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スライド蝶番使用の裏技
2005/09/16

mini-Shopで販売しているCR100シリーズスライド蝶番を使った扉の基本設計方法については、既にこちらで詳しく解説しています。 スライド蝶番は回転軸の特殊な構造と動き(移動)があるために、独特の使用上の注意があります。 また通常の蝶番と違って被せ量という概念があることから、使用難易度の高い材料と思われがちですが決してそのような事はありません。

ここではこれらスライド蝶番使用の応用編とも言うべき裏技について解説しようと思います。 以下に述べる事を理解するとスライド蝶番のことをもっと深く知ると同時に、なあーんだ!!そんなに難しい事じゃないじゃないか! となる方も多いのではないかと期待する次第です。 またここで述べていることの具体的な応用例として手持ちの全被せ蝶番を半被せ蝶番として使う実例をこちらで紹介していますので、併せてご覧いただければさらに理解が深まると思います。

それでは被せ量の異なるスライド蝶番4種類から話をスタートさせましょう。

手前側はmini-Shopで販売しているスライド蝶番で最も人気の高い全被せ蝶番、奥のほうは14mm半被せ蝶番です。 大変外観が似ていて、慣れないと間違えやすいです。

蝶番本体は全く同じ物ですが、台座に違いがあり、右側の14mm半被せの台座は本体が4mm高くなるよう、真中の鋳物で出来た部分が厚くなっています。

他の蝶番9mm半被せとインセット蝶番)も加え90度開いた状態にして並べました。 蝶番の全長は4種類とも同じですが、扉への取り付け部分の高さが違います。

先端側から見た左から全被せ蝶番、14mm半被せ蝶番、9mm半被せ蝶番、インセット蝶番で、全被せの扉に取り付ける面を基準にするとこれだけ高さに違いがあります。

 これらの違いが何を意味するかを更に詳しく説明しましょう。
 左の図はポピュラーな普通の蝶番と全被せスライド蝶番を使った際の扉の開き方の違いを表したもので
 す。

 普通の蝶番ですと扉を開いた時に蝶番取り付け部分が本体の左の面より外側に出っ張ります。 しかし
 スライド蝶番を使った場合扉を開いても蝶番取り付け部分が本体の左面から外側に出っ張りません。
 この為にこの左側にぴったりと何かを寄せてもそれに当たるような事はありません。

 このような動作をするからくりは普通の蝶番の回転軸は全く動かないのに対して、スライド蝶番の場合
 複雑な構造を使って回転軸が先ず手前に移動し、この図ですと更に右の方に移動し扉を右にスライドさ
 せます。 これがスライド蝶番の名前の由来で、最終的な回転軸の右への移動量は約19mmあります。



 これら軸の移動によって起きる使用可能なカブセ量と扉厚の関係について理解しないとなりません。
 左の図はその一例を表したもので、カブセ量と扉の厚みが変化した時に支障の出る組み合わせと支障
 の出ない組み合わせの一覧です。 私が家具の扉に良く使う18mm合板の場合、カブセ量が17mm
 と18mmの場合印で全く問題が起きないことを示していますが、19mm以上はXになっています。
 これは扉の角が開く時に本体に当たるか設計値どおりに開ききらなくなる事を意味しています。

蝶番取り付けの側板の厚みが18mm以下であれば、扉を閉めたときに完全に側板木口に扉が被りますから、全被せ蝶番として使えますが、扉の厚みが増すと22mm以上では完全に被せる事が問題を起こします。 また本体側板の厚みが増した場合には完全に被せる事が不可能になります。(例え全被せ蝶番を使っても!)

前者の扉厚の問題を回避するには、扉の周辺の厚みを問題が起きない厚み以内
に抑えれば解決できます。  右の写真はその一例で私がかつて依頼されて作っ
た扉ですが、12mm厚の合板に中央は半割の丸太を貼り付け、その両側に5.5mm合板を貼ることにより、周辺では18mmの厚みに抑えながら半割丸太部分は約60mmの厚みとしたものです。

 もしもこのような解決策ではなく
 より厚い扉としたい場合には、扉の
 開き角度がもっと大きい150度タイプ
 の蝶番を使う事により問題回避でき
 ますが、極めて複雑な構造のものと
 なるために蝶番のコストはかなりア
 ップしてしまいます。

 左はそのような例でアトムリビンテックのCR150シリーズ全被せ蝶番です。



私が家具を作る際に本体側板や扉厚を18mmとしているのは、CR100シリーズと言う廉価で信頼性と耐久性の高い蝶番が18mm厚に適しているというか、18mm厚を使用上の最適値として設計されているからに他なりません。

 さて以上の理由でもってCR100シリーズ全被せ蝶番は18mm以下の厚みの側板と扉に取り付
 けたときに全被せが可能になります。 側板の厚みがそれより厚い場合にはどうすればよいでし
 ょうか? その答えは左の図です。

 実はこの図の左側はプリンター置き台の左手前の断面です。 ワンバイフォーの柱の内側に固
 定した箱部分は厚みが12mmありますので、ワンバイフォー材と合わせた厚みは31mmもあります。 従って完全に被せるのは不可能で、被らない部分が約13mmもあります。 こんな場合に全被せとするには図の右のように、蝶番台座を固定する部分を12mm欠きとってやった後に蝶番を固定すれば、板厚は18mmとなります。 荒技に近い感じがしないではありませんが、こうすることにより全被せとなります。

加工は少々面倒ですが、こうしたときのメリットは内部の蝶番の出っ張りがなくなり使い易さが増加します。

 さて次は全被せ蝶番で半被せ蝶番やインセット蝶番として使う方法です。 CR100シリーズの
 蝶番は取り付けた後に前後、左右、上下の数mmの調整が可能です。 この機能を使って被せ量
 が調整できますが、調整範囲を超えるような場合にはどうしたら良いでしょうか?

 被せ量を大きくするには前述の方法を使いますが、少なくしたい場合には座金を取り付ける本体の間に下駄を挟む事により実現できます。 図中の真中は6mm被せとする方法を表しており、下駄の厚みを12mmにすれば右にそれだけ移動しますから被せ量が18mmであったものが、18-12=6mmとなります。 これを更に進めて19mmの下駄を挟むとインセット蝶番として使えるようになります。(図の右側)

CR100シリーズのラインアップの全被せ14mm半被せ9mm半被せ、そしてインセット蝶番とは、被せ量が全被せの18mmからそれぞれ4mm減少、9mm減少19mm減少させたもので、上の写真の違いはこんな所からきています。 大半の場合それらから適切なものを選んで使えば、ネジによる被せ量の調整により下駄を履かせなくても目的を達成できますが、蝶番を購入してしまった後で被せ量を変更する場合にこの理屈を使えば購入しなおさなくても済んでしまいます。

実はプリンター置き台の扉に使用する蝶番は14mm半被せを使い、調整ネジで12mm被せとするのが順当なのですが、手持ちの全被せ蝶番を使おうとしていますのでこのテクニックを使用しています。 18mm被せを12mm被せにするわけですから6mmの下駄をはかせればよいのですが、実際には5.5mmの合板を下駄として使い0.5mmの差は調整ネジで追い込む事になります。

以上の知識はスライド蝶番を使う裏技として覚えておくとよいですし、スライド蝶番を完全にしゃぶりつくす使い方です。



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