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実用型電子温度計
   
2011/04/08

構想

子供向けの製作テーマで電子温度計をご紹介しております。 動作上は全く問題ありませんが、実用品として使おうとなると別です。  そこで手軽につかえて物としての完成度の高い実用品の製作を紹介します。

どんなスタイルの設計をしようと所詮電気が必要という部分は避けられません。 そしてここで言う電気とは必要な電圧が低くて消費電流も少ないため電池を使う事になるでしょうし、電池を使うと言う事は電池の寿命のことを考えねばなりません。

上で紹介した温度計は実測してみると電池電圧が9Vの時に585μA = 0.000585Aの消費電流があります。 例によってパナソニックが公表しているアルカリ乾電池の定電流放電による電池寿命で調べてみると585μAは公表しているグラフ内にはありませんが、消費電流と寿命は反比例するとして考えると940時間という答えが出ます。 日にちにすると39日ということで1ヶ月強の寿命です。 これでは電池交換が頻繁になって面倒ですし電池代も無駄な気がします。 そこで消費電流低減を大きな目標にします。

目標の2番目は温度表示のために別な電圧計を使うのではなく専用のものにします。 そう出来て電池寿命が長くなれば室内の温度をチェックするために連続運転という使い方でも便利になります。

 温度表示に何を使うかですが一番の問題は購入価格でしょう。
 常識的にはアナログ/デジタル何れのメーターでも\3,000前後は覚悟
 しないとなりません。  しかしある販売店で100μAのアナログメータ
 ーを何と\1,000で販売しているのを発見しました。(左の写真)

 何故高感度電流計に興味を持ったかというと、高感度の電流計に抵
 抗を直列に繋いでカスタム電圧計を作る事があるからです。

 そこで\1,000という魅力的な価格につられてこの100μA電流計を表
 示計として使う事を前提に検討を進めました。

 測定レンジについて
 ここで試作する2種類の温度計は室内専用とします。
 我が家の室温は最も寒い時に最も寒い部屋でも気温が0℃以下にな
 ることはまずありませんから、0℃以下を測定できないLM35DZでも不
 都合はありません。

 最高測定温度は40℃もあれば充分ですが、製作を簡単にするためメーターの目盛りは既存の目盛りを使いたいので50℃にします。(この場合左上の写真に見える20406080100の数字を消して1020304050に置き換えます。 これで1目盛り1℃となり、0.5℃までの読み取りが容易になります。)


最も簡単な仕様の物

 左が回路図ですが、部品点数をこれより少なくする
 のは不可能です。  調整個所は5KΩのポテンショ
 メーターだけです。  まずLM35DZを外した状態で
 Out端子に0.5Vを加えて(正確な0.5Vである必要が
 あります。)
、メーターがフルスケールになるよう調
 整します。

 そしたらLM35DZを接続し、電源として単四4本を直
 列にした6Vを繋げばOKです。  これで電池の寿命
 が尽きるまで動作してくれます。

このポテンショメーターは5KΩの半固定抵抗ですが、最大値より若干下がった位置で0.5V時にフルスケールになります。
右の基板レイアウトはメーターの端子に基板の固定と結線を同時にするアイデアで、後述する2番目の物も同じ考え方です。

試作した基板。 既に電流計にネジ止めしてありますが、ご覧のように取り付けられる部品はたった2個です。

温度センサー(LM35DZ)は上の方に付いていますが、実際にはケースに埋め込まれ半分以上外に飛び出ます。

電源は単四4本直列を想定して、6Vを加えています。 現在の読みは37ですが、これはそれを半分にした18.5℃と読み取ります。 大変簡単に製作できますが、精度はキャリブレーション次第で±1℃を出せます。

この方法での最大のメリットは低消費電流です。 私が試作した物では6Vの電源電圧、温度18.5℃の環境で99μAの消費電流でした。 一挙に最初の試作品の消費電流の16.9%に下がったわけですが、ちょっぴり気になっていたことがあります。 それは電源電圧と温度変化に対する消費電流の変化です。

テストした結論をお話しすると電池電圧変化による消費電流の変化は殆どありません。 また3V近くまで電圧が下がっても動作はしています。 但し以上は室温18.5℃の時の話で試しにLM35DZを摘んで暖めると消費電流は増加します。 指で摘んで30℃強まで温度が上昇しましたので、そこから指を離して温度と消費電流を記録した所、30℃で128μA、25℃で115μA、20℃で102μAとなっています。

そんなことから年間平均気温を20℃と仮にすると平均消費電流は102mAで、計算上の電池寿命は何と223日(7.5ヶ月)となります。 また電源についてはセンサーICの動作電圧は4V〜30Vとなっていますが、これは測定全温度範囲を元に決められた値で、温度が低いと動作下限電圧は低くなる傾向があります。 スペックとして規定しているわけではありませんがメーカーは環境温度の変化による動作電圧下限のグラフを発表しておりそれによると、50℃では3.4V位が下限で、それ以下の温度では更に下がってきます。

これから考えると電池4本直列の終了電圧(3.6V)は合理的な値ですので、このモデルでは単四4本直列が最もお勧めの電源です。 その場合電池寿命は更に伸びて400日を越える計算になります。(実動試験で確認する必要ありですが?)  何れにせよこのモデルの場合には電源スイッチは不要でしょう。


機能を持った一段上の物

 電圧計としての内部抵抗(追加する抵抗と電流計の
 内部抵抗の合計)
は大きい方が測定精度が高くなる
 ので、5Vフルスケールの電圧計に変更します。
 (内部抵抗は5KΩから50kΩに増加します。)
 この為にLM35DZからの出力信号は上で解説した
 最初の試作品と同じく10倍してやります。 但しオペ
 アンプの消費電流を抑える必要がありますので、低
 消費電流に特化したオペアンプに変更します。
 ここでは単電源で動作しアンプが1つだけしか入って
 いないLMC6041INを使う事にしました。

 試作のバラック配線で動作確認した時の消費電流
は9Vの電源電圧、気温19度の環境で215μAでした。 最初の試作品の37%の消費電流と、
これもずいぶん低消費電流ですが、上の素うどんに較べると2倍以上の消費電流で、その
増加分はオペアンプで消費されていることになります。

この回路には調整個所が2ヶ所あります。 第一は200KΩのポテンショメータで、温度測定モードでオペアンプの3番端子(温度センサーの出力電圧)の電圧の10倍になるように調整します。 勘違いしないように補足すると目盛りは最終的にフルスケール5000mV(50℃)になります。  従ってオペアンプの3番端子が210mV(21℃)であった時には2100mVにセットするので、現在の目盛りでは42に針が来るようにしないとなりません。

これが終わったら次は表示モードを電池電圧にして100KΩのポテンショメータを調整します。 この場合はフルスケールが10Vになるようにしたいので、予め電池の電圧を測っておきメーターの表示がそうなるように調整すればよいです。 因みに電池電圧が9.2Vであったら、現在の目盛りでは92を指せばよいわけです。

計算上の電池寿命は106日と求められます。 約3.5ヶ月ということで、必要に応じて作動を停止できるようにスイッチを取り付けておき、常時作動(Ever ON)一時作動(Momentary ON)不作動(OFF)が選択出来る様にしておくことで、実運用上の電池寿命を延ばせるのでは?と考えています。 更にこのモデルでは電池の寿命を確認するため正確な電圧チェックが出来るようにします。

ここで使うトグルスイッチは少し特殊ですので触れておきます。 回路図中央上の物は、ON-OFF-(ON)と表記される構造で中央で停止しOFFになります。 (ON)はモメンタリーONのことで、こちら側に倒してONになりますが放せば中央に戻ります。 ONの表記はそちらに倒した場合はON状態を維持します。(Ever ON)  ここでは電源スイッチとして使っておりONは通常の電源ONで、(ON)は普段は中央(OFF)にセットしておき、温度を知りたい時だけに使います。

ここまで説明するともうひとつのスイッチの構造の意味はお分かりになるでしょう。 ON-(ON) ですが、中央でストップする事がなく触れていないときには常にONポジションにあります。 そして(ON)側にレバーを倒した時だけそちら側がONになり、離すと反対側がEver ON、と元通りになります。  ここではメーターのモードセレクターとして動作し、通常は温度表示で(ON)に倒した時だけ電池電圧表示に変わります。

基板に部品を固定してメーターの端子に固定し、動作上は完成した状態でテストしました。

基板上の配線が済んだ状態です。 温度センサーだけは離されて空中配線になっていますが、これは温度センサーだけはケースに埋め込まれるのを想定しているからです。 左の赤黒のワイヤーは006Pのコネクターへ、中央と左のワイヤーは2個のトグルスイッチへ配線されます。

電流計に2個のネジで固定しました。 左側のネジは+側で右のネジは−側です。 二つの青い部品は半固定抵抗(ポテンショメーター)でマイナスネジが見えますが、これを回して調整します。

バラック配線ながら動作だけは最終となりました。 現在の読みは33ですが、実際にはその半分の16.5℃ということになります。 センサーICの測定精度が±1.0℃ですから、0.5℃まで読み取れれば十分と言えます。




2011/04/15

実用品製作 2

簡単な工作ですが設計はきちっとやっておいた方がよろしい!ということで、2方向で進めました。  2方向というのは言うまでもなく2つ作った電気回路ベースですが、奇しくも結果は同じ外形サイズの、幅と奥行が60mm、高さが72mmです。 大きな違いは2個のスイッチが付くか付かないか、電池が006Pか単四4本か、ですから全く偶然としか言えません。

 左がシンプルなタイプで右が機能が追加されたものの構造図です。
 前述のように全く同サイズで、外観ですぐ判る違いは2個のトグルスイ
 ッチがあるかどうかです。
 どちらかというと理屈っぽい私はスイッチ2個が付いて電池の消耗状
 態が判ったり、電池寿命を延ばすON/OFFを自分の意思で選択できる
 機能追加型が好きですが、一般には何もいじる所がないシンプル型で
 必要にして充分だと思います。

 材料はこれから物色で厚さ3mmの板を主として考えていますが、材質
 が制限されてしまい多分アガチスか朴しかないと思われます。
 もっと白っぽい木であると着色で色々な色を楽しめるのですが、仕方な
 いでしょうか?

 構造的にはメーターの目盛り部分だけを見せて他は隠して出来るだけ
 無機質感を無くします。 温度センサーはこの図で赤くした部分で天板
 中央の後方に2/3位を埋め込んだ取り付け方とします。
構造上で一番異なる電池ホルダーは、006Pを使うタイプでは単純に電池にスナップを取り付けてすっぽり収まるスペースを確保するだけです。  単四を4本使うタイプでは市販の電池ホルダーを使うと占有スペースが大きくなるので電池ホルダーは自作します。 そして折角自作するのですから市販品の電池ホルダーにはない機構(電池を逆さに入れたら通電しない。)を追加してやろうと考えています。 (図面では良く判らないと思いますが?)



2011/04/22

目盛り板製作

ケースの製作の前にメーターの目盛り板を作りました。 正確には目盛りをスクラッチから描いたわけではないので、改造というほうが正しいでしょうがかなりうまく出来上がっていると思います。

製作方法は目盛り板に新たな目盛りを印刷した紙を貼るという手法です。 特に難しいことはありませんが、目盛り板をメーターから外す際と取り付ける際にデリケートな指針機構を痛めないよう慎重に作業を進める必要があります。 目盛りそのものは既に目盛り板に印刷されているものを使います。 その為に外した目盛り板をスキャナーでファイル化します。 そのファイルをドローイングソフトで開き20、40、60、80、100の数字を消して10、20、30、40、50の数字を描き込みます。 またThermometerやVIC's D.I.Y. の文字なども追加しました。

多機能版の電池チェックの目盛りはフルスケール10Vとして読むのですが、2系統の数字が入ると見た感じがごちゃごちゃになるので、赤、黄、緑の3色の帯で電圧を表現しています。 具体的には赤と黄の境は5.4V、黄と緑の境は6Vになります。 つまり針が緑ゾーンにあるなら電池はOKで、黄色ゾーンだと電池の寿命はもう僅か、赤ゾーンにあると電池交換が必要、というわけです。  以上はExcelのドローイング機能で基本的なレイアウトの作成や文字の書き込みをした上でPaint Shop Proに取り込みビット単位での編集・修正をしています。

出来上がった目盛り板をインクジェット用の薄い無光沢紙に印刷しそれを切って外した目盛り板の上に貼り付けますが、接着には接着剤ではなく両面接着テープを使っています。 その理由は接着剤を吸い込んだ紙は伸び縮みやぐちゃぐちゃに柔らかくなってしまい見栄えが悪くなったり目盛りが正確ではなくなる点にあります。

以下に作業の様子を写真でご覧頂きますが、私は2種類の目盛り板を同時に作っており、写真は2種類が入り混じっていますのでご了解ください。

目盛り板改造前の100μA電流計。 作業を簡単にするため目盛りはこのまま尊重して使います。

カバーを外すにはこの部分に細いマイナスドライバーを差込みこじ開けます。

カバーが外れました。 次に2本の目盛り板固定ネジを外して目盛り板を外します。 針を引っ掛けて壊さないよう慎重に。

分解が終わったメーター。 3つに分かれますが、右下の目盛り板をスキャナーに載せて印刷面をファイル化します。

スキャナーでファイル化した目盛りをExcelにて編集中。 これは高機能版の目盛りですが、数字と文字の書き込みをやっています。 数字はExcelで描いた後にPaint Shop Proにて所定の傾きに回転し再びExcelに移動して貼り付けました。 また目盛りの下に色分け帯の境界線を描いてありますが、Paint Shop Proでそれらの中を3色で塗りつぶしています。

こちらはシンプル版の目盛りで印刷が終わった隣に元々の目盛り板を並べました。 目盛りの幅が若干広くなっていますが、これはあえてそうなるよう調整しています。

元の目盛り板に両面接着テープを貼り付けます。 ほぼ全面を覆うようにしていますが、下側の一部だけ剥がしておりここから位置を確認しながら貼り付け、その後上のほうの裏紙を剥がし貼り付けてゆきます。

はみ出た紙を切断してメーター本体にネジ止めしました。 0点がずれている場合にはカバーを被せて固定した後に0点調整します。

改造前(左)と改造後(右)のツーショット。 うまく化けました。

改造後の2種類のメーター。 何れもThermometerと温度計であることの表示と、単位が「」である事を表しています。 違いは電池電圧表示の3色の帯があるかどうかだけです。



2011/04/29

電池ホルダーの製作

 簡易型の温度計は名前とは裏腹で、製作上ちっとも簡易
 型ではない部分があり、それは電池ホルダーです。

 簡単に作るのであれば電池ホルダーは左の写真のような
 既製品を使えば良く性能上の問題もありません。 従って
 当初はこれを使おうと考えていました。

 しかし多機能型のケースを設計し終わったときに、簡易型
 であれば中身の部材が少ないのだから同じ大きさかそれ
 以下で当たり前だよな?!と妙な拘りが出てきて簡易型
 のケース製作に進み、結果として泥沼に嵌り込みました。

 ケースの横幅と奥行は60 x 60mmで板厚が3mmですか
 ら、内部の寸法は54 x 54mm残ります。  左の図を見て
 判るとおり、電池ホルダーの大きさは51 x 49mmですから
ケースに入る事は入るのですが、底蓋をロック(固定)機構スペースが5mmしか確保できません。 電池ホルダーを自作するとした
場合、電池の直径は最大でも10.5mmですので、これを11mmとして4本並べると44mmです。 そうするとケース内部寸法との差は
10mmとなり、ロックのためのスペースが確保できそうです。

電池の長手方向は、ケースの内寸(54mm)をフルに使い逆さに電池を入れたら電気的に接続されない構造が取れます。 既製品にはない新たな付加価値が自作で得られる!と気楽に考えていました。

そして電池ホルダー部分の試作に入ったのですが、木の薄板を使った+電極部分の第一次試作は見事失敗しフルの1日を無駄にしました。 そこで再度材料として選んだ3mm厚低発泡塩ビ板での第二次試作は、慎重な作業の結果うまく行きました。 結局週末2日間を使って電池ホルダー部分だけが完成したという超低速作業になった次第です。

その作り直した作業の様子はお伝えしますが、フールプルーフ機構(簡単な理屈ですが大変うまく作動します。)を評価しないのであれば、上のほうでも触れたように既製の電池ホルダーを使って多少大きめに作るか、後で紹介する多機能型と同じケースで前面にスイッチのための穴のない物とし、電源は006P(9V)にする事をお奨めします。

 最終的な寸法図は左、部材寸法図は右の図をクリックください。 寸法図の
 中には見ただけでは理解しにくい部分がありますが、後ほどお見せする写真
 を見ると理解しやすくなると思います。
 材料は全てアガチスで断り書きがなければ3mm厚を指します。
 (5mm厚がほんの少し出てくる。)
 アガチスがなければ朴でも良いでしょう。 部材寸法図の中に出てくる矢印は木目方向を指します。

 加工に当っては細工用のノコギリ(翔7寸目とか粋な奴)がお奨めです。 そして寸法出しは大変重
 要で、0.1mm以下の寸法誤差になるようカンナと替刃式ヤスリで少しずつ調整しながらノギスで確認
 しました。 ここで手を抜くと組み上げ時に寸法誤差によるいびつな物が出来上がります。
 発泡塩ビ板は大型のカッターナイフで0.3-0.5mm大きめに切り取り、2枚を接着後ヤスリで削ってドン
 ピシャ寸法(11 x 11mm)にしています。  接着には塩ビ板の貼り合わせとネジの固定には瞬間接
 着剤、その他の部分は30分硬化開始型エポキシ接着剤を使いました。

 37 x 54mmの前板だけは両面接着テープを使って半固定の状態とし、永久接着とはしません。

電池受けの部分を作る部材。 白くて四角いのは発泡塩ビ板で、当初は3mm厚アガチス板で同じ物を作ろうとしましたが組み立て時にばらばらに割れてしまい割り直した経緯があります。 ネジは3mmの長さで先端にワイヤーを半田付けします。 中央下は0.5mm厚のワッシャーで、左は既製のマイナス側用の電極です。

2枚の塩ビ板を瞬間接着剤で貼り合わせました。 ネジはワイヤーを先に通した上でこのように嵌め込みます。 ネジの頭は約0.5mm表面より沈みます。

電池の+側の突起を当ててみました。 ごらんのように電池ボディー周辺は塩ビ板から0.5mm浮き上がっており、+の突起はネジに接触しています。 電池を反対にしてマイナス側を当ててもネジの頭には絶対に接触できません。 完璧な電池逆挿入によるトラブル防止になります。

貼りあわせた塩ビ板の周辺を研磨し11 x 11mmのドンピシャサイズに仕上げ、ケース側板に貼り付ける準備です。 最終的にはご覧のようにワッシャーを1枚入れてネジの沈み具合を調整します。 そして瞬間接着剤を裏側から少し注入して固定します。

左がB側板で右がA側板です。 +電極ブロックをエポキシ接着剤で貼り付けました。 はっきりとは見えませんが、ワイヤーが出てくる部分には幅・深さ1.5mmの溝を彫ってワイヤを埋め込んであります

この写真では左がA側板、右がB側板になっていますが、12時間後にマイナス電極にワイーヤーを半田付けした上でやはりエポキシ接着剤で貼り付けています。

4個の電池蓋固定ブロックを貼り付けた電池室上板にB側板を貼り付けています。

そして前面パネルを固定しました。 接着位置がずれないよう落ち着いて念入りに作業しないとなりません。

A側板を同様に接着しました。 これは左前方から俯瞰しています。

右後方から俯瞰した眺めはこんな具合です。 この後天板を貼り付けて前板を挟み込めばケースとしては完成です。

さて大変苦労した電池ホルダーの部分はこんな具合です。 アルカリ乾電池とエネループが混在していますが、物理的に問題なく装填できるか確認するためで、この状態で使うわけではありません。 既に述べたように損得を無視したような手間は掛かってしまいましたが、市販品ではお目にかかれないコロンブスの卵的な逆接続防止機構は、完璧に動作する拘りのギミックです。



2011/05/06

ケースの組み立て

同じ外形となる2種類のケースを組み立てました。 60 x 60 x 72mmという小さなサイズですが完成度を上げるためにかなり手間と時間を掛けています。 それらの作り方は小さなお子さん用にはとても薦められるものではありませんが、大人の拘りの作り方でやったら?という目でご覧いただければと思います。 組立は基本的にエポキシ接着剤か木工ボンドを使った接着で、ハタ金を使った圧着保持をしています。 木材の切り出しはノギスを使って±0.1mm以下に寸法誤差を追い込んでいますが、接着位置の誤差もそれに準じないと何にもなりませんので、かなり慎重を期した接着を要します。

今回は当初から木目を生かすことは考えずペイント塗りつぶしを頭に入れて進めましたから途中で加工ミスで傷つけた場合にはパテで修復できますし、接着剤が不要な所に付いたら削ればよいのですが、若しもニス仕上げで木目を生かそうと考えたら、パテを使うような加工ミスは許されませんし、接着剤の付着は簡単に削った程度では塗装時に白く浮き出てばれてしまいます。 その意味では塗りつぶしの今回は作業の緊張度はそれ程高まりません。

それを見越したようにトリマーで成形加工をする際に数箇所の切削ミスを犯しましたが、最終仕上げに全く影響することなく修復できています。

ケース組立の基本作業は以下の手順及び方法となっており、私の小型作品の標準になっています。

  1.部材切断
    ノコギリ(粋な奴)と電動ジグソー(CJ-250)を場所により使い分け。 切断精度+0.2〜0.4mm以下

  2.切断寸法調整
    カンナと替刃式ヤスリ(自作直角出しタイプ)によりノギスで確認しながら±0.1mm以下に収める。

  3.部材の表面処理
    組立後に表面を#240ペーパーで全体研磨、塗装前に#400で仕上げ研摩。

  4.加工ミスの修復
    傷が大きく(直径3mm以上)深い(0.5mm以上)部分はウッドエポキシを埋める。(盛り上げる。)
    10時間後位にカッターナイフで大雑把に削り取る。 24時間経ったら替刃式ヤスリで削り取り#240ペーパーで寸法出し研
    摩。 ウッドエポキシの付いた所の境目に段差が残る場合には水性パテで段差を埋めて#400で仕上げ研摩する。

  5.目止め処理
    全面に水性パテをへらで擦り込み、木繊維の断面や木目に沿ってある細かな穴を埋めてしまう。 乾燥後に#400ペーパーで
    研摩して表面を均す。


それらの作業の様子は以下の写真をご覧ください。

天板を貼り付けました。 ご覧のように180mmのハタ金を6本使い接着位置がずれないよう保持しています。

挿入する電池の向きを表した図をExcelで描き印刷して貼り付けました。

多機能型は背面の板を外して電池交換をするので、アルミ押し出し材を切断して背面固定金具を作り、エポキシ接着剤で背面上部に固定します。

その背面下部には1mm厚アルミ板を貼り付けて本体内部に加工した溝(矢印)に引っ掛けます。

こちらは簡易型の底板で2箇所の切り欠きの周りを保護するため(割れやすい)、凹型に加工した1mm厚アルミ板をエポキシ接着剤で貼っています。

その底板はこのように収まります。 塗装が終了後矢印の部分にマジックテープを貼り付けて底板をロックします。 底板を外す時には写真に見えるクリップを加工したものを差込み引っ掛けて引っ張ります。

電動トリマー加工ミスで発生した削り過ぎ部分の修復です。 第一工程はこの写真のようにウッドエポキシを修正部分に埋め込み盛り上げます。

10時間後にカッターナイフで大雑把に削り、24時間後に替刃式ヤスリで削って最終寸法+0.4mm位まで削り#240ペーパーでドンピシャ寸法にします。 矢印先のような段差がある場合には水性パテを擦り込んでやります。

水性パテが乾燥したら#400ペーパーで研摩して表面を均します。 これで削り過ぎの部分の修復は完璧に治りましたがペイント仕上げならではです。

この上の写真にあった段差は完全に無くなりました。 塗装するとまったく判らなくなります。

#400ペーパーによる仕上研摩が終了した簡易型(右側)と多機能型(左側)のケースです。 仮にメーターとスイッチを挿入してみました。

それらの背面はこちらです。 左の多機能型は背面板を外して電池交換するので、M3のネジ止めとし多回数のネジ締めに耐えられるようにしました。 右の簡易型では修理や調整以外では開ける必要がないので木ネジ4本止めです。

底面の違いです。 左の多機能型では底面は接着固定してありますが、右ではマジックテープで固定し電池交換の時には黒く見える切り欠きに針金を引っ掛けて外します。



2011/05/13

完成まで

塗装前の最後の作業は仕上げ研摩ですが、ここでは目止めの作業が追加されています。 私は手抜きというか目止め作業を殆どやりませんが、サイズの小さな工芸品的な作品の場合には目止めをします。  目止めの目的は木繊維の断面の穴を塞ぐことで、砥粉が使われますが、私はペイントで塗りつぶす場合には色味が付いても支障ないので水性のパテを目止め材として使います。  そうする理由は砥粉にはない適度な充填効果があることと油性パテよりも粘着性が少なく研摩しやすい点にあります。  逆に言うと物理的な特性は油性の物より劣るようで、未だにパテ本来の目的には合格点はあげられません。

但しウッドエポキシとの組み合わせでは、ウッドエポキシの絶対的な物理特性の良さと水性パテの小回りの効く作業性の良さが互いに補間し合い極めて満足できる結果を得ています。 目止めを施したら水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗って塗装の下地をしっかりと作ります。 そして#400の空研ぎペーパーで研摩し表面をつるつるに磨き上げます。

こうしてからスプレータイプのペイントを2回塗りしますが、水性ウレタンニス無しでいきなりペイントを塗った場合には吸い込み効果により塗り回数を増やさないと塗膜が厚くならず不経済ですし、塗膜の丈夫さもウレタンニスには適いません。

最後に水性ウレタンニス艶消しクリヤーを1〜2回塗って完成です。 つまりアクリルラッカースプレーによる塗装は着色だけが目的であり、ラッカーの薄い着色塗膜の上下は物理的に高性能の水性ウレタンニスの塗膜で挟まれて保護され、大変具合が良いように思います。

 そうそうケースの組立の中で先送りにしていた温度センサー取り付け方法をウレタン
 ニス塗り前にやっと決めましたのでそれについて触れておきます。

 当初温度センサーは直径5mm、深さ1mm程度の穴をあけてそこに埋め込んでやれ
 ばよいと単純に考えていました。 しかしある時ふっと、「板に埋め込んでやると板の
 温度を測るようになるのでは?」
という疑問が出てきました。
 言い換えると、「気温を測るのだからセンサーは正に空気に全体が触れていないと
 いけないのでは?」
ということになります。  そしてこれまでの実験でセンサーを仮
 接続していた(空中配線)やりかたが理想のように思え、センサーを埋め込んでは
 なんとなくまずいような気がしてきました。

 センサーを埋め込んだ時にどの程度の影響が出るのかは判りませんが、不安定な
 空中配線には出来ませんから、「埋め込まないが空中配線ではない固定方法!」
 いうことで、センサーと天板の間に0.2mm程度の隙間を設け、センサーの3本の脚は
 天板を通って内部に接続され、それらの脚はエポキシ接着剤で天板に固定します。

ややこしそうな固定方法に思えますが、実際には簡単に出来ます。 そのミソはエポキシ接着剤に付かないポリエチレンをセンサーと天板の間に挟んでエポキシで固定してからポリエチレンシートは引き抜いてやる点にあり、ポリエチレンシートの厚み(私が使った物は0.2mm厚。)がセンサーと天板の間に出来る隙間ということになります。
この辺りの様子は後ほどの写真を見たほうが理解しやすいでしょう。

塗装が終了後部材取り付けと配線を経て2つの温度計が完成しましたが、それぞれを私が使っているDMM(三和 PC510)でセンサーの出力電圧とメーター表示が一致するよう調整しました。 従って温度測定精度は完全に温度センサーICに依存する事になります。

その上で2つの測定差異がどの程度出るのか試してみました。 以下の写真の最後にそれをお見せしますが、0.3℃ほどの差でICを選別する事もせずに得た結果なので、スペックからすると(±1℃)小さな差異でした。

ひとつだけ検証実験が出来ません。 それは電池の寿命試験です。 私は1次電池としてはパナソニックのアルカリ乾電池を標準としていますが、そのパナソニックの乾電池が現在は入手不能になっています。 多分震災の影響だと思いますが、このため電池寿命の実験開始は入手できてからスタートすることとします。

完成までの様子は以下の写真をご覧ください。

全部材の塗装面に水性パテを擦り込んで乾燥後#400ペーパーを掛けました。 これで木繊維の断面の穴は塞がり目止めがばっちり出来ました。

塗装の最初は水性ウレタンニス透明クリヤー2回塗りで乾燥後に#400空研ぎペーパーで研摩します。 その結果表面はつるつるになります。

そしてアクリルラッカースプレーを2回塗りました。 水性ウレタンニスで下地が出来ているので塗料の吸い込みもなく大変滑らかな表面です。

この次に述べる温度センサー取り付け穴をあけてから、水性ウレタンニス艶消しクリヤーを2回塗りました。 これで物理的に弱いラッカーの塗膜は丈夫なウレタンニスの塗膜で覆われました。  小さな作品ですから刷毛には13mmのラック刷毛を使っています。

温度センサーの固定方法の説明で、一番目は穴あけですが艶消しウレタンニス塗り前にやりました。 大きさは、1.5 x 3.5mmです。

その上にポリエチレンシートを被せますが、空けた穴の位置には切り込みが来るようにしてあります。

切込みに温度センサーの脚を通してご覧のように輪ゴムで温度センサーを固定します。

それをひっくり返して内部を見るとこんな具合です。 両側の脚は開いておいた方が、後ほどの配線が楽でしょう。

内部のその穴に30分硬化開始型エポキシ接着剤を流し込みました。 大目に垂らしたのでかなり盛り上がっています。

温度センサーの脚の配線は5時間以上経過してからの方が安全ですが、この写真は温度センサーと天板の間に挟まれたポリエチレンシートを引き抜いた後です。

全部材を取り付け配線を済ませました。 前板は後で修理や分解が可能なように両面接着テープで軽く固定しています。

2つの温度計の表示差異をチェックしました。 1目盛りが1℃ですが左の多機能型は0.3℃程高めに表示しています。 無論これだけでは絶対的な誤差がどれだけあるのか判りませんが、選別せずに使ったICですので、小さな差異にいささかびっくりしました。

背面の様子。 左の多機能型では電池交換の際に背面の板を外すので、M3のネジ2本で固定しました。 簡易型では調整・修理以外は外しませんので小さな木ネジ4本止めです。

電池は006Pを使用。 このように収まります。 温度センサー出力電圧の10倍がメーター(フルスケール 5V)の読みになるよう左のポテンショメータを調整、その後電池電圧チェックモードでDMMで読んだ電池電圧とメーター(フルスケール 10V)の読みを右のポテンショメータで一致させます。

簡易型では温度センサーの出力電圧とメーター(フルスケール 0.5V)の読みが一致するよう調整するだけです。

簡易型の底。 底板を外すには、小さな四角の穴にピンを挿し込んで引っ掛けて引っ張ります。

底板は2枚の小さなマジックテープで固定されています。 電池は単四が4本。


----- 完 -----


 
  
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