番高いやつで7.4mmでした。(制限は7.5mm)

最終的な外観を確認するため2個のミニフォーンジャックを載せてみました。 フォーンジャックには3本ずつのワイヤーが接続されますからケースに納めた時には隙間が殆んど無くなるでしょう。

配線ミスがないかもう一度確認してからテスト運転の為のバラック配線で2つのミニフォーンコネクターと電源コードを結線しスイッチオンしました。 ヘッドフォーンからは全く何にも聴こえません。 そこでインプットのワイヤーを触るとかすかにブーンという音が聴こえてきます。 アンプは動作しておりますのでiPod Nanoを繋ぎました。 音量はiPod Nanoでコントロールしますので繋ぐ前に音量レベルは最低にしていた方が安全です。 そして少しずつ音量レベルを上げます。  当たり前のように音楽が流れてきます。 数曲ほど聴きながら電源電圧を3.0〜4.5Vの間で変化せたり、ヘッドフォーンを変えたりしてみました。 異常な動作は特にありません。 聴きながら電源スイッチON/OFFを10回近く繰り返しましたが、ポップノイズは全く無しでした。

とここまでは良かったのですが更に色々な曲を聴いていると何となくザラつきがあるというか騒がしい感じがするのです。 そこでヘッドフォーンアンプ1(OPA2134を使用)を引っ張り出して聴き比べましたら、そちらの方がクリーンで安定したサウンドに思えます。  これはもしかしたら発振している可能性があるぞ!ということで、正弦波を入力として出力レベルや負荷抵抗をいろいろ変えてオシロスコープで観測しましたら、出力レベルによって寄生発振が発生するのを発見しました。 傾向としては最大出力の直前に起きるようです。(入力レベルを小さくすると発生しない。)  また負荷抵抗値が変わると発生の感じも変化します。 ゾーベルフィルターは寄生発振防止に相当効果があるはずですが、現在の定数では不十分なのかもしれません。

耳で聴いていたのではその存在を正確に特定できませんが、オシロスコープならそれを観測できます。 今回発見した寄生発振の波形写真の一部をご覧下さい。

注意してみていなと見逃しやすい寄生発振ですが、正弦波の上下先端が幅広く膨らんで見えるのがそれです。 この時電源電圧は3.6V、入力周波数は1KHz、出力がクリップする少し手前の波形です。(左上の赤いのはオシロスコープのマーカーランプです。)

上の写真の先端部分のアップです。 僅かな幅の部分が上下に膨らんでいるのが判ります。 黒く波形を横切るのはオシロスコープ前面に刻まれたスケール線です。

左に対しほんの少し入力を上げたので波形は上に伸びだしましたが、寄生発振の幅はそれにつれて広がりました。

寄生発振の原因を突き止めるのは容易ではありません。 カットアンドトライを繰り返して対策法を探すしかありません。 どちらにせよ音質に影響することは間違いないので、暫し問題解決に専念します。



2013/03/08

寄生発振対策

先週寄生発振を発見した際には頭に血が登っていて混乱していたのですが、落ち着
いて考えてみると寄生発振の出方や量は少ない部類に入ります。
そこでゾーベルフィルターの効き具合を確認をするため、一旦接続を外して動作させ
てみました。 すると寄生発振は大幅な増大が見受けられ(右の写真)、どうやらゾー
ベルフィルターの効き具合が不十分だったようです。 これまでは0.1μFと8.2Ωの定
数でしたが、コンデンサーはそのままにして試しに8.2Ωを6.8Ωに変更したところ寄生
発振は減少しました。 そこで更に一段低い5.6Ωにしたら極く僅か出る程度に減りま
した。 そこで4.7Ωを最終値として100Ω、33Ω、16.5Ωと負荷抵抗を変えても、2.5V
から5.0Vの間0.2V刻みで電圧を変えても、寄生発振は全く認められないことを確認し
解決策としました。 

一応動作が落ち着きましたので最後に0.01〜0.1μFを出力に並列に加え安定度を確認しましたが、発振などの異常現象は起きませんでした。  ということで問題は解決しましたので、iPodを繋いで30分程試聴しましたが、心なしか滑らかでザラつきのない音色に変わったように思います。


定量試験の結果

問題が片付いたので、オシロスコープ、発振器、ダミーロードを繋いで、簡単に一通りの測定を致しました。 以下がその結果です。

1.最大出力
電源電圧 負荷抵抗 1KHz 100Hz 10KHz
(左) (右) (左) (右) (左) (右)
4.5V 100Ω 20.0mW 20.0mW 20.0mW 20.0mW 20.0mW 19.0mW
33Ω 43.8mW 41.3mW 43.8mW 41.3mW 41.3mW 41.3mW
16.5Ω 36.7mW 36.7mW 36.7mW 35.0mW 35.0mW 35.0mW

3.0V 100Ω 9.8mW 9.8mW 9.8mW 9.8mW 9.8mW 9.8mW
33Ω 20.0mW 20.0mW 20.0mW 20.0mW 20.0mW 20.0mW
16.5Ω 21.9mW 23.2mW 20.6mW 23.2mW 20.6mW 21.9mW

  負荷抵抗の値は簡単に手持ちの抵抗でダミーロードを作ったため、33Ωとか16.5Ω(33Ω2本を並列接続)のような値になって
  います。 基本的に基礎実験の時と同じ結果です。 100Ωの負荷抵抗の場合電池寿命に近くなると最大出力が不十分という
  ことになっていますが、100dB/mWの能率のヘッドフォーンを繋いだ時に0.2mW足らないという微量ですから、ヘッドフォーンの
  能率がこれより高ければ全く問題なくなります。 音量レベルが低くて良ければ無論OKです。

2.周波数特性
  入力信号レベルを50mVにしました。 左右何れのチャンネルも高域は108KHz(私の低周波発振器の高域限界)までフラットで
  した。 低域は1KHzに対し左が7.9Hz、右が7.4Hzで-3dBでした。(設計値は7.2Hzです。)  後ほどお見せする方形波応答特
  性で高域のレスポンスに問題ないことが確認できます。

3.オフセット電圧出力
  電源電圧4.5V時には左右ともオフセット電圧はほぼ0V(測定不能領域)でしたが、3Vとした時には左が4.0mV、右が-2.0mVの
  オフセット電圧出力が認められました。 電圧が高いとオフセット電圧が小さくなるのは±電圧スプリッターを形成する抵抗(2本
  の2.2KΩ)
が有効に作動している為だと思われます。 但しこの抵抗に流れる電流が下がると±のバランスを取る能力が下がり
  オフセット電圧増につながりますが、電源電圧が3.0Vに下がると抵抗を流れる電流が低下しますから、正にバランスが狂って
  きてオフセット電圧が増加したと考えられます。 但しこの程度のオフセット電圧でしたら問題を起こすレベルではありませんの
  で、このままとします。

4.ポップノイズ出力
  アンプの電源スイッチON/OFFによるポップノイズは全く認められません。

5.雑音出力(聴感テスト)
  106dB/mWの高能率ヘッドフォーンを使っても高域・低域のノイズは感知できませんでした。 また入力端子の開・閉による違い
  もなく全く無音状態でした。

方形波応答特性については次の写真をご覧ください。

原波形に対しサグ(上面の傾斜)がでており、意識的に低域端をカットしているのが表れているが、部品定数誤差のためか左と右のカットオフ周波数が若干異なり(7.9Hzと7.4Hz)、その差がサグの傾斜の違いになっています。

基準となるべき1KHzでは原方形波と全く同じ形を再現しています。 これは1KHzの前1/10まで、後ろ10倍までの帯域(100〜10,000Hz)は完全フラットであることを表しています。

10KHzもほぼ同等波形であると言えるでしょう。 従って高域は10KHzの10倍の100KHz迄フラットになっています。

自作の方形波発振器は上限が58KHzであり、しかもその原波形はご覧のようにあまり良くありません。 但し方形波応答は、なまった原波形にそれなりに近似しているので、10倍の580KHzまではピークやうねりのない良好な周波数特性になっていると思われます。



2013/04/26

ケースの製作 1

暫くぶりですがやっとケース製作に入れます。 その
基本構造は以前説明したようにアルミで作ったロの字
型フレームに基板や電池を落とし込み、それらを木と
アルミ板で作ったケースに挿入しネジで固定します。

ケースをアルミ板と木としたのはシールド効果を得たか
ったからですが、これはポータブルヘッドフォーン第1作
でAMラジオらしき音声の混入を経験したからです。

右の図を見れば判りますが、アルミのロの字のフレー
ムの上下にアルミ板が近接しますので、電気的にそれ
らがアンプ回路のGNDと一緒になるよう配慮すれば静
電シールドされます。

但しこのような構造にすると回路基板の部品や配線が
ケースの上下のアルミ板に接触してショートする可能
性がありますので、それを避けるために0.2mm厚のポ
リプロピレンフィルムを、底側はアルミフレームに接着し、天板側はアルミ板の裏側に貼り付けることにしました。

 そんな若干の追加加工がありましたのと、購入したL字型アルミ板の厚みはこれま
 での設計値より0.2mm厚くなることもあって、完成後の厚みは0.5mm増加の
 14.5mmとしないと収まらなくなりました。 その辺りの最終確認と共にケースの厚
 み配分をもう一度やりなおしました。 左の図がそれです。

 ここでピンク色の線が追加された絶縁フィルムのPPシートです。 その厚みは
 0.25mmとしていますが、貼り付ける接着剤の厚みを含みます。 基板の下の隙間
 は2.2mmとしていますが、1mm厚のスペーサー(淡いクリーム色の部分)+L字型
 アルミ板の板厚(1.2mm)で生まれる隙間です。 因みに基板の裏側の飛び出しは
 2.0mm、基板の上の飛び出しは7.0mmですので、PPシートがなければ間違いなく
 ショート事故が起きます。

 これでケース作りの中で一番手間と神経の集中が必要だと思われるロの字のアル
 ミフレームの製作に入れます。

右の図がアルミ板の加工図です。 実はこのフレームだけではロの字型
にならず、C型となります。 そしてフロントパネルを製作して前面にヘッド
フォーンジャック2個と友締めすることでロの字型になります。

図中4箇所の縦の青点線は谷折りを表しておりますが、中央寄りの2箇所はそこから45度の傾斜で欠き取ります。 また両端に近い谷折りの外側は折り返し部分を切り落とします。 これはヘッドフォーンジャックの固定ナットの干渉を避けるためです。 これら4箇所の谷折り部分はアルミ用の刃を付けた糸鋸で、曲げ部分が明確になるよう板厚の半分まで切り込みます。 そうすると指でアルミ板を押さえた状態で曲げることが可能になりしかも角の丸みは大きくなりません。

金属板を折り曲げる道具なんてありませんから苦肉の策として考えたやり方です。 唯一の短所としては、一度曲げたら絶対に曲げ戻ししないことで、それをすると簡単に折れてしまいます。 尚中央の126mmは折り曲がった幅5mmの部分を2mm削っています。 こうしないと電池が上に飛び出てしまうのを避けるためです。

とまあ文章で表現するといとも簡単にできそうですが、実際はとんでもなく難しい作業で何と2回もやり直す羽目になりました。 このフレーム構造はもうやめてしまおうかと考えたくらいですが、AD8397A型も同じフレーム構造ですからコツをなんとか掴もうと頑張った次第です。(シールド効果を考えなければもっと簡単な構造に出来るのですが?)

最後に考えた究極的な方法は精密切断のジグを作ることで、ジグにより切断時に起きやすい横のブレをなくし、ジグに取り付けたスケールのお陰で±0.2mm位の精度までは容易に引き出せる物になっています。

ということで今週は2回も作り直したこともあって、フレーム加工が終了するまでしかご紹介できませんが、どのような手順で進めたか三回目のやり方をかなり詳細にご紹介します。

購入したL字型のアルミ押出材は幅が15mmありますので、10.5mmに、長さを235mmに切断します。 写真の黄色いのがマスキングテープでマスキングテープで覆った部分を使います。 切断には電動刃研ぎグラインダーを使います。

折曲り防止のため端材にクランプで固定して刃研ぎグラインダーで少し大きめに(0.3mm前後)切断しました。

切断面はこんな具合です。 バリも沢山ついていますので、ヤスリで削りながらドンピシャ寸法に追い込みます。

合計4箇所の(矢印先)谷折り部分となる部分のケガキをします。 これは曲げた後の出来具合に非常に影響しますので十分な注意が必要で、シャープペンでは太すぎて適切ではありません。

それと両端にミニヘッドフォーンジャックを固定する8φの穴を開けておきます。 これはパネルにもあく穴と重ねてナットで共締めします。

2回加工に失敗した後に加工精度を上げるために考えたジグで、アルミ板切断用糸ノコ刃と共に使います。 糸ノコ刃の厚みは実測で0.6mm、アサリも殆んどないので0.65mm程度の細い切り幅になります。 深さを0.3〜0.5mmになるようにすれば、その溝部分が強制的に折り曲がります。 矢印先は0.6mm幅の溝になっていて、横ブレを抑えます。

実際に溝を切っていますが、真ん中の126mmの間は2mm幅を狭くするために先ず2mm長の切り込みを入れています。

大きな写真では判りにくいですが2箇所の2mm長の切り込みを入れたところで、マスキングテープで囲まれた細い部分を削ります。 左上の写真はその部分のクローズアップです。

2mm幅の削り込が終わりました。 本来は刃研ぎグラインダーで手際良くしたかったのですが、雨が降りだして外では作業できないのでヤスリで削りました。

両端の折り返し部分はそのままではミニヘッドフォーンジャックのナットが干渉して締められないので、削り落としました。 これもヤスリで削り落としています。

4箇所の折り曲げ部分の溝切りです。 溝の深さは目分量で判断しますが、0.3〜0.5mmになるようにします。 ジグに貼ってあるスケールで溝の位置を十分に確認してから切り込みます。 右上は切り込み後のクローズアップです。

真ん中の2箇所は45度+αの傾斜になるようヤスリで削り込みます。 右上の写真は加工後の写真で、若干削り過ぎの方がよろしい。 これで加工は終了で後は曲げるだけです。

完成したアルミフレーム。 内寸をノギスで測ったところ設計値に対し-0.2mmの結果で満足すべき値でした。 無論基板や電池の組み込みに問題になるような寸法誤差ではありません。 失敗した2回の時には0.5-0.8mmもずれていたことを考えると夢のようです。 まだまだ油断できない加工が続きますが、大きな山は超えた気がします。



2013/05/03

ケースの製作 2

最難関は通過しましたがまだまだ油断はなりませんので慎重に進めていますが、今週はケースの裏板部分を作り上げました。 たかが裏板と思われるかもしれませんが、発泡塩ビ板の2mmと1mm厚、1.5mm厚のアルミ板、0.1mm厚の燐青銅板、木口テープの5種類の部材を貼り合わせて作りますので、かなり手間の掛かる細かな細工になります。

複雑な構造の原因はケースと回路基板のGNDを電気的に接続することとケース固定ネジがここに位置することにあります。 アルミフレームを電気的にGNDに接続するのは容易ですが、ケースの側板となる1.5mmのアルミ板は何もしない状態だとアルミフレームと接触していればGNDに接続されますが、接触の確実性は???です。 そこで強制的にフレームとアルミ板を接続する構造にしないとなりません。 そのために0.1mm厚燐青銅板はアルミフレームとアルミ側板を橋渡しする役目を負います。 その燐青銅板を2枚の発泡塩ビ板に挟んでやる!というのが一言で表した構造です。

またケースにアルミフレームを固定する方法としてアルミフレームに雌ネジを切りますが、アルミフレーム自身の1.2mmという厚みは安定した雌ネジを切る厚みとしては不十分です。 そこで1.5mm厚のアルミ板をフレームに貼ってやりますが、総厚みが3mmのところを、2mmと1mmの貼り合わせとしてアルミフレームの雌ネジ突出部分を収めるようにします。

このあたりの詳しくは写真をご覧になったほうが理解しやすいでしょうから、以下をご覧下さい。

2mm厚発泡塩ビ板と1.5mm厚アルミ板を加工して作りました。 塩ビ板の外寸は0.1mm以下の誤差で加工されています。 アルミ板の中央にはケース固定の穴部分に1.5mmの穴をあけました。

2mm厚塩ビ板を小さく切った両面接着テープでアルミフレームに仮固定しました。

塩ビ板の穴の中央にアルミ板をエポキシ接着剤で固定し、接着剤が硬化開始後に塩ビ板は外します。

接着が終わったケース固定ネジのアルミ板。 この部分の厚み合計は2.5mmになりますので、十分安定した雌ネジになります。

0.1mm燐青銅板をこんなふうに切断して加工します。 4つの爪が並んだ2列はアルミ板に確実に接触し、中のくの字に曲げた部分は確実にアルミフレームに接触します。

燐青銅板はこのように2mm厚発泡塩ビ板にまたがるように取り付け、この裏に1mm厚塩ビ板を貼り付けます。 これがアルミフレームの突起部分に被さります。

断面がくの字状に曲げた部分がアルミフレームをケースにネジどめした時に当たり電気的に接続されます。

4枚のフィンが並んだ部分は後ほどアルミ側板を裏板に接着すると電気的に接触してくれます。

1mm厚発泡塩ビ板を貼った面には木口テープを貼ってやります。 木製側板はアガチスですので違う木材ですが、色みや木目が似ている物を使いました。

止めネジ穴は直径1.5mmでしたが、アルミフレーム側は2.5mmに拡大し、裏板には3.2mmの穴をあけました。 そしてアルミフレーム側はM3の雌ネジを切ります。

アルミフレーム側の2.5φの穴はM3の雌ネジにすべくタップでネジ切りをします。

その雌ネジに超薄のネジを締め込みますが、ネジの先がフレームの内側に飛び出さないよう切断しておきます。

アルミフレームに裏板をネジどめしたところです。 これでケースの固定部分とアルミ側板をGNDに確実に接続する部分の細工が終了しました。



2013/05/10

ケースの製作 3

アルミフレームの後ろ側が出来上がりましたので(正確には裏板を含み)、前側、つまりフロントパネルの加工に入りました。 フロントパネルの材質というとアルミが非常に多いですが、その理由としては電導体であるほうが便利である、加工がし易いなどにあると思います。 またフロントパネルには何らかの文字が入ることが多いのですが、アマチュアの自作の場合にはインスタントレタリングが常套手段でした。

しかし現在では既にインスタントレタリングを生産するメーカーはなく、市場在庫もほんの僅かで欲しい書体や文字の大きさなどの選択は非常に狭くなっています。 そんな環境を乗り越える方法として私は紙に印刷してアルミ板に貼り付ける!という方法で対処しています。 この方法を使った場合、アルミ板の金属としての質感は完全に隠れますから、キラリと光るシャープな感じは完全に失われますが、紙という柔らかな質感を持ち背景も文字も自由な色を使え書体の選択もインスタントレタリング全盛の頃の数十倍は選択肢があると思われ、総合的に私はインスタントレタリングより優位性が高いと感じています。

これまでに4〜5種類の物に紙で仕上げたフロントパネルを採用していますが、何れも新感覚でそれなりに気に入っています。 本テーマにおいては使う文字が極めて小さく、インスタントレタリングでは到底対応できませんので、無条件で紙仕上げのフロントパネルとしました。 後ほどの写真をご覧になると判りますが文字を入れられるスペースはごく僅かで、2つのミニフォーンジャックはそれぞれ、『IN』と『OUT』の文字しか入りませんでした。 またスイッチのポジション表示は『0』と『』で前者がOFF、後者はONを表す電子業界の標準表示として文字数を減らしました。 そして残りのスペースに『VIC's D.I.Y.』を入れたのですが、余りに小さいので一部滲んで繋がってしまったりしています。

このフロンドパネルは36 x 11.5mmの小さなもので、そこにミニヘッドフォーンジャック用の8φの穴が2つ、LEDの穴が1.5φ、トグルスイッチのレバーが出る穴(2.5 x 5.0の小判状)の加工をしますが、手持ちのヤスリで加工するのはひと工夫ふた工夫が絶対必要で、小さいのとは裏腹で慎重に作業を進めねばならず、手間の塊でした。 それでも作り直すこともなく2箇所だけ修正・追加加工が必要というまずまずの仕上がりで終わっています。 それらについては以下の写真と説明をご覧ください。

アルミフロントパネルの加工はその中にある4つの穴を加工してから周りを切断して作りました。 その方が中の穴あけがやり易いためです。 この写真は穴あけが終わったので、基板を当ててみて確認しているところです。

そして周りを切断してフロントパネルの加工が終わりましたが、小判状の穴(2.5 x 5.0mm)の成形だけで2時間近く掛かっています。(焦って作業すると削りすぎる傾向があり穴が大きくなりやすいので、ほんの少し削ってはノギスで確認しながら進めるため。)

穴に貼り付ける紙はマット紙を使いましたが、作画は例によってExcelで、その後Paint Shop Proに取り込んで画像調整、大きさの微調整をして印刷し、乾燥後にアクリルラッカースプレイ塗料で3回塗りしています。 これは切断前ですが、矢印先の短い線を結んだ線が実際の大きさになります。

紙の裏に両面接着テープを貼り付け上と左だけ線に沿って切断し、貼り付けの準備が完了したところです。 接着剤で貼るのは伸び縮みが出やすいので両面接着テープとしています。 貼り付けた後に先の細いカッターナイフで、穴の部分を切り抜きました。

出来上がったフロントパネルをアルミフレームとミニヘッドフォーンジャックで共締めしました。 この方向から見ると一見問題が無さそうに見えますが、VIC's D.I.Y.の文字が滲んで一部繋がってしまいました。

この方向から見るとフロントパネルの横方向が0.5mmほどずれています。 これは修正しないとなりません。 またトグルスイッチのレバーの出が少なすぎて爪で操作するのが困難ですのでこれも追加加工が必要です。

2箇所の修正・追加加工がありますが修正は簡単に出来る範囲ですので、目論見通りに作業は進んでいると言って良いと思います。



2013/05/17

ケースの製作 4

フレームのヘッドフォーンジャックが通る穴をヤスリで少々広げフロントパネルの飛び出しが均等になるよう調整しました。 更に基板の前側を1mm弱削り取りトグルスイッチの頭が1mm程出てくるようにして、2つの修正加工を済ませました。

次が基板の固定ですがフレームから1mm浮かして固定しないといけないので、1mm厚の発泡塩ビ板を切り取り、3個のスペーサーを作りフレームに瞬間接着剤で貼り付けました。 後ほど見られる写真の赤矢印部分もスペーサーが必要なのですが、ここは赤のワイヤーが通りワイヤーの直径が1mmであるので、ワイヤーそのものをスペーサーとして使います。

その後基板を瞬間接着剤4点留めで固定します。 更に2つのフォーンジャックへを固定してこれらに配線するのですが、入力側のフォーンジャックを固定する際は0.3mm厚の真鍮板を幅2mmほどに切断し、その片側はアルミフレームとフロントパネルに挟み、反対側はヘッドフォーンジャックのGND側に半田付けします。 こうしてから配線すれば、アルミフレームは入力端子のGNDに接続され、アルミ側板はアルミフレームに接続されるので、静電シールドが出来上がることになります。

次に電池ホルダー部の製作に入りましたが、1mm厚発泡塩ビ板に電極をゼリー状の瞬間接着剤で貼り付けます。 そして赤と黒のワイヤーを電池電極に半田付けしますが、発泡塩ビ板は熱に弱いので極く短時間に済ませる必要があります。 その後発泡塩ビ板自身をゼリー状瞬間接着剤でアルミフレームに固定しています。

以上でアルミフレームに組み込むすべてが完成しました。 ここで動作確認を念のためやっておきますが、ついでに電池の寿命時間をテストしてみます。 これは定性テストですが、適当な試聴音量に設定しiPod NanoをACアダプターに繋ぎ、演奏曲目をシャッフル状態とし、16Ωのイヤーフォーンを駆動します。 そして電池電圧がメーカー規定の終了電圧(0.9Vだが3本直列なので2.7V)になったところを寿命と考え、そこまでの時間を連続駆動時間とします。 少なくとも1日以上掛かるのでその結果は次回にお伝えすることになります。

さて次はケース本体の製作になりますが、ここは塗装工程もあるのでもう一つのヘッドフォーンアンプも同じところまで製作を進めたほうが効率的ですので暫しお休みします。

黄色矢印先に1mm厚の発泡塩ビ板を切って貼り付けました。 赤矢印部分は電池のプラス側に繋ぐワイヤーが通り太さが1mmですので、ワイヤーがスペーサーとなります。

それら4箇所にゼリー状瞬間接着剤を塗って基板を貼り付けました。

裏側から見ていますが、矢印の先の基板部分は1mm削りましたのでトグルスイッチのレバー先端は表面に1mmほど出るようになり、スイッチの操作が楽になっています。

ミニヘッドフォーンジャックを固定し配線を済ませました。 またアルミフレームとケースのアルミ側板をGNDに繋ぎ静電シールド効果を持たせるため、赤矢印先の幅の狭い真鍮板がフレームとヘッドフォーンジャックのGND端子を接続しています。

アルミフレームには大きな空間が残りました。 ここに単四電池3本が収められます。 ケースをギリギリまで薄くするために底板もありませんので、電池はプラス/マイナスの電極で保持しないとなりません。

電池ホルダーの電極はゼリー状瞬間接着剤で1mm厚発泡塩ビ板に貼り付けました。 上側が前側、下が後ろ側の写真です。

完成した電池ホルダー。 ご覧のとおり素通しのままですが、電極だけによる電池の保持は意外に安定しており、強く振らない限り電池が脱落することはありません。

完成した本体に電池を装填し通電しました。 無論動作は完璧ですので、これにiPod Nanoと16Ωのイヤーフォーンを繋いで連続動作テストに入ります。 この面の配線とアルミ側板間のショート防止のため、アルミ側板の内面に0.2mm厚のポリプロピレーンの板を貼り付けます。 

背面はこんな具合です。 基板から出ているワイヤーは表面に飛び出ることもなくうまく収まりました。 そしてこの面には0.2mm厚のポリプロピレーンの板を全面に貼り付け、ショート防止とします。




2013/05/24

電池寿命テストの結果
                                              イヤーフォーン   被テストアンプ   iPod Nano   ACアダプター
もうひとつのAD8397Aを使ったヘッドフォーンアンプはアルミフレームの
製作に入っていますが、こちらの電池寿命テストを実施しましたのでその
結果をお知らせします。

動作条件は以下に記しましたのでそひらと右の写真を参照ください。
テストの仕方はランダムに演奏するiPod Nanoを音源として実使用レベル
よりも信号レベルを高めにし消費電流が高めに出るようにしています。
常に信号レベルは変動しますからこれに伴って消費電流も若干変動しま
すので定量試験とは言えませんが、実使用に極めて近いスタイルでのテ
ストと言えます。

テスト中の環境温度は20℃〜30℃の間で変動しています。 測定間隔は
4日目までは24時間毎としていますが、後半になると電池電圧の降下速
度が速くなりますので、測定間隔を数時間毎から1時間毎へと短くしてい
ます。


使った電池 富士通 Premium アルカリ乾電池 単四 x 3
この電池はホームセンターで購入したものですが、これまで標準的に使ってきたパナソニックの『赤金パナ』よりも高性能との情報がありましたので使ってみました。
イヤーフォーン ソニーのデジタルウォークマンに付属していたものでスペックは全くわかりませんが、インピーダンスは16Ωで感度は聴いた感じでは100dB/mW以上あると思われます。
音源 旧型iPod Nanoですが音量レベルを通常より少々高め(感覚的には90dB以上?)に設定しました。
テスト期間 2013年5月16日 14:15〜2013年5月21日14:40
電池電圧推移
経過時間 00:00 24:00 48:00 72:00 96:00 104:00 114:00 115:00 116:00 117:00 118:00 119:00 120:00 120:25
電池電圧 4.82V 4.17V 3.96V 3.78V 3.36V 3.17V 2.84V 2.81V 2.78V 2.77V 2.75V 2.73V 2.72V 2.70V
 
連続動作時間 120時間25

コメント

設計時点での予測連続動作時間(50時間)より遥かに長
い時間となっています。  その原因は設計見積もりでは
消費電流を20mA、終了電圧1Vとして計算していましたが、
実際の消費電流は電源電圧4.5Vで無信号時に9mA、
2.7Vで無信号時に7.8mA、信号レベルが上がると若干上
昇しますが、平均したら9mA程度に収まります。

また終了電圧0.9Vでもオペアンプはちゃんと動作し低イン
ピーダンスのイヤーフォーンであれば使えますので終了
電圧も0.9V(3本で2.7V)に下げました

右のグラフはパナソニックが公開している定電流負荷での
電池寿命グラフですが、赤のラインが設計時に私が参考
にしたもので、20mAの消費電流、終了電圧1Vで読んで
50時間としていたわけです。 しかし9mAの消費電流で
終了電圧0.9Vの場合には青の線となり動作時間は約
130時間まで増加します。

富士通製の電池で同じ特性になる保証は無いものの、似
たような結果が出る可能性はあります。 このテストの結
果だけで断定するのは早計ですが、流通在庫期間での
自己放電のために生産直後より寿命は下がりますから、
それを考慮すると富士通の電池はなかなか高性能そうだ
な!と思われます。

ところで以上の素晴らしい結果にさらにオマケがあります。
テスト環境での音量は高めで、こんなレベルで聴いていた
ら耳を痛めたり頭痛を伴ってくるでしょう。

従って実際には音量レベルを下げて使うことになり消費電
流は若干減ります。 また起きている間はずっと聴いてい
たとしても連続動作は16時間程度が上限で、寝ている間
の8時間は休む間歇動作となります。 そして電池は休ん
でいる間に若干回復します。 これら2つの理由で実際の
電池の寿命はさらに伸びるのです。


2013/06/28

ケースの製作 5

AD8397仕様のヘッドフォーンアンプのアルミフレームアセンブリーが完成し電池寿命テストも終わりましたので、一緒に最終コーナーである、アルミ板と木の板を組み合わせたケースの製作に入りました。 コの字型の枠を3mm厚アガチス材で作りそれを1.5mm厚アルミ板で挟んで接着する簡単な構造ですからトントン拍子に進みそうなものですが、最初に発泡塩ビ板で作った背面板と木の側板を接着する時に接着力不十分であることが判り、5種類の接着剤を試してみる中でようやく満足すべき結果が得られ、この結論を出すのに2日間を使ってしまいました。

簡単に結論までの経緯を説明しますと、アルミ板と木の接着(接着面積は32mm2と小さい。)に30分硬化開始型エポキシ接着剤を試しましたが、4時間後に接着具合を確認したところ簡単にポロリと取れてしまいます。 そこで接着部分を研磨して付着した接着剤を削って洗浄後90分硬化開始型エポキシで試しましたがこれも駄目。(12時間寝かせてから接着具合確認)、そこでボンドG-17(合成ゴム系)を次に試しました。 こちらは完全硬化後も柔らかさが残りますがアルミと木の接着力ではエポキシよりも接着力は上がるようです。 但し完全に固くなりませんからはみ出た部分を削り取っても取り切ることが難しく綺麗になりません。 次にウルトラ多用途SUなる接着剤を試しました。 接着できない材料は殆どない!というのが売りですが、接着力があまり取れず硬化後も柔らかさが残るので失格でした。

最後に試したのがゼリー状瞬間接着剤です。 液状の物は木に吸い込んでしまうのでゼリー状を試した次第です。 こちらは最も良い結果でポロリと剥がれてしまうこともなく固くなりますのではみ出た部分は研磨して落とせます。 またエポキシ接着剤と同様硬化後に収縮せず充填効果があるのも好都合です。

そのジェル型瞬間接着剤は完全硬化するには時間が掛かりますので、180mmハタ金で圧着保持してやります。 これでコの字の枠が出来ます。  アルミフレーム本体の周囲にはマスキングテープを貼り付けます。 これには二つの目的があります。 第一はアルミ板を貼り付ける時に本体を入れた状態にしますが、はみ出た接着剤が本体に付かないように防ぎます。 第二はアルミ本体とケースの間に適当な隙間を設けるためで、マスキングテープの厚みは0.05mmほどあります。 これを左右の面に貼るので、幅は0.1mm大きくなりますからそれに木の側板が当たるようにアルミ板を接着するとコの字の枠の内寸は0.1mm大きくなりますから本体の出し入れで引っ掛かる事は無くなります。

それから絶縁シートを貼った時にアルミフレーム本体がうまく出し入れできるのかの確認をしました。 結果はごく僅かの適当な隙間があり(感じでは0.2mm位)、無論出し入れに問題はありません。

アルミ板の切断は電動ジグソーに非鉄金属用のブレードを付けた電動ジグソーでやりますが、時節柄雨にたたられて屋外の作業ができず、今週はここまでしか出来ませんでした。

3mm厚アガチスの板を所定の幅より0.5mm大きく切断後、カンナ、ヤスリで寸法を出します。 これは自作直角研磨器で最後の寸法差し研磨をしているところです。

切断、寸法出しの研削・研磨が終わった2枚の側板。 フロントパネルを受ける欠き込みもしてあります。 この後接着剤の選択でつまづき2日間費やしました。

背面板をネジ止めしたアンプ本体を板2枚で挟み接着します。 接着剤はゼリータイプの瞬間接着剤ですが、ゼリー全体が完全に固まるのに時間が掛かりますので、ご覧のようにハタ金4本を使って圧着保持しています。

接着が終わったケースのコの字部分。 これの両面にアルミ板を貼るまでは接着部分は剥がれやすいので要注意です。

アルミ板を貼り付けるときにもアンプ本体を挟み込みますが、接着剤でアルミフレーム部分が」くっついてしまわないようマスキングテープでフレーム全体を覆いました。

ケース内寸とアルミフレーム外寸の差は極く僅かなので、問題がないかどうかの確認を一応しておきます。 先ずショート防止の0.2mm厚ポリプロピレンシートを貼り付けました。
貼り付けたPPシートを覆うように(載せては駄目)コの字のフレームを置きます。

そしてその上に板を載せてやります。 これでテストの準備が整いました。

アンプ本体をこのように奥まで挿入してみます。 全く引っかからなければOKで、その後出し入れを数回して念を押しておきます。 感覚では0.2mm程度の僅かな隙間が残っていますが、実際にはマスキングテープの厚み分(0.1mm)増えます。

1.5mm厚アルミ板に側板を罫書き傷防止のマスキングテープを貼ったところで今週はおしまい。 大きな2枚はAD8397仕様の側板です。




2013/07/05

ケースの製作 6

アルミ側板貼りは別項のAD8397仕様と全く同じ手順で作りますが、最初に貼るアルミ板は上側としました。 これはショート防止のP-Pシート貼りが必要なのは、こちらのモデルの場合底側ではなく天板側であるためです。(具体的には垂直に立てる抵抗の折り曲げたリード線がショートする。) ですから1枚目のアルミ側板を貼っている時はフレーム本体は逆さに装填されて見えます。 それ以外は全く同じですので、D8397仕様の解説と以下の写真をご覧下さい。

切りだして寸法出しをしたアルミ側板ですが、このモデルで使うのは右側です。

接着直後の圧着保持状態で、まるでハタ金のジャングルです。

15分後に厚み方向のハタ金だけ残して完全硬化のために6時間寝かせます。

電気回路本体のGNDとアルミ側板を電気的に繋ぐ燐青銅板の爪の部分がチラリと見えます。

ショート防止のP-Pシートを内側に貼り付けました。

そしてフロントパネルがごく僅かの隙間をもって収まるよう調整研磨をしました。

そしてもう1枚のアルミ側板を接着します。 今回は内寸を調整するスペーサーは不要です。

箱状に組みあがったケース。 中に飛び出ているかもしれない接着剤を削り取りたいのですが?

細い棒に#240のサンドペーパーをコの字状に貼り付けたもので削り落としました。

アルミ板は木の板より0.2〜0.3mm出っ張っていますからアルミ板と木の板が同じ高さになるよう替刃式ヤスリで削ります。

これは替刃式ヤスリで削る前です。

削った後はこうなります。 木の部分が妙な色ですが細かなアルミの削りくずが木目に入ってしまうためで、後程洗って落とします。

その後#240、#400のサンドペーパーで研磨し面取りをしました。 このモデルは胸のポケットに入れて使うことが多いと考えられるので、全ての角を丸くしました。

そしてアルミ板の面の部分を#400サンドペーパーでヘヤーライン加工しました。(加工法詳細はAD8397 仕様をご覧下さい。)

木目にアルミの細かい研摩カスが詰まって汚らしい色になっているので、水洗いして乾燥しました。 ヘヤーラインが入ってエレガントな感じになったと思います。 これでケースの加工・組立が終了しました。

アルミフレームアセンブリーを挿入して後部をネジ止めしました。 この姿は木部の色味以外は最終の状態です。





2013/07/12

ケースの塗装・完成まで

塗装の手順についてはAD8397版と全く同じですので、手順だけを以下に示します。 詳しくはAD8397版の解説をご覧下さい。

  1.アルミ板部分をマスキングテープで覆い、ポアステインマホガニーブラウンを水を2倍加え希釈したもので着色します。
    (かなり薄くしていますが着色斑をなくすためで、1回塗ったら1時間乾燥、そしてまた塗って乾燥!を5回繰り返して着色濃度
    を上げました。 3回塗って乾燥したところで#400ペーパーで研磨します。)


  2.水性ウレタンニス透明クリヤーに水20%を加え希釈したものをアルミ板の面を除いて塗装します。 1回塗ってできる塗膜は
    水を加えなかった時に比べると薄いので、塗り回数を6回に増やします。 3回目と5回目の塗装後乾燥したら#600ペーパー
    で軽く研磨します。

  3.アルミの面部分はいきなり水性ウレタンニスを塗装するのではなく、アクリル系ラッカースプレー塗料の透明クリヤーを2回塗
    りします。 表面には細かなつぶつぶが出来ますが後程処理します。(いきなり塗ると表面張力で塗膜が広がりません。)

  4.アクリルラッカーが完全乾燥後に#600ペーパーでアルミ板表面のツブツブを軽く研磨して7分程落とします。
    (絶対にアルミの生地が出るまで削らないように。)

  5.アルミ板表面を水を20%加えて薄くした水性ウレタン透明クリヤーニスで2回塗
    装します。

  6.全体に水性ウレタンニスつや消しクリヤーで塗装して塗装作業終了。


以下の写真と解説以外にAD8397版も参照ください。

マスキングテープでアルミ板の厚み部分を覆った所。 アルミだけを覆うのが重要ですので、落ち着いての作業が肝要です。

ポアステイン マホガニーブラウン色で着色しました。

アルミ板の面を除いて水性ウレタンニス透明クリヤー6回塗りです。 その後つや消しクリヤー1回塗りとしました。

コーナーはこんな具合ですが、私の大好きなニブーイ光り方をしています。

アルミの面部分はアクリルラッカースプレー2回塗りとし完全乾燥後につぶつぶを#600空研ぎペーパーで半分削り落としました。 まだつぶつぶが見えますが?

その上に希釈した水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗り、最後につや消しクリヤーを1回塗ってやるとつぶつぶも殆ど消えてヘヤーラインが映えます。

難物だったアルミ板の面の塗装がうまく行きほっとしました。(塗装しないとこの美しさは短時間のうちに腐食で失われますので。)

マホガニー色と銀色のアルミ板の厚みによる線とのコントラストが大変綺麗です。

そしてヘッドフォーンアンプユニットを収めました。  今後胸のポケットにiPod Nanoと一緒に収まり心地よい音楽を提供してくれるでしょう。

これで2種類のポータブルヘッドフォーンアンプの製作が終了しました。 コダワリに更にコダワリが重なり構想から何と1年も掛かっていますが、何れも省エネ度が高く、満足度の高い物になったと自負しています。 第一世代のポータブルヘッドフォーンアンプそして今回作った2つのモデルの比較は次をご覧下さい。

第一世代 第二世代 1 第二世代 2
 使用オペアンプ OPA2134 OPA2350 AD8397
 電源 アルカリ乾電池006P 単四アルカリ乾電池 x 3 単四エネループ x 3
 最大出力 負荷100Ω
    電池電圧High
21.9mW
9.0V
21.9mW
4.5V
14.4mW
3.6V
 最大出力 負荷100Ω
    電池電圧Low
6.1mW
5.4V
7.7mW
2.7V
9.8mW
3.0V
 最大出力 負荷16Ω
    電池電圧High
10.5mW
9.0V
34.2mW
4.5V
41.0mW
3.6V
 最大出力 負荷16Ω
    電池電圧Low
3.3mW
5.4V
15.0mW
2.7V
28.1mW
3.0V
 2電源方式 抵抗2本によるスプリッター 抵抗2本によるスプリッター TLE2426によるスプリッター
 DCサーボ なし なし パッシブ型
 電池寿命シャットオフ 手動 手動 自動
 電池電圧表示 なし なし LEDの色変化による
 体積 117.6cm3 54.5cm3 108cm3
 重量(電池込み) 120g 100g 142g
 電池寿命 27時間 120時間 42時間
 運転費用 \28/時間 \3.0/時間 \0.08/時間
 
第二世代の1.と2.の電源電圧に対する駆動能力に差があるように思えますが、乾電池とニッケル水素電池の使用電圧範囲が異なるので差があるように見えますが、同一電圧では拮抗しています。 それよりもどちらも第一世代より遥かに駆動能力が改善されています。 その理由はこれらのオペアンプが低電圧の元でも高性能が得られる設計になっているためです。

また省エネ度でも抜群の成績で運転費用の違いでよく判ります。 上記の数値には出ていませんが実際に再生音を聴き比べてみると、AD8397を使ったものの方が一味デリカシーが上手といった感じでしっとり感がよりあるようですが比較するから判る差であり、ブラインドホールドでいきなり聴いたら恐らく違いが判らないでしょう。  ということで軽量・コンパクトさから出かけるときに使うのは第二世代 2.で家の中で部屋を移動しながら使う時には第二世代 1.ということになりそうです。



----- 完 ----- 


 
  
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