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アイアン センサー
   
2005/04/15

構想と予備実験

収納家具を作る際に地震による倒壊防止で最も効果的なのは、家屋本体に固定してしまう方法です。 また地震対策は別としても、吊戸棚などの場合にはどうしても家屋(具体的には壁や天井)に固定しないとなりません。

その際に壁のどこでもネジが締め付けられるケースは大変稀であると思われます。 というのは現在最もポピュラーな内壁の構造は、柱・間柱を主とした構造枠の上に12mm厚のプラスターボードを貼りその上に壁紙を貼るというのが多く、構造枠の部分がどこであるかを特定しないとネジを効果的に締めこむことは出来ません。  私の場合大型リフォームをするときに、吊戸棚や壁面に何かを固定する可能性が高いと考えた部屋は壁紙貼りの下地に12mm合板を指定して、どこでもネジが打てる状態にしました。

しかしそれでも大きく重たい額を掛けたい?などという事態が発生します。 そんな場合にネジ・釘を打てる位置を特定する道具が、今回紹介するアイアン センサーです。

これと同じ目的に物を釘位置探索器として以前に紹介していますが、基本的な原理は同じであるものの検出感度を大きく改善したことと、より簡単に作りやすくした点が異なります。

ホームセンターなどでこのような目的のものが何種類か販売されています。

  1.マグネットを使って釘やネジを検出する純メカニカル構造の物。
    検出感度は12mm - 15mmと余り高くないが電池不要。 価格は\1,100 - \1,500位。

  2.超音波を使って障害物(柱・間柱などの構造物)を電子的に検知。
    検出感度は19mm - 70mmとかなり高感度だが、それに応じて価格も\3,000 - \10,000と高くなり電池が必要。

  3.細い針をさして障害物(柱・間柱などの構造物)を物理的に検出するタイプ。
    検出感度は15mm位まで、\1,000前後と安いのがとりえだが針は消耗品。
    また壁面に傷が付く(0.6-0.8mmの穴)があくのと電気配線に当たると感電する危険性あり。


日曜大工的には1.が一番合理的ですが、殆ど見掛けないのと検出感度が低い問題があります。

釘位置探索器として既に紹介したものはマグネットさえ入手できれば簡単に自作できますが、検出感度が8mm位と大変低く、参考にしたU.S.A.製の物に比べて実用にはなるとは言え劣っていたのが反省点として残っています。

その後マグネットが回転する軸受けを如何に摩擦の少ないものにするかあれこれ考えていたのですが、ふっとその昔糸吊りスピーカーを思い出し、「あの原理を使えば簡単に極軽く動作する軸受けが出来る!」とばかり、偶々入手した強力な磁石を使って検証実験をしました。 

回転軸での摩擦をゼロにした軸受けにトートバンド方式というのがあります。 英語つづりではTaut band)で、「ぴんと張った帯」と言う意味ですが、細い帯で宙吊りになったものが帯の捩れの力で回転すると言う構造で、原理的に摩擦はありません。 一般には馴染みが薄いものの電圧計とか電流計のようにぐるぐる回転するのではなく、ある一定の角度内でのみ回転するものに使用されています。

そのトートバンドの材料として糸(どこにでもある普通の綿糸)を使えるだろうとの想定です。 いきなり全体を作ってしまうのは早計なので、どの位高感度な物が出来るのか予備実験をしました。  組み合わせたマグネットは希土類磁石と呼ばれる大きさの割に極めて大きな磁力を持つもので、例のピップエレキバンも希土類マグネットを使っていますし、オーディオのイヤーフォーンでも使われています。

入手したものは5φ x 5mmの小さなものですが、材質はサマリウムコバルト3,500ガウスの磁力との仕様です。 入手容易なピップエレキバンではちょっと小さ過ぎて(感度が落ちる)使えないと思います。

ラミン棒にこのマグネットを固定し簡単な実験装置を作りテストしましたが、多少実際とは異なる条件が幾つかあるにせよ、予測される実用検出感度は何と30mm位まで取れそうなことが判りました。  どうにか検出可能!というレベルですと50mm離れたものでも感応します。

実験結果としてかなり自信を深めましたので、その驚くべき高感度の様子を以下の写真でご覧下さい。

入手したサマリウムコバルトマグネットのクローズアップ。 実際の大きさは直径5mm、長さ5mmの小さなマグネットですが、3,500ガウスの磁力があります。

センサー本体はのラミン棒にマグネットを埋め込み、反対側は重量バランスを取るウエイトを埋め込み、中程を糸で縛っただけの簡単なものです。

マグネットを埋め込んだ検出部先端のクローズアップ。

反対側の重量バランスを取る部分のクローズアップ。

そして糸を縛りつけた回転軸となる部分のクローズアップです。

センサー本体の糸の両端をぴんと張って(正にトートバンドです。)感度試験の準備完了。

実験装置全体はこんな感じでピンと張った糸はセロファンテープで固定しています。 センサーが入っている隙間は約14mmです。

実験開始。 真上から見た所ですが、センサーは糸の捩れの力でこんな位置に静止しています。

マグネット先端から約50mmの所に3.8φ75mmのネジを置きました。 僅かにセンサーがネジの方向に回転し止まっているのが判ります。 実用にはならないとはいえ、かなりの高感度です。

そのネジを30mmの距離まで近づけました。 センサーは完全にネジの方向に向いています。

そのままネジを上にずらすとセンサーもその方向に回転し静止しています。

 動画にて以上の様子をお見せします。

 こちらはセンサー先端から約50mm離れた線上を上から
 ネジを移動していったときの様子で、センサーはネジの
 方を完全には向かないものの、検出はしています。

 こちらはセンサー先端から約30mm離れた線上を上から
 ネジを移動していったときの様子で、最後に指からネジ
 を離すとネジはセンサーのほうに向いてしまいます。


 動画を見るにはQuick Timeが必要ですので、お持ちで
 ない方はこちらからダウンロードしてインストールしてくだ
 さい。

反対に下の方へずらしても追従してきます。




2005/04/22

実用モデル製作詳細

充分な感度が取れることが検証できたため、実際に使えるものを作りました。
半日で完成すると思いますし、マグネットだけは特殊であるものの他の材料はそれこそ極僅か
な端材で作れてしまいます。

 私が作った物の寸法図は左のようなもので、心臓部となるセンサー部
 の断面図は右の図ですが、製作上の誤差はかなり甘くても充分実用
 になると思いますし、万が一うまく行かなくて作り直すのも厄介な作業
 ではありません。

 ただひとつだけ気を付けないといけないのはマグネットの扱いで、小さ
 いながら大変強力な磁力がありますから、製作が完了するまでに鉄粉
 が付かないように、また磁力データが消えてしまう可能性のある、クレ
ジットカード、定期券などや機械式腕時計などは絶対に近くに置かないで下さい。

材料としては、3mm厚の板少々、1mm前後のプラスチック板少々、綿糸、の丸棒少々(角棒でも可)1mmの糸半田か錘になるような非磁性体の針金(銅線、真鍮線)を少々と言った所です。 組み立てには木工ボンド、瞬間接着剤、セロファンテープを使います。

構造としては3mmの板で作った箱の中に糸吊りのセンサーを取り付けて、プラスチックのカバー
をマグネットが当たらないようぎりぎりの所に被せてやります。 またセンサー部が必要以上に
回転しないようストッパーを取り付けて、センサー後部がこれに当たって止まる工夫がいるくらい
で、これらの原則を守り組み立て後に内部にゴミや鉄粉が入らないよう密封することぐらいが大
事な部分です。

これらはごちゃごちゃお話するより以下の写真をご覧になれば理解しやすいでしょう。

35mmの長さで切断した丸棒両端にの穴をあけます。 片方は深さ2mm、もう一方は7mmとします。

綿糸をこのように丸棒にくくりつけ縛ります。 糸は長さ10-15cm位で切断しておきます。

同様にもう1本糸をくくりつけて縛ります。

2本の糸を丸棒の深さ2mmの穴側から16mmの位置に寄せてピンと貼り、瞬間接着剤で糸を固定します。

3mmのドリルを巻き軸として3mmのドリルに、1mm径の糸半田か非磁性体の針金を14回巻きつけて切断し抜き取ります。

糸半田を巻いたもの(右)7mm深さの穴に、マグネット(左)2mmの深さの穴に差し込みます。

こうして糸をつかみピンと張るとマグネット側が軽すぎてこんな感じになりますが、反対側の糸半田をニッパーで少しずつ切り取りながらバランスの確認をします。

こんな風になればOKで私の作った物は3巻き近く切り落としました。 その後マグネットとこの錘は瞬間接着剤で固定し、センサー部は完成です。

センサーのケースを作る部材寸法図です。 板厚は3mmです。 35 x 32mmの板にはキリで指定の位置に穴をあけます。

3mm厚の板から切り出した部材です。 カラー合板を使いましたが特に意味があるわけではありません。

ストッパー(小さな板)はこの位置に木工ボンドで貼り付けます。

その後に箱全体を木工ボンドで組み立てます。

穴の内側から糸を通してセンサーが中央にくるよう調節しながら、糸をピンと張ってセロファンテープで固定します。

1mm厚のプラスチック板(塩ビ、PET、アクリルなど何でも良い。)をこの字型に折り曲げて蓋にします。

 プラスチックの蓋を被せてマグネットの先端が当たらないよう確認したうえで、瞬間接着剤で蓋とセンサー本体の箱を接着
 し、完成です。 カバーには隙間が出来ますので後でシリコーンやエポキシパテ等で隙間を埋めてしまった方が良いです。

 センサー先端から25mmの位置でネジを上から移動した様子です。 無論完全に反応しています。

 センサーから30mmの位置で同様にネジを上から移動しました。 こちらも完全に反応しています。


  動画にての様子はこちらです。
  (75mmのネジを30mm離れた位置
  から上下に動かしながら徐々に、
  10mmまでセンサーに接近したとき
  のセンサーの反応が見られます。
 左は検証実験のときと同様50mmの位置で釘に反応を示し若干振れています。
 右は完全に釘を遠ざけた時の様子で、無反応です。


最終試作品は予備実験で得ていた結果とほぼ同様の検出感度があり、30mm離れた鉄製のネジ・釘の方向を完全に指し示すことが可能です。 ステンレスは完全な磁性体ではないため若干感度が下がりますが、それでも20mm離れたステンレスのネジ・釘の方向を指し示します。 これらの結果は十二分な実用性能を意味しており、前作(釘位置探索器)より遥かに優秀です。

実際の使い方としては、壁紙が貼られているプラスターボード(石膏ボード)や合板は、ほぼ一定間隔でネジや釘を使って柱、間柱、補強棒に固定されています。 そして大きな壁であっても間柱、柱、補強棒は30cmから45cmのスパンで入っているのが普通ですから、それらに打ちつけられた釘やネジの位置を検出することにより間接的にそれらの存在位置が特定できるわけです。

間違いなくそのような間柱がある例としては、電灯線のコンセントの左右です。 埋め込まれたコンセントボックスは必ずその左側か右側に間柱や柱がありますから、コンセントの左か右を上下にこのセンサーを移動してみてください。
必ずぴくっとセンサーが動く所がありますので、そこで横方向縦方向にセンサーを移動して、数mm以内の精度で位置を特定できます。

----- 完 -----

ここで使用しているサマリウムコバルトマグネット(5φ 5mm、3,200ガウス)を希望者多数の場合には郵送料込みで1個\700.-、他の商品と一緒の場合には\550.-にてmini-Shopで販売いたしますので、ご希望の方はこちらからご注文ください。  納期は4月末を予定しています。


 
  
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