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物が倒れる理屈
 
2006/07/07 (以前D.I.Y.雑談に含まれていたものを再編集しました。)

こんなテーマが日曜大工やD.I.Y.に何故関係あるの? と疑問に思われるかもしれない。 しかしこれが意外に知っておくと役立つのである。 物が倒れる理屈を知っておくと、倒れにくいものを設計するのに大いに役立つ。 但しカットアンドトライで、設計すること無しにやるのであれば別であるが、カットアンドトライと言う方法は無駄が多く発生するので私は好まない。 

前置きはこの辺までにして、ここでひとつの状況を思い浮かべて欲しい。 例1は私の家で実際にあったことだが、あるとき家内曰く、この椅子は簡単にひっくり返るから嫌い。 と言うのである。 どのような状況でひっくり返るのか更に聞いた所、急いで座ろうとして椅子の先に腰掛けるとひっくり返るらしい。 それを聞いた時に私は椅子を買い換えねば駄目だなと直感した。 何故か? ヒントはその椅子が3本足にある。

 例2は、斜めに立つ1本足のワインホルダーで横から見ると左のようになって非常に不思
 議というか結構安定して立つのである。

 実用性というと若干首をかしげるが、意外性を感じさせるワインホルダーだ。 
 このワインホルダーをデパートのお酒売り場で見かけた時におっこれは面白い!と思った
 が、ひとつ2500円です。 というので馬鹿馬鹿しくなって買うのはやめた。 代わりに、
 そのうち作るぞ!!と原理を考えながら、構造をじっと観察し記憶にとどめた。 もっとも
 そのホルダーの材料が木曾ヒノキ!というのも、気に食わなかった理由かもしれない。
 吟醸酒ならいざ知らず、ワインと木曾ヒノキという組合わせがイマイチピンとこなかったの
 である。

 例を出すのはこの辺にして、倒れにくい椅子、ワインホルダーが何故倒れない?の答え
 をご披露する前に物体が安定して静止している条件に先に触れる。

物体が静止しているためには、

「物体の重心からの鉛直線が、物体が置かれている台との接触面か接触点を結んだ多角形の中を通過する状態。」 

となる。 えらく理屈っぽい難しそうな言いかたをしてる。 と毛嫌いする向きもあるかもしれないが、これが基本であり全ての場合に当てはまり、倒れない工夫をここから見出すことが可能である。 よって、暫しの間我慢して読み続けていただきたい。

 上記のことを図で説明してみよう。 
 物体の形(点線で書いてある)はどうでも良く、その重心が何処にあるか?
 が重要で、その重心をAとしよう。 そしてその物体が接触している面を青線
 で表した。 

 は、どちらも同じ形をした物体だが、理由はともかくとして重心の位置
 が図のように違うとする。  

 の場合には、重心からの鉛直線が曲線内を通過し、の場合には通過して
 いない。 

 このような場合に、は倒れないが、は倒れるのであり、上記の理屈っぽい
 表現を図で表すとこうなる。 この図ではこの物体は面で台に接触しているよ
 うに書かれているが、点接触でも構わない。 但し最低でも3点で接触しない
 とまずい(点と点を結んでも面が出来ないから)。 1点や2点で物を支えること
 が出来ないのはこの面が出来ないからに他ならない。 

従って例1の答えは、椅子の前の方に腰掛けたとき椅子と体を含む物体の重心の鉛直線が、キャスター3個で作られる3角形を通過しなかったから、椅子が倒れるということであり、私がピンときた解決策は、脚の数が5脚のものに替える事であった。

例2は、ホルダーとワインボトルを合計した重心の鉛直線が、斜めに立つホルダーの小さな長方形の接触面内を通過するので倒れない。 という事になる。 

 以上の理屈を更に応用して倒れにくくするにはどうするかを考えてみたい。
 答えを先に言ってしまうと、
 重心と接触面の最外周を結んだ線が作る頂角が大きく、重心からの鉛直線が接触面
 の中心を通るようにする。
ということになる。

 私が製作した回転式CDラックの台座は直径が360φの円形で、回転箱本体の高さは624mm
 ある。 均等にCDを入れれば回転する箱の中心に重心が出来るはずで、上から314mmの位
 置となる。それに円形台座の重心と合成され、上から320mm位にずれる。
 総高さが650mmであるので、下からは330mmの所に重心がある。 ということは重心と接
 触する円形台座がなす頂角は約59度が得られる。 若し最上段だけにCDを入れた時には、
 計算経過は省くが、頂角は約50度となり、私の経験上では45度以上の頂角であればかなり
 安定しているのでちょっと引っ掛けた程度では倒れないから、この回転式CDラックの安定性
 はかなり良いと言える。 

 従ってこの作品を参考に5段6段として収納枚数を増やす場合には、円形台座の直径も大きく
 しないと不安定となる可能性があるということを承知していただきたい。

 以上述べたような観点から日曜大工で使った物の安定性について設計時に事前検討すると
 良い。
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