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楕円形の額縁
   
2004/01/09

構想

年明け早々製作依頼があり予定ではステレオピンホールカメラのボディー製作の状況を報告する予定でしたが、友人からの飛び込みの依頼があり予定を変更しました。 無論今年の日曜大工プランにも入っていないものですが、納期が今月中ということですので趣味性主体のピンホールカメラは暫し棚上げとなってしまいました。

 依頼されたものは楕円形の額縁スタイルの案内板で、額縁を立てかけるイーゼルも一緒に作って欲しい!
 という内容です。  話を聞くと3月に予定している結婚式の披露宴会場の近くに置く案内板らしく、トール
 ペイントで華やかで可愛らしく仕上げたいとのことでした。

 大雑把なサイズとしてはA2判くらい(約600mm x 400mm)のもので額縁の縁の幅が60mm程度、額縁の
 厚みは12-15mmを想定しています。 イーゼルは額縁を載せたときに110-120cm位の最大高さを考え
 ているようですが、スタイル・構造はお任せとのことでした。

 額縁には通常ガラス板が嵌め込まれますが、楕円状に切り抜くのはかなり手間賃がかかりそうと考え
 1mm程度のプラスチック板を使うことを考えています。 またこの額縁はトールペイントで仕上げるわけで、
 私の役目は塗装を除く下地までの作業となりますが、トールペイントの作業には大変時間が掛かるため
 今月中に何とかという要望になっています。

 面白そうだなと言うことで引き受けてしまいましたが、楕円と言うことと外周は波を打ったような線で仕上げ
 たいということもあり、設計段階の型紙作りが鍵になりそうな気がしています。


設計

とにもかくにも設計の殆どは額縁の型紙作りが主になりますが、どうやって外周の波型のうねりを出すか暫し考えた末小さな円を並べ交互に接触させてそれをフリーハンドでトレースすることにしました。  私は相変わらずExcelで図面を描いていますが、この型紙も例外ではありません。 どのように描いたかは以下をご覧下さい。

註) Excelの画面上では1/2の縮尺で描いていますが、印刷する際に200%に拡大して実物大の型紙としています。

高さ560mm、幅410mmとして長方形を描きそれに内接する楕円を描きました。 額縁窓の部分は長径440mm、短径290mmの楕円です。

全周を32等分する線を引きました。 32等分にしたのは最も簡単だったからです。1/2 > 1/4 > 1/8 > 1/16 > 1/32 と半分半分にしてゆけばよい。)

直径15cmの円を描きこの円が楕円外周と放射状の線に一つおきに内接するようにドラッグして並べてゆきます。

16個の円を楕円外周に内接する作業が完了しました。

同じ直径15cmの円を、描き終わった2つの内接円に外接するようにドラッグします。

そうしたら内接の円と外接の円をフリーハンドツールで交互にトレースしてゆきます。(赤い線がそれ)

判りやすいようにフリーハンドでトレースした右上部分の拡大です。

トレースし終わったら縦横の中心線を除く総ての補助線を消して出来上がりです。

このように述べてしまうといとも簡単に短時間で済んだようですが、上記は出来上がったものを長めてこれで良し!とした部分だけを説明しており、実際には試行錯誤で4回書き直しています。   尚1/2縮尺の実物大型紙はこちらからご覧になれます。
最終的な型紙には窓の外側に点線が引いてありますが、これは裏側の切り欠きのガイドラインを表しています。

尚円形の窓内に挟む案内はA3の用紙に書くということで、出来上がった型紙をそのまま200%拡大で印刷してしまうと窓が大きくなりすぎますので、何度か試して180%の印刷で丁度うまいサイズになることを確認しました。



2004/01/16

額縁の加工

額縁を切り出す材料として最終的に何を使うか数軒のホームセンターを物色した挙句MDFを使うこととしました。

そう決めた理由は、

   1.トリマーで加工した切り口は合板の場合よりも綺麗になると思われる。
   2.ムク板などに較べて反りが少ないと思われる。
   3.強度はそれほど重要ではない。
   4.塗りつぶしてしまうので表面が平らであれば木目が綺麗である必要が無い。


 といったところで、MDFを使うのは珍しい部類に入り余っても仕方が無いので600 x 450mmにカットされ
 た12mm厚の物を買いました。 ¥550でしたが、割安とはいえないものの(カット材は単位面積あたりの
 単価が高い)
、手頃といえば手ごろな価格です。
 MDFに印刷した型紙を貼りジグソーとトリマーで切断・加工しますが、額縁の断面は左のような加工をする
 ことになっています。

半径6mmの丸め加工はボーズ面ビットで簡単に出来ますが、内側の裏側角を長方形に落とすのは少々厄介です。 このカット面が直線であればどうと言うことなく、ガイドとなる板をしかるべき位置に固定しトリマー台座をガイドに沿わせてストレートビットでカットすればよいのですが、内側断面は楕円曲線ですからこの手は使えません。 

結局コロ付きシャクリビットというビットを使うしか方法がないと判断しましたが在庫が無いので取り寄せてもらうことにしました。 注文したシャクリビットはコロ(ボールベアリング)を交換することによりシャクリ量が可変できるよう2個のベアリングが付属しています。  とここまでは良かったのですが、何と2週間も掛かるとの連絡があり加工作業は中断せざるを得ません。

約束の納期には十分まだ余裕があるため大きな問題はないのですが、世の中うまく行かないものです。

Excelで作った型紙ファイルをA4 4枚に分けて印刷しました。

額縁となるMDFに型紙ファイルを並べ繋ぎ目を調整しセロファンテープでつなぎます。

つないだ型紙をひっくり返し、切り込み線の内側に沿ってちぎった両面接着テープを貼ります。 (糊で貼ると剥がす時に水に濡らす必要があり、MDFがふやけたり、表面が粗びてしまう可能性を考え両面テープを使いました。)

MDFに型紙を貼って電動ジグソーで切断します。 (私は慣れがあるのと曲率が大きいので、電動ジグソーを片手でコントロールしていますが、曲線切りに慣れない場合にはこちらで解説している方法を参考にしてください。)

外側そして内側の線に沿って切り落としました。

切断面を#120のサンドペーパーを丸棒(直径25mmを使いました。)に巻きつけて滑らかにします。 MDFは柔らかいですから短時間で終了します。

その後6mmコロ付きボーズ面のビットで額縁表側の内外の角を成形しました。

ボーズ面ビットで成形した後のクローズアップです。


時間がもったいないのでイーゼルの設計を最終的なものとすべく検討を加えました。 設計と言うほどのこ
とも無いのですが一応折畳式にして工具が無くても組みあがるように考えました。

柱は3本ですがラワンの角棒(24 x 30mm)を使いました。 長さは120cmあれば十分ですが木取りの良
い長さのものが無いので6尺の物を購入しました。 まあ無駄と言えば無駄ですがこのままの長さで作っ
てしまい、実際に額縁を立てかけて適切と思われる高さで切断すれば良し!と考えています。


 この3本の柱先端部分に蝶番をアルミ板を介して取り付けそれぞれが開くようにしま
 す。 左の図のブルーの蝶番1個は左右の柱に、ピンクの蝶番は真中の柱に固定さ
 れますが、3mm厚アルミ板(空色の部分)に蝶番の一方の羽根をを固定してやるこ
 とにより、アルミ板がつなぎの役目をするわけです。
 一時は回転軸を埋め込んで云々などとややこしいことも考えたのですが、これがい
 ちばん簡単な方法だと思われます。

 前側の柱2本の開き角度は薄い板を固定することにより固定されますが、その固定
 にはツマミを使用しツマミに額縁を載せるように考えており一石二鳥のアイデアだと
 思います。

ツマミをねじ込むボルトは柱に埋め込んでおきますから、開き止めの
板をボルトに通してツマミをくるくる回せば固定でき道具なしで組み立
てられます。 
真中の後ろに引く柱の開き止めはチェーンを使うことにします。 
チェーンとしたのは傾き具合や安定度合いを簡単に調節できると思っ
たためです。

柱は仮組立てして額縁を載せてみて高さを決めて切断後、サジ面の
ビットで柱の総ての角を削ってやり、その後かなり濃い目のブラック
オリーブ色の油性ニスで仕上げる予定です。 
また柱の先にはゴム脚を取り付けて滑り止めとします。

以上が考えているイーゼルの構造で、披露宴会場において雰囲気を
おかしくしないでなお且つトールペイントの額縁を引き立ててくれるの
ではと期待しています。


                                                     ---- イーゼルを作る材料 ----



2004/01/23

額縁の完成

遅ればせながら入荷したトリマービット(コロ付シャクリ面)を使って額縁裏側の内側の角を3.5mm x 9mmシャクリました。 
次に押さえ板を作る型紙を新聞紙で作り2.7mm厚の手持ちのカラー合板に貼り付け切断しました。 切断した楕円状の円盤がきちっと嵌るよう周りを木工ヤスリで削って調整しOKとなったらその円盤を今度は型紙として塩ビ板に線を引き切断します。 
この塩ビ板も周りを木工ヤスリで成形しきちっと嵌るようにします。 

シャクリの深さは3.5mmとしましたが、これは押さえ板厚(2.7mm) + 塩ビ板厚(0.5mm) = 3.2mmとなり、間に挟む紙の厚さで丁度良い厚みとなるはずとの計算によります。 最後の作業が押さえ板を固定するトンボのネジ止めで、8箇所に固定しました。

これらの様子は以下の写真をご覧下さい。

取り寄せに時間の掛かったコロ付シャクリ面ビット。 シャクる長さは2段可変。

ビットのアップ。 口径の異なるボールベアリングが2段に重ねてありこれを入れ替えるとシャクリ量が変わる。

シャクる部分の収まりはこのようになっています。

トリマーで裏側の内側角のシャクリを終えたところです。

シャクった部分のクローズアップ。 短時間で終了しますが、トリマーならではの加工と言えます。

押さえ板を作る型紙作りで、額縁外周より小さく新聞紙を切り抜いてセロファンテープで周囲を貼ります。

先ほどシャクった角を指でこすって切断線が判るようにします。

その線に沿ってカッターナイフで切り込んでゆきます。

切り抜いた型紙を押さえ板(ここでは2.7mm厚のカラー合板を使った。)にセロファンテープで貼り付けます。

電動ジグソーで切断し周りを木工ヤスリで成形しながら調整し額縁裏にぴったり嵌ればOK。

押さえ板を今度は型紙として塩ビ板にあてて外周の線を引き、キッチンバサミで切断。 気温が低いと割れやすいのでヘヤードライヤーで塩ビ板を暖めながら切断しました。

これまた外周を木工ヤスリで削って調整しています。 額縁に塩ビ板、押さえ板を載せてトンボ8個を額縁に固定して完成。

固定したトンボのクローズアップ。 額縁と押さえ板間には僅かな段差がありますが、更に紙が挟まると面一になるはずです。

完成した表側。 額縁内部は黒くなっていますが、たまたま手持ちのカラー合板の色がそうだったためで特に意味はありません。


イーゼルの製作

イーゼルの製作で一番厄介そうなのは3つの蝶番を固定するアルミ板の加工でしょう。 小さな物ですが蝶番を引き剥がすような力が掛かり易い為なるべく丈夫に作る必要があります。 最初はエポキシで貼り付けるだけと考えていましたが、使う手許にあったアルミ板は5mm厚でしたので、M3の雌ネジを切って蝶番を固定した後アロンアルファを沁み込ませて接着と言うことにしました。 

例によってやりすぎの感じがしないではありませんが、商品ではないので過剰品質気味のほうが安全であるという考え方の構造としています。

3本の柱は145cmと少々長めに切断した後蝶番ブロックを固定し、額縁受けとなるツマミの位置を現物合わせで決定後左右の開き止めの板の加工、取り付け、そして真中の柱に前後開き止めのチェーンの片側を固定、最後に脚の先端に滑り止めのゴム脚を取りつけて仮組立ては終わりました。

この状態で依頼主に現物を見てもらった上で最終的な高さや額縁部分の傾きを決定し柱の長さやチェーンの長さをファイナルとします。 その後分解して柱の角を成形した上で着色ニスで仕上げて完成ですが、それらは後日となります。

このように書いてみても判りにくいと思いますので、それらの作業の推移は次の写真をご覧下さい。

5mm厚のアルミ板を19 x 30mmにジグソーで切断しヤスリで切り口を研磨しました。

蝶番取り付け穴計7箇所の位置にセンターポンチで印をつけます。

2.5mmのドリルで貫通穴をあけます。

M3のタップで雌ネジを切っている所です。 予めCRC-556を垂らして切りやすくしてあります。

雌ネジをきり終わったら穴のバリを削り取って完了。

M3長さ4mmのネジで蝶番を固定しました。 これは内側から見たところです。

同じく外側から見たところでこの面がトップになります。

出来上がった蝶番ブロックにイーゼルの柱3本を固定しました。

イーゼルを開いて立て額縁を載せて後ろから見たトップ部分はこんな感じになります。

同じく前から見たところです。(額縁は外してあります。)

額縁を受けるツマミはこのように開き止め板を固定するネジとしても使われています。

柱と開き止め板を固定するナットの役をしているツマミのアップです。

真中の柱の内側にはこのように前後の開き止めとなるチェーンの片端が固定されています。

折り畳んだ状態のイーゼルと楕円形の額縁。

最終的な高さと額縁の傾き具合を依頼主に確認した上で柱の長さやチェーンの長さを決定しますが、基本的な完成後のイメージはこんな感じです。

大変シンプルな感じのイーゼルですが、強度や機能に問題なさそうです。 柱の長さが決まったらトリマーで柱の角を成形し塗装する予定です。

 私の残る仕事はもう僅かとなりました。 額縁本体は至急トールペイントをされる方に渡さねばなりません。
 やれやれなんとか責任は果たしたかな?と言った所です。




2004/02/13

イーゼルの塗装

トールペイントされた額縁が戻ってきましたので、最終的なイーゼルの高さを確認し脚を切断そしてトリマーで脚の角を加工したうえ塗装に入りました。  塗り面積はかなり小さいので油性着色ニスとし色はブラックオリーブを選んでいます。 この色が最適だったかどうかは別としてメーカーが展示しているブラックオリーブはかなり厚塗りであるため見方によっては黒に見えますが、2-3回塗りではダークグリーンと言う範疇の色になると考えています。

トリマーによる角の成形はサジ面ビットでやっています。 これだけで単純な四角の断面よりそれらしさが出ると思います。 但し上部10cmだけは蝶番の取り付けがあることと額縁に隠れるため成形してありません。

以上の作業を玄関内収納ベンチの塗装と一緒に済ましました。 そして完成となりますが以下の写真でそれらをご覧下さい。

脚の成形を終了し2回目の塗装をしました。

上部の部分のアップ。 見る角度で随分と色が変わって見えるブラックオリーブ色。

こちらは脚の先端側。 サジ面ビットでカットした角の様子がわかります。

乾燥中の開き止め板。 元々の色がかなり白いので黄色っぽくなっていません。

塗装が乾燥後最終組立てをしてトールペイントがされた額縁を載せました。 後方の開き止めの鎖はあとで長さを決めて固定します。

真横から見たところ。 シンプルこの上なしといったところです。

私が施したのではないのですが、額縁部分のアップ。 トールペイントが華やいだ雰囲気を出してくれています。

改めて塗装した効果というか(今回は特にトールペイントだっただけに)、塗装仕上げでもって如何にバリュー感が上がるかを痛切に感じました。 披露宴は3月とのことですので、これをもとに額の中に入れる案内を制作されるのでしょう。

披露宴の当日に飾られた写真が届きました。 おっと前掲の私が撮った写真は上下が逆さだったようです。

 
  
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