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小型音響迷路型スピーカー
   
2005/03/04

 構想
 以前に紹介した読者の作品の中で折り曲げ回数が多い小型のTQWTをご存知でしょうか?
 これは大変面白いアイデアなのですが、過去の経験では折り曲げ回数が増えると旨く共鳴しなくな
 る可能性があります。 これはなにもTQWTだけの問題ではなく共鳴管タイプ全般に起こり得る事
 です。 それと折り曲げ回数が多くなると不要な共鳴を押さえる吸音材の調整もかなりややこしいと
 言うか難しくなります。

 一方音響迷路型スピーカーは、低音増強能力はあまり高くはありませんが非力なスピーカーにも使
 え、妙なくせに悩まされ調整に苦労する心配もありません。
 このタイプをよく共鳴管タイプと混同する方がいますが、共鳴管タイプはパイプ自身の共鳴効果を使
 っているのに対し音響迷路型ではスピーカー背面から放射される音のうち中音(概ね150Hz以上)を音道にに貼った吸音材で吸収してしまい、低域だけを放射します。 この時音道の長さが1/2波長となる低音はスピーカー全面からの音と同相になるので増強される(理論的には3dB)という極めて単純な原理です。

現に収納家具下部に仕込んだ音響迷路型スピーカーは広帯域再生とは言えませんが、素直なバランスでBGM用として楽しんで
います。  只ひとつだけ弱味があるとすると箱の容積がどうしても大きくなってしまうので、小型スピーカーを作るのは困難と言えます。

 ところで家の中を整理していた所、昔子供とよく遊んだルービックキュ
 ーブが出てきました。(左上の図参照)
 懐かしさも手伝って暫しこれで遊んでいたのですが、そのうちにこれ
 で音響迷路型スピーカーが出来そうだぞ? とヒントを掴みました。

 何がヒントかと言うと、ルービックキューブの各面には9個の正方形が
 並んでおり、その正方形を1面とした立方体が27個集まって全体を形
 作っているように見えます。(本当は中心部には立方体は無い。)

 その立方体を繋いで音道とすれば、かなりの長さが実現できそうだ
 なと見当をつけたわけです。 早速絵に描いて検討したのが左の図
 のような代物で、これだけでは内部が良く判らないと思いますので、
 右の音道の長さを検討した図も参照下さい。
 前面中央にスピーカーが取り付けられその
 背面の音は真後ろに直進し、突き当たりから
 スパイラル状に各層を通過し前面左下から
 放射されます。

隔壁の厚みを無視すると立方体の1辺の長さの9倍が理論上の音道の長さになることが判りました。 
音響迷路型スピーカーで強調される低音の中心周波数は、音道が1/2波長になります。TQWTの場合1/4波長ですからこれが音響迷路型スピーカーの容積が大きくなってしまう理由の一つです。)

例えば1辺が30cmであれば、音道の全長は270cmで、34400÷270÷2=64Hzが低域が増強される
中心周波数となります。 1辺30cmというのは余り小型とは言えませんので1辺25cmで考えると同様な
計算で76Hzが増強される中心周波数です。

この値は以前作った8cm音響迷路型スピーカーの70Hzより若干高い周波数になります。 FE-87の最低共振周波数は140Hzですので、低域の量感は無理をしていないこの方が良いかもしれません。 に近いので、但し前作ではバッフル効果が大きくしかも床面の反射がかなりあったの筈なので、ここから来る帯域バランスの違いはあるかもしれません。 この辺りは実際に作って聴いて
みないとなんともいえない部分です。

材料に12mm厚の物を使うと1辺を25cmとした時音道の寸法は約71mm x 71mmとなりますが、全面に粗毛フェルトを吸音材と
して貼ると実際には55mm x 55mm程度となるでしょう。 断面積で言えば3,025mm2というわけです。  一方FE-87の実効振動半径は30mmですから面積では2,827mm2とぎりぎり音の通過を阻害しないで済みそうな(実際には曲がり角が多いので音の通過を阻害しないとは言いがたいが)感じです。  これも理屈だけでは物語れない部分ですので、実際に音を聴いてみないと最終的な判断は下せないでしょう。

大きさは25cm四方で極め打ちとします。 決して小さいとは言えませんが音響迷路型としては異例の小ささになると思います。 また結果として失敗となる可能性がありますので、コストを掛けず加工も楽なMDFにすることにします。 MDFは合板と同じ厚みが揃っていますが、接合するのに木ダボを併用したかったので、12mm厚を考えます。  またMDFであればうまくいったときの表面仕上げは安い合板(例えばコンパネ)などよりも楽に綺麗な仕上げにすることが可能で、これも選択理由になっています。

以上で製作上の条件は揃ったのですが、どのようにこの複雑怪奇な箱を組立てるかを考えないと、隙間だらけになったり、いびつ
になったりする可能性が大ですので、じっくり考えてから部材寸法図の描き出し、板取り検討に入りたいと考えています。



2005/03/11

製作その1

 いろいろ思考実験を続けた結果、「組立てやすくて精度が出しやすい方法はこれしかないだろう!」
 というものがまとまりましたので、早速製作に入ることにしました。

 前にもお知らせしたとおり小さな立方体9個を並べてその壁をくりぬき一筆書きで9個の立方体を通過する
 らせん状の音道を作るわけですから、組立て方は無数あります。 しかし精度を出すには極力単純化しな
 いとなりません。 特に貼りあわせる前の部材寸法の単純化は重要です。
 左の部材寸法図を見るとわかるのですが、1次加工で切り出す20枚の板(スピーカーボックス1個分)は数
 が多いにも拘わらず、67mm91mm146mm225mm249mmの5種類の寸法の組み合わせで出来
 上がっています。

 1次加工の部材切断は設計値の値に対し限りなく誤差がゼロになるようにする必要があります。 私の場
 合パネルソーで切断したのですが、個々の切断精度は±0.2mm以内という高精度になっています。
 何故高精度にしないといけないかというと1辺を形成する断面に切断した部材3枚と板厚分3枚が合計され
 る部分があります。 部材寸法が0.5mm大きければ、1辺は1.5mmも大きくなってしまう!というシビアー
 な状況になるためです。 皆さんが作る場合も1次加工だけは信頼できるカットサービスにお願いした方が良い結果を生むと思います。   私が通常やっている手引きのこぎりで切断してカンナで寸法と直角度を追い込む方法でも良いのですが、寸法の相対誤差と絶対誤差の両方が大事なので、手加工による1次加工はかなりしんどくなります。

ところで2次加工で切断する四角や丸い穴は切断精度が1段緩くなっても0.5mm位には収めたい!)組み上げた時の精度に影響しない構造になっています。 従ってジグソーで切り抜きヤスリで仕上げる事で充分満足できる仕上がりとなります。  こういったところが思考実験で最も頭を悩ませた部分です。

 板取りに付いてはこちらの図を参考に願います。 3 x 6 12mmMDFから切り出しますが、ご覧のとお
 り極めて板取り効率は悪いです。 面積で約1/3余ってしまいます。 だからと言って設計をやり直すと、
 強調される周波数が移動してしまったり、厄介なことがいろいろ出てくるのでやめました。 余った部材は
 今後製作する物に流用することにします。

 ところで組立て構造図を描こうとしたのですが、3次元で描いても理解しにくい絵になりそうで私の技術で
 はどうにもなりませんから、組立て解説の写真を見てご理解ください。

1次加工3 x 6 から切り出し)の終わった全部材。 パネルソーを使ったため、寸法精度は±0.2mm以内に切断でき、直角度の精度も申し分ありません。

STEP 1: ABの部材をこのように木工ボンドで貼り合せハタ金で圧着保持します。 最低2時間このまま寝かせます。

少しの狂いの集積で最後にはどうしようもない誤差になる可能性がありますから、接合時には接合部分の段差が出来ないよう充分調整してハタ金を締めます。 

STEP1が終わりです。 スピーカー1個辺り3組必要ですので1ペアーで6組作りましたが、ハタ金を8本しか持っていない私の場合4時間掛かっています。 

STEP2: Bの反対側にもう一枚Aを接着します。 要領はSTEP1と全く同じです。 これをスピーカー1個辺り2組作ります。

2時間放置してSTEP2が終了。 このように平らな面において隙間が出るようであれば失格!です。

STEP3: STEP2で作ったコの字の枠にCを貼り付けます。

この部分が正確に67mmになっていないとなりません。

また直角が正しく出ている必要があります。

こうして中仕切り1が出来上がります。 同じ物をスピーカーボックス1個辺り2個作ります。 STEP3終わり

STEP4: 中仕切り2STEP1で作ったL型の部材にCを貼り付けてやります。 スピーカーボックス1個辺り1個必要です。

STEP5: この作業は上の貼り合わせて乾燥中に済ませます。 DEに所定の穴を電動ジグソーであけて、ヤスリで仕上げます。 加工精度はそれ程シビヤーではありませんが、0.5mm程度小さめに切断できれば後で修正可能です。

STEP6: D中仕切り1をこのような位置関係となるよう貼り付けます。 完成後の前から見た所で、写真の上方が完成後も上になり、中仕切り1の層は第2層(中間層)となります。

左上から見下ろした所ですが、接着時に十分精度を出す必要のある部分があります。

その部分のクローズアップで、矢印の先の接合部分に段差が出ないよう、赤線のように1直線となるように充分に調整しておきます。

D中仕切り1を貼り終りました。 これをもう一組作らないとなりません。 STEP6の終了です。

STEP7: STEP6で作った物の上にEを貼り付けます。 この写真の上は実際の上を指し、前方左から見た様子です。 

真上から見るとこんな風です。 下が前方になります。

ひっくり返して真後ろから見るとこんな按配で、写真の上は実際の上です。

このステップは組立て精度を保つ上で慎重に調整しなければなりません。 平らな所において曲尺を当てどのようにおいても直角が出ていなくてはなりません。 出ていなかったら接合位置をずらして直角になるよう念入りに調整しないと全く意味がなくなります。(直角度を測る位置は16箇所あります。)

前の方法で直角度調整が完了すれば、このように曲尺を当てた場合も同様に直角が出ます。(この場合は直角度を測る位置は8箇所です。)

STEP7の終了で第2層が完成しました。 この前後に第1層と第3層が更に追加されることになります。

接合を開始して以来ここまでで累計20時間以上掛かっています。 その間寝ないわけには行かないので実際には2日間費やしました。 但し大半は木工ボンド硬化の為に寝かせる時間ですから大変な作業ではありませんが、いびつな箱にならないためには充分に慎重に貼り合わせる必要があります。 尚DEを2次加工した穴や欠き取り部分の切断誤差で段差が生じる部分がありますが、完全硬化後にヤスリで削って調整できます。 次週に組立ての続きの様子をお伝えします。



2005/03/18

製作の続き

先週に続き一枚ずつ部材を貼り付けて箱に仕上げてゆきました。 表面に貼り付ける部材を貼る前に音道の全ての面に吸音材を貼り付けねばなりませんが、ここでは安価に入手できる粗毛フェルトを60mm幅に切断して貼り付けています。 この作業は結構面倒ですが完全に音道面を覆う必要があります。 その目的は音道内で音波が反射しないようにしたいのと共鳴も起こして欲しくないためで、ここが共鳴管タイプのスピーカーTQWTもその一種です。)やバックロードホーンと一番異なる部分です。 

この結果音道が曲がりくねっていることと全長が長いので、約150Hz以上の音は吸収されて前方の開口部分からは出なくなります。

外周の板材は、左側面→右側面→上下の板→前後の板、という順序で接着してゆきます。 詳しくは説明しませんが、これが最も精度良く組立てられる順序です。

作業は淡々と進み2日目にやっと前後の板を貼ってスピーカーを取り付けいよいよ音出しができるところまで進んだのですが、ある問題が出てきて作業を中断して善後策を講じることになりました。 まずは箱の完成直前までの様子をご覧ください。

STEP8: STEP3で作った中仕切り1をこのようにE面に接着します。

これは左の写真の矢印方向から見たクローズアップですが、赤線の面に段差が出来ないよう十分注意します。

STEP8の終了で前方左上から見た所です。

こちらは左横上方から見た所。

そしてこちらは右横上方から見た所です。

STEP9: 裏側Dの裏面)STEP4で作った中仕切り2をこのように接着します。

これは左側上方から見た所です。

STEP9の終了。 真後ろから見るとこんな具合です。

スピーカー背面から出た音がどのように前方に戻るかご覧下さい。 この写真は後側から見ています。 前方から真っ直ぐ後に来た音は上に上がって左に折れ、このように螺旋状に進んでゆきます。

こちらは前方から見た様子で、上の写真の続きです。 更に螺旋状に進みながら第三層→第二層→第一層と移動し、最後は前左下の隅から外部に放射されます。 この間の音道の長さは2,145mmで増強される中心周波数は約80Hzとなります。 構想段階では隔壁の厚みをゼロとして計算しましたが、実際には隔壁の厚みは12mmあるため音道長が若干短くなっています。

STEP10: 不要な中音を吸収したいのと音道内部で音の反射や共鳴を起こさせたくないため、吸音材として音道内面全てに粗毛フェルトを貼り付けました。  

中央の後に突き抜ける音道にも無論貼り付けてあります。

STEP11: 左側板(I)を接着しますが、ハタ金では中央部を圧着出来ないので36mm隠し釘を圧着保持に使いました。

STEP12: 右側板(I)の固定です。 この後音道面で後で貼れなくなってしまう部分を良く確認の上貼っておきます。

STEP13: 上板(H)を接着しました。 密着保持にはやはり36mm隠し釘を使っています。

STEP14: 底板を同様に接着しました。 この後IHの内側でまだ吸音材が貼られていない面にフェルトを貼り付けます。 (この写真は前方からですが上下が逆さです。)

STEP15: 前後の板の2次加工をしました。 裏板の穴は直径が40mmとかなり曲線切りはしんどいのですが、低重心設計のCJ-250は難なく切断してくれました。

前板を載せてみました。 結果はドンピシャ寸法で、これまでの作業が正確に出来た証拠であり、スピーカーユニットもうまく収まっていそうですが??

ユニットを外すとこんな感じでスピーカー背面はかなり狭そうです。 ユニット背面からの音があまり障害なく音道へと導かれそうにない気がします。 

このまま続けてしまうとせっかく苦労して組み立ててきたのが、根底から台無しになる可能性もありそうです。 暫しどうしようかと考えましたが、作業を中断して簡単な分析をすることにしました。



問題点分析と解決策

 分析の最初は音声が通過する部分の面積です。
 スピーカーユニットのマグネット部分の直径をノギスで測ると、一番太いところは前側で54mm、後ろに行く
 と若干細くなり先端で約52mmでした。 ということは、一番太いところの断面積は2,290mm2、細い所
 で2,124mm2ということになります。

 一方音道は67mm x 67mmですから断面積は4,489mm2ですが、更に吸音材の厚みが8mm程度あり
 ますので、中音以上では更に狭くなります。 低音では吸音材の影響は減少しますが、若干狭くなること
 には違いありません。 吸音材を無視した最大の隙間でも、前者で2,199mm2、後者で2,365mm2となり
 ます。

そしてスピーカーの実効振動半径は3cmですので面積は2,827mm2となり、これらの隙間は実効振動面積よりかなり小さく、音声の通過の障害になりえます。

但しスピーカーフレームの開口面積(後ろからの音が通過する。)を測定したところ約1,500mm2しかありません。 
それなら大丈夫かな?という気がしないでもありませんが、この狭い部分の長さは33mmもあり、やはりかなりの障害になるであろうと推測されます。

 ということであれやこれや考えましたが、試してみてみて駄目だったら後で修正というわけには行きそうも
 ないので、抜本的な変更を加えることにしました。 その方法は前板のスピーカー取り付け穴の断面を斜
 めに削り落とし、36mmの下駄を履かしてユニットを取り付けるということにします。

 大まかな計算ですが、こうしたときのマグネット最後部の音声が通過できる断面積は2,700mm2に増加
 します。 実効振動面積よりまだ若干小さいですが、狭い部分の長さは極わずかですので以前に比較す
 れば大幅改善と言えそうです。

 36mmの下駄は12mm厚のリング状の板3枚を貼り合せます。 たまたま板取り
 が悪かったので端材で十分作れます。  そして何となく出べそのような感じにな
 りそうな外観を、フロントグリルのデザインでカバーしようと考えています。

この結果スピーカーの奥行きは40mm前後長くなるので、キューブというイメージからちょっと外れますが、音質を犠牲にするわけに行きませんのでこの方法で進行することとしました。

この問題は事前検討が不十分であったため発生したわけですが、事前に判ったとしても似たような解決策
しか出なかったと思います。 ということで完成は来週に遅れてしまいますが、苦労した分よい結果が出ることを期待しています。



2005/03/25

組み立て完成そして音出し

 先週お知らせした追加する下駄の製作に入る前に元々スピーカーを取り付ける面の角をコロ付き角面ビットで45度に削ってやりました。 これでスピーカーユニット背面先端部分でも十分な空間が出来ることになります。  下駄の部分は12mm厚の板をドーナッツ状に切断したものを3枚貼り合わせますが、一番上はネジ穴が馬鹿になりにくいように、シナ合板としました。 これを本体に貼り付けてやっと音出しが出来るようになりました。

視聴についてはFE-87を取り付けミニタワーFE-87を使ったTQWT)と比較視聴しています。 何れのFE-87も冒頭で触れたように十分に鳴らしこんでいますから、エージングによる音色の違いは出ないはずです。

その結果はどうだったかについては以下の写真の後で簡単に触れました。

STEP16: コロ付き角面ビットで角を45度の傾斜に成形しました。 高価なビットですが短時間で成形は終わります。

STEP17: 前の板の内側に吸音材を貼り付けました。 接着面に吸音材がはみ出ないよう十分注意します。

そして前板を貼り付けハタ金で締め上げました。 中央部分や音道隔壁部分には隠し釘で圧着しています。

STEP18: こちらは裏板です。 吸音材を接着面にはみ出ないよう貼り付けておきます。

箱組み立ての最後の工程です。 ここでもハタ金と隠し釘を圧着に使いました。

本来なら音出しが出来るのですが、この後スピーカー取り付けの下駄部分の加工と固定に進みます。

12mm厚のMDF(奥の方の4枚)とシナ合板(手前の2枚)から切り出したドーナッツ上の下駄。  こんなサイズでは低重心小型ジグソーCJ-250)が使いやすくて作業性が良く、1時間ほどで終了しています。

そして50mmクランプを使って3枚ずつ貼りあわせました。

周りを木工やすりで成形し接着面の段差を落としました。 仕上げは定番の(替刃式ヤスリM-20GPで研磨しました。

そして本体全面中央に接着。 これまた定番となった自作中型クランプで圧着しています。

  スピーカーユニット(FE-87)と端子盤を取り付けて配線し試聴が出来る段階になった小型音響迷路型スピーカー。 
  しかしこのままではどう贔屓目に見ても美しいとは言えない、デベソルックスです。

リモートスピーカーセレクターを使って帯域バランスの標準(必ずしも音がベストという意味ではない)としているFW-127の2-Way、小型音響迷路型スピーカー、ミニタワーTQWTと左から並べ、比較試聴しました。  結果は箱の構造や製作途上で予測したことが当たっていましたが、それ以上!!でした。 詳しくは次をお読みください。



比較試聴の結果(予想外の好成績?)

製作に非常に手間のかかるスピーカーでしたが、ごく素直な素性を持ったスピーカーボックスだというのが全体の印象です。 これは妙に凝ったことや複雑なからくりを含まず基本的な音響理論で構成されている点が大きいと思いますが、実際のところチューニング一切無しで以下の感想を述べています。 (と言うかチューニングをしようにもその術がありません。)

製作途上で既に気づいたのですが、音道を構成する隔壁が沢山あるためそれらは箱の不要振動(箱鳴り)が極小となるように働くのと、長く曲がり角が多くてびっしりと吸音材が貼られた音道が不要な中高音を見事にシャットダウンしているためか、出てくる音に余計な色づきや響きが無くクリヤーそのものです。 当然定位感も大変良く、ボーカルや楽器の音像の大きさが小さくまとまります。 この点では洞穴効果が完全に消しきれないTQWTとは特に大きく違うところで、中高音の音が同じユニットから出ているとは思えないほどの差が出ています。

別な言い方をすると、今回作ったものが分解能という点では疑いなくベストでした。 帯域バランスの標準として参考に聴いたFW-127 2Wayよりもつぶだちの良さを感じました。 写真で言えばカリカリにシャープな写真とレンズの収差でボケボケの写真との違いと言えると思います。  この辺りは好みの問題となるかもしれませんが、箱の響きを利用してうまく聴かせるタイプのスピーカーではないことだけは確かです。

さて低音の再生はどうかというと音響迷路型として密閉型などよりは増強効果はあるものの、量的にはまだ不十分です。 但しこの領域の質はなかなか良く、ファンダメンタルの音がボヤケルことなく音程もしっかりと再生されています。 そこでトーンコントロールで低域を若干ブースト3dB 〜 6dB)してみましたが、安作りのスピーカーによくあるブヨブヨ、ダブダブの低音が中域にかぶりを生じるようなことも無くバランスが良くなりました。  同様な意味で実験はしていませんが、ブックシェルフ的な周りにバッフル効果を増大させるような置き方も、低域の不足分を補うのに良い方法だと思います。

ローブーストしてバランスが良くなったところでいろんな音楽を一通り聴いてみました。 KODOの太鼓の音では、太鼓の皮がパーンと張られた感じがTQWTに比べて数段良く、重低音感(重低音ではない!)もかなりのものです。 ジャズコンボの再生でもベースソロの音程の移動が良く判りさわやかな音色と澄み切ったハイハットが心地よいです。  こう書いてゆくと何かジャズ・ポップス系に強そうですが、弦楽器のフルオーケストレーションも音がごちゃごちゃにならずに繊細さを保ちながら見事にこなします。

唯一の弱みとしては小口径で耐入力が小さくしかも背圧がかからないため大音量で聴くことが出来ません。(特にローブーストした場合容易にボイスコイルの底当たりを起こします。)  その意味では重低音が含まれていないコーラスは最高でした。 実は音の差があまり判らないというか確認できないと普段言っている家内にコーラスの音の違いをちょっと聴かせたところ身を乗り出し、彼女が参加している混声合唱団の演奏会の生録CDを片っ端から聴き始めました。 そして大変嬉しそうにそれぞれのパートの音が良く聴き分けられる!とのコメントを付けていました。 また音量を上げてもうるさくない音! という言い方もしていました。 これなど余計な付帯音がないことを物語っている証しだと思います。

総論として久し振りに箱鳴りの少ない再生音の良さを再確認しました。 そしてFE-87の隠れたポテンシャルの高さを発見したような気もしています。 音響迷路型による低音再生は、その増強効果は薄くはったり的鳴り方もしませんが、スピーカーユニット背面からの音を利用している点では密閉箱よりは有利です。 デモ効果はあまりありませんから一般受けしないかもしれませんが、素性のよさと素直さは特筆に価するような気がします。

もうひとつ言える事はチューニング無しで完成度の高い再生が出来るのもこのスピーカーの特徴でしょう。  この点はバックロードホーンや共鳴管タイプスピーカーと大きく違う所で、製作に失敗したり結果にがっかりすることが少ないスピーカーといえるかもしれません。(組み立て時に接合部に隙間が出来たら駄目だが!)  理論的にはオーバーダンピングではないQo0.7-1.0位のユニットが音響迷路型には合うはずですが、昔と違ってそんなスピーカーは余り見かけなくなってしまったのが残念なところです。(FE-87はQo 1.08とこの点でも相性が良い。)

暫し間があくかもしれませんが、みっともないデベソの外観??を何とかするため、フロントグリルを追加し私の自作スピーカーのライブラリーに入れたいと思っています。 バスレフの箱に比べれば小さいとは言えませんが、音響迷路型としては極めて小さなこのスピーカーは、小音量再生ではトップレベルの品位があり、当分の間我が家のメインスピーカーになるでしょう。 (家内は絶対にそれを望んでいます!)

 
 
  
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