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接着剤の使い分け
2008/02/15
日曜大工において最も使用頻度が高い接着剤と言うと木工ボンドというのはどなたも思い出すでしょう。 とは言ってもこの木工ボンドには不得手な局面が結構あり木工ボンドだけで事足りるとは考えられません。 日曜大工以外の目的の物も含め現在では大変多くの接着剤が販売されており、いったいどのように使い分けるか悩む方も多いだろう? と考え、私が使っている接着剤を中心に使い分けのテクニックについてお話してみたいと思います。
・接着剤選択の原則
1.接着する材料に適した選択
ごく一部の例外を除き接着剤と接着する材料
(被接着材)
との結合は、被接着剤が変質するような化学的結合ではなく、あく
まで密着を保っている状態です。 従って安定した密着状態を得やすい被接着材とそうでない物とが存在します。
例えば木工ボンド
(成分は酢酸ビニル樹脂エマルジョン。)
の場合、木を始めとして紙、布などには大変高い密着度を持ってい
ますが、ガラス、プラスチック、金属では極端に低くなります。 塗装面は接着の上ではプラスチックと考えてよいのでやはり
木工ボンドでは接着できません。 瞬間接着剤として知られているシアノアクリレート系接着剤では、木、紙、布、皮、ガラ
ス、陶器、金属、一部のプラスチックと広範な物に対して高い密着度を有しており、硬化速度が速い点も含め便利です。
但し価格が割高、大面積の接着に向かない、収縮時に問題を起こす可能性がある、など別な問題がありますから、広範な物
に適応性が高いといってもそれだけで評価しにくい面もあります。
mini-Shop
で販売している接着剤の適用対象一覧は
こちら
からご覧下さい。
2.接着する材料の硬・軟、膨張係数の影響
密着度が高くても被接着材の硬・軟の違いにより使えない接着剤が存在します。 例えば木工ボンドや瞬間接着剤は硬化
すると柔軟性は殆どなくなってしまいます。 従って布などの接着が可能と言っても接着部分が固くなっても構わない場合に
のみ限定されます。
(木工ボンドを水で薄めて接着膜を極薄くして余り硬くならないようにする方法はあるが。)
また被接着材の膨張係数が異なると温度変化により接着面のずれが生じて湾曲したり破断することもあります。 これに対
し変成シリコーン系の接着剤、ゴム系、合成ゴム系の接着剤は固まった後でも柔らかさを保ち以上の問題を起こしにくくなりま
す。 日曜大工に限ってしまうと木と木の接着が主ですからこの項目は余り問題となるケースは少ないですが、被接着材が
変わるとこういった点も接着剤選定で重要になります。
3.環境条件を考えた選択
接着剤によっては水に対する抵抗力が低いとか高温で密着性を失ってしまう物があります。 日曜大工で最も多用する木工
ボンドはその両方に弱いと言う弱点がありますので、水が掛かるようなところや高温になるような環境では使えません。
逆に変成シリコーン系やエポキシ系は水や高温に強い物が多いようです。 日曜大工的には特に屋外用の工作物で使う接着
剤において重要な項目となります。
4.接着速度による選択
接着剤は殆どの場合粘度の高い液状になっており、溶剤の蒸発や化学反応によって固体になり被接着材に密着します。
そうなるまでの硬化時間は接着剤によりかなり違いがあります。 そして接着速度が速い物
(例えば瞬間接着剤。)
がベスト
かと言うと必ずしもそうではなく、硬化時間が遅い方が都合の良いこともあります。
接着時間に関しては、
被接着材に塗ってから接着するまでの時間
(
オープンタイム
と言う)
、
実用硬化時間
、そして
完全
硬化時間
の3つを覚えておくと良いでしょう。 最初のオープンタイムを意外に気にしていない例が多いですが、これを過ぎ
てから接着すると十分に密着度が上がらない
(= 十分な接着度が得られない。)
ことになりますので要注意です。
例えば接着面積が大きい場合
(例えば2枚の板を貼り合せる。)
などでは接着剤を塗布するだけでかなり時間が掛かり、最初
に塗布した部分がオープンタイムを過ぎてしまうことが起こり易くなります。 また被接着材同士の接着位置関係を調整したい
場合にもオープンタイムは長めのほうがやりやすくなります。 従ってそのような目的には一般には接着時間の長いものの方
が適していることになります。
5.接着剤の収縮
溶剤が揮発することで硬化するタイプの接着剤は溶剤が無くなる分体積が小さくなります。
(収縮。)
この収縮の影響で被接
着材もひっつられて接着面に皺が出来たり場合によっては破断することがありますから注意が必要です。 また収縮すると
いうことは充填効果が期待できないことを意味していますから、凸凹があって被接着材と被接着材の間に隙間が存在する場
合も接着力は低下します。 私の経験ではエポキシ接着剤以外は何らかの収縮を伴い問題を起こす可能性があると考えてお
り、この観点からも圧着保持は絶対必要と考えています。
・接着面に必要なこと
接着面が汚れていたり油分が付着していると接着剤が上手く密着しなくなります。 従ってそれらを取り除くことが重要ですが、
日曜大工的には塗装に使う薄め液で汚れや油分を拭い去るのが良いでしょう。 また被接着材と被接着材の間に隙間が出来
るのも接着力の低下に繋がりますからカンナやサンドペーパーなどを使って隙間が出来ないよう予め処置しておきます。
・接着剤の使用量と接着力の関係
接着剤を多量に塗ってやれば接着力が増大すると思っている方がいるようですがこれは間違いです。 無論接着面全体に塗布
されることは重要ですが、接着面からはみ出た接着剤は接着力増大に殆ど寄与しません。 前述のように接着面に隙間が出来
ないのが理想であり、隙間を接着剤で埋める!という考え方はエポキシ接着剤を除いて通用しないと考えた方が良いです。
またはみ出た接着剤は外観を損なうことが多いので拭き取ったり後で削り落とす余計な作業が必要になります。
・圧着保持について
十分な接着力を得るためには圧着保持が重要です。 被接着材と被接着材との間に隙間があると接着力は低下する傾向に
あることと、実用強度に達する前に接着部分が動いてしまうと接着力が低下するために必要な作業です。
日曜大工においてはクランプ・ハタ金を使用したり、ネジ・釘の併用で行います。 その他の工作の場合にはゴム紐や紐などで
締め付ける、小さな物では洗濯バサミで挟むなどが有効です。 一番多用されるであろう木工ボンド使用で圧着保持無しでの
接着をやられている方を稀に見かけますが、それでは十分な接着力が得られません! とまあ偉そうなことを言っております
が、かく言う私も20年程前までは圧着保持用に使うクランプやハタ金などは全く使っていませんでした。 しかしその後クランプ
でしっかりした圧着保持をした結果如何に良好な接着が出来るかを体験し現在に至っています。
・各種接着剤の長所と短所について
私が使っている範囲の接着剤
(
mini-Shop
で販売しています。)
に関し私が気づいた長所と短所を簡単に説明します。
1.木工ボンド
長所: 価格が安く木材全般で高い接着力を持ちオープンタイムが適切であり、大面積の接着にも向いている。
短所: 水や加熱に弱いのでそうなるような環境で使えない。(風呂場、屋外など) 初期接着力が低いのでクランプ・ハタ金
やネジ・釘を使った圧着保持が絶対に必要。
言うまでもなく日曜大工において主力の接着剤ですが短所として記載した部分をご存
知ない方がかなり多いように思います。
当然ながら屋外の工作物では木工ボンドを使用出来ません。 接着剤を使わないネジ
での締結を考えるかエポキシ接着剤のような水に強い物に変更しましょう。
木工ボンドのオープンタイムは10-15分で、実用強度には2-4時間掛かります。 また
完全硬化には12時間以上掛かり硬化時間は遅めです。 初期の接着力が低いので
圧着保持をしながら実用強度に達するまでは次の作業には移らないことです。
2.合成ゴム系接着剤(ボンドGPクリヤーなど)
長所: 初期接着力が高く圧着保持は殆ど不要。 かなりのプラスチックに有効で柔らかな被接着材にも使える。
短所: 水に対して強くない。 接着剤を塗布して10-15分ほど経ってから非接着材を密着させるために、密着度は余り上げら
れない。(寸法の狂い。)
この手の接着剤の使用法を間違っているケースがかなりあるように思います。
正しくは接着剤を塗っていきなり貼り付けるのではなく、被接着材両方に薄く塗布して
その表面が乾燥してきた頃
(5-15分後べたつきが僅かになる。)
被接着材同士を貼り
合せ強く圧着します。
初期接着力が高いので接着位置の調整をしにくく被接着材間の密着度も余り高く取れ
ませんので寸法誤差を起こしやすい傾向にあります。 但し完全硬化しても柔らかさ
を持っていますので柔らかい物同士の接着に向いている面もあります。
プラスチックへの適性が高いのも特徴ですが水に対する耐性はあまりありません。
3.エポキシ系接着剤
長所: 化学反応で硬化するため収縮が殆ど無いため充填効果が高い。 水に大変強く高温にも比較的耐性が高い。
短所: 必要量の2液混合が面倒。 硬化後は非常に硬度が上がるので柔らかな被接着材同士用には不適。 価格が高い。
必要量だけ2液混合という面倒くささはあるものの接着材としての基本性能が高いため
私は大変お気に入りで、3種類の硬化開始時間
(5分、30分、90分)
をいつでも手元に
用意しています。 一番気に入っている点は収縮が殆ど無いため隙間や凸凹がある
ような場合でも問題なく接着できてしまう点と水に対する高い耐性、比較的高温にも強
いことにあります。
(右の写真は5分硬化開始型。)
面白いことですが硬化時間が最も長い90分硬化開始型が接着材としての基本性能が
最も高くしかも安い点で、接着の局面でどれを選択するかもまた楽しみとです。
オープンタイムは硬化開始時間まで、実用強度に達するのは40分/60分/10時間、完
全硬化には実用強度に達する時間の10倍と見ておけばよいでしょう。 注意としては
はみ出た部分を硬化後にカンナで削り取るのは刃を大変痛めるので駄目です。
予めはみ出た部分を極力拭き取っておき実用強度に達したらサンドペーパーで削り落とすようにします。
4.瞬間接着剤
長所: 初期接着力が高いので圧着保持無しでの使用が可能。 水への耐性が高い。
短所: 割高である。 被接着材への密着度が高くかなり収縮するため被接着材を破壊することがある。
日曜大工において瞬間接着剤を使用するのは比較的稀かもしれませんが、私の場合
修復作業によく登場します。 一番多いのが木材の割れ
(ムク材、集成材で起きやす
い。)
が生じた時で、組立て後に発生した物も含め瞬間接着剤で対処します。
そしてこの目的に限って木工用ではなくて普通の液状の物
(右の写真)
を使用します。
方法としては、
ひびの部分を広げ瞬間接着剤を流し込む!
、
ひびの隙間が無くなるよう数分間圧着保持する!
、
硬化後に表面に付着した接着剤をサンドペーパーで削り落とす!
といった手順です。
瞬間接着剤の一般的な使用方法としては被接着材に合わせて適切な物
(液状、ゼリー
状、木工用、プラスチック用)
を選ぶ必要があります。 尚密着力が高く収縮度も高いので被接着材が縮んだり破壊するケー
ス
(ガラス、プラスチックなど)
もあります。
5.変成シリコーン樹脂系接着剤
長所: 完全硬化後も柔らかさが残るので熱膨張係数の違う物同士の接着に。 水、高温、ショックに強く収縮が少ない。
短所: 木工一般用には割高。
変成シリコーン樹脂は接着剤としてよりも屋外用の
シーリング剤・コーキング剤
(充填剤)
として長く使
われておりますが、収縮が少ない、水、熱に強くコ
ンクリートや多くのプラスチックにも適合する点など
大変高性能で使用範囲の広い接着剤です。
但し木工用の主力として使うのは割高で、広範な
D.I.Y.においてコンクリート、タイル、レンガ、プラス
チックなどの被接着材が対象に入ってくる場合に
その本領を発揮します。 オープンタイムは5-30
分、実用強度には1時間から1日、完全硬化には5-7日掛かります。
・接着剤とは呼ばれないが良好な接着剤
ボンドウッドエポキシは木工用のパテとされておりますが、接着力もかなりあり私は充填
接着材として重宝しています。 エポキシ系ですので2液混合いたしますが、それぞれが
ボソボソとしており混合すると若干粘度が下がって粘土のような状態になります。
本来の目的は充填用で収縮がほぼないのが最大の特徴ですが同時に大変強固なエポ
キシ接着材としての接着力を持っておりますから、充填接着剤として使えるわけです。
硬化開始時間が大変遅い
(40-90分間のオープンタイム?)
ので、接着や充填の調整に
十分時間が掛けられるのも便利なところですが、このために完全硬化するには1週間掛
かるのと柔らかな被接着材には使えないのが数少ない短所です。 私の使用例として、
スピーカーの製作で
塩ビパイプを合板にあけた穴に固定する
、
ベビーベッドの製作で
間違ってトリマーで削ってしまった溝を完全に埋める
、
ミニ水準器作りでは
円盤水準器を調整しながらめ込む
、
などを
VIC's D.I.Y.
内で紹介していますが、実用強度に達したらネジ打ち、釘打ちなどもOKですし水や熱にも強い点から、日曜
大工でかなり重要な接着材として評価されても良いように思います。
以上簡単に接着剤の使い分けについて解説しましたが、日曜大工ということで限ると、
・木工ボンド
・エポキシ接着剤
(5分硬化開始と90分硬化開始。)
・瞬間接着剤
(液状の物とゼリー状の物。)
・ウッドエポキシ
は、使用頻度は別にしても常にいつでも使えるよう手元にないと困る接着剤だと考えています。 無論被接着材が異なるとこれらだけでは対応できなくなるのは言うまでもありません。
----- 完 -----
註):
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