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USB接続ヘッドフォン アンプ
   
2014/05/23

構想

ポータブルのヘッドフォーンアンプはコンパクトさと音質にかなり拘った物を製作し、外出した際に音楽を楽しむ道具として十分に活用していますが、ノートブックパソコンを持ち出したときには別なアプリケーションが必要ということで、それなりに考えてきました。 この別なアプリケーションとは音声のD-A変換をパソコン外でやり、スイッチングノイズまみれから開放してやろうということです。

早い話がUSB接続のD-Aコンバーターを介したヘッドフォンアンプを作ればよい訳ですから、そのような市販の物を購入してヘッドフォーンアンプとパソコンの間に入れてやればよいのですが、あれこれその都度繋ぐのが面倒なのと単に完成品をそのまま繋ぐのでは能がないと考え、USBオーディオキットを利用して若干の改造を含んだD-Aコンバータ内蔵のヘッドフォンアンプを考えることにしました。

さてUSBオーディオキットも様々な物がありますが、購入したのは16bitのD-Aコンバーターでサンプリング周波数44.1KHzに対応した標準的な仕様です。 キットの製作は極めて簡単ですが、バラック状態で色々実験してみると音声出力はローパスフィルターを通っていないので、スイッチングノイズが盛大に残っています。 とは言ってもこれは可聴帯域より遥かに高い周波数の話ですから耳には聴こえないのですが、インターネットで調べてみると先輩諸兄がそれらに言及している記事が沢山あり、何らかのローパスフィルターを追加した例を見受けます。 そこで最も簡単な2次のローパスフィルターを組み込むことにしましたが、その回路乗数はそれら先輩の使った定数をつかわさせてもらうことにしました。

さてヘッドフォーンアンプの部分ですが音質に最も影響するオペアンプはOPA2134としました。 そのポイントは若干華やかな音色が私の好みであるのと、オフセット電圧の発生が僅少であるため増幅度の低いヘッドフォンアンプの場合、オフセット電圧低減回路は不要で済む点にあります。 但しこれまでの経験で低インピーダンス負荷に対して出力が低下してしまうことを経験しています。

そこで出力にボルテージフォロワーを並列に追加して出力倍増をねらった通称A47アンプを採用することにします。 このアンプはオフセット電圧が大きいと対策が厄介なのですが、OPA2134であればなんら問題は発生しません。

筐体についてはポータブルヘッドフォンアンプで考えた完全シールド構造を採用します。 これですと木目を美しく見せられる部分もありますから好都合です。

ということで現在考え付いている回路図は右の通りです。
一番左は6dB/Octのローパスフィルターを2段重ねたもので遮断周波数
は20kHzになります。 このようなフィルターは高インピーダンスで受けた
いのでその次にボルテージフォロワーを挿入しています。 これらがDA
コンバータとの間の追加回路です。 ボルテージフォロワーの出力には
LINE OUTとしてRCA ジャックが繋がっていますが、これはUSBオーディ
オキットの出力端子を流用します。 但し原回路と違って間にローパス
フィルターが入ります。

その右にはAUX Inと称するジャックが入りますが、仮にiPod Nanoなど別な外部機器を繋ぎたい時に使います。 ジャックにはスイッチ機能付の物を使いますから、接続するとDAコンバーターは切り離されます。

 さて基板のレイアウトと全体の大きさは左の図のようになります。
 一番大きな図は上から見た透視図ですが、写真を嵌め込んだ部分がUSBオーディオキット部分で
 す。 その黒い基板の右上に赤と白のRCAピンジャックが見えますが、これに繋がる結合コンデン
 サーを外して、そこにローパスフィルターを入れますが、そのローパスフィルターは黄緑色の基板の
 右上になります。

 黄緑色の基板の左上にはDC-DCコンバーターが入り、USBから+5Vを取り出してこのコンバーター
 で±5Vを得ます。 但しこの出力にもスイッチングノイズが載っているので、LC5本を使ったフィル
 ターでノイズを除きます。

 肝心なアンプの部分は横方向にOPA2134を2本並べました。 その左側が出力倍増を図るボル
 テージフォロワーで右が通常のアンプです。

 大きさは、118 x 55 x 26mmとまずまずの大きさに収まったと思います。 前面から見るとボリューム
 のツマミにミニフォーンアジャックが2つでシンプルそのもので、電源スイッチもありません。
 (USBコネクターをパソコンに繋いだら動作しっぱなしということです。)

 ケースの厚みを決定するのはUSBオーディオ基板に載る大きな電解コンデンサーですが、ボリュー
 ムツマミが厚み方向の中央になるようにするとこの26mmの値になります。


さあこれで製作開始としたいところですが、電子工作では最近常としている、『一定時間(2〜3週間)経過後に全体を見直して問題点を修正する。』のルールのため、暫し時間を置きます。 そうしないと私の能力の低さでしょうか? 製作途上での変更や、出来上がってからあそこはこうすべきだった、こっちのほうが良かったなどの問題が純然たる木工よりも多く出てしまうからです。 ポータブルLEDランプ2点、LEDランタン、LEDリングライトもルールに従って休眠中です。



2014/05/30

USBオーデイオキットの組み立て

全体の構想としてはまとまっているつもりですが、大幅な変更は出来ないUSBオーデイオ部分について、その動作を確認すべくキットを組み立てることにしました。 キットは秋月電子通商の『USBオーディオDA コンバーターキット』を使っています。 その詳しい内容はこちらからご覧ください。

表面実装部品は既に半田付けされており、残る12点のリード部品の半田付けで済みますからゆっくりと確認しながらやっても数時間で組み立ては終わってしまいます。 但し以下に説明するような若干の改造を加えますが、右の回路図の赤で示した部分が改造や線の引き出しをする部分です。

回路図中右側の部分はC5C6を取り付けず、それらの+リードが付く所に本体の
点に接続するワイヤーを接続し、-リードが付く所には本体のバッファーアンプの
出力であるA'点からのワイヤーを接続します。 こうするとUSBオーディオ出力はローパスフィルターに入りスイッチングノイズを削ってから、バッファーアンプを通過後RCAピンジャックに戻って音声出力として取り出せます。
(USBオーディオ基板の改造は最小限にしています。)

また左側は+5Vの引き出しですが、色々検討した結果USBのコネクターから最初に繋がるポリスイッチの出力側に+側のリード線を繋ぎます。 −側のリード線は基板裏側のC14の−側のピンの部分に半田付けします。 それらの様子は完成後の以下の写真も参照ください。

C5、C6を除いて全ての部品を半田付けしました。 半田付けする部品点数は12しかありませんから、それほど時間は掛かりません。

ローパスフィルターへの引き出し線が緑・紫の下側の線で、上側は本体基板のバッファーの出力側からの戻りの線で、この上のRCAピンジャックに繋がります。 GND側はこの写真には見えませんが、一番下にあるR8、R9の左側の脚にワイヤーを半田付けしました。

F1と書かれた下がポリスイッチでその下側(出力側)に+5Vのプラス側引き出し線を半田付けしました。 これ以外には大きめの半田面積部分はありません。

+5Vの−側は安定して接続できる部分が裏側にしかありませんでした。 これはC14の−側リード線の部分に半田付けしたところです。

配線が終了したUSBオーディオのキットです。 これが背面側を斜めに見た常態となります。 ほぼ中央下の司会部分がUSBのコネクターとなります。 これにヘッドフォーンを仮接続して、立ち上がっているPCに繋げば自動的にドライバーがインストールされます。

そしてコントロールパネルのサウンド、再生のタブの項目から『USB Audio DAC』を選択すれば設定は終わりで音声がヘッドフォーンから聴こえます。 青く光っているのは通電していることを表すLEDのようです。 尚赤・黒のワイヤーには4.5Vの電圧が出力できておりますが、これをDC-DCコンバータに繋いで±5Vを取り出します。

聴こえてくる音色はかなり分解能が良い歯切れの良さはあるものの僅かにざらつきを感じる気がします。 これがスイッチングノイズの影響なのかどうかは判りませんが、もうちょっとみずみずしさというか潤いが欲しいな?という気がしました。




2014/06/07

再度の脱線と新たな方向

私は電子工作の場合かなり構想段階にて時間を掛けて進むようにした!と申し上げていますが、そうする理由ドンピシャなことが起きました。 どんな変化が起きたかは後で述べますが、兎も角電子工作の場合設計内容がめまぐるしく変わることが多く、製作を急ぐと中途半端で満足度の低いものになってしまう!というのがその理由です。

さて何が変わってしまったかというと、心臓部のヘッドフォンアンプに使うオペアンプです。 これまでの設計では私が最も好きなOP2134を3個使う構成でした。 そしてそれらを±5Vで駆動する考えでいました。 OPA2134の駆動電圧は最高で±18Vですのでかなり低い駆動電圧ですが、USBバスパワーをDC-DCコンバータを通して得るのであまり高く出来ないと考えて±5Vで抑えましたが、見方を変えると9Vの電池で駆動するよりは高い電圧となるので問題なかろう?程度に気楽に考えていた節があります。

それがある日日課の5.5kmの散歩中にデスクトップ型AC電源のヘッドフォーン専用アンプの構成を考えていたときにその異変が起きました。 そのアンプでは出来るだけ薄くすべくトロイダルトランスの電源とし、電源はレギュレータを使って±5Vでした。(奇しくも本テーマと同じ電圧。) そして低電圧でも大きな駆動能力を持つAD8397を使う考えでいました。 このAD8397はアルカリ乾電池3本の電源(±1.35V〜2.25V)でLME49720などの超人気で優秀なオペアンプをしのぐ素晴しい動作をしていましたので、±5Vという電圧は十分すぎる値でした。 従ってそのデスクトップヘッドフォーンアンプだけを考えているのであれば、決して突飛な組み合わせではありませんでした。

歩きながら頭の仲で2つのヘッドフォーンアンプを並べてそれらの構成を比較しました。 経験からするとLME49720とAD8397では電源電圧が同じであればAD8397の方が低インピーダンス駆動能力が高いです。 (以下の比較表を参照ください。)

動作
電圧
負荷
抵抗
AD8397A LME49720
最大出力電圧 最大出力電力 消費電流 最大出力電圧 最大出力電力 消費電流
±4.5V
(新品)
300Ω 3.9V 50.7mW 21mA 2.4V 19.3mW 25mA
100Ω 3.8V 144mW 31mA 2.0V 39.2mW 30mA
50Ω 3.8V 289mW 47mA 1.6V 52.9mW 33mA
30Ω 3.7V 456mW 69mA 1.2V 48.2mW 33mA
16Ω 3.3V 681mW 104mA 0.8V 38.1mW 33mA
±2.7V
(寿命)
300Ω 2.0V 13.3mW 18mA 1.2V 4.7mW 23mA
100Ω 2.0V 40mW 23mA 1.0V 9.8mW 25mA
50Ω 2.0V 80mW 31mA 0.8V 13.2mW 27mA
30Ω 1.9V 120mW 41mA 0.6V 13.5mW 30mA
16Ω 1.8V 203mW 64mA 0.5V 13.2mW 33mA

音質の好みから選んでいるOPA2134はLME49720よりも駆動能力が低いので、低インピーダンス駆動能力を補うためにバッファーを追加するのは不可欠なのですが、消費電流が増加してしまいUSBバスパワー環境では余り面白くありません。
本当はOPA2134の代わりにその上のクラスのOPA2604にしたいのところですが、電源ON時のショックノイズが結構多いオペアンプなのでその防止回路など周辺部材が増えて外寸が大きくなってしまいます。(リレーの追加が大きい。) デスクトップヘッドフォーンアンプでは電源はトランスでAC100Vを変換して整流して直流電圧を得ますがレギュレータを使わない方がノイズが少ないので、オペアンプの駆動能力の高いものと組み合わせることでレギュレーターを外し簡潔明瞭な電源回路に出来ます。

こんなことを約1時間歩きながら考えた結果、2つのヘッドフォーンアンプのオペアンプを入れ替えれば解決することに気が付いたわけです。 それは

ポータブルUSBヘッドフォンアンプ
AD8397が採用されると±5Vは十分な駆動電圧になり、低インピーダンス駆動能力アップのボルテージフォロワーの追加も不要です。 OPA2134 + AD8397 で25mA位の消費電流でありボルテージフォロワー追加時よりも減少するでしょう。 AD8397の電源ON時のショックノイズは小さい事を実証済みで特別な対策は不要のはずです。 オフセット電圧削減のためにパッシブDCサーボ回路を追加しますが、抵抗・コンデンサー各2本で済むので、オペアンプ1個、混合抵抗4本が減りますから外形の増加は起きないと思われます。

デスクトップ ヘッドフォーンアンプ
OPA2134の上のOPA2604を採用し手持ちのトロイダルトランスで約±10Vの駆動電圧でレギュレーター無しの電源とします。(電源ON時のショックノイズ対策回路は不可欠。)  低インピーダンス駆動能力を高めるためボルテージフォロワーを追加したA47型構成とします。(実はA47アンプの原型はOPA2604なのです!!) USBオーデイオ部分はキットを使いますがバスパワーではなくヘッドフォーンアンプの電源から降圧して供給します。

 以上を念頭に置いてポータブルUSBヘッドフォーン
 アンプの回路図を変更したのが左です。
 そしてそれを反映した新しい基板レイアウトは右の
 とおりです。  左の回路図では一見してシンプルに
 なったのが判ります。 但し以前の回路に対して
 ヘッドフォーン出力に22Ωの抵抗が追加されていま
 す。 これは発振防止として働くのと、ヘッドフォーン
端子がショート時にオペアンプが壊れない為の安全弁です。 また電源回路のフィルターに1Ωの抵
抗が追加されていますが、これはフィルターカーブに発生するピークを抑える目的です。

基板のレイアウトですが、以前は2つのオペアンプが並ぶと前後方向には入らないため90度回転させて収めましたが、今回は前後方向に信号の流れを持って行けるのでボリュームも中央に配置してみました。 入力コンデンサーや反転入力に繋がるコンデンサーは1μFと大きくなりレイアウトをうまく収めるのにちょっぴり時間が掛かりましたが、うまくシンメトリーのレイアウトに収まったと思います。

尚基板のレイアウトで特に留意したのは左右に開きスペースが3mm残るようにしたことです。 これはロの字型のアルミフレームの内側に厚さ1.5〜2.0mmの発泡塩ビ板を貼り付け、この上に基板を載せて瞬間接着剤で固定します。 同じ構造のケースはポータブルヘッドフォーンアンプで採用していますが、その時は基板の端まで部品を取り付けてしまったため、ショート防止の為にアルミフレームをあちこち削らないとならない羽目に陥りました。 その経験から出た学習効果がこんな所に出てきています。



2014/08/22

製作開始

2ヶ月以上の間が空いてしまいましたがようやく製作開始に漕ぎ着けました。 このテーマではUSBバスパワーで全ての動作をさせるのが基本になっていますが、PC、USBオーディオ変換装置、DC-DCコンバーターと3つの機器がシリーズに繋がっており、どの段階で発声したノイズかを分別するのは極めて困難ですが、オシロスコープで観測した範囲では250KHz近辺が最も低そうです。 ということは耳に聴こえる可能性はほぼゼロであり余り気にしなくても良いはずなのですが、長年オシロスコープにははっきりとしたノイズ波形が見えないことに慣れてきたアナログ人間であるラジオ少年(今やラジオ爺さん!)には少なければ少ないほど精神的に楽になるので、挿入するフィルターの動作確認を3段階にて実施しました。

以下の写真とその説明をとくとご覧ください。

メイン基板は最も小さな穴あき基板の周囲を僅かに削ることで所定のサイズになりました。 フィルターとしては予定していた全ての素子を取り付けた状態です。 それにUSBオーディオ基板を繋ぎ赤黒のワイヤーで電気を取り出しています。

最初にDC-DCコンバーターの出力にフィルター素子は何も繋がず、プラス、マイナスそれぞれとGNDの間にダミーロードとして200Ω(100Ωを2本直列)を繋ぎました。  これは計算上電源の出力電流は24mAと見込まれ、プラス端子またはマイナス端子とGNDの間は5Vですから、5÷0.024 = 208で200Ωとしたわけです。 この時は右のオシロスコープの写真のように最も長い周期が約4μsec、P-P値が28mVもあるノイズが観測されます。 周期が4μsecは250KHzですから耳には聴こえませんが、P-P値28mVは強烈です。

DC-DCコンバーターの±それぞれの出力にチョークコイル(33μH)を繋ぎ、それらの出力端子を47μFでショートした格好のフィルターで実験しました。 この効果は絶大で周期4μsecのノイズは見えなくなり2μsec毎にリンギングのようなノイズが残るのみとなりました。 そのリンギングの様なノイズのP-P値は8mVです。

更にプラスまたはマイナス端子とGNDの間に47μFを追加しました。 これによる効果は劇的ではないもののリンギング状ノイズのP-P値は6mV程度に減少し、リンギングも短時間で収まるようになっています。 これで万全と断定は出来ませんが当初の状態に較べれば十分抑制できており今回はこれらの定数で良しとしておきます。



ノイズ抑制の問題は終了いたしましたが実験中に別な問題を発見し不安になっています。 それはDC-DCコンバーターの実働性能でして、公称出力電圧が±5Vに対し、フィルターが持つ直流抵抗があるとはいえ、+3.95V、−3.98Vと20%も低いのです。 最大出力電流は100mAですから現状の20mAの負荷電流が重過ぎてということは無いはずです。 因みにこれらの時に入力電圧は3.95Vとこちらもかなり低めです。 実験ではノートブックに繋ぎましたが、たまたまそのノートブックのUSBのDC電圧が低いのかと思いデスクトップに繋いで試しましたら電圧値は変わらず3.95Vでした。

ということであればパソコンをせめても駄目なので、入力として定電圧電源を使い強制的に5Vを入れたらどうなるかを実験してみたところ、なんと±5.2V前後の電圧になります。 そして入力電流は80mA近くになりました。(出力電流は26mA)

どうやらこのDC-DCコンバーターは入力電圧が変わると出力電圧が変わるタイプのようで、勝手な想像ですがチャージポンプ式ではないかと思われます。 そこで入力電圧を4.0Vから5.1Vの間で0.1V刻みで変化させた時の出力電圧をプラスマイナスそれぞれの絶対値を測定してグラフにしたところ右のようになりました。

改めて説明をするまでも無くこのDC-DCコンバーターは入力電圧が変わると出力電圧もほぼ比例して変化します。(完全にリニヤーに変化していませんが) 以上は本体が完全シールされており中身は見えませんし、メーカーの商品説明の部分を調べても解説はありません。

従って残るはこれで良しとするかどうかの判断になります。 仮に入力が電池であったとしたら入力電圧は大幅に変化しそれに比例して出力が変わるので、とてもそのようなDC-DCコンバーターを使えませんが、幸いというかDC-DCコンバーターの入力電圧はUSBですので大幅に上下しない筈です。 実験中の3.95Vという値は余り嬉しくありませんがアンプに使うAD8397は低電圧でも十分駆動力を出せる能力を有しており電源電圧が低いからというような問題はありません。

とまあここまでは3.95Vの入力電圧で仕方ないなあ!と考えたのですが、USBオーディオアダプターから引き込んでいる部分周辺の電圧をもう一度確認とあたってみたところ吃驚!!

実はUSB端子の5Vラインから+5Vを引いたのではなくその後に接続されているポリスイッチの出力側から引いていました。 ここに使用しているポリスイッチの定格電流値は100mA、作動電流値は200mAとなっているようです。 そしてUSBオーディオアダプターで23mA位の消費電流となっているようですが、ヘッドフォーンアンプとして24mA位の消費電流が加算され合計47mAの消費電流になります。 この値は遮断電流値は無論定格電流値の半分ですからポリスイッチで両方保護させてやろうと考えポリスイッチの後ろから引き出していました。 ところが次に述べるようにポリスイッチの内部抵抗のためにヘッドフォンアンプを繋いだ時には大きな電圧降下が発生していました。 以下がこれまでの詳しい状況と解決後の様子です。

解決策は簡単で、左はポリスイッチ(F1)の下側から取り出していますが、それを外して上側に半田付けしなおします。(右側) これでUSB端子の+5Vに直結となります。

   解決前の状況

   USBオーディオだけを繋いだ時
   USB端子電圧: 5.01V (ポリスイッチの前も同じ)
   ポリスイッチの後: 4.72V
   ポリスイッチ内部抵抗値: (5.01-4.72)÷23mA = 12.6Ω

   更にDC-DCコンバーター(負荷25mA)を繋いだ時
   USB端子電圧: 4.93V (ポリスイッチの前も同じ)
   ポリスイッチの後: 3.95V
   ポリスイッチ内部抵抗値: (4.93-3.95)÷48mA = 20.4Ω

結論としてはポリスイッチの内部抵抗は流れる電流が増加すると急激に増加して行きます。 その為にDC-DCコンバーターへの電圧が3.95Vまで下がってしまったわけです。 そこで+5Vの取り出しをポリスイッチの前に変更しました。 つまりUSB端子の5Vに直結です。 その時の各部の電圧は次の通りです。

   解決後の状況 ポリスイッチの前から+5Vを取り出す。

   USB端子電圧: 4.93V (DC-DCコンバーターの入力電圧も同じ)
   DC-DCコンバーター入力電流: 76.0mA
   DC-DCコンバーター入力電力: 0.375W

   DC-DCコンバーター出力電圧1: +5.09V
   DC-DCコンバーター出力電圧2: -5.13V
   DC-DCコンバーター出力電流1: 25.5mA
   DC-DCコンバーター出力電流2: 25.7mA
   DC-DCコンバーター出力電力1: 0.130W
   DC-DCコンバーター出力電力2: 0.132W
   DC-DCコンバーター出力電力計: 0.262W

   変換効率: 69.9%

メーカーの商品スペックに記載された変換効率は69%とあります。 以上を総合的に考えた結果、ちょっと変わったDC-DCコンバーターですが不具合では無さそうなのでこのまま製作を続けることにします。



2014/08/29

ヘッドフォーンアンプ部分の製作

ヘッドフォーンアンプとUSBオーデイオの間には20KHz以上のノイズをカットするフィルターが入りますが、その前にアンプ部分を組み立てました。 せっかちな私は早く音を聴きたかった!という理由からです。 日曜日に丸一日を使い一気に配線を済ませました。 そして3回配線ミスが無いかどうかの確認をして簡単な通電テストを致しました。 電源はUSBアダプターからの給電ではなく定電圧電源によります。 きっちり5Vで駆動したかったのがその理由です。

入力には低周波発振器を繋ぎ、出力にオシロスコープを繋いでやりました。 入力無しの時にオシロの最高感度で雑音波形を見ましたが、P-P値7mV程度の数百キロから1メガクラスの超高周波ノイズが見えます。 先週見えたリンギングのような形のノイズは見当たりません。 1KHzの信号を入れたところレールトゥーレール仕様のAD8397のなせる業でピーク値で5V近くと電源電圧±5Vの限界近くまでスィングしました。(負荷抵抗無し)

入力電流は無負荷で最大出力時に117mA、無心号入力時に81mAでした。 予期していたよりも大食いですがこれが低負荷にたいする駆動能力に貢献するので仕方ないところです。 パソコンのUSBの電流供給能力は500mAとされているようですから、USBオーディオ分を加えても先ず問題はないと思われます。

詳しい測定は後回しにしてこの後入力にiPod Nanoを繋ぎヘッドフォーンにて視聴しました。 取り敢えずの感想としては、分解能は非常に高いものの滑らかさに欠けるような気がしますが、取り敢えずと数曲聴いただけですしここで使ったヘッドフォーン(K-172HD)の個性によるものかもしれませんので、後日別なヘッドフォーンでも試すことにします。 尚無信号時のノイズは全く聴こえません。

ヘッドフォーンアンプ部分の組み立てが終了しました。 右下が空いているのはフィルター回路のスペースです。 VRの両側にはミニフォーンジャックが入るので完成後はぎっしり詰め込むような感じになるでしょう。

基板の裏側はこんな風で、ジャンパー線は2本です。 基板面からの最大突出は2.6mmです。 ケースのアルミ板に絶縁のため0.4mm厚PP板を貼りケースとの隙間は2.85mmです。 0.25mmのクリヤランスが残りますのでOKです。

仮接続なので入・出力のワイヤーはかなり長くなっています。 私は問題が無い限りシールドケーブルを使わない主義で、ご覧のように3本を撚っています。




2014/09/05

ヘッドフォーンアンプ電子回路完成まで

残る組み立て部分は6dBオクターブ2段のローパスフィルターとそれを受けるボルテージフォロワーです。 そしてUSBオーディオの信号出力とフィルター入力部を繋ぎ、ボルテージフォロワーの出力をヘッドフォーンアンプ入力のVRとUSBオーディオのRCAピンジャックに分岐します。 従ってヘッドフォーンの音量調整は可能ですが、RCAピンジャックへは固定出力となります。 これらの回線の信号レベルは630mVと若干低めですが、後ほどの試聴テストでは支障を感じませんでした。 USBオーディオのRCAピンジャックとの接続をすると2つのプリント基板の連結となりますので、電源の配線も最終的なものとします。

そして最終的な配線でないのは2つのミニヘッドフォーンジャックになりますが、これはアルミフレームを製作してその中に基板を固定する時になります。 こうして基板の組み立ては全て終わりました。

私の測定機器では完成したフィルター部分の性能測定は出来ませんので、回路を使用させていただいた方が測定された数値を参考に載せておきます。

   周波数特性: 4Hz〜20KHz (+0dB -0.8dB)
   減衰レベル:  -18dB (at 200KHz)
   残留雑音:   0.22mV(フィルター無しの時3.4mV)


ということで私が自信をもってフィルターの性能に問題無しとは言えないので、正式な測定の前に数時間試聴にて確認することにしました。 試聴条件は音源として1.ノートブックパソコン(Let's Note CF-S8)にWindows 7 professional、iTunesをインストールしUSBケーブルで接続、2.iPod Nano 16Gbtをミニヘッドフォーンジャック経由で接続しそれら2種類を聴き比べて判断します。 それらの元ネタは同じCDをmp3に変換したものです。 ヘッドフォーンは時節柄オーバーイヤータイプでは短時間で耳が蒸れてしまうのでオンザイヤータイプのAKG K-172HDを使いました。 そして次の写真のような空中配線仕様です。

試聴テスト時の結線状態。 灰色のケーブルがUSBケーブルでパソコン(ノートブック)に繋がります。 赤白ケーブルはRCAピンジャックケーブルでアンプの入力端子に?がります。 下側左はミニフォーンジャックでヘッドフォーンを繋ぎ、中央もミニフォーンジャックでiPod Nanoを繋いでいます。 この状態ですとiPod Nanoからの信号が聴こえ、iPod Nanoの接続を外すとUSB経由の信号に切り替わります。

今週組み立てた部分が赤枠内ですが、中央右寄りにボルテージフォロワー用のオペアンプが見えます。

7本のワイヤーでUSBオーディオ基板とヘッドフォーンアンプ基板が繋がっており最終的な状態ですが、右の2束のワイヤーはフレームに組み込む時に最終的な長さとします。

さてこんな条件で試聴した結果ですが、十分に明瞭度が高くて粒立ちのはっきりした音色であることが確認できました。 またiPod NanoとUSB経由の音源の違いですが、僅かにUSB経由の方が分解能が高いのかな?という感じでした。 またiPod Nanoにイヤーフォーン直挿しの場合より一段と高音質です。 これはiPod Nanoが無理やり低インピーダンスで動作させられていないことと、AD8397の駆動能力の高さによるものであろうと想像しています。 いずれにしてもUSB経由での音に高域の音の暴れは全く感じませんでしたので、フィルターリングの特性に問題はないと確認できました。

さて順序が逆になりましたが、その後諸特性の測定をいたしました。 以下がその詳細です。

  1.最大出力
左チャンネル 右チャンネル
負荷抵抗 出力電圧 出力電力 出力電圧 出力電力
300Ω 3.46V 39.9mW 3.46V 39.9mW
100Ω 2.90V 84.1mW 2.90V 84.1mW
33Ω 1.98V 118.8mW 1.98 118.8mW
16.5Ω 1.38V 115.4mW 1.34V 108.8mW

  電源電圧が±5Vという低めの値ながら様々なインピーダンスを持つヘッドフォーン、イヤーフォーンに対し十分な駆動能力を
  持っているという結果で、300Ωでも十分ゆとりを持っていると言えます。 出力ショートに対する安全弁となっている抵抗挿入
  のため16〜33Ωではかなりの損失が出ますが、それでも100mW以上の出力があり、正にAD8397の面目躍如たる部分です。


  2.増幅度(ゲイン)
条件 左チャンネル 右チャンネル
1kHz (0.1V入力) 負荷: 100Ω 出力電圧: 0.395V 3.95倍 出力電圧: 0.400V 4.00倍

  設計上のゲインは4.83倍になっていますが両チャンネルの実測値はこれを下回っています。 この原因はヘッドフォーン出力
  の前に挿入されている抵抗で起きる損失のためです。 例えば100Ω負荷の場合ヘッドフォーンへの出力電圧はオペアンプ
  の出力電圧の100/122倍(0.82倍)に下がります。

  これから上記の結果を逆算するとそれぞれ4.82倍、4.88倍と設計値に一致します。

  この損失は負荷抵抗が小さくなるほど増加しますが、22Ωを挿入した第一番の目的は出力ショート時にオペアンプに掛かる
  過大な負荷を軽減するのが目的にあります。(二番目の異常発振防止という理由も重要だが。)


  3.周波数特性

  入力電圧を0.1V一定とし自作の低周波発振器の最低から最高周波数の間での出力電圧を測定しましたが、10Hz〜40kHzは
  完全にフラットで、50kHzにおいて左右とも-0.15dBに、70kHzにおいて左チャンネルが-0.31dB、右チャンネルは-0.3dBと僅か
  な減衰を認めました。 これらから推測すると100kHzで-0.7〜-1.0dBの減衰が発生するものと思われます。

  何れにせよオーディブル帯域(耳に聴こえる範囲)にて十分な性能を得ておりますが、念のために300Ωと33Ωの負荷時の
  方形波応答状況を撮影しました。

330Ω負荷左チャンネル、100Hzの波形の様子です。 原波形(下)に対し僅かなサグ(上面の傾斜)がありますが、経験則ではこの程度だと1/10の10Hzまでは間違いなくフラットです。 右は1kHzで原波形と再生波形が全く同じで100Hz〜10kHzが完全にフラットであることを意味しています。

10kHzの波形はほぼ完全な相似形ですが、上の再生波形は上面が100Hzの時とは逆な傾きの僅かなサグが認められます。 これは10倍の100kHz以内にレベルが下がるハイ落ちを暗示しています。 右の54kHzでは原波形自身が残念ながら方形波とは言いがたい状態ですが、同じような傾斜が下面にも発生しています。

この段と次の段は右チャンネルについて測定したものですが、左チャンネルと全く同じ傾向を保っており、左右が良く揃った周波数特性を持っていることが判ります。

ここからは負荷を1/10の33Ωに落としています。 そしてこの段と次は左チャンネルで、その下2段は右チャンネルと続きますが、330Ωの時と非常に相似形の波形になっています。 普通負荷インピーダンスが下がると高域の伸びが無くなってくることが多いのですが、そのような兆候が全くありません。 AD8397の低インピーダンス駆動能力の高さを物語っている波形群です。

以上の写真から周波数特性は10Hz〜100kHzの少し手前までフラットであること、左右のチャンネルが良く揃っていること、高域(100kHz以上)に変なうねりやピークなど、動作不安定や異常発振に繋がるような要因が全く無いことをうかがい知ることが出来ます。



  4.出力端子におけるオフセット電圧 (パッシブDCサーボ OFFは、1μFコンデンサーのショートによる。)

条件 左チャンネル 右チャンネル
DCサーボ ON DCサーボ OFF DCサーボ ON DCサーボ OFF
入力: 開放 負荷: 330Ω -2.1mV +159mV -2.9mV +160mV

  パッシブDCサーボにより出力のオフセット電圧は1/50以下に抑制され、その効果が確認できました。 入力段がFETのオペ
  アンプ(例えばOPA2134、OPA2604など)であれば更に低いオフセット電圧になることを経験していますが、この程度になれば
  十分満足できる結果です。 AD8397の数少ない弱みのひとつがうまく解決しました。


  5.雑音特性

  耳には全く聴こえない領域のノイズがまだかなり残っているので、測定してS/N比を云々しても殆ど意味ありません。
  そこで真夜中で周りの騒音が最も低くなった時にノートブックパソコンに繋いで無信号状態でノイズを確認しました。 ここで
  使ったヘッドフォーンは音の良し悪しよりも、変換効率が高い(能率が高い)ノイズを発見しやすい物としています。

  その結果はいくら耳を凝らしても全く無音で静寂そのものでした。 従って数値的なものはありませんが満足度の高い雑音
  特性が実使用で得られていると考えています。


  6.その後の試聴結果

  この記事を書いている今室温が25度程度に下がっていますので、オーバー型ヘッドフォーンでも蒸れる不快感が薄れました
  ので、AKG K-550ゼンハイザー HD-650などでじっくりと聴いています。 トータル試聴時間は10時間くらいになりますが、
  分解能の良さ、粒立ちの明快さ、滑らかさ、音に妙な付帯音が無い、長時間聴いても疲れない! など高い満足感が得られ
  ています。

AKG K-550で試聴中ですが、RCA端子より音楽信号を取り出しスピーカーでも同時試聴中。 ヘッドフォンアンプ前面に取り付けた青色LEDの他に、USBオーディオ基板部にも青色LEDが入っていてこれはPCに繋がっていると認識した時に点灯します。 USBコネクターを使った5V ACアダプターに繋いだ時(外部から5Vを受ける方法として。)には点灯しません。 ケースに収める時にこの光が見えるようにするかどうか思案中です。



2014/10/03

ケースの製作 1
                                            製作したフレーム曲げ部分の接写! 許容寸法精度に収まっています。
完成したヘッドフォーンアンプ基板とUSBオーディオ基板は連結した状態でアルミの枠に収めます。 このアルミの枠は断面がL字型の1mm厚アルミ押し出し材を使いますが、ロの字状に綺麗に曲げるのはそれようの機械がありませんし、頼むと目の玉が飛び出るような見積もりが出てくるので、長年悩んでいた作業です。 しかし2種類のポータブルヘッドフォーンを作る時にこの命題をほぼ克服しました。(加工後の寸法誤差が許容値以内という意味で。

そのキーポイントは、『折り曲げる部分だけ薄くして折り曲げやすくなるようにしてやる!』 にあります。 詳しくは後述しますが、1mm厚の材料の場合には半分の0.5mmの切込みを折り曲げ部分に入れます。 こうすることで、いとも簡単に軽い力で直角に曲げられます。 この方法で注意すべき点はただ一つ、『決して折り曲げた後に曲げ戻したり、曲げなおしたりしない!』、ことです。 もしそれをやると出来上がったフレームはいとも簡単に折れてしまうでしょう。

もうひとつの問題!と言うか、この容易に曲げるために切込みを入れた場合、外寸の変化が少々変則的になります。 その補正をしてやらないと所定の寸法になりません。 実際に折り曲げてみて得た結果と、理屈の点から追いかけた外寸の変化量を比較して補正量が得られました。 以下はその詳細です。


1.機械で折り曲げた時の、折り曲げる谷線と折り曲げ後の外寸の関係

折り曲げの機械を使って直角に曲げた場合には、断面の折り曲げ部分の外面は、半径が板厚の円弧となります。 また外面と折り曲げ線の距離は理論上材料の厚み(ここでは1.0mm)です。 従ってコの字型に曲げるには希望するコの字外寸から板厚の2倍を(ここでは2mm)減じた値が内寸であり、谷折り線の間隔となります。(実際にはごく僅か長くなる筈。)

 余談ですが、機械による曲げ加工の費用は馬鹿にならないそうで、例えばアルミの断面がL字状の部材は平板を曲げ
 て作るのと押し出し材で作るのとでは製造コストが大きく違い後者の方が綺麗に仕上がりながら値段が安いそうです。
 これを特注加工としたら、馬鹿馬鹿しい費用請求になるそうで、ここで説明しているアマチュア的解決法は懐に大きく影
 響します。





2.手曲げの方法で折り曲げた時の谷折り線と折り曲げ後の外寸の関係

手曲げ加工した場合の折り曲げ線と外寸の関係は大変ややこしくなります。 ここでは近似値でどうなるかを調べました。 先ず切り込み幅を0.7mmとして考えますが、これは使っている糸鋸のアルミ切断用の刃の実寸値です。 そして切り込み深さは0.5mmとします。 そうすると切り込み溝の底幅は0.7mm(赤線)となりますが、折り曲げ後も変わらない(伸び縮みしない)とします。

この状態から曲げた場合に外側の角は引き伸ばされて完全な円弧になると考えると右上の図のようになり、折り曲げ線と外面との距離は0.6mmと求まりますが、内側の角が衝突して潰れる状態になりますから、0.6mmよりも大きくなります。

曲げた時に外側の角は引き伸ばされて円弧は描かない!とした場合には右下のような状態となり、折り曲げ線と外面との距離は若干伸びて0.645mmになります。 この場合も角の内側は衝突しますがその量はごく僅かです。

さて実際には曲げた時に綺麗な円弧を描くようには曲がりませんし、その正反対の直線でカクカクと曲がるような面でもなく、それらの間の値になります。 それと内側の角の衝突で潰れるのは僅かです。 したがって折り曲げ線と外面との距離は0.65〜0.7mmになる!と考えられます。


3.実際の折り曲げ線と外面との距離は値はどうなるのか?

以前製作したポータブルヘッドフォーンアンプのフレームを製作したときの記録をひっくり返すと興味ある事実がでてきます。

以前の作業では上で述べたような理屈を追いかけることはせずに、実際に溝を切り込んで折り曲げてみて『折り曲げ線と外面との距離』を測る作業を5〜6回繰り返して平均値を割り出しました。 そして経験的な値として、1.0mm厚の材料に約0.4mmの溝を切り込んで折り曲げ線と外面との距離は0.75mmとする。(コの字の折り曲げでは1.5mm) という覚えやすい設定数値としていました。

上の理論的な数値の追いかけの結論としては、『0.5mmの深さとしたときに折り曲げ線と外面との距離は0.65mmとなる。』(コの字の折り曲げでは1.3mm)ですが、これと実作業での設定値を比較すると切り込み深さが0.1mm浅いですが、その場合折り曲げ線と外面との距離はその2倍の0.2mm増えて0.85mmと0.1mmの差になり、ほぼ同じことを言っていることになります。

というか理屈抜きでの実経験から割り出した設定値が間違っていなかった(0.2mm以内程度の誤差は問題無しとするならば。)と言って良いでしょう。  実作業で一番重要なのは0.4〜0.5mmの深さになるよう正確に溝を切り込むことですが、その量はノギスを使い間接的に採寸することが可能です。

右の図は製作途上で変更した各部の寸法を含む最終的な寸法図です。 図中赤で示した寸法は、本体フレームの折り曲げ線の間隔とフレーム幅を表しており加工精度を極度に高めたい部分です。 また青で表示した寸法は1.5mm厚フロントパネルの大きさですが、現物合わせとする要素を含んでいます。




2014/10/10

ケースの製作 2

先週述べた考え方に基づきフレームの加工寸法図を描き上げました。 但しフレームの材料となるアルミの押し出し材は厚さが1.2mmと20%増しになりますので、折り曲げ線の位置も若干変化していますが、その考え方は同じです。 順調に図面の描き上げは進んだのですが、ある部分で気になっていたことがあるので確認のためタップ(ネジ切の工具)の確認に出かけたところ、私が描いていた構想が駄目であることが判りました。

それが何かというとミニフォーンジャックの固定方法です。
右は私が使っている3.5φフォーンジャックで、右側は3端子の物で、フロントパネルから差し込んで裏からナットで固定します。 左はスイッチ付きで、例えば入力切替がフォーンジャックを差し込むことで可能になります。

今回USB経由の信号とミニフォーンジャックからの信号を切り替えるのに使っています。 その為にこの写真の裏側に端子が5個もあります。 そしてこのジャックはパネルの穴に裏側から差し込んで、ここに見えるリング状のナットで締めこみます。

問題はそのナットが見えるのが私は気に食わないのです。(美しくない!と思うのです。) 一例として既に完成したマイクアンプでも6.3φのフォーンジャックの固定ナットを隠すためフォーンジャックをサブパネルに固定しています。

この問題解決のためにフレーム(厚さ1.2mm)にフロントパネル(厚さ1.5mm)にM6の雌ネジを切った上で重ねて内側からジャックをねじ込めば良いだろうとおぼろげに考えていました。 この時にジャック本体は薄っぺらな箱のような形状なので、捻じ込み停止位置によってケースから飛び出ることもあり、ネジ切り開始位置とスペーサの使用による調整が必要になります。

右の図はその様子を表しております。 この方法の良いことは2個のミニフォーンジャックの固定でフロントパネルのフレームへの固定も完了し、フレーム、ミニフォーンジャック金属部分、フロントパネルの電気的な接続が良好なことと、構造がシンプルな点にあります。 ミニフォーンジャックの締め付け位置の調整はネジの切り込み開始の調整で可能ですから、事前にネジのテスト切込みをしておけばよいと思います。

さてこのやり方に潜む問題です。 ミニヘッドフォーンジャックに切られたネジはM6であることは判っていましたが、ピッチが幾つなのか?確認をしておりません。 そこで手っ取り早く手持のM6ナットを取り出して捻じ込んでみました。

その結果はXXX(駄目!)だったのです。 フォーンジャックのメーカーのホームページで調べたところ、M6 P0.5と記載してあります。 ポピュラーなM6ネジのピッチはP1.0なので、手持のナットが締まらないのは当たり前です。

さてもともとM6のタップ(雌ネジを切る道具)は持っていませんでしたから購入するつもりでいました。 但しそれはポピュラーなM6 P1.0ネジ用で\500程度で購入できるし他にも利用できる機会があるから良いだろうと考えておりました。 しかしM6 P0.5となると生産・販売量がぐんと下がるため\1,500から\2,000程度と高価になるでしょう。 実際近くのホームセンターで取り寄せた時の納期と価格を調べてみましたが、価格は\2,100.-、納期は10日間とのことでした。  このタップを他に使うことは先ずないでしょうから、これはもったいないなあ!と思い、別なソリューションを考えることにしました。

頭をひねって思いついたのは、右の図のような構造です。
フォーンジャック本体は灰色ですが前面に突出するプラグを挿し込む金属部分はオレンジ色で示しています。 山吹色で示した薄い金属板は0.5mm厚の真鍮板です。 この薄い板にジャックをリング状のナットで締め付けて固定します。 但しナットの厚みは1.8mmあるものを1.7mm以下に削っておきます。 これはノギスがあれば簡単に出来ます。 そしてこの薄い板を直径9mmの穴をあけたフレーム(水色部分)にエポキシ接着剤で貼り付けます。 更に9φの穴をあけた0.5mm厚の板をフレームの前面側に接着すると、リング状ナットの側面はその貼り付けた薄い板と同じか若干沈みます。

こうしておいて最後に6φの穴をあけたフロントパネルを貼り付ければ、リング状ナットは隠れて見えなくなります。 またフォーンジャックの差込口は0.4mm出っ張りますので、プラグがパネルにあたることもなく具合が良いだろうと思われます。

この方法は解決策には違いありませんが、金属板を4枚も重ねるという複雑さから来る工作精度の低下、手間が掛かりすぎる、フレーム、フォーンジャック金属部分はグラウンドレベルにしないといけないのですが妙なループを作ったり接続不良を起こしやすそう、などうまくない点がかなり出てきそうです。

しかし他の方策も浮かばないので、以上の構造を前提に取り敢えずフレームの展開図を描き上げました。 左がそれですが単純に折り曲加工をするだけでなく、基板固定時に電気的な接触を避けるための予備加工、フレームから飛び出た状態で固定されるピンジャックやプラグ先端が挿入される穴を加工しないとならないUSB接続の穴、そしてミニフォーンジャック関連の穴などかなり加工に時間が掛かりそうです。

とまあ2つの方法を検討しましたが、M6 P0.5のタップがリーズナブルな価格(\1,000前後か?)で入手可能かどうかが最大のポイントです。 そこでインターネットでM6 P0.5のタップの販売状況を徹底的に調べると共に、M6 P0.5のタップを使う他の機会が他にはないかを調べました。

20店以上調べた中で、中タップで税込み\1,050.-というのを発見しました。 原産国がどこかも判りませんが材質はHSS(高速度鋼)ですからアルミへのねじ切りに十分使えます。 近くのホームセンターで調べた時には\2,000.-以上の見積もりが出ていたので、この辺りが最低価格かな?との感触を持ちました。 またミニヘッドフォーンジャックのメーカーは他のミニジャック(3.5φ、2.5φ)でも内側から差し込んで固定するジャックでは M6 P0.5のネジを使っていることが判りました。 従って今後他にも使える可能性が増えてきました。

そこでこのタップを入手して上の1番目の方法でミニジャックを固定することに決めました。



2014/10/17

ケースの製作 3

入手できたM6 P0.5のタップを使い実験的なネジの切削をしました。 フレームと同じ厚さの1.2mm厚アルミ板と前面パネルにする1.5mm厚アルミ板を用意し、1.2mm厚には6.5φの穴を1.5mm厚アルミ板には4ヶ所に5φの穴をあけてそれぞれバリを削り取っておきます。 尚ネジの切り出し位置が結構重要になりそうなので、タップに印刷された、M 6x0.5 OH1の文字列を切削開始位置とすることにしました。

購入した M6 P0.5 のタップ。 側面にM 6x0.5 OH1と印刷された面がありますが、これをネジ切りスタータの目印に使うことにします。

タップハンドルに固定した状態です。 黄色い矢印方向がネジ切りのスタート位置となります。

黄色の矢印の先はこんな具合です。 これで一応ネジ切のスタートは合わせられるはずなのですが?

切り終わったネジに6.5φの穴をあけた1.2mm厚アルミ板を当ててヘッドフォーンジャックを締めこみました。 そしてこれを緩めて2番目に切ったネジに捻じ込み、そして3番目、4番目のネジと4ヶ所の穴に捻じ込みました。 その結果は次の写真の通りです。
2番めと4番目はほぼ同じ向きに止まっていますが、それらに対し1番目は90度手前で止まっています。 また3番目は2、4番目よりも更に30度ほど締めこまれた位置で止まっています。 これらは全て上述のM 6x0.5 OH1の位置から始めた結果なのですが、ネジの実際の切り込み開始位置を安定化させるのはかなり難しいことを示唆しています。

もうひとつミニヘッドフォーンジャックのネジ(オス側)のネジ切り位置がどうなっているかのテストを手持のミニヘッドフォーンジャック4個で試してみました。
1、2、4番目は20度程度のブレの中に納まっていますが、3番目はそれらと180度近く違います。 これではミニヘッドフォーンジャックの方もネジ切りスタート位置が制御されているとはいえません。 だからと言ってこの製品の品質が悪いということとは違いますので誤解無きよう!

さてミニヘッドフォーンジャックを捻じ込む際に何かに当たるのかというと実は当たる物は全くありません。 一番接近するのはミニヘッドフォーンジャックの角で、プリント基板の面に1mm程度まで接近します。 最終的な固定位置がミニヘッドフォーンジャックの端子が下側になると半田付けが出来なくなってしまうので、そうでない位置に止まれば良いです。

そうならないようにネジ切り位置で調整を考えますが、上述のようにその制御は簡単ではないので、スペーサーをミニヘッドフォーンジャックとフレームの間に挟むことによって調整します。 この時の最大の調整角は180度ですからスペーサーの厚み0.25mmに相当します。 これはミニヘッドフォーンジャックのパネル面の出っ張りが最大で0.25mm変化することを意味しますが、その違いは余程意識してみない限り問題にならないでしょう。

とまあヘッドフォーンジャックの固定にまつわる対処についてまとめました。 後は見掛け上だけの問題ですが、ミニヘッドフォーンの固定位置でその面が水平に出来るだけ近づけばと思います。


フレーム製作開始

さて想定される問題は全て片付きましたのでフレーム、前・後のパネルの製作に入りました。 最も手間のかかるフレームですが、ミニヘッドフォーンジャックの固定方法が最も都合良い方法に決定しましたので、右のように修正しました。 そしてミニヘッドフォーンジャックの固定穴は6.5φの穴のみで、厄介な加工や接着作業は無くなりました。

最初にL型押し出し材の長さを左右約1mmずつ長くした330mmとして切断します。 その後幅を21.5mmとして切断線をシャープペンで引いた後にマスキングテープで明確にすると共に傷つき防止をします。 次に5mmの折り返し部分の削る部分の境界線を引き削らない部分をマスキングテープで覆ってしまいます。 幅詰めの切断だけは電動ジグソーで切断しますが、その後はジグソーは使わずヤスリで削りこんで成型しました。

長さを330mmで切断後、幅を21.5mmに詰めました。 これは電動ジグソーで切断後平ヤスリで成型研磨したところです。 黄色いのはマスキングテープで、切断線を明確にするためとアルミ板の表面に傷を付けない為に貼っています。

次に折り返し部分の欠き取り加工ですが、シャープペンで境界線を引いた後にマスキングテープでその境界線に沿って欠き取らない部分を覆ってしまいます。

加工作業中に誤ってアルミ板を曲げてしまわないよう18mm合板にクランプで固定した上で、平ヤスリを使って削り落とします。 赤矢印部分は削り落としが完了したところで、黄色矢印はこれから削る部分です。 削り幅は適宜ノギスで測って確認しておきます。

折り曲げ部分は90度強となるV字状に削ります。 ここだけは折り曲げ位置の溝を切り込んだ後でもう一度削りこむ必要があります。 そしてマスキングテープを剥がしましたが、これがフレーム加工の第一ステップです。 罫引き線を引いてからここまでに1日を費やしました。


次に前面のミニヘッドフォーンジャックが通る穴、ボリュームツマミが当たらないようにする欠き取り、背面のRCA ジャックが通る穴、USBコネクターの通る穴をあけてやりますので、それらの切り取り線を罫引いておきます。 この作業に私は製図道具のデバイダーを使っています。 コンパスの格好をしながら先両端が鋭くとがっていますので、円を書くのに好都合です。

これらの穴も小さな穴あけからスタートして最後はヤスリで形を削りだす根気のいる作業で、間違えてしまうとフレーム作りは最初からやり直しになりますので、十分慎重に決してあせることのない作業の進め方に心がけます。 尚最後は現物あわせで仕上がり寸法を確認します。







左上: 罫引線は製図用具のデバイダーと罫引用具を使います。 シャープペンで引いた線より遥かに細い線になりますから切削量がはっきりと判り好都合です。

上: センターポンチでマーキング後に1.5φの穴をあけました。 右側は、3φ、5φとドリルを交換して最後は7φまで拡大しますが、太いドリルのために過大なマーキングでアルミ板が反りだすのを防止するため4段階であけています。 その後にヤスリで成型します。

左: 細い丸棒や角ヤスリを使い成型しました。 右の2つの穴は12φですが、仕上げ研磨だけは替刃式ヤスリのRS-310P(直径約10φ)で仕上げています。

下: LEDを装入する穴とフレームをネジ止めする雌ネジ切りは後程厚みを増加するアルミ板を接着後に現物合わせで加工します。 これでフレーム加工の第二ステップが終了しました。
淡々と進みましたが、ミスを避けるために何度も確認・点検をしたため、第二ステップの作業に一日近くを使いました。



2014/10/24

ケースの製作 4

第三ステップはいよいよ曲げる角部分の溝切り込みなのですが、溝の切込みが終わった部材は曲げてCの字型にした上でフロントパネルと連結しないと、曲げた部分が大変弱くなります。 そこでフレーム製作の第三ステップの前にフロント・リヤーパネルの加工と切り出しを先にやってしまいます。

勘所としては穴の位置精度、穴の大きさの正確さが言うまでもなく重要ですが、フレームの穴との同期、或いは基板を装てんした時の嵌め合い具合は更に重要になってきます。  これは加工誤差が集積され寸法ずれのために入る入らない、合う合わないの問題が出るからで、現物合わせの概念も含めないとならなくなってきます。

左は1.2mm厚で作る背面板、右は1.5mm厚で作るフロントパネルでいずれも端材のアルミ板から切り出します。 罫引線は全て針で引き加工研摩の境がはっきり判るようにしています。

フロントパネルに穴をあけてM6 P0.5のネジを切り終えたら、切り出す前にミニヘッドフォーンジャック選別作業をしておきます。 左はフレームの右側を当てて0.4mmのスペーサーをかまし、あるミニヘッドフォーンジャックの端子がうまい具合に上を向きましたので、この穴とヘッドフォーンジャックに緑のマーキングを施しました。 右は同様に別なヘッドフォーンジャックがぴったり所定の位置で止まったので、こちらを青くマーキングし、使用するジャックと位置を固定化します。

穴あけは例によって1.5φの穴から3.0φ、4.5φ、6.0φと拡大し細い丸ヤスリ、平ヤスリ、角ヤスリで所定の大きさに成型しました。  左の背面板の小さな穴(1.5φ)は最終的に3.5φのバカ穴になりますが、フレームにM3のネジを切るため現物合わせの目的で、小さくしています。

そして背面板とフロントパネルを切り出しました。 何れも高さは設計寸法になるよう研摩成形していますが、幅は心もち(約0.5mmずつ両側に伸ばしています。 後程フレームと合体時に調整します。


いよいよフレームの折り曲げ部分に溝を彫ります。(感覚は切る!ですが) 糸鋸にアルミ切断用のブレード゙を取り付けて切りこみ深さをノギスで測りながら深さが0.5mm丁度となるところまで進めます。 この切りこみで重要なのは、糸鋸ブレードとフレームが平行に当たりながらブレードが前後に動くようにすることで、糸鋸の先が沈んだり手前が沈んだりすると、フレームの溝中央部分が浅くなってしまいます。

溝を彫り終わったら折り曲げ箇所のV字型欠き取りを増やして、曲げる時に干渉しないようにしておきます。  曲げるのは大変簡単ですが、何度も言うとおり曲げ過ぎたため曲げ戻しをすると簡単に折れてしまうので、絶対に曲げ戻しをしないで済むよう先のことを考えて進めます。

出来上がったフレームに前面パネルを仮固定します。 そしてヘッドフォーンアンプ基板、USBオーディオ基板を嵌め込んでみました。 実はLEDパイロットランプの頭が若干出ていて最終的にはフレームにあけられた穴に潜り込むのですが、その穴あけは現物合わせとなるためまだあいていません。 従って少々無理やりでしたが抵抗なく両基板は収まりました。

フレームの折り曲げ位置に溝を彫る(切り込む)ためのジグです。 以前ポータブルヘッドフォーンアンプのフレームを作る際に製作した物で、簡単に作れますが糸鋸と組み合わせて大変安定した加工が出来るので常備の道具になっています。

フレーム両端は50mmクランプ2本で固定してあり、糸鋸のアルミ切断ブレードは溝の中でしか動けませんから、左右のブレがなく正確に溝が切り込めます。

フレームに4箇所の溝が切り終わりました。 フレーム加工の第三ステップはこれで終わりです。 この後簡単に曲げられる成形工程に入りますがその前に矢印の部分のV字切り欠きを0.5mm程追加削りしておきます。

4箇所を曲げました。 若干ゆがみがありますが、この程度でしたら問題はありませんが、ここから曲げ戻すようなことは厳禁です。

フロントパネルをフレームに当てて0.4mm厚のスペーサーを挟みミニヘッドフォーンジャックで固定しました。 ミニヘッドフォーンジャックの接続端子は全て上向きのため配線は容易です。

試しに配線で連結された2つの基板をフレームの中に落とし込んで見ました。 前後方向はLEDの1mm近い出っ張りがあるためきついですが、幅方向は当たりもなく収まりました。




2014/10/31

ケースの製作 5

フレーム加工が終わりましたのでフロントパネルと貼り合せることで前側を仕上げます。 フロントパネルはその前に化粧シートを貼り付けておきますが、この方法はインスタントレタリングが入手不能となった今は新たな文字入れの策として私の標準作業になっています。 方法としては、先ずExcelにてフロントパネル面を描画しそれを薄手のマット紙に印刷してやります。 この時どんなフォントを使うかは自由ですから、うまくデザインできるよう工夫します。

印刷後にアクリルラッカー系のスプレー塗料(透明クリヤー)で1回塗装後完全乾燥させた後につや消しクリヤーを1回塗って完全乾燥させます。 そして裏に両面接着テープを貼ってフロントパネルに貼り付けます。 この時フロントパネルの穴のあいた部分は塞がりますから、先の細いカッターナイフで少しずつ押し切りして穴をあけます。  出来あがったフロントパネルとフレームをミニヘッドフォーンジャックで共締めしてフレームは完成します。

次に基板をフレームから2mm浮かせて固定するためのスペーサーを切り出します。 ここでは2mm厚の発泡塩ビ板をカッターナイフで切り出します。 発泡塩ビ板は柔らかいのでカッターナイフで簡単に切り出せて便利です。 また電気的に大変安定した絶縁物ですからスペーサーとしてもってこいです。 このスペーサーは瞬間接着剤でフレームの内側に接着してやります。

次に背面パネルとフレーム背面を固定するための追加工をしておきます。 先ず背面パネルのUSBジャックが挿し込まれる穴ですが、穴を大きくしないとジャックが当たりますので、4 x 8mmの穴を、6 x 10mmに拡大します。(フレームの方は4 x 8mmのままで問題ありません。)  次にフレームに背面パネルを所定の位置に当ててクランプで固定してから背面パネルにあけた穴から1.5φのドリルでフレームに貫通穴をあけます。

そうしたら1.5mm厚のアルミ板を15 x 11mmに切断しフレームの貫通穴が中央になるよう瞬間接着剤で塞ぎながら貼り付けます。 接着剤が完全硬化したら1.5φの貫通穴をあけフレームの穴は更に2.5φに広げ、背面板は3.5φに拡大します。 そうしたらフレームの2.5φの穴はM3のネジを切ってやります。 このネジ穴に背面板を当ててM3の薄頭ネジを締めこんで固定します。

さてもう一度2つの基板の落とし込み具合、RCAピンジャック、USBコネクター、ボリュームツマミの位置関係や収まり状態に問題がないか確認し、問題あらばそれを調整・修正した後に2つの基板は瞬間接着剤でフレーム内に固定してしまいます。

Exceに描画したフロントパネルを薄いマット紙に印刷しました。 写真の左側はミニフォーンジャックやボリュームツマミを取り付けた状態を確認するため描き込んでいますが、フロントパネルに実際に貼り付けるのは右側のそれらを消し去ったものです。

フロントパネルに両面接着テープを使って貼り付けた後、4つの穴を先が細く尖ったカッターナイフによる押し切りで切り抜きました。 押し切りは少しずつ進めます。

そして紙部分の汚れ防止と保護の目的で、透明クリヤー、つや消しクリヤーのスプレー塗料で各1回ずつ塗装します。

完全乾燥後にミニヘッドフォーンジャック2個で、フレームとフロントパネルを共締めしました。 締め付け位置関係をよく確認・調整しましたら緩み止めのために瞬間接着剤で完全固定しました。

基板固定時のスペーサーを2mm厚発泡塩ビ板から切り出しました。 発泡塩ビ板は柔らかいのでカッターナイフで容易に切断が出来ます。 また良好な絶縁物質です。

フレーム内側の底にスペーサーを瞬間接着剤で貼り付けました。 スペーサーの厚みは2mmなので、2つの基板は2mm浮いて固定されることになります。

背面板とフレームを締結するネジ穴の加工。 フレームには厚さ1.5mmで15 x 11mmのアルミ板を貼り付け2.5mmの穴をあけてからM3のネジを切り、背面板には3.5φのあなをあけます。

背面板にM3のネジを通しフレームに捻じ込んで固定しました。 このネジは10mmと長すぎるので後程5mm位に切断します。

USBコネクターが背面板に干渉するのが判りましたので、背面板の穴を6 x 10mmに拡大しました。

十分に点検を済ませましたので、フレーム内に2つの基板を瞬間接着剤で固定しミニヘッドフォーンジャックへの配線を最終的なものとしてツマミも取り付け本体は完成しました。 早速ノートブックに繋いで動作確認しています。

前方より見た様子です。 このヘッドフォーンアンプはUSB端子が持つ5V電源を当てにしていますから音楽源もUSBとなることが多く、前面右側のAUX入力ジャックを使うことは稀でしょう。

背面の様子です。 右側はUSBのケーブルでパソコンに繋がれますが、RCAピンジャックからの出力はこのヘッドフォンアンプがUSBオーディオアダプターとなり大変便利に使えます。

愛用のノートブックに接続し、iTunesで音楽を楽しんでいます。 このヘッドフォーンアンプの主たる使い方になります。




2014/11/07

ケースの製作 6

最後の工程となる木製ケースを作ります。 とは言っても正確には木の板とと金属板のハイブリッド構造です。 一番大きな面を占める天板と底板が2mm厚アルミ板で、左右の側板は3mm厚のアガチスを使います。 その構造はポータブルヘッドフォーンアンプと同じですが、背面は木目ではなくアルミ板になります。

右の図が完成後の寸法図ですが、これは出来あがった電気回路部分の実寸を元に描いています。 従って隙間の設定などは従来の図面の延長線上にはなく現物合わせとなっています。 因みにこの通りに作ると電気回路ブロックとケースの内寸との差は0.2mm程になります。 大変シビアな作り方をしなくてはなりません。 例えば2枚の側板、天板、底板の切り出しは若干大き目としてノギスを使いながらヤスリで研摩して所定の寸法±0.05〜0.1mmが出るようしています。

削り過ぎが怖いので少し削ったら寸法を測り!を何度となく繰り返さないとなりませんので、所用時間もかなり掛かり、4枚の小さな部材を切り出すのに半日以上掛かってしまいました。

それらの部材と背面板を組み合わせてロの字型に貼り合せるのですが、接着剤(エポキシ)のはみ出しは要注意です。 完全に硬化したエポキシは硬くて削りにくいので、最小限の量で接着することに心がけねばなりません。

それと一度に全てを接着するといびつになりやすく、接着剤のはみ出しも取り除きにくいので、時間が掛かりますが1箇所の接着をし12時間放置後にはみ出しを取り除く研摩をして次の1箇所を接着を接着する!を繰り返しています。 よって切り出しから接着終了までに丸2日を要しました。(乾燥時間が大半ですから神経をすり減らす時間はたいしたことありませんが?)

それらの様子は以下の写真をごらんください。

一番小さなFontはインスタントレタリングがまだ残っているので、それを使って背面板に文字入れし、透明クリヤーとつや消しクリヤーのスプレー塗料で仕上げました。

天板と底板の切り出しは±0.05〜0.1mmの寸法誤差となるようヤスリで削りながらノギスで何度も確認しながら仕上げました。 また側板を接着する部分は接着強度を高めるため、#120ペーパーで研摩しています。(矢印の先の部分。)

2枚の側板は背面板を落とし込む深さ1mmの溝をトリマーで切削後(赤矢印部分)に少し大きめに切り出し、カンナと替刃式ヤスリで±0.05〜0.1mmの寸法誤差となるよう仕上げています。

底板と左側の側板をエポキシ接着剤で貼り合わせ、クランプとハタ金合計9本で圧着保持しています。 大袈裟なようですが寸法精度を高く保ちながら密着度を高めるために不可欠です。 尚室温が低くなってきていますので完全硬化のために12時間と長めに放置します。

接着後12時間寝かせてからクランプを外しました。 右端に見えるアルミ板に映った側板の反射を見ると接着時の直角度がかなり正確であることが判るのですが、隅に沿って白く光っている部分が若干問題です。

隅に沿って光っていた部分は滲み出た接着剤です。 このままにしておくとヘッドフォーンアンプ本体がスムーズに出し入れできませんのでヤスリで削り落とします。

表面の接着部分にも接着剤が滲み出ていますが、これは最後の仕上げ研摩で落とします。

接着工程の第二段はもう一枚の側板と背面板をL型に接着し終わった部分への接着です。 これはハタ金で圧着保持中の写真ですが、アンプ本体を挿し込んで位置関係を確認してハタ金で軽く締め上げ、その後アンプ本体を引き抜いて本締めしています。

12時間放置後にハタ金を外しました。 コの字型になって後ろ側が塞がった状態です。

その背面はこんな具合です。 仕上げ研摩をするとこんな大雑把な雰囲気ではなくなる筈です。

内側の接着剤のはみ出し具合。 強い光の反射がないので暗い部分がはみ出た部分で、無論これは削ります。

外側のはみ出た部分はこんな具合ですが、これも後程仕上げ研摩の時に削り落とします。

ヘッドフォーンアンプ本体をケースに落とし込んでみました。 側板の黄色矢印面はフレームの赤矢印面より高くないといけません。 そうなっていない時はフレームを削って高さを詰める調整をします。

最後の接着ですが、アルミの天板を貼り付け12時間圧着保持しました。 ここでも接着剤の使用量はギリギリまで抑えてはみ出る量を少なくします。

ケースの組み立てはこれで終了ですが、まだ側面の仕上げ研摩と天面、底面のヘヤーライン加工、面取り研摩が残っています。

側面研摩の様子。 たまたま天板の角に傷をつけてしまいましたが(左上)、側面研摩と面取りの過程で消すことにします。 これは研磨前で接着剤がはみ出ています。

木部の汚れは削られたアルミの粉によるものです。 左上の傷はかなり小さくなりました。 接着剤もかなり削り取られています。

アルミ板の天板の角を削り落とし傷が完全に消えました。 また接着剤のはみ出た部分も完全に無くなっており、仕上げ研磨ほぼ完了の状態です。

研磨面の汚れを落とすべく水洗いしました。 非常に細かなアルミ粉は若干残っていますが、次の着色作業でマスクされます。

ヘヤーライン加工に入りますが、ヘヤーライン無しだとピリッとした感じが無く間が抜けて見えます。

背面のクローズアップですが、間が抜けている感じが良く判ると思います。

ヘヤーライン加工については何度もお見せしてきているので、いきなり終了後の写真です。 今回は#120のサンドペーパーを使いました。 いうまでもなくキリッとしたシャープなイメージに変貌します。 この後の着色で更に質感が高まります。

塗装に関しては既に色々なテーマで紹介しているので仕様のみを紹介しておきます。 詳しくはこちらの塗装の記述部分を参照ください。

塗装仕様

    1.着色: 水性ポアステイン マホガニーブラウンを水で2倍に希釈し5回塗装。
    2.研摩: 4回目の着色後に#400で表面を軽く研摩。
    3.塗装1: 油性アクリル系スプレー塗料 透明クリヤー 1回
    4.塗装2: 油性アクリル系スプレー塗料 透明クリヤー 1回
    5.研摩: #400サンドペーパーで載りを良くするための研摩 1回
    6.塗装3. 水性ウレタン塗料つや消しクリヤー刷毛塗り 1回


3回塗装ということですが、乾燥時間が短いので完全乾燥後に重ね塗りをしても1日で作業は終了しました。 そしてその仕上がり具合は以下の通りです。

ヘヤーライン加工をした面はかなり艶がありますが、艶なし塗装することによりギラギラした感じが薄れて品が良くなってきます。(その差は写真では判り難いですが、肉眼でははっきり判ります。)

艶消し塗装の決定的に違う見え方はこちらです。 反射面は光を50%程しか反射しませんから、このようなにぶーい艶が出て品位がグーンと上がります。 実は塗装技術の未熟さも隠しやすいので、もう10年以上私の標準仕上げです。

アルミ板とアガチス材の接着面はヤスリで研摩していますから、繋ぎ目の段差はありません。 この金属部分と赤黒く着色されたコントラストが私の好みです。

その部分のアップですが、上品でありながらきりっとしたシャープが、天板のヘヤーラインをも含めて出ています。

ヘッドフォーンアンプ本体を装填しました。 数千円で完成したとは思えない出来栄えだと思います。

外観上唯一残る反省点はLEDの窓穴です。 直径が2mmですが、半分の1mmであればもっと品が良くなると思います。 但しアルミ板への1φの穴あけは簡単ですが、その上に貼る紙に綺麗に穴をあけるのが至難の業です。


---- 完 -----


  
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