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LEDの使い方 3
2008/01/25
LEDの特性について
前回までの説明ではLEDそのものの性質や癖のようなものには全く触れずに解説してきました。 しかしLEDを正しく使おうとした場合にはそれらについて考慮しないとならない場合も生じてきますので、ここでまとめて解説しておきます。
左の表は日亜科学工業製の
NSPW510CS
という5φの砲弾型白色LEDのメーカー発表の
データシートに載っているものです。
最初に見られる
「絶対最大定格」
はLEDを使う上で最大の動作条件を記載したもので、
順電流
(
If
)
はLEDに流せる順方向の電流、
許容損失
(Pd)
はLED内で許容される消費電
力値、
動作温度
(Topr)
はLEDの動作が許される温度範囲、
半田付け温度
(Tsld)
は半
田付けの最大温度とその許容時間を表しています。 その他の項目は我々の使用では
あまり問題にならないと思いますので割愛します。
最初の
順電流
(If)
はLEDに流せる最大値ですが、これを超えると寿命が大幅に短くなっ
たりLEDの破損に繋がります。 従って通常はこの値を動作電流として設計することはあ
りません。
許容損失
(Pd)
はLEDに掛かる順電圧に順電流を掛けたものと考えてよく、このLEDでは標準の順電圧が3.6Vですから、120mWというのは120mW÷3.6V=33mAの順電流が許容電流であることが導き出されます。 この値は絶対最大定格の順電流にリンクしているので通常は絶対最大定格順電流をまず気にすればよいでしょう。
動作温度
は理解しやすいでしょう。 LEDの使用環境によっては大事な数値となるかもしれません。 例えば炎天下に駐車した自動車の中はかなり温度が上昇するのが常なのでそのような例と言えます。
次の
初期電気/光学特性
ですが、ここで出てくる
順電圧
(Vf)
は標準的なLED両端に掛かる電圧で、指定された
順電流
(If)
時の値になっています」。 この場合の順電流は推奨する最大値であることが多いです。 尚順電圧の値はある幅を持って記載してあることが多い点に注意で、これはバラツキが大きいことを意味しています。
(現在販売されているLEDでは、赤、橙、緑のLEDでは
Vf
は比較的揃っているようですが、白色、青色のLEDでは
Vf
のバラツキがかなりあるようです。)
光度
は指定した順電流で得られる値であり単位の
mcd
はミリカンデラです。
我々がLEDを使う範囲で最も注目すべき点をこの表から読み取ると、
・ 標準順電流は
20
mA、最大順電流は
30
mAである。
・ 順電圧値は順電流
20
mAの時に
3.6
Vが標準だが最大で
4.0
Vになることもあり得る。
・ 半田付けは
265
℃
10
秒以内に済ませないとならない。
といったところとなります。 ここまでの規格が公表されていない場合もあり得ますが、
標準順電流
、
最大順電流
、
標準順電圧
の3つは最低でも必要な情報であり、これらが判らないと適切な設計や使い方が出来ないのは言うまでもありません。
更に
NSPW510CS
のデータシートには幾つかのグラフが掲載されており、上記の定格表
では判らない部分が理解できますので、それらのうち注目すべきものを掲載します。
一番目は順電圧-順電流特性で左の図のとおりで
すが、順電圧の僅かな変化で順電流がかなり変化
することが判ります。 これを元にLEDの使い方1で
解説した計算に修正を加えてみました。
(右の図)
また前述の通り順電圧にはバラツキがあるので公
称の順電圧
(Vf)
で計算しても実際には違った値と
なる可能性がありますので、正しく電流値を規定
したい時には、組み立て後に抵抗値を調整する必
要が生じます。
(これはLEDを使用する上での大
変重要な概念です。 これを省きたかったら十分に
安全を見た電流値で設計するしかありません。)
こちらのグラフは周囲温度と順電圧の関係を表したグラフです。 標準的な室温とされる
25℃で順電流20mA時に順電圧が約3.6Vになっています。 さてグラフから周囲温度が
40℃まで上昇すると約3.5Vに、60℃まで上昇すると順電圧は3.4Vに低下します。
これらの変化で実際にどうなるかを試算すると、右
の図のようになります。 結果としては、周囲温
度が上昇すると順電流は増大し下がると順電流は
減少するということです。
ここで注意すべきは順電流が増大するとLEDの自
己過熱による発熱量が増加しますからこれが周囲
温度上昇に繋がり → 順電流の上昇、と悪循環を
繰り返し熱暴走により破壊に至る可能性すらあると
いうことです。
(これに対する対策は後述します。)
次のグラフは順電流の変化に対する相対光度です。
標準順電流である20mA時の光度を1として電流を増減した時に光度がどのように変化す
るかを表しています。 注目すべきは電流が増大すると傾斜が寝てくる傾向で、これは
電流を増大してもそれに比例して光度が増大しないことを意味しています。
このグラフで一例を見ると、標準電流の2倍になる40mAを流しても光度は2倍にはならず
約1.7倍に留まっています。 また電流を半分の10mAに下げた時には光度は0.5強とな
り電流は半分になっても光度は半分以上に留まります。
このことは電流 → 光への変換効率が電流増大につれて下がってくることを意味してお
り、損失分は熱エネルギーになってまいります。 この意味でもむやみに駆動電流を上
げるメリットはないことが判りますし、パワーLEDなどと呼ばれるより電流を沢山流して光量
を稼ごうとするタイプは、同じ理屈で発熱という損失が増大し変換効率は低下します。
そしてその発熱がLED破壊に繋がるので冷却にかなり手間が掛かるという問題も含んで
います。 よって面積辺りの発光量を上げる必要がある場合を除いて、普通のLEDを多量
に使い電流を抑えながら使う方が変換効率の観点からは有利になります。
最後のグラフは指向特性です。 このグラフはLEDの軸上からなす角度
が変化した時に光度がどう変化するかを表しています。
元々のLEDは指向性は殆どありませんが、光の利用効率を上げるため
に凸レンズをLEDの前に置いて集光し光束を絞って明るさを高める工夫
をしています。
そしてこの照射角度は半値角といって光度が半分になる範囲を角度で
表します。 この例では光度が半分になる角度は軸上から25度離れ
た位置でそれが反対側にもありますので、照射角としては50度というこ
とになります。 尚光量の大きなLEDというのは必ずしも軸上の明るさ
の高いものとは限りません。 光量は軸上のみならず全方向に放射さ
れる光エネルギーの総量で決まりますから、軸上の明るさは左程なく
ても照射角度が広いために総光量の大きなものも存在します。
LEDの性質に最も適した駆動方法
(大変重要な問題です。)
メーカーが公表しているLEDの順電圧
(Vf)
や順電流
(If)
を元に設計しても実際には順電圧の製品間バラツキや温度による変化で安定した順電流を与えにくい問題が残ります。 これを完全にクリヤーするには抵抗で電流制限するのは難しく完全な定電流駆動をするしか手立てがありません。 そこでお奨めなのが定電流ダイオードやレギュレーターICを使った定電流駆動です。 一言で言ってしまうとこれらを採用するとLED順電圧のバラツキや順電圧の温度変化による変動に起因する順電流の不安定さは定電流回路が完全に吸収してしまい極めて安定した電流が流れます。
これに対し抵抗でLEDに流れる電流を制御する方法では順電圧のバラツキや温度変化による順電圧の変動に起因する順電流の変動を抑えることは難しいので、設計時の順電流を抑えた
(例えば20mAのところを17mAに制限する。)
設計としないとなりません。 その意味では、LEDの使い方 1やLEDの使い方 2で解説している計算はこれら順電圧に起因する問題を省いている略式計算であることを十分ご理解ください。
以上LEDの特異な性質をメーカーが公表しているデータシートを元に説明して参りました。 そして以上のような性質は同じ傾向にあるとは言え、数値的には個々のLEDで違ってきます。 従って使用予定のLEDのデータシートが入手できれば適切な使い方が可能になります。
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