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音響迷路型スピーカー
2003/05/08

構想

 個室2の収納家具の設計を最終的なものにすべくあれこれ考える中で、この収納家具に乗
 せようと考えていたスピーカーを幅木部分に埋め込んでしまおうという発想がでてきました。
 他の作品ではここに引出しを使い有効利用している例がありますが、床がカーペット仕上げ
 のため引出しを作るわけには行きませんが、出し入れがないスピーカーボックスなら問題あ
 りません。 (実はその出来なさそうな引出しも結局作ってしまったのですが!)

 但し床に接近した所に位置するスピーカーシステムは床面での音の反射が強くなり、こもっ
 たような音になりやすくあまりよくないと聞いています。 
 無論私自身そのような構造のスピーカーシステムを作った事はないのでいきなり収納家具
 に組み込むのは乱暴で、どのような音になるのか確認をする必要があります。 
 ということで個室2の収納家具に取り掛かる前にそのようなスピーカーを試作・確認すること
 にしました。

 使えそうなスピーカー1個分のスペースの内寸は高さ94mm、幅810mm、奥行き414mm
 位ですので容積としては30リットルを超えます。 これはかなりの容量なのですが高さが低
 いため大きなユニットは使えません。 市販品の中から口径8cmFostex FE87を使うこ
 とに決めました。
 このユニットはで最低共振周波数が140Hzと本格的な低音再生を期待するのは無理です
 が、目的がBGM用ですので広帯域より質を確保することに主眼を置くつもりでいます。

 とはいっても30リットルの容積を生かし出来るだけ低音再生を考慮したいのでいろいろ検討している中で音響迷路型という方式が旨く行くかもしれないというヒントをつかみました。  (左上の図)

この方式は音響工学の古典とも言われている「オルソンの音響工学」の著者オルソン博士が1936年に発表したという正に温故知新の典型みたいな方式です。  

スピーカーの裏側から出る音は前方に出る音と位相が反対になっているので、裸のスピーカーでは低音はキャンセルされて殆ど聞こえませんから、間に仕切りを入れてキャンセルされないようにしたものがスピーカーキャビネットの必要性の基本なのですが、
音響迷路型ではこの箱を長いパイプ状にして後から出る音の位相が180度変わるようにしています。  こうすると前方と後方の音が強めあう結果となり低音の増強が図れるわけです。 

別項で取り上げているTQWTと違うところは、パイプの共鳴を利用しているのではなくて単純に位相が180度変わる長さとしていることと、スピーカーの取り付け位置はパイプを閉じた端になっていることです。

パイプの長さは強めあう音の1/2波長でその周波数は、f=34400÷パイプの長さ(cm) x 2 という簡単な式で表されます。
従ってTQWTと同様難しい設計理論など必要なくアマチュアには取り組みやすい方式と言えますが、唯一の短所としてパイプの全長がかなり長くなることがあり、例えば50Hzを再生しようとすると344cmというかなり長いパイプが必要になります。 実際にオルソンが発表した物はパイプを折り曲げてキャビネットが大きくならないように工夫されています。 またてパイプの内面には吸音材をびっしりと貼り余計な中音が出ないようにしてあります。  (この折り曲げ構造から音響迷路型との名がついたものと思われます。)


設計詳細

 薄べったいスペースに図のような水平方向に3回曲げた構造の物でやってみることにしました。
 パイプの全長は2460mmで強調される周波数は70Hzとなるようにしました。
 (図中の青線がパイプ長計算の根拠です。)
 これは一見低すぎるような気がしますが、この方式の場合理論的にはパイプの長さが1波長となる
 周波数では前後の音が打ち消しあい(計算上は140Hzになる。)FE87の公称の低域共振周波数
 に一致します。

 私の期待としてはこの付近の周波数がカブリ気味の音と言うかこもった音になりやすい原因となる
 可能性が高いと想像していますので、この打ち消しあい現象はむしろ良い方向に作用するかもし
 れません。 実際の所メーカー発表の周波数特性では140Hz-200Hzに盛り上がりが見られますが、その辺りを押さえられれば最高です。 但しスピーカーユニットの振動板の振幅はかなり大きくなることが想定され破壊が心配ですが、小音量で使うのが前提ですのでこれも良しとしておきます。

尚構造・加工が少々ややこしくなりますが、スピーカーユニットは20度上向きに取り付けて指向性の悪化を押さえるようにしました。
こうすると部屋内の殆どの位置で床か椅子に座った状態で軸上から30度以内で聴けるようになります。


材料加工   各部材加工寸法図こちらです。)

 新たに調達した材料は15mm厚サブロクのラワン合板です。 安く上げるのであればOSBやコンパネの採
 用も考えられますが、ちょっぴり贅沢しました。

 このサブロク1枚から上板と底板を切り出します。 その他の部材は総て18mm厚合板の端材です。 
 18mm厚の使用も贅沢でして12mm厚に置き換えても良いと思います。
 但しその際は設計寸法が変わります。

 材料切断の一部は20度傾斜させねばなりませんが、電動ジグソーを使いガイドとなる当て板に沿わせる
 ことにより加工精度を上げ、0.5mm以内の切断誤差に仕上がっています。 但し接合時の隙間発生を抑
 えるには0.5mmの精度でも不十分ですので、大変厳しいですが総ての寸法は0.3mm以内の誤差となる
 ようカンナで調整しました。0.3mmの誤差と言うとノギスでも使って測定するようですが、実際には目検
 討で1mm1/3より少ないという感じでメジャーで読み取ります。)


 この辺りはスピーカーボックス製作が意外に敷居が高い(まともな物を作ろうとしたら)部分で、正直言って収納家具を作るほうが
 神経は使いません。 (ずれや誤差が発生しても全体の中で誤魔化す方法がいくらでもあります。)

 ところで設計図や加工図だけでは傾斜させる部分の様子が判り難いかも知れませんので、左の写真をクリックしてご理解くださ
 い。



2003/05/15

組立て

材料の加工が精度良く出来ても組立て精度が悪くて失敗することが結構あります。 考えてみれば明らかなのですが、木工において例えば0.3mm以内の誤差で接合をするのは接着するにしてもネジ締めするのしても至難の技と言えます。 通常のテーマですと組立て誤差はそれ程シビアーではありませんが、ことスピーカーボックスの場合は組立て誤差が隙間の発生に繋がったらオジャンといって差し支えないくらいですし、折角0.3mm以下の誤差に切断できても組立てで失敗しては何の意味もありません。

その辺りを旨くクリヤーするには、接合誤差の発生が仮に発生しても絶対に隙間が出来ない組立て順序を考える必要があります。 次の一連の写真で今回の場合の組立て順序と作業の勘所を説明しましょう。

尚接合には総て木工ボンドを使いますが、軸細コーススレッドネジ45mm併用で充分に締め付けます。

最初に底板に真中のEを接合します。 次に背板A2枚を底板とEに接合。 2枚目のAはネジの斜め打ちでEに締め付けます。 そして側板Gを底板とAに接合。

別途CHを接合し直角が出ていることを確認して乾燥させておき、Dを底板とGに接合。

Jを底板とGに接合しますが、まず位置を充分に確認した上でJGにネジ1本で仮接合。 ネジはJの面に垂直に打ち込む。


次に底板の裏からネジを斜め打ち。 スピーカー取り付けネジと干渉しないよう、ユニット取り付け穴内に飛び出ないよう要注意。 その後J前面にネジをもう1本追加打ち込み完全に締め上げます。

Dを底板とGに接合します。


BJに隙間なく当たるよう接合します。 BJの間の接着剤は不要です。

IJBと底板に隙間なく密着するよう接合。(木工ボンドをたっぷり塗って隙間が出ないように!)  次に接合しておいたCHを底板とBに接合して終了。 Fはここではまだ接合しません。

註) 油断すると接合時に隙間が出来てしまいます。 それらの隙間は次の接合で段差が出来る原因になりますので、上記のような手順で隙間が出ないよう作業します。



試聴とチューニング

オルソンが作った音響迷路型スピーカーの実例ではパイプ内壁の総ての部分に吸音材が貼られており150Hz以上の音はポートから洩れてこない!と書かれています。 

2500mmにちかい長さのパイプですからそのように吸音材を貼れば確かに150Hz以上の音は減衰して出てこないでしょうが、ここで吸音材として使ったカーペットの下に敷く厚さ10mm前後のフェルトはそのように貼るには足りません。 
 このフェルトは寝室と個室2の収納家具を作った際切り取った端材です。) 

色々考えた末内壁前面にロの字型に貼るのではなくコの字型に貼ることとしました。  その場合フェルトは若干余るので問題があったときは別な方法で対応しようと考えました。 この結果天板の裏だけにはフェルトを貼ってありません。

また天板固定はボンドで固定するのではなくネジ止めとし必要に応じて天板を外せるようにしました。 この場合天板と本体の間に隙間が出る可能性が大ですので、接着剤付きの2mm厚発泡ポリエチレンシートを細く切って本体の木口に貼り隙間が出ないようにしました。 そしてネジ止めした上で試聴に入りました。

試聴風景。 この写真では天板はネジ止めしてなく、天板を載せた上約50kgの重しで押さえています。 当然ながら実際の使用と同じようにスピーカーは床に密着しています。


視聴・チューニング用にCD 約50枚を色々な音の確認用に使いました。 視聴用のアンプは個室2で使用予定のKenwood R-SA7、CD Playerは DP-SA7というコンパクトコンポです。

補足説明は後述しますが、13時間の試聴とチューニングの結果、フェルトを使った吸音をこのようにしてあります。 ポート出口近くは見苦しいので、145mm位は貼ってありません。

210Hz辺りを集中的に押さえようと入れたブロック状にした吸音材で、このブロックの中心はポート先端から820mmの距離にあり両端を壁面に接着剤で止めています。
挟んだ吸音ブロックを横から見たところでアコーディオンの蛇腹のように軽く折りたたんであるので一部は隙間が出来ています。

これはスピーカーユニットの背面で周りにはフェルトを敷き詰めてあります。 フェルトが振動版に当たるとびりつき音が発生するので要注意。

スピーカー配線を最終状態にし残っている側板Fを固定。 最後に天板を固定して完成です。

完成後 更にCDを20枚程持ってきて家内とデミちゃんも入り最終試聴会。 無事合格です!!
 後日収納家具の最下部に嵌めこんだ音響迷路型スピーカーです。 組み込みの詳細はこちらからどうぞ。



試聴は音の変化を確認するため吸音材を貼りながら進めました。 吸音材を増していった時の音の変化が後で問題があったとき参考になるためです。

吸音材が少ない時にはとにかく騒がしくごちゃごちゃ余計な音が暴れ狂ってはちゃめちゃな状態で、さてさてこれはどういったことになるのやらと多少の心配もありましたが、そういったごちゃごちゃの音の合間にズーンという低音感は見え隠れしていました。

コの字型に貼り終った状態になると音は極めてクリヤーさを増し低位がよくなりかなりバランスが良くなったように思われました。 とても8cmユニットの再生音とは思えないレベルに既に入ってきています。  そこで色々CDを変えてみてボーカルのそれらしさ、音階の移動の具合、音像の大きさ、ピーキング感などをつぶさに調べましたが、どうも中低域のある部分で共振しているようなところがあり、分解能が著しく低下していることに気づきました。 

この時ポートに耳を近づけて見ると確かにポートから中低音が洩れています。 この洩れがスピカー前面から出る音に重畳しピーキングを起こしているようです。 更に調べた所アルトの声の女性ボーカリスト アン マレーではその部分がかなり強調されます。 その声の高さをピアノの鍵盤で確認した所約200Hz前後であることも判りました。

 ここで基本理論に戻りますとこのスピーカーボックスは70Hz付近の
 ポートから出た音がスピーカー前面の音と合成され強調されるよう設
 計していますが、2倍の140Hzでは位相が反対になりスピーカー前
 面の音と打ち消しあいます。 
 3倍の210Hzでは再び強調されますがポートから210Hzの音が洩れ
 なければ強調されません。 上記200Hz辺りでのピーキングは正に
 ポート内での中音の減衰が不十分であることを示しているわけです。

 因みに片側の部分だけ天板の内側にも吸音材を貼りテストしてみま
 したが不十分でした。 さて弱ったどうしよう? 吸音材として使った
 フェルトはグラスウールなどに比べるとそれ程吸音能力がないのは
 元々判っていましたが、敢えて廃物利用で採用したので今更引っ込
 みたくありません。

 あれこれと思考実験をしている中で、200Hz前後に的を絞り集中的
 に吸音する手法で試すことにしました。
 詳しい理屈はさておき左の図の矢印部分に吸音材ブロックを入れる
 と210Hz付近の音が集中的に吸音される筈です。  

パイプの全長が2460mmですので矢印の位置はポート出口から820mm、及び1640mmとなります。 試しに両点にアコーディオンのようにたたんだ幅8cmのフェルトを挟んだ所、変なピーキング音は殆ど無くなりましたが同時に低音の量感も減り音が痩せて聞こえるようになります。 そこで片方だけ詰めて再度聴いたところピーキング感はほんの少し増えるものの低音の量感は減らない旨い妥協点と思える感じとなったのでこれで良しと言うことでチューニングを終えました。

このように書くといとも簡単に淡々と進んだように思われますが、試聴を開始して延べ13時間ほどあれこれ実験した結果です。
さてそれで肝心な音質はどうなったかと言うと、

 
 ・口径8cmのユニットとしては限界とも思える豊かな低音感が得られた。

  多分このスピーカーを試聴されたら「重低音が出る。」と表現されるかもしれませんが、重低音は出ていません。
  しかし重低音が出ているかのような錯覚を起こす豊かな低音感があることは事実です。

  なぜそのような現象が出るかと言うと重低音(30-50Hz程度の領域)の再生レベルは殆どなくてもそれが含む高調波
  (40Hzが基準であれば整数倍の80Hz、120Hz、・・・・の音)が充分再生されればあたかも40Hzの重低音が出ているよう
  に聴こえるからです。

  これは小型スピーカーのチューニングでは非常に重要なことで、ユニットの能力以上の広帯域再生を狙わず、低音感に
  影響する60-120Hz位の領域の調整を念入りにすることにより得られます。 今回の場合140Hz辺りが減衰されること
  によりブーミーさが減り、その下の70Hz前後が補強されていることにより得られています。

 ・音像の定位が非常に良い。
  これは小口径のスピーカーの最大のメリットです。 気持ちよいくらいきりっと締まった音像になっています。

 ・極めて明るいのびのびとした音色。
  使用したFostexのスピーカーユニットに共通している音色ですが、中高音の部分の音色は同じFostexの大きな口径の
  物にある若干の荒っぽさのようなクセが少なくなっているような気がします。 3Wayスピーカーシステムの中音用に使う
  のも良いような素性のよさを感じます。

以上は良いと感じた点で下手をすると8cmのスピーカーであることをすっかり忘れてしまうほどでしたが、一方、

 ・耐入力が低く大音量での再生は無理。
  これは極めて当たり前です。 大口径のユニットに比べ能率が低く最大許容入力も低いですから大音量での再生はつ
  らいです。  しかし今回の使用目的ではそのような使い方をすることはまずありませんから、問題とはなりません。

 ・下から音が這い上がってくる違和感。
  床にユニットが近接しているため音は這い上がってくるような感じがします。 慣れないとこれが気になるかもしれませ
  んが構造上これを改善する手がありません。

 ・中低音領域で音が中央による場合がある。
  いつでもという訳ではありませんが、低中音のある部分が中央よりに移動する場合があります。 その原因はポートか
  ら中低音の洩れがまだ残っておりこれとスピーカー前面から出てくる音との干渉で起こるものと想定されます。

  今回は対応しませんが、フェルトよりももっと吸音能力の高い材料に変更したり、ポートの位置をスピーカー側にずらすこ
  とにより改善出来ると思われます。

といった問題も残っています。


総合的には「デッドスペースを旨く生かすBGM用スピーカー!」という目的には充分にかなっており、床に近接していることによる音のカブリの現象も少なくなっています。 

家事コーナーで使っている天井埋め込みタイプのスピーカーよりも数段バランスが良く再生帯域も広いので、この部屋の収納家具が完成したら最高のBGM付き多目的作業部屋になるのではと期待しています。

----- 完 -----
2003/10/24

お知らせ:

ここで製作したスピーカーを埋め込んだ収納家具が完成しておりその様子をこちらからご覧いただけます。




追記: 私の音のチューニングのやり方についての補足

上記の解説の中で私の音のチューニングのやり方について定量的というか測定が伴っていないため不十分ではないかと疑問に思われる方がおられるかもしれませんので、ここで補足説明をしておきます。

スピーカーの音の良し悪しを判断するのに周波数特性を取るとか、インピーダンス特性を取るとか様々な方法があります。 しかしながら我々アマチュアがそれらを実現するには多大な投資が必要となる上に、それらの測定結果と音の良し悪しを判断できるかどうかが必ずしもリンクしていません。 ストレートに言えば良く設計されチューニングされたスピーカーは必ず測定結果も良く出てきますがその逆の、測定結果が良く出たからといってもそのスピーカーが良い音を再生できると言う保証が必ずしもないのです。 

どういうことを申し上げたいかと言うと、耳で聴いた主観的な判断で十分納得できるまでチューニングすることが重要であり、測定結果が良くなるようなだけのアプローチは殆ど意味が無いと言うことを申し上げたいのです。  音響工学に関する理屈を知っておいた方がチューニングには有利ですが、それでもあることをした結果音がよくなったかどうかは主観判断でしなければなりません。 

実際私が以前勤めていた某音響メーカーでもそのような詰め方をしていました。 販売時には周波数特性を初め幾つかの測定結果を発表していましたが、実際にチューニングを施し商品としてOKと聴感判断をしてから外部発表の測定をしていました。

従ってスピーカーを自作される方はまず耳で聴きながら良し悪しを判断することに力を注ぐべきで、そのためには色々な音に対する良し悪し判断の尺度となるイメージを持つことが重要です。
理想は原音のイメージを覚えておいてそれとの比較ですが、現実にはなかなか難しいので、再生音で基準となる音のイメージを持ちます。 

私が試聴で使う約50枚のCDは雑多ともいえるくらい多岐にわたったジャンルを含んでいますが、それぞれを再生した際にこのような感じの音色になる筈!との私なりのイメージを持っています。  中でもボーカルは音のバランスの狂いが発見しやすいので、男性・女性ボーカル共にかなりの種類を聴くことにしています。  そして「口割け女のような品の無さ!」、「風邪を引いて鼻詰まりのような声!」、「トンネルの中で歌っているみたい!」、とかの評価からどうすればそれらを修正できるかを考えてカットアンドトライで詰めて行きます。

「原音再生」という言葉があり、実際の所メーカーも「原音に忠実な音!!  原音の再生!!」とのような言い方をしていることもありますが、あれは真っ赤な嘘!!。 「原音のイメージを再生」であるなら別ですが、音を発する振動体そのものが全く別な物が同じ音を出すことは絶対に不可能であり、音質をどんなに改善できてもあくまでイメージの追及でしかないのです。 イメージの追及の中で聴く人にとって心地よいと思われる再生が出来ればそれでよいわけです。

その結果としてクラシック向きのスピーカーとかジャズ向きのスピーカーのような評価が出てくるわけで、もし本当に原音再生が出来るのであれば何を聴いても最高のスピーカーが出来るはずですが、現実にはそのようなスピーカーが存在すると聞いた事がありません。

くどいようですがその原因はイメージの追及にあるからで、そのスピーカーを設計し、作り、或いはチューニングした人の感性にひたすらゆだねざるを得ないと言うことです。

ということは余りにも複雑怪奇な理屈や解析を必要とする方式で無い限りアマチュアでも充分に楽しめる領域であり、その例として設計の理屈が単純明快である音響迷路型を今回取り上げており、近々製作するTQWTも同様です。

従って余り迷うことなく是非ともスピーカーボックス作りにチャレンジして頂きたいと思います。 今回のボックスの製作費は端材を多用したので\6,000.-位、ユニット購入価格等を加えて約\12,000でした。  しかし音質は市販品ではあきらかに\40,000.-\50,000.-のレベルに到達しておりこれは大きな魅力ですし、特に今回のような構造は市販品には無いので尚更です。

限られた文章の中で説明しておりますので、疑問の残る方が御座いましたら遠慮なくお便りをお寄せください。



  
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