HOME
サイトマップ
アマ的手法
材料
工具
作品一覧
リンク
mini-Shop


 
マイクアンプ
   
2014/06/27

まえがき
                                                 私が楽しんでいるインターネットカラオケサービスの画面
本テーマは最近もやもやした中から是非とも作ってみたいという気になったモノです。 但し例によってというか完成度を高めるためには構想には相当時間を掛けねばならないと考えています。 さて本テーマの構想に触れる前にいきなり脱線と言うか、何故これを作ろうとしているかについて簡単に述べておきます。

私の持っている趣味は幾つかありますがその中に歌を歌うことがあります。 高校から大学に掛けては混声合唱でそれを楽しみましたし今でもその頃のメンバーと年に一度は集まって一緒に歌うことは大変楽しくて大切な時間になっています。 但しサラリーマンになっていきなり海外営業の仕事を任され23歳の時に最初の駐在をフィリピンでしました。 そしてその後駐在や長期出張を南ベトナム、タイ、香港、台湾、グアム島で経験してからヨーロッパ諸国(イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン)への頻繁な出張を繰り返した後にアメリカ合衆国に8年間の駐在、更にその後フランス、スペイン、イタリア、ポーランド、南アフリカへ長期出張と日本に居る期間より海外に居る期間の方が遥かに長いという経験をしました。

これらの間学生時代に熱を上げた合唱を楽しむ機会は完全に失われ、歌を(或いは音楽を)楽しむ機会としては夜の世界に限られてしまいました。 特に最初に駐在したフィリピンでは、私が初代駐在員であったため会社のサポート体制も万全ではなく、駐在費用を賄う送金さえもスムーズに処理されず、金欠病の中での生活、就労を強いられました。 当然夜の世界を楽しむ金にも事欠きますのである晩これが最後のビールと寂しく飲んでいたときに偶々バンドが演奏を始めた「ここに幸あり」(大津美子の大ヒット曲)を聴いていた時思わずバンドに、「俺に歌わせてくれないか?」と頼み込んで歌わさせてもらいました。 そうしたところそのナイトクラブのマネージャーが出てきて、「良かったらこの店で歌ってくれないか? 飲み物は只にするから!」という話。 金欠病だった私にとっては救世主でしたが、それが当初日本の曲だけ歌っていたのがバンドのメンバーの勧めでアメリカを主体としたポップスを次々と練習して歌うようになりました。

以上はフィリピンでの話しですが、その後の東南アジアの国での駐在時にはピアノバーや小編成のバンドが演奏している小規模のナイトクラブに行っては頼み込んで歌わせてもらうようなことに発展し、カラオケならぬ「ナマオケ」(私が勝手に付けた名称)を楽しんだ次第です。 定年後は混声合唱団に参加しましたが、ナマオケではレコードを繰り返し聴いて旋律、発音、歌詞を覚えていたのが、楽譜を読み取るその昔やった方法から来る独特のかったるさからどちらかというとカラオケで歌うほうが私には充実感があります。(自分で解釈した曲想をそのまま表現できるため) 但しカラオケには大きなハンディキャップがあります。 それは練習がうまく出来ないことです。 自宅で楽しめるカラオケには色々なサービスがありますが、アメリカを主体としたポップスを主力にする私にとって演奏の質や取り扱い曲数があまりにもお粗末なものばかりでした。

但し2ヶ月前に発見したあるサービスは夜の世界でナンバーワンのシェアを生かし取り扱い曲数の多さ、高い演奏の質で練習用に十分ですし、家族や友人などと自宅で楽しむのに持って来いです。 月額\1080.-の利用料も嬉しいところで現在私が歌えそうな曲を調べてリストアップしているのですが約400曲あり、その内アメリカンポップスが65%位占めています。


構想
現在カラオケの練習はパソコンを自作のデスクトップに繋いでスピーカーから伴奏を流した上で、音声は肉声でというやりかたです。 練習用にはこれで良いとも居えますが実際のカラオケのように音声もマイクを通し適切なリバーブを掛けて処理したいところです。 これがマイクアンプ製作構想のスタートポイントです。 そこで製作に使えそうな部材探しに躍起になりました。 マイクロフォンを何にするか?、リバーブ処理回路をどのようにするか?がポイントでした。

マイクロフォンについてはインターネットを通じて様々な意見を調べた結果ダイナミックマイクロフォンでハウリング防止を重要事項としてかなり指向性が鋭いものからAUDIXのCM3Sを選びました。 (男性の低域の発声限界近辺がやや強調されているらしく、こもりの少ない爽やかな音とのこと。) これは既に入手しましたが近々に通っているスナックに持ち込みテストしてみるつもりです。

リバーブ処理回路は難物です。 その昔NHKでも使っていた、大きな金属板を音声信号で駆動して金属板で発生する振動をピックアップする!という方式はかなり質的にも良いのですが装置が大げさすぎます。 テープレコーダーを使う方式は残響ではなく反響効果(原音に遅れてレベルが下がった音声が聴こえるエコー)でありここで求める物ではありません。 20〜30年前にはBBD(バケットブリゲードデバイス)なる部材があり、バケツリレーによって信号を遅れて伝送させる方法による電子的なリバーブ処理がありましたが、音色が綺麗でなくなるのもさることながら、BBDその物が入手できなくなっています。

おぼろげながら音声信号(アナログ)を一旦デジタル信号に変換してから然るべき処理後にアナログ信号に戻すDSPが現在最も適当な実現方法かなと思われますが、デジタルに超弱い私にとっては首を突っ込みたくない世界です。  ところが偶然に残響処理や反響処理だけに特化したICを発見しました。 その技術資料を読んだところDSPの一種ですが使い方は簡単でありしかも数百円で販売されています。

そこでこの部材を元にマイクロフォン プリアンプを構想してみることにしました。 次はそのブロックダイアグラムです。
左側が入力信号側で右が出力側になります。 入力の上と下の2つはパソコンから流れてくるカラオケの音声信号です。 中央の2本がマイクロフォンで、取り敢えずは1本分で良いのですがデュエットをやろうとしたら2本居るので、最初から2回路にしておきます。 その次の赤枠は増幅回路ですが200倍の増幅度を持っています。 従って出力レベルが100mVであれば入力信号レベルは0.5mVになります。 かなり高倍率ですからSN比が悪化しないよう考えねばなりません。 このアンプは十分なダイナミックレンジが必要になりますが、電源を±12Vとしたとすると最大出力電圧は7.7V(RMS)位になります。 この時入力電圧は38.5mVとなりますが、ダイナミックマイクの最大ピーク出力は10数ミリボルトと言われているらしいので十分なダイナミックレンジでしょう。

このアンプの後ろにレベル調整のVRを置き2つのマイクの信号をミックスする回路に進みます。 そして残響付加回路に行きますがその前後には残響を付けたくないときの為にバイパススイッチを入れます。 この図には入っていませんが、残響時間は40msecから340msecの間で調整が可能になっています。 そしてメーカーの発表値では処理後の歪は40msec時に0.14%、340msec時に1.0%ということで、これらの値に留まるなら、音が割れる!といったようなトラブルは出ないだろうと期待しています。

残響付加回路を出た信号は左右のカラオケ信号とミックスされて出力となりパワーアンプに繋がりますが、音声信号の定位位置は中央に固定されたままです。 この辺りパンポットを追加(それもマイクごとに)してやろうか?なんてことも頭をよぎりますが、欲張りだすと失敗しやすさも同時に増加しますので現在のところは音声は中央に固定のままにしています。

以上を実現する回路として考えた第一次が左の図のようなものですが、私のお気に入りのオペアンプを3個使っており電源は±12Vで消費電流は15〜50mA位でしょう。 そして残響付加回路に使うIC(PT2399)は電源電圧は5Vと低いながら消費電流は100mAと大きいです。 これらを一個のトランスで賄うとするとプラスとマイナスの消費電流のアンバランスが大きすぎてオペアンプ用にレギュレーターが必要になり、供給電圧が下がると同時に部品点数も増えます。 それならということでオペアンプとDSP用に2つの電源トランスを持たせることを考えています。

そうそうここで使おうとしているお気に入りのオペアンプはバーブラウンのOP2134ですが、メーカー発表の物理特性こそ最高ではありませんが、これまでに遣ったオペアンプの中では安定性が良く動作が素直、FET入力のためオフセット電圧が小さい、電源ON/OFF時のポップノイズが少ない、物理特性はトップランク、明快で明るい音色、といった点で好感を持っています。 今回のテーマ用にはちょっぴり贅沢かな?という気もしています。



2014/07/04

構想・検討の続き

その後の検討作業で回路や回路定数の誤りを幾つかあることを発見し修正し電気回路部分の構想としては一応良しとしました。 但しこれで一挙に製作するのは無謀ですので幾つかのブロックに分け、ブロックの組み立て後に動作確認をしてから次のブロックに移るというやり方で進めます。

第一段階はマイクが繋がる200倍の増幅器1組です。 第二段階はもう一組の増幅器とミキシング回路です。 第三段階は残響付加回路です。 そして音楽信号とのミキシング回路が第四段階で、ここで4つのブロックを結線して全体の動作確認をします。 第五段階が電源回路となり電子回路の組み立ては終了となります。  第四段階までの動作確認に必要な電源は以前組み立てた2つの安定化電源を使います。 こういった手順で進めることによりその過程で大きな問題を生じて製作を断念するようになっても実損をかなり抑えられるでしょう。

さて回路らしきものは一応まとまっていますが、目標とする仕様を次のようにまとめました。

マイク入力: ダイナミックマイク2系統
マイク入力感度:    0.5mV (-66dB/V)
出力電圧:    100mV(-20dB/V)
ゲイン:    200倍(46dB)
S/N比:    60dB(IHF A)以上
入力換算雑音レベル:    -126dB/V(IHF A)以下
最大許容入力レベル:    44mV(-32.9dB/V)以上
残響付加時間:    40msec〜360msec
 
音楽信号入力:    100mV(-20dB/V)
ゲイン:    1倍(0dB)
 
電源1:    AC100V入力、 出力電圧 ±15V、出力電流 20〜80mA
電源2:    AC100V入力、 出力電圧 5V、出力電流 100mA


次に回路基板のレイアウトを考えました。 基板はメイン基板と電源基板の2つに分けます。 そうする一番の理由はメイン基板は3個の可変抵抗は基板に半田付けで固定する小型のものを使いますが、そのツマミの中心を上下の真ん中に近くするため21mmのスペーサーで浮かして固定します。 電源基板は5mmのスペーサーで浮かして固定しないと電源トランスが飛び出てしまいます。 それと基板を2分割とすることで途中で製作を止めたときの損失を若干なりとも抑えられます。

メイン基板のレイアウトは左の通りです。 マイク入力からオペアンプの入力までの配線は短くなることを優先しています。 またオペアンプは2回路入りの1回路だけを使っています。 これはオペアンプ周りのレイアウトが都合良いためですが、マイクアンプとその後のミキサー回路でも同様です。 無論使用しない1回路の+入力はGNDに落とし-入力と出力を接続して動作を完全に抑え込んでおきます。

マイクのレベル調整は増幅器の出力側に入れています。 こうしたときに増幅器のダイナミックレンジが十分でないと増幅器が飽和して歪んでしまいますが、次のような前提で問題は無いと踏んでいます。

使用予定のダイナミックマイクは94dB SPLの時に1.7mVの出力が出るとされています。 このマイクに人間が耐えられる最大音圧(120dB SPL)が加わると26dB(20倍)音圧がアップしますので、出力電圧は34mVとなります。 この時にマイクアンプの出力電圧は200倍の6.8Vになります。 この出力が歪まずに出ればダイナミックレンジの問題はありません。

OPA2134を使ったこれまでの経験ではピーク出力電圧より1V高い電圧が電源電圧になります。 ということは6.8Vの出力はピーク出力では√2倍の9.6Vですからこれに1Vを加えて10.6Vあれば良いことになります。 以上は波形の片側だけを考えていますから、最終的には『±10.6V以上の電源電圧が必要!』というのが答えです。 電源回路の出力電圧は現在のところ±13.6Vと推測しており取り敢えず問題なさそうです。 仕様で規定した最大許容入力レベル(44mV)はこの±13.6Vから計算した値です。

尚当初は電源トランスの2次側として±12Vを考えていました。 その時の直流電圧予測値は±16.2Vとなりマイクアンプのダイナミックレンジは更に改善されます。 但し今考えているオペアンプ用電源回路ではレギュレータを使いませんので、AC100V回線の電圧変動の影響をもろに受けます。 仮に10%AC100V回線が上昇すると直流出力電圧は±17.82Vとオペアンプの絶対定格の±18Vに肉薄してしまい破壊の危険にさらされます。 そんなことでトランスの2次電圧を10Vとしています。

このマイクアンプはダイナミックマイク専用と考えていますが、コンデンサーマイクでは一般にダイナミックマイクロフォンより出力電圧が10倍前後高くなり、そのままではダイナミックレンジの問題が発生するのと、コンデンサーマイクに内蔵するFETを駆動する電源が必要になるので今回は対応しません。

ミキサー回路はオペアンプの反転増幅回路を使っています。 その理由は、この回路では+入力はGNDに落としますが、イマジナリショートの考え方で+入力がGNDに繋がると-入力もあたかもGNDに繋がったかのような動作をします。 この時その前に複数の入力が繋がっていても入力同士が干渉しあうことがないので大変都合がよくなります。

その次の残響付加回路はメーカーの推奨回路をそのまま使いレイアウトを組んでいます。 残響時間調整回路は可変抵抗を使いますが、50KΩ(B)2連を並列に繋ぎ25kΩとした上に1KΩを直列に繋ぎました。 従って可変範囲は1K〜26KΩですが、メーカー発表データの残響時間によれば、40msec〜340msecとなります。 抵抗値を大きくすれば残響時間を長く出来ますが、徐々に歪が増えてくるので仮組みし聴感上どうかを確認してから決定します。

電源基板には2つの電源トランスを載せています。 常識的には1個の電源トランスで間に合うはずなのですが、以下の理由で2つにしています。

メイン基板には4個のOPA2134が搭載されますが、無信号時に20mA程度、最大出力時に80mA程度、平均では60mA程度の消費電流だと思われます。 一方残響付加用のPT2399の技術資料には電源電圧5Vと低いですが、消費電流は100mAと高めです。  これら2つを1つのトランスで対応すると、+側には120〜180mAもの電流が流れるにも拘わらず-側は20〜80mAとかなりバランスが狂いオペアンプの動作に影響が生じます。 従ってレギュレーターを使って安定化することが不可欠になります。 そこでこの場合2次側出力電圧はレギュレータでの損失を考慮して±15V、また+側の消費電流を元に出力電流は300mA程度といったかなり大きいものとなってしまいます。

ここではその代わりに±2電源用には中間タップ付き20V 200mAのトランスを使います。(負荷率10-40%)  これをブリッジ整流すると60mA程度の負荷の時にDC出力電圧は±13.5V程度になります。 ±の負荷電流バランスは大幅に狂いませんからレギュレーターは通さずシンプルに仕上げます。 このメリットはレギュレータで発生するノイズの影響を受けない点にあります。 但しレギュレータによるリップル低減が期待できませんから6800μFのフィルターコンデンサーを使います。 もうひとつのトランスは、6V 160mAで、ブリッジ整流回路を通過後5Vのレギュレーターで5V出力を得ます。 計算ではレギュレーターで0.5W近い損失が発生しますが、使用予定のNJM7805FAは裸でも損失が2Wまで放熱板は不要ですので普通に取り付けています。

ケースはこれまで製作したのと同じ考え方というか費用は\700程度と抑えながらもきちんとデザインされた外観にする予定です。

ケース本体は蓋付のアルミシャーシで製作費用の大半を占めますが大きさは120(W) x 170(D) x 50(H)mmです。 この上下を4mm厚シナ合板、左右は9mm厚シナ合板を当ててやります。 無論木口には木口テープを貼って着色剤でローズウッドのような質感をだします。

また前面パネルはアルミ板に文字を印刷した紙を貼って仕上げますが、上下にアルミのサッシ材で縁取りを入れアルミパネルの質感を見せてやります。 内部の構造は右をクリックし下半分の図をご覧ください。 前面パネルを透明にした状態ですが、上に3個並んだツマミはプリント基板に半田付けされたVRに付いていますので、それらの下の緑色はメイン基板で20数ミリ浮かしてあります。 その下5mm浮かして固定してあるのが電源回路基板で、電源トランスの大きいほうは高さが41mmありますので、41 + 1.5(基板厚) + 5(スペーサ) = 47.5mmになり、シャーシーの内寸高さ(48mm)に対してぎりぎりになります。

2つのフォーンジャックはメイン基板の下にもぐりこむような格好で取り付けられますが、これとメイン基板の配線は、予めジャックに長めに切断したシールドケーブルを配線してからシャーシに固定します。 またケーブルの端はメイン基板の穴を通して表面側に出して基板を固定し、基板のピンにシールドケーブルを半田付けという手順を取ります。




2014/07/11

マイクアンプの試作

製作の第一段階である1台のマイクアンプを組み上げてテストしました。 レイアウトは既に設計しているものと殆ど同じで、違う部分はオペアンプをソケットを介して取り付けることと帰還抵抗(24kΩ)は手持ちにないので、22KΩに2.2KΩを繋いだ24.2KΩにしたくらいです。 面倒な部分もありませんので、2時間ほどで組み立ては終わりました。

早速定電圧電源を繋ぎ出力電圧を±13.6V(設計値)にしてテストを始めました。 ところが何か動作がおかしいのです。 先ず気づいたのはゲインが予定より低く、1KHzで190倍に届きません。 先ほどの帰還抵抗は僅かに増加していますのでゲインは195倍が計算値です。 そして1KHzの方形波を入力したときに腰を抜かしました。

右の写真をご覧いただけばお判りのように再生波形は方形波とは言えないくらいに変形しています。 そしてこの波形は低域のカットオフが極めて高いことを示唆しています。 恐らく1KHzはカットオフ以下の周波数でしょう。 さすれば1KHzでのゲインが低いなんていう現象も起こります。 そこで何か配線間違いでもしたのかと数回点検しましたがそのような箇所は全くありません。 そこで原因は回路自身にあると色々考えた結果ある部分が怪しいと気づきました。 それはパッシブDCサーボを形成するコンデンサー(1μF)の値です。 私は先人の記事を参考に何気なく且つ安易に1μFとしてしまいましたが、その値で良い根拠が実はありません。 このコンデンサーをショートするとDCサーボが解除されオフセットは増加するもののゲインは変わらない筈です。

そこでコンデンサーをショートしてみました。 するとゲインは198倍に上がり、1KHz方形波は原波形にかなり近づきました。 この現象はコンデンサーの値が低すぎるため低域のカットオフ周波数がずーっと上の方にずれてしまっていたことを表していると考えてよいでしょう。 1KHzで僅かに減衰しているわけですからコンデンサーの値を100倍にすれば10Hz近辺で僅かに減衰するように改善される筈です。 但し100μFなんて大容量の無極性電解コンデンサーは手持ちにはないので、220μFの電解コンデンサー2本を直列に逆接続し、110μF無極性化して試してみました。

その結果は100Hz、1KHz、10KHzのゲインはほぼ同じで198倍になりました。 ここで発振器をスイープさせて低域のカットオフ(-3dBのポイント)を調べたところ15.2Hzと充分下のほうにずれたことを確認しました。

動作テストのため組み上げたマイクアンプです。 入・出力、±電源はリード線を立てて繋ぎやすくしています。

110μFのコンデンサーを裏付けして正常に戻った1KHz方形波、若干の右下がりと左肩の丸みがありますが、これらは通常のHiFiアンプに較べると再生帯域が狭いことを意味しています。

こちらは100Hz方形波の再生波形です。 実測した低域のカットオフ周波数は16.2Hzですが、このは波形の傾斜は1μFの時の1KHz方形波の傾斜より緩いので、100倍の1600ヘルツより高い2KHz近くにカットオフがあったように思います。

こちらは10KHzの方形波です。 左肩が素直に丸くなっているのは数十KHzが高域のカットオフになっていることを暗示しています。 妙なピークやリンギングがありませんので、極めて安定した動作をしていることを伺わせます。

以上でパッシブDCサーボの為に挿入されている1μFを100μF以上に変更することで解決策としますが、ここでパッシブDCサーボの動作原理と回路定数計算法について簡単に触れておきます。

先ずパッシブDCサーボには単帰還方式と今回使った多重帰還方式の2種類があります。 左は単帰還式ですが、オペアンプが発生するオフセット電圧を最少に抑えるには、R1とR3の値は一致させる必要があります。 そうしておいてC2はショート状態とみなせる高い周波数では上のような非反転増幅回路になり、ゲインはR3/R2 + 1で求められます。

さて扱い周波数が十分に低くなりDCとなりますとC2は取り去ったのと同じになりますから(R2も取り去れる。)右のようなボルテージフォロワーと同じ動作をするようになり、ゲインは1です。

これが何を意味するかというと、入力に現れるオーディオ信号は非反転増幅回路として増幅しますが、DC電圧に対しては増幅度が1になり入力のオフセット電圧はそのまま出力に表れ、オフセット電圧が増幅されて拡大することがありません。

左の多重帰還型では帰還抵抗がR3とR4の2つに分かれて入力に繋がります。 ここでオペアンプが発生するオフセット電圧を最少とする為、こちらでもR1とR3の値は等しくする必要があります。 R4はDC的には入力に繋がっていませんので無関係です。

この回路に高い周波数の信号を流すとC2はショート状態とみなせますので、右のような非反転増幅回路になります。 帰還回路にはR3とR4の2本が並列になっていますので並列の値をR2で除した値に1を加算したものが増幅度になります。

一方DC信号に対してはC2を単純に取り除いた回路として見れますから右の図のように動作します。 ここでR4とR2は直列になってオペアンプの負荷抵抗になったものとみなせ、全体としてはボルテージフォロワーとなりGainは1で単帰還式と同じ結果になります。

ここでC2の役目ですが、R2と共に低域のカットオフを決定します。(言い換えるとDC動作とAC動作の切り替え点を決定するわけです。) その切り替え点たる周波数は1/2πCRで求められます。

反省を踏まえて今回私の早とちりで決めたCの値は1μF、R2は100Ωでした。 これから導かれる周波数は1592Hzです。 1592Hzでそれより上の周波数より3dB落ちますから、1KHzの信号が減衰されるのは当たり前で、実験では110μFに変更しましたが実測値で15.2Hz、計算値では14.5Hzとなり、完全に裏付けが取れています。

尚多重帰還型のメリットは単帰還型では入力抵抗と帰還抵抗を一致させないとなりませんが、多くの場合入力抵抗値は高めにしたいことが多く(100KΩ以上?)、増幅度が大きい場合には良いが小さい場合には帰還回路のインピーダンスが大きくなりすぎます。 多重帰還型では帰還抵抗は2つの抵抗の並列値で決定されるので、それを緩和でき都合が良いです。


問題は一応解決しましたので残るチェック項目を調べました。 オフセット電圧の状況についてはパッシブDCサーボが無い状態では出力に50mVのオフセット電圧が生じます。 198倍のゲインを持っていますから上出来とも言えるのですが、更にパッシブDCサーボが掛かった状態では0.5mVまで減少します。 電源電圧±13.6Vの時の最大出力は9.2Vと求まりましたので、許容入力電圧は46.mVと求まりました。 この値は目標の仕様を上回っています。

SN比や入力換算雑音電圧は今回組んだバラック状態では測っても意味がありませんので、後日とします。



2014/07/18

2つのマイクアンプとミキサー回路の組み上げ

2種類のパッシブDCサーボのどちらを選ぶかは多重帰還型では電解コンデンサーの大きい物が必要で抵抗も1本余計に使うので、レイアウトへの影響が大きくなってきます。 性能上の違いは増幅度の大きいこのアンプでは出ないと考えられますので、単帰還型を採用することにしました。(ヘッドフォーンアンプのように増幅度が小さく10倍以下というアンプでは多重帰還型が性能上で有利になります。)  以下の回路図でそれらを簡単に説明します。


上の多重帰還型と単帰還型は総合性能はほぼ同等です。 ここで入力抵抗を100KΩとすると帰還回路の大きな値の抵抗は自動的に100KΩと決まります。 そして多重帰還の場合交流的にはこの100KΩと並列に抵抗が入るので(ここでは24.82KΩ)、帰還回路の小さな抵抗値は(ここでは100Ω)単帰還回路の小さな値の抵抗値(ここでは503Ω)よりも必然的に小さくなります。

ところでパッシブDCサーボ回路の低域カットオフ周波数は 1/2πCRで決定されます。 したがって帰還回路の小さな抵抗値がより小さくなる多重帰還型においてはその分だけCの値は大きくなり、物理的なサイズも増加してしまいます。 これに多重帰還型では帰還抵抗が1本多いのでレイアウトでより大きなスペースを喰いやすい可能性があります。(実際に上の回路でレイアウトを検討すると多重帰還型では基板サイズが大きくなってしまいます。)

確認のお話ですがこのアンプの低域周波数特性を決定するエレメントは複数ありパッシブDCサーボはそのひとつです。 上の回路で入力に入っている0.1μFと100KΩは15.9Hzのローカット特性を与えます。 従ってパッシブDCサーボのカットオフを更に低い値に設定しても総合的な低域の周波数特性は15.9Hzになります。

ちょっと説明が長くなりましたが以上の経過を踏んで設置面積が拡大しない単帰還型としました。 プリント基板のレイアウトはアンプ2つとミキサー1つだけ定数が最終的な値となりましたので右にそれを掲げておきます。 尚アンプ回路で使う4本の100KΩと470Ω、33Ω各2本は雑音発生を抑えたいのと増幅度決定に影響しますので、1%金属皮膜型抵抗を使います。

2つのマイクアンプとミキサーの組み立ては淡々と進みました。 マイクの入力となる標準サイズフォーンジャックは基板の入力ピンの真下になり恐らく配線は40mm前後で済むはずですが信号レベルが大変低いので細いシールドケーブルを使います。 そして左の写真のVRの左に見える穴より下から出して黄色のコンデンサーの手前にある接続ポストに結線します。 動作が確認し終わったらあなの周りに合成ゴム系接着剤で固定して安定化を図ります。

パッシブDCサーボに使う無極性電解コンデンサーは、VRの裏に配されていますが、大き過ぎないためレイアウトに無理はありません。 ほぼ真ん中上に見える電解コンデンサーは無極性で4.7μFで音声遅延回路のICで受けられます。 このICの入力インピーダンスは不明ですが入力回路に使われる抵抗より低くなることはありませんから20KΩを下回ることは無い筈です。 20KΩであればカットオフは1.7Hzですから2つのマイクアンプにミキサーを加えた回路全体の低域遮断周波数はマイク接続部分の15.9Hzで決まります。

完成したアンプは定性試験を優先ということで、方形波の応答特性を見ました。 以下の写真はそれらですが、2つのマイクアンプの特性がかなり揃っていることを伺わせます。

1卵性双生児のように2つのアンプの応答特性はよく似ています。 サグがかなり大きめで低域が余り伸びていないことを示しています。 これは後ほどの周波数特性の実測で明らかになりますが、通常のオーディオアンプに較べると低域のカットオフを意識的に高めにしているためです。

1KHzでも再生波形は同じ写真を使っているの?と思うくらいよく似ています。 こちらでもサグが目立ちますが、低域のカットオフが高めであることの現れです。 左肩もほんの少し丸みを感じますが、これも高い周波数の特性を占っています。

10KHzでもそっくりさんは維持されていますが、それよりも方形波の左肩の丸みが気につきます。 後ほどの周波数特性実測でオーディオアンプの高周波特性としてはぎりぎり合格の値です。 特に高域を抑えるようなことはしておりませんので不思議であり少々注意が必要です。 但し安定度の観点からは2重マルです。



方形波特性に引き続き周波数特性を測定しました。 私の自作した発振器は10〜100KHzが発振帯域ですのでそのレンジでの測定です。 以下のグラフをご覧ください。



2つのマイクアンプの周波数特性は差異が0.2dB以内に収まっておりそっくりサンの方形波特性を頷かせる揃い具合です。 低域のカットオフは-1dBで35Hz、-3dBで18Hzです。 高いほうは-1dBで22.5KHz、-3dBで43KHzです。 低いほうは一般的なオーディオアンプとしては失格ですが、目的であるボーカルの集音用であれば男発声限界周波数が50Hzですから合格です。 高いほうは高望みすればきり無いものの、実用品として考えれば十分な再生帯域です。

その他の特性としては、

        マイクアンプ1 マイクアンプ2
マイク入力からミキサー出力までの増幅度 198倍(45.9dB) 199倍(46.0dB)
最大出力電圧(電源電圧±12.6V 1KHz) 8.12V 8.17V
許容入力電圧(電源電圧±12.6V 1KHz) 41.0mV 41.1mV

最大許容入力電圧が目標より若干下目ですが、電源電圧により大きく変化しますので、次回は電源を組んで実力を測定しては?と考えています。




2014/07/25

電源の組立とアンプの最終的なダイナミックレンジ

電源回路基板のレイアウトは若干の変更を加え右の通りで組み上げました。
変更点としては全体的に右上に移動させたこと、AC100V入力と電源スイッチへの接続をコネクターを介した方法にしたことです。 また組み上げた後の感触で基板がトランスの重みで結構しなりやすいので、基板の中央に固定のネジ穴を増やし5点止めとしました。

とまあ何も問題なく進行したようですが、実は配線図に記入した電圧値にはあまり自信が無いというか根拠が殆どありません。 電圧が高すぎるとオペアンプを破壊する可能性もありますので、基板を組み立てる前に空中配線で動作電圧を確認しました。

先ず消費電流ですが、既にオペアンプ3個で23〜24mAであることが確認できています。(設計時は1個で15mAで計算していました。) 最終的には4個のオペアンプを駆動しますので、消費電流の最終値は30.5〜32mAになります。 そこで手持ちの巻線抵抗5本を繋いで941Ωを作りました。 これに更に1%誤差の1Ωを繋いで942Ωをダミー抵抗としました。 高精度の1Ωを繋いだのはこの両端の電圧を測定すれば通過する電流値(つまり消費電流値)を直読できるからです。

このような空中配線にて測定した結果は以下の通りでした。

      +−間DC出力電圧: 29.98V
      DC出力電流:      31.5mA
      AC入力電圧:      103V

この結果から類推するとAC100Vの時には±間の電圧は29.11Vになります。 ということは±14.6Vであり最大出力はかなり増加します。 但しもっと大事なのはAC100V回線変動でどうなるかであり、10%上がると±16.06V、20%上がると±17.52Vに上昇します。 この計算結果でほっと一安心しました。 というのはオペアンプの動作電圧最大定格は±18Vですので、どんなことがあってもこの値を超えてはいけないのです。 AC100V回線は通常±10%以内に収まっているようですから2V程度のマージンがあるわけです。 もしも高すぎる場合には整流後の±両回路にダイオードを挿入し-0.6〜-0.7Vの電圧調整をしないとならないと頭の中では考えていましたが、その必要はまったくありません。 ±10Vのトランスでこの結果ですから±12Vを使った場合には多分電圧調整が必要になると想像します。

さてAC100Vの時に電源電圧は±14.56Vになりますが、この電圧でアンプの最大出力がどうなるかのテストを早速いたしました。

        マイクアンプ1 マイクアンプ2
マイク入力からミキサー出力までの増幅度 198倍(45.9dB) 199倍(46.0dB)
最大出力電圧(電源電圧±14.5V 1KHz) 9.55V 9.55V
最大許容入力電圧(電源電圧±14.5V 1KHz) 48.2mV 48.0mV

結果はすこぶる満足で許容入力電圧の目標値(44mV)をクリヤーしています。 これに気をよくして基板の組み立てを行いました。 出来上がった電源基板の性能は以下の通りです。

電源 1(±14.5V)
トランス2次電圧(無負荷): 24.19V
DC出力電圧(無負荷): ±16.05V
トランス2次電圧(負荷31.5mA): 23.30V
DC出力電圧(負荷31.5mA): ±14.55V
電源 2(+5V)
DC出力電圧(負荷100mA): 5.02V
特に説明を必要としないでしょうが、電源2は残響音を生成付加するデジタルプロセッサー用で電圧は5Vと低いですが、このICだけで100mAの消費電流となります。 ICの電源電圧最大定格が不明ですので5Vのレギュレーター(矢印の先)を使っています。   このレギュレータは放熱板無しで1Wまでの損失に耐えられます。 ここの定数で発生する損失は0.25W以下と試算されていますから放熱板は使用していません。




2014/08/01

残響音付加回路とマイク信号/音楽信号ミックス回路の製作

残響音付加回路はいわゆるDSP(Digital Signal Proccesing)で、典型的なアナログ人間である私の最も苦手とする分野です。 従って設計なんてとんでもないことでDSPの素子(IC)の推奨回路を忠実に作るしか手がありません。 よってここで総合回路に含まれる残響付加回路部分はそっくり推奨回路を写し取ったものです。 この回路の後に音楽信号(カラオケの伴奏音楽と言ったほうが判りやすいかな?)とマイクが拾った歌声をミックスする回路が入ります。 歌声のミックス時には伴奏音楽の左右の信号に等しくミックスします。 従って歌声はスピーカーの中央に定位することになります。

これら残響音付加回路とミックス回路の最終回路定数は右図のようになっています。
またレイアウトは左の図の通りです。

組み上げた後に回路の動作を簡単にチェックしました。 音を聴いたわけではありませんが、残響音付加回路を通すと信号(正弦波)の振幅や周波数を変更した時もたーっと遅れて動作していますので、一応それらしい動作をしているようです。 また終段のミックス回路も特に問題なさそうです。

残響付加回路は16ピンのICに沢山のコンデンサーと抵抗を周辺に接続しますが、メーカー推奨回路そのもので組み立てました。

コンデンサーは2種類使い、黄色いのが積層型金属化ポリエステルフィルムで、外被が透明の物がポリエステルフィルム(マイラーフィルム)コンデンサーです。

終段のミクサー回路ですが入出力のコンデンサーには無極性電解コンデンサーを使っています。

完成した基板の裏。 小さな青い粒々は0.1μFのバイパスコンデンサーで回路図には記載されていませんが、5個のICの電源取り込みのピンに接続されています。

完成した基板全体。 2本を撚ったワイヤーが2組見えますが、これらは残響音付加ON/OFFのトグルスイッチに接続されます。




2014/08/08

空中配線による全体的な動作確認とマイクを繋いでの実用テスト

完成した二つの基板は電源ケーブル2本で繋ぎ合わさりますが、電源基板からは更にAC100Vの入力ケーブル、電源スイッチへのケーブル、LEDパイロットランプのケーブルがあります。 またマイクアンプ本体からはカラオケ信号の入力ケーブル、カラオケ信号とマイクが拾ったボーカルの音の出力ケーブル、残響音付加回路のON/OFFスイッチへのケーブル、マイクジャック接続ケーブルがあります。 それら全てのケーブルは最終的にケースに組み込む状態より50%近く長くしてテストします。 但しケーブルの両端にコネクターを使う場合にはコネクターピンの無駄使いを避けるため片方は基板裏に半田付けで接続しています。(コネクターピンは大変割高なので!) また電源スイッチへのコネクターは裸線を絡げてショートさせ常に電源ONとし、電源ケーブルの抜き差しでON/OFFします。

このような状態で電源を入れ入力に信号を注入してオシロスコープで観測し、問題なく動作していることを確認してからマイクを繋いで、入力にカラオケ信号を加え実用テストに進みました。 先ず無信号の状態でVRを最大にして見ましたがハムノイズを始めノイズは聴感上全く聞こえません。 言うまでも無く金属ケースに固定しているわけではありませんからシールド効果はありませんので、これは立派なものです。 使用しているマイクは入力感度が1.7mV(94dB SPL時)のスペックですがマイクのレベルコントロールを2/3位とし、普通の声量でカラオケ信号とバランスが丁度よい感じになります。 従って大きな声を出すような場合にはマイクレベルコントロールを絞るようになるわけで、あくまで感覚的ですが、『こんなもんで良いのかなー?』といった感じです。

さて残響付加回路をONとしたときですが、残響時間を最短40msecとした時はあまり違和感を感じなかったものの、残響時間を増加すると残響時間レベルが120msecを越えた辺りからカラオケ信号のテンポに合わせるのが困難になってしまいました。 色々な曲を歌いながら残響時間を変更してみたのですが、80〜100msecがまともに歌える限界であるように思われます。 残響時間がそれ以上になると残響というよりもエコーといったような効果になり、音声が明らかに一呼吸間を置いて出てくる感じです。 無論このような効果を望んでいるわけではないので改善策を考えねばなりません。

といってもこれに対処する方法などメーカーの技術資料にまったく記載されておりませんから、自分でひねり出さざるを得ません。 その解決策としては、『マイクの音声信号を残響付加回路の出力とミックスして効果を薄める。』 『残響時間調整範囲を40msec〜100msecの間に絞ってしまう。』 などが取り敢えず考えられます。

空中配線でのテストで発見した不具合がもう一つあります。 それはこの装置を繋ぐアンプの電源が入ったままで、この装置の電源をOFFにするとスピーカーからバチンというショックノイズとその後にジュルジュルジュルーッというようなノイズが出てきます。 前者のショックノイズは大出力のアンプに繋いだ場合スピーカーを破損する可能性があります。 2番目のジュルジュルは非常に汚らしくて聞き苦しいノイズです。 残響音付加のDSP ICから発生されているものと思われますが、完全に取り除く対策を講じねばと思います。

以上二つの問題点解決策は少々厳しい条件設定になりますが、現在の基板の空きスペースに組み込むという条件で模索してみることにします。

空中配線により実働試験の準備が完了した状態です。 マイクアンプ基板と電源基板はこんなに離すことはまずないでしょう。 カラオケ信号は中央下に見えるRCAピンより入力されます。 その左は残響時間調整VR、その左上の黒い二つがマイクの入力ジャックです。 中央左のピンジャック基板は出力端子で、中央に立っているのがパイロットランプのLED。 右側のとぐろを巻いているのが電源コードです。

中央右に見えるコネクタの2本のピンは裸線を巻いてショートしてある電源スイッチへのコネクターです。 中央左に見える2Pのコネクターはここに見えない3Pのコネクターは5V及び±14.5Vの出力コネクターですが、最終的な線長が不明ですので、高価なピンを無駄にしないよう基板の裏に半田付けしています。

マイクジャックからの配線はシールドケーブルを使っていますが、基板にあけた穴から表面に飛び出し予め用意されているピンに絡げ配線しています。 最終的にはここに見えるシールド線の外被と基板部分をG17で埋めて固定し、断線の可能性を無くします。

全体の結線が終わったので最後にマイクロフォンを繋ぎました。 ここに写っているのはAUDIXのOM-3Sです。 ボーカル用ダイナミックマイクというとSHUREのSM58が良く知られていますが、SM58に較べて超指向性のお陰でハウリングを起こしにくいことと男声の最低音領域が若干ふっくらと盛り上がって魅力的な音声として聴こえるのですが、被りが起きるようなことがなく私の好みになっています。 ちょっぴり贅沢なカラオケ用マイクと言えるでしょうか?




2014/08/15

3つの問題解決詳細

先週発見した問題点は2件と申し上げましたが実はもうひとつあるのを忘れておりました。 それらは、

   1.電源スイッチをOFFにした後にほんの少し遅れてジュルジュルジュルーッという聞き苦しいノイズが出る。
   2.残響音付加回路の残響時間が100msec以上になると実用性を損ない使いにくい。
   3.残響音付加回路のON/OFFスイッチ動作時にバッツーンというスピーカーを破壊しかねないノイズが出る。


というもので、3.が先週申し述べなかった問題です。

2.に関しては、残響音付加回路の出力にマイク出力信号を混合させてやる方法を空中配線で追加し何曲かを歌ってみましたが、遅れて出てくる音声の残響音に邪魔される歌いにくさは殆ど改善しませんでした。 簡単に出来る残る手立ては残響時間を実用上の上限値出ある100msec近辺に抑え込んでやる方法です。 この方法で色々な曲で残響時間を40msec〜100msecの間で変化させて試したところ、例えばトンネルの中で発生したときのような自然で大きな残響効果は無理ですが、残響音に邪魔されて歌いにくくなることもなくそれなりに変化があることは確認できました。 そこで技術資料から100msec遅延時間時の抵抗値を調べたところ約6KΩと求まりました。 一方理由の詳細は不明なものの残響時間調整抵抗を1KΩ以下にすることはお奨めしない!と技術資料にあります。 従って残響時間調整抵抗は1KΩ〜6KΩが可変範囲になります。 ということは可変抵抗は5KΩとなります。 現在は50KΩ(B)2連を並列にした25KΩですので1/5の値となり、残響時間調整範囲は40msec〜100msecということです。(尚あまり参考になりそうではありませんが、技術資料によればその範囲での歪率は0.14%〜0.26%だそうです。)

これにて再度試してみたところ残響時間を最大にした時には、何度か練習すると辛うじて伴奏に付いて行けるようになります。 そして通常はVRを完全に絞ったところと中央の間辺りが適当になるようです。 あまり大げさに音をいじっているわけではありませんが、これにて2.の問題は解決としました。

3.の残響音付加回路ON/OFFのスイッチ動作で発生する大きなショックノイズは、その原因を特定するためにトグルスイッチをON-OFF-ON
2回路の物(通常はON-ON)に変更してスイッチをON、OFF、中間位置の3ポジションにて、スイッチに繋がる4点に掛かる直流電圧をDMMで観察しました。 右の図は回路図からその部分だけを抜き出しています。

スイッチがOFFとなる中間位置にて、マイク信号を増幅後の信号が入ってくるトグルスイッチの緑色の端子には、その直前に4.7μFのコンデンサーがあるため直流電圧が掛かりませんので、4.7μFの前の電圧を測定しています。 その値は0.00039V(0.39mV)でオペアンプのオフセット電圧と言えますが、大変微量です。

次にトグルスイッチの赤い端子ですが、これは最終段のミキシング回路に信号を進めるポイントです。 この部分の電圧は0.00016V(0.16mV)でこれまた大変微量の値ですがこの先はオペアンプの入力端子となり、バーチャルショートの理論で考えれば理論的に0Vですから、妥当な結果です。

次に紫色の端子ですがこれは残響音付加回路の入力に繋がっています。 ICの中身が全く判らないので測定してびっくりしたのですがなんと2.56Vもありました。 最後が青い端子でここには残響音付加回路の出力に繋がっています。 ここのDC電圧は不定期に変化しており、
0.0021V(2.1mV)から0.024V(24mV)の値です。

以上から考えられるショックノイズの発生原因は紫色の端子とその他の端子との大きな電位差にあると考えられます。 計算すると一番大きな電位差は2560mVもありますから、『バッツーン』というような強烈なショックノイズが十分発生すると思われます。 そこでこの回路の4.7μF、15KΩ、100KΩの3本の素子を切り離さないことを前提として右図のように変更して試してみることにしました。
そしてスイッチは1回路で済ませ残響付加回路の入力部の素子群がオペアンプの負荷の一部となるような格好になります。

そしてこの場合のスイッチの3点のDC電圧は最大値は0.024V(24mV)で最小値が0.00015V(0.15mV)ですから最大の差異は23.85mVになります。 以前の2560mVの1/107の小ささになっています。 そしてショックノイズはこの差異に比例すると考えられますので問題ないレベルになる筈です。

実際に回路を変更してショックノイズの出方を確認しましたが、青丸点(電圧が変化する。)の最も高い0.024Vの時に『フッ』から『プチ』の間の小さなノイズで、電圧が0.002Vくらいの時には聴こえませんでした。
以前は常に『バッツーン』でしたから正に天国と地獄の差です。

ということでもっと有効でスマートな方法があるかもしれませんが、何しろ得体の知れない残響音付加のICがつきまといますから、カットアンドトライで得たこの辺で良しということにします。

さて一番難物に思えそうな1.ですが、取り敢えずの問題であるジュルジュルジュルーッというノイズもさることながら『パッツーン』というノイズも更に混じっています。 何れもひと呼吸遅れて出てくるわけですが、これの発生原因はかなり複雑な要素が重なり合っていると思われ、これまでの経験では外部に素子を追加したりスイッチ接点の電圧差を少なくするとかの方法では抑えきれないように思われます。

そこで、ON/OFFいずれの場合も電源電圧が上昇或いは下降する際の過渡現象でノイズが発生しますから、ON時には過渡現象が終了後に出力を接続する、 また電源OFF時には出力を即遮断しながら、過渡現象が遅れて起きるよう電源回路のコンデンサーを大容量にして回路動作を若干延長させる。 というテクニックでノイズが聴こえないようにします。(ノイズを抑えたり殺したりするのではなく。)

具体的な回路は右の図の通りです。 緑色点線内が追加部分ですが、リレーを使って出力のON/OFFをします。 先ず電源OFF状態(図のスイッチの位置)では220μFのコンデンサーは150Ωの抵抗でショートされているのでトランジスターはOFF、リレーもOFFです。 電源ONとなると150Ωの抵抗が切り離されるので、220μFのコンデンサーに470KΩの抵抗を通って電流が流れ充電されます。 そして充電電圧が0.65V辺りになるとトランジスターがONとなりリレーもONとなるため、出力回路のショート状態が開放され音が聞こえます。 この間の遅延時間は現状では3秒ですが、その間に過渡現象は終了してしまうのでノイズは全く聞こえません。

電源OFF時には150Ωの抵抗を介して220μFのコンデンサーはショートされ瞬時にコンデンサーの電圧は0Vとなります。 従ってトランジスターも瞬時にOFFにリレーもそれに続きOFFとなり、出力は遮断されます。

一方マイクアンプ、ミキサー回路は電源回路の出力コンデンサーが6800μFと大容量のお陰でしばしの間動作が継続してから過渡現象を起こします。 残響音付加回路の電源回路の出力コンデンサーも1000μFを追加し倍増していますので、こちらも僅かの間動作が継続後過渡現象を起こします。 そして過渡現象が起きる前には出力回路は遮断されていますのでノイズは聴こえないということになります。

これらの回路は右の図のように追加しました。 全く偶然としか言いようがありませんが、右上の空間にうまく収まっています。 ちょっと変則的にしたのはリレーによる出力の遮断回路で、リレーがOFFの時に出力がGNDに落とされるようになっています。 これはリレーのON時接続端子(図の上側端の2つの端子)を使いにくいためで、苦肉の策とも言えます。

以上の改造をした上で再度空中配線実働テストを致しましたが、3つの問題は完璧に改善されており気持ちよく使えることが確認できました。 但し現状では電源スイッチONでいきなり青のLEDが点灯し3秒後に音が出る(動作する。)状態です。 これではちと面白くないので上の回路図のオレンジ点線内の回路を追加しようと決め、スマートに組み込む方法を検討しました。

右がその結果で、左上の固定ネジに干渉しないギリギリのレイアウトですが何とか収まりました。 ほんの少し格好悪さがありますが、予期せぬ回路の追加でしたのでまずまずの出来栄えと自惚れておきます。

以下に最終的なレイアウトの写真と回路図を掲載しておきます。 電源基板のレイアウトもLED電流調整用抵抗の削除などの変更がありますが、説明の用もないと思いますので省きます。




最終的なマイクアンプ基板全体の様子です。 実働上見劣りのする部分や完成度がいまいちと思われやすい部分はありません。 ショックノイズが無い快適な動作をしています。

最終的な回路図の全容です。 上の図をクリックで拡大図面が見れます。 ショックノイズ対策回路以外に、6Vの電源回路にて出力のコンデンサー(220μF 10V)に1000μF 10Vをパラって増強してあります。 また残響時間調整VRは25kΩ(B)から5KΩ(B)に変更しました。



2014/08/22

ヘッドフォンアンプの追加

完成したマイクロフォンプリアンプで試運転のカラオケを数回に分けて累計10時間ほど試しました。 その中で新たな問題は出て参りませんでしたが、カラオケの練習に使うことを考えたらスピーカーで聴くのではなくヘッドフォーンで聴くのが意味ありそうなことを発見しました。 どういうことかというと、ヘッドフォーンで聴いているとカラオケの伴奏は頭の直前左右に広がりマイクを通した歌声が中央に定位します。 この時に奥行き感は余り無く絵画を見ているような感じです。 そして(これが最も重要なのですが)、スピーカーで聴くよりも微妙な音がはっきりと聴こえ、音の分解能も高いようです。 別な言い方をすると、まるでアラヒロイをしているようなもので、伴奏と歌声のずれや音程の狂いなどがスピーカーを通して聴くよりも数倍検出感度が高く判ります。

無論良いヘッドフォンの能力に依存している部分があるかもしれませんが、カラオケの練習用としては『まずい部分が自分で発見しやすいほうが良いので、練習モードとして歌いながらヘッドフォンで聴くこの方法を是非とも採用したいと考えました。 但しアンプにヘッドフォンアンプが内蔵されていない場合はこの方法を取れません。 例えばパワードスピーカー(アンプ内蔵のスピーカー)や、以前製作したコンパクトで耐入力が結構高いこちらを外部に運んで使おうなんて考えるとヘッドフォンを繋ぎようがありません。

そこでマイクロフォンプリアンプにヘッドフォンアンプを追加してやることを検討しました。 部品ボックスをあさったところNE5532Pというオーディオ用としてはかなりロングランのオペアンプが出てきました。

スペックはそこそこであり飛びぬけてよいわけではありませんが、素直な聴き易い音色を持っていてユニティ動作の安定度はかなり高いので使いやすいです。 但しバイポーラタイプですのでオフセット出力電圧は若干高めで、低インピーダンス負荷にもちょっぴり弱いところがあります。 そこでユニティー動作での安定度が高いのでA47型アンプとして低インピーダンス負荷での出力アップを図り、パッシブDCサーボを使ってオフセット電圧を抑える回路とすれば良いところが生かせる回路になります。(上の図は片側分)  またアンプ基板レイアウトは右の通りですが、これをマイクロフォンプリアンプの左側に並べて固定します。 基板の奥行きはマイクロフォンアンプ基板と同じです。

基板レイアウトを見ると上のほうに電源コネクターが2個並んでいますが、電源基板からのケーブルをコネクターのひとつに繋ぎもうひとつのコネクターとマイクアンプ基板の間を結線してやります。 また基板の右端に信号入力ケーブルが2本並んでいますが、基板の裏側でジャンパー配線によりマイク基板の出力部分に接続します。



2014/09/12

ヘッドフォンアンプ基板の組み立て

何となしに、『ヘッドフォーンアンプの製作を甘く見ると痛い目にあうぞ!』というようなことをふっと感じてケースの製作と共にスタートしようと考えていたヘッドフォーンアンプ部分の製作をいたしました。 結論としては大正解で、思いもしなかった発振のトラブルに見舞われ、対処療法で抑え込むのに丸2日を費やしました。

それらの様子を簡単に報告します。 最初に最終的な回路を左に基板レイアウトを右に掲げておきます。

回路ではパッシブDCサーボ回路のカットオフ周波数計算を間違えたためCの値を47μFから1μFに変更しています。 そしてこの時のカットオフは3.5Hzになります。 入力のコンデンサーも0.33μFから0.47μFに変更していますが、これは0.33μFが偶々手持に無かったためです。

大きな変更は出力に挿入したフィルターの定数です。 以前の定数で組み立てて通電したところオシロスコープの画面全体をスィングするような激しい発振で覆われ消費電流も80mA近く流れました。 これはやばいと電源電圧を±3.4Vまで下げても55mA程流れています。 そこでフィルターの定数を変えて発振状態がどうなるかをひとつひとつチェックして行きました。 0.1μFと3.3Ωを直列にして入れたフィルターはゾーベルフィルターと呼ばれ、CかRの値を増やせばカットオフ周波数が下がります。 Rの交換は簡単なので、3.3Ωから8.2Ω→15Ω→33Ωと変えて行きました。 8.2Ωに変えただけで発振は止まりましたが方形波にはリンギングが盛大に出ており不安定な状態です。 15Ω、33Ωに変更してもリンギングの減少は僅かで満足できる状態ではありません。

そこで目先を変えて、直列に入れている27Ωの値を47Ωに増加したところかなりリンギングが減少しました。 もう一息と思いゾーベルフィルターのCの値を増加しても効果は殆どありません。 そこでなんとなく『これら全てのフィルターを取払ったらどうなる??』なんて無謀?!なことを考えやってみました。

ところがこれがかなり正解でリンギングが更に減ったではないですか。 そしてここからやり直しとばかりに『47Ωの出力に直列の抵抗を繋いだところリンギングは嘘のように無くなってしまいました。』  NE5532Pをベースとして組んだA47アンプではゾーベルフィルターが高域の位相回転を悪いほうに変化させ、2番目のオペアンプの後ろから前段に帰還を掛けた時に発振し易い状況を作った?と想像されます。 尚ここで繋いだ47Ωは容量性負荷による発振防止の効果がありますが、負帰還の外側で動作しています。

NE5532P 1個で作ればこんな現象は出ないかもしれませんが、低インピーダンス負荷時の駆動力アップのため2個のNE5532Pを連結しており、負帰還については最終段から前段に掛けるのが常道(その方が性能が良くなる)です。 そしてその中にパッシブDCサーボも含んでいます。 これを位相回転が複雑にはならない1個目のNE5532Pの出力から帰還するのは、負帰還の効果が薄まるだけでなく、オフセット低減効果が2個目のNE5532Pに対して無くなります。 そこでゾーベルフィルターを使用しない別な解決策として有力な方法になります。

ところでこれだけで問題が解決とはなりません。 出力に47Ωを直列に繋いで発振が止まったのは良いのですが、低インピーダンス時の最高出力が低下してしまいます。 というのは47Ωを直列に追加した後には、ヘッドフォーンのインピーダンスが330Ωの時ヘッドフォーンへの出力電圧は330/(330 + 47) x 100 = 87.5%に、16.5Ωの時には16.5/(16.5 + 47) x 100 = 26.0%と大幅に低下します。 そして出力電力の低下率は330Ωで76.6%、16.5Ωの時には6.75%という激減であり、オペアンプを追加した意味も無くなってしまいます。

そこで暫し思案の後にこの47Ωの抵抗にコイルを並列に繋いでみました。 手持の小型のコイルを物色したところ4.7μH 直流抵抗0.055Ω 最大重畳電流2.1Aのスペックの物が見つかりました。 このリアクタンスを計算したところ20kHzで0.59Ωと計算されます。 47Ωに並列に繋がりますから、合計で20kHzで0.58Ωのリアクタンスになります。 計算上20kHz、16.5Ω時の出力電力低下率は93.3%と飛躍的に改善されます。 また発振が起きていると思われる帯域ではリアクタンスがぐんと増加するので47Ωとの合成リアクタンスが高くなり発振防止の抑止力が高まると期待しています。

以下の結果はそれらの対策をした後の結果です。 残念ながら対策前の発振状態での写真はありません。 早く発振を止めないと過大な消費電流が長時間続くとオペアンプが壊れてしまう可能性があるので、発振止めの対策・アクションが優先し写真を撮っている悠長な暇は無かったためです。


1.周波数特性
  10Hzから25kHzまでは完全にフラットでその上は70kHzまでに0.2dB程度の減衰です。 左右は同じカーブを描いており、更に
  330Ω、33Ω、16.5Ωと負荷抵抗を変えても54kHzの方形波特性以外ほぼ同じ特性でした。 以下にそれらの方形波応答の
  写真を載せますので(片チャンネルのみ)、ご覧ください。(入力電圧はピーク 0.1Vです。)

USB接続ヘッドフォーンアンプの特性で見飽きたよ!と言われそうな写真ですが、10Hzから25kHzまで完全にフラットで、その後70kHz辺りまでに0.2dB程減衰します。 また左・右の値は殆ど同じなので片チャンネルのみとしました。 

330Ωの負荷インピーダンスでは全く文句の付けようのない周波数特性で、54kHzでも原波形との違いはほとんどありません。

負荷抵抗を33Ωに下げた時ですが、私の所有しているヘッドフォーン4本のインピーダンスの下限になります。
これら100Hzと1kHzでは全く破綻の無い再生波形です。

10kHzも問題ありませんが54kHzになると軽いリンギングを生じています。 この程度ですと鋭いピークは存在しませんが軽いうねりのようなものが存在しています。(多分200〜300kHzの高い領域で)

16.5Ωのインピーダンスはイヤーフォーンでは特に低価格な物ではポピュラーですが、ヘッドフォーンは見当たらない値だと思います。 アンプにとっては厳しい値ですが、100Hz、1kHz、何れも原波形の相似形を保っています。

10kHzの波形は写真の原画を見ると左肩赤矢印の所が僅かな変化を見せています。(右上の拡大写真をご覧ください。) そして54kHzのリンギングも33Ωの時より甚だしくなってきています。 若干動作の安定度が心配ですので、コンデンサー負荷テストで安定度を調べたいところです。


2.コンデンサー負荷テスト

  負荷抵抗が違っても10Hz〜70kHz近辺まで-0.2dBという周波数特性を電圧計を使った測定で得ていたのですが、上記方形波
  応答の観測によれば負荷抵抗による違いがかなり高い周波数域で出ているようです。

  無茶苦茶に発振していた状態からは抜け出てはいますが更なる念押しのため、コンデンサー負荷による安定度のテストをす
  ることにしました。 方法としては330Ωと16.5Ωの負荷抵抗に0.001μF、0.01μF、0.1μFのコンデンサーを追加負荷とした時
  の挙動を確認します。 発振を起こさなければ安定度には心配ないという判断をしますが、容量が大きくなるほど厳しく(発振
  しやすく)
なります。

最初は330Ωです。 0.001μFでは原波形と再生波形に違いが出なかったので撮影しておりません。 0.01μFではオーバーシュートの後にリンギングが多少残ります。 そして0.1μFになるとオーバーシュートが大きくなりますが、その後のリンギングもずーっと後に引くというような物ではなく、それらは発振に繋がりやすい状態にはなっていません。

負荷抵抗を16.5Ωに変更しました。 0.001μFでの波形は前と同じく原波形と再生波形で違いはありませんでした。 そして0.01μFでは変化が出ましたが、330Ωの時より変化は少ないです。 0.1μFにした時も330Ωの時より波形の悪化度が低く、無論発振の心配はありません。 コンデンサーを追加する前は16.5Ωの方が問題ありだったのですが、追加後は16.5Ωの方が正常に近いという結果となっています。


3.増幅度

  入力信号を1kHz 0.1Vとした時の増幅度は、

  負荷抵抗 増幅度 デシベル
330Ω 4.79倍 13.6dB
100Ω 4.79倍 13.6dB
33Ω 4.78倍 13.6dB
16.5Ω 4.78倍 13.6dB









  と、コイルの追加により負荷抵抗が変わっても殆ど同じ値が出ています。 因みに設計値は4.83倍で約-1%と十分な許容誤差
  に納まっています。


4.オフセット電圧  (パッシブDCサーボのOFFはコンデンサーのショートによる。)

チャンネル DCサーボON DCサーボOFF
+1mV -233mV
0mV -243mV






  改めて説明するまでも無く、パッシブDCサーボの効果は絶大です。 採用に拘った甲斐があるというものです。


5.雑音レベル

  IHF Aカーブで補正後に69dBのS/N比を得ています。 とびきり上等ということはありませんが、満足できる値です。


6.最大出力

  330Ω、33Ω、16.5Ωの3種類の負荷と5点の周波数で測定しました。 何れも必要と考えている10mW以上の出力をクリヤー
  しています。 またこれらの出力時に妙な挙動や発振(特に飛びつき発振)などがおきていないことを確認しています。
  よって市場にある広範なインピーダンスの全てのヘッドフォーン・イヤーフォーンに対して十分な駆動力を有しています。 

周波数 330Ω 33Ω 16.5Ω
10Hz 196mW 196mW 74.0mW 74.0mW 35.0mW 35.0mW
100Hz 196mW 196mW 74.0mW 74.0mW 35.0mW 35.0mW
1kHz 196mW 196mW 74.0mW 74.0mW 35.0mW 35.0mW
10kHz 196mW 196mW 74.0mW 74.0mW 34.1mW 34.1mW
20kHz 192mW 192mW 71.9mW 74.0mW 33.2mW 34.1mW



6.電源電圧と消費電流

  電源電圧は±14.0Vを2電源レギュレーターで供給しています。
  そして330Ω負荷抵抗時に無信号で16mA、最大出力時に36mAの消費電流でした。


当初の設計から随分変化と言うか修正を加えています。 ちっちゃな緑色のキノコのような小型コイルの追加が問題解決の最後の決め手となりました。 この基板とマイクアンプメイン基板、そして電源基板を一緒にケースに組み込んで完成します。



2014/09/19

ケースの製作 その1

オーディオ機器、そして計測器などこれまで作ってきた電子機器のケースは木製というのが多かったのですが、今回は市販の金属ケースを使うことにしました。 その理由としては極力コンパクトにしたかった。(板厚も大きくなる要因のひとつ!) そして落としても丈夫であること。(ポータビリティーが重要なので?)の2つにあります。

随分時間を掛けて探しましたが、リード社のEX-1606という型番で160(W) x 180(D) x 60(H)の大きさのアルミケースを採用しました。 これに決定したのは大きさが手ごろであったことと、フロントパネルの固定方法が周りを浅い溝に落とし込むという内部に余計なでっぱりが出ず、フロントパネルは平板なので作り直しが簡単という点にあります。

採用したアルミケース。 角が丸みを帯びていて柔らかな雰囲気が良いです。 構造的にはコの字型に成型した物をト天板、底板としていますが、天板には放熱用スリットが切り込まれています。 これら2つを連結板と共に連結ネジ8本で締結しますが、その時に前板と背面板は溝に落としこむという簡潔明瞭なものです。

矢印の先が前板や背面板を落とし込む溝です。 したがって前板や背面板は角が丸いだけの平板になっており、後日前板や背面板を製作して全体を作り直し!なんてことが容易に可能です。

前板を外したうえで3つの基板を予定の位置に置いてみました。 大きすぎず、小さすぎずのサイズのように思われます。

ケースに収める方法には色々ありますが、無粋なネジの頭、固定ナットは見えない構造を考えました。 そのポイントとしては、1.ツマミはパネル貫通型としツマミ固定ネジが見えないこと、2.マイクロフォーンジャックはプラグを挿し込むあなとその周りの金属パイプだけが見える構造とし、大きな個定ナットは隠すこと、3.2個のトグルスイッチはそれらの固定ナットやネジを見せないこと、にあります。

それらを実現する機構・構造のアイデアとして右のようなものを考えました。 また最終的なフロントパネルのイメージは左の通りです。

フロントパネルを見ると上下2列のレイアウトで、上の段には4つのツマミと右端にパイロットランプ計5個が横1直線に並びます。 そして下の段では上の4つのツマミの真下に左からミニフォーンジャック、マイクジャック2つ、トグルスイッチ。 最後のパイロットランプの下にもトグルスイッチと並ぶ2階建て構成です。

これを実現するのにメイン基板は39mmのスペーサーで浮かせてやり、ミニフォーンジャック、マイクジャック、トグルスイッチはサブパネルに取り付けてフロントパネルから4mm浮かせて固定しますから、それらのかなりの部分はメイン基板の下に潜り込みます。 こうすることでマイクジャックやトグルスイッチの見苦しい固定ナットは見えなくすることが可能になります。 尚サブパネルをフロントパネルから4mm浮かして固定する方法は4mm厚の板をスペーサーとして挟み、フロントパネルに対してはエポキシ接着剤で固定、サブパネルはスペーサーにネジ止めとし、分解が容易にできるようにしておきます。

尚マイクアンプメイン基板はツマミをケースの上側を外した状態で内側からネジ止めしたり緩めたり出来る位置に取り付けます。 さすればツマミの固定ネジも通常は見えなくなります。

とまあ以上のような方法により完成した状態では左上の図のようにフロント面に固定ネジのような物が一切露出しなくなります。 そうするための工作はかなりの手間と加工精度を要しますが、期待した性能が得られれば外観なんか気にしない!という作り方は大嫌いな私にとっては絶対に省くことの出来ない工程です。 それらの様子は以下をご覧ください。

フロントパネルの加工スタート。 メイン基板の3個のVRシャフト先端をフロントパネルに当ててその上に定規をこのように置き、定規とパネルを指で挟んで引き抜きケガキ針で線を引きます。 この3mm下が上の段の中心線です。

黄色矢印が左の作業で最初に引いた線でその下の平行線が中心線になります。 これを基準に全ての線を引いてしまいます。

穴の中心にセンターポンチで軽いマーキングをしてから1φのドリルで穴を開けました。 この後右上のLEDの穴は2φで、ツマミが通る穴とマイクジャックの穴は3.0φ、4.5φ、7.0φと広げました。 またトグルスイッチの穴は3φ2個ずつをあけます。

それらの穴があけ終わった状態です。 ここから丸棒ヤスリで穴を広げて行きます。 ツマミの通る穴は13φ、マイクジャックは12φ、トグルスイッチは4φの丸穴がくっついた状態にしてから、小さな角ヤスリで小判型に成型します。

穴があけ終わってから表面の保護コーティングを#240ヤスリで削り落としました。 罫書き線がうっすらと見えますが後ほどこの上に紙を貼りますので問題ありません。

そのフロントパネルをケースに収めるとこんな具合です。 この前板や背面板はいずれも1.5mm厚の平板ですから加工は大変容易です。

フロントパネルのツマミ穴だけは隙間が均等で擦れることの無いよう若干のトリミングをしてから、マイク基板の収まり具合を確かめてみました。 ご覧のようにツマミの固定ネジは全く見えません。


 とここまできて、電源基板の収まりも確認したのですが、ある問題を思い出しました。 左のレイアウトがこれまで考えて
 きたものですが、実はトランスの漏洩磁束は赤矢印方向に最大になると言われており、これによる誘導ハムの心配が
 あります。 バラック配線でのテスト運転時には誘導ハムはOKでしたが電源基板がもっと離れていました。

 右は電源基板を90度回転させた場合ですが、この場合は矢印の先がアンプの最も高感度な部分から離れより良くなる
 筈なので、左で駄目であった時の解決策として考えても良いのですが、それらの判断には後程確認の実験を行う必要
 があります。




誘導ハムの確認実験を行う前にフロントパネルの加工は済ませるべく、サブパネルの加工に入りました。 サブパネルは厚さ1.0mmのアルミで大きさは20 x 122.5mmで、マイクジャック固定穴2個、トグルスイッチ固定穴2個と2φのサブパネル固定ネジ穴10個をあけます。

マイクジャック2個とトグルスイッチ2個を取り付けた状態です。 ここに見える取り付け用の六角ナットはフロントパネルに隠れて見えなくなります。

サブパネルはこのようにフロントパネルに落とし込まれます。 そしてそれを前側から見るとこんな塩梅です。 マイクジャックの周りの樹脂部分が穴に嵌まり込むので、マイクジャックは絶縁されて固定ということになります。

サブパネルを固定する工程です。 先ずサブパネルと同じ大きさの4mm厚MDFを10本の2φ皿ネジでこのように固定します。 皿ネジの頭は飛び出ないよう削ってやります。 それをひっくり返すと下のような写真となります。

アルミも切断できる糸鋸で線に沿って切り込みを入れてゆきます。 アルミ板を傷つけないよう更に切り進み、ネジのある部分とそうでない部分を切り離します。

切り離しが完了しました。 この後赤矢印先にエポキシ接着剤を塗ってフロントパネル裏に貼り付けます。

接着時の位置関係はこうなりますが、これでサブパネルはフロントパネルから正確に4mm離れることになります。

90分硬化開始型エポキシ(最も接着強度が高くて確実)で接着しクランプで圧着保持しています。 このまま一晩放置し完全に硬化させます。

完全硬化後に10本のネジを緩めてサブパネルを外しました。 スペーサーがフロントパネル裏に残ります。 これで完成後にばらすことが可能になります。

フロントパネルに貼り付ける紙(薄手のマット紙)に文字を印刷し切り抜きフロントパネルに両面粘着テープで貼り付けました。

刃先の細いカッターナイフで穴の部分を慎重に切り抜き完成ですがその後アクリルスプレー透明クリヤー、つや消しクリヤーで塗装し、表面を保護しました。

再度組み上げました。 これがフロントのルックスとしては完成の状態になります。 自画自賛ながらうまくまとまったと思います。 表面が紙に限定されるものの、文字の書体の自由度がインスタントレタリングの使用より格段に上がりますので、お気に入りの方法になっています。



2014/09/26

ケースの製作 その2

マイクアンプ基板とヘッドフォンアンプ基板、そしてサブパネル間の結線をすべて済ませて、懸案となっていた電源基板からの誘導ハムの実態確認を致しました。 電源基板の位置関係は既にお見せしている2方向に電源基板を外部遠くに離した状態の3種類として実験を進めました。

誘導ハムの検出方法はヘッドフォーンを繋ぎヘッドフォーン、及びマイクレベルを最大にしてハム音を確認します。 従って測定器での検出・測定をしておりませんが、ハム音の妨害状況確認にはへッドフォーンによる方法が実用上有効ではないか?と考えたことによります。(耳による微音の検出能力はかなり高いのと、ノイズの気になり具合は測定した数値より耳の方が判別しやすいので!)

これが設計当初にイメージしていた方向です。 マイクボリューム最大、ヘッドフォーンボリューム最大にて僅かなハム音を検出しましたが、通常の設定レベルでは背景ノイズにマスクされてハム音はかなり隠れてしまいます。 最後の実験と比較しこれを良しとすることにします。

理論的にはこちらの方が誘導ハムは少なくなるはずですが、実際に聴き比べをしたところ左の設定との違いは殆どありませんでした。 前後方向が窮屈になるのとACケーブルの取り出し位置があまりロジカルではないので、採用する理由は殆どありません。


 三番目の実験条件は電源部を出来るだけ遠くに離してしまいます。 マイクアンプの最も高感度な部分からは25cm程
 離れた位置になります。 この状態でも左上よりは少ないですが極僅かにハム音が検出されます。 電源基板を回転
 させても変わらないことから、これは電源ブロックからの誘導ハムとは考えられません。

 以上を勘案して電源ブロックは最初に考えた方向のままで行くことにしました。 但し左に寄せきるのではなく、若干中
 央方向に移動しAC100Vのケーブルの導入の窮屈さを無くします。 また入出力信号端子となるRCAジャックは電源ト
 ランスから最も離れるように右端上部に寄せて取り付けることにします。




基板どおしの接続と最後の組み立て

いよいよ最終章です。 残る加工部分は背面板の穴あけ、電源基板の取り付け穴あけでそれらが済んだら基板通しのい結線やらサブパネルのマイクジャック、トグルスイッチと基板の接続、LEDの固定などを済ませ完成となります。 LEDの固定は私の常道となっている3mm厚アガチスの板の小片に3φの穴をあけそこにLEDを挿し込みます。 そうするとLEDの先端が1mm近く飛び出ますが、その分だけパネルの穴(2φ)をすこし座ぐってLED先端を落とし込みます。 こうするとこの後瞬間接着剤でパネルに貼り付けるのですが、貼り付け位置が判りやすくなります。 こうして完成したマイクアンプは以下をご覧ください。

真上から見たカラオケ用マイクアンプ。 後から追加したヘッドフォーン用アンプ(右上)も内部では兎も角、外観的には後からの追加だと判らないよううまく収まっています。 電源ブロックは左下のRCAピンジャックのためのスペースを確保して横方向の位置決めをしています。 左上に、3mm厚板に固定しパネルに貼り付けたLEDも見えます。

背面の右上に寄せられたRCAピンジャックの位置が良くわかります。取り付け面積を小さくするためピンの間隔を15mmと小さくしています。 全ては漏洩磁束が最も大きいと見られる左奥のトランスから距離を置くためです。 その左奥のトランス手前の電解コンデンサーの高さはケースの高さにかなり近づいています。

フロントパネルのすぐ下にサブパネルとそれを固定する4mm厚MDFが見えます。 実装密度はかなり高いですが、妙な干渉もなくうまく収まりました。

マイクジャックの金属部分の周りの樹脂部分は前後2mmだけ前方が細くなっています。 従って1.5mm厚のフロントパネルですと矢印先は0.5mm出っ張るので、プラグを挿入した時にプラグはパネルに当たらず好都合です。

完成後の背面パネルはこんな具合で、入出力のピンジャックと電源ケーブルの引き出しがあるだけのシンプルさです。

背面パネルはアルミ板そのものなので、大文字が無くなってしまったインスタントレタリングの小文字だけで文字入れしています。 inout、はInputOutput、だと判るのですが、lr、はLeftRightだということが直感的に判り難いです。

ブランドの新たな電子機器がまた完成しました。 これとノートブックPC、パワーアンプ、スピーカー、またはパワーアンプ内蔵スピーカーがあれば、どこでもカラオケを楽しめます。 またヘッドフォーンを使えば周りに迷惑を掛けずに中身の濃いカラオケの練習がで可能です。 その後の調査で月額\1,080.-のインターネットカラオケで、童謡・唱歌・抒情歌等の合計が200曲以上もあることが判りました。 これなら今年のクリスマスには3人の孫を含む合計10人の家族全員でカラオケを楽しめそうです。

----- 完 -----

 
  
Copyright (C) 2001-2019, Vic Ohashi All rights reserved.