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LPアルバム用額
   
2005/08/19

構想

 最近ある方から「大橋さん、額縁を作っていただけませんか?」と打診されました。 額縁の製作依頼とは
 珍しいな?と思いながら3年前に作った特殊サイズの額縁で苦労したことをふっと思い出しました。

 ところが依頼の内容を聞いてみるとなかなか面白そうなので2つ返事で引き受けてしまいました。 
 その面白そうな内容とは「LPアルバムを飾る為の額縁」のことでした。  通常の額縁はそのままでは
 柔らかい写真やポスターを飾る為にガラス板と裏板の間に挟んでやりますが、LPアルバム自身はぺこぺ
 こしていないのでガラスは不要です。 以前九州に住んでいたときには引き受けてくれる業者がいたそう
 ですが、現在住んでいる所の近くの額縁やさんはLPアルバムの大きさや厚みをどうしたらよいか判らず、
 引き受けてくれる所がなくて困っているとのことでした。

私は現役時代の商売柄いまだに1000枚以上のLPレコードを持っており、それらのサイズを調べればどんな寸法にすればよいか判ります。  特に細かな細工を縁の部分にする必要はないこともあって引き受けることにした次第です。

どんな感じになるかの簡単なシミュレーションをして見ようとのことで、大まかなサイズを決めた上で構想図を描き上げました。 部材としては20 x 25のムクの棒をトリマーやヤスリで加工してやり所定の寸法に45度切断し角を貼り合せます。  前作では3層構造を貼り合わせで組みあげましたが、作業工数が多くなりすぎるので今回は角の部分は木ダボで補強することにして工数を大幅に減らそうと考えています。

難易度が高くなりそうなのはこの角の接合に木ダボを使うところで事前にテストをしてみる必要がありそうですが、それさえうまく出来れば後は難しい部分はないでしょう。

 構想図を描き上げてから、LPアルバムを入れたときの感じを確認する為数枚の写真を撮影して嵌め込ん
 で見ました。 左の写真をクリックするとご覧になれますが、これはなかなか面白い!というのがその
 第一印象です。
 レコードアルバムは言うまでもなくCDが主流になっていますが、LPレコードアルバムをこのような形でイン
 テリアとして飾るのはこれまた自作で実現できるグッドアイデアです。

 実際の製作開始は依頼主にもう少し確認しないとならないことがあるのと、現在製作中の隙間収納家具
 が完成後になりますが、依頼された6本の額縁以外に私自身の分4本も併せて作る予定でいます。




2006/05/05

製作

ほぼ1年間製作を棚上げにしてしまいましたが、別項で解説している
A4サイズの額縁の予備実験で最終的に製作の自信を得てこちらも一気に取り掛かりました。  自信を得てという意味はまともな強度の取れる接合が出来るのかどうかということで、フレームを構成する棒がかなり細いため長らくこれならよいだろうという構造でしかもアマチュア的なソリューションが見つからなかったことによります。  もっとも量産される市販品がどのように作られるのかは私は全く知りませんが?

密着度を上げればかなりの強度が取れることは判りましたが、何しろ断面は20 x 14mm という細い棒です。  そこで今回は実験の際に確認した3 x 10mmのヒノキ棒で補強することにしました。

裏の落としこみは幅5mm、高さ7mmの段差を電動トリマーで切削しますが、細く切断された棒にそのような加工をするのには一工夫が必要です。 A4サイズの額縁でその詳細をお伝えできなかったので、ここで詳しく紹介します。

先ず電動トリマーを使うときに決して忘れてはいけないことについて触れねばなりません。  それは切削時に電動トリマー本体は左に移動しようという力が常に働くことで、一回の切削量が多ければ多いほどこの力は強くなることです。  この為に直線に沿って溝を彫ろうというときにはガイドに沿わせて切削しないとなりません。  コロ付のトリマービットはコロ(ボールベアリング)を材料の右面に当てることにより切削面と一定の距離を保とうとするもので、この時は材料の右面がガイド面になります。

 シャクリ面ビットはコロを使って角を直角に欠き取る目的で使われ、特に曲線の場合にはその威力
 を遺憾なく発揮しますが、かなり高価なのが玉に瑕です。  しかし直線を切削するのであれば安
 価なストレートビットを使い同じ加工が可能になります。
 その場合ガイド板を当ててそれに電動トリマーを沿わせれば良いのですが、材料が電動トリマーの
 台座の下に隠れるような今回のような場合少しひねったジグを工夫しないとなりません。
 左の図は即席のジグで手持ちの端材を組み合わせて作ったもので、後ほどお目にかける写真と
 比較すると判りやすいと思います。

 図において斜線で塗りつぶした部分が切削する材料で幅5mm高さ7mmに切削した後を表しています。  Aは切削する材料と全く同じ高さである必要があるので、材料の端材を使いました。  但しこれでは切削面とガイド板の距離が所定の距離にならないので、下駄(B)を12mm厚合板から切り出して貼り付けました。 Cがガイド板で特に寸法指定はありません。 結果として切削される材料とガイド板の距離は27mmになるようにしています。 材料幅が20mmですから電動トリマーの軸中心と台座端までの距離45mm、そして6mmのストレートビットを使ったときに材料は幅5mm削り取られることになります。 無論これよりも太いビットを使ってもかまいませんが、ガイド板の位置はそれに連れて変更することになります。  例えば8mmのビットを使ったときには27mmとなっている所が28mmになるようにします。

大きな材料を加工する場合はここまでの考え方で切削には入れるのですが、切削される材料が台座の下に隠れてしまう今回のような場合にはこれでは使いものになりません。  というのはこの状態で切削すると上のほうで触れた切削時に電動トリマーは左へ進もうとする力の為に材料を右に押し出してしまい直線切削が出来ないからです。  図の中で薄緑色(E)にで示した部分が材料が押し出されないように押さえる板で、これは同時に前後方向にも勝手に動かないよう働きます。  この押さえは左右両端に付けますが左側を上から見た所が下のほうの図です。 黒丸で示したのはネジですがこの板の右上の欠き取り部分が材料をガイド板の方向に押し付けられるよう実際にはクランプ(灰色の部分)かハタ金で固定します。  注意としてはこのEはトリマービット先端に当らない厚みであることです。

この加工が済めばあとはA4サイズの額縁と全く同じ工程となりますので、それらの説明は省きます。

枠の寸法は350 x 345mmとしました。 この時枠の内寸は310 x 305mm、アルバムが落とし込まれる部分は320 x 315mmとなります。 縦と横が僅かに違いますが、手許にあるアルバム20枚ほどを実測しその中で一番大きい物でも入るようにした結果です。

ジグに被切削材料(矢印)を固定して切削の準備完了状態。 これは左側から見た所です。

それを上から見たところです。 Eが材料(矢印)を挟んだ上でハタ金で開かないよう固定していますので、切削中に材料が動いてしまうことはありません。 右側も同様な仕掛けで固定しています。

切削が終了した所です。 材料(矢印)の角が幅5mm、高さ7mmに渡って削り取られました。

シャクリ面加工が終わった1組の棒。 今回はこの後で45度切断をします。 (棒を切断する前の長い状態でシャクリ面加工をするのは難しいためです。)

A4サイズ額縁で説明した手順で枠の組立てが終わりました。 これは裏側の写真でよく見るとシャクリ加工部分が判ります。

裏側にアルバムはこのように落とし込まれます。 最も大きいアルバムに合わせて作っているので、隙間が大きくなる場合があります。

接着後12時間以上経ってから角を3mm切り落としました。 これは挿し込む薄板の接着面積増大と後でやるトリマー成形とのデザイン合わせが目的です。

溝彫りの即席ジグに額縁枠を固定しました。 このジグの構造の詳細はA4サイズ額縁の予備実験をご覧下さい。

深さ10mmの溝を彫り終わった額縁枠です。

その溝に幅10mm厚さ3mmのヒノキ棒を長さ30mmに切断して差込み接着しました。 この後12時間寝かせて完全硬化させてから次の作業に移ります。

接着したヒノキ棒の出っ張りを0.5mm前後残してノコギリで切断しました。

残る僅かな出っ張りを替刃式ヤスリで面一になるまで削ります。

更に角を替刃式ヤスリで丸くした後ボーズ面ビットを使って縁全体の角を丸く削りましたが、逆目による荒れが残っています。

それをペーパーで削り取り最後に#400ペーパーで表面をつるつるになるまで研磨しました。

以上で加工組立作業は終わりです。 このまま白木でも良いように思えますが、反りと汚れ防止のことを考えると塗装は不可欠です。



2006/05/12

塗装、そして完成

残る作業は塗装を施しトンボや額縁をぶら下げる金具を取り付ければ終了です。 通常の額縁と違ってガラス板、マット、押さえの裏板がありません。 塗装については他のテーマで何度も過程をお見せしているので今回は省きますが、油性ウレタンニスのエボニーに例によって薄め液を20%程加えたものを3回塗り、最後に油性ウレタンニス艶消しを1回塗っています。

LPアルバムは額縁の各辺の中央に固定したトンボ4個で支えるだけですが、LPアルバムのサイズは冒頭に述べたようにまちまちであり、その中で一番大きく厚みのあるものに合わせていますから、ものによっては隙間がかなり出来てしまいます。 その隙間は割り箸おったものや楊枝を挟んで調整するしかありません。  市販品でそのようなことをやったら商品価値として認めてもらえないでしょうし、依頼された方が言っていた、「引き受けようにもどの大きさにすれば良いか判らない!」と業者が話していた。 というのが良く判ります。

出来上がった額縁は早速飾ってみました。 余り大きくないので3枚並べてみた所なかなかの雰囲気が出てきます。 ガラス板、マット、押さえ板がないため大変軽量で低荷重のフックで充分用が足ります。  その辺りは以下の写真をご覧下さい。

塗装が終わった額縁にLPアルバムを嵌め込み、4個のトンボで支えました。 大変シンプルな構造です。

トンボでLPアルバムが外れないよう抑えている部分のアップです。 この例では比較的隙間が小さいですが、アルバムによっては5mm位の隙間が出ることもあるので、割り箸や楊枝を使って埋める必要があります。

早速壁に掛けてみました。 なかなか見栄えがするインテリアになると思います。 色々なアルバムを入れ替えて変化を楽しむことが出来るでしょう。

小さい物ですからこのように並べて飾るのも楽しい使い方です。 壁面は石膏ボードですが重量が軽いので最も低荷重のピンでぶら下げることが出来、壁面を傷つけることもありません。

----- 完 -----


 
  
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