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ノートブックPC用スピーカー
2010/09/24
構想
(註: 本テーマに関する全てのご質問にお答え致しません!)
昨年末に退院後、私は久々にノートブックPCを買い換えました。
現役時代にはノートブックPCは年がら年中出張で動き回っていた私にとって、現場からのコミュニケーションのツールとして不可欠な存在でした。 しかし家に居る時間が圧倒的に長い現在はノートブックの必要性は大幅に減少したため新たな購入は控えていました。
然しながらWiMAXと呼ばれるモバイル環境でインターネットにアクセス出来て運用コストがリーズナブルなサービスが始まり、運用可能エリアがどんどん広がったため、購入することにしました。 選択したPCはコンパクトながらフルの機能を有ししかも8時間近くも電池が持つもので、無線LANやWiMAXに標準で対応しております。
これを大変便利に使い出したのですが、どうにもならない問題がひとつだけあります。 それはポータブルであることや電池の寿命の問題から出てくる宿命と言うか、内蔵されたスピーカーからはモノーラルの極めてプアーな音しか出ないことです。 スピーカー端子
(イヤーフォーン端子と言ったほうが良いかな?)
に外部スピーカーを繋いでも、出力が低い事もあってかとても満足できません。 というかこのような目的で販売されているスピーカーはちょっぴり毛の生えた程度のもので、小さい事や格好だけに気を使った粗末な音質の物ばかりです。
こんなことから、
「入手可能な市販のパーツで可能な限りコンパクトで音の良いスピーカーを作ろう!」
という事になりました。 ただし一言お断りしておきますが、
「良いスピーカーを作る常道に従って作る!」
という方向性からかなり脱線しないとならないと考えています。 それは出来る限りコンパクトで!!という条件が極めて重くしかも優先条件になるめです。 ですから、
「ここは本当はこうあるべきだが、大きくなるからこうしておこう!」
という妥協が多々出てくるはずで、100%満足できる物は作れっこありませんが、
「市販のコンパクトスピーカーの何れよりも良い音がする!」
が製作目標になります。
それと充分にコンパクトで良い音がするスピーカーが一発で出来る保証はどこにもありません。 というか極めて無謀な発想としか言いようがないでしょう。 そこで2種類を製作し良い方を選択して或いはTime to Time、状況に応じて使い分ける!という進め方で行くことにします。 というのは、私の推測ですが2種類作れば間違いなく片方がよりコンパクトで運びやすくなりますが、音質は低域再生の点で劣るようになるからで、どちらが優れているという判断をしにくくなるからです。
スピーカーユニットの選択
スピーカーユニットの選択は音質のかなりの部分を決定付けてしまいます。 従って2種類のスピーカーもより音質を目指す方向のユニットとよりコンパクトさを目指すユニットを選ぶ事になります。 従ってその選択には慎重であるべきですが、だからと言って再生音を聴いて判断する事も出来ません。 スピーカーの性能の測定値を見て音の良し悪しを判断できませんが、低音の再生能力はおおよその判断が付きます。
(あくまで再生能力であり音が良いかどうかとは必ずしも一致しません。)
例えば大口径のユニットは低域の再生能力が高くなる傾向にあります。
共振周波数
(
fo
と言う。)
が低いものは低域再生能力が高いですし、
Qo
と呼ばれる数値が低い物は低域の制動が良く効きます。
振動系等価質量
(
Mo
)
と呼ばれる値も低域の再生能力に影響します。
非常に大事な要素としてスピーカーボックスサイズは出来るだけ小さくしないとなりませんが、これは低域の再生能力と完全に相反する要素ですから非常に悩ましいです。 理論的に適切なBOXの容量は再生する低音の周波数が低下するとその二乗に反比例して増加させないとなりません。 また前述のMoの数値も箱の大きさに影響し、この数値が小さくなると反比例して箱を大きくする必要が出てきます。 スピーカーユニットの口径が大きくなるとその二乗に比例して箱は大きくなります。
以上の観点から市販品の中でHiFi用途として設計された物で最も口径の小さい50mmと80mmを2種類のスピーカーとして決める事にします。 台湾のTangBand製が多く候補としてピックアップされていますが、短時間ながら好印象をもって聴いたことがあるのと50mmのユニットが沢山販売されている点にあります。
モデル名
メーカー
参考価格
低域共振周波数
(fo)
Qo
振動系等価質量
(Mo)
口径: 80mm
FE83En
Fostex
\2,755
165Hz
0.84
1.53g
W3-593SG
TangBand
\2,730
110Hz
0.64
1.97g
W3-1231SN
TangBand
\5,500
100Hz
0.36
2.5g
口径: 50mm
W2-800SL
TangBand
\2,580
160Hz
0.26
1g
W2-852SH
TangBand
\2,480
135Hz
0.36
0.85g
W2-803SM
TangBand
\2,480
160Hz
0.46
1g
口径80mmのユニットの選択
これまで随分使ってきた
Fostex
の
FE87
系の後継機と思われる
FE83En
はBOXを小さくすると低域再生能力が下がってしまいます。 一番下の
W3-1231SN
は実は衝動買いしたまま使っていないユニットです。
fo
や
Qo
の値が小さく
Mo
は大きいという、その昔はやったエアーサスペンションタイプのBOXに向きそうなユニットで、かなり使いこなしが難しそうなユニットですが、小さな箱で低音を再生する目的では有利な諸元です。 そこでこのユニットを使って再生特性のシミュレーションをしてみました。
これを1.5リットルのBOXに取り付けてポートの共振周波数を70Hzとしたところ、緩い傾斜で低域がだらだらと下がるシミュレーション結果を得ました。 このバスレフポートの共振周波数をスピーカーユニットのfoより大幅に下げるというやり方は極めて変則的です。 考え方としては位相反転型と密閉型の間にあると考えてよいと思います。 そして一般的には低域はだら下がりになって行きますのでそのままでは低域レベルは低過ぎますので電気的に補正します。
スピーカーユニットのfoは100Hzですがそれより30Hzも低い70Hzをバスレフポートの共振周波数にした結果です。 500Hz辺りからだらだらと低域端に向かって下がっていますが、80-300Hz辺りは傾斜が-6dB/Octになっているように見えます。 そこでターンオーバー周波数を200Hzにして傾斜を+6dB/Octとした低域ブースト回路を通した結果がピンクの線で、ご覧のように70Hz位までフラットになります。 以上はあくまでシミュレーションの結果ですが、かなり実用になりそうな感触があります。
口径50mmのユニットの選択
口径50mmのユニットの中には
W3-1231SN
のように特異なユニットはありませんが、
W2-852SH
のfoが低い点だけは気になっていました。 そこでメーカー発表のスペックを基にバスレフボックスのチューニングシミュレーションをしてみました。 50mmではスピーカーユニットのfoは80mmの時よりも高くなってしまうので(135-160Hz)、110Hzをチューニング周波数としています。 これで
W2-800SL
、
W2-852SH
、
W2-803SM
の3本を比較したところ興味ある違いを発見いたしました。
上の図で
Qo
の小さい
W2-800SL
は窪みとピークの差が
3.3dB
、
Qo
がそれより大きめの
W2-803SM
では
1.5dB
となっており
W2-852SH
はそれらの間になります。 どうやらQoの違いがここに表れているようです。 この窪みがどの程度音質に影響するかは判りませんが、中低音が痩せて聞こえる可能性は大きく電気的に補正するのはかなりやっかいになりますから、窪み 量が少ないに越した事はないと思われます。
そこで
W2-803SM
を選択する事にしますが、だら下がり特性を補正する回路を通過させた時の特性は以下のようになります。
かなり苦しい所ですが何とか80Hz辺りまでは再生できるかな?といったところです。 2本のスピーカーで2リットルの容積しかない箱で計算していますからそもそも大型スピーカーシステムとは較べるのは酷なのですが? 上に触れている電気的な補正というのは、ターンオーバー周波数を200Hzとして6dB/Oct.の傾斜で低域をブーストすることを指しています。 このブースト量を可変したりターンオーバー周波数を変更出来る方が良いのですが、必ずアンプに付属させる必要があります。
(トーンコントロール回路は好みで使いますが、低域補正回路は積極的に使いますので必需回路です。)
以下にそれぞれのユニットを使い低域補正を加えたシミュレーションの結果を示します。 何となく絶望的な違いですが実際の音ではどうなのでしょうか? また能率の違いが3-4dBありますので駆動するアンプの事も考えねばなりません。
本テーマの製作は非常に長い時間を要し長文になりますので、ここから先は別ページとなります。
口径80mmタイプの製作は
『ノートブック用スピーカー1』
として進めます。 製作の様子は
こちら
をご覧ください。
口径50mmタイプの製作は
『ノートブック用スピーカー2』
として進めます。 製作の様子は
こちら
をご覧ください。
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