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台所用手元照明1
   
2009/03/13

構想

AC100Vを直接整流(直流化すること)して多数のLEDを直列にして高い駆動効率を求める省エネ器具は2台が完成し1台はもう少しで完成となり既に3作ご紹介してきましたが、4作目として台所の手元照明をLED化することにしました。 その1番目はガスコンロ台の手元照明です。

我が家のガス台は所謂オーブンレンジと称する物ですが、その上には排気ファンが付いており、そのフード内の上部には手元照明が付いています。 場所が場所だけに油煙でかなり汚れるためガラスの保護カバーで覆われていますが、この照明がかなり暗いのです。 実際の明るさを手元照明のある流し台中央と共に測定してみたところ以下のようになっていました。

場所 天井灯 保護カバー 明るさ   場所 天井灯 明るさ
オーブンレンジ中央 消灯 38ルクス   流し台中央 消灯 700ルクス
消灯 27ルクス   点灯 850ルクス
点灯 80ルクス        
点灯 52ルクス        

上記中青色で示した部分が実際に使用中の明るさとなります。 そして流し台中央とオーブンレンジ中央では16倍以上の差異があります。  そこで排気ファン内の照明器具がどうなっているかを確認したところ、25Wの小さな白熱電球が使われておりました。
現状の様子は以下の写真をご覧ください。

こうしてみると天井灯でかなり明るく見えるのですが、実際にはレンジの前に人が立ち背中でブロックされるので明るさは上の表のように低下します。

天井灯を消して手元照明だけとした写真がこちらです。 もう説明不要でしょうが、手元照明が殆ど役に立たないのです。

その問題の手元照明を点灯させたままクローズアップしました。 油煙が入り込むのを防止するため型板ガラスを埋め込んだガラスが嵌まり込んでいます。

そのカバーを外したところ。 小さな25W電球が付いています。 そして反射板には40Wまで!との記載がありました。

40Wまでの白熱電球が使用可能と記載されてありましたが、消費電力に明るさが比例すると仮定した場合、52 x 40÷25 = 83ルクスが改造無しに可能な最大の明るさになります。

流し台下では850ルクスもありますから電球を40Wに変えたところで約10倍の明るさの違いが残ります。 そこでPC周りの照明に使ったLEDを使って改造したらどのようなものが出来るか(改善されるのか)机上での検討をしました。

現在進行中のPC周りの照明で確認できていることは、

   1.AC100Vを整流して3φの砲弾型LEDNSPW310DS-b1Vを42本まで直接駆動可能。
   2.40本のLEDNSPW310DS-b1Vをメーカー推奨の20mAで点灯した時の明るさは1mで350ルクス。
   3.半値角は50度。


2、の40本で350ルクス/mは朗報です。 実際には光源から70cmの距離ですから明るさは約2倍の700ルクスに大幅改善します。 照射範囲は半値角の範囲が有効な照射範囲は幅760mm、奥行き650mm位の楕円に近い範囲になりますが、600 x 600mmの大きさのオーブンレンジは殆どがこの範囲に入ります。 偶然とはいえこれは大変ありがたいです。

LED使用本数は40または42本と決めてレイアウトとしては5mm間隔で1列に20または21本で2列とします。 こうするとLED固定基板の全長は110mm位となるはずですが、照明器具部分の内寸幅は150mm程ありますので比較的容易に取り付けられるでしょう。 問題はどうやって電球ソケットからAC100Vを引っぱり出すか?、駆動回路設置スペースに問題ないか?、レンジからの熱風で温度がかなり上がる場所だけに温度対策を十分に考えないとならない?の3つあります。  従って更につっこんだ調査・検討が必要になります。

というような問題があるものの旨く実現できれば消費電力2.5W程度になり、これは現状が25Wですから消費電力は1/10に低下しながら明るさは13倍にアップする!!という正にLEDさまさま!という物が出来あがります。



2009/03/20

詳細検討

 うまく実装できそうでなければあきらめるしかありませんので、現在のランプボックス内の構
 造を調べてみました。 鉄板のプレス加工で作られており、極めて複雑な形状になっていま
 す。 基板実装に使える部分は、幅145mm、奥行きは最下部で80mmありますが、手前側
 が急傾斜で上に向かって狭くなり下から40mm上がった所では50mmしかありません。

 よって使える空間はこの145 x 50 x 40mmになると思いますが、40本前後のLEDを組み込
 むのが難しいことは先ずないでしょう。

電球は左手の下がり壁のようになっている部分に横向きでねじ込まれています。 この下がり壁の天井部分の高さが40mmということで、基板を固定するのにこの天井を候補と考え、基板の端は木のブロックを接着しそこに固定します。

 以上を元に3φLED(NSPW310DS-b1V)を40-42
 本使うこととして回路図及びLED実装と駆動回路を
 含む基板を検討してみました。
 それらが左右の図ですが、今回は基板に駆動回路
 とLED全てが固定されるようになっています。 但し
 基板レイアウトは電気部品を取り付けた面から見て
 おり、LEDは裏面に半田付けしないとなりません。

半田付けがややこしくなりそうですが、NSPW310DS-b1Vにはストッパーが付いていてLEDは浮き上がって取り付けられるため半田付けが難しくなることはまずないでしょう。 完成した基板のサイズは128 x 43 x 13(LED含み25)mmですので実装可能空間(145 x 50 x 40mm)以内で、実装上の難しさはなさそうです。 尚LED実装構想図ではLEDは真下に向けるように描いてありますが、実際には24度前方に傾けて取り付けると、LEDの半値角の範囲にレンジ台の前後がすっぽりとカバーできます。 この傾きはLEDの脚を曲げてやることにより調整します。

駆動回路では定電流回路入出力電圧が6-9Vの範囲に入るよう調整が必要ですが、これまでは交流入力抵抗の値を変えたり、LEDに直列に抵抗を追加することで対応しました。 しかし今回は駆動するLEDの本数で調整することとします。 その本数は40-42本と考えられますが最初に40本を実装し、定電流回路入出力電圧を調べて追加本数を決めて最終本数とします。 その電圧が6-9Vであれば追加無し、10-12Vであれば1本追加、13-15Vであれば2本追加!といった次第です。  これらはLEDのVfを3Vとした略算です。 基板レイアウトでは最大の42本を取り付けた場合で描いてあり、減らすLEDは両側に1個ずつ取り付けられた物です。

問題と考えていた点のうち駆動回路設置スペースはこれでOKで、次の温度の問題はレンジを使用するときには排気扇を作動しますのでランプ部分が熱せられて高温になることはありません。

唯一残る問題は、電球のソケットからどうやってAC100Vを取り出すかです。 ここで使われている口金はE17規格であり最もポピュラーなE26口金よりも直径が小さいです。 E26であればACプラグを挿し込めるアダプターが販売されていますから実に簡単に対応できますが、E17用のそのようなアダプターはありません。 またE26にE17を取り付けるアダプターはありますが、その逆のアダプターもありません。 安全性を考えて実現するとなると、E17口金の延長アダプターを改造する、E17口金を使った電球を壊して口金だけを改造してAC100Vを引き出す!の2つくらいしかなさそうです。 後者の方法では口金内部に接着されたガラス部分がうまく外せるかの疑問があり、前者では完全なモールド構造であると改造はかなり困難になります。

ということで、まだ全てクリヤーになっておりませんのでもう少々思考をめぐらせてうまいソリューションを探し出したいと考えております。



2008/05/08

LED基板の組立

E17規格のネジ式ソケットからどうやってAC100Vを引っぱり出すかはまだ結論が出ていませんが、LED基板(駆動回路と一体型)の設計は終わっておりこちらは変更の可能性はないので、組立に入りました。

駆動回路はこれまでに色々実験・製作の経験で安定動作がかなり確認できている回路ですから、駆動するLED本数決定が唯一の調整ポイントになります。 但し駆動回路を構成する部品は通常通りの配線でよいのですが、LEDは裏(半田面)に固定するのでかなり慎重に進めないとなりません。 というのはLEDの表面側で半田付けをしないとならないからです。 LED本体のプラスチックは無論熱により軟化しますから手早くやらないとなりませんし、LEDの脚に付いているストッパー部分は幅広のためプラスとマイナスのリード線の間隔は1.4mmしかありません。 このために盛り上がった半田同士で接続されてしまいます。

他にもLEDの極性を間違えて挿し込み半田付けしてしまうと、後で修復するのは大変なことになりますので、1本 1本十分に確認しながら進めないとならず多数のLED半田付けは緊張を強いられ少々辛い作業になります。
LEDの本数については先ず40本を固定して仮配線後点灯試験をし、定電流回路の入出力電圧差を測りました。 その結果は約12.8Vとなり目標の6-9Vに対し3.8-6.8V高いことが判りました。 LEDのVfは約3V弱ですから2本追加すれば目標の値に入ることになります。

 そこで駆動本数は42本と決定し組上げと調整を完了しています。 そして各部の電圧を測
 定したところ左の図のようになっています。 定電流回路の入出力電圧差は最終的に7.2V
 に収まっています。  またAC100Vの入力電流は26mAですので、消費電力は2.6Wとなり
 ます。 駆動効率はLED両端電圧が125.3Vで20mAが流れますからLEDでの消費電力は
 2.5Wとなり、2.5÷2.6 = 96.2%と極めて高い駆動効率になっています。

 別な見方をすると、入力電流制限の抵抗(10Ω)、整流のダイオード、定電流回路での損失合計が0.1Wしかないことになります。 このためLED以外の部分からの発熱は全く感じませんし(LED自身の発熱も僅かだが)、放熱の配慮は先ず無用ということを意味しています。

尚電源電圧の変動に関しては計算上では120Vまで上昇しても一番弱いと思われる定電流回路のLM317は耐えられます。 低い方は98.5V以下になるとLEDの電流値を20mAに維持できなくなりますが、電流値低下に従い明るさが減るだけで破壊の心配は全くありません。 それと誘雷などによる高電圧が掛かった場合にはバリスターが保護してくれます。

後はこの基板を所定の位置に固定してE17ソケットとの間を配線すればよいのですが、スマートな方法が見つからなければ、電球を壊して口金部分を外して配線を引き出す!という格好良くない方法になりそうですが、もう少し検討を進めその間は連続点灯試験をやることにします。

以前紹介したレイアウトをそのまま使って組立てたLED駆動回路基板です。 テストにはACコードを直付けしています。

これは左右をひっくり返した裏面(半田面)で、42本のLEDはこちら側に固定しています。

全てのLEDは半田付け後前側に約25度脚を曲げて傾斜させています。 この傾斜で本当に良いかどうかは後ほど照射テストで確認します。

LEDの半田付けの様子はこんな按配で、足の間隔が短くなる部分ですから脚と脚を接続(ショート)しかねませんので、1ヶ所半田付けするたびに高倍率ルーペで確認しています。



2008/05/15

照射テストの結果

照射テストはいつもの壁面にて行いましたが、照射距離は実際にLEDランプからレンジの表面まで垂直に降ろした距離である70cmとしています。 但しLEDの光軸は25度(目分量)前方に傾けてありますから、最大光度点も前方にシフトします。 後ほどお見せする写真では向かって左側が設置場所の後方壁面になり右が手前側になります。 また当然ながらLEDユニットは長手方向が垂直になるよう三脚に固定しています。

LED基板は長手方向が垂直になるよう写真三脚に固定しました。

そして点灯するとこんな具合で、軸上から撮影しているわけではありませんがギラッときます。

判りやすいよう部屋の電灯も点灯して撮影したものです。 壁面にぺたぺた貼ってある物はガムテープをちぎった物で、露出計で照度を測定した位置を記すために貼り、後でコンベックスで距離を測っています。

部屋の電灯を消した状態で、赤矢印の先がLED基板から壁面に垂直に伸ばした点です。 LEDを前方に曲げたために明るい部分が右にシフトしています。 赤矢印の右に見えるマーキングが最大の明るさのポイントで、約550ルクスあります。

測定結果を元に設計時に考えたことと現実の比較を判りやすくするため次のように図を描いてみました。


右上と左の図は設計時点で、右下は測定結果を表しています。 測定結果の図中赤線の四角はガスレンジの外側を丸は3つのガスレンジの位置を示しています。

設計時点ではLEDの半値角をサービス範囲として考え奥行き方向は830mm、横幅は740mmとして考えていたわけですが、実際には右下のように、最も明るいところは550ルクスでその位置は設計時点よりも前方にあります。 仮に25度に正しく曲げていたとしたら最も明るい地点はもう少し右側に移動していたはずですが、明るさが半分になる範囲(275ルクスの円)を見るとこのままの方が良さそうです。

尚半値角で求めた範囲よりも実際の明るさが半分になる範囲は狭くなっていますが、これは矛盾していません。 というのは半値角というのはLEDの軸上から外れながらも等距離で照度が半分になった角度になっていますが、ここで照度が半分になった位置はLEDからの距離が遠くなりますので実際の半値角はこれよりも外側になることによります。

最終的には保護カバーが間に入りその為に照度は35%ほど低下しますが、最も明るいところは360ルクス程度、半分の180ルクスの範囲はレンジ台の四隅の一部を除きカバーしますし、鍋が乗っている辺りは200ルクス程度が確保できますので実用上の問題はないと思います。(かなり高いところから照射されるので、明るすぎると目に入る直接光が強くなり作業しにくいので、この辺りが適当と考えています。 現在は52ルクスしかないのでこれでも飛躍的に明るくなった感じがするでしょう。)

さてこれで残るはE17ソケットへの接続方法のみですが、まだあれこれ考えておりますので追って結論が出て作業が進んだときにご紹介します。



2008/05/29

残る加工作業と完成まで

秋葉原のジャンク屋さんまでも含めてE17の口金を捜し求めたのですがどうしても見つからないので最後の手で作業を進めました。 何のことは無いE17の口金を使った電球を壊してフィラメントが付いていた線に別な引き出し線を半田付けする方法です。  但しそれだけでは中心に残るステムと呼ばれるガラス部分が容易に壊れたり結線したワイヤーがショートしたりするので、それら全体をエポキシで固めることにしました。

とは言え純正のエポキシ樹脂で固めようとすると作業性が悪いのでここでは木工用のウッドエポキシを使いました。 ここぞという時に活躍している充填材ですが、丁度粘土細工をする感覚で作業が進められるのと硬化速度が大変遅いので(これも粘土を同じ感覚かな?)、落ち着いて作業が出来る点にあります。  但し完全硬化すると(1週間掛かると言われます。)ハンマーで叩いても壊れにくい位硬く丈夫になります。

今回の使い方では関係ありませんが、表面を滑らかに平らに仕上たいのであれば、一応の成形が終わったら水で表面を濡らして撫でてやる、3-5日程度経過後にヤスリで研摩したり、完全硬化前であればネジや釘を打ち込むとが可能ですしドリルで穴も開けられます。  それとエポキシということで共通した特徴ですが、電気的に非常に安定した不導体で、熱・衝撃・水に強いという点は通常のパテなどでは得られません。 その上に塗装は良く載りやすいので、通常のパテよりも応用範囲は大変高いです。

さて口金から引き出した線の先にコネクターを半田付けし、そのコネクターの相方を接続したワイヤーをLED照明本体に固定し完成です。

ウッドエポキシの硬化時間があるので取り付け作業は照明器具本体の固定を先に済まし、4日後に点灯式となりました。 まだ完全にエポキシは硬化していませんが、爪を立てても凹むようなことはありませんし電気的にも問題ありません。

基板を固定するのに当初考えていた方法はレンジフードの取り付け部分がやわ過ぎて駄目であることが判りました。 そこで板を切断してそれに基板をエポキシ接着剤で貼り付け其の板を正面下部2箇所に3mmタッピングネジで固定する方法に変更しています。

これで全作業が完了ですが、最後に天上灯を点灯した状態でLED手元ランプを点灯し明るさを測定したところ丁度700ルクスありました。 前回ご紹介した最大の明るさは550ルクスでしたが、其の時の光源からの距離は70cmに対し、今回の測定位置は露出計の高さ分だけ光源に近い(約60cmになっている。)ためと思われます。 明るさは距離の二乗に反比例するので70cmでは514ルクスになります。 保護カバーがあるので光量は若干下がるはずですから前回の測定結果とのつじつまがほぼ合います。

これまで使っていたE17口金の50Wクリプトンランプです。 これを壊して口金だけを使います。

中心のステムの部分は壊さないよう残し他のガラス部分はラジオペンチで欠き取りました。 矢印の口金の縁に残っているガラスは怪我する原因になりやすいので、特に丁寧に欠き取る必要があります。

ステムから出ている2本のリード線の黄色い線を引いた辺りはサンドペーパーで良く磨いて半田付けしやすくしておきます。

そして2本のワイヤーを半田付けしました。 ワイヤーの反対側にはコネクターを取り付けています。

私のお気に入りのウッドエポキシです。扱う要領は粘土細工みたいなもので、2つの材料を等量混合というか練り合わせてやります。

2本のワイヤーをショートさせないようウッドエポキシをステムの周りに詰め込んで団子状にしました。 これで4日間寝かせて取り付け作業に進みます。

LED基板の方にも電源コードを配線し先端にはコネクターを取り付けておきます。

4日後に基板をレンジフード内に固定するネジなどの準備をしましたが、最終的には別な方法で固定しています。

下の方に見える細い板に基板をエポキシで接着し、板は2本のタッピングネジで、ランプハウジングの奥の壁に固定しました。 基板の裏側上部に口金を改造した接続部がちらりと見えます。

そして点灯試験。 ちょっと基板の取り付けが傾いてしまいましたが、現物合わせによるご愛嬌の範疇とお考えください。

天上灯共々点灯して離れたところから撮影しました。 撮影時期は異なりますが右は25Wの電球だった時の写真です、明るさの違いが判るよう露出は同じにしてあります。 実際には天上灯の明りはレンジの前に立つ人でブロックされるのでもっと差が出ます。

左の写真は天上灯無しで撮影しています。 3口のレンジ全体がほぼ均等に照明されているようです。 そして天上灯も点灯した右の写真では、周りも適度に照らされていることが判ります。

家内に見せたところ大変吃驚していました。 当たり前なのですが、料理しているお鍋の中が良く見えるというのです。 消費電力がたった2.5Wと以前よりも約1/10に低下しながら明るさが10倍になった省エネ作品の完成です。 またレンジフードの電球取り付け周りははタッピングネジの穴を2つ開けただけで、必要とあらば元の電球に戻すことも簡単に出来ます。 

----- 完 -----

 
  
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