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ワインボトルホルダー
   
2002/12/05
製作構想

 もう5年も前になるでしょうか丁度今ごろの季節でしたが友人がある物を見せてくれ
 ました。 見た所はヒノキの棒で片方の端近くに斜めにあけた大きな穴が、反対側
 の端は斜めに切り落とされていました。

 何に使うのかピンとこなかった私は尋ねましたが、何とワインボトルのホルダーだと
 言うのです。 友人は目の前で実演してくれましたが、斜めに立つその棒が見事に
 ワインボトルを支えてくれます。 これは一種のノベルティーであり安定性を含む実
 用性は余り考えられないものの、意外性と一風変わったスタイルが気に入ってしま
 いましたがその後聞いた売値が何と\2,500.-と聞き全く興味を失いました。

 たかが約30cm程のヒノキの棒に斜めにあけた穴と斜めに切断しただけの代物に
 \2,500.-を払う価値は全く見出せなかったからです。
 いつかこれを作ってやるぞ!! との思いのみ残り今日にいたっています。

本テーマは「2002年の日曜大工プラン」にも入れておきましたが、もうすぐクリスマスが来ますので最適の季節到来と着手した次第です。

このワインボトルホルダーがちゃんと立つ理由は実に簡単な理屈で、

「物体を置こうとする面と物体の接触面の中を物体の重心からの沿直線が通れば物体は面の上に安定している。」

というものです。  これについてはこちらで詳しく触れているので、そちらも参照願いたいと思います。


設計詳細

設計と言っても斜めに切断したテーブルとの接触面を重心からの沿直線が通るように斜めに開けた穴との距離をうまく決定するだけです。

斜めの穴あけは容易ではありませんからカットアンドトライではかなり微妙な位置関係が見つかるとは思えません。 ワインボトルのサイズのばらつきはかなりありますし形状がかなり違う物もあるからです。  そこでボトルサイズと重心の位置の分析をした上で、多くのボトルに対応可能な数値を決定することにしました。

 ボトルサイズと重心位置がどの位ばらついているかを調べる為に、かなり最終的な使用状態に近い形で
 測定すべきだろうと考え、たまたま手に入った幅50mm厚さ29mmの杉の棒の端に直径32mmの穴を45
 度の角度であけました。

 これには32φのフォスナービットという斜め切断の出来る特殊なドリルと掘り込みストロークが80mm以上
 取れる大型ボール盤そして穴あけ時の材料固定ジグが必要であり、Vic's D.I.Y.が提唱する
 特殊な工具無しで実現可能に反してしまいますが、ある工場でボール盤をお借りして実現しました。
               (Vic's D.I.Y.的な解決策は来週触れる予定です。)

こうして穴あけをした棒を元に手元にあったワインボトル11本(内4本は飲んでしまったボトルに水を詰めたもの)を用意し幾つかの測定をしました。

何をどのように測定しどのような計算をしたかはワインボトル分析図と以下の写真をご覧下さい。

分析の為無作為に選んだ色んなサイズの11本のワインボトル。 コルク栓が飛び出ているのは空になったボトルに水を詰めたものです。

2mm角の棒の上にボトルをおき重心位置を見つけた上で、重心位置から底までの距離(A)を測定中。
棒の穴にボトルを挿し込みBDの値を測定中。

ボトルの首の太い部分。 この直径を計りHとします。 
またこの太い部分の下の端が穴にかかる最も手前の位置とします。

最も奥にボトルを挿し込んだ位置に付箋紙を貼ります。

最も手前の位置(首の太い部分が引っ掛かる位置)と付箋紙の間隔を測りIとします。

以上により穴の中心から表面は224mm、裏面は183mmの位置を結ぶ45度の線で切断すればよいことになります。 

(註:ここで測定したボトルはサンプリング数が少ないですから、更に多く調べると違った結果が出る可能性があります。)


切断には額縁製作で作った45度切断ジグを使いました。 注意としては切断面が正しく平面となることでかまぼこ状となりますと大変不安定になります。

早速ボトルを差込み試してみました。 以下の写真をご覧下さい。 尚季節柄軽い材料で出来たものを両面テープで貼り付け、クリスマスの飾り的な雰囲気を出してみました。

   

一番首の長いボトル(左側)と一番首の短いボトルで試しました。 無論両方とも安定に立ちます。


   

こちらは棒の頭も斜めに切断し軽く出来たサンタクロースをそこへ乗せてみました。


口で説明している間は全く信じていなかった家内も出来上がって吃驚。 折からクリスマスデコレーションを家内が施した所ですが、その仲間入りを果たすことが出来ました。



2002/12/12
前回の補足及びアマチュア的ワインホルダーの製作

前回の説明はかなりはしょり過ぎている部分がありましたのでその補足を始めに致します。
ワインボトルの重心の位置の分析では2つの仮定条件をつけて計算しています。分析図そのものも不十分でしたので修整しました。

はしょった過程条件
1.棒の傾きは45度になりますが、「棒に対して45度の傾斜でボトルは静止する。(つまりボトルは水平になる)」という条
  件をつけて計算しています。
  もしも棒の穴に全く隙間なくボトルの首が入ればボトルは水平になるわけですが、実際には若干ボトルの底の方が沈みます。
  そしてボトルの首が細ければ細いほどこの傾きは大きくなります。 

  重心位置分析ではボトルの底の延長が棒に接触する位置からDBを求めていますが、重心からの沿直線通過位置GG'
  ボトルが水平に静止しないと穴と反対側に計算値からずれてしまいます。
  ボトルの傾き加減でこのずれの量は変化しますが、数mm-10数mmとなります。

2.棒の質量を0として計算しています。
  ここでの分析上棒を通過する沿直線の位置計算はあくまでボトル単体の物であり、実際にはこれに棒の質量が加算された重心
  位置とせねばなりません。 しかしここでは棒の質量を0として無視して計算しました。  

  実際に質量を測ってみると、11本のワインボトルは1.2-1.6kgの質量となるのに対し棒の質量は約120gでした。 
  これらから重心位置の移動距離を計算すると約5mm-7mmですが、棒の長さ方向では7-10mmのずれとなります。
  この場合のずれは穴側となります。

以上2点によるずれは、ボトルの重量、傾き具合により変化します。 従ってこれらを正確に盛り込むとするとパラメーターが増えてしまい結構面倒なことになります。 ところでお気づきのように上記2点のずれの方向は反対であり相殺されて殆どの場合数mm以内の量に収まる可能性が大です。 この程度であれば計算値からのずれを無視してもボトルの前後位置の調整範囲に吸収できてしまうため実用上問題なかろうとの判断から分析の中には盛り込まなかった次第です。


安定して立たせる為にもっと大事なこと
上記の重心からの沿直線通過位置の分析ではしょったパラメーター以上に、このワインボトルホルダーを安定して立たせる為に大事なことがあります。 というか、はしょった条件など関係ないくらいの不安定さがこれから述べる点より発生するからです。

それは、「棒を正しく45度に切断すること。」と「切断面は完全な平面でなくてはならない。」の2点です。 45度の角度が1度ずれただけで重心からの沿直線通過位置は約3.5mmずれてしまいます。 更に切断面が平面でなく4隅が同時にテーブルに接触していないと沿直線が通過する安定範囲が大幅に狭くなってしまいます。 従って正確な角度と平面を保つ為、切断の際にはジグが絶対必要です。  切断の正確さのほうが前述のはしょった仮定条件よりもはるかに大事なエレメントであることをお忘れなく。


アマチュア的手法によるボトルホルダー

 「直径32mmの穴を45度の角度で30mmの板にあける。」というのが全ての鍵です。 
 結論を急ぐと30mmの板にそのような穴をいきなるあけるのは不可能!とあきらめ、「薄板に楕円
 の穴を板厚分ずつずらして所定枚数貼り合せる。」という方法をとりました。  (左の図をクリック)

 薄板はどんな物でも良いのですがここでは手持ちの5.5mmシナ合板を使いました。
 厚さ30mm以上となるようにするには6枚重ねればよいのですが、5枚で5.5 X 5 = 28mm強
 となる為、これで試してみました。(貼り合わせ時の隙間で若干厚くなる。)



39.8mmの長径(はしょって40mm)を板厚分(5.5mm)ずらしてあけて5枚貼りあわせた後階段状の段差を削って最終的な長径(45.3mm)とします。  

短径は30mmとしておき削って最終的に32mmにします。(いきなり32mmで書くと45.3mmの楕円よりも一部が大きくなる為)

ここから先、棒の加工が完成するまで写真で説明しようと10数枚も撮影したのですが、パソコンに転送する際のトラブルでファイルが壊れてしまい穴あけ加工が済んだところからしか写真をお見せできません。

先ずそれぞれの板にあける楕円状の穴の型紙を作ります。 楕円を書くのは面倒ですが例によってEXCELの絵描きツールで簡単に書けます。 私の使っているテンプレートは印刷すると1マス5mmの間隔となりますので、楕円書きツールで6マスと8マスの大きさになるよう書けばOKでこれに削った後のガイドラインとして6マスと9マスの楕円を片側が接触するよう配置しこれを印刷して合板に貼りジグソーで切り抜きます。 もし糸のこ盤があれば正確に且つ簡単に切り抜けますが、幅の狭い木工用の刃を使えばジグソーでも容易に切り抜けます。

穴を切り抜いた5枚の板を貼り合せますが、クランプで密着度を上げた上で2時間寝かせてから穴の中の階段状段差を丸木工ヤスリで削り断面が所定の長径45.3mmとなるよう削ります。 注意としてはワインボトルの首を挿し込んだ時ガタの少ない穴としたいため直径32mmとしているわけですから削りすぎないことです。 板材の角を落とすのは意外に簡単なので注意しましょう。

これが出来たら接合断面が平らになるようカンナやペーパーで削って成形しておきます。 そして最後に所定の位置(穴表面の中心から22cm)を45度に切断して出来上がりです。 

先週紹介した枯れた杉材とは違い密度が高いせいか合板を重ねて作った今回のホルダーは自重が大きい(120g → 150g)ので、ワインボトルとホルダー総合の重心位置は前方に若干移動している筈ですが、バランスが取れないトラブルは起きませんでした。

この点が心配であれば、若干長めに切り落としたうえでバランス状態を確認しながら5mm単位で切り落として調節という手も考えられると思います。 ここで5mm単位と申し上げたのは切り落とし間隔がこれより狭まると切り落とし部分が薄くなりすぎてノコギリの横滑りから切り口が平面にならなくなる可能性があるためです。

以下に転送トラブルの影響のなかった写真を掲げておきます。
Excelで書き印刷した型紙。 これを5.5.mmシナ合板に貼って切断します。

写真が消えてしまったため過程をお見せ出来ませんが、穴をあけてヤスリで削った結果このように成形しました。
同じく斜めから見た所。 貼り合わて出来た縞模様が美しいです。


前回紹介したボール盤で加工したものとの比較。 全く遜色無しです。 弱みは強いて言えば厚いムク材では出来ない点でしょうか

床がカーペットで不安定なのですが、今回作ったホルダーもちゃんと実用になります。

前作と共に並べました。 外観には好みの問題がありますが、実用上は同じ物です。
写真でもお判りのとおり好みの問題とは言え、今回のホルダーは薄板貼り合わせの縞模様が外観上の鍵です。 これを生かすのと丈夫さアップをかねてニスで塗装すると更に良くなると思います。

ということで2回にわたってご披露したワインボトルホルダー。 短時間の加工で終了しますので是非ともお試しください。



  
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