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ノートブックPC用スピーカー1
   


(註: 本テーマに関する全てのご質問にお答え致しません!)

2010/10/01

構想

ノートブックPC用スピーカー1では口径80mmサイズのW3-1231SNを使います。
それを納める箱をどこまで小さく出来るかがひとつの鍵になりますが、A4サイズ(297
x 210mm)
の大きさに、厚みはユニットの最大径(93mm)から105mmとしました。
板厚を12mmとすると内寸は273 x 186 x 81mmとなり4.1リットルとなりますが、バス
レフポートとスピーカーユニットが占める容積を差し引くと3リットル程度になると思い
ます。 従ってスピーカー1個辺りの容積は1.5リットルですが、低域シミュレーション
もこの値でやってあります。


アンプと付属回路をどうするか

今回のスピーカーは低域補正を電気的にやりますのでアンプの製作も一緒に進めます。 但し80mm型は小口径スピーカーといえどもかなり大口径スピーカー寄りの性格も併せ持つのでアンプは内蔵でなく別接続とします。 これに対し50mm型はより運びやすいことが重要ですので内蔵型決め打ちになるでしょう。

アンプの最大出力を決めるには必要とする音圧レベルとスピーカーの能率からアンプ出力を決めねばなりません。
W3-1231SNの能率は88dB/m/Wですが仮にスピーカーから1mの距離で聴くことにし(このスピーカーでは離れて聴くことは本来的にない筈なので充分な聴取距離だと思います。)、必要な音圧を80dBとすると0.158Wが必要なアンプ出力となります。  但し低域再生を補償するために最大で12dBのブーストを考えており12dBブーストというのは15.8倍に相当しますから低域でのアンプ出力は2.5Wが最大出力として必要な値になります。

ホームオーディオ用のアンプではないのでコンパクトに作れる事が大変重要で、パワーアンプICがかなり重要な候補になるでしょうしデジタルアンプも発熱が少なく高能率ですから候補になりえます。 そこでそれらを一覧にしてみました。

IC型番 メーカー 動作電圧 最大出力
(THD10%)
電圧ゲイン 入力抵抗 標準
外付部品
チャンネル数
アナログアンプ型
TA8220H 東芝 9-18V 19W/13.2V/4Ω 40-50dB 30KΩ 18本 2
TA7252AP 東芝 9-18V 5.9W/13.2V/4Ω 40-53dB 30KΩ 8本 1
LM380N ナショナル
セミコンダクター
10-22V 2.5W/18V/8Ω 34dB 150KΩ 4本 1
TPA1517 TI 9.5-18V 6W/12V/4Ω 20dB 60KΩ 6本 2
デジタルアンプ型
TA2020-020 トライパス 8.5-14.6V 18W/13.5V/4Ω 21.6dB ? 完成基板
100x50x45
2
TDA7491 ST Micro 6-18V 9.5W/12V/8Ω 20-32dB 60KΩ 完成基板
97x56x23
2
MAX9704 MAXIM 10-25V 7.5W/15V/4Ω 13-30dB 58-15K 完成基板
42x38x20?
2

これらの候補の中からTA7252APを採用する事にしました。 出力電力はそれほど大きくありませんが2.5Wという最低必要量は確保できます。 低域補正回路はこのパワーアンプのゲインを負帰還で落としその中に埋め込む考え方です。

 さてアンプ基板と電源基板を一緒に組み込んで出
 来るだけ小さくする事がこのアンプのポイントかな?
 ということで、既製品のケースを物色してみたところ、
 タカチ電機工業製の、値段が少々高いが格好よい
 アルミケースを見つけました。

 右の写真がそれでシルバーと黒の2種類があり、
 サイズは12とおりあります。 凹凸のある側面の内
 側はフラットなので放熱板として使えますし、IC固定
 用のネジを溝の部分に持ってくれば目立ちにくく出
 来るので大変好都合です。

写真だけを見てほれ込んでしまいましたが、これとスイッチング電源(15V 2.1A、90 x 50 x 25.2mm)を一緒に組み込むこととし、とことん小さく作る事にチャレンジしてみました。

 4回ほどレイアウトをやり直して出来上がった基板の大きさは105 x 20mmになりました。
 面積にして2100mm2ですが、幅20mmという細さはレイアウトになっています。
 実のところ上で述べたケースの2番目に小さい物(130 x 89 x
 40mm)
に丁度ぴったり収まります。 右の図はその状態です。

若干妥協しないとならない点としては、フロントパネルが小さく取り付けられるツマミの個数は制限されるの
で、ボリューム、バスブーストの2つだけとし、ターンオーバー周波数切替は電源スイッチと共にトグルスイッ
チとしています。 それと基板レイアウトの中で、コンデンサー2本だけ取り付けるスペースがないので、可
変抵抗かトグルスイッチに直付けします。

ここで大雑把に考えてきたスピーカーBOXを一度レビューしておきます。 最初に作る80mmタイプは300 x 210 x 105mmとし後で作る50mmタイプは厚さ(高さかな?)が70mmとなります。 80mmタイプは板厚が12mmですので内寸が276 x 186 x 81mmとなり容積は4.16リットルとなります。 ここからスピーカーとポートの占有容積(1.14リットル)を差し引くとほぼ3リットルと目標値になります。

 外形的な変化を求めてこれの角を落とし、中央にバスレフポートを
 配した外観イメージとします。 またその横にアンプが置かれます
 が、かなりコンパクトなアンプになります。

 一方上の50mmタイプはアンプも内蔵させますので全体的なコンパ
 クトさで80mmタイプより数段上になるでしょう。




2010/10/15

口径80mmタイプの箱最終設計

80mmタイプの箱は構造が単純で製作も楽だ!などと申し上げましたが、バスレフポートの調整が可能であるようにすると、かなりややこしい事になります。 そこで最終的な構造と各部詳細寸法を検討しました。


上の図をご覧ください。 先ずバスレフポートの形状ですが、上から見るとTの字型(クリーム色の部分)になります。 ポートの横の部分は2つに別れておりますが中央で1つのポートとなり、スピーカー2本分の動作をさせます。 このためTの字の横部分と縦部分では断面積が1:2の関係になっています。 尚横部分の長さを変えることにより共振周波数を調整しますが、Tの字の上側は背面の板になりますので、背面の板を外してポートの横の長さを調節できるようにします。

3段階に共振周波数を変えるとすると、Tの字の横棒の中心から端までの長さは50mm、75mm、100mmと変えられそうです。 間の75mmにTの字の縦の部分に相当する189mmを加えた264mmで共振周波数が70Hzとなるポートの断面積を逆算した所810mm2と算出されました。 ポートの1辺を18mmとするともう1辺は45mmとなります。 ポートの縦(実際には前後)の部分は2つのスピーカー分になるので、36 x 45mmをポート断面積とします。

またポート横の部分が50mmの場合には共振周波数は73Hz、100mmの場合には67Hzと算出されました。 共振周波数変化範囲は14Hzしかありませんが、低域下降分電気的補正も併用しますので、調整範囲が狭すぎることはなかろうと思います。

これで共振周波数70Hz時の内容積正味がどうなるかの確認をしました。 緑とピンクの部分は空間部分で、青は空間を狭めるスピーカーユニットです。 またスキと表した部分はポートの上下に出来る9mmの隙間の容積を計算したものです。 そして計算結果は3.098リットルとなりました。

 以上にて基本的な問題は無しと考え、もっと大きな詳細図面を起こしました。 左の図がそれです。
 上から背面図(背面板を外した状態)、上面断面図、前面図(前板を除いた状態)、前面外観図、前蓋寸
 法図、前蓋断面図、そして右には側面断面図となっています。

 この図面に間違いはない筈ですが、非常に理解しにくい部分があります。 一番判り難いのはスピーカー
 端子の固定部分です。 だいたい常識から外れている底面(または上面と言っても良い?)に取り付けま
 す。 これは位置として一番無難である背面中央内面はバスレフポートの一部であり、スピーカー端子が
 出っ張ってくると共振させる音道をブロックし不都合です。 しかし底面(上面)にはバスレフポートとの間に
 9mmの隙間があり、この部分にスピーカー端子が収まるようにすれば、左右対称のレイアウトを保ちなが
 ら低域共振の邪魔をしない、非常識でありながら好都合な位置となります。

 この辺りの構造は後ほど製作を開始した際にお見せする写真をご覧になってご理解ください。

 背面板は8本のセットキャップボルトとセットキャップナットで固定します。 こんな部分では鬼目ナットや爪
 付きナットを使いたくなりますが、雌ネジは貫通穴となっているために雄ネジと雌ネジの間の隙間で空気
 漏れを起こし易いので、ネジ穴が貫通していないセットキャップナットを使います。

スピーカーユニットはBOX面から最大で5.5mm飛び出ます。 そこで4mmの合板と5.5mmの合板を貼り合わせ、5.5mmの合板には
スピーカーフレームが入る穴をあけてやります。 非常に簡単な構造ですが、外観を考慮して2枚の板の貼り合わせ面には木口テ
ープを貼って質感を上げます。 またBOXへの固定にはフロントグリルホルダー4個を使います。


使用材料

BOX本体はシナ合板12mmを使い、背面板を固定する部分はシナ合板18mm、バスレフポートは9mmのMDFを使います。 現在想定している仕上げ関係は、BOX上下左右の面と45度に切削した面は木口テープを貼り、暗めの茶系としながら木目を際立たせる方向です。 また前面と背面はかなりダークな色で塗りつぶしを考え剥き出しなスピーカーユニットとのマッチングを考えています。 前蓋は明るい木目とし、BOX本体に対してコントラストを与えた方が良いかな?という感じです。



2010/11/05

バスレフポートの製作 1

箱の製作に入りました。 最も手間取るというか製作難易度の高いバスレフポートの部分から始めています。 バスレフポートの製作難易度が高くなってしまう理由は、「ポートの共振周波数を調整し易い構造にしたい!」という点にあり、これからご紹介するポートの製作の様子をご覧になると少々クレイジーな構造を良く理解できると思います。 仮に量産するのであれば、共振周波数を先ず決定してから量産設計に入れますから、構造や作り方をより簡単に変えられますが、1台こっきり製作する悲しさ!と言えます。

 バスレフポートは9mm厚MDFを使った11枚の部材から作ります。
 それらの詳細寸法は右の図のとおりですが、右端の4枚については周
 波数調整用の部材ですから取り敢えずの組み立てには7枚のみが必要
 です。 寸法の加工精度は厳しいですが、±0.2mm以下を基本に進めま
 した。 そうでないと組立が進んでゆくときちっと組み上がらず妙な段差
 が出来上がってしまう可能性が高いからです。

 そんな高精度の切断がいきなり出来るわけではありません。
 作業の基本は大きめに切断後に調整切削・研磨を施します。 切断寸
法が長い場合はカンナを使って容易にドンピシャ寸法に追い込めますが、入り組んでいる部分が結構ありそれらはヤスリで削って
寸法出しをするしかなくカンナでの作業に比べると大幅に時間が掛かります。

寸法の確認には長さが100mm以下はノギスを使います。 従って±0.2mm以下に追い込んだかどうかの確認は容易です。
一方100mm以上の場合1mm以下の寸法は曲尺で目分量での確認になります。 これは不確かになりやすのですが、ひとつひと
つベストを尽くして確認して行くしかありません。 そんな次第で、私の場合ヤスリでの寸法出しにたいへん時間が掛かり、たった7
枚の部材加工が、これで良しとなるまでに1日半を要してしまいました。

さてそれら11枚の部材中幾つかについて補足説明しておきます。
バスレフポート材1の総幅(81mm)、長さ(168mm)は±0.2mm以下に抑えますが、50mmの欠き取り部分の寸法と位置は若干甘くても大丈夫です。 但し右上角の74mm x 18mmの切り欠きは、+0.3mm −0.0mmとすると収まりがきちっとします。

バスレフポート材2ではトリマーで4箇所の窪みを彫りますが、窪みの大きさと深さの寸法は±0.5mmと若干甘くてもOKですが位置は正確にしないとなりません。 尚ここにはスピーカーターミナルが取り付きますが、取り付けネジは3mmのタッピングネジを使うので、図面にある穴をドリルであけるわけではありません。 以上以外の寸法は全て±0.2mm以下ですのでこの部材の寸法出しにはかなり時間が掛かります。

バスレフポート材3は単純な長方形ですからカンナで寸法出しが出来るので容易に進めるでしょう。
バスレフポート材4は、外寸の76mmと74mmは±0.2mmですが、内側の枠は±0.5mmでOKです。

バスレフポート材5のうち紫色の部材はまだ加工していません。 左側の2種類は長さ、幅共に±0.2mm以下ですが、段差の部分の寸法は 4.6mm部分は+0.0mm −0.1mmに抑えます。 従ってノギスでの確認が絶対必要です。 段差の幅(4.5mm)は±0.1mmに抑えたいところです。

スピーカーケーブルを購入しましたので、太さの実寸をノギスで測り丁度ピッタリと収まる溝を部材2にストレートビットで彫りこみました。 ここまでの様子は次の写真も併せご覧ください。

スピーカー端子盤の端子周りを落とし込む穴(12 x 16mm)はこのようなジグを作って6φのストレートビットを使いトリマーで加工します。

電動トリマー台座は90mm四方ですから左のジグの中で横に6mm、縦に10mmトリマーが動き、それにストレートビットの直径(6φ)が加算されるので、加工された穴は12 x 16mmになるという単純な仕掛けです。

切り出してからカンナや替刃式ヤスリ(M-20GP)で成形、寸法出しが終わった7つの部材です。  これらの加工作業になんと1日半を費やしてしまいました。

構造を理解願うために組立順序をお見せします。 先ず部材3を底に置いて2枚の部材1でそれを挟みます。

その上に部材2をこのように置きます。 部材2は左下では部材1の上に乗りますが、右上では部材1に挟まれる構造です。

部材4が左下に載ります。 実際には接着する前にスピーカーケーブルを引き出す溝を追加加工しないとなりません。

スピーカー端子盤を所定の位置に固定します。 この上に12mm厚の本体部材が接着されます。

設計上はこの板をポートの一部として貼った時に73Hzの共振周波数になります。 更に調整板を追加する事で、70Hz、67Hzの設定が可能になります。 段差は調整板を繋ぐ時に出来る隙間防止です。

購入してきたケーブルに合わせ若干きつめの溝(幅5mm、深さ2.7mm)を彫りました。

その溝にケーブルを潰し気味に押し込み部材4を載せます。 左右に出たケーブは左右のスピーカーに接続されます。

仮にクランプで圧着してみた様子ですが、ケーブルと溝の隙間は極小となっています。 この隙間は後ほど接着時にエポキシで完全に埋めます。



2010/11/12

残念!アンプ再設計
                                                (動作不安定で使い物にならなかったアンプ基板)
実はバスレフポートの製作と平行してアンプのほうも製作を進めてきた
のですが、組み上がった物は余りにも動作が不安定で使い物になりま
せん。 同じICを使ったキットでは問題がなさそうですが、ゆったりレイ
アウトでモノーラルの基板サイズは36 x 46mmになります。
従ってステレオとすると2倍の大きさで面積は3,312mm2となります。
安定した動作をしなかった私の試作基板は低域補正回路まで含んで
102 x 20mmですから面積は2,040mm2で、キットの基板サイズの62%
しかありません。  言い訳になりますがかなり小型にするために無理
をしたように思います。 そして安定動作をさせるために部品配置を改
善するスペース的な余地がありません。

基盤が大きくなってしまうと目標とした購入済みのコンパクトなケース(89 x 130 x 40mm)にスイッチング電源共々収める事が不可能になるために、TA7252APの使用を断念し別なICを使って再設計する事にしました。  再設計に決定したICは最初の選別段階ではねた東芝のTA8220Hです。 これは家内のパソコンに繋ぐスピーカー駆動用に使い安定度は充分に高かった記憶があります。 前の選別の時には外付け部品が多いので基板が大きくなる!としていましたが、実は私の勘違いがありました。 先ず外付け部品は多いのですが、場所を食う大型のコンデンサーは少ないので実装面積はそれ程大きくなりません。 しかも私が一瞥してこれは大きいなあと思った、以前に起こした基板レイアウトは2mmピッチのレイアウトを2.54mmピッチ用と同じマス目に描いたため、見かけ上27%も大きくなっています。

実際にPCスピーカー用に作った基盤は98 x 24mmでしたから2,352mm2と既に小さい上に空きスペースが結構あるので、レイアウトを検討し直して十分目標サイズに到達できると考えました。(ケースにうまく入れるためには110 x 20mm以下にすれば良い。)  再度メーカー発行の両方の技術説明書を読み比べると、同じメーカーなのに記載事項には違いがあり、TA7252APの場合NFの掛けすぎ防止以外にグランド配線のやり方をかなり突っ込んで規定しているのに対しTA8220HではNFの掛けすぎ防止以外にあれこれと規制している部分がありません。 これは想像ですが型番からするとTA8220HはTA7252APより新しい設計のようで、動作の安定度に関して一段と進歩があるのでは?と思われます。

再設計に際しては安定度を重視しパワーICの帰還回路(NF回路)は一切いじらない事に
します。 またこうした時にパワーアンプのゲインは50dBありますので、出力が10W/6Ωの
場合にはたった24.4mVの入力電圧で済みます。 そこで低域補正回路の部分はCR型トー
ンコントロールを変形したものとします。 ターンオーバー周波数は400Hz/200Hz可変で最
大ブースト量約10dBと以前と同じ仕様ですが、この低域補正回路は12.7dBの損失を有しま
す。 この為に低域補正回路の前では105mVの信号電圧が必要になりますが、この数値
は入力信号レベルとして適当な値になります。

 ところで左の写真はポピュラーな2.54mmピッチ(上)TA8220Hで組む場合使わなくてはならない
 2mmピッチ基板(下)の比較です。 当然ながら2mmピッチ基板には.54mmピッチの部品は取り付
 けられず大半のICは使えません。  こんなことからピッチが多少違っても問題ないFETでバッファ
 ー(ソースフォロワー)を組み低域補正回路をこれで挟んで理論どおりの動作をするようにします。
 更に半田付け時に穴と穴がショート(ブリッジ)し易いので、斜めにワイヤーを通すのも避けた方が
 安全です。

 といったことを考えながら基板レイアウトを右の図の
 ように描いて見ました。 基板サイズは98 x 20mmと
目標値をクリヤーしています。 以上の再設計の目指す所は安定度優先で、旧式な
回路の採用とか部品点数がやたらに増えて格好良さはありませんが、変な発振に
悩まされる可能性はかなり少ないと思われます。



バスレフポートの製作 2

バスレフポートの組立に入りました。 7枚の部材は既にお話したように充填効果が高いという理由でエポキシ接着剤を使って組み上げます。 基本的な順序としては2枚の部材(1と2、そして1と3)をL字型に組み上げてからそれらをロの字に組み上げます。 L字組み上げには自作の直角接合ジグを使いました。 これを使って接着すれば直角精度は文句無しの高精度が確保できます。 そしてその後L字型2組の組み合わせが済めば極めて正確な断面ロの字(内寸36mm x 45mm)のパイプとなります。

この上に部材4を貼り付けますが、その前に出来上がった後に見える内部を黒く塗装した上でスピーカー端子盤をネジ止めします そしてスピーカーケーブルが嵌り込む溝にエポキシ接着剤を塗ってから部材4を貼り付けます。 その後部材5を貼り付けてバスレフポートアセンブリーの9mm厚MDFで作る部分は完成です。

バスレフポートアセンブリーの背面側には18mm合板で作った枠こちらの図面の一番上にある背面図のオレンジ色部分。)に出来上がった9mmMDFユニットを固定します。 この18mm合板の枠はバスレフポートの音道の一部でありながら同時にスピーカーボックス背面板を固定するための部材になります。 この枠には8本のセットキャップナットを埋め込んでおき、これに背面板を固定するセットキャップボルトが捻じ込まれることになります。

文字で表現すると以上でおしまいですが、実際には1工程ずつ落ち着いて確認しながら進めますので結構時間を消費しています。 それらの様子は以下の写真も参照ください。

部材1と部材2をエポキシ接着剤で貼り合わせています。 直角精度を出すために自作のジグ(小型の物)を使っています。

部材1と部材3も同様に接着します。 部材の接着位置関係を間違えないよう充分確認しておかないとなりません。

30分硬化開始型を使ったので、2時間放置した後にクランプを外し出来上がった2種類のL型に組んだ物。 

その二つのL型を接着して断面がロの字となります。(ロの字の内寸は36mm x 45mmです。)

最終的に見える部分が僅かにありますので、黒のペイントで塗りつぶした後にスピーカーターミナルをネジ止めしました。

2本のワイヤーが嵌り込んだ溝にエポキシ接着剤を塗って隙間を埋め、その上から部材4を接着しています。

ワイヤーの出口部分。 僅かな隙間はエポキシで完全に埋まってしまいスピーカー端子周りで空気漏れを起こす部分は皆無になります。

9mm厚MDFを使う最後の作業。 部材5を接着します。 ここに見えている上が実際には背面方向になります。

7枚のMDF部材は加工に若干怪しげな所がありながらも、許容できる寸法誤差内に納まったようです。

ポートアセンブリー製作の最後は18mm厚合板で背面板固定枠を作ります。 形はロの字ですが背面板を固定する4つのネジ穴をあけます。 ネジ穴は8φですが頭を沈めるために15φのフォスナービットで深さ3mmを先にあけます。

あけた穴の壁面や底面にエポキシ接着剤を塗りつけてセットキャップナット(14mm)を叩き込みます。 両端4ヶ所の穴には後ほど蓋をして空気漏れを無くします。

埋め込んだネジの頭側を下にしてMDFで組んだ上段部分にエポキシ接着剤で固定します。

これでバスレフポートアセンブリーが完成しました。 この写真の手前が背面側で、スピーカー端子が見える面は底面か上面となり、向こう側が前面側です。  バスレフポートが手前左右から真中で一緒になり前面に向かって行く音道の道筋がお判りになるでしょうか?





2010/11/19

アンプまた駄目!と思ったら

さてパワーICを使用実績のあるTA8220Hに変更して作り直しをしたのですが、前
回ご紹介した基板レイアウトではICのネジ穴手前は部品が密集しネジ締めが出来
ません。 そこで横方向を引き伸ばして右のようなレイアウトに変更し製作しました。
組立が終了後早速通電しましたが、相変わらず不安定な動作で発振気味です。
おまけに入力信号として使ったiPod Nanoの信号電圧をオシロスコープで読み取っ
た所、25-40mV程度と大変低く音楽の録音レベルによっては最大出力を出せない事にも気が付きました。

うまく行っていない事態にいらいらしながらもトータルゲインを増加する設計変更を再
度しましたが、ディスクリート部品で作るのは部品点数が更に増えてサイズオーバー
になるので部品点数を減らすためオペアンプを使わざるを得ません。
その為には2.54mmピッチの基板を使う必要があるので、回路基板を2つに分けるこ
とにしました。 1枚は2mmピッチでパワーアンプ部を作り、もう1枚は2.54mmピッチと
してプリアンプを作ります。 そのプリアンプ基板は2個のトグルスイッチを介して1mm
厚のアルミサブパネルに3mm厚のスペーサーを挟んで共締めします。 可変抵抗2
個はサブパネルに固定し基板には可変抵抗本体が通る穴をあけておきます。
結局トグルスイッチ2個、可変抵抗2個、LED1個を含むプリアンプアセンブリーとして
出来上がることになります。(プリアンプ基板のレイアウトは右のとおり。)

 変更後の回路図は左のとおりですが、以前の回路では出力電圧7.7Vに対し必要
 入力電圧は105mVで37.3dB(73.3倍)の増幅度でしたが、パワーアンプの増幅度
 を100倍(40dB)に落としプリアンプの増幅度を2倍(6dB)としてトータルで200倍
 (46dB)のゲインとアップします。 従って6Ω負荷の最大出力10W(出力電圧7.7V)
 を得るには39mVの信号電圧があればよくなるのでiPod Nanoを繋いでもゲイン不足
 は起きなくなるはずです。

 なお低域補償回路は低域のNF量を落とすことで得られます。  オペアンプLM358
 はもともと100dBのゲインを持っていますが多量のNFBを掛けて上記の6dBゲインに
 しています。 ここで低域でのNFBの量を減らしてやれば相対的に低域を増強出来
 ます。 基本的にNFBを多量に使う方法であるため、発振しやすい、安定性に欠け
るなどの問題を起こす可能性はありますが、NFBによりノイズや歪の発生を抑えやすいというメリットがあります。

 ということで部品点数が減って随分すっきりしたパワーアンプ基板を左のレイアウト
 で組み上げ、動作試験に入りました。

 ・・・・・?・・・・・?・・・・・?! また発振を起こしたり極めて動作不安定。 電源電
 圧を変動させると発振がひどくなり1A以上の電流が流れます。


暗鬱たる気持ちになりいらいら度は既に最大ですが、頭を冷やした後に落ち着いて何が原因で一連の問題が出るのかを考えました。 そこで出て来た一番の疑問は、どうしてパソコン用アンプでは安定動作をしているの? それとどこが違うのか? です。

ハタと思い出したのはパワーアンプICの放熱方法です。 半導体の放熱には放熱板と半導体の間を絶縁してやる場合と絶縁しなく
てよい場合とがあります。 パソコン用アンプではどうも絶縁しなかったように記憶しています。 それとパワーICの放熱面をGNDに
結線してよいか?或いは結線しないといけないのか?という疑問もあります。 Iこの辺りはメーカーがはっきりと規定しないといけま
せんが、TA8220HTA7252APの技術資料をしらみつぶしに読んでみても判りません。 唯一TA8220Hの資料の中にGNDへ
の接続に関して、5番ピンはプリアンプ部のGNDであり13番と14番ピンはパワーアンプ側のGNDで、TABピンと一緒にしてGNDに接
続する表現があります。  このTABとは何を指すか?? 考えられるのは放熱のTABしかありません。 これ以上は確認のしよう
もないので、パソコン用スピーカーを外して分解しこの辺りがどう結線されているかの確認をしたところ大正解!! ICの放熱面は
GNDに結線しないといけないようです。

これでちょっぴり元気が回復しGNDへの結線を確実にしたうえで再度動作実験。 結果オーライで作り直したパワーアンプはオシロ
スコープで読んだノイズレベルは0.5mV以下 / 入力開放で出力は6Ωでした。  最大出力に対してSN比は83.8dB以上で、完全に
バラック結線状態での測定結果ですから立派なものです。 実際スピーカーを耳にくっつけてもサーッといったノイズやブーンという
ハム音は皆無でした。 むしろ隣に盛大な雑音源となるスイッチング電源が搭載される最終仕様でどうかが心配です。

さてほっと一安心したところで、『駄目!!』とレッテルを貼ったTA7252APのアンプも同様に放熱面をGNDに接続してみたとこ
ろ、こちらも動作OKとなりました。 結局原因としては基板レイアウト設計や作り方を間違えたりメーカーのガイドラインに沿わない
作り方で動作がおかしかったのではなく、不十分な技術資料での説明だったということです。

この問題では2回作り直しをした結果、部品の無駄遣いをしただけでなく3週間以上の余計な時間の消費という、おまけつきでし
た。 唯一iPod Nanoの出力信号電圧(イヤーフォン端子)が大変低い事を知った機会となりました。

動作試験中のTA8220Hパワーアンプ。 電源は自作定電圧電源で12Vを供給。 手持ちの安い50mmスピーカーを繋いでいます。 上は現在唯一動作する測定器のオシロスコープ。

オシロスコープは最大感度の5mV/Divとなっていますが、振れが全く見えないので1/10Div = 0.5mVと読み取りました。

パワーアンプ基板とスイッチング電源基板を並べました。 それらの間はシールド板を挟む隙間しかありません。

問題なく動作する事が判ったTA7252APを使った基板(奥)とTA8220Hを使った基板(手前)です。

技術資料には記載されていないものの、赤矢印先のIC放熱面はGNDに繋がないといけないことが判りました。





2011/01/07

アンプ製作の続き

パワーアンプ部分でてこずりましたが続くプリアンプというかコントロー
ルアンプ部でも私の勘違いから製作し直しを強いられました。
私の勘違いで何が起きたかというと、ここで使っているオペアンプ
(LM358N)の使い方の間違いです。

製作するアンプのケースは大変小さくパワーアンプ用に使うスイッチン
グ電源以外に電源を追加する事は出来ません。
そこでコントロールアンプは消費電流も少ないこともあってスイッチング
電源(+12V)をコントロールアンプ用の電源としても使う事を前提としま
した。 このため±2電源が必要なオーディオ用の高性能オペアンプを
使えず、単電源で動作する汎用オペアンプのLM358Nを採用していま
す。

さてその時に頭の中にあった回路イメージはオペアンプを解説する本
には必ず出てくる非反転増幅回路であり(右の上側のような回路。)
これを単純に単電源と組み合わせて既に掲載した回路を作り上げま
した。

パワーアンプ部は完成していますのでLM358Nによるコントロールアン
プ部分を作り上げて動作テストしたところ、どうも+側だけ増幅しており
−側はうまく増幅できおておりません。
(入力した音楽信号の下側が切れてしまい増幅できない。)

配線ミスがあるのかと色々調べましたがそのようなミスは発見できま
せんでした。 またバラック配線で別に素うどん状態のアンプを組んで
テストしましたが同じ現象が出ます。

そこで原点に戻ってというかメーカーの技術資料をくまなく読み返した
ところ単電源で交流増幅器とする場合には動作点が駆動電圧の半分
になるよう部品が追加された回路になっています。
(右の下側のメーカー発表の回路参照。)

更に交流増幅器として使う場合には出力端子に抵抗を追加しバイア
ス電流を増加させてクロスオーバー歪を減少させるような記載があり
ます。

これらにより不具合の原因がはっきりしましたが、テスト信号に方形波では増幅の具合の変化は判りづらいので、何点かの正弦波が必要だな?ということで、簡易型低周波発振器の製作に繋がっています。

さて本題に戻ってコントロールアンプ部をどうするかですが、抵抗とコンデンサー合計10本を追加するのは大きな変更であり、現在のスペースにはとても入りません。 小容量の2電源が追加できれば現在の回路でもOKですが、電源トランスを入れるスペースがどうしても確保できません。(最初に判っていた事の再確認!)

 そこでやむなく大ナタを振るって基板
 レイアウトを根本的に変更する事にし
 ました。 操作性は大きく変わりませ
 んが、電源スイッチがボリュームにか
 なり接近するという妥協により、部品
 挿入スペースを拡大してまとめ上げ
 ました。

 作り直したコントロールアンプ基板の
 レイアウトは左の図、また全回路は
 右の図のようになっています。

これらにより製作に入りました。 そして基板内に固定する部品とそれら間の接続は終わりました。 この後にこの基盤とサブパネルをトグルスイッチ2個で連結しサブパネルに固定された2個の可変抵抗との結線を済ませてコントロールアンプブロックとして完成します。

穴あき基板を所定の大きさに切断後、トグルスイッチの固定穴、可変抵抗が挿入される穴等を削りだしました。

基板上に固定接続される部品が全て取り付けられました。 ピョンピョン飛び出ているワイヤー6組は後ほど2個の可変抵抗とトグルスイッチに接続されます。



2011/01/14

アンプ製作の続き2

アルミサブパネルを作ってそれに基板と可変抵抗を固定してブロックとして完成させる前に現状の基板がきちんと作動するのかどうかを出来上がった簡易型低周波発振器を使って確認しました。 その結果は全く問題ありませんでしたが、測定の様子について簡単に説明しておきます。

最大出力電圧:

上の写真左側はオシロスコープで観測した1KHzでの最大出力電圧波形です。 この状態で1cm辺り1Vの電圧となっていますからピーク値は3V、実効値はその1/√2ですから2.1Vとなりますが100Hz、1KHz、10KHz何れでも同じ値です。 電源電圧が9Vですからもう少し大きめに出ても良いのですが、パワーアンプは77mVの信号で最大出力が得られますので充分ゆとりがあります。 尚右の波形は入力電圧をさらに加したときの出力波形で、クリッピングが起きて波形の上のほうが潰れてきます。


電圧増幅度:

 フラット時に1KHzの信号で左右とも2倍(6dB)で設計どおりです。
 低域補償モードにすると低域端は7倍(16.9dB)となるよう設計されています
 が、それは最終的に50KΩの可変抵抗が繋がれた時で、現在その可変抵抗
 には繋げないので代わりに47KΩの固定抵抗を繋いで測定しました。
 (左の図は測定時のゲインを始め理論的な価を算出したものです。)

 その結果100Hzで1KHzの時よりも増幅度が2.4倍増加となっています。
 理論的な計算値は2.35倍増加になるはずで、
 (左の図の[低域変曲点のゲイン] ÷ [中域以上のゲイン]使った抵抗や
 コンデンサーの誤差(何れも±5%)、変曲点は103Hzに対し測定は100Hzで
 行なった、等を考慮するとこの程度の差異は生じるでしょう。

左の写真は1KHzの正弦波(ピーク値で0.05V)を入力したときの出力波形です。 オシロの感度は0.1V/divになっているので、出力電圧はピーク値で0.1V、従って増幅度は2倍です。 右の写真は入力信号を100Hzに変更後で、出力電圧は2.4div、つまり0.24Vの出力電圧ですから、1KHzの時に較べて2.4倍の出力となります。


方形波特性:

100Hz、1KHz、10KHzの方形波を入力した時の出力信号をフラット状態と低域補償状態で観測しました。 実使用上の支障はありませんが、使ったオペアンプはスルーレート(メーカーはこの値を公表していない。)があまりよくないようで、高域は20-30KHzまでしか期待できそうにありません。
コントロールアンプがフラットな状態での方形波特性で左から100Hz、1KHz、10KHzです。 簡易型低周波発振器に掲載している発振波形に対して1KHzの波形は同等ですが、100Hzと10KHzの波形は違いが見受けられます。 100Hzではサグ(左上がりの傾斜)が増加しています。 多分20Hz前後から落ちていると思いますが、耳には聞こえない超低周波のノイズに邪魔されないために低域を意識的にカットしているためです。 10KHzについては立ち上がり、立下り部分の傾斜が垂直ではありません。 これはスルーレートが小さい事によるものと思われ、高域の伸びはあまり良くないことを示します。 但し妙なリンギングやオーバーシュートがが全く見受けられませんので動作が極めて安定していることを表します。


製作詳細

コントロールアンプが問題なく動作しているのを確認できましたので、アルミサブパネルを作ってコントロールアンプ部分を完成させました。 ここから暫くはアルミサブパネルの加工、フロントパネルの加工、リヤーパネルの加工、パワーアンプを側板にネジを切って固定、とアルミ板の加工作業が連続します。 そしてケース部材の加工は失敗するとケースそのものを再購入しないとならない事もありますので、慎重に作業を進めないとなりません。

自作のアンプはアルミのフロントパネルをどのように作るかで完成度や見栄えに大きく影響します。 ここではフロントパネルから4.5mm離してサブパネルを固定し、可変抵抗やトグルスイッチはサブパネルに固定してしまう事で、それらを固定するナットを隠してしまいます。 またLEDも大きいままむき出しで見せるのは私の趣味ではないので、フロントパネルに2φの穴をあけてサブパネルに固定したLEDをそこに当ててやります。 これにより小さな穴がきらると青い色に輝き品の良いアクセントになります。

パワーアンプ基板はパワーICを側板に固定する事でパワーICの放熱と基板の固定をかねます。 この取り付け穴は2.5φの穴をあけてM3のネジを切りました。 フロントパネル、リヤーパネルの加工も済ませ、電源固定穴あけやシールド板加工前にレイアウト全体を再確認しましたが、ぎりぎりサイズから来る問題が発見されました。 それはコネクターが邪魔をして組み上がらない可能性が高いということです。 コネクターとしては電源基板がAC100V入力と出力に大き目の物を2つ、コントロールアンプ基板が3P 2組、2P 1組の3つを持っています。 前者は大きい事でスペースを食い端子に接近しすぎますし、後者はメスのコネクターが長すぎてシールド板に当たってしまいます。  これは大きな思案どころとなりますがそこまでの状況は以下の写真をごらんください。

アルミのサブパネルを作ってそれに基板をトグルスイッチのナットで固定。 そして可変抵抗をアルミ板に固定後配線しコントロールアンプブロックとして完成しました。

手前は穴あけ加工が終わったフロントパネルで、奥がコントロールアンプブロックの前側です。 LEDは小さく切った基板に固定してサブパネルに貼り付けてあります。

これはリヤーパネルで中央大きく占有しているのがスピーカーターミナル、左は電源コード用ブッシュ、右上は入力端子(ミニ・フォーンジャック)です。

パワーアンプ基板はパワーICをアルミ側板に固定する事にしました。 側板にはM3の雌ネジを切りました。 この結果ケース全体が放熱器になります。

フロントパネル、リヤーパネルを固定しフロント側を見たところ。

同じくリヤー側を見たところ。 側面にネジが2本飛び出ていますが、後ほど長さは調整されます。

さて問題はここから。 ごらんのとおりシールド板はまだ入れていませんが、入れたら左側の基板に付く3個のメスコネクターはシールド板に当たります。 また電源基板に付く2つのコネクターも随分とかさばるでしょう。

リヤー側では矢印のコネクターがスピーカー端子にこすれるようになります。

フロント側では矢印のコネクターはシールド板にこすれます。 また3個のコントロール基板のコネクタの先端は赤線の位置になり、シールド板に当たってしまいます。

この後に全体仕様に影響する大事なテストが残っています。 これまではスイッチング電源がパワーアンプ或いはコントロールアンプにかなり接近する所から『シールド板は絶対に必要になるであろう!!』という前提で進めてきました。 逆に言うと、『シールド板を間に立てればスイッチング電源とオーディオアンプが密接しても大丈夫なのではないか?!』との希望的観測できていました。 本当にそのとおりであるかどうかはノイズの出具合を測定したり実際に聞いてみたりしないと何とも言えません。 もしシールド板を立てても駄目ならば電源の組み込みはあきらめ仕様変更しないとなりませんしラッキーにもシールド板だけで電源からのノイズの飛込みが許容範囲内の低レベルであればシールド板に当たってしまうコネクターを使わずに直接配線に切り替えることになります。 そんな大きな分かれ道が次回にやってきます。



2011/01/21

アンプ製作の続き3

スイッチング電源からの雑音飛び込みテストをする前に電源として定電圧電源を使ったアンプ全体の動作確認をしました。  先ず最大出力電圧は手元にあった12Ωをダミー抵抗とした時に7.4Vでした。 最大出力で4.6Wあることになります。 実際に使う6Ωスピーカーの場合には理論的には2倍となるはずですが若干割り引いて9W弱は出るであろうと思います。

最大出力時の入力電圧は28mVとなり設計値(39mV)よりも低い値でどうやらパワーアンプ部のゲインが少々大きめになっているようです。 全体のゲインが高すぎる事もあってかノイズも多めで音量調節ボリュームを絞って入力ゼロとした時の雑音出力は4mV程あります。 SN比で65.3dB、入力換算雑音レベルとしては-96.4dB/Vですのであまり上等とは言えません。 但しノイズの成分は殆どが耳には聞こえない周波数帯の熱擾乱雑音と思われ、耳につきやすい低域のハムノイズはありません。 従ってSNの数値ほどノイズっぽいという感じはしておりません。 どうやらオペアンプのLM358Nがそのノイズ源のようですがだからと言って他のオペアンプに換えるのは容易ではありません。(HiFi用の単電源駆動可能なオペアンプが入手難。)

ここまではオシロスコープで観測した結果ですが念のためにスピーカーを繋いでこのノイズを実際に聴いてみました。 使ったスピーカーはFE127Eで最終的に使うスピーカーに較べると能率が3dB程良くノイズがその分耳に付き易いはずです。 真夜中の周りの静まった時に確認していますが、耳がユニットに触れる程度に接近するとサーッとノイズがかすかに聴こえるものの10cm離れると判らなくなります。 従って実用上は問題なさそうなレベルです。

電源を定電圧電源から供給した時にノイズ発生は最少になるだろうと言う事でリファレンスとして測定中。 ノイズ波形は後ほどお見せします。

実際にはこのテスト時よりも能率の低いスピーカーを使うのでこのノイズレベルは許容範囲とすることにしました。(もっと変換効率の良い大きなスピーカーを使うのであれば不可です。)  さて次に電源を問題のスイッチング電源に置き換えてやりました。 この時に電源は中に組み込んでしまうのではなくて敢えて外側に離して設置しました。 と言うのはノイズ、ノイズと言っても電源からのコードを伝わって来るノイズと空中を飛んでくる奴と2通りありそれらがごっちゃになると何がなんだか判らなくなるからです。 離した距離は200mm程度ですが、この時のノイズ出力は定電圧電源の時と変わりありません。

先ずスイッチング電源をケース内に組み込むのではなく20cm程離してテストした。 この時は電源ケーブルを伝ってノイズが伝わるはずである。 この時のノイズレベルは上の実験と変わらなかったが後ほどの写真を参照されたい。

 次にスイッチング電源をアンプケースに近づけていったのですが、近
 づくにつれてノイズレベルがかなり上昇して行きます。

 左写真のようにスイッチング電源とケース内のアンプとの間には分厚
 いアルミ側板がありますので静電シールド効果を期待していたのです
 が、どうも期待通りに働いていません。

 またこの時にケースに指で触れるとノイズの量は大幅に増えたり減っ
 たりして不安定になります。 但しそれらはオシロスコープで見ての話
 であり、スピーカーから聴こえるノイズの増加した感じはそれ程でもあ
 りません。 というか私の耳は加齢による高域感度の低下があります
 ので、オシロで見た感じを重視しないとならないでしょう。

 次の写真を見ればそれらが判りますが、結論として薄いシールド板
 ではとてもノイズ増大を防げそうにないことと、次に述べる新たに出て
 きた問題対策ということもあり、スイッチング電源は外に出してノイズ
 増加を食い止める事としました。

左は定電圧電源で動作させた時のノイズ、真中はスイッチング電源で駆動した時で約20cm程離していますがノイズ量は左と殆ど同じ、右はケースの横に密接させた時です。 何れも10mV/divになっているので、実効値としては左と中央が約4mV、右は12mV位あります。 よって電源がパワーアンプやコントロールアンプに密接させるとその間に入れた薄いアルミ板のシールドではノイズ飛込みを抑えられるものではありません。 電源を内蔵させるとアンプとの距離は更に縮まりますからノイズレベルが4倍以上になってもおかしくありませんし、ノイズだらけで使用に耐えられないアンプになってしまいます。 いくら周波数が高いので耳には聴こえないといっても其の程度にも限度があります。



新たに出てきた問題

あまり格好良くない構成ですが電源を別にしてしまえばノイズ問題は一応片付くのですが、新たな問題が浮上してきました。

それは電源ON/OFF時のショックノイズです。 電源スイッチを作動させるたびに発生しその出方にはばらつきもあり、小さな耐入力のスピーカーユニットでは壊れるのでは?という場合もあります。

このショックノイズはパワーアンプから出る可能性とコントロールアンプから出る可能性、そして両方から出る可能性がありますが、電源がONになって各部の電圧が所定の値に落ち着くまでに出るわけで0.?秒の間の問題です。  その原因を調べてそれを潰すのが正攻法でしょうが、その0.?秒の間はスピーカーから音がでないようにしてしまう方法がより簡単そうです。 幸い使ったパワーICにはStand-By機構があり、これがON状態であるとパワーアンプはスリープモードに入りスピーカーからは音が出ません。

この回路を組むための空間が必要になりますが、スイッチング電源を取り付けるスペースがありますので、そこにショックノイズ対策の回路基板を追加することになります。

あまりのんびりとはしてられませんので目的を果たせる動作のシナリオと回路を次のように考えています。

1.別電源をアンプに繋ぐ
  アンプへの接続が済み電源がONとなると、コントロールアンプは動作状態(数mAの消費電流)、パワーアンプはスタンバイ状態
  でありスピーカーからは音が出ない。

2.アンプのスイッチをONにする。
  アンプの電源スイッチはON、OFF共にモメンタリー動作とする。  従ってONの保持は電子的に行うが、このON動作で得る直流
  電圧をスタンバイ状態を解除する電圧(3V以上電源電圧以下のこと。)に使いパワーアンプは動作状態になる。(ショックノイズ
  は出ない。)


3.アンプのスイッチをOFFにする。
  スタンバイ状態を解除した電圧がゼロとなるので、アンプの動作は停止しスタンバイ状態に戻る。

4.電源をOFFにするか電源とアンプの接続を外した時
  コントロールアンプ、パワーアンプ共に動作は完全停止する。


 基本的にはコントロールアンプとパワーアンプへの電源がONになってショックノイズが発生しても
 スタンバイ状態のためスピーカーから其のノイズは出ず、各部の電圧が安定してからスタンバイ状態
 を解除することによりショックノイズ無しを実現?!という考え方です。

 左の図はそれを実現するひとつの方法で、2SJ377というMOS FETを電子スイッチとして使います。
 電源を左側に繋いだ状態ではトランジスタ(2SC1815)がオープン状態であるため2SJ377のゲート
 (G)電圧はソース(S)に近しく、2SJ377はOFF状態です。 従ってスタンバイピンへの電圧はゼロで、
 スタンバイ状態をキープしています。

 ここでモメンタリースイッチをON側に倒すと、2SJ377のゲートとソース間の電圧は電源電圧に等しく
なり、2SJ377はONとなります。 そうすると2SC1815のベースに電流が流れて2SC1815はON状態となり、2SJ377のゲート電圧が低いままを維持しますので、2SJ377のON状態をキープします。 このON状態はモメンタリースイッチを「OFF側に倒す」「電源の接続を外す」「電源をOFFにする」、の何れかが発生するまで続きます。

図のとおりの回路をバラック状態で組み上げてテストした限りではうまく動作するようですが、ショックノイズが本当に出ないかどうかは、コントロールアンプとパワーアンプを所定どおり繋いで実験してみないと判りません。 更に電源ON時のショックノイズ対策はこの方法で良いとしても電源OFFの時に出るショックノイズに対してどうなのかは全く未知数ですので、実動実験を通じて問題あらば潰さないとなりません。

特に電源OFFとなる動作としては、「アンプの電源スイッチをOFFにした時」「スイッチング電源のACコードを引き抜いた時」「アンプへのスイッチング電源の接続をON状態のまま外した時」、の3種類あり、それぞれショックノイズの出方が違うはずで複雑です。



2011/01/28

アンプの完成まで

さてバラック配線ながらコントロールアンプとパワーアンプは追加する回路(スタンバイ制御回路と名づけます。)を経由して電源を繋ぎ、ショックノイズ消しの作業に入りました。

先ずアンプの電源スイッチONでは既にテストした結果と同じで全く問題はありません。 しかし電源OFFの場合は別で、既に述べた3種類の電源OFFの手順(アンプの電源スイッチをOFFにする、スイッチング電源のACコードを引き抜く、スイッチング電源の接続をON状態のまま外す。)がありますが、最初の手順だけは全く問題ないものの後ろの2つの方法の場合それぞれが違うタイプのショックノイズを発生します。(バツーンという音とバスッという音です。)

これら「スイッチング電源の接続をON状態のまま外す。」とか「スイッチング電源のACコードを引き抜く」はやってはいけない操作!と規定して問題なしとしてしまう方法もありますが、フールプルーフの考え方に鍛えられたことがあるためこれらの問題を潰す事にしました。

色々な方法が考えられますが、理に適っており確実な動作が期待できる方法を取りました。(確実そうな? というのはこの問題の完璧な解決は意外に難しそうで、方法によっては今日は動作OK、しかし明日はNGということがありそうなる原因や理由もはっきりしないことがあるからです。)

電源ON時のアンプ動作のシークエンスですが、スイッチング電源を繋ぐとスピーカーから音は出ないもののアンプの各部の電圧は所定の値になって安定します。 そしてアンプの電源スイッチONによりスタンバイ状態が解除されます。 電源OFFの時にショックノイズが出ないようにするにはこれの逆をたどるようにすれば良い筈、つまりスタンバイ状態に入ってからアンプの各部の電圧が下がるようなタイムラグを作ってやれば良いはずです。

 左の回路がまだ実験中ながらうまく動作している回路です。 スイッチング電源から供給さ
 れる+12V電圧はショットキーバリヤーダイオード(31DQ06)を通って大容量のコンデンサー
 を通過してから2つのアンプへの出力端子に進みます。  そしてスタンバイ制御回路へは
 ショットキーバリヤーダイオードの手前から+12Vが供給されます。

 こうした時電源ON時の動作はこれらの部品追加前と全く変化がなく、スタンバイ制御回路
 のスイッチ(これは最終的にアンプのパネル面に付きますが。)をONに倒すとスタンバイ状
 態が解除されて、スピーカーから音が出るようになります。

 さてこの音が出ている状態で電源を外したり、電源のACコードを引き抜くとどうなるかがポ
 イントになります。

電源からのエネルギー供給は遮断されたものの、スタンバイ制御回路に追加された大容量コンデンサーに蓄えられた電気が引き続きアンプに送られるので、短時間ですがアンプの動作は継続します。 一方この大容量コンデンサーからスタンバイ制御回路へもエネルギーは送られようとしますが、間に追加したショットキーバリヤーダイオードが逆接続で入っているため電流は流れません。 そしてスタンバイ制御回路内には電気エネルギーを蓄積しておく所(コンデンサー)がありませんから2SJ377は即OFFとなりスタンバイ状態に入ります。 そして当然ながらスピーカーからの音は止まります。 さて動作継続していたアンプの各部の電圧も下がりだしショックノイズを発生した後にOFF状態となりますが、既にスピーカーは遮断されているのでそのノイズは聴こえない!というわけです。

このシークエンスはごく短時間の内に終了しますが、その間スタンバイ状態に入るまでアンプは通常の動作状態にあるようで、かなりの回数のテストON/OFFをやっていますがうまく動作しています。
尚ショットキーバリヤーダイオードは通常のシリコーンダイオードに比べて順方向電圧低下(これはエネルギーロスとなります。)が少ないので使用しました。 また赤・青の2色LEDを使用していますが、これはアンプがスタンバイ状態にあるのか(赤)、それともスタンバイ解除状態か?(青)を表します。  それと各部の電圧が記入してありますが、スタンバイ状態(赤字)、スタンバイ解除状態(青字)を表しています。

消費電流はスタンバイ状態で1.8mA、スタンバイ解除で2.2mAですが、そのうち1.2-1.8mAはLEDの消費電流ですからかなり低消費電力と言えるでしょう。 またショットキーバリヤーダイオードのお陰でアンプ方向への電圧ロスは0.3V程度で済んでいます。

解決策がほぼ固まったので、連続試験に入りました。 とはいっても簡単な定性試験で、iPodを音源にして1日10時間程連続で音出しをします。 そして気が向いた時に3種類の電源OFFをやってみて問題なければ再び通電してやる、というものです。 これを3日間続けて(50-60回電源OFFテスト?)全く異常が発見されませんでしたのでショックノイズ対策は終了としました。

尚このテスト中にパワーアンプICとスイッチング電源からの発熱の出具合を確認しましたが、パワーアンプICは放熱器として使っているケース側板が充分機能し触って僅かに暖かい程度でした。 但しスイッチング電源の方は中央にある放熱板が連続して触っていられないくらい過熱することを確認しています。 従ってスイッチング電源を収めるケースは密閉状態には出来ません。 シールド効果を保ちながら熱を放熱できる構造を検討することにします。

 これで解決策が完全に見えたので、スタンバイ制御基板を設計して組立てアンプの最終組立に進みました。
 この基板サイズは既にスイッチング電源基板の固定ネジ穴があいているため、スイッチング電源と同じにしま
 した。 従って充分に大きくゆとりがありますので、ここにコントロールアンプの出力信号を減衰させる回路を
 組み込んでいます。 100kΩの半固定抵抗としましたので、製作後任意のゲインに調節できますし、僅かに
 残っているであろう左右のゲインアンバランスも調整可能になります。

 本当はパワーアンプの負帰還を増やしてゲイン調整したい所ですが、
 メーカーのアドバイスは負帰還を増やして40dB以下とすることは安定性
 上お勧めでない!ようで、それを尊重してやめました。
 替わりに単純に10dB信号レベルを減衰させたいと思いますが、ほぼ同
 じ量だけSN比は改善され75dB程になる筈です。

尚最終的な全体の回路を右に掲げておきます。 使用したケースは大きな変更(スイッチン
グ電源を別にしてしまう)
の前に加工が済んでおりますが、大変高価なケースなので、追加
の穴あけをしないで済むよう、既に作ったパワーアンプとコントロールアンプ基板はそのまま
使っています。

 スイッチング電源の方は別なアルミケースに組み込みます。 サイズは100 x 70 x 30mmで、スイッ
 チング電源基板がぎりぎり入る大きさです。 スイッチング電源が発生する熱を放出させるための穴
 をあけました。 ケースの底とカバーほぼ中央に116個ずつの2φの穴をあけています。
 残念ながら穴あけの位置がずれやすくメーカーがやる打ち抜き穴のように綺麗に揃いませんしセンタ
 ーポンチで穴位置のマーキング時にそれらの部分が飛び出てしまいました。
 ハンドドリル、手加工ではやむを得ない不具合と言えるかもしれませんが残念な所です。

 そのケース内にヒューズを入れ通電状態が判る様LEDのパイロットランプを付けましたが、スペース
 が無いため電源スイッチは取り付けませんでした。 アンプとの間の接続にDCアダプターで良く使わ
 れるコネクターは電流容量に少々不安があります。 そこでちょっぴり贅沢ですが小型のメタルコネク
 ターを使っています。

これでアンプ部は完成しました。  そこまでの様子は以下の写真をご覧ください。

組み上がったスタンバイ制御基板。 スイッチング電源と同サイズにしたため充分ゆとりのあるレイアウトになっています。

最終アセンブリーの前にフロントパネルにインスタントレタリングで文字入れをしました。 その後水性ウレタンニスつや消しクリヤーを2回塗って剥がれ防止としています。

フロントパネル中央に見えるLEDを赤・青2色のLEDに交換し配線を中央上部より引き出しました。

全ての配線が完了しました。 結構いっぱい詰まった感じがあります。 この状態で通電し中央左の2つの丸い半固定抵抗を調節して全体のゲインを調節後に蓋を閉めます。

スイッチング電源を繋いだ状態で、アンプはスタンバイ状態にありスピーカーからは音が出ません。(左の写真) 右下に見えるスイッチのレバーを上に上げるとスタンバイ状態から解除され(ON)音が出る状態になります。 この間パイロットLEDは赤から青に変わります。 また電源スイッチはモメンタリースイッチなので、レバーは常に中央にあります。

極めてシンプルな背面。 スペースが少ないので入力は3.5φのミニフォーンジャックを使っています。

市販の蓋付きアルミケースでは最も小さい物に何とか収めました。 また出力コネクターにはメタルコネクターを奢っています。

完成した外付けのミニアンプ。 小ささとは裏腹に大変馬力のあるサウンドを引き出してくれます。 小型スピーカーは低域補正を加えて、大きなスピーカーはフラットのままでドライブと使い分けが出来ます。


ここで最大出力と周波数特性の簡易測定、そしてSN比を計算しておきます。

4Ωのダミー抵抗を繋ぎ測定した所最大出力電力は9W x 2、入力信号電圧は100mVとなるよう調節しました。 負荷が8Ωの場合には5.3Wに下がります。 このアンプに繋ぐスピーカーは4Ωか6Ωですが6Ωのダミーは作れなかったので、出力電圧値が8Ωと4Ωの中間の値になると仮定して計算すると6.6W x 2が得られます。 以前最高出力を推測した時より低くなっていますが、電源のレギュレーション(前は定電圧電源を使い駆動電圧が常に12Vとなるよう調節した。)によるものと追加したショットキーバリヤーダイオードによる電圧降下(約0.3V)の2つによる低い電源電圧がその原因でしょう。

入力信号電圧を1/10に下げて100Hz、1KHz、10KHzの出力レベルを見ましたが、100Hzと1KHzは同じレベルであるものの10KHzは少しレベルが低くなっています。 計算してみると1.2dB低いです。 20KHzあたりでは3dBほど落ちてしまうでしょう。

次に方形波に対する応答を見てみました。 100Hzではサグの傾斜がきつくなり低域の早めの減衰が伺えますし、1KHzでもごく僅かなサグが認められます。 その1KHzは右肩がちょっと丸くなっており高域の減衰が早めに起きていることをうかがわせます。 そして10KHzでは明らかな左肩の丸みが大きくなっており高域は伸びていないようです。 但し変なオーバーシュートやリンギングがありませんので動作が不安定であるとか発振気味ということはありません。 回路定数はメーカーの発表している数値そのものです。 どこをいじれば高域を伸ばせるかのアイデアはありますが、この程度で致命的な音質の劣化が出るわけではないので安定度を取り敢えず優先させる事にします。

 左はボリュームを最大にした時の雑音出力で1Divが5mVになってい
 ます。 レベルはランダムで平均値を読み取りにくいですが、平均した
 実効値で約1.7mVと読めそうです。 これから6Ω時のSN比を計算す
 ると71.3dB、4Ωの時に71.0dBになります。
 ボリュームを最大にして耳をスピーカーユニットに再接近させても全く
 何も聴こえません。

 ということで高域の伸びが不十分なままにしました。 もしも家の中で
 据え置き式で本格的にオーディオを楽しむためのアンプを作るのであ
 れば私は絶対に妥協をしませんし、徹底的に改善を計る方向で動く
 でしょう。(その結果音が良くなるかどうかは別問題だが?)

 しかしこのシステムは音源としてMP3のようなデジタル処理された元
 の音からの欠落が多いものが使われ、聴く場所が音響的に配慮され
 た場所である事は少なく、駆動するスピーカーは口径50-80mmとい
 う、全てに渡って多くを望めない環境で運用します。

 従ってバランスを考えるとこの程度の問題は無視してしまっても良いと考えています。  どだい私の耳は加齢が原因で右耳が6KHz以上は大幅に感度が下がり、左耳も10KHzは殆ど聴こえていないと人間ドックでの検査結果を知らされたことがあります。 従って変な言い方ですが、自信を持って『私はこの高域の減衰を感知できない!』と言えるでしょう。 

私にとってはアンプの動作がすこぶる付きの高安定度であった方が遥かに安心出来たポイントです。 現在CDを交換する手間が省けて長時間ランダム再生が出来るので、iPod Nanoを音源としてエージングを続けていますが、大変明るくて明瞭な音がFE127 TQWTより響いてきます。 このくったくのない明るさはこのアンプの最大の身上かもしれません。



2011/02/11

スピーカーボックス製作1

久しぶりに日曜大工をいたしました。 ノコギリでの手引き切断も暫くの間やっておりませんでしたが、腕が錆付いていた!ということはなかったようです。 ところでそのノコギリの切断でここのところやっている方法について触れておきましょう。 それは決して手抜きではありませんが作業を効率良く進める目的でやっています。

何かというと、いままでは1部材の墨線を引いてのこぎりで切断し、次の部材の墨線を引いて切断しとやってきました。 ところが今は部材と部材の境界には2mmの切り幅があるとしていっぺんに複数の部材の墨線を引いてしまいます。 そうして切断は連続して進めてしまいます。

つまり以前は部材ひとつの墨線を描き → それを切断する。 → 次の部材の墨線を描く → 切断 ・・・・・ を繰り返していました。 それが複数の部材の隅線を引いてしまう → 一度にそれらの切断をする。 という違いがあるわけです。

そしてこうすることで作業効率が結構改善されますがそう出来るポイントは切り幅が安定している事と切断時にぶれて波打つような切断にならない事が前提です。 メーカー発表データによると私が使っている翔265の板厚は0.6mmですが、あさりがありますので切り幅は0.9±0.05mmとされています。 しかし実際に切断して切り幅を測ってみるとこれより少し多めで、最大で1.1mm、最小で0.90mm、平均で1.03mmありました。(詳しくはこちらをご覧ください。)

これによりゆとり数値を加えて部材と部材の間に2mmの隙間を設けてその隙間の一部が切り幅で無くなる!とすれば、正確に隙間の真中を切断すると(2-1.03)/2 = 0.49mmだけ所定の寸法より大きめになるのでそれをカンナとヤスリで成形加工すればよい!となります。 この時の注意点は実切断がうねりだして2mm幅を超えた切断をしてしまうと修正不能になります。 そのぶれの量は±0.49mmということになります。

実は同じ事を翔250では既にやっていました。 但し切り幅が最大でも0.8mmしか出ないため部材どおしの境目に出来る隙間を半分の1mmとしてやりました。 つまり墨線を引く時に部材寸法は常に1mmずつ大きく描いてやりそれに沿わせて切断するわけです。 この方法は理屈の上ではそのとおりですが、切断時に出るうねりの許容値が0.1mmしかありません。 従って極めて緊張を強いられる切断になります。

これに対して±0.49mmのぶれまで許容するのは緊張度も上がりませんし失敗する可能性も低いので自然にポピュラーな作業になったと言えます。 それらの様子は以下の写真もご覧ください。

翔265で切断する場合には、部材と部材の間には2mmの隙間を設けてやります。

切断中に撮影しましたが、ノコギリの左側と墨線の間にこの程度の隙間が残る!あるいはその隙間のブレがこの程度であれば問題無しです。

墨線までカンナで削って寸法を出す!、切断時のうねりを取る!、切断面の直角度を出す!の3つの目的があります。

そして仕上げは自作替刃式直角ヤスリで直角度を維持しながら表面を滑らかに!

私が使う平面替刃式ヤスリ3本。 真中はmini-Shopで販売しているアルミダイキャストハンドルの優れもので使用頻度は最も高いですが、状況によってはその替刃で自作した左右の2種類でないと出来ない作業もあり、いずれも大活躍。

部材は全て12mm厚シナ合板ですが、天板と底板は縦横共に2mmずつ大きく切断しています。 これは切断誤差、接着位置誤差、板厚誤差、直角精度、接着部分の接着剤厚みなど様々なエレメントが重なって出来る寸法誤差を吸収してしまうためです。 当然ながら天板と底板は若干飛び出ますが、最後に目地払いビットで切削してしまいます。

工作精度を厳しく要求する作業ですからとんとん拍子に進むとは言えず、特に切断後のカンナと替刃式ヤスリによる成形切削は削りすぎないよう曲尺やノギスで頻繁に測定しながら進めて1日掛かりました。 その後の組立は30分硬化開始型エポキシ接着剤で3回に分けて接着しています。 1工程に3時間掛けていますので、これにも1日を費やしました。 そこまでの様子は以下の写真をご覧ください。

底板にスピーカーターミナルが飛び出る穴と前面のポート穴は予めジグソーで切断しましたが、スピーカー取り付け穴はその周辺が僅かしか残らずちょっとした事で破損しやすいので、組立後に切断します。

切断した天板と底板を合わせて立てたところです。 寸法はドンピシャになっているので高さは全く同じで、直角度が出ていますから恰も24mmの合板を立てたようで、隙間が出るようなことがありません。

1回目は既に完成していたバスレフポートユニットを底板にエポキシ接着剤で貼り付け。 使ったエポキシは30分硬化開始型です。 小型C型クランプ4個で圧着保持しています。

底板には予め接着位置の墨線を引いてありますから正確に合わせないとなりません。

こちらは前面中央のバスレフポート開口部分でこちらも墨線に合わせます。

3時間寝かせてやりました。 ナイフで強い力を加えれば切断できる程度にエポキシは硬化しました。 これで次の接着作業に移ります。

2回目はフロントパネルの接着です。 フロントパネルが垂直に立つよう念入りな調整が必要です。 圧着保持にはハタ金6本を使用しました。

3回目は左右の側板を貼り付けます。 一度に2枚貼るわけで調整箇所も多くなりますので素早くしかも慎重に! 圧着保持にはハタ金8本に400mmバクマクランプ2本を使いました。

天板を接着すれば終わりですが、ここでスピーカー取り付け穴の切断と吸音材の貼り付けをしてからにします。



2011/02/25

スピーカーボックス製作2

電動トリマーによる多量の切削は箱の前後方向の角を45度に落とす際に発生しこればかりは屋外でないとなりません。 一番気温が上がる昼間でも10度以下ですので体にきついだけでなく動作が鈍りやすいので失敗しやすくなったり危険を伴う事もあります。

またその作業は音質を左右する作業ではなく外観に大きく影響する作業でもあるためもう少し暖かくなるまで待つ事にして、次のような作業手順として進めることにしました。

   1.フロントパネルの周りの段差切削
   2.スピーカー取り付け穴あけ
   3.フロントグリルホルダーの穴あけ
   4.スピーカーユニット固定鬼目ナットの取り付け
   5.フロントグリルホルダー穴の一時的な埋め込み
   6.吸音材貼り付け
   7.天板の接着
   8.試聴、ポートのチューニング


気温が上昇してから、

   9.トリマーで前後方向の角45度切削
  10.木口テープ貼り
  11.フロント、リヤーパネルのパテ作業
  12.全体の仕上げ研磨
  13.前面と背面を除く着色
  14.透明クリヤーニス3回塗り
  15.フロント、リヤーパネルのペイント塗装
  16.全体的な艶消しニス塗装


言うまでもなく音の方を先にチューニングしてしまい暖かくなったらニス塗りを始めとした仕上げ作業という手順です。 正直言って塗装は音質にかなり影響しますので、ポートのチューニングだけは再度出来るようにしておきます。  普通のスピーカーボックスの製作ですと例えば吸音材の貼り付け作業はチューニングのひとつに入ってきますが、今回の場合吸音材を出し入れしたり量を調節することは、開口部分の面積が小さいのでかなり困難で、極めて限定的になります。  従って吸音材を使う量はこれまでの経験により一発勝負で決めざるを得ないでしょう。

まあそれだけ箱の容量を押さえ込んだお返しで苦労しているとお考えください。 といった次第ですが音出しが出来る段階まで何とか進んでいます。

フロント部分を上に向けていますが、フロントパネルに貼り付けた側板の端は出っ張って接着されていますので、スピーカーの穴あけ前に出っ張りをコロ付き目地払いビットで削り落とします。 このトリマーによる切削は切削量が少ないので屋内で可能です。

切削後の写真ですが、左の写真の位置から約90度左に回転させた感じになっています。 出っ張りはご覧のように無くなり穴あけ作業がスムーズに出来ます。

大きな箱でしたら箱として組立が終了してからスピーカーの穴あけをしても良いでしょうが、箱の内部が複雑で開口部面積が小さい今回のような場合箱として完成してから切断すると多量の内部に残ってしまう木屑が取り除けなくないます。 まただからと言って組み立て前にこの丸穴をあけるのは3方向に幅2.5mm程の部分があり、壊してしまう可能性があるので、この段階で穴あけをしています。

M4の鬼目ナットを捻じ込んだ。 スピーカーがこれにネジ止めできることを確認できてから一旦外して再度エポキシを塗り込んで完全固定する。

使ったネジはステンレスのM4 六角ボルトです。 指で摘んで締め付けられるくらいネジ位置は正確になっています。

フロント部分への最後の穴あけはフロントグリルホルダーメスの固定穴で10φ抜き穴ですが、この後裏側に3mm厚の板を貼って蓋をします。

実際のホルダーメス部分は最大で11φありますので、このように当てて玄翁で叩き込みますが、それは最後の塗装作業が済んでからになります。

吸音材の私の使い方は対向面の片側だけというのが多く量は多くありませんが、今回も同様です。

そして天板をエポキシ接着剤で貼り合わせ。 バクマクランプを6本も使って何とも大げさな感じがしますが、隙間を作らないためには最低限の配慮でしょう。

取り敢えずは前面接合部の段差のみを削り落とした程度です。 最終的な成形と仕上げ研磨は音のチューニングが終わった後塗装前に行います。  4箇所のフロントグリルホルダー受けを途中まで埋め込んで音漏れ防止しました。

チューニング前の慣らし運転として1週間の間、毎日10時間位クリッピング歪を感じない程度の大音量で駆動を始めました。 アンプは既に完成したコンパクトアンプでiPod nanoが音源です。 低域補償はターンオーバー周波数を200Hz、ブーストレベルはMAXの設計値としています。



2011/03/11

エージングとチューニング

連続して10日間毎日10時間以上大音量でエージングを続けた後に改めて試聴いたしました。 そしてチューニングを施したのですが、それらを簡単にご説明いたします。

先ずスピーカーの置き方ですが、上の写真にあるようなテーブルの上にべた置きとしたときには中低音のかぶりが気になりました。 その原因はどうも箱の振動がテーブルに伝わることによるものらしく、対処法としては小さなゴム片を脚のように貼り付けるのが有効でした。 またその代わりにブースト量を抑えて(ツマミの位置だと12時)やる手も有効です。

ターンオーバー周波数は約200Hzと400Hzに切り替えれますが、400Hzは補正過剰というかブーミィーになるソースが多く、200Hzの方が自然だと感じています。

バスレフポートの長さ調整は73Hzのまま(つまりポートを長くする部材を追加しない。)で良いように感じています。 これは箱の内容積が小さくならないで済んだ事を意味しており、ほっとしている部分でもあります。

これでほぼチューニングは終わりで快活・明朗な音色は相変わらずで、その昔楽しんだアルテックランシングの持っていたあの音色を彷彿とさせる物があります。  そこには繊細過ぎて神経質になりそうなデリカシーは薄いものの極めて健康的なウエストコーストサウンド的な響きがあります。  その意味でこのチタンコーンという成形しにくい素材で作ったユニットの価値観を感じています。(このユニットの外観はいまだに好きになれないのですが?)

これが使い方としてイメージしていたもの。 PCだけだと蚊の鳴くような音声が月とスッポンの違いで楽しめます。 後は如何に外観をより完成度高く仕上げるかですが、この後のスピーカーの出来具合如何に拘わらずこのスピーカーの生きる場所(私の机の上で移動用ではなく固定用)は決定したようなものです。



2011/11/18

塗装

音出しの上では最終的になったもののその後は半年以上もほったらかしにしていました。 しかしノートブックPC用スピーカー2がようやく塗装作業に入りますので、こちらも塗装と保護カバー作りとばかり動き出しました。

もっともただ何もせずほおっていたわけではなくて、エージングを兼ねて試聴を続けてきており、このスピーカーの評価は当初期待していたものより高くなっています。 それは省スペースの本格的なスピーカーという位置づけで、これまで使ってきたどの口径80mmのユニットよりも格段に高性能な物に仕上がっている!というものです。  そして前回にも触れていますが、その使い方はポータブルというよりも、常にデスクトップでノートブックPCを上に載せ至近距離で聴くスピーカーとして使うのがベストと考えています。

このため当初は運びやすいようにボックスの角を45度に落とすことも考えていましたが、オーソドックスな箱の形状とします。 そして合板の木口の見え方が面白くないため(以前は木口を45度にカットして木口テープを貼るつもりでいた。)、BOX全体をペイント塗りつぶしとします。

但しそれだけでは木目が完全に消えてしまうので、保護カバーは木目を積極的に見せる仕上げとします。

ペイント塗りつぶしというと私が良く使う手はスプレー塗料の使用ですが、物理特性があまり良くないので、スプレーペイントは水性ウレタンニスの塗膜の間に挟んでしまうことでペイントは着色剤としか働かないようにします。

水性ウレタンニス透明クリヤーを3回塗りしました。 そして塗膜面を#240ペーパーで研摩してペイントの乗りが良くなるようにします。

スピーカーユニットの外周より少し小さな円を紙に書いて切り抜きマスキングしました。 他の穴にはティッシュペーパーやダンボールを詰めています。

こうしておいて先ず前面を除く5面をディープグリーン色のスプレー塗料で2回塗りしました。

乾燥後にディープグリーン色で塗った部分をマスキングして前面をチャコールグレーで2回塗装しました。 このペイントは艶ありなのでピカピカ光ります。

色の組み合わせ確認のためスピーカーを乗せてみました。 ピカピカのチャコールグレーは気に入らないので艶消しをしますが、それ以外は落ち着いていて良い感じです。

水性ウレタンニス艶消しクリヤーを塗りました。 安っぽいピカピカがうまく無くなりました。

スピーカーユニットと裏蓋を固定する部分に使うパッキンを作りました。 入手が容易な2mm厚発泡ポリエチレン製の物を使っています。

全体に水性ウレタンニス艶消しクリヤーを塗り物理特性を高めています。 裏板を固定した後はセットキャップボルトの頭に黒のカバーを被せました。

9.5φのクリヤーパンポンを底に貼って僅かに浮くようにしています。 これで低域の寝ぼけたような感じの音が薄れます。 そうそう私はSPターミナルのある面を上にしました。

さて残る作業は前面の保護カバーです。ボックス外形に対して内容積を目いっぱい稼ぎたかったため、私のスピーカーボックス製作では常識としているフロントグリルは全く製作することなど考えてはいませんでした。 上でも触れたようにパブリックなスペースで使う事は殆ど考えられませんから、ユニットを壊すチャンスも少ないのですが、ただひとつだけポータブルスピーカーとして運ぶ時にスピーカーを壊してしまう可能性が非常にあります。 そこで通常のフロントグリルではなくフロント保護カバーを作ろうというのが目的です。

 構想は左の図のとおりで、材料としては4mm、5.5mmのシナ合板、5 x 10のヒノキ
 棒、シナ木口テープです。 製作はそれほど複雑ではありませんが、グリル固定
 ブッシュのオスの取り付け位置が正確でないと全く取り付け取り外しが出来ない
 代物になります。 私のこれまでの経験ではブッシュのメスとオスの位置ずれ限
 度は0.3mm位まででそれより大きいと嵌め込みに大きな力がいるか入らないブッ
 シュが出てきます。

 0.3mm以内に収めるのは大変難しいので、それより大きい場合にはヤスリでオス
 のブッシュを固定する穴(標準は8φですが)を削って、固定にはエポキシ接着剤
 を使い、強引に位置ずれを補正可能です。 但しこの方法もずれが0.6-0.7mm以
 下でないとオスのブッシュがぐらぐらになり過ぎ接着時の圧着保持が難しくなりま
す。 尚穴の修正をしなかった場合でもブッシュの固定はエポキシ接着剤にすべきです。

もうひとつ気をつけるべきは捻れた枠が出来てしまう事があることで、今回の場合には300mm幅の2本のヒノキ棒を接着する時が要注意です。接着時に色んな方向から2本の棒が完全に平行になっている事を確認する必要があります。

尚難易度には関係ありませんが、この保護カバーはシナの木目が表面に出るように作ります。 このためヒノキ棒とシナ合板の木口はシナ木口テープで覆ってしまいます。全ての角が90度になるため傷つきやすいですが、前面シナの美しい仕上げが可能で、ここではダーク調ペイント仕上の本体に対し無着色のシナ生地仕上げとしてコントラストを楽しもうという考え方です。

4mmシナ合板から切り出した部材。 シナの材料はこれ以外に5.5mm合板とシナ木口テープを使います。

正方形に近い2枚は貼り合わせて接着剤が硬化後に所定の形に成形します。

電動ジグソーで所定の形に成形切断し替刃式ヤスリで切断面を研摩しました。 その後固定するブッシュのオスをエポキシ接着剤で固定しますが、1箇所だけ0.5mmほど位置がずれていたので、ヤスリで穴を削って修正しました。

ヒノキ棒で周りを囲みました。 この枠のタテ・ヨコはスピーカーボックス断面の寸法より1mmずつ小さくなっていますが、これはこの後シナの木口テープを貼る事によりたて・ヨコそれぞれ1mm大きくなるのを補正するためです。

出来上がった枠に5.5mm厚シナ合板を貼り付けます。

接着剤が硬化したら内側4隅に3角形の補強板(4mm厚)を貼り付けます。 また外周の面(ヒノキ棒と5.5mmシナ合板)がツライチになるよう研摩します。

外周はこんな具合になりますが(左側)、決して綺麗とは言えないので、シナの木口テープを全周に貼り付けてやると前面シナの木目に変貌し、見違えるほど綺麗になります。(右側)

これで加工・組立は全て終了しました。 残る塗装前の仕上げ研摩を、#240、#400のサンドペーパーでやっておきます。

毎回同じ塗装作業をお見せするのは省きましたが、水性ウレタンニス透明クリヤー3回塗り、最後に水性ウレタン艶消しクリヤー1回塗りです。(無論間に#400-#600での研摩作業が入ります。) 濃い緑色の本体と明るい木目のカバーのコントラストが綺麗です。

説明不要でしょうが、桧の棒の赤い部分と外側のシナの白っぽい木目が隣り合わせの奇妙な光景です。

カバーの内側4隅には本体に傷を付けないために8φのクリヤーパンポンを貼っています。

実際に使うスタイルにセットアップしました。 ノートブックPC用スピーカー2の方がコンパクトで豪華な感じに見えますが、音質は圧倒的な差でこちらの方が良いです。 従って上に載っているパソコンを外部に持ち出すときにはノートブックPC用スピーカー2と組み合わせ、普段はこの状態で机の上で使うことになります。

正直言って2つのノートブックPC用スピーカーを作っても2者択一になり、どちらかのスピーカーは使わなくなると想像していました。 しかし結果は両方が生きるという結果になり私は大変満足しています。 こうなった大きな要因は常識を超えた高性能の80mmユニットであるW3-1231SNに依存している所が大きいでしょう。 但し残念ながらW3-1231SNは既に販売が終了したようですので、私が購入した物は大切に使わねばと考えています。

----- 完 -----

 
  
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