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ヘッドフォーンアンプ 1
   
2011/08/19

構想

現在制作進行中の低周波発振器 2は動作が目標レベルにほぼ到達していることが確認されています。 そして同時に進行中のポータブルPC用スピーカーの調整や性能チェックに役立つのは改めて言うまでもありませんが、もうひとつオーディオのテーマが欲しいな?ということで、ヘッドフォーンアンプを取り上げました。

ヘッドーフォンアンプといってもピンからキリまでありますが、第一作はオペアンプに僅かな周辺の部品だけで作れる物とします。 と書くと何だか余り性能が良さそうでないような気がしますが、自作オーディオの世界でChu Moyのアンプとして高く評価されている物の一部に変更を加えたものです。 その変更部分だけは一通り説明しておきますが、原典については、こちらをお読みください。

 回路は左の図のようで1チャンネル分は1/2 IC(OPA-2134)、抵抗4本、コンデンサ
 ー1本、ボリュームで構成されます。 更に電源は006Pの乾電池ですが、コンデン
 サー4本、抵抗3本、LED 1本、スイッチで作られるというシンプルな構成です。

 原典の回路ではオペアンプとして、OPA134が使われています。 このOPA134は
 1チャンネル分のアンプが入っているタイプで、製作中の低周波発振器でも使用候
 補になっていますが、できるだけ小さく作りたかったので、2チャンネル分入っている
 OPA2134としました。

 入力に入っている抵抗は原典では100kΩですが、150kΩに変更しました。
 この抵抗はその前の0.1μFのコンデンサーとローカットフィルターを構成するのです
 が、0.1μFに100kΩではカットオフが16Hzと高めであるので11Hzと若干下げる事を
 目的としています。
 更にこの図では4.7kΩとなっている抵抗は原典では10kΩですが、その場合には
 電圧利得が11倍とかなりある(というか、あり過ぎる?!と思います。)ので、5.7倍
 に落としています。 それと出力に直列に47Ωを入れてますが、原典ではヒスノイズ
 が気になる場合に挿入とありますが、低インピーダンスヘッドフォーンを繋いだ時は
 オペアンプの負荷が重過ぎるのを防止し、また発振防止用に挿入する意味があると
 私は考えています。

 電源部においては0.01μFがオペアンプ動作の安定化のために追加してあります。

レイアウトは構想として右の図のような物を考えています。 本来は木工製作が好きな私で
すから、ケースはアガチスを使いニスでエレガントに仕上げたいと思います。

右の図の中でピンク色の長方形は乾電池の006Pを表しています。 消費電流は出力電力
次第ですが、無信号時に4mA流れるということで平均して20mA程度の消費電流かな?と
考えています。 さすればパナソニックの技術資料によれば、アルカリ乾電池で20時間程度
の動作時間となります。 まずまずといったところでしょうか?

現状では66 x 66 x 27mmの大きさで、これ以上小さくするには表面実装部材を使わないと
難しい領域に入っていると思われます。 それよりも完成後に修理や調整が出来る構造を
始めとした、機構関係の検討を更に加えてやらないとなりません。




2011/09/16

構想の修正

上でご紹介した内容はかなり詰まっており、そのまま製作に入る可能性もありましたが、更なる拘りの中から修正を加えることにしました。 その大きなポイントは、ケースの構造にあります。 これまでの構想では箱の中にアンプ本体を組み込み、電池を入れたら上に蓋をしてネジ止めする!というイメージで描いていました。

この構造が致命的にまずい部分は何もない筈ですが、このアンプは外部雑音を拾い易い!という情報が入ってきました。 その場合にはオペアンプの入力部分で外部のイズをシャットアウトするフィルターを入れてしまう方法と、アンプ全体をシールドする方法があります。

私の好みとしてはフィルターを使いたくないので、必要とあらばシールド出来る構造にしたい(後からでも)と考えました。 それとケースを固定するネジもデザイン的に何とかならないのか? という問題も解決しようと考えました。

 そんなこんなで新たな構造を考えるうちに、アルミサッシの棒(板かな?)で都合の
 良さそうな物(左写真)を発見しました。 幅が20mmで肉厚は1mmですが、片方が
 5mm幅で折り曲げてありますから平板のようなペラペラ感がありませんが折り曲げ
 加工は1mm厚ですから容易でしょう。

 基本構造としてはこの板を曲
 げて右のようなC型のような
 正方形の枠を作り、フロントパネルとはミニジャック固定で連結します。

アルミ板ですから半田付けで組み立て出来ませんが、逆に必要とあらば完全
にばらして作り直したり調整することも可能です。 この枠の中にプリント基板
と電池を入れるわけですが、5mmの折り曲げ部分で受けてやるようにできま
すので、折り曲げ強度の確保以外に組立も楽になりそうです。

 ロの字型のフレーム内
 にアンプと電池を収める
 わけですが、そのブロッ
 クをケースの前面から
 挿入し後ろ側からネジ
 止め(1本のみ)します。

 その様子は左の図のと
 おりですが、以前は上
 のように箱に蓋をする構造で、最低でもネジが2本必要であったのと蓋と本体
 の隙間が見えてしまう構造でした。 今回の方法ではフロントパネルを埋め
 込むので、工作精度次第で隙間が見えるイメージは無くなるでしょう。

 さてここまで進んできて欲張りな思いが出てきました。 と言うのは以前描い
 た構想図ではケースの大きさが66 x 66mmの正方形でしたがこの大きさを
 維持したい(大きくなっては駄目!)としたのです。

 後ろ側でネジ止めとするためには、電池スペースを2-4mm位広げないとネジ
 込む量が不足します。 従ってサイズ維持というのはプリント基板の幅を詰め
 ないとならないということで、なんとか2.5mm幅を詰めました。
 また基板の端から2.5mm以内に配線は無しとして、アルミ板の5mmの折り
 返しを基板固定に使えるよう配慮しました。



プリント基板の幅を2.5mm詰めていますが、たった2.5mm詰めるために基板のレイアウトはかなり変更しています。 以下の図は変更後(左)と変更前(右)を並べて変更部分を判りやすくしています。 因みに回路図の変更は全くありません。(念のため)


ボリューム、IC、フォーンジャック、電源スイッチなどの位置は全く変わりません。 従ってフロントパネルのレイアウトは変更無しです。 基本的にスペースの利用効率を上げてやるために、2つのフォーンジャックと干渉する恐れの無い抵抗は全て立ててレイアウトしました。 また右の矢印の先の抵抗はフォーンジャックの真下で干渉する可能性があるので移動しました。 電解コンデンサーもスペースを作る為に下に2目盛、右に1目盛移動しています。

今回の変更には関係ありませんが、もっともぎりぎりでレイアウトされているのは上側のフォーンジャックの端子がオペアンプの上1mm程度の所に来る事です。それ以外ではぎりぎりという部分はないと思われます。

 以上の変更を反映した構想の全体図はこちらをご覧ください。

 ネジ止めは背面でと説明しましたが、デザイン
 性がかなり良くなりそうな薄いネジを発見しま
 した。 右の写真が4mmの物ですが、ネジの
 頭の部分の厚みは1mmしかありません。
 材質がステンレスであるので長さの調整の加
 工は大変そうですが、これを使います。

 表面実装が当たり前の時代ですから基板に
 部品ひとつひとつ挿し込んで半田付で作る本
 機は、「コンパクト!」とはとても呼べないかも
 しれませんが、ラジオ少年でスタートした私に
 とっては驚異的に小さく作れる感じです。



2011/09/23

基板の製作と動作確認

回路定数を一部変更しました。(前掲の回路図は変更済み) 先ずオペアンプ出力に入れた47Ωですが、
低インピーダンスヘッドフォーンを繋いだ時の減衰量を抑えるため33Ωに変更しました。 更に青LEDの電流
調整抵抗を27KΩに変更し電池電圧が9Vでは0.2mA、電池寿命の5.4V付近では0.1mAの微弱な消費電流
としましたが、パイロットランプとして充分な視認性があります。 部品定数を入れた最終的な基板のレイア
ウトは右のとおりです。

部品点数が少ないので基板の製作は比較的簡単に進みます。 但しVR、電源スイッチなど基板に固定して
尚且つフロントパネルにあけた穴から飛び出す部品は正確な位置関係を保ち浮き上がりやぐらつきがない
よう固定しないと、後でフロントパネルの穴と合わなくなり修正に苦労するかもしれませんので、慎重に進め
ます。

一箇所半田付けするたびに間違いがないか再確認しながら進めましたので1日がかりとなりましたが、その
代わりに一発で正常動作をしています。 結線間違いをするとその修正にかなりの時間を食われてしまうだ
けでなく、誤配線により部品を壊してしまう場合もありますから、『急がば回れ!』を信条として進めた方が結果的には早く終了する事の方が多いです。

出来上がった基板は小さな手だと言われる私の手のひらでもこのように小さいです。 電池を追加するとこの2倍の大きさになります。

2個のミニフォーンジャックへ行く配線6本、LEDへの配線2本、そして電池への配線は全てAWG24(被覆直径1.3mm)ですが、全体がコンパクトなので太いワイヤーに見えます。

完成した物にいきなりヘッドフォーンを繋いで動作させると誤配線などがあった場合にヘッドフォーンを壊す危険性があるので、ヘッドフォーンの代わりに30Ωのダミー抵抗を繋いでテストに入りました。 完成したばかりの発振器で歪を除いた、周波数特性、方形波再現性、最大出力、増幅度、消費電流などを調べました。

周波数特性
 10、100、1KHz、10KHZ、100KHzの5点で100mVの入力電圧入れた時の出力電圧をオシロスコープで見ています。
 10Hzを除き他の周波数では全く同じ270mVの出力で高域は大変優秀です。 10Hzでは1KHzに対して-2.7dB減衰していますが、
 設計値は11Hzで-3dBの減衰ですからCRの誤差範囲(±5%の誤差を使用)です。

方形波再現性
 原波形との比較では100Hzを除いた1KHz、10KHz、50KHzで入出力の波形の差異が判りませんので、500KHz以上までフラット
 に伸びていると想像されます。 100Hzは上の周波数特性で触れた低域の下降特性にリンクした波形の変化(サグ)が発生して
 いますが、それ以外の動作不安定となるような変化はありません。

最大出力
 30Ω負荷、電源電圧9Vで測定していますが15mWと小出力です。 しかし多くのヘッドフォーンは1mW入力で100dB前後の音圧
 レベルになりますから、インピーダンスが極端に小さな物でないかぎり音圧不足にはならないでしょう。 ヘッドフォーンのインピー
 ダンスが低くなるほど発振防止用に入れた33Ωでの減衰量が増大しますので、変な発振が起きなければこの抵抗を外してしまう
 手もあります。

増幅度
 設計時の増幅度はオペアンプで5.7倍、その後33Ωが入るため30Ωの負荷抵抗の場合、30/63 = 0.476倍に減衰しますので、
 総合的に2.71倍となります。 (負荷インピーダンスが変わると増幅度も変化します。)
 それに対して実測では2.7倍でした。 これも充分に誤差範囲です。 最大出力時の入力電圧は255mVで少々高め(低感度)かも
 しれませんが、後ほどiPod Nanoを繋いで聴いた範囲では感度が低いとは思えませんでした。

消費電流
 無心号時には9mAの消費電流ですが、両チャンネル最大出力(30Ω負荷)の場合には27mAに増加します。 実使用音圧レベル
 では15 - 20mA程度になるのでしょうか? そうだとするとアルカリ乾電池で連続で35時間の使用可能時間が予測されます。
 無信号時に9mAが最大出力で3倍にも増加するのは負荷インピーダンスが30Ω(実質66Ω)とオペアンプとしては非常識?な低
 い値で動作させていることによります。

最大ピーク出力電圧は、1.9-1.95Div程度です。 これから約15mWの最大出力電力が求まります。

最大出力はクリッピングレベルで測定しましたが、これはその確認です。

100Hzの方形波応答はご覧のようにサグが発生しています。 これは低域が下降特性になっている事の表れです。

1KHzの応答はご覧のように全く入力 → 出力の変化がありません。 100 - 10KHzの間が完全にフラットであることを意味しています。

10KHzでも全く入出力の波形は相似形を保ったままです。 これで少なくとも10倍の周波数の100KHzまでフラットであることが確認できます。

50KHzでもほぼ相似形ですが、ごく僅かに左肩の丸みが増加傾向にありますが周波数的にはほぼ500KHzまで凸凹なくフラットということです。

さて一応動作確認をしましたので、ヘッドフォーンとiPod Nanoを繋いで再生音の確認をしました。 その時の印象を一言で言うと、薄いベールを剥がしたように解像度と明快さの高い音です。 OPA2134は華麗な響きがあるとのコメントを聞いたことがありますが、その表現が判るような気がします。 おとなしめの音が好みであれば、NJM2114Dなどは価格も安くてお奨めですが、入力段の定数を少しいじる必要がありそうです。



2011/09/30

フレームの製作

フレームの材料は1mm厚のアルミチャンネル材ですが、その加工のキーポイントは如何に綺麗に、そして正確に曲げるかにあります。 その曲げは直角ですが角は多少丸くなってもかまいません。 試行錯誤というか曲げる方法について幾つか試してみましたが、曲げ部分に0.3mmほどの溝を彫ってやるのが一番簡単で正確さが保てるように感じています。 この0.3mm程溝を彫る!というところがミソでして、彫りすぎると曲げた時にぼっきりと折れてしまいますし、溝がそれより浅いと曲げた角のシャープさがなくなったり曲げる位置がずれたりします。

 フレームの予備加工の図面は左のとおりです。 既に掲載した構想図面を見ると、フレーム
 内側の寸法は前後が59.5mm、上下を57mmで設計していますが、この予備加工の図面で
 は前者が60mm、後者は57.5mmとそれぞれ0.5mmずつ長くしています。

 これは折り曲げ線の部分に0.3mm程の浅い溝を彫るために折り曲げた時に内寸が若干縮みます。 何度か実験した結果では0.3mmほど溝を彫った時には2回折り曲げて0.5mm短くなるようですので、その分長く線引きしておくということからきています。

その『溝を彫る!』ことにした理由は、曲げる位置がずれないように、曲げた角のシャープさを高める、曲げる作業そのものを簡単にしたい!などの理由から考えました。 具体的には目立てヤスリを使います。 フライス盤でもあればそれこそ正確でシャープな溝を彫れるでしょうが、慎重に作業を進めれば加工精度を0.5mm以内に抑えることはそう難しくないようです。

さてどこまで精度を出せるのかは段階的な作業の様子の以下の写真でご理解ください。

折り曲げ部分の三角の欠き取りをヤスリで削り出したら、目立てヤスリで溝彫りです。 固定した板にはガイドとなる線が引いてあり、溝の深さが均等となるよう矢印の隙間を見ながら削ります。

削り終わった三角の欠き取り部分と谷折り部分の溝。 ここまでの作業で加工精度が決まりますから充分に慎重に進める必要があります。

目立てヤスリで削った溝のクローズアップ。 板厚が1mmですからおおむね0.3mmの深さになっています。 深さが0.5mmを超えると曲げた時にいきなり折れるようになりますし、これより浅いとシャープに曲げるのが難しくなります。

曲げ加工が完了したフレーム。 この後穴あけ加工になります。 橋と端の間の隙間にスイッチが挟まれ、フレームの外寸はその時点で所定の値になります。

曲げた角のクローズアップ。 予め溝を彫ってありますから溝無しに較べるとシャープな曲がり方になります。

念のために曲尺を当ててみました。 直角度もピシッと出ており申し分ありません。

まだ穴あけをしていませんから最終的な位置ではありませんが、試しにプリント基板を落とし込んでみました。 設計寸法に対して±0.3mm程度の誤差がありますが、全く問題ないと思います。

最終的なアルミ板を曲げる作業はこれらの写真の手順で終わってしまうのでナーンダ!といったところですが、あり合せの手工具だけでシャープに曲げる方法や手順を考える事前のテスト、確認でかなりの時間を費やしました。 私としてはひとつのノウハウを得たような気がしています。



2011/10/07

フレームの製作 2

フレームを曲げる作業は高い緊張度を求められましたが、フレームへの穴あけ、フロントパネルの加工と気の抜けない作業がまだまだ続きます。 フロントパネルは小さいながらヘヤーライン加工をして水性ウレタン透明クリヤーニスを2回塗ってからインスタントレタリングで文字入れしました。 そしてフロントパネルとフレームを接着します。 ここでは瞬間接着剤を使っています。

フレームとフロントパネルが一体になったら1.2mm厚プリント基板を幅1.5mm程に切断してフレーム内側に瞬間接着剤で貼り付けスペーサーとします。 このスペーサーにピッタリと載るようプリント基板を接着し、その後2個のフォーンジャックを固定し、それらに配線すれば、ケースを除く電気回路部分は完成となります。

最後にフレームの後ろ側内側に1.5mm厚のアルミ板をエポキシで貼り付けM4の雌ネジを中央に切りました。 更に1mm厚発泡塩ビ板を切ってL型に曲げて電池スペースに落とし込み瞬間接着剤で貼り付けました。

最後に電池を軽く押さえて動かなくするためにポリエチレンフォームを切って貼り付けてフレームの部分は完成です。

フレームの前面にボリュームツマミが通る穴(13φ)、2個のフォーンジャックが通る穴(8φ)をあけます。 加工位置と大きさはかなりシビアに保たないと、組み上げてゆくうちにとんでもないいびつな物になりかねませんので、±0.2mm位の精度を目指しました。

こちらはフロントパネルの穴加工でフレームと同じ穴以外にシーソースイッチの頭が出る穴(3.5 x 6.5mm)とLEDの窓穴(2φ)をあけます。 こちらは±0.2mm以下の加工精度を目指しました。

穴あけが終わったら所定の寸法に切断し、#120ペーパーでヘヤーライン加工しました。

そして水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗ってやります。 この後の文字入れは完全乾燥後としますので、12時間放置しました。

文字入れはインスタントレタリングですが、小さい文字なので、省略した表現(Headphone → PHONE、Input → IN、電源スイッチとボリュームは無表現)としました。

プリント基板の端を約1.5mm幅で切断しスペーサーとします。

瞬間接着剤を使ってスペーサーを隅に接着します。 矢印の先がスペーサーです。

そしてプリント基板を挿入しスペーサーに密着するよう抑えて瞬間接着剤を数箇所の隅に沁み込ませて固定します。

そしてフロントパネルをフレームの上に載せてフォーンジャック2個で共締めします。 そしてフォーンジャックへの結線、LEDの固定と配線が済んで、フレーム内の電機回路部分は完成しました。 これ全体が木製のケースに収まるわけです。

電池を挿入する部分が筒抜けですが、ここを埋めることとケース固定の雌ネジを切る作業がまだ残っています。

ボリュームツマミは穴を貫通させる構造にしたため、穴の加工精度と位置関係など難易度はきわめて高いのですが、まずまず見られるレベルに仕上がったと思います。

1.5mm厚のアルミ板を底に貼り付けて中央にM4のネジを切り、1mm厚発泡塩ビ板をL型に曲げ、電池受けとして瞬間接着剤で貼り付けました。 そして軽く電池を押さえるためにポリエチレンフォームを貼り付けています。(矢印の先)

電池を収めるとこんな感じになります。 ネジは例の頭の薄い奴ですが、木製ケースが出来た時に現物合わせで長さを調節します。




2011/10/14

木製ケースの製作 1

やっと日曜大工的な作業となります。 約66mm四方で厚みが27mmという小さな物ですが、加工精度は0.1mmの単位まで追いかけそうな高い精度を求める部分が出てきます。 それをどう要領よく作るかがポイントですが、組立の順序と精度出しの重要部分とそうでない後からドンピシャに仕上げられる部分に分けてやる事が肝要です。 思考実験を続けて次のような順序を考えました。

 左が組み上げ後の寸法図で、右は
 部材寸法図です。 フレーム製作の
 前に掲載した図面と各部寸法が微妙
 に異なりますが、出来上がったフレー
 ムの実寸に合わせて変更を加えてい
 ます。(現物合わせということです。)

 最初に部材の名称を明確にしておき
 ます。 さもないとこれから述べること
 がちんぷんかんぷんになります。

 ほぼ正方形の一番大きい板を側板とします。(これは左右2枚あり全く同じ大きさです。) 側板に挟まれる上下の板を天板、底板とします。(これらも同じ大きさです。) フレームがケースに固定される4.5φのネジ穴があけられるフロントパネルの反対側の板を背面板とします。(これだけは1枚です。)

以上の5枚のうち縦横共に正確に加工しないとならないのは背面板で、20.5 x 60mmを+0.1mm、−0.0mmの精度を目標とします。 精度を出す方法としては、ノコギリで0.5mm程度大きめに切断し、その後カンナと替刃式ヤスリ(サンドペーパーは精度が出ないため不可。)で削りながらノギスにて寸法を確認しながら追い込みます。

次の天板、底板は板幅が20.5mmで誤差は+0.1mm、−0.0mmになるよう集中します。 長さは1-2mm程長くしておきます。 最後に側板2枚の切り出しですが、これは縦横何れも1-2mm程度大きめに切っておきます。(この寸法出しは組立が終了後にトリマーで一気にやれます。)

2次加工は天板、底板、側板にフロントパネルが落とし込まれる溝彫りで背面板への4.5φの穴あけは組立の途中で現物合わせです。 溝彫りは彫り幅1.2mm、深さ1.0mmで3mmのストレートビットで彫ります。 注意点としては、側板だけは長さを61.9mmに抑え中央に彫らないとなりませんので、トリマー用のガイド板の設定は事前に数回テストして加工寸法を充分に確認する必要があります。 尚61.9mmの切削は端では円形にカットされるので、ノミを使って入隅とする手加工が後で必要になります。

以上の加工が終了したら一箇所ごとに接着してまいります。 尚接着剤が硬化するまで180mmハタ金で圧着保持しています。 最初に天板と片方の側板を貼り合わせますが、天板の溝と側板の溝が合うようにします。 この時側板は天板より若干出っ張りますが問題ありません。  次に溝の内側から61.5mm離れた位置に背面板を貼りつけますが、位置の確認はアンプのフレームをあててしまった方が簡単です。 さらに背面板を挟むように底板を貼りつけます。 この時も位置関係を出すにはアンプフレームを当ててしまったほうが簡単です。 これが終わったらアンプフレームの抜き差しが出来て一番奥まで挿し込むとフロントパネルがピッタリと嵌りこむことを確認します。

この後背面板にフレーム固定ネジの通る穴(4.5φ)をあけて、ネジの長さを電池室に出っ張らない程度に切断加工してやります。

次に残りの側板を貼り付けるのですが、それを所定の場所に当ててみてフレームの抜き差しがスムーズに出来るかどうかの確認とフロントパネルがぴたっと収まるよう修正の研摩(或いは切削)をしてやります。 それが出来たら側板を貼り付けます。(この側板も前面を除いて周りは出っ張ります。)

以上でケースの組立は完了です。 最も精神を集中し高い緊張度を求められる作業も峠を越えました。 それらに様子は以下の写真をご覧ください。

まずノコギリでの切断。 私は翔220(7寸目)を使いました。 上2枚は天板/底板/背面板用で、下は左右の側板ですが、赤線の部分のトリマーによる溝彫が終わったら切り離します。

細い板2枚の幅出し(20.5mm)は自作の替刃式平ヤスリで行いました。 削られる側が動かされるわけですが、ヤスリは台に容易に抑えられぐらぐら動きませんから好都合です。

所定の20.5mmドンピシャに成形研摩出来ました。 寸法確認は3箇所で行い確実さを期しています。

側板に61.9mm幅の溝を切削するためのジグ。 溝幅からビットの直径(3mm)を差し引き、電動トリマー台座の幅を加算すればジグの内寸となります。 また黄色矢印先が板の端から44.5mmとなるようセットすると彫られる溝幅は1mmとなります。 溝の深さは1.1mmとなるよう調節しました。

シナ合板(右)とムク板(左)の端材に試しに溝を彫ってみました。 この試し打ちでは溝の端の成形がいまいちうまく出来ていませんが溝幅、深さ共に良好なようです。

削った溝にフレームのフロントパネルを落とし込んで間に20.5mm幅の板(赤矢印)を挟みました。 ご覧のとおりフロントパネルの嵌り具合や天板、底板との間の隙間の出具合など、ほぼドンピシャで満足すできる状態です。


 上の溝切削の調整と確認は、トリマービットの出具合の調整や、ジグの取り付け位置調整などを数回やり直したうえに、
 20回近くの試し切削をやってバラツキの出具合の確認をするというかなり慎重なやりかたをしています。
 と言うのも削る量は僅かですが、切削許容誤差を限りなく0に近づけたい(目標は±0.05mmでノギスの測定限界値)とい
 うかなり無茶な目標設定のためです。



板に予め彫っておくべき溝を電動トリマーで加工したのち、板を切り離しました。 全部で5枚になります。

底板を側板に貼り付けました。溝と溝がきちんと一致する事と接合角が直角になっている事が肝要で、180mmのハタ金を使って圧着保持しています。

接着剤の硬化を待って2時間後にハタ金を外し、2枚の接着が完了しました。

次に背面板を貼りつけますが、貼り付け位置はアンプフレームを当ててやると簡単に判ります。 そしてハタ金で圧着保持します。

アンプは接着位置関係を確認するために当てていただけであることがお分かりでしょうか?

その後天板を接着しますが、ここでもアンプフレームは接着位置を確認しやすくするため当てています。

ご覧のようにごく僅かな隙間を残してフレーム本体はケースに収まります。 ここで現物合わせで背面の止めネジが通る穴をあけ、ネジも長さを5.5mm(アルミ板厚が2.5mm + ケース厚3mm)に詰めてやります。 

背面の止めネジ部分の加工も無事終わりました。 頭の薄いネジ(M4)は大変好都合でした。

そして残りの側板を接着します。 こんな物に対して!と思うかもしれませんが、6本のハタ金で圧着保持をしています。 また接着位置関係確認のためアンプフレームを装填したまま組み立てましたが?

手前の2本のハタ金を緩めて抜き出しました。 さもないと万が一内部で接着剤がはみ出たらフレームは接着されてしまい電池交換も出来なくなります。

箱の組立は終わりました。 アンプフレームの挿入具合をもう一度確かめます。

箱の出っ張った部分は傘付き目地払いビット(MB-12.7G)で一気に削り落とします。 この写真に見える銀色のローラー(コロ)の当る面が基準面になります。

MB-12.7Gで切削した例。 矢印の部分がその下とツライチになりました。 右側はまだ切削されていない部分です。

切削した面を#120、#240でならしました。 ハンドサンダーを左手で握りヤスリ面が上を向くようにして、研摩する物を右手で掴み向こうから手前に引く時に研摩しています。 研摩の効率は悪いですが、一部だけ削り込んでしまうことがないように思います。

仕上げ研摩が終わったかのような綺麗な面になっていますが、まだまだ。 この後面取り作業に入ります。

フロントの角を除き、このボーズ面ビット(BZ-10G)で面取りをします。 このボーズ面ビットは半径3.2mmのRとなるように切削します。

ボーズ面ビットで角を丸く成形後に#240、#400、#600とサンドペーパーを換えて仕上げ研摩としました。 フロントの縁だけは45度の角度で1mm弱削るだけにしました。

背面はこのような感じです。 木目を生かそうと考えていますからシンプルそのもの。

アンプフレームを挿入するとこんな感じでケースだけだと丸みの塊で全体がぼやーっとしていたのが直線と金属面が入るのできりりと引き締まってきます。



2011/10/21

塗装作業と完成まで

塗装については格調高い重厚な感じがするものを志向しました。 殆ど決め打ちでマホガニーブラウンによる着色と決めています。 そうした理由はトリマーで作る小箱でアガチスの木目が光の加減できらきら格調高い光をはなつのを発見したからです。

その時には蓋がしまらなくなるからニスを2回塗りで止めていますが、深みを出すためにはもっと重ね塗りをしたいところです。 前回の油性ニスと違って今回は水性ウレタンニスを使いますので、肉乗りは薄くなるので、取り敢えずの目標は5回塗り以上としておきます。 そして最後の塗装はお決まりの水性ウレタン艶消しニスです。

ニス塗りの前の着色はかなり重要で、前述の光の当り方によりきらきら光る現象も着色濃度で若干変わります。 そこで着色濃度が急激に高くならないようステインを水で3倍に薄め、塗っては乾かし艶の出具合を確認して再び着色を繰り返し、結果としては6回塗りで良しとしました。 この作業でかなりの水分を含ませてしまいましたから、一晩寝かして完全乾燥させてからニス塗りに入っています。

ニス塗りは透明クリヤーを2回塗って乾燥したら#400サンドペーパーで研摩し更に透明クリヤーを塗って乾燥後#600に変え、再び透明クリヤーの塗装、#600で研摩と計6回塗りとしましたが、何度も言うとおり肉乗りが薄いのと研摩していますから塗膜はそれ程厚くなっていません。 そして最後に水性ウレタン艶消しニスを塗って塗装作業は終了です。 完全乾燥後にアンプフレームを組みこんで完成です。 それらの作業の様子は以下の写真をご覧ください。

水で3倍に薄めたマホガニーブラウンで着色の一度目です。 3倍にも薄めているにも拘らず随分色が付きます。

4回着色した状態。 一回目の時よりも濃度が高くなると同時に赤みが増してきます。

6回目の着色後。 着色濃度が更に高まり赤みも増し、木目が若干目立たなくなってきています。 これで良しとしました。 かなり水を吸い込ましたので一晩寝かせて乾燥させます。

1回目の塗装後。 目で見てはっきり判るようにざらついています。 木部にニスの大半が吸い込まれて表面の幕を形成する部分が少ないからです。

塗膜が出来ないうちに研摩すると着色無しの地肌が出てしまう可能性があるので、研摩せずに2回目のニスを塗りました。

2回目が乾燥後#400ペーパーで研摩し3回目を塗装。 そして乾燥後に研摩して4回目のニス塗りです。

5回目のニス塗りが終わったところですが、不思議なことに塗装前に較べて着色濃度が上がってきています。 無論ご覧のように表面はぴかぴかになり光を良く反射します。 これで最後の艶消しニスの塗装をします。

水性ウレタンニス艶消しクリヤーを塗って乾燥中ですが、艶消しクリヤー塗装による見え方を数カットお見せします。 左は側面で右は背面になります。  右の写真では貼り合せた部分が細い黒い線状になって見えますが、接着剤がはみ出てほったらかしにすると白っぽい斑になって出てきます。

艶消し処理した結果を最も理解しやすいのはこんな見え方でしょう。 この上にある艶ありのピカピカの写真とは雲泥の差で、しっとりとした落ち着き、独特の高級感があります。

右は同じタイミングで完成したhfe チェッカーですが、同じ材料(アガチス)を使っているにも拘らず、着色のありなしでこんなに見え方が変わります。 従って着色は極めて面白みのある作業でやみつきになります。

塗装が完了したケースにアンプを装填しました。 これで完成ですが私が頭の中でイメージした格調高い重厚な質感を持つケースが出来上がったと思います。 これで聴く音楽はアンプの実力以上の音色になりこれまた格別ですが、主観の世界の面白みです。


----- 完 -----

 
  
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