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特殊サイズの額
   
2002/04/11

構 想

私と家内の共通の趣味として絵画の鑑賞があります。 とは言っても決してアカデミックな感性を有しているわけではなく、印象派を中心とした判り易い絵を楽しんでいます。 その為海外を含む美術館を数回訪れていますが、その度に衝動買いで買った複製のポスターが随分溜まってしまいました。 これを額縁に入れれば良いのですが、絵のサイズがまちまちであり夫々を特注しなければ見栄えのする収まり方をしません。 ところが額を特注するとなると1万円を超える出費となり複製のポスターに対しては如何にも大げさ過ぎます。

そこで作ればいいやと高をくくっていたのですがこれが決して容易ではありません。 今まで作ってきた作品とは全く違った切り口の難しさがあります。 正直言って材料が手許に届いたのですがこれにも問題があり、このテーマは最後まで気を許せない感じがしています。

それらの問題とは、

1.額を作る材料
  断面が長方形のものでは如何にも無骨で味気なさそうですから、少しでもそれらしい加工がされてるものが欲しいのですが、
  何処を探しても「これが額用の材料です!」という物は販売されていません。 そりゃあそうです。 額縁のメーカーはムク材
  を自前で加工して額縁に仕上げている筈ですし、そんな材料だけを販売したって割には合いません。  

  それじゃ自分でムクの木材から加工すればいいじゃないかと思いつきますが、ルーターと特殊なルータービットがなければ加工
  できません。 そんなお金もないので1年ほど色々思案した結果、これならいけそうだ!というものが見つかりました。 
  何の事はない建材のひとつで周り縁とか押し縁とか言う物が使えそうだと気がつきました。 しかる高級な邸宅であれば使って
  いる材料ですが、我々庶民の家の建築では先ず使われることのない、ムク材をルーターで加工したやつです。

  材木店でカタログを見せてもらい色々想像しながら4点ほど選びました。 何れも長さが4mありますので、計算上は1本で約
  1m四方の額が作れる事になります。 
  価格は太さとルーター加工の複雑さで大きな開きがありますが、平均価格で1本4000円でした。 これは大変高価ですが特注
  するよりはましと考え発注しました。

 配達された現物を見て、よしよしこれならいけそうだと嬉しくなったのもつかの間とんでもない事を発見し
 ました。 なんと反りがかなりあるのです。 クレームというつもりはなかったのですが材木店に反りの事
 について尋ねた所、「確かに反りは出ているが、本来の使用目的からするとこの程度の反りは取
 りつけ時に補正できてしまうので、問屋に交換を依頼するのは難しい。」
 との説明。 
 そりゃあそうです。 だって反っているとは言っても4mの長さで数mmですから。 周り縁に使うのであれ
 ば、45cm間隔くらい毎に隠し釘で木工ボンド併用で固定するはずですので問題になる筈がないのです。
 「返品してもいいですよ。」とも言われましたが、ここはひとつチャレンジと腹を決めました。 
  しかしこの問題は後まで尾を引きそうです。 額の材料が反った場合にはそれを補正する方法が先ずないといって良いくらいの
  構造ですので、皆さんが実施する場合にはこの点をよく考えた材料選びが必要になると思います。 特にムク材は選定が難し
  いでしょう。

2.額の仕上げをどうするか?
  折角の節もないムク材ですからその木目を生かさない手はありません。 従ってニスで仕上げるのがベストです。 しかし着色
  には若干の問題があります。 何かというとポピュラーな着色剤はいかにも木材の着色剤とした茶系の物が多いからで、絵に
  よっては灰色やブルー系や赤系のほうが合うかもしれません。 

 この問題は既にお話してきた、和信ペイントのポアステインで解決できます。 白、青灰色などが茶系
 共々候補に上がり、着色の実験をしてみて巧く行けそうな事が判りました。 ということで額の色につい
 ては解決しました。
 またニスは艶が押さえられた方が良いのではという事で、お馴染みの1液性ウレタン速乾ニスの半艶の
 物を実験し採用する事にします。 これは艶ありと異なりニスの溶液は白っぽく濁っていますが、乾燥す
 ると透明になります。 また1度塗りでは全くといって良いほど艶がありませんが、ペーパー掛けをした後
 の2回目の塗装でしっとりとした艶が出てきます。 これで仕上げの予備実験は巧く行きました。

3.ガラスの問題
  これも悩みの多い材料でまた高価です。 合板などと同じように板取が価格に相当影響しますがだからといって板取り優先で
  額を作るわけには行きません。 アクリル板等プラスチックの採用も含め検討中であり未だに結論が出ておりません。
  どちらを採用するにせよ3mm厚の物を使うことで検討を進めています。

4.額の組立(継ぎ方)の問題
  細い板材を四角に継いで組立りゃいいのさ! と簡単に考えていましたが、事はそう簡単ではなさそうです。 実際の額縁を
  色々調べてみると継ぎ方にはかなりの種類がありどの方法が良いのか判断に苦慮します。 無論プロがやる方法をそのまま
  真似るのはかなりの失敗のリスクを負う事になりそうです。 これに付いてもまだ正直言って思案中です。

ということで、非常に歯切れの悪いスタートになっており先が思いやられます。 トントン拍子には行きそうもありません。



2002/05/02

45度切断ジグ


問題が沢山ある中で上では述べなかったものの額縁のフレームの角を45度に切断するのも難題のひとつです。 勿論押しノコとかスライドノコと言われるような電動ノコ等、金に糸目をつけなければ簡単に正確な45度切断は可能ですが、私の趣旨には反します。 

市販品で45度を切断する安価なジグはノコギリのガイドとなるような切れ込みが入った物が1000円以下で入手可能ですが、幾つかの理由で満足できない為自作する事にしました。 作り方の詳細はこちらからご覧下さい。

 完成したジグを早速試してみました。 切断誤差は許容内に入っていると思われます。 ところが直角接
 合ジグに切断した材料を取りつけた所、隙間が斜めに空いてしまいます。 曲尺で調べた所、直角接合
 ジグが直角に材料をクランプ出来ていないという事が判りました。 同じ物を既に4個買ってしまいました
 が、購入後1ヶ月も経っているので返品してもらえそうにありません。 \800.-程で入手した物で安価な
 為しめしめと思っていたのですが、とんだ落とし穴がありました。 
 しかたなくビニールテープを貼って突合せの角度を調整する事にしましたが3枚重ねで丁度良いという大き
 な誤差である事が判りました。  恒久的にはアルミのフレームを削ってしまう予定ですが、皆さんも十分ご注意を。 しかしメーカーも販売店もいいかげんなものです。 安けりゃ良いというはずはないのですが。


額縁角の接合方法

色々の接合法があるのですが、突き合わせ面を接着剤で接合する方法に頼るのは密着度に問題が残るので、波釘と薄板の裏打ちを組合わせる事にしました。 波釘は個室1の収納家具の製作時に間違って切断してしまった板材の接合に使ってみましたが、想像以上に結果が良かったので採用する事にしました。 特に波釘の打ち込みにしたがって突合せの隙間がなくなるような構造になっていますので、この面でも好都合です。 但し波釘を打った面はお世辞にも綺麗とは言いがたいので、補強を兼ねた裏板を接着して隠すことにします。

フレームの断面の構造は額縁断面図に示した2種類で考えますが、使用するガラスやアクリル板の厚み、額縁内の厚紙フレーム、押さえ板の厚みにより額縁に貼るフレーム裏板の厚みは変わりますので、更なる検討が必要です。



2002/05/09
製作開始


材料が決して安くないため事前の検討に時間を掛けてしまいましたが、いよいよ製作を開始しました。 今回作るのは全部で7個ですが、サイズ的には4種類としています。 絵の部分の大きさはまちまちですが周りの縁取りをそれぞれの平均的な値にする事により、額の内寸を統一するようにしたわけです。 但し見栄えを良くする為これら縁取りの部分はボール紙を切り抜いたマットで覆う事を考えています。

フレームのアスペクトレシオは正方形から長方形にかけて、1.001.191.241.66となりましたが、これらのうち1.191.24は写真プリントの全紙(1.23)四つ切(1.20)六つ切り(1.24)に近いので写真用にも使えると思います。 
詳しくは以下の一覧を参照下さい。

絵の名称 絵の大きさ フレーム内寸 ガラス板 フレーム外寸 フレーム幅
アスペクト比 アスペクト比
  モネ ひなげし 655 500 1.31 720 580 1.24 728 588 800 660 40
  モネ ゴンドラ 624 500 1.25 720 580 1.24 728 588 800 660 40
  モネ 日の出 644 500 1.29 720 580 1.24 728 588 800 660 40
  ゴッホ 糸杉 639 500 1.28 720 580 1.24 728 588 800 660 40
  ロートレック 807 804 1.00 795 795 1.00 803 803 855 855 30
  S/F ポスター 710 380 1.87 830 500 1.66 838 508 880 550 25
  モネ ロンドン塔 256 226 1.13 356 300 1.19 364 308 416 360 30
  モネ ベニス 289 218 1.33 356 300 1.19 364 308 406 350 25
  セザンヌ 静物 261 224 1.25 356 300 1.19 364 308 406 350 25
  セザンヌ 田舎の家 283 222 1.27 356 300 1.19 364 308 406 350 25


 製作した45度切断ジグに材料を挟みガイド溝に沿って切断すれば良いのですが、切断面を綺麗にしたい
 のでゼットソー8寸目を使って切断しました。 ジグを使うのでいとも簡単に45度切断が可能ですが、
 ノコギリを引く時に横方向のブレがあると切断面が緩く湾曲しますので落ち着いて切ります。

 購入した材料は全て3640mmありそのままでは保管に困るので半分に切っておきましたが、最初に述べ
 た反りの問題で2本は使用に耐えませんでした。 それらは小さな額を作るしかなさそうなので、端材を含
 めて後日再検討する事にし上の表で青で示した分の切り出しを確保しました。

 次が接合ですが、前に述べた波釘で固定強化する方法はあきらめました。 何故かと言うと額の表面は
 平らでない為波釘を垂直に打ち込むのは殆ど不可能と判断した為です。 表面が平らでない事を考えつ
 かなかったお粗末ですが、結局木工ボンドを塗り直角接ぎのジグで固定し裏板で補強する方法をとること
 にします。 波釘を併用するのに比べれば接合強度は落ちますが、幸い45度切断の精度がかなり高く取
 れているので密着度が上がりますから、接合強度不充分にはならないだろうと期待しています。
 直角接合ジグの使い方は左の写真をクリック願います。


直角接合ジグは2個しか買いませんでしたので7個の額のフレームを組上げるには、ひとつの接合に2時間寝かせるとすると1フレーム辺り2回寝かせねばなりませんから、累計で7 x 2 x 2 = 28時間となりますが、仕事から戻った時に1回、2時間寝かせて寝る前に1回。というような方法でWeek dayでも1日に2回(4ヶ所)作業できます。 Week day 5日間で5枚のフレームの接合が終わるわけです。 残りを週末ということで楽に1週間で接合が終了しました。 無論接合ジグを追加すれば短縮できますが、そうでなくともコストパフォーマンスは良くないテーマですし直角接合ジグの使用頻度も低いので無駄な出費になると思い気長にやりました。

この接合時の注意点は、当然ながら正しく直角に接合される事とフレームの裏面が平面となるよう継がれる事です。 そうでないと補強板を貼った時や裏板をあてた時に捻じれや波を打つような致命的な問題が発生しますし最悪の場合には接合面が剥がれてしまいます。



2002/05/16
製作の続き


 ということで7個のフレームの材料切断と接合が終了しました。

 一方残った端材とかなり反った材料は反りが問題とならないよう考えながら小さな額を作れば良いと考え
 あれこれ工夫した結果、サイズはともかくとして5個の額縁が出来ました。 

 合計で12個となったわけでいささか多すぎますが、高価だった周り縁の材料を捨てるわけにも行きません
 ので、これらもおいおい使って行くことにしようと考えています。

 さて細かな構造が未決定だった裏の補強部分を最終案とせねばなりません。 腹をくくって決めた構造は
 左の図をクリックするとご覧になれます。

 基本構造は、裏から嵌め込むガラス板、マット、押さえ板の合計厚みの段差をつける事と角の補強を兼ね
 ます。 この裏板の厚みはガラス板厚3mm、紙マット厚2mm、絵やポスターの紙厚1mm、押さえ板厚
 3mmの合計9mmとしました。

 小さな額縁の場合2mm厚のガラス板を使うかもしれませんので、この場合には1mmの段差が裏板との
 間に生じます。 

 角の部分は9mm厚の2等辺直角3角形を貼って補強します。 市販品はこのような構造とはしていません
 が、十分な強度が取れると考えています。 更にこれら9mm厚シナ合板の裏板を囲むように4mm厚シナ
 合板を9mm幅に切断して周りに貼る事にしました。 額縁を横から見たときに合板の積層部分が見えて
 しまう為の処置です。

 これらの構造は極めて作業量が増え、精度の高い加工を要し、接着に要する時間を考慮すると膨
 大な時間が掛かります。 実際厚さ9mm、長さ910mm、幅16mmの板12枚、幅21mmの板11枚、幅
 31mmの板15枚、直角3角形の切り出し、4mm合板を幅9mmで切りだしてそれら全ての寸法出しカンナ
 掛けに殆ど2日を使い果たしてしまい、補強裏板の組立が終了したのはたった1個だけという有様です。

 ムク材の質感を大事にするためこだわった結果で、もっと要領よいやり方はあると思いますが今回はこの
 構造でやり遂げることにします。 多分12個のフレームの組立が全て終了するまでには後2週間は掛かるのではないかと推測しています。

上の写真をご覧になるとトントン拍子で進んでいるように思えますが、実際には12組中の1組だけ終了させ皆さんにお目に掛けたかった為写真に撮ったまでで、とんでもないスローペース。 正に忍の一字そのものです。



2002/05/30
ガラス板とマットの価格


枠の接合は2/3程度しか進んでおらず完成していませんが、ガラス板や紙マットの価格を調べました。 

まずガラス板ですが、3mm厚の場合838mm X 1702mmが定尺で価格は\8,000.-2mm厚は813mm X 914mmが定尺で\4,000.-とのことです。 
(以上の価格は近所のガラス屋さんで聞いた価格で、コネがあるわけではないため一般的な値と考えて良いと思います。) 

なんとまあ中途半端なサイズの定尺でしょう。 そうなっている理由も聞きませんでしたが、変わった世界もあるものです。

ところで一時は考えたアクリル板については、ガラスに比べて大変高いため採用をあきらめましたので報告も致しません。

一方紙マットですが、アクリル板よりも更に馬鹿馬鹿しい値段である事が判りました。 東京都内の価格が高い事で知られた某店だったのですがたまたま別件で立ち寄ったので、参考にと思いA1サイズでどのくらいの見積もりかと聞いた所、45度の角度で窓を切りぬく加工を入れて\3,200.-とのことです。 A2サイズは?と聞いたところこちらは\1,400.-との回答。 A1840mm X 594mmA2594mm X 420mmですから面積的には私が作ろうとしている大きい物に近しいわけです。

なんとまあ高い事!!と驚きましたが、こればかりは厚紙を買って自作というわけにもゆきませんので特注する以外に手がありません。
見積もりを聞いたところがまずかったという気もしますので、暫しインターネットで調査しまくろうと考えています。

いずれにせよ額縁の自作は余りコストメリットがないことがますます確認出来たという次第です。



2002/06/20
額縁のコーナー接合がうまく行かない理由の考察


額縁の組みたてはもうそろそろ終わるものの正直言って及第点がつくような結果には至っていません。 若干甘く見ても接合部に0.2-0.4mm位の隙間が出来てしまった物が30%あります。 そこで今後の為に何故そのような隙間が空いてしまうのか、反省を含めて考察する事にしました。 

 1.直角が出ない。

  額縁の材料を45度に切断しますが切断角度誤差があると、接合時に正しく直角に接ごうとする
  と図Aのように角が開いたり、Bのように内側に隙間が出来ます。 
  無論これらの隙間が出ないよう強引に接合すれば、角は直角にはなりませんから、Aのような
  誤差があるものを強引に隙間が出ないよう接合すると、額縁全体はタルのように周りが膨らん
  だ形となります。 Bの場合は逆に糸巻き状の変形を起こします。

  注意すべきことは接がれる2本を0.5度の切断誤差で切断しても継いだ後には合計1度の誤差
  となりますからかなりシビアに効いてくることです。

  私は切断ジグを自作しましたが、どうもノコギリの沿わせ方にブレがあったようで、最大1度程
  度の誤差を起こしていたような気がします。


 2.水平方向の直角切断誤差

  実はこの切断誤差は全く頭にありませんでした。 しかし分析すればするほどこの誤差は1.
  同様かそれ以上に重要な事が判ってきました。

  左の図C又はDのように接いだ部分を水平方向から見て発生する隙間が存在します。 
                      これはフレーム面に対し切断面が直角になっていない事を意味しています。 

  こうなった場合に強引に隙間が出ないよう接いで行ったらどうなるかと言うと、直角切断の誤差
  が一定しないとすると、額縁の捻じれとなって表れます。 

  フレームが捻じれてしまうと外観上みっともないだけでなく、それらに嵌め込むガラス板にも余
  計な力が加わり、破損しやすくなります。 

  これが起きる原因を考えましたが、切断ジグのガイド溝がそんなに狂っているとは思えないの
  に、結構誤差の大きなものが存在する事が判りました。

  様々な思考をめぐらせた結果はたと気がついたのは、切断ジグに材料を固定する際の固定位
  置です。 
  額縁裏面を切断ジグの底に密着させてネジで固定して切断したのですが、材料によっては片
  方の厚みが薄いためネジを締めたときに若干移動しフレーム裏面が切断ジグ底面から浮き上
  がったまま固定され、それに気付かず切断してしまった可能性が多いにありそうです。

  一寸考えただけでもこのフレーム切断は、45度切断と90度切断を方向違いで同時にやってい
  るわけですから、切断材料の位置が少し狂っただけでも直角出しは大きく狂ってしまいます。

  特に、あらかじめ念頭にないまま加工作業に入ったのでこの影響はかなり出ていると思われま
  す。

 3.材料自身の問題

  本稿の冒頭でも触れているように材料自身の問題も大きな接合誤差に繋がります。 特に今回は材料の反りと捻じれの両方の
  問題がありましたから、正確に切断しても、上記1.2.と似たような結果をもたらします。 

  無論捻じれや反りを矯正できれば問題ないのですが、現実にはその方法はかなり難しいと思われます。

以上が巧く接合できなかった原因として分析した結果で本来ならそれを検証すべく、追加して加工作業をしてみたいのですが残念ながら今回手配した材料は全て切断してしまっています。 

スライド丸ノコなどプロやホームセンター等で使用されているより精度が出せる機械と手加工との比較も含めて将来再チャレンジしたいと考えていますが、私の自作した切断ジグに問題があるとは思えません。 もしそれに問題があるとしたら、市販されている全ての手加工用切断ジグは使い物にならないと思います。



2003/02/27

不具合発生の思いもかけなかった理由

約8ヶ月ほったらかしにしてしまいましたが、家内からあれはいったいどうなるの?とのお言葉で久し振りに作業の続きに掛かりました。 とはいっても、これまでの間何もしていなかったわけではありません。 時々12個のフレームを引っ張り出しては眺めつすかめつし捻じれや反りの具合に変化がないかチェックしていました。 この間高湿度の季節と低湿度の季節を過ごしていますからそれら捻じれ反りの量の変化があるのではと考えていたわけです。  結論から言うと湿度の変化による大きな(少なくともガラスに悪い影響を与えるような)変化はないことは確認されました。 つまり材料はもう収縮することは殆どない状態に乾燥しているわけで、既に出ている反りや捻じれが拡大することも小さくなることもありません。

そこでこれら12個を再度チェックし許容値内の反りや捻じれに収まっているだろうというものと、このままでは使い物にならないだろうという物に分けました。 その結果OKとなった物は9個で残りは何らかの対策を講じるか、材料の捻じれがひどく捨てるしかないだろうと考えましたがまてよ?!とひとつのことに気が付きました。 ずっと上の方をご覧になると判るのですが、最初は7個の額縁が出来ればよい!と考えていましたが端材がもったいないと残りの材料で5個を追加製作しています。 もともとの7個分の材料を切り出す時に原材料の反りや捻じれに気づきそれらが少ない部分を選んで切り出していいます。 ということは余った材料で作った5台分の材料は反り捻じれが多いはずです。

そこでOKと判断した物のサイズを測ったところ当初考えた7個は総てその中に含まれ、駄目と判断した3個は総て端材で作ったものでした。 つまり私の加工・組立ての精度が低かったのが主原因ではなく、材料そのものの欠陥が完成した枠の捻じれ・反りの大きな原因であったことを意味しています。 何で今ごろ判ったの!!と言われそうですが、結果としてはそのようなことでお恥ずかしい限りです。 しかし当初予定していた7個分は問題ありませんから過去のことにこだわる事は止めて、残っていた組立てを一挙に完了しました。

かなり右往左往いたしましたが、額縁を作る上でのキーポイントがほぼ掴めたように思いますので、もう一度整理し皆さんが正しく製作する参考にしていただきたいと思います。

  1.使用材料の選択は材質が何かよりも充分乾燥していて反り・捻じれのないものを使うべき。
    (高級材を使っていても反り・捻じれがあるとものにならない。)

  2.45度切断時の角度の精度は極めて重要。
    (理想は角度切りの出来る丸ノコで切断だが手引きノコで切る場合でも角度切断ジグの使用は不可欠。)

  3.角の接合時の正確な直角出しにジグを使うべきだが、市販のジグには精度に疑問を生じる物がある。
    (近々にそのようなジグを試作しご紹介しようかと考えています。)

  4.今回考えた額縁の構造は組立ての手間と時間が掛かりすぎる。
    (木工ボンドによる接合だけで16工程もある。 1工程の乾燥時間に2時間としても延べ32時間は掛かりすぎでアマチュア的
     な方法とは言えもっと簡素化した接合法を工夫する余地がある。)




2003/04/10
着色と塗装

お彼岸が過ぎてやっと気候が良くなってきたので額の着色及び塗装に掛かりました。 着色については、緑系、灰色、濃い茶系、白のステインを用意し濃い茶と白を混ぜた色を含む計5色で今回は試しました。 ステインを塗る際これまでは刷毛を使うことが多かったのですが、極力木目を際立たせるためぼろきれに沁み込ませて擦りつける方法で今回はやっています。 特に白の場合刷毛で塗ったのでは白くなりすぎてしまい木目がかなり見えなくなります。

以下の一連の写真でそれらの結果をご覧下さい。 極力カラーバランスが合うように調整したので、同じ色のステインでも木材の違いで色が変わるのが確認できると思います。

ベッド横の収納棚の塗装も同時進行したため場所がなく、ベッドの上に新聞を広げて乾燥中

額の裏は全く無塗装です。
5種類の色のステイン着色とニス塗りが終了した大小9個の額。 鈍い光り方をする半艶ニスの具合が判るようこの写真のみストロボを使って撮影しました。

左の写真の額と右の写真の額は同じステインを使っていますが、木材の違いによる微妙な色の違いがあります。 右の額の材木はもともと黄味が強くステインが沁み込みにくいようです。 

こちらの2組も同様で右のほうが黄味が強くなっています。 木材の違いは上と全く同じです。

白のステインだけで着色した物で、長期間に渡り日焼けで黄色くなるのを防止する効果があります。

灰色という変わった色のステインを使いましたが、木材の黄味が若干透けてかなり微妙な色に仕上がりました。

冒頭のほうでも述べているように、ここで使ったニスは1液性ウレタンニスの「半艶速乾ドリーム」です。 久し振りに使った速乾ドリームですが、乾燥が速く作業性が極めてよく、1日で総ての2回塗りが終了しました。 また刷毛目が全く残らず塗膜も非常に丈夫で家庭用塗料とは大きく差がつきます。 唯一の欠点は極めて溶剤の臭いがきつく窓を完全に開け放って作業しないと間違いなく酔っ払います。 そのために暖かくなるのを待っていたわけですが。

さて残る作業は裏板の切り出し、マットとガラスの手配ですが、ずーっと悩んでいた特注マットの価格の高さの解決策として紙マットの替わりに2.7mm厚のカラー合板から切り出すことにしました。

お世話になっている材木屋さんに聞いた所2.7mm 3x 6のカラー合板は\1200とのことですが、計算した所2枚で9個の額縁用に作れます。 特注紙マットが1枚\2000-\4000もするのに比べたら極めて安く上がります。 カラー合板としたのは普通のラワン合板の表面が深い木目でざらざらなのに対しプラスチックをラミネートしてあるので平らです。 白の物を手配し好みの色につや消し水性塗料で塗ることにしました。

ガラスについては発注量を多くして板取を良くする効果も狙いベッド横収納棚でつかったガラスと一緒に発注しました。
合計金額で\28,000で個々の単価は不明ですが、坪単価(ガラスで言う坪とは1尺四方で約30cmx30cmです。)\500とのことで、さる有名なD.I.Y.ショップでは坪単価\1,200でした。 特にコネがあるわけでもなく近所のガラスやさんでしたが、消費者は賢くならなければいけませんね。



2003/04/17
マットの加工と最終組立

冒頭のほうで触れているようにA1サイズ(840 x 594mm)のマットは、\3,200.-と私からするととんでもない費用が掛かります。 長い間この問題に悩んできましたがコロンブスの卵というかベッド横の収納家具の背板を貼っているときに、アッ!これでいけるぞ!とカラー合板の流用に気が付きました。 前回お知らせしたとおり、3 x 62.7mmカラー合板が\1,200.-でこれから730 x 590mmのマットが3枚切り出せますから1枚\400.-で、何と1/8の費用です。 おまけにマットの窓をくりぬいた残りで小さな額用のマットが作れますから更にコストが下がることになります。

但し問題が幾つかあります。 第一は紙製のマットよりも厚くなってしまうことです。 調べた所一番薄いカラー合板は2.5mmとのことで(2.7mmが最も一般的)、これが見栄えにどう影響するかです。 結論から言うと厚みが増した分なんとなく重厚感が増すような気がします。 従ってこの点はマイナスの問題点にはなりえません。

 第二は色です。 マットを販売している店に行くと大変数多くの色があることに気づきます。 それと同等の
 色のカラー合板があるかというと、答えはノーです。 
 この問題の解決策としては、無光沢水性塗料(浴室用などとして売られている。)をカラー合板の表面に塗
 って対処できると思います。  販売されている色は淡いシャーベットトーンの色が多くそのままでも使える
 と思いますが、複数の塗料の混合は無論可能ですから、色の自由度はかなり高くなります。

 尚カラー合板の表面への水性塗料ののりはあまりよくないと想像されますが、最終的にはガラスで覆われるので問題ないと思います。  どうしても心配であればカラー合板の表面をあらかじめ#240程度のペーパーであらびさせてやればよいと思います。

ということで、この問題の解決策も出せました。(私の場合購入した淡いベージ系の色とシボ付きの小さなオレンジの点々の入ったカラー合板そのままで問題無しとし塗装はしていません。)

ところで板取りを色々工夫した結果、ベッド横の収納棚の背板の余りを使えばカラー合板1枚を購入すれば9個の額縁総てのマットを作れることが判りました。 これに3mm厚の3 x 6ラワン合板2枚を押さえ板用に手配しました。 9個分の総額がたった\2,400.-でした。

 ガラス板と同サイズにマット、押さえ板を切り出します。 その後マットの窓の部分を切り抜くのですが切り
 抜いたものは小さな額縁用のマットに流用しますので、抜き穴用ノコギリを使い貫通した切込みを6-8cm
 程度入れてからゼットソー8寸目で切り落としました。

 この抜き穴用ノコギリの切り幅は実測0.65mmで8寸目の公称切り幅は0.66mmですから旨い組み合わ
 せとなります。 ポピュラーなゼットソー265ですと切り幅が0.92mmありますので抜き穴用ノコギリの切り
 溝には旨く差し込めません。  この8寸目ゼットソーの使用は切断面が大変綺麗になることも含めて絶対にお勧めです。(ゼットソー265でスタートした私ですが現在では90%以上の切断を8寸目でやっています。)

窓穴を抜いた後はヤスリで切り口を仕上げますが、#150程度のサンドペーパーを木片に巻きつけたもので仕上げればよいと思います。

 私は作業性が良いためエヌティー(株)NTドレッサー中目ヤスリ目を使っており感じとしてはそれ
 ぞれ#60#120位で木口の仕上げには大変重宝しています。

 このマットの窓の断面は45度の傾きで切り抜いているケースが殆どですが、今回試しに通常の90度切断
 で組み上げてみた所殆ど遜色ないことが判りました。 こだわるのであれば45度の角度に削った上でその
 切り口を無光沢の塗料で塗りつぶせばよいと思います。45度に削ると板厚2.7mmの切り口幅は3.8mm
 に広がり塗装無しではラワン合板の見苦しい木口が気になるでしょう。)


 以上で加工は総て終わりで最終組立となります。
 押さえ板を固定するトンボ(形がトンボの羽に似ているからこう言うのでしょうか?)と、吊り金具を取り付け
 れば完成です。

 3mmのガラス板を使ったためか一番大きい855 x 855のものは約7.5kgとかなり重たくなりましたので、
 壁に取り付けるフックもそれなりに重量級の物とする必要がありました。 それ以外は5kg以下であり重量
 的な問題もなく、壁への取り付けは楽でした。


完成した額のいくつかを以下の写真でご覧下さい。
AVコーナーに飾った800 x 660mmの額で5kgの重量です。

寝室に飾った855 x 855mm 重量7.5kg マット無しの額縁。

上の物と同じサイズですが、額縁断面と色が違います。

左の額の左下のアップで、マットのカット面が見えます。

こちらはこの上と同じ断面で色違いの物です。

880 x 550mmと細長く幅の狭い枠。 このポスター専用。


最後にまとめとして額縁作りの勘所を整理しておきます。

  1.額縁となる素材を選ぶ際に反り捻じれがない充分に乾燥したものを使用すること。
    費用の目安としては4mの長さ1本が\4,000.-前後であり、これでA1サイズの大きな物1個が作れる。 A3であれば2個作
    れます。)

  2.ガラス板は2mmでも3mmでもコスト的に大きな開きはない。
    3mm厚で30 x 30cm四方のサイズが約\500.-が目安。(A1だと\4,000.-程度、A3だと\1,000強といったところです。)

  3.マットは絶対にカラー合板で作ることをお奨め。
    3 x 62.7mm厚で\1,200-\1,500で買えます。 (A1用で\600.-位ですが、抜いた端材でA3用が作れます。)

  4.加工・組立で一番大事なのは、正確な45度切断と直角を保った接合に尽きる。

因みにトンボや吊り金具などその他の部材を含む総材料費は、A1サイズで\9,000.-位、A3サイズで\4,300.-位ですが、それらを同時に作るとA3サイズは\4,000.-程度となります。
特注品の見積もりを取った際A1サイズで\13,000.-と言われましたので、自作によるコスト低減率は家具の製作ほど大きくないですが、それでも9個を特注するのに比べると数万円の節減にはなっています。

----- 完 -----


  
  
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