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ノートブックPC用スピーカー2
   
2011/03/04

構想              (註: 本テーマに関する全てのご質問はお受けできません)

ノートブックPC用スピーカー1はほぼ音質的にまとまりつつあり製作前の構想
段階で描いたものに対しポジティブな評価とネガティブな評価が判然としてきてい
ます。 第二段階となる本テーマでは更なるコンパクトさを求めるのがメインテーマ
となりますが、ここで一度それらを整理し、第二段階の本テーマに反映させてより
完成度を上げたいと考えました。

さてノートブックPC用スピーカー1が当初の期待に対してポジティブな印象を持
った点は、

 1.明るく弾むダイナミズムにあふれたサウンドを響かせてくれている。
   これはユニット自身の能力によるところが大きいですが、これまでに使った口
   径80mmとは一線を引くものです。

 2.ともするとコンパクトなBOXが再生しているサウンドであることを忘れる。
   エージングのために連続して音出し中にそのそばにあった大型スピーカーからの音と間違えることがあった位、超小型スピー
   カーによくある伸びやかさに欠けた音がありません。

 3.低域補償により中低音こもり現象が出やすいのだがそれが殆ど無い。
   低域補償回路は中低音も若干ながらブーストしてしまいそれがこもった音にしやすいのですが、それがありません。
   (男性ボーカルで特に影響を受けやすい。) ユニットの制動が良く効いているためと思われます。

 4.テーブル面直置きによる鏡現象でかぶり気味の音になりやすいのだがそれが少ない。
   テーブル面とユニットやバスレフポートは非常に接近しています。 このためユニットやポートの音像が広がって音圧増大(理論
   的には+3dB)するのですが、周波数の低い方がこの影響を受けやすいためかぶり気味の音に聴こえる事があります。
   しかしその傾向が少なく、ポジティブな意味で音圧上昇が起きているようです。

 5.低音の量感は充分にあり演奏する曲によっては標準ポジションで低音の量感がありすぎと思うこともあり。
   様々なアルバムの中にはやたらに中低音から低音のレベルを高くしたものがあり、そのような場合には低域補償回路で過補
   償となり低音の量感がありすぎて不快に感じたりクリッピング音が聞こえたりします。
   そんな場合にはブースト量を調整すれば良く、設計値中心値は中庸で適当だと感じています。

一方ネガティブに感じた点は、

 1.左右のスピーカーユニットの距離は短過ぎでステレオ感に乏しい。
   スピーカーユニットの間隔は約200mmと大変短いです。 このためステレオ感は非常に乏しいのが実体です。 これを解決す
   るには左右を別なボックスにすれば良いのですが、そうすると内容積を同一にした時の総体積は増加する方向になりコンパク
   トさが失われ痛し痒しの部分です。

 2.きめ細やかさというかデリカシーには乏しい音色。
   『明るく弾むダイナミズムにあふれたサウンド!』をひっくり返せばデリカシーのない音ということになりますが、どうやらBOXの
   振動が余少ないため箱鳴りの影響が少なくてよりスピーカーからの生の音を聴いているのではないかと感じています。

 3.テーブル直置きにより箱の振動がテーブルに伝わり音の濁りが増加しているよう。
   箱鳴りは少ないほうですが、それでも箱の一番大きな面をべたっとテーブルに接触させると箱の振動がテーブルにもろに伝わ
   ります。 これは箱を少し浮かす事で音の濁りが減りますので、鏡現象を減じない短い脚を付けたほうが良いでしょう。

 4.小型には違いないが気軽に運べるか?というとまだ大き過ぎる。
   内容積3リットルのスピーカーBOXは通常のBOXに較べれば小さいのですが、気楽に運べるかどうか?となるとかなり疑問で
   す。 これは300 x 210mmのA4サイズよりも105mmという厚みから来ていると理解しています。(ノートブックPCは気楽に運べ
   るという印象だが大きさがほぼ同じで厚みが50mm以下とぐんと薄くなる。)


 5.アンプの出力はもう少しあるほうが良い。(容易にクリッピングを起こす。)
   使ったユニットは定格入力15W、ピーク入力30Wという口径80mmとしては大変耐入力性の高いユニットです。 このためアンプ
   出力は6.6Wしかないため音量を上げるとユニットが壊れるよりもクリッピングが先に起きます。 聴いているうちに通常の大型
   スピーカーに求める音量にしたくなる欲求に駆られますので、もう少々アンプ出力が欲しいと感じました。

以上の評価を元に本テーマの検討項目を次のように考えています。

 1.BOXの厚み(高さ)70mmを確保する。
   スピーカーユニットのフレームの大きさが57mmありますので、
   BOXの厚み(高さ)70mmというのはほぼ薄くする限界です。
   また300 x 210 x 70mmの箱サイズで板厚を9mmとした時の容積
   は2.8リットルとなりますが、バスレフポート始めそこから差し引く
   容積があり最終的には2リットル程度になるでしょうから、これ以
   上薄くすると容積不十分となります。
   ノートブックPCよりも厚いわけで充分にコンパクトとは言いがたい
   ですが、何としてもこの大きさでまとめたい所です。

 2.アンプの出力は8-10Wを目標とする。
   スピーカーを破壊しない範囲で極力高い音圧が欲しいと考えてい
   ます。 本テーマで使用する口径50mmのユニット(W2-803SM)
   は定格入力8W、ピーク入力15Wとなっており、ノートブックPC用
   スピーカー1
で使ったユニットの半分の耐入力です。
   一方能率を比較すると約半分の値ですから同じ音圧を得るには
   2倍のパワーをアンプ出力が必要になります。               ノートブックPC用スピーカー2のユニットはこんなに小さい)

   これらはノートブックPC用スピーカー1よりもかなり大きなハンディキャップになるわけですが、8-10Wより大きくても小さくて
   も駄目!ということで対処したいと考えています。

さてそのアンプですが以前候補として考えていたデジタルアンプは負荷インピーダンスが8Ωの場合には10Wの出力ですが4Ωの時には5Wの出力しか得られないことが判った為候補から外します。  8-10Wという希望を満たすアンプは何のことはないノートブックPC用スピーカー1で使ったICが再び登場します。  既に駆動電圧が11.5Vで4Ω時に9Wが得られることが判っています。 電源電圧は以前と同じ12V ですが電流容量は2.1Aから4.3Aと2倍強に増加し低い負荷による消費電流増に対処します。 またここで考えているスイッチング電源は出力電圧が±5%調節できますので、スピーカーを破壊させにくくするために出力電力を制限できるかもしれません。

パワーICは増幅度をメーカーが推奨する最低値の40dBより6dB下げ、低域補償回路はゲインゼロとします。 総合利得が50倍になるわけですが、4Ωで8-10Wの出力電力時には5.7-6.3Vの出力電圧ですので入力電圧として手ごろな114-126mVとなります。

 パワーアンプ回路のゲインを34dBにするのはNFBを増加する事でやりますが、メーカー推奨外の使い
 方になるので事前の念入りの確認や安定度の確保が重要です。 そしてそれを駆動するコントロー
 ルアンプは同じオペアンプ(LM358N)を使いながら反転増幅回路に変更しゲインゼロとして低域補償
 回路を構成します。(左が全回路だが回路定数は最終ではありません。)

 従って全体の増幅度を調整していた回路は不要になります。 尚パワーICのスイッチON/OFF時の
 ショックノイズ対策は、ノートブックPC用スピーカー1で使った方法をそのまま踏襲します。
 これで耐入力がぐんと低くなるこのテーマのスピーカーを破損させる心配が少なくなります。

第2段階の本テーマで重たい条件は箱の大きさを小さくしながらその中にアンプや電源も含んでしまう点にあります。 ということはそれらの占める体積を出来るだけ小さくすることだけでなく、発熱をどうするか?という問題もあります。 無論1番目の時と同様バスレフポートの調整をどうやってするか?とか、内蔵するアンプなどのメインテナンスをどうやるかも考えねばなりません。

 そんな事を頭に常に浮かべておきながら箱の構造を考えているのですが、なんとか
 まとまりつつあるかな?といったところです。  左は現在までに固まったのを図に
 書き表したものですが、おかしな矛盾は無いように思います。(最終的に固まったも
 のではないのでまだ寸法を入れていません。)


 まず外寸は300 x 210 x 70mmでこれは当初の数値です。 それと板厚ですが殆ど
 の部分が9mm厚で材質はMDFを考えています。 板厚が異なる部分は背面板で、
 5mm厚のアルミ板と5.5mm厚の合板を貼り合せた10.5mmとなります。
 このアルミ板はパワーアンプICの放熱器として働かせますが、既成の大きさである
 50 x 300 x 5mmそのままを使うように考えており加工の手間がちょっぴり省けま
 す。 計算上の放熱抵抗は4.2℃/W程度ですが、電源電圧12Vで4Ω負荷で動作さ
 せた時周囲温度約60℃まではパワーアンプICの最大許容損失を超えないようです
 のでOKと考えています。

 実はこの部分にもっと能力の高い放熱器を考えたのですが、箱の容積がもろに下
 がってしまうため代案として考え容積低下を最小限に食い止めています。

 内容積減少でもうひとつ頭をひねった部分はメインテナンスの方法でしょう。
 最初に考えていたのはノートブックPC用スピーカー1でやったのと同じく背面の板
 をネジ止めする方法でした。 しかし上で述べたように背面板を放熱部分とすると
 アンプ基板はこれに固定するので、これを取り外し可とするのはちと具合の悪い部
 分が出そうです。 そしてそれより大きな問題は狭すぎてメインテナンスも何も出来
 やしないぞ!という点でした。

 そこで結論としては底板を外す構造にしました。  これでしたら開口面積が大きく
 なるので吸音材の量の調整やバスレフポートの調整も可能でしょう。  但しこの場
 合底板を受ける部分(桟)が問題です。 底板の面積が大きいということは桟の総長さが大きくなりこれが内容積を大きく減らします。   そこで色々思案した結果2mm厚のアルミで出来たLチャンネルや平板で底板を受ける桟を作ることとしました。  こうした時の桟の断面積は56-60mm2程度で収まり、木製の桟(例えば9mm厚 x 30mm幅)の断面積(270mm2に較べると劇的に小さくなります。  但し問題としては厚みが2mmしかありませんから太いネジだと充分な雌ネジが切れなくなりますので、6mm、5mm、4mmのネジを試してみて最終的に使うネジを決める必要があります。

もうひとつ極めて大きな問題がバスレフポートにあります。 バスレフポートはこれまで考えていたよりも体積の大きな物を使うことになりました。 その原因は低域再生シミュレーションをやり直した結果、ポートの共振周波数をこれまで考えていた110Hzよりぐんと低い80Hz程度まで下ることに決めた点にあります。 こうした時に低域の再生特性はだら下がりの傾斜が増大しますが、80Hz位までなら電気回路で補正できる範囲にあり若干の中低域の窪み(これは今までも発生すると予想されていた。)は残るものの補正後はノートブックPC用スピーカー1にかなり近しくなるからです。

110Hzの共振周波数を想定していた時にスピーカー1本辺りポート内寸は22 x 22mmで長さが80mmと計算していました。 これを9mm厚のMDFで作ると256,000mm3となります。  しかし80Hzに共振周波数を下げるとポートの長さは170mmと2倍強になります。 当然ポートの体積も544,000mm3に跳ね上がります。(何と0.544リットルですぞ!)

前述の桟の話どころではない大問題ですので、うまい案をあれこれ考えた末引き出しの中に20年以上暖めていたFAXペーパーの芯(昔使われたロール状の感熱紙用)を使う事にしました。(右の写真参照) この芯はノギスで測った穴径が25mmあります。 そして肉厚はノギスで測った所5mm強、従って外寸径も35mm強といったところです。

これであればポピュラーな35mmフォスナービットで穴あけしてヤスリで僅かに削れば
その穴に挿入できます。  このポートを使う事で80Hzの共振周波数でどうなるかを
計算した所、スピーカー1本辺り161mmと算出できました。 そのポート2本分の体積
を計算しましたら309,800mm3と43%減少しました。

これら以外にコントロールアンプ基板をお化粧パネルと共に埋め込む前面部分とか
スピーカ−ユニット自身が占める大きさ、バスレフポート支え、パワーアンプ、スタン
バイ制御、電源などの基板が占める体積を差し引き、現在の内容積は2.07リットルと
辛うじて2リットル以上になっています。                               (バスレフポートに使うFAX用ロール紙の芯)

まだ2リットル以上の内容積を確保する安全領域に入ったわけではないので、継続して検討を進めていますが、実は好むと好まざるとに拘わらず少々容積が大きくなる可能性があります。 それは電源基板を内蔵するかどうかです。 電源が作動する環境の温度にも上限がありますが、使用予定の電源の説明書を読むと、負荷率が60%までは環境温度の上限は60℃、負荷率が80%の場合55℃、負荷率100%では50℃と規定されています。

私の経験則からすると電源容量4.3Aに対し平均した消費電流は2A以上にはならないと思われます。 つまり負荷率は50%以下ですので環境温度は60℃までOKの筈ですが、対流現象が極めて鈍いBOX内ですから、60℃以上に絶対にならない!という保障はどこにもありません。 そしてその場合にはいやがおうでも電源は外付けに変更せざるを得ませんが、それは実験してみないと判りません。



2011/09/09

製作中断の言い訳

前回にお伝えしてから半年もほったらかしにしてしまいました。 このテーマの製作をギブアップしたのでは?と思われるかもしれませんが、あることで悩み、色々調査し考えた挙句やっと結論を出しつつあります。 何で悩んだかというと音が良さそうな単電源で動作するオペアンプが見つからない!でした。 ここでプリアンプに使っているLM358は汎用のオペアンプでオーディオ用に使うには役不足の代物です。 特に交流アンプとして使うとクロスオーバー歪が出やすいとか、ノイズ発生量が多いとかオーディオ用としては問題が多々あります。

このことは当初から判っていた事ですが替わりのものが見つからないので、ノートブックPCスピーカー1用のアンプにはそのまま使ってきました。 しかしノートブックPCスピーカー2にはこの心に引っ掛かる部分は残したくないので(出来ればノートブックPCスピーカー1のアンプもオペアンプを変更したい。)、改善案を模索していました。 そしてオペアンプを片っ端から(約200種位でしょうか?)調べて、単電源で使えるオーディオ用に良さそうなものを再度物色しました。 そして3 - 4種類が候補として残りそうな気配になりましたがその過程で、設計が新しくよりオーディオ用に特化した作りになっている物は全て2電源設計だということを発見しました。 また2電源でオペアンプを使う場合には、音質の良し悪しに直結しやすい電解コンデンサーを大幅に減らせますし、抵抗の使用本数もかなり減ります。

そんなことから2電源でプリアンプを組むことを考え始めましたが、パワーアンプは12V単電源でこれは変更できません。 だからといってプリアンプ用に別電源を起すのは箱の内容積減少の原因になりかねません。 ごく僅かの部品の追加で2電源を実現できる方法はなんだろうかと探し続けました。 そして最初に『電圧コンバーター』という代物を発見しました。

8ピンのDIPのICですからオペアンプとそっくりですが、外付けで2本の電解コンデンサーを追加します。 これで何が出来るかというと、『入力電圧が反転して出力電圧になる。』ということです。 購入して一通りの実験をして見ました。 入力電圧は18VまでOKですが、出力抵抗が56Ωもありますので出力電流が10mA流れると出力電圧は0.5V下がってしまいます。 安定化電源とはおよそ言えません。 更に電圧コンバートのスイッチング動作に4KHzから10KHzの信号を使うとあり、これは完全に耳に聴こえるオーディオ領域ですからとても使える可能性があるとは思えませんでしたので不採用としました。

その後具合の良さそうな方法が見つからないまま8月を過ぎましたが、何の気なしにあるDC-DCコンバーターの説明書を読んでいて、おっこれはいけそうだぞ!という方法を発見しました。 それはコーセルというメーカーが生産販売しているSUS/SUWシリーズDC-DCコンバーターです。 このシリーズは小容量ながら大変コンパクトで、LEDポータブルライトでも9本のLEDの駆動に使っています。

これの取扱説明書は製品に添付されず、コーセルのホームページで閲覧したりダウンロードもできます。 それを読んでいた時にこのコンバーターは入力と出力が絶縁されていることが記載されていることを見つけました。 これはどういうことかというと、正入力を正出力させるだけでなく、負出力として出力させたり、或いは出力をフローティング状態(GND無し)も設定できることを意味しています。

つまり前述の電圧コンバーターが出来たことも実現出来るわけですが、スイッチング周波数は200K - 1950KHzと完全に可聴帯域外であり、出力電圧は安定化されている!という大きな違いがあります。

取り敢えず候補としている物はSUS1R51212SUW1R51212で、両方とも入力電圧範囲は9V〜18Vで、出力電圧は前者が12V 130mA、後者は±12V 65mAです。 何れも大きさは21.4 x 6.5 x 12.2mmと大変小さく占有スペースは僅かで済みます。

前者を使った場合は+12Vはメインの電源から取り、-12Vはコンバーターを通して反転した電圧を使う事になります。 後者の場合にはプラス、マイナス両方の電圧をメイン電源から切り離して使えますが、GNDは共通にして使う事が可能です。 どちらの方法でも良さそうなのですが、メイン電源と実質的に切り離す事が出来る方が良さそうですし、オペアンプの消費電流は10mA前後ですから65mAの出力電流でも充分間に合うので、後者を選ぶ方向にあります。

この写真の物は同じシリーズのSUW30512SUS1R51212より大きい 24 x 6.5 x 15.1mmです。 実装密度が極めて高く回路が判って部品が入手できるとしても自作は不可能です。 こんなことを考えると\840.-は安いなー!と思います。

DC-DCコンバーターですから高周波ノイズは発生しますが、もともとメイン電源も12V 4.3Aのスイッチング電源を考えていましたから、DC-DCコンバーターの使用を尻込みする理由は何もないでしょう。 むしろ何でこのような方法に早く気づかなかったのか私の不勉強がよく判りますが、これを入手して動作上の問題がないかどうかの実証実験をしてみようと考えています。 2電源がOKとなるとオペアンプの選択はこれまた高性能な物が沢山ありすぎて、新たなそして贅沢な悩みになりそうです。




2011/09/30

スタンバイ制御回路とコントロール回路基板の製作

 DC-DCコンバーターを購入し期待通り
 の動作をしてくれるかどうかの確認を始
 め、3種類の電気回路基板の作成に取
 り掛かりました。(最終的なこのブロック
 の回路図は右のとおりで、前に提示し
 た全体回路から変わっています。)


 先ずDC-DCコンバーターですが、最終
 的にはSUW1R51212に金属カバーの付いたSUCW1R51212を購入
 しスタンバイ制御回路を作って簡単な動作確認をしました。
 このDC-DCコンバーターはスタンバイ制御回路の一部として組み込
 む理由は特にありませんが、ノイズ対策をしないとならない場合に
 はプリアンプから離した状態にしたかったので、スタンバイ回路基板
 に組み込んだようなものです。(パワーアンプ基板は2mmピッチなの
 で組み込み不能。)


 出来上がった基板の±12V出力端子に1.2KΩを繋いでオペアンプと
 同等の10mAが消費されるようにした上で各部を調べましたが、何も
 問題はなく、12Vの単電源から±12V電圧が取り出せており、0VがGNDとなっています。 実にあっけらかんと問題解決が図れたわけですが、引き続いてコントロールアンプの製作に進みました。

 コントロールアンプの電源が±12Vとなりましたが、C・Rの使用本数を減らせる
 DC増幅回路とし、帰還後0dB(1倍)のゲインが容易に得られる反転型で再設計
 しました。(左がコントロールアンプブロックの回路ですが、前に提示した全体回
 路のそれとは異なります。)


 反転型の入力インピーダンスは、ほぼ入力に直列に入る抵抗の値となり、かな
 り低くなるので直流カットコンデンサーの値は増加しています。
 但し音として再生できない(聴こえない)低域をローブーストすると、スピーカー
 コーンの振幅が増加し低域ノイズなどで破損させやすくなるので、23Hzのカット
 オフ周波数で低域を切ることにしました。 家で使う大型スピーカーの場合同じ音量を出す場合でも振動版面積
 が大きいので振幅はそれ程高くないため、ここで述べるような配慮は不要になります。

また出力に3.3KΩの抵抗を直列に入れましたが、パワアンプの入力段に容量負荷が多めに入るので発振防止用のつもりです。 尚基板のレイアウトは部品点数がかなり減るため立てて使おうとしていた抵抗を全て寝かせて、右のようにゆったりとしたレイアウトに変更しています。

クリチカルな問題は無いはずなので、オペアンプには安価で高性能のNJM2114Dを使って組み上げ動作テストに入ったのですが、ちょっとした事でアンプは超高周波数の発振を呈している事が確認できました。 そのちょっとした事には、指が触れたとかオシロスコープのプローブが触ったなんていうのもあり、非常に不安定で使い物になりません。 暫くの間発振を止める手立てを考えて試してみましたがどうにも発振は止まりません。(オシロスコープで観測した所では1MHzに近い所での発振で、オーでイオ信号に上乗せされたように見える。)

丸一日あーでもない!こーでもない!と発振対策をかなりやった挙句基板は、仮に発振がおさまっても使う気になれないくらい痛みや汚れがひどく、結局基板から作り直す事にしました。 その時に何気無くオペアンプを直接固定するのではなくソケットを使う事にしました。(結果的にはこれが良かった!)

再組立が完了し動作テストに入りましたが、気のせいか前よりは良くなったもののまだ発振しやすい状態にあります。 そこでオペアンプには発振しやすい物と安定度が高くてなかなか発振しないものがあるのを思い出し、手持ちの数種類のオペアンプを差し替えてみた所、発振しないものが出てきました。 その中で最も安定だったOPA2134PAを、ポータブルスピーカー用に使うにはちょっぴり贅沢なオペアンプですが、安定度が悪くては何にもなりませんので最終的に使う事にしました。 

この為に回路図、基板レイアウト図ではOPA2134PAの表記になっています。

大きな穴あき基板を切断して穴あけ加工を済ましたプリント基板。

全ての部品を取り付け終了した写真ですが、これは作り直した後のものです。 尚この面は裏面になります。

反対側が表面で、基板の表面から8.5mmの位置にアルミフロントパネルが位置する予定です。

早速動作テストの入りました。 オペアンプによっては発振に悩まされる物もありましたが、OPA2134PAにすることで大変安定した動作をしています。

動作テスト中。 オペアンプをOPA2134PAにして安定した動作が得られたので、周波数特性の測定に入りました。 右上が出来上がったばかりの低周波発振器で電源は右のテーブル下にある±2電源です。 尚真中にあるDMMは周波数の読み取りに使っています。


測定結果

コントロールアンプのゲインは0dB(1倍)です。 但し最終的に接続するパワーアンプICの入力抵抗は30KΩであるとのことですので、コントロールアンプ出力端に入れた3.3KΩで0.9dBほどの減衰が発生するでしょう。(これ自身は問題ないはずです。)

最大出力は低域が気になるので100Hzで調べた所7.5V(実効値)でした。 無論全く問題ありません。

 フラット状態の周波数特性

 左の図がそれですが、左右が良く揃っていてそれらの違いはグラフには表れませ
 ん。 先ず高域は100KHzまで完全にフラットです。 別に方形波で観測しています
 が、50KHzの波形も入出力の違いは殆どありませんから、500KHzまでフラットさ
 は続いているはずです。

 一方低域は意識的にカットした結果が出ています。 ロールオフ周波数の設計値
 は23Hzですが、左の図からは20Hzと読み取れます。 結果論ですが、入手に苦
 労した0.68μFは0.47μFでも良かったようです。


 バスブーストコントロールMAXセット時の特性

 左がバスブーストコントロールのVRを最大にしたときの特性です。
 ターンオーバーは392Hzと196Hzを切替えるよう設計しており、赤が196Hzを表し
 ています。 設計値とのずれが大きいですが実使用上の問題はあまりないでしょ
 う。  最大ブースト量はターンオーバー392Hzで13dB強、196Hzで11.6dBとなって
 います。 設計時の最大ブースト量は15.6dBでしたが、上の周波数特性に見られ
 る低域カットの影響でブースト量が抑えられています。 無論これは意図する所で
 す。

 この特性から見た限りは196HzターンオーバーでVRポジションがMAXに近い所で
 うまくスピーカーの低域補償が出来そうな感じです。 392Hzの方は小音量でラウ
 ドネスコントロール的な使い方をする以外では出番が無いかもしれません。

100Hzの方形波はこのようにサグを生じています。 これは周波数の1/10までの周波数域で低域が降下していることを表しています。

10KHzの方形波は原波形とほぼ同じです。 これはこの周波数から10倍の周波数までがピーク、ディップ、うねりの無いフラットな特性である事を意味しています。

100Hz方形波を入力しローブーストした時の再生波形です。 左はツマミを半分回した位置で、右は最大まで回した時です。

ターンオーバー周波数が半分に下がった時の波形はこのように変わりました。 奇妙きてれつには変わりありませんが。



2011/10/07

パワーアンプ基板の製作

 パワーアンプの最終的な基板レイアウトは左、回路
 は右の図のようになっていますが、実はこれから述
 べる問題があって作り直したものがこれらです。

 同じパワーICを使っての3作目になりますので、勘
 所は承知しているつもりですから以前に提示した回
 路をもとに淡々と製作は進み試験運転へと進みまし
 た。 しかし動作は極めて不安定で容易に発振が
起きてしまいます。 念のために電源の出力電圧を0Vから徐々に上げながら動作状態を見
ていると、7V弱で動作開始するようですがその直後に発振を起します。(入力信号無しでも
500mA位の消費電流が流れる。)
 そしてそのまま電圧を上げてゆくと10V近くで一旦発振
が消えて何事も無かったのようになり、入力に信号を入れれば増幅をします。

但し何かのきっかけ(ほんのちょっとした電気的な変化やショック?)で再び発振し始め、そうなるともはや発振は止まらなくなります。 今回の回路ではメーカーの推奨する帰還量の上限を5dB超える量にして増幅度を抑えているところから、これに無理があったかな?と増幅度を安全値の40dBとなるように調整しても症状は変わりません。

その他メーカーの技術資料に従って発振を起さないように接続する外部素子をひとつずつチェックしたり値を変えたりしましたが、異常発振は止まりません。 妙な周り込みや飛びつき発振も疑ったのですがそれらしい様子も無く、無論誤配線があるわけでもないのです。

暗鬱たる想いで善後策が行き詰まりかけた時に何気なく、
『電源回路のインピーダンスが高いということは無いよなー?』
ふっと考えました。  というのは1作目と2作目では1000μFのコンデ
ンサーが1本パワーICの近くに挿入されていましたが、この3作目では
大容量電解コンデンサーはサイズが大きくケース裏板に干渉するので
スタンバイコントロール基板に移していたからです。

そこでもしかしたらこれが原因かもしれないと手持ちの1000μF 25V
を仮接続した20cm余りの電源ワイヤーの先に繋いだ所、発振はウソ
のように止まりました。 但し電源電圧を10V以上に上げると方形波の
水平部分が厚みを増してきます。 それを拡大してみると小刻みな
上下振幅があり、まだ発振は完全に消えていません。
そこで電源ワイヤーを切断し短くした(数センチ)所に電解コンデンサー
を繋いだらその発振も消え安定した動作状態となりました。

トラブルの原因を発見して解決できるまで約2日間掛かってしまいまし
たが、参考までにオシロスコープで見た発振波形をご覧ください。

電解コンデンサー無しの時の状態。 1波長が2Divですから発振周波数は約500KHzとなります。 P-Pで4Div以上ですから発振出力も結構あります。

1000μFを電源コード20cm程の先に接続した時で、10KHz方形波の水平面が幅広に見えます。 これはまだおかしいぞ?と思いましたので、

オシロスコープの輝度を落としてみたところ、水平部分は上下にぎざぎざがあるような気がします。 そこでスイープ速度を更に上げてみたところ、

出てきました。 まだ発振は完全に消滅したわけではありませんでした。発振波形が方形波に乗っかっているような感じです。 そこで電源コードの約3cmの所(以前は20cm)に電解コンデンサーを繋いだところ、発振は完全に消えました。

対処法としては写真でご覧のように電源コードに1000μF 25Vの電解コンデンサーを空中配線していますが、恒久対策としてはとてもこんなやり方はしたくありません。 そこで面倒ですが基板全体を作りなおしその中に1000μF 25VもICの近くに入れることにしました。 また最終的な基板では念押しのため0.1μFの積層セラミックコンデンサーを電解コンデンサーと並列に入れ、高い周波数でのインピーダンスを下げています。

さてこんなトラブルで一時は右往左往しましたが、3作目の今回結構大きな収穫がありました。 それはメーカーのガイドラインよりも5dB帰還量を増やしても発振はおろか不安定になったり気に食わない特性になる事が全く無かったということです。

そもそも2作目ではパワーアンプのゲインはメーカー推奨の最大帰還量に抑えたため40dB(100倍)の増幅度がありました。 このためにパワーアンプ回路の入力感度は56mVと高めになってしまいます。 そして非反転増幅回路を使ったコントロールアンプも6dB(2倍)のゲインがあったため、総合的に入力感度が28mVと高すぎるため、間に減衰器を入れて調整する!なんていう変てこなことをやっていました。

しかるに今回は、パワーアンプのゲインが5dB下がり入力感度が100mVとなり、コントロールアンプも反転型としたため増幅度を1に抑えることが出来、総合的に入力感度が100mVと大変バランスの良い構成になっています。 まだ歪特性を測定できませんが、帰還量を5dB増やした事で若干なりとも更なる改善が図れている筈です。 完成した基板と安定度の良い特性は以下の写真をご覧ください。

作り直したパワーアンプ基板。 右端に電解コンデンサー(1000μF 25V)が入りました。

裏側の様子。入力に入れてある1000PF(黄色の物)は交換容易にするため裏付けとしました。 また電解コンデンサーと並列に0.1μF積層セラミックコンデンサー(空色)も追加しました。

正常動作時の100Hz方形波の再現状況。 僅かなサグがありますが、この程度だと10Hzまではフラットでしょう。

1KHz方形波は入力信号に完全相似で全く問題無しです。

10KHz方形波再現は僅かに左肩が丸くなりだしていることから10倍の100KHz近くから減衰し始めていることを伺わせます。 しかし妙なピークやうねりのない素直な特性は異常発振が起きる可能性が極めて低い事を示唆しています。

50KHzでは完全に左肩がなまり出しています。 従って100KHz以上はスムーズに減衰しているだけで、これらも安定度の良さの表れです。

以上の測定には電源に定電圧電源(MAX 1A)を使い電流容量が不十分なために負荷としては10Ωの抵抗を繋いでいます。(最終的には12V 4.3Aのスイッチング電源で充分な容量になる。) スポット的に正弦波で周波数特性を見たところ、低域は10Hzまでフラットで、高い方は50KHzで0.2dB減衰、70KHzで0.9dB落ち、発信器上限の107KHzで2.3dB落ちでした。 従ってカットオフ周波数は110KHz前後になります。

最終的な4Ωで測定した場合変化があるにしても周波数特性は充分満足できる値を得られると思われます。 尚電圧利得は56倍(35dB)で予め期待していた値ピッタリです。

現在は負荷抵抗が10Ωであるため最大出力電力は5W x 2しか取れていませんが、実際に4Ω負荷とした場合には9-10Wに増えるはずです。



2011/10/28

スピーカーボックスの製作 1

スピーカーボックスの製作にやっと入れますが、電気系統で変更がありますので簡単に触れておきます。 これまではポータブルスピーカーとして少しでも大きさを押さえるために電源はボックスの中に入れて極力総容積を抑えようと考えていました。 しかし発熱、内容積不十分、電源からのノイズ、の3点の問題があります。

・発熱
ノートブックPC用スピーカー1では小さなアルミケースに多量のノイズを出す電源を一緒には出来ないと外部電源にしましたが、無信号時でも結構発熱します。 通気口があいていますから問題は起きないものの、ノートブックPC用スピーカー2では通気口無しのため熱は内部に溜まる一方となり、長時間運転では熱破壊の原因になりかねません。

・内容積不足
これまでの計算した内容積はあちこちをいじめまわした結果ですが、吸音材を含めない計算でも1.98リットルと設計値を下回っています。 スイッチング電源基板の容積は135ccありこれが無くなれば内容積は2.11リットルとなり、実容積が小さい吸音材でしたら何とか内容積が2リットル以下にならずに済みそうです。

・電源が出すノイズ
スイッチング電源が空中に発するノイズは電源基板をアンプから離せば減少しますが、何しろ内容積が足りる足りないのぎりぎりで進んでいますから使える空間の自由度は低く、十分な距離をパワーアンプやコントロールアンプとの間に確保できません。

以上の結論として外部に出すことになりました。

 ケースの製作に入るためには各部の寸法を決定しないとなりません。 左が確定した寸法
 を入れた図で、以前紹介したものから、パワーアンプ基板の取り付けが上下逆さになった
 事、スイッチング電源基板を削除した事など若干の変更があります。

 製作の中で非常に注意すべきは前面の小さな材料を貼り合せて組み上げる部分の工作精
 度、そして裏蓋を固定するアルミフレームが如何に正確に固定されるかで、いびつな箱を作
 らないための鍵になると思われます。 そこで思考実験を繰り返して、これならうまく行くだ
 ろうとの手順を組み立てて進めました。 見方によっては変な作業順序ですが、多分合理
 的だろうと思います。

 最初の作業は底板を受けて固定するアルミチャンネル材の枠作りです。 金工作業は木工
 作業に較べると時間が掛かりますし、工作精度を確保するのも容易ではないので、作業開
 始後いきなりですが大きな山場となると思います。

材料は3mm厚30mm幅のアルミ平板と3mm厚15mm幅L型アルミチャンネル材です。 所定の長さよりほんの少し長くジグソーで切断してその後刃研ぎグラインダーやヤスリで削ってドンピシャに追い込みます。 次にそれらの両端を45度にジグソーで切断します。 罫引き線よりもほんの少し外側になるよう刃研ぎグラインダーやヤスリで削ってから45度研摩ジグ(後ほど写真でお見せします。)に固定して、#60布ペーパーで削り正確な角度と長さとなるよう追い込みます。(正確には長さは前の作業で既に正確になっていますが45度角の先端はまだ鋭くなっていませんので、これを鋭くする事が突合せ時の長さを出すことになります。)

次に5φの穴、計18個をあけてタップで雌ネジを切りました。 これで裏蓋を受けて固定する枠となるアルミチャンネル材への前加工は終わりです。 次に背面の放熱板の加工をしておきます。 ほぼ中央にパワーICを固定するM3の雌ネジ2箇所を切る事と、13φのDCジャックを固定する穴をあけます。 加工点数は少ないですが何しろ5mmの厚さとなると簡単には終わりません。 そして力技も多少いることもあってアルミ板の表面には細かな傷が沢山つきます。 そこで#120のサンドペーパーで研摩してそれらの傷を取り去ってから水性ウレタンニス透明クリヤーを1回塗り、DCジャック穴に文字入れをしてもう一度透明クリヤーを塗った後で艶消しクリヤー1回塗りとして表面を保護しました。

これが45度研摩をする一過性のジグです。 端材の木材から4つの部材を切り出しネジで組み上げています。 矢印の先の面に研摩される材料を固定します。

真横から見るとこんな具合です。 写真中に示した角度が正確に45度であることが重要です。

逆さにしてお見せしていますが、これを上に被せて前後に動かして研摩します。 真中縦に黒っぽく見えるのが両面接着テープで貼った布サンドペーパー#60です。

さて実際の研摩の様子ですが、このように研摩する材料をしっかりとクランプで固定します。

材料の先端はほんの少しジグから飛出るくらいがよろしい。 そしてこのように左手で握って保持します。

右手は左上の道具を被せて前後にゴリゴリと動かし研摩します。 材料の先端が鋭くナイフのようになれば終了ですが、研摩速度は大変遅いので時間が掛かります。(削りすぎは起しにくい!)

終了間近となっている材料先端の様子です。

これが研摩終了の材料先端。 研摩ジグ無しではこんなに綺麗で正確な角度の面には絶対になりません。

切断と先端の角度出しが終わった4本の部材。 ここまでで丸一日掛かってしまいましたが、この製作作業で一番忍耐と根気を要求する作業でしょう。

5φの下穴をあけてタップでM6の雌ネジを切りました。 穴あけの位置精度とネジ切り時の直角度の精度が重要です。

放熱板となるアルミ板(300 x 50 x 5mm)にパワーIC固定のネジ(M3 x 2)とDCジャックを固定する穴(13φ)をあけます。 たった3個の穴ですが板厚が5mmですので加工には時間が掛かりますし、ご覧のように細かい傷が沢山付いてしまいます。

そこでこのようにアルミ板が動かないように固定して研摩します。 茶色の棒はハンドサンダーを直線に動かすためのガイドです。

ハンドサンダーをガイドに沿わせてアルミ板を研摩します。 #120のペーパーを使っていますが、空研ぎペーパーが目詰まりを起さず都合が良いです。

傷が全て取れてしまいウソのように綺麗な表面になりました。 この面をウレタンニスで保護します。

水性ウレタンニス透明クリヤー2回塗り後完全乾燥させてからインスタントレタリングで文字入れし、その後透明クリヤー1回塗り、艶消しクリヤー1回塗りとしました。

これで金属加工は暫しお休みとなり、木工作業となります。 最初に5.5mm厚シナ合板から背面板を切り出し、上で加工したアルミ板と接着します。 接着にはエポキシ接着剤を使います。 次に底板を切り出し底板固定ネジが通る穴(18箇所)をあけて上で加工したアルミチャンネル材をネジ止めします。 この後の作業で接着剤が多用されますが、それが底板に付着しないよう間にポリエチレンシートを挟んでおきます。

ネジ止めしたチャンネル材の縦・横の外寸が所定の値(幅282mm、奥行147mm)になっていて、角が直角になっている事を確認しておきます。 こうしたら手前に接着剤で固定されてしまう底板の一部(幅42.5mm)を切り出してアルミフレームの手前の部分にエポキシ接着剤で固定します。

次はチャンネル材の突合せ部分内側(4ヶ所)に補強のアルミ板(20 x 20mm)をエポキシ接着剤で固定します。 これで接着強度は高くないのですが4本の枠の部材は連結されそれぞれの位置は確定します。

さて背面板の接着強度は十分になっているでしょうから、アルミフレームに背面に接着します。(これもエポキシ接着材です。) この時に直角度が重要なのですが、L型チャンネル材が高精度に生産されていれば直角度は気にしなくても正確に出る筈です。

5.5mm厚シナ合板から切り出した背面板。 これと5mm厚アルミの背面板と貼り合わせます。 この板は52mm幅でアルミ板は50mm幅ですから、貼り合わせ時にこの板が上下に1mmずつ飛出るようにします。

エポキシ接着剤を使っていますが、密着度が上がるようクランプでかなり締め上げて4時間ほど寝かします。

底板は2枚構成で、上が手前側になりますが接着剤で固定され、下は18本のM6 のボルトが通る穴があいたネジで固定する底板です。

アルミのチャンネル材を固定しますが、底板との間にポリエチレンシートを挟みこの後の接着作業で接着剤が底板に付着しないようにします。

4本のチャンネル材の突合せ部分に問題がないか、組立後に4本のチャンネル材で出来る長方形が設計寸法どおりになっているかを確認します。

問題なくば次の工程で、底板前部分を平板アルミ板に接着します。平板の幅は30mmありますが、半分の15mmが接着される部分です。

次にチャンネル材の突合せ部分4ヶ所の内側に20 x 20mm厚さ1.5mmのアルミ板をエポキシ接着剤で貼り付けました。

これが拡大写真ですが、この工程で4本のチャンネル材は強度不十分ながら連結され、位置関係が確定します。

背面板の接着。 垂直に立つようにするのが重要ですが、L字型チャンネル材の直角度に依存しています。

完全硬化後クランプを外した右横です。 底板はポリエチレンシートが被さっているので、接着されません。

箱構造の底板と背面板の2面が組み上がった事になります。 次が前板を貼り合わせてから天板を貼る事になり、最後が左右の側板です。



2011/11/04

スピーカーボックスの製作 2

 前面は合計7枚を前後に貼り合せてブロックとしたものを天板と底板に挟
 んでやります。 それらの材料は当初9mm厚のMDFとしていましたが、
 MDFはネジを打ってもバカになりやすいので、スピーカーユニットやアンプ
 パネルをネジ止めする前側4枚はMDFからシナ合板に変えました。

 前側4枚は52mm幅ですが最後部は間にアルミ枠がはさまれるため
 49mm、その手前の2枚は一部52mm、一部49mmとなります。
 いちいちそれらの幅を確認しているのは、高い精度を要求するためで、さ
 もないと組立時にとんでもない隙間が出てまともなスピーカーボックスとし
 て動作しなくなる可能性があるためです。

 最前面の板は内側に面する側面が45度の傾斜を持ちます。 当初この
 部分は90度V溝ビットで板厚と同じ9mmの深さ(左図上の赤線がV溝ビッ
 トの切削ライン)
に切削して左右に切り離し、その後先端を1.5mm削って
 所定の寸法にしようと考えていました。(左図上)

 しかし材料をシナ合板に変更すると45度切断面はかなり荒れますので
 切削後に木口テープを貼って仕上げる事にしました。 僅かな面積の部
 分ですが結構目立つ所で完成度にかなり影響すると思ったからです。

 但しそうすることで木口テープの厚み分だけ最終寸法が狂ってきます。
 ノギスで厚みの増大量を測定した所、接着剤込みで0.5mmでした。
 (メーカー発表の公称値は0.45mmですが、材料のみの厚みで接着剤の
 厚みは含まないと思われます。)


 従って木口テープを貼ると0.5mm45度方向に飛び出し、前後方向には
 0.5 x √2 = 0.707mm寸法が変化します。 この分を補正するためにV溝ビットで切削する際に0.7mm深く彫る設定とすれば、木口テープを貼った後で元の寸法となります。(図のオレンジ部分が木口テープの断面になる。)

これら9mm厚シナ合板から切り出す部材4枚は全て52mm幅ですから、幅52mmの長い板を切り出してカンナとヤスリでドンピシャに幅を成形後2次加工(35φと25φの穴あけ)をした後にトリマーで切り離し、ノコギリでその後最終長さに切断しています。

後の3枚は幅がまちまちですが、寸法精度を±0.1mm以下にノギスで測りながら作業をしていますが、MDFは加工しやすい(意外に柔らかい)ので、削りすぎに要注意と言えます。

これらの組立時にはバスレフポートとなるボール紙製の円筒も接着してしまいますがこれらのブロックを裏板の固定部分に接着します。(エポキシ接着剤を使用。)

接着強度が実用強度に達したら天板を固定します。 背面板の接着部分は厚み5.5mmの部分だけですから、エポキシ接着剤で強度を確保しておきます。

そこまでの作業の様子は以下の写真をご覧ください。

52mm幅に切断した9mmシナ合板から手前の4枚の板を切り出します。 赤線はV溝ビットでの切断位置。 また厚紙円筒を所定の長さに切断しました。

52mm幅を別な板で挟み動かないよう押さえました。 この写真でも赤線はV溝ビットの先端が通る位置になります。

切削深さが9.7mmになるようノギスで数回確認した後に一気に切削しました。

2つに切り離されました。 こんな小さな写真でも切断面は美しくない事が判りますが?

替刃式ヤスリで表面をならした後にシナの木口テープを貼り、ヤスリで段差を取り除きました。

そして45度斜面の先端を削って1.5mm幅となるようにしました。 この段差と後ほど加工するアルミ板の厚みは一致するので、ぴたっと収まります。

2番目の板に円筒を接着します。 直角度が出るように曲尺で念入りに確認する必要があります。

1番目の板と2番目の板を貼り合わせました。 位置関係の正確さは極めて重要です。 適当にやると後でとんでもない事になります。

出来上がった物を所定の位置にエポキシ接着剤で接着しました。 更にその後に取り付けられるMDFの部材2個を接着しています。 そしてこの後に接着されるべきMDFにはコントロール基板が固定されるので、その辺りの加工をしている最中に待てよ?!と気になる事を見つけ作業を止めました。

何を見つけたのかというと、コントロール基板は部品が付いた面が奥の方になるように固定するのですが、その奥行を15mmとして設計を進めてきました。 そしてこの距離でぎりぎりになる上背の高い部品はトグルスイッチで14mmという認識でいました。 ところがそれよりも奥行きが長くなる部品の存在に気が付いたのです。

それはコネクターで、これまでは基板に半田付けされたオスのコネクターだけを見てきておりトグルスイッチより低いので忘れていたのですが、最終的にはそこにメスのコネクターが刺さり、基板面からコネクター先端までは16mmになります。 実際にはワイヤーが出てきますから少なくとも19mm位ないとなりません。 従って4mm以上かさ上げしないとなりませんが、かさ上げ量が5mmを超えると裏板を固定するボルトに干渉します。 よってかさ上げ量は4.0〜5.0mmが基準となります。

計算してみましたら、5mmかさ上げしても内容積の減少は0.02リットル程度で済みますので上限の値で行こうとしかけましたが、基板と前面のアルミパネルの距離も少し広げた方が良い事がわかり、結局5.5mmのかさ上げとしました。  基板を固定するスペーサーは15mmから20mmに変更しますので、コネクターの上の隙間は4mm、基板とアルミパネルの間の隙間は0.5mm増加します。 これにより裏蓋固定ネジ2本が干渉しますのでネジの当る部分を削っています。

ところで上に述べたように0.02リットル内容積が減りますが、バスレフポートの後部はぐらつくような事がないので、支えは必要なしと考え外してトータルでは容積が増える方向の変更をします。 最終的な内容積は吸音材抜きで2.13リットルと一応2リットルを超えます。

スペーサーを20mmに変更後の板と部品の間隔。 左の写真はオスのコネクターだけの場合で8.5mmあるが、以前の15mmスペーサーでも3.5mmあったので問題なしと勘違いしていました。 実際には右の写真のように4mmの隙間で、ここにワイヤーが入るからぎりぎりOKというところです。

結局5.5mmの下駄を履かせることになりましたので、端材の5.5mm合板を切断して貼りつけました。

そしてその上にコントロール基板を固定する板を接着しました。 基板の位置も気になったので、基板を仮取り付けした状態で圧着保持しています。

やれやれやっと問題が完全解決しました。 幸いな事に全体的な工作・組立精度には全く影響がありません。

コントロール基板及びアルミパネルへの配線は3芯ワイヤーが4組あります。 そこで3芯平ワイヤーが通る穴(1.6 x 5mm)を4つトリマービットであけてあります。

上板を接着する前にDCジャックの固定ネジ、及び端子の隙間にエポキシ接着剤を塗りつけて隙間を完全に塞ぎました。

上板をエポキシ接着剤で接着。 中型のクランプ6本を使って圧着保持4時間。

ポリエチレンシートを挟んで仮固定していた裏蓋をやっと外せます。 曲尺で調べましたが、箱のねじれは全く無く、外形の寸法誤差は±0.2mm以下となっており、高精度を保てていると思います。




2011/11/11

スピーカーボックスの製作 3

既に製作の過程での大きな山は越え難易度の高い作業はありませんが、気の緩みでとんでもないミスをするのはむしろこの後完成までの間に起しやすい(というか過去に何度か苦い経験があります。)ので、慎重に進めています。

左右の側板を貼る前にグリルを固定するゴムブッシュを嵌め込む10φ 9mmの深さの穴をあけます。 深さは正確さが重要ですが(深過ぎると空気漏れともなる穴になる。)、自作の電動ドリルアタッチメントを使っていますので深さ調整は大変簡単です。

その後に左右の側板をエポキシ接着剤で貼り付けました。 圧着保持のクランプには50mm C型クランプ4個と400mmバクマクランプを2本使っています。 400mmバクマクランプの代わりに、自作できる中型のクランプでも良いでしょう。

 接着剤の完全硬化を待ってスピーカー取り付け穴の切断に入ります。 バッフルボードの幅
 と穴の直径が等しいので(52mm)、箱が完成してからでないとバラバラになってしまうため
 今頃の作業になっています。  最初の穴を切り進んで行きましたが、底に近い所まで来ま
 したらガガガッと何かに当る音がします。 やばいっ!とジグソーを止めて調べたところ、
 ジグソーブレードの先端が3mm厚のアルミフレームに当った痕が見えます。 幸い致命的
 な傷ではないので、切断を続ける手立てを考えました。

 左はその対策を図解したものですが、先ずブレードが最も伸びる量は45mm、縮む量は
 27mmあります。 従ってストロークは18mmということです。 一方箱の前面からアルミフレ
 ームまでの距離は27.5mmです。 従って45mmも伸びるブレードは完全に当ります。

 解決方法は18mmの板を下駄としてジグソーと箱の間に挟みます。(図の状態。)
 こうすると箱の面からブレードの先端までは18mm短い27mmとなりアルミフレームには当り
 ません。 またブレードが最も縮んだ時は27 - 18 = 9mmですから、バッフルボードにはフルストロークでブレードの刃が当ります。 これなら良しということで難なく作業を進められました。
(これをナイフで削るなどしていたらとんでもない手間になっていました。)

側板は少しはみ出るように切断していますので、コロ付き傘付き目地払いビット(MB-12.7G)で段差を削り落としその後全面をサンドペーパー(#120-#240)で研摩しました。 この研摩はまだ仕上げ研摩ではありません。 言ってみれば寸法合わせ、突合せの調整研摩と言ったほうがよいでしょう。 

その後ボーズ面ビット(BZ-10G)で面取りをします。 この丸め加工は完成後にバッグに出し入れしやすいように引っかかりやすい角を無くす!というのが一番の理由です。

グリルを固定するゴムブッシュを嵌め込む4個の穴(10φ x 9mm)をあけました。 深さを正確にしないと突き抜けて空気漏れに繋がるので、電動ドリルアタッチメントで彫る深さにリミットを掛けています。

そうして左右の側板をエポキシ接着剤で固定しました。 圧着保持にはフレーム部分に50mm C型クランプ4個全体を400mmバクマクランプを使い、めいっぱい締め上げています。

組立作業はこれで終了です。 左に立てかけている底蓋も調整することなくすっと嵌め込めます。 かなりへんてこな順序で組み立ててきましたが、精度を狂わせない!という大条件は完全に守れたようで、捻れや反りは全くありません。

側板の接着が完全硬化後やっとスピーカーユニット取り付け穴の切断に入れます。

箱の内部のアルミフレームにブレードが当るので、底に近い所を切断する時はこのように18mmの合板を下駄として電動ジグソーと箱の間に挟みました。

スピーカー取り付け穴をあけ終わりました。 この写真をご覧になれば穴をあけてから組み立てる方法は駄目である事が判るでしょう。

段差取り、突合せ調整の研摩とボース面ビットによる面取りが終わり、組立作業は終了で、これは背面です。

『アルミフレームを構成する部材を底板に仮固定して!』からスタートした、かなり変則的な手順の箱作りでしたが、箱の捻じれや反りを絶対に出さないという絶対条件をきっちり守れたと思います。 右手の穴の奥には最初にブレードが当って傷つけたアルミフレームが見えます。

ここで電気回路を組み込んで音出しが出来るようにして暫し電気回路上の問題がないか、異常な発熱がないかのランニングテストを数時間やっています。 この時には裏蓋固定部分にパッキンは入れておりませんし、吸音材も入れてません。 コントールアンプの背面板を通過する4本のワイヤーが通る穴も隙間があり音的には完成には程遠いのですが、これでとんでもない音になるのであれば、先に進めません。 幸いそのような問題も無く一応パスといったところです。

2枚の基板を内部に固定しそれら間と前面のコントロールアンプ間を接続しました。 手前に見える黒いミニフォーンジャックはフロントパネルに固定されるため空中配線、その右の3芯のワイヤーはLEDに接続されます。

殆どコネクターを使った結線ですから分解も容易です。

コントロールアンプ基板は半田面が前側で、20mmのスペーサーを介して固定されています。 そしてこの手前にアルミ板が取り付けられます。

電気回路がちゃんと動作し、異常な温度上昇やノイズの発生がないかの試験をパソコンを繋いで音出しをしながらやりました。 但しまだ隙間があちこちにありますので、音のほうは最終ではありません。 従って慣らし運転も含めて音の良し悪しを語るのは先の話ですが、取り敢えずのコメントは期待以上でも以下でもなかった!です。

スピーカーボックス本体は出来上がりましたが、本体の塗装を開始する前にやっておかないとならない事がまだ残っています。 それはアルミのフロントパネル作りです。 フロントパネルは塗装を済ましてからでも構わないのですが、現物合わせで加工するため塗装面を傷付ける可能性があるため、塗装前に完成しておきたいわけです。

その他に使わない時や運ぶ時のボックス前面保護カバーがありますが、グリル固定のゴムの受けを嵌め込んで現物合わせで確認したいのですが、本体の塗装が終わってからでないとゴム受けは嵌め込めないので、塗装前には作れません。

アルミパネル製作は想像以上に手間が掛かってしまいました。 その理由はプリント基板はやや不正確に本体に固定されていることに起因します。 従ってボリュームツマミの位置やスイッチの位置などはこの不正確な基板の固定によりずれています。 そのずれの量を正確に把握しないとツマミの周りの隙間は均等になりません。 アルミフロントパネルのサイズも設計上は52 x 90mmですが、実際のスペースを測ると51.9 x 90.4mmありますので、隙間無く嵌め込むには慎重に寸法出しをしないとなりません。

要するに現物合わせで妙な隙間やずれの無い物を作らないといけないのですが、手持ちの寸法測定の道具は曲尺、定規、100mmのノギスだけで、それらだけでどこまで追い込めるかが勝負です。 具体的にどうやったかは詳しくお知らせできませんが、出来栄えはかなり満足できる物になりました。

前面のアルミパネルを切り出して穴あけ加工し所定の場所にネジ止めしました。 この1枚の写真が撮れるまでに丸1日を費やしてしまうほど手間の掛かる作業でした。 ご覧のとおり表面は傷だらけですが、例のヘヤーライン加工を塗装の合間に施し消し去ります。 また左のトグルスイッチ穴の下側はかなり窮屈なので少し削った方が良いです。

これで本体の残る作業は塗装のみとなりました。 フロントパネルのヘヤーライン加工と文字入れそして塗装は、本体の塗装作業と平行して行います。



2011/11/18

塗装と残る作業を済ませ完成へ

塗装はマホガニーブラウンで高濃度に着色し水性ウレタンニス透明クリヤー6回塗り、水性ウレタンニス艶消しクリヤー1回塗りとしています。 透明クリヤーを6回塗りとはさぞかし塗膜は厚くなったろうな?と思われるかもしれませんが、あまり厚くなっていません。

その理由はMDFにあります。 MDFは木材を細かく砕いて接着剤で固めたような物ですが、その木材片の中の大きめの物が水性ステインの水を吸って膨張し起き上がってきます。 この為に着色の合間に研摩してそれらを削るのですが、平らになるまで削ってしまうと着色した部分が無くなってしまい色斑が増大するので気をつけながら着色を加減してやる必要があます。

無着色層まで研摩してしまう事を避けるため、ニス塗りを3回終了するまでは間の研摩をせず膜厚を稼ぎます。 4回目の前に#400空研ぎペーパーで研摩しますが、ニス塗りに入ってからの研摩は着色時の研摩以上に削り過ぎとならないよう十分注意してやらねばなりません。 従って一度にあまり研摩できませんから、塗装回数が増えてしまう傾向にあります。 そして私の場合表面に凸凹がなくなったのが6回塗装した時でした。

この辺りは以前スライド式トップボードのテーブルを作った時に、トップに使ったMDFの塗装で得た問題点を回避するために今回考えたソリューションです。 但しそれら飛出てくる木材片をひとつのデザインとしてうまく見せる手もあるかもしれません。 そしてその方が塗装作業は簡単になるでしょう。

かくて今回は完全にMDFであることを判らなくして、『なにやら良く判らない木材?』という見せ方を志向したわけです。 見方によっては先日完成したヘッドフォーンアンプのケースと同じ材料と勘違いされたりするかもしれません。 私自身は大変満足している結果です。

尚前面だけはMDFとシナ合板が混じっているのと背面の配色と組み合わせ!ということで、シルバー色のペイント塗りつぶしとしています。

また塗装作業の合間にフロントパネルのヘヤーライン加工をして文字入れをし水性ウレタンニス透明クリヤー2回塗り、艶消しクリヤー1回塗りで仕上げています。

ポアステイン マホガニーブラウン色で着色開始。 色斑防止のため水で2倍に薄めています。 これは一度目が乾燥したところですが、5回着色としかなり濃度を上げました。

言い忘れましたが、背面のアルミ板は塗装作業が終わるまでマスキングテープで完全に覆ってやります。

合間にフロントパネルのヘヤーライン加工をしました。 #120ペーパーでスタート、終わりは#240ペーパーとしていますが、空研ぎペーパーが最も具合がよろしい。

そしてインスタントレタリングで文字入れをしました。 この後水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗りその後艶消しクリヤーを1回塗って仕上ます。

これは水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗った後のクローズアップ写真ですが、大き目の木片が起き上がって出来るぶつぶつがあちこちにあります。

こちらはスライドトップテーブルを作った時のMDF表面写真で、大き目の木片の出っ張りを強引に削り取ってその上を塗装したため、色味の薄い木片が目立ちます。


 この問題解決のため実際には着色作業の段階から、飛出た木片を削り取る研摩をやっています。 着色作業では削り取
 って木の地肌が見えた部分をスポット的に着色しました。 またニス塗りに入ってからは研摩し過ぎで木片まで削りこまな
 いよう要注意です。 従って1回辺りの研摩はそれ程深く出来ませんから塗り回数が増えてきます。




着色5回、透明クリヤーニス6回塗りが終わった状態です。 色の濃度はヘッドフォーンアンプケースと同等になったと思います。

大き目の木片はスライドトップテーブルの時(上の写真)のようには目立ちません。 そして、これは一体何の木の木目??と思わせるような重厚感があります。

これを見て材料がMDFそのものだと気が付く人は殆どいないでしょう。 スライドトップテーブル以来の宿題が片付いたように思います。 チープなMDFをチープに見せない魔法です。

さて前面の塗装開始です。 スピーカー穴、バスレフポート穴、グリル固定ブッシュ穴にダンボールを被せたりティッシュペーパーを詰めてマスキングします。

そしてシルバー色のスプレーペイントで1回塗りしました。 そこで塗り斑を確認します。

何箇所か問題があります。 矢印の先はそれらで、窪み、段差、傷などが目立ちます。

油性のパテ(mini-Shopで販売しています。)でそれらを埋めました。 完全乾燥後に#400ペーパーで削って均します。

そしてシルバー色スプレーペイントを2回塗りしました。 上は塗った直後でまだ難のある個所がありますが、それらは下の写真を見て判るように、スピーカーユニットの下に隠れます。 なかなか精悍な感じの面構えです。

裏蓋固定部分とスピーカーユニット用のパッキンを作りました。 本当はウレタンフォームの2mm厚ぐらいのものが欲しかったのですが入手不能で、発泡ポリエチレンを使っています。

前面のコントールパネルに行くワイヤーが仕切り板を通る部分の隙間をコーキング材(変性シリコーン)で埋めました。 機密を保てますが必要とあらばナイフで切って簡単に取り除けます。

そしてコントロールパネルから後方に出ているワイヤーを束ねて固定しました。

最後に吸音材ですが、底面と左右の側面にコの字型に入れています。 そして裏蓋を固定し本体は完成です。

 最後の作業となる保護カバーは、5mm厚アガチスの板と4mm厚シナ合板の貼り
 合わせとし、縁取りは5 x 10の桧棒を使いました。
 アガチス、シナ合板、桧棒とは妙な組み合わせですが、5x10の棒を探したが桧の
 物しかなかった、5mm厚のムク板はアガチスしかなかった、4mm厚の板は手持ち
 にシナ合板があった、というだけの話です。 従って意識してこのような組み合わ
 せにしたわけではありませんが、本体の濃い赤茶色の上に白っぽい桧の層、そし
 て前面の黄色味がやや強い茶色のアガチスと3層の色対比をうまく見せようと、
 無着色でニスを塗りました。  

構造的には表面はアガチスの板でムクであることを強調しながらその裏に4mmのシナ合板を貼り付けて曲げ強度を稼いでいます。 これも本体に固定するブッシュのオス側を如何に正確に取り付けるかが鍵になるので、奇妙な製作順序としていますが、それらの様子は以下の写真をご覧ください。

4mm厚シナ合板から3枚の部材を切り出します。 大きな物は補強の裏板で、小さな2枚はブッシュのオス部分を埋め込む板です。

小さな板を大きな板の所定の場所に木工ボンドで接着します。

接着剤硬化後に8φの貫通穴をブッシュの位置にあけてオスのブッシュを叩き込みます。 またスピーカーのフェイズプラグが当らないよう25φフォスナービットで穴をあけておきます。

14mm厚の大きな板を5 x 10のヒノキ棒で挟むように木工ボンドで接着します。(木工ボンド硬化後の写真で圧着保持は無論必要です。)

5mm厚アガチス材を切断して表面に貼り付けました。 接着部分に浮きがでないようご覧のように沢山のクランプで圧着保持しています。

接着剤硬化後コロ付き傘つき目地払いビット(MB-12.7G)で飛出た5mm厚の板を削り落とし、その上を#240ペーパーで研磨後にボーズ面ビット(BZ-10G)で角を丸く削ってやりました。 更に仕上げ研摩を#400ペーパーでやっています。

丸く面取りした角はこんな具合です。 色々な木目が交錯していますが、合板の木口のような見苦しさはありません。

これで塗装前の作業は全て終了しました。

水性ウレタンニス透明クリヤーを3回塗りました。 それらの間には#400空研ぎペーパーによる研摩がされています。

アガチス(右)と桧(中央)そして本体(左)の色味の組み合わせが素適です。 尚カバーと本体が接触して傷にならないよう8φのクリヤーパンポンが間に貼ってあります。

かなりの艶が出て大変綺麗なのですが私の好みはその艶を抑えた(5分艶)にしたいのので、この上に艶消しクリヤーを一回だけ塗ります。

艶消しクリヤーが乾燥したので本体に取り付けました。 何か宝石箱のような美しさがあると思いませんか? 

実際に使う際のセットアップをしました。 まだ十分にエージングが出来ていませんが、このスピーカーの音、そしてノートブックPC用スピーカー1との比較については、この後のコメントを参照ください。

外寸が380 x 280 x 230mmの中型パソコンバックを運搬時には使います。 私のノートブックPCはレッツノートS8でコンパクトですがWindows XPが標準のお気に入り。 これとポータブルPCスピーカー2、ACアダプター2種類、無線マウス、カードリーダー、DVD/CDのディスク10枚程度が楽に入ります。(因みにポータブルPCスピーカー1はどうやっても納められません。)


音について

最初に結論を申しあげると、低域の再生能力と音圧レベルに関して、口径80mmユニットを使ったノートブックPC用スピーカー1には逆立ちしても適わない!となります。

 ここで使った口径50mmの実振動板面積は振動に寄与しないフェイズプラ
 グが中央にあるため28cm2しかありません。(図の右側灰色部分。)
 一方ノートブックPC用スピーカー1で使った80mmユニットの実振動面積は
 120cm2あります。(図の左側。) 振動板面積が1/4しかありません。

 音圧は振動板が動かす空気の量に比例しますので、振動板面積が80mm
 ユニットの1/4しかない50mmユニットでは、同一音量を得るためには振動
 ストロークが4倍必要になります。 大きなストロークを稼ぐのは大変な困難
 を伴い結論としては80mmユニットに負けます。

 また周波数が低くなると同じ音量を得るのに必要な振動板のストロークが
 長くなる傾向にあります。 このことは小口径ユニットにとって更に苦しい状
 況をもたらします。

設計時に低域再生補正後のシミュレーションの比較で、80mmユニットと50mmユニット間には勝負にならない程の差があることを気づいておりました。 従って正攻法のオーデォの観点から感激を得るような結果は絶対に待ち受けていないと結論付けていました。  それでも製作を続行したのは、

 1.ノートブックPC用スピーカー1は80mmユニットを使った小ささの限界に仕上がったとは思うが、高さが
   105mmというポータブルスピーカーとは認め難い大きさになったこと。


 2.ノートブックPC用スピーカー1との比較は別としても、市販されているノートブックPC用スピーカーに対し
   ては優位性があるはず。


の2点にありました。 

 1.については、幅と奥行はほぼ同じで厚みは105mmから70mmと33%も薄くなっています。
 十分にコンパクトとは言えないものの、これならば市販のバッグでPC共々収めて運べる物が間違い
 なく見つかります。 その点でノートブックPC用スピーカー1はバッグにPCと一緒に収めるのはほぼ
 不可能、運ぶのにも車は絶対に必要になるでしょう。(高さの違いは左写真参照。)

 2.の観点では十分に評価できると思います。 もう少し具体的に言うと、ノートブックPC用スピーカ
 ー1にと比較すると音響出力が取れず低域再生能力もかなり劣りますが、それでも市販品のポータ
 ブルスピーカーに較べれば格段に良い音質で音量も取れます。


ところで音量を出せないとは言っても、使用時のスピーカーと耳の距離は50cm前後で僅かな出力で音量感を得られますから、音量不足になる心配はないでしょう。 その意味ではパーソナルコンピューター用のパーソナルスピーカーということです。

低音はそういうことで一番弱い所ですが、中音から高音は明るく素直に張り出してきます。 私はボーカルで音質を確認する事が多いですが、聴き始めはややきつすぎるかなと感じたものの、エージングが進むにつれてその傾向は無くなりました。 良い意味でメリハリがはっきりした好ましいバランスになっています。  そして演奏形態にもよりますが低音(特にピチカート)のレベルが高い曲は苦手で音量レベルを下げないとなりませんが、無伴奏や低音が入らない伴奏のボーカルなどの場合には、口径50mmとは思えない響きと音量で楽しむ事が可能です。

ということでノートブックPC用スピーカー2はバッグにPCと一緒に入れて運べる、音の良いスピーカーとして使います。
ノートブックPC用スピーカー1の方はノートブックPC用ながら、据え置き専用で最大のパワーを発揮します。

----- 完 -----


 
  
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