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LEDの使い方 4
2008/02/01

電源あれこれ

ここまでの解説では使う電源は電池を想定し直列に繋ぐ本数で駆動電圧をコントロールするようなイメージで進めてきました。 しかし実際の局面では色々な電源が考えられます。 そこでそれらの長所、短所のあらましを解説してゆこうというのが本稿の目的です。

先ず我々の工作において考えられる電源について整理してみましょう。  簡単に長所・短所にも触れておきます。

名称 動作電圧 長所 短所
乾電池 1.0Vx使用本数 手軽で製作費用が安い。 使い捨て、大電流・高電圧用には向かない。
ニッカド・ニッケル水素電池 1.0Vx使用本数 電池の繰り返し利用、手軽で製作費用が安い。 高電圧用には向かない。
自動車の電池 12Vまたは24V 大電流が容易、電源のコスト負担が少ない。 電源電圧の変動が大きい、使用環境が厳しい。
AC100V 自由度は高い 安いランニングコスト、大電流も容易。 回路部品が多くなり制作費が上がる、設計が面倒な場合がある。

とまあ4種類が考えられるのですが、これで終わりでは何とも面白くありません。 実は上記の4タイプに電子回路を併用することによりそれぞれの場合の短所を補完し更に設計自由度を高める方法があります。


DC-DC-コンバーター

DC-DC-コンバーターと呼ばれる部材(ユニット)ですが、DCは直流を表しますので直流電圧を別な直流電圧に変換する(コンバーターは変換の意味。)装置です。  このDC-DCコンバーターについては実に様々な回路方式がありますが、その技術的な回路説明はここではしませんが何れも、

     入力: ある定められた電圧 x 入力電流 = 入力電力
     出力: ある定められた電圧 x 出力電流 = 出力電力


という関係があります。  殆どの場合入力電圧は幅をもっており、出力電圧が入力電圧よりも高い場合(アップコンバーター)と低い場合(ダウンコンバーター)の二通りがあります。 また出力電力は変換効率が100%というわけには行きませんから入力電力より低くなります。

 例えば左の写真はLEDリングライトに使用すべく購入したコーセル(株)製のSUW30512という
 DC-DCコンバーターで、入力4.5-9.0V、出力±12Vまたは+24V、出力電流は130mA取れます。
 大きさは24 x 15.1 x 6.5mm、重量は3gしかない大変コンパクトな物です。  また入出力ピンは
 2.54mm(1/10インチ)間隔なので、ご覧のように汎用穴あき基板に挿し込めるので実装に苦労
 することはありません。

 こういった入力電圧4.5-9.0Vタイプは乾電池・ニッケル水素電池を4-6本直列に使えますし、他に
 入力電圧9.0-18.0Vタイプもあり、こちらは自動車バッテリーに繋いで使えます。

右の図は24本のLEDでリングライトを製作しようと考えた駆動基本回路で、上の写真の
DC-DCコンバーターを規格内で最大限利用しています。

特筆すべきは、乾電池5本直列の入力電圧は最高8.0Vから5.0Vまで変化するのですが、
DC-DCコンバーターの出力電圧は安定化されていて、規格内のこの入力電圧範囲で
出力電圧は24V±5%を得られ抵抗でもLEDへかなり安定した電流が供給できます。

同じことを電池を24本直列にした電源で求めようとすると電池を大変多く必要とするだけで
なく、電圧の変化範囲が38.4-24.0Vと大幅なため、抵抗などでは電流の安定化は不可能
でしょう。 DC-DCコンバーターの変換効率が76%とのことで多少の損失はありますが、
トータルで考えると遥かにスマートで有用な駆動法だと思います。


スイッチング電源の利用

 これは上記の「AC100V」の分類に入ってしまいますが、DC-DCコンバーターと
 同様大変簡単に使えるテクニックです。

 AC100Vから何らかの直流電圧を得る方法として古くからトランスでAC100Vを
 低い交流電圧に変換してから整流器を通して直流化し、平滑回路を通過させ
 て直流電圧を得る方法が長年使われてきました。(左の図)

 しかしトランスと言う重量物を始め結構かさばり重くなることと電源回路の設計
 にノウハウが必要ですから簡単に作れないとか効率があまり良くないなどの問題があります。 但し現在は各種のスイッチング電源ユニットがありノイズを発生するなどの問題はあるものの、大変効率が良く必要な容量と出力電圧の物を選んだら後は入力と出力の結線(通常は4箇所)だけで終わりですから、電源回路を作る敷居はぐーっと低くなっています。

 更にスイッチングタイプのACアダプターの利用はコストパフォーマンスに優れ製作はさらに容易に
 なります。  但し物によっては粗悪なものも存在するようですから注意が必要です。
 (左は12V 1.8Aという規格になっており、UL規格も取得していますから安心して使えそうです。)
 大変小さなこれを前述のリングライトのAC駆動用として使うつもりでいます。

 これらスイッチング電源を使う最大のメリットは出力電圧が安定化されていることで、電源の電圧
 変化が大きい場合LEDを駆動するのはかなり厄介ですからこの点で非常にありがたいです。

 右はスイッチング電源を使った設計例ですが、電源は最大
で500mAまでの出力電流を得られますので、電源の容量を目いっぱい使うことを考えた場
合に6本のLEDと定電流ダイオードを直列に繋いだ物を合計25組の並列駆動が可能です。
(LED使用総量は150本になります。)  このスイッチング電源の効率を75%と考えますと、
150本のLEDを駆動した時の消費電力は約18W程度となり、ロスがなくて十分明るい照明
が実現できます。


定電流ダイオードの使用上の注意

 LEDを一定の電流で駆動するための定電流ダイオードの有用性は十分ご理解願えたと思います
 が、これを使う際の注意点に関して説明しておきます。

 理想的な定電流ダイオードはその両端にどのような電圧を掛けても一定の電流が得られもので
 すが、実状はそれと異なりある一定の電圧が両端に掛かった場合に所定の電流となります。
 左のグラフは石塚電子製の定電流ダイオードの両端電圧と流れる電流との関係を表したもので
 す。  ところで型番のL-2733は公称は30mAのものですが実際には27-33mAのばらつきがあ
 るようで型番はそれを表しているようです。
 これを見ると3種類の何れもが電圧値5-10Vの範囲ではほぼ公称の電流値になっていますが、
 その両側では規定の電流値より下がってしまいます。

この点が使用上十分注意しないとならない点であり、LEDを数本直列に繋ぎそれに定電流ダイオードを繋いで駆動する場合は、(電源電圧 - 5V)÷(LEDの順電圧)で求めた値の絶対値(小数点以下は切り捨て)が繋げるLEDの最大本数になります。

例を挙げると、電源電圧24VでVf 3.6VのLEDの場合には、(24 - 5)÷3.6 = 5.27777 で5本まで繋げることになります。

もうひとつ定電流ダイオードの最高電圧や最大損失にも注意しないとなりません。 Lシリーズの定電流ダイオードの場合前者は25-30V、後者は500mWとなっています。(最高電圧は電流値が異なると変化します。) 損失は定電流ダイオードを流れる電流と両端電圧の積で求められますから、500mWという上限の値は、20mAの場合25V、30mAの場合には16.7Vが定電流ダイオード両端に許される最大電圧と算出されます。

前述のDC-DCコンバーターやスイッチング電源を使った設計例で、定電流ダイオードの両端電圧を5V以上にしているのは、ここで述べた定電流ダイオードの癖を踏まえて、期待した電流値が確保できるようとの配慮によるものです。


シリーズレギュレーターICの使い方

 シリーズレギュレーターICは既に触れているように定電圧を得るための素子です。
 そしてその中の3端子レギュレーターと呼ばれるものは気楽に扱える素子です。
 その基本は左の図のようなもので、入力端子、出力端子、そしてGND(グラウンド又はア
 ース)
の3つの端子からなっているのでこの名称があります。
 これにある電圧を入力として加えると出力には設定された電圧が出てきます。 そしてそ
 の電圧は入力電圧の変化や主力電流の変化に対し極めて安定です。

 1例として3VのシリーズレギュレーターでTA48M03Fという東芝の製品があります。
 規格としては最大入力電圧29V、最大出力電流500mA、ドロップ電圧0.65V(500mA)、
許容損失1W(Ta 25℃) (TaはAmbient Temperatureを指し周囲温度の意味。)となっています。  ここでいう損失とはこのICの入出力間に掛かる電圧と流れる電流の積で、ドロップ電圧とは出力を安定化させるために必要な入出力間の最低電圧です。

これを使っての回路設計の考え方を右の図で解説します。
左上はこのICの最も基本的な使い方(出力電圧の安定化)です。 入力電圧が3.65Vから
29Vの間で出力電圧は3V一定となります。 最大出力電流は500mA取れるように思いま
すが、例えば入力電圧が5Vの時はICの入出力に2Vの電圧が掛かりますので、出力電流
は(1W ÷2V) = 0.5A(500mA)と最大定格まで得られますが、入力電圧が20Vの場合に
は17VがICの入出力に掛かりますので、出力電流は(1W ÷17V) = 0.059A(59mA)まで
しか取り出せなくなります。

その右側はICの出力に150Ωの抵抗を繋いだ時です。 出力電圧は常に3Vですから、
3V ÷150Ω = 0.02A(20mA)の電流が流れます。  注意点としては入力電圧が29Vにな
ると、(29V-3V) x 0.02A = 0.52W(520mW)とICでの損失がかなり増えて発熱しますから
放熱を考えないとなりません。

下段左側では更に回路素子(オレンジ色)を追加しました。  この時にこの素子には一定の20mAの電流が流れます。 
ところで入力電圧の範囲はどうなるでしょうか? それを考えるために回路の描き方を変形したのが下段右側です。
そしてここではオレンジ色の素子をLED7本の直列に置き換えました。  LED1本辺りの順電圧は仮に3.5Vとしていますので、7本では24.5Vになります。  そして赤線と赤文字で示した値が許容入力電圧になりますので、この回路の正常動作の入力電圧範囲は、28.15V(24.5 + 3 + 0.65)から53.5V(24.5 + 29)となります。  但し入力電圧が53.5Vになった場合にはICで発生する損失は、(53.5 - 24.5 - 3) x 0.02より520mWありますから、ICの放熱が必要になって来るでしょう。

以上は3VのレギュレーターICを使った場合でしたが、LEDの使い方1や2で紹介した
LM317という電圧可変型レギュレーターICを使うと出力電圧を1.25Vという小さな値を基準
に設定できます。

そしてレギュレーターICの出力電圧はこれで定電流回路を組む時には損失の一部となり
ますから、低いほど有利になります。 またLM317の最大入力電圧は40Vと高いので、か
なり広い電圧の範囲で正常動作するという利点もあります。

上の3VのレギュレーターICを使った場合と同じようにLED 7本を駆動する回路をLM317で
実現した時の計算をしてみると右図のようになります。  計算根拠は示しませんが、入力
電圧範囲がかなり広くなったことが判ります。


電源回路の基本は4分類とは言え、DC-DCコンバーター、スイッチング電源などを利用することで、4種類それぞれが持つ弱みなどを補い、より効率的なLEDの駆動方法が得られることがお判りいただけたかと思います。  但し「LEDの駆動は定電流で!」という基本原理に立ち戻ると、今回後半で触れた定電流ダイオードやシリーズレギュレーターを使った定電流回路の採用は、安定動作を重要視する場合、環境温度が大きく変化する場合などではどのタイプの電源であれ重要です。

  
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