HOME
サイトマップ
アマ的手法
材料
工具
作品一覧
リンク
mini-Shop


 
電子温度計
   
2011/03/11

構想

電気工作としては簡単な部類に入りながら高性能の電子温度計をご紹介します。  別テーマで実用性や完成度を高めた物も紹介していますが、そちらと電気的な性能は同じレベルです。  これから紹介する部分は電子温度計の骨格部分だけですから、作られる方の工作技術レベルによりより完成度を高めるケース作りに工夫されると更に良いと思います。

 さて温度計は測定器の一種ですから測定精度が大変重要ですが、
 今回作るものは簡易版を含みこの点について十分評価できるものと
 なります。 使う温度センサーはLM35DZという名称で小信号トラン
 ジスターにそっくりの3本脚です。(左の写真)
 メーカー発行の技術資料によると、25℃で±1℃以内の測定精度を
 持っています。(±0.5℃以内のバージョンもある。)

 店頭販売されている複数の温度計をみると、表示温度がばらついて
 いてその開きが5℃以上ある!なんていう経験がありませんか?
 私は、こんな物は使い物にならないだろうな!と感じたものです。

 この±1℃というのは保障値であり、平均的には±0.4℃(25℃で)
 測定可能レンジの端っこ(-55℃と+150℃)では±0.8℃が典型的な
 (Typical)誤差だとしています。

 さすれば一般市販されている物とは一線を画す物になることは間違
 いありません。 もうひとつこのセンサーの使いやすい点はセンサー
 の出力電圧が10mV/℃となっていることです。 つまりセンサーの出力電圧が0.53V(530mV)であったとしたら53℃ということになります。  よって電圧計を繋いでやるだけで温度が直読できます。

この読み取りの部分をどうするかですが、私はテスターを使うことで設計を進めました。 そのテスターにもアナログとデジタルの2種類がありますが、古いアナログタイプでも充分使えるように考えました。

私の手元に長年使ったアナログテスターがありますが、DCVレンジは0.1V、0.5V、2.5V、10V 、50V ・・・となっています。  そうするとこれでセンサーの出力電圧を直接読み取るとフルスケールは10℃、50℃、250℃ ・・・・となります。 私の場合はこれで良いとしても、仮に最高感度のレンジが0.5Vのテスターを繋いだとするとフルスケール50℃からスタートとなり、折角の高精度が読み取りに生かされないようで面白くありません。

そこでセンサーの出力を10倍してから電圧計(テスター)で読み取るように考えました。 私のアナログテスターでフルスケールで1℃、5℃、25℃、100℃ ・・・となります。  そして最高感度が0.5Vのテスターでもフルスケール5℃で読み取れる事になります。

 この10倍増幅にはオペアンプ(LM358N)を使いました。 その全回路は
 左の図、基板レイアウトは右の図のとおりです。
 基板レイアウトには通常と違って半田面の様子も載せておきました。

 この回路で高精度にすべきは10倍の電圧増幅度ですが、それはこの
 回路で使っている3本の抵抗の精度で決まってしまいます。

 2.2KΩと22KΩを並列に繋いでありますが、入手しやすい値の組み合
 わせで2KΩを作っています。  こうして作った2KΩともう一本の抵抗(18KΩ)をこのように結線する
 とドンピシャ10倍の増幅度が得られます。

精度を重要視するのであればこれらの抵抗は全て1%誤差の抵抗を使うべきですが、私は入手が容易な5%誤差の抵抗を使いました。 (抵抗の実際の誤差は表示の5%よりもかなり低いので、充分な精度が得られる可能性が大きいからです。 因みに無作為に手持ちのストックから拾ってDMM(三和 PC510)で測った実測値は22Kと2.2Kの並列が1.96KΩ、18KΩは17.8KΩで、これらから計算した増幅度は10.08倍(+0.8%)で充分な精度が確保できています。)

この装置の電源は9Vの乾電池(006P)で設計しています。 私自身は定電圧電源を持っていますからそれで全てのテストをしましたが、消費電流は0.55mAしかありませんでした。 従って仰々しい電源を用意する必要は全く無く連続使用するなら別ですが乾電池で充分です。

使い方も簡単で電源と電圧計の接続をするだけです。

さていい事尽くめの解説で終始していますが、測定精度の高いこの温度計にも次のような問題があります。
  1.測定レンジが限られる。
LM35DZの測定可能温度範囲は、-55℃から+150℃と発表されていますが、ここで紹介する回路による測定可能な温度範囲は+数℃ から 約70℃に制限されます。  これはLM35DZ自身の問題ではなく、簡単な回路を志向して単電源としたこと(低温側の制限)と、低電圧駆動(高温側の制限)によるものです。 マイナス電源を追加すれば0℃以下の測定が可能になり、電源電圧を設計値の9Vから18Vに変更すれば測定上限である150℃まで測定可能になります。

2.応答特性が良くない。
実際に温度を感じる部分はエポキシ樹脂で封入された内部にあり、周囲の温度が変わってもそれを反映されるまでに時間が掛かります。 従って時間変化と共に温度が急速に変化するような場合には応答できなくなり、表示と実際の温度との差が大きくなります。 これに関しては残念ながら解決する方法はありません。

3.測り方の制限。
ご紹介する電子温度計は高湿度でも動作上支障が出ないような対策が一切なされていません。 従って水の温度を測るとか水蒸気の温度を測るとかは出来ません。  そのような測定の場合にはセンサー部分を離して完全な絶縁対策を講じる必要があります。

製作は6個の部品をプリント基板に固定して終了しますので、以下の写真と解説も参考にして進めてください。 

取り付ける部品は6点と大変シンプルな構成です。 左上の2本のワイヤーの先には赤・黒のミノムシクリップが取り付けられてテスターのテスト棒に接続、右のワイヤーは電池006Pのクリップに繋がります。

裏面の様子。部品と部品を繋ぐ線は0.4mmの物を使っています。 上に掲載した基板裏面をご覧になった方が理解しやすいでしょう。

完成した温度計をテスト中。 ここでは電圧計に25年以上使ったローコストのデジタルテスターを繋いでいます。 1.790Vの表示ですが、17.90℃とボルト単位の表示電圧を10倍して読み取ります。

3種類のDMM/テスターを同時に繋いでいます。 一番信頼性が高いはずの右のDMMが17.16℃、左上の25年以上使った安いデジタルテスター(実売\4,000台)17.19℃、そして約20年使ったアナログテスター(左下の拡大写真参照)16.8℃との表示です。 どれが正確か?ということよりも最大で0.23℃の差でしかなく、温度センサーLM35DZの±1℃ at 25℃の測定誤差よりも小さいですから、何れも使い物になる範疇です。





2011/03/07 AM

解説記事をまとめようとしていましたら、何と雪が降り出しました。  ということは屋外の温度はかなり下がっていますから、0℃より少し上の温度測定をするにはもってこい!とばかりに、試作した温度計を試すことにしました。
まず屋内で比較用の市販温度計と並べて表示温度にどのような差があるかを確認しました。(上の写真)

そしてそれらを窓にすぐ外に設置し、試作した温度計の読み取り用テスターは屋内に設置しました。 窓の外には雪がちらついています。(右の写真)

気温が時間と共に下がってゆきますが、最も温度表示が下がったタイミングで撮影したものをお見せしています。
試作した温度計の読みは、0.298Vですから10倍してやると2.98℃、左の市販品の温度計は2.9℃の表示です。

この温度以下の測定がどこまで出来るのかは不明ですが、私が言っている『測定下限の+数℃』というのはこの程度であるとご理解いただければと思います。

これは余談ですが、試作した温度計は温度変化の反応に2〜3分掛かるように思います。 短時間に変化する温度には追従できないことが確認できたわけです。 しかし比較した市販品の温度計の反応速度はそれよりも遅く4倍以上掛かっています。 そんなに遅くても支障がなかったわけで、我々が普通に温度計を使用する目的においてはLM35DZは充分な反応速度を有しているように感じました。

----- 完 -----


ここで紹介している物と同じ基本回路で作った実用品の製作解説がこちらにあります。(子供向けではありませんが?)

 
  
Copyright (C) 2001-2017, Vic Ohashi All rights reserved.