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VICの居住空間論
 
2006/06/30(以前D.I.Y.雑談に含まれていたものを再編集しました。)

まえがき
私の日曜大工の主目的は作り付け大型収納家具を始めとした様々な家具だが、それらを作るようになる前に経験則からきた私の独断と偏見による居住空間論が根底にある。

私は一戸建てに住んでいるのだが最大の家族構成は6人(男3人女3人) + ワン?だった。 その個々の家族のプライバシーを守ろうとすると相当な床面積が必要になってしまう。 マンションなどでは相当高額なものでないと対応しきれない。 そこで一戸建ての方が設計自由度が取れるということになったが、ごく平均的なサラリーマンでは無理した所で購入できる土地の面積はたかがしれている。  そこで限られた土地面積=限られた床面積で最大限の空間を確保するにはどうしたら良いか考えてみた。 丁度30歳になりたてのことである。

その結果2つの条件を満たす必要があるとの結論に達した。 それらは、

    1.効率的で合理的な収納を考えて床面積を節減する。
    2.人間が狭さを感じないで暮らせる或いはコミュニケーションに問題を起こさない最少空間を考える。

であった。

前者は居住者の持っている物に合わせて最適化した収納部分を作ればよいわけだが、特注するか自作するかしか実現する方法は無く私の場合後者を選んで日曜大工に励んできた次第だ。

後者は単純に居住空間を小さくするのではなく窮屈さを感じない或いはコミュニケーションを阻害することのない範囲で如何に無駄な空間を排除するかがテーマで、ここで述べるテーマの根幹部分である。 そして経験則に基づいた居住空間論で、これまでの常識的な考え方を徹底的に排除しようとした。

その結果は、かなりいい線を言っている!!とひそかに自認しているので、皆さんの参考になればと思いご披露する次第。



1.コミュニケーションが発生する空間距離とそうでない空間距離

辞書でコミュニケーションを引いたら、「人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える身振り・表情・声などの手段によって行う。」と出てきたが、ここで言うコミュニケーションとはもっと広い概念をさす。

一言で言うと、

「あるものからの存在を知らしめようとするポジティブとネガティブな圧力(ストレス)で、あるものとは人や動物のみならず全ての物体が対象となる。」

従って身振り手振り、語らいなど無く無言であっても発生する。

何を言っているのやらさっぱり判らん!と言う方がおられると思うので、実例を示そう。

  ・電車に乗っている。 満員電車では無いが自分と他の人の距離はかなり近い。 隣にいる人が変な人でなくとも
   このような状態が続くとかなりのストレスが溜まってくる。
(ネガティブなコミュニケーション)

  ・同じく電車の中。 隣の人との距離をおいて座る人を時々見かける。 良くみると一人分以上の隙間を空けて座っ
   ている。 何故? 
(ネガティブなコミュニケーションを避けようとしている?!)

  ・広々とした原っぱに立っている。 気持ちが晴れ晴れとしていて非常に良い気分である。 (コミュニケーション無し)

  ・壁に密着するよう置かれたベッドで寝ると壁からの圧迫感を感じる。(物体からのネガティブコミュニケーション)

  ・後ろに何も無かったと思っていたのにたまたま振り返ったらあるものの存在に気がつきギョッとした。
    (予測しなかった急激なコミュニケーションが一瞬ポジティブかネガティブか判らない為に起きる驚愕)


 何となくお判り願えたであろうか。
 「人間は一人では生きてゆけない。 人という字は人と人が支えあっている状態を表
 している。」
などと言われる。 それに全く同感であるが私的に言い換えると、

 「人間が生きるためにはポジティブなコミュニケーションが必要であり、ネガティブコ
 ミュニケーションには拒否反応が伴う。」
 ということになる。 

 あるコミュニケーションがネガティブであるならそれはもはや所謂ストレスそのものなので
 あり長生きしたければ極力排除した方が良いに違いない。

 私は経験的に1坪空間がネガティブコミュニケーションによる問題が起きない最少空間で
 はないかと気がつき、それが実際にかなりうまく当てはまる事を確認している。

 1坪で判りにくければ半径1mで考えても良い。 たまたま1坪と言っているのは住空間を考
 えるのに便利なためであって、3.3m2ぴったりがどうのこうのというわけではないので、通
 常は半径1mの方が判りやすい。(面積で言うと3.14m2となる。)


 半径1m以内に他の人がいるとそれだけでコミュニケーション(スト
 レス)
の度合いがぐんと上がる。 

 この場合親しい人であればポジティブなコミュニケーションとなり、
 近くにいることを好ましく感じている。 
 恋人同士であればそのコミュニケーションをもっと欲しがるだろうか
 ら抱き合う状態が最高!なんていうことにもなる。 

 反対に半径1m以内に知ってはいるが好ましくない或いは関心の
 無い人や、全く知らない人が入ってきたとするとそれはネガティブ
 なコミュニケーション(ストレス)となる。
 このような場合には無意識に遠ざかりたいと願っているはずだ。
 そして1m以上離れるとコミュニケーションの度合いが薄れ安心す
 るのである。

 以上のことは物体との間にも同様に働く。 
 違う所は危害を加えられるかもしれない?という恐れの気持ちの
 発生量は少なく、圧迫感のみが発生する。 

人の場合でも体の大きさはコミュニケーションの大きさに影響するが、物体の場合には人以上に大きさの差があるのでたとえ距離が同一でも物体の大きさがコミュニケーション(ストレス)にも影響してくる度合いが大きい。(例えば高層ビルの横に立ったときのストレスは1m離れた程度では解消しない。)

上記の4例全てがこの1坪空間理論で説明がつくのがお分かりと思う。
唯一この理論が弱い所は何故1坪なのか?、或いは何故半径1mなのか?という部分を証明できていないことだ。 この値は経験的に出てきたものであり、良く当てはまると思うが確固たる裏づけが無い。 無論1坪や半径1mの内外で白黒のように状況が反転してしまうのではなく、ブロードな境界線がその辺りにあるということなのだが。


2.1坪空間論に基づいた間取りの考え方

熱烈な状態のカップルは別として普通の人間であれば仮に親しい間柄であっても長時間接近しすぎはお互いにストレスが溜まってくる。 そのボーダーラインが1坪(半径1m)なのだ。 無論物体であってもこの数値は当てはまる。 そこで具体的にどうすれば良いかを考えてみよう。

2−1.家庭団欒の場を持ちたい場合の配慮

 私の家ではセントラルヒーティングの関係でなくなってしまったが、お馴染みのコタツは家
 庭での団欒の場として最高の仕掛けだと空間論は導いてくれる。 何故ならば隣や向か
 いに座っている人と1m前後の距離しかなく、私の言うコミュニケーションが活発に生じるか
 ら自然に会話が起き易い環境になるからだ。

 洋式のダイニングルールでも大きすぎないテーブルを使えば同様だ。 何も団欒の場の
 為にわざわざ居間のソファーまで移動してさあお話しましょなんていう必要はないのだ。
 食事に引き続き茶の間・ダイニングテーブルを団欒の場とするのは自然だし、もっと評価
 を高めたほうが良い。 団欒の為には居間が必要なんて単純に考えないほうが良い。

 その居間という場所だが、一歩間違えると応接スペースのようになってしまう。  くつろげ
 るスタイルと言うのは決してソファーにきちんと座ることではない。 床の上にごろんと寝転
 がりたいこともあるだろうし、ソファーの上であぐらをかいた姿勢かもしれない。  その辺り
 の自由度と言うか臨機応変に好みに応じてリラックスした時間を過ごせる配慮が必要だ。

居間という所は上記よりは人と人との距離が広がり、且つひざを乗り出すようなこともない共通の話題に語らいが発生する所なのである。 そうでないとソファーとテーブルが飾りとして置かれた部屋或いは来客のための応接コーナーになりかねない。 

食事をする場所(ダイニングスペースか茶の間)とリビングスペース(リビングルーム)は壁で仕切られずにダイニングテーブルの自然な延長線となるほうが団欒の場を壊さないし、壁がないだけ建築費を下げられる。

 1坪理論的に団欒の空間を考えると、4人迄は正味スペー
 スが4.5畳あれば十分。 4人 x 1坪 = 8畳という計算は不
 要で約半分の値で十分。 互いに接近していることが重要
 なのである。
 一般的には家具調度が加算され6畳と言ったところか? 

 一方リビングスペースであれば、人と人の距離をもう少し
 離したほうがよいがそれでも1人辺り1坪を確保する必要は
 ない。(会話が弾むよう狭めであってもOKだが、ダイニング
 スペースよりは若干独立性を配慮したほうが良いと思う。)

 標準としては正味スペースが1人辺り1.5畳で考えればよ
 いだろう。 4人であれば6畳だが家具調度がこれに加算さ
 れるので、8-10畳程度になる。 これをダイニングスペース
 に加算すると14-16畳となるが、その間に仕切りが無けれ
 ばそれぞれを空間的にオーバーラップして使えるため2畳は
 減らしても狭くなく使える。 つまり最終的には仕切り無しで
 12-14畳が狭さを感ぜず住める広さになる。

 4人家族用のダイニング・リビングルームとして一般的な大
 きさからすると多少大き目かも知れなので一見贅沢にも思
 えるが実は後述する無駄なスペースが一般的にはある。


2−2.一過性色の強い場所は狭くても良い


 当たり前と言えばそれまでだが、通り過ぎるだけ或いは短時間しかいない場所は狭くても良い。 
 これらの場合窮屈な動作を要しないことが前提だが、納戸玄関廊下(幅)などがそれらだ。 

 納戸の場合通路幅は1人が荷物を持ってぎりぎり通れる60cm程度あれば十分(左図)で、空気
 の流通を考えた上で収納効率アップに専念するほうが良い。 

 廊下の場合にはすれ違うことがたまにあるから通常の3尺幅でよいが、廊下そのものは通路で
 あり無駄な空間とも言えるから長さを極力短くすることが重要だと思う。 
 (上の図は全く廊下を無くした間取りの例だが、これでプライバシーが損なわれることはない。)

 玄関の大きさは色々と論議が分かれるところかもしれない。 
 私は来客を見送るような場合を考えても土間と上がりかまちを含めて正味1坪あれば十分(下駄
 箱の占有スペースを加算すると3畳)
と考えている。  それでは見映えが悪いと4-4.5畳も使って
 いる例を見かけるが、一過性の場所であるのとそこに同時に存在する人間は気心の知れた間で
 あるから高いコミュニケーションを考慮する必要がない。(体同士がぶつかり合うのは問題だが)
 豪華であることを見せびらかしたいのな別だが大きいから住みやすいということは絶対にない。


2−3.狭いのが良いのかそれとも広いほうが?

 トイレのことに触れてみたい。 
 トイレの占有スペースは一般家庭ではほぼ1畳または0.75
 畳の専用スペースとなっている。(左図)

 しかしトイレというのは居室とはいえないものの数分間は
 滞在?する通過型の場所ではないスペースだ。
 従って圧迫を感じない空間のほうが良いと思うので、標準
 的なトイレの大きさ(幅)は私の考え方に大きく反する。

 ある時デパートのトイレとかホテルのトイレ等の寸法を測っ
 てみたことがあるが、想像以上に幅が大き目の場合が多
 いことに気が付いた。 

 それらに比較すると一般的なトイレの何と狭いことか。
 これに対する私の提案は2つある。





 第一は他の部屋と一緒にして窮屈感を無くす方法で、
 この場合洗面所といっしょにするのが極めて自然。 

 例えば左図のようにトイレと洗面所を仕切っている壁を取り
 除くだけで実現できてしまう。 こうすることにより建築費は
 下がる筈(壁がなくなることとトイレ専用の手洗い器が不要
 になる)だし、洗面所とトイレの暖房を床暖房とすると極め
 て快適になる。
 おまけにトイレ部分の奥行を45cm詰めて廊下側からアクセ
 スできる収納スペースも出来てしまう。
 空間の有効利用という点で遥かに優れているのだ。

 洗面所とトイレが一緒と言うレイアウトに抵抗感がある方が
 いるかもしれないが、欧米のホテル、一般家庭では殆どこ
 のようなレイアウトで更に風呂場も一緒になっており、慣れ
 の問題が多いのではなかろうか。
 (トイレのことを英語でバスルームとか、シャワールームと
 呼ぶが、これはそのようなトイレと一体になっている所から
 来ている。)


 第2は少々贅沢だ思うのだが、トイレの幅を4尺5寸(芯ゝ
 135cm)に拡大する方法や、仕切りを工夫し隣の収納部を
 兼ねた拡大する方法がある。(左図) 

 トイレはやっぱり独立していないと駄目と言う方に向くが建
 築面積はやや増大する可能性がある。 

 私の好みは明らかに前者であり、我が家のトイレは2ヶ所
 あるがいずれも洗面所と同居であり、2.5畳と2.75畳の1角
 にあり、同居している年寄りにも好評で快適空間のひとつ
 となっている。









2−4.子供部屋

家を改装・増築・立替えする理由の一つに、子供が大きくなったので生活の仕方が変わった!とか、子供が増えたので!とか言う子供の変化にかかわる理由が結構多い。 実際子供の年齢に応じて配慮すべきことはずいぶん違いしかも10年以内に確実に変化に対する対応を求められる。 従って改装・増築のきっかけとなりやすい。 そのようなことを念頭に入れ子供部屋を考えてみたい。

 まず必要な部屋の大きさだが高校生とか大学生という大人と同等の使い方をするものと仮定して
 みよう。 私の空間論からすると最小限の部屋のサイズは4.5畳となる。(左図参照)
 誤解なきよう念を押しておくが、この4.5畳に付属する押し入れ等はないということだ。 空間を有
 効利用するために4.5畳を川の字型に仕切って両端に収納部分とベッドを配した。

 収納部分は壁から壁にはめ込んだ作り付けで左端は机、真中は高さ75cmまでは奥行き60cm
 の収納スペース(整理ダンスとしても良い)、その上は奥行き25-30cmの本棚、右端は洋服ダン
 スを考えている。  ベッドは幅1000mm、長さ2000mm強で書いたが、この場合ベッドと収納家
 具間の距離は約1000mm近く残るはずなので歩くのに狭いということはない。 

 注目されたいのは入り口で真中に引き戸としてある。 これを端に寄せたり開き戸とすると、とた
 んに空間の利用効率は悪くなる。 最近の引き戸は開き戸と同等のプライバシーも保てるので見
 直したい建具だ。  収納量を確保しながら空間に影響しないようにするにはベッドの下を使う手
 が有効。  但し市販の収納付きベッドは使い勝手が良くないからマットレスだけ購入して自作し
 たほうがよい。 アイデアとしては「かつての傑作」を参考にしていただきたい。

これで残る空間はというとベッドの部分は高さが低く上部空間がかなり残るのでベッド部分のみ0.5の係数で計算すると、1.2坪の空間が残る。 狭いといえば狭いが窮屈でどうしようもないということは決してない。 このサイズを基本としてその子供の年齢がさかのぼった状態でどうするかを考えておけば、成長に合わせた合理的な子供部屋が設計可能である。

 仮に2人の子供がいると仮定してみよう。(今や2人の子供はマイナーだが)

 先ほどの理屈からするとそれら2人が大きくなって独立した部屋を必要とし
 てもそれぞれ4.5畳あればよい。 しかし同性であれば高校生になる前まで
 は一緒の部屋のほうが社会性を育てるためには絶対に良い。
 (兄弟げんかは社会性を育てる絶好の機会なのだ。兄弟げんかをするから
 別の部屋にするというのは間違っていると私は思う。)


 よって4.5畳を2倍とした9畳の長い2人の共同部屋を考える。
 相当期間の間一緒にこの部屋で遊ぶことが出来るだろうから(これも社会
 勉強)
なるべく大きな空間が遊びのスペースとして残るよう考えたのが左の
 図である。 2つのベッドは片方の半分がもう一方の上にL型に配置されて
 いる。

ポピュラーな2段ベッドは下に寝る子供にとって余りにも窮屈で圧迫感が高いので、空間利用効率を高めながら考えたベッドの構造である。 無論自作しなければならない。  こうした時この部屋の残る空間はなんと3坪にもなる。 ということは2人で遊ぶのに十分なスペースであり、窮屈感はおろか喧嘩などして離れていたい時にも十分な距離があき、具合の良い大きさになる。

収納については右下の間口半間に共用の洋服ダンスを、整理ダンスはベッドの下の引き出しまたは左端の一部を利用する。
その左端には2人分の学習コーナーを考えておく。  これで年上の子供が高校生になるまでは使えるだろうし、その後は上の図のように真中で仕切って引き戸を追加し4.5畳2つに模様替えすればよい。 若し2人の子供が異性であったら、女の子が中学生になるころまでに分離すればよいのではなかろうか?

以上の変化には改築とか増築の概念ではなく模様替えの感覚で変更できるし、2つ目の扉の取り付け以外は日曜大工で簡単に実現できる。(扉は引き戸だから最初から扉を2つ付けておいても良い)  2つに仕切るのに収納家具で仕切れば、将来子供が離れたときにその部分を壊せば大きなひとつの部屋として再利用できる。  ひとつだけ注意すべきはコンセント、電灯の配置、電灯のスイッチなどで、2つに分離することを想定して予め配線しておく事で、これだけを頼むとかなり割高になるし壁をはがさないとならないということにもなりかねない。

かくて2人用であれば9畳(4.5坪)で十分な子供部屋が確保できる。


 2−5.寝室

 ここでいう寝室は夫婦の寝るところであって1人の場合には基本は前述の4.5畳の部屋と
 いうことだ。
 ツインベッドを使うとして最低どの位の大きさがいるかというと結論は8畳だ。(左図参照) 
 入り口の位置は図のような位置が空間利用効率が非常に高い。
 間口2間奥行き600mmの収納家具(私が実際に作った例をこちらから)を設けても、ベッド
 と収納家具や壁までの距離は約800mmと決し狭い値ではない。

 さてベッドのスペースを0.5の係数で計算した空き空間は2坪強となりこれまた私の空間
 論での必要スペースは確保できている。

 極めて余談だが、夫婦のどちらかがよく寝返りを打ってもう一人は神経質などと言う場合
 にはダブルベッドを始めとする大きなベッドは安眠を妨げるからやめたほうが良い。
 2つのベッドを付けて並べたほうが寝返りの被害はずっと少ない。 ツインベッドの使用は
 場所を食いすぎるからとの意見もあるが、ご覧の通り8畳のスペースで達成できるのだ。



 大きさを10畳とした場合にはもうゆとり十分。 ちょっとしたライティングディスク、化粧台な
 どを置いても狭さを感じることはなくなる。

 また子供が産まれてしばらくの間はベビーベッドを横に置くなんていうことも楽勝である。
 更に8畳の時と異なり扉の取り付け位置の自由度もかなり増してくるしベッドとベッドを離
 して置けるようになるから、安眠妨害度もさらに低下する。


 以上は私の居住空間論を元に考えた各部屋の寸法や構造に関する例で、これ以外のス
 ペースも同様に考えられる。 それらの結果として一般的に良くある部屋の寸法より小さく
 なったものもあり逆に大きめになったものがあるが、基本的には無駄なスペースの排除に
 あるから総合的には床面積は小さくなってくる。

 但し個々の部屋だけの設計が上手くいっても全体が上手くまとまり住みやすくなければ何
 の意味もないので総合的に間取りを考えてみた例を紹介してみたい。

 仮定条件は夫婦と子供2人の4人家族としておき土地の形・大きさやエクステリア関連
 (庭、駐車場など)のことは考慮していない。



 小さい家で広く住む間取りの1例

 総合的に見ると建物の土地への投影部分の
 面積(この場合は1階の面積に等しい)は17
 坪なので、例えば建蔽率50%の土地の場合
 計算上は35坪あれば建てられる。
 決して大きな家ではない。

 無論土地の形や道路がどのように付いてい
 るのかによりこの間取りが使えない場合もあ
 るが、あくまで35坪の土地に建てられる小さ
 くて広く住める家の1例として見ていただきた
 い。

 ・総建築面積
  1階17坪、2階15坪であるから32坪という事
  になる。

 ・リビングダイニングスペース
  図中にダイニングスペースは3.75畳となっ
  ているが、ダイニングスペースが単独で存
  在するならこれは小さすぎる。

  しかしこのスペースは壁無しに10畳のリビ
  ングスペース及び高さが低いカウンターで
  仕切られた3.75畳の台所と繋がっているか
  ら、空間はもはや3.75畳ではない。
  リビングスペースと台所とを合計した17.5畳
  の空間の1角なのだ。

  4人家族なら十分過ぎる位の大きさであり、
  多少狭められる余地はある位だ。

 ・台所
  上でも触れたように台所に3.75畳のスペー
  スを取っている。 一般的なサイズは恐らく
  3畳程度であるのでやや広くなっている。 

  広くしたポイントは流し台壁面とカウンター
  背面との間が3畳の場合には170cmしか取
  れないのに対し45cm長くした点にある。
  これによりL型のシステムキッチンが使える
  ようになり、ワークスペースが大きくなった。

  またカウンターとの間が広くなったことによ
  り2人で作業しやすくなっているが4.5畳とし
  たときほど動線は長くなっていないから、
  家事作業上の効率がそこなわれることはな
  い。
  食器の収納スペースはダイニングテーブル
  との間に設置した高さ80cm程度のカウンタ
  ーの下と図には示していないが、天井に固定した吊り戸棚による。

・玄関/廊下
 玄関と廊下は狭くても良いとした2−2.で述べた通りの考え方で、極力減らす工夫をした。 この結果玄関の扉を開けるとリビ
 ングルームに入り通常ある廊下には繋がっていない。 というかリビングルームが1階の廊下としての機能を完全に吸収してい
 る。 従って1階における純然たる廊下は階段下の0.5畳しかない。  2階は子供部屋が横に長いこともあってさすがにそこまで
 廊下を節減できていないが、1・2階合計で3畳(1.5坪)しか廊下に食われていない。 小さい家で広く住む為のアイデアのひとつ
 なのだが、廊下の替わりになるリビングルームは共有スペースだからプライバシーが損なわれることはない。

 もうひとつこのような玄関は大きなメリットがある。 特に寒い冬にそのご利益を感じる筈だ。 というのは玄関内は玄関扉の隙
 間から侵入する外気でかなり寒くなるのが普通で玄関ホールから廊下や階段に繋がる一般的な間取りの考え方では、それら
 全体が冷え切ってしまう。 しかしこの間取りではリビングルームの扉を閉めれば冷気は遮断され家の中が寒くならない。

 実は私が今住んでいる家の玄関はこのようにリビングルームに直結しており、台所、トイレなどへの行き来に寒さを感じることは
 ない。  それに対し大型リフォームをしたときの仮住まい(よくある玄関と廊下、階段の直結スタイル)は、廊下、階段まで冷気
 が侵入しどうにも我慢ならなかった。 こういった点で省スペースだけでない理由でも絶対にお奨めの間取りだ。

・洗面所・トイレ・浴室
 完全に一体化し1階ではそれに洗濯機の設置を追加。  但しこうするとトイレや浴室の使用が重なることが生じるので2階にも
 トイレのみならず浴室をシャワールームに変えた形で設置した。  多分建築面積32坪の家では2階にトイレはあってもこのよう
 な洗面所、シャワー室まで設置されることは殆どないはずだが、これらの為に増えた面積は僅かで、小さい家に快適に住むとい
 う点で大きく貢献している。

・子供部屋・寝室
 2−4.で解説した通りの考え方の間取りであるので詳しくはそちらを読んで頂きたい。

・納戸
 32坪の家には配慮されない納戸が3畳の大きさで確保できている。 というか2箇所の子供部屋と寝室に普通なら付属するであ
 ろう押入れスペースをまとめてここへ持ってきたという考え方が出来るかもしれないが、このように納戸の形で収納するほうが絶
 対に効率的である。 

 子供部屋と寝室で使うふとんなどの寝具はこの中にまとめて収納する。 納戸の実例については納戸の詳細解説を参照された
 い。

・階段
 これまた32坪程度の家では見かけない配慮。  一般的には階段の占有面積を押さえるのが普通だが、無理して節減せずに
 傾斜部分が長めで傾斜が緩く斜め階段がない快適で安全になっている。 そして階段の占有面積が増えた分は階段下のスペ
 ースを収納場所として有効利用するという考え方だ。 また階段踊り場下は外部からアクセスする物置を作ることで更にスペー
 スの有効利用が可能だ。

・おこぼれ
 1階の左下に4.5畳の和室があるがこれはたまたまスペースが残ったために描いたものでスペアーの部屋として使える。
 例えばコタツでマージャンとか、来客が泊まる場所とかを想定すればよい。 意識的に作ったものではないからおこぼれと表現
 した。

如何であろうか? 小さな家で大きく住むという意味が判っていただけるとありがたい。 上記で述べた通常は配慮されないスペースやおこぼれを取り除くと理論的には3-4坪は減少させられるが、ただ単に狭く住むのでは意味がない。  私の空間論を展開するとこのようなアプローチで間取りを考えられる。 

ところで高温高湿の夏には風通しを良くすることでかなり体感上の暑苦しさを抑えられるが、上記間取りの洗面所・トイレ部分の入り口を使っていないときには開けっ放しとすることで、極めて風通しが良くなる。  トイレを開けっ放しとは何事ぞ!!と言うなかれ。 汲み取り式の所謂ボットン便所ならいざ知らず、洋式水洗トイレとなった今では、トイレットボール内の水が沢山溜まるタイプ(少々価格は高い)であれば、臭気の問題はかなり低くなる。

最後に一言お断りしておくが私は個人的に居住空間に興味を持ちながらも十分な予算が掛けられない環境で如何に快適に暮らすかを考えてきた過程で発見したことを紹介しているだけであり、建築設計の専門家ではないので上記間取りには建築設計上致命的な問題があるかもしれないし、私自身が家相学、風水などに全く興味がないのでそれらによる配慮は一切含まれていない。

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