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LED駆動回路の模索
2009/04/10

LEDを使った自作例は沢山ありますし、市販品でも省エネ型の○X○Xなどと謳った物が販売されています。 実際LEDを最も簡単に点灯したいのであれば数本の乾電池と抵抗1本があればOKなので、子供向けの電子工作にも好適な材料とも言えます。

しかしそれらの大半は、温度変化や電圧変化に対して十分な対策が取られているとは思えない実験室レベルの物が多く、まともな実用品からかなり離れているものであることも否定できません。

D.I.Y.において実用性を極めて重要視する重んじる私は、今集中して作っているLEDを使ったテーマもその例外ではなく、それらの製作に当たっては常に、

   1.電源電圧の変化を始めとした全ての動作環境の変化に対して安定で安全な動作をすること。
   2.一番高価な部材となりやすいLEDの寿命が短縮されるような使い方は絶対に避けること。
   3.LEDを使う最大のメリットである発光効率の良さを享受するため駆動効率にも十分配慮すること。
   4.余りにも特殊で高価な部材の使用は避けること。(入手性とメインテナンス性の観点から。)


などを考えながら進めています。

1.の具体的な例としては、AC100Vの電圧変動や誘雷などの破壊的な電圧への対処、広域な動作温度・湿度への対応、振動やショックへの抵抗力アップです。

2.の具体的対策としては駆動電流はメーカー推奨値か若干下回る値で必ず定電流とするということです。

3.に関して一言で言えば、「真の省エネに繋がるような使いかた!」と言えます。 これは低い電源電圧で(例えば数本の電池を使う)点灯しようとした場合には色々なエレメントが重なり合いますので慎重に進めないと、LEDを使ったというだけで、省エネの観点でのメリットが薄い物が出来てしまいます。  LEDにのめりこんでいる私が今一番頭を悩ませているのはこの3.の問題と言えるかもしれません。

4.については取り組みの敷居を下げる上で重要ですし、テスト段階で部品を破壊してしまうこともありますから、性能が良くても使うことをためらう場合があります。 一度レギュレーターICでLEDの定電流駆動用に絶好と思える物を発見しましたが、1個\1,000を超える購入価格であることを知り、あきらめたことがあります。

さて前置きはこのくらいにして、上記3.に関して実験・検討している状況を簡単にご紹介
したいと思います。

LEDを駆動するにあたっては何らかの定電流回路を直列に繋ぐ必要があります。 簡単に
実現するのであれば抵抗を使うわけですが、「LEDの使い方」の中で触れているように、安
定した電流とするためには大きな抵抗値とする必要があり、それにつれて電源電圧も高く
しないとならないので駆動効率は悪くなってしまいます。  そこで定電流ダイオードやシリ
ーズレギュレーターを使った定電流回路を使うことで、抵抗よりも極めて安定した駆動電流
を得ながら駆動効率も大幅に改善されます。

 中でもシリーズレギュレーターで作る定電流回路は電流値
 の設定自由度が高く(連続可変で調整することも可。)、使
 用部品が少なくて動作環境の変化への対応も極めて安定し
 ていることから、私の好みの方法になっています。

 特に価格が安く入手性の良いLM317というシリーズレギュ
レーターは使用頻度が多く、AC100V直接整流方式ではちょくちょく出てきますが、使用条件によってはもうちょっとという面もあります。 (上の写真はLM317です。)

それはサイズが大きいことと定電流回路自身による損失が結構大きいの2点です。 サイズが小さくなったら狭いスペースでも楽に組み込めますからどなたにも理解しやすいでしょうが、2番目については以下に補足説明を致します。

シリーズレギュレーターというICは、入力電圧が変化しても出力電圧が一定値となる動作をしますが一定した出力電圧を維持するためには入力電圧は出力電圧より若干高めであることが必要です。 例えば5Vの出力を得たい時に7V以上の入力電圧がないと5Vの出力にならないと仮定します。 この電圧の差(ここでは7V - 5Vの2V)ドロップアウト電圧と呼びます。 そしてシリーズレギュレーターを使った定電流回路では、ドロップ電圧と出力電圧の合計に出力電流を乗じた電力はLED駆動には寄与しない損失の電力となります。

例えばLM317の場合には、このドロップアウト電圧と出力電圧である1.25Vが加算された電圧が損失となり、私が調べたところ出力電流が5mAの時に2.8V、10mAで3.0V、15mAで3.3V、20mAで3.7V、30mAで3.8V、40mAで3.9Vといった値でした。  従ってLEDの両端に掛かる電圧にこれらの値を加算した以上の電源電圧でないと、LEDには設計どおりの安定した電流が流れません。  LEDに供給する電流は20-30mAが多いですから3.7-3.9V(はしょって4V)高い入力電圧と覚えておくとよいでしょう。 私のAC100V駆動の具体例では交流入力電圧が若干下がっても安定領域から外れないよう、少し高めの7V-9Vになるよう調整することを標準としています。

AC100Vを直接直流化すると130数ボルトの電圧が得られますから、LEDを直列に40本前後接続することが可能になり、4V前後の損失電圧は駆動効率に大きく影響しませんが、低電圧でLEDを駆動するとなると事情は大きく変わります。 例えば12V の電源電圧で安定的に駆動できるLEDの本数は2本と言われています。 先に述べたLM317を使った定電流回路では損失が4V発生しますから、12V - 4V = 8Vとなり、赤色LED以外は殆どVfが3V以上になるので、確かに2本以上は十分な駆動ができません。 定電流ダイオードを使っても定電流ダイオードに5V以上の電圧が掛かるようにメーカーは指定していますから、やはり2本が限度です。 と言う事は駆動効率は50-60%程度しか取れないことになります。

ここで仮に4Vの損失が1V低い3Vで済んだと仮定すると、12 - 3V = 9Vとなり、全てのとは申しませんが最近のLEDの実力Vf値は3Vあるいは若干3Vを下回る値ですので3本駆動できることになります。 仮にVf 3VのLEDを12V電源で2本駆動した時には駆動効率は50%ですが、3本駆動できれば75%になります。 更に本数が増えた分明るさは増加(50%増)しますから、総合的には2倍以上消費電力の改善に繋がります。 たった1Vの損失電圧の違いが条件によっては大きな違いになるわけで、LM317を使った定電流回路や定電流ダイオードを使った泣き所を改善するためうまい代案がないかと模索しているわけです。


実験中の低損失定電流回路

1.ディスクリート部品でレギュレーター回路を組む

 入手性を考慮しながらもそれを実現する実用回路を最近いくつか試作・
 実験していますので、紹介いたします。 何れも12Vの電源電圧で3本
 のLEDを安定的に駆動できます。

 そのひとつめはディスクリート部品の組み合わせとした左のような回路
 です。 実はこれは低電圧回路の基本として教科書に載っているものを
 少々変形しただけの物です。

 何を変形したかというとツェナーダイオード(HZ3C2)に定電流ダイオード
 を通して電流を供給し、電源電圧の変動でツェナー電圧が変動を受け
 にくくしたことと、ツェナーダイオードにトランジスターの温度係数と似た
 ような温度係数を持たせたことにあります。

実は右側の抵抗(75Ω)の両端電圧(1.57V)は、ツェナー電圧(2.29V)とトランジスターのVbe(ここでは0.72V)の差で決まりますが、Vbeは負の温度係数を持っておりますので、差の電圧は温度が高くなると大きくなります。 但しツェナー電圧も負の係数を持てば、キャンセルし合い温度補償ができる事になります。 ツェナー電圧が5V近辺ではゼロ温度係数でそれより高いと正の温度係数、低いと負の温度係数を有しているので、カットアンドトライで良さそうなポイントを探しました。 定電流ダイオード(E-501)はメーカーの発表値によれば、最も温度係数がゼロに近い物となっておりツェナーダイオードを安定駆動出来ます。

この回路で手持ちのLED(MT-LS05060XC Vfが3V強。)3本を電源電圧を5-20Vの間1V刻みで変えて駆動した結果のグラフは次の通りです。


最も簡単なレギュレーターですから、安定化領域で完全にフラットとは言えず若干右肩上がりにはなっているものの、その変動範囲は12-20Vの電源電圧変化で1mA以内ですから十分実用になります。 また3本のLEDはVfが3Vを若干超えるため、12Vの電源電圧でぎりぎりの駆動になっておりますが、Vfが3V以下となれば更に余裕を持って駆動できます。 尚温度変化に対するテストとしてヘヤードライヤー(1KW)を使い10cmの距離から熱風を3分間当てるといういささか乱暴で大雑把な方法を取りましたが、LEDに流れる電流は0.2mA減少とまずまずの温度補償ができています。 残る問題は再現性が高いのか?(別な同じ部品を組み合わせて同様の性能が得られるのかどうか?)で、そうでないと作るたびに調整・確認が必要という面倒くささが出てきますが、入手しやすい部品4点で作れ場所も取らないのが大きなメリットです。


2.LDOレギュレーター使用の回路

 もうひとつの方法はLDOレギュレーター(LDOとはロードロップアウトの
 意。)
から選別して定電流回路を作る方法で、この場合には高性能な
 物を使いますからLED駆動用には十分以上の物が出来ますし、再現性
 の問題もないでしょう。
                         LM317(左)とNJM2845DL1-18(右)
 但しそのようなレギュレーターを
 手に入れるのが難しいですが、
 偶々入手できた新日本無線製の
 NJM2845DL1-18を使って実験
 しました。 回路は左の図のよう
 なもので、NJM2845DL1-18
 外にコンデンサー2本と抵抗1本
 で構成されます。

電流設定は1.8Vの出力電圧を電流値で割った値の抵抗を使えばOKです。 従って20mA
流すには、18÷0.02 = 90Ωになりますが、90Ωを得るには2本の抵抗を組み合わせないと
ならないためこの実験では手持ちの82Ωをそのまま使いました(実測は83Ω)ので、若干多めの電流が流れています。  そして5-20Vの電源電圧の変化でどうなるかテストした結果が次のグラフです。


こちらの方がディスクリートの部品で作ったよりも安定性は遥かに上になっています。 安定領域での電流値が計算値より更に高めに出ていますが、抵抗の値を変更すれば任意の電流値に設定できます。

興味あるのは低い方の電源電圧の限界で、ディスクリート部品版とほぼ同じ12Vで入出力電圧差が2.7V
近辺というのも同じです。 違うのは温度変化の安定性で、ヘヤードライヤーで同じく乱暴な3分間の加熱
試験をしましたが、さすがに電流値はびくともしませんでした。 実装部品点数が前の例と同じ4点で大きく
なりやすいコンデンサーを2本使わないとならない点が面白くないところですが、動作の安定化の為に省い
てはいけないそうです。

NJM2845DL1-18の結果が満足すべきものだったので更に物色を進めたところ東芝製のTA48015F
いう物を見付けました。(右はTA48015FLM317の大きさの比較です。)

出力電圧1.5V、ドロップアウト電圧0.6V、耐圧や最大電流などNJM2845DL1-18にかなり似通っており
ますので、損失電圧が3V以下となる期待が寄せられます。 また表面実装型ではありませんので、作り
やすいかもしれません。  こちらも近々に入手して確認したいと考えています。


3.ディスクリート部品で電流制限回路を組む

 左がテストした回路で、電流制限回路を使っています。 文献によって
 は定電流回路との表記もありますが、正確には電流制限回路と呼ぶべ
 き動作をします。 原理は簡単で左側のトランジスターに流れるコレクタ
 ー電流は120KΩの抵抗を通ってベースに注入される電流で決定され
 ますが、設定した電流より大きくなると右側のトランジスターがベースへ
 行くべき電流を吸い込んで左側のトランジスターのコレクター電流は増
 加しなくなります。

 電流の設定は図中の0.56Vの電圧を電流値で割って抵抗の値とすれ
 ばよいのですが、この電圧は0.5Vから0.7Vの間でバラツキますので、
 簡単に計算でというわけには行かず、カットアンドトライで設定しないとなりません。 ここでは33Ωと手持ちの抵抗1本で済ましていますが、20mAを流したいのであればもう少し小さな抵抗値としなければなりません。  この回路も4個の部品で作ることになり前の2例と同じ数ですが、価格の安い部品ばかりでしかも場所を取らないというメリットがあります。

ところでこの回路はあまりハイテクとは言えず、実験の結果では電源電圧の変化でLEDに流れる電流は若干変動しますが、実用上問題にはならない範囲に収まっています。 また温度変化に対してはマイナスの係数を有しており、ヘヤードライヤーで熱風を当てると流れる電流は減少します。 従って温度上昇により熱暴走でLEDを壊してしまう心配はありませんが、極端に低い温度環境下になるとLEDに流れる電流が増大しLEDを痛める可能性があります。 回路図中0.56Vと記載した33Ω抵抗の両端の電圧を右側のトランジスターは設定電圧としてチェックするのですが、理論的な計算では0℃になると約0.6Vを設定電圧として見るようになります。 そうすると33Ωには、0.6 ÷33 = 18.2mAと、ここでの設定電流値である17mAが1.2mA増大します。 更に−20℃になると19.4mAまで増大する筈ですが、他にも色々な要素がありますので、実際にどうなるかは確認する必要があります。

しかしながら可能性としては、屋内で使用するような場合であれば問題は生じないでしょう。 次のグラフがこの回路で電源電圧が変化した時の特性です。


電源電圧が11Vから20Vの間でLEDに流れる電流は17mAから18mAと丁度1mAの変動に収まっています。 特筆すべきは11Vの電源電圧の時にこの回路での損失電圧は1.9Vと何れの方法よりも小さな電圧になっていることが挙げられます。

製作は若干面倒になるかもしれませんが、トランジスター、抵抗共に表面実装タイプを使えば高さと設置面積の小さな物が作れそうです。


4.トランジスターの電流直接制御の方法

 更に左の回路もかなりの低損失で動作します。  但し実用回路として
 後ほど述べる問題がありますので、このままでは使いたくありません。

 考え方は電流増幅型であるトランジスターの動作原理に基づいたもの
 で、トランジスターのベース電流のhfe倍がLED駆動電流になります。
 従ってベース電流が定電流であればLED駆動電流も定電流になりま
 す。 そのベース電流はFETを使った定電流回路で生成してやり、抵抗
 値で電流値を決定するという単純な発想で、トランジスターにおける損
 失はこれまで述べた値より更に小さく出来、これが最大のメリットです。

 但し問題が温度特性にあります。 トランジスターのhfeは温度が上が
 ると増大します。 従ってFETが作るベース電流が安定した定電流でも
 hfeが増大するために、LEDに流れる電流は増大してしまいます。

現在のところこの温度補償を簡単にやる方法を検討中で、このままでは実用回路とは言えませんが、原理的に損失電圧が極めて低いのが最大のメリットになります。



2009/04/17

実験の続き

先週最後に触れたトランジスターのベース電流を制御する方法を更にいじってみました。 結果としては条件付で使えるということでまだ不完全ですが、設置面積が大変少ないというメリットがありますので、条件付で採用できる可能性があります。

 先週紹介した回路はトランジスターのベース電流を定電流化してやろう
 ということで、FETを使った定電流回路をこの目的で使っています。
 しかしこの方法ですと温度補償が難しくなるので(温度特性が正のサー
 ミスターが入手できれば容易に可能)
、替わりの方法として定電流ダイ
 オードを使う方法に変更しました。

 但しそのままではベース電流の調整が出来ませんので、抵抗を追加し
 て余分な電流をバイパスしてやります。 この抵抗値を変化させれば
 LEDに流れる電流を制御できますし、サーミスター(負の温度特性の普
 通のタイプ)
を追加すれば、温度補償も出来ます。


 またトランジスター、定電流ダイオード、抵抗各1本で構成されサーミスターを追加しても極めて小
さな占有面積の物が作れます。 場合によってはそれらをエポキシで固めた
定電流ユニット化も可能です。
(右写真中央はこの回路を構成する部材で、左から抵抗、トランジスター、定電流ダイオード、サーミスターで、左端はAC100V回路で頻繁に登場するLM317、右端は1円玉で何れも大きさの比較のために置きました。)

ということで、電源電圧を変化させた時の特性を測定しました。 以下がそのグラフで、サーミスターは接続していません。 尚上の回路には電流測定用と記載された1Ωの抵抗がありますが、LEDに流れる電流値を両端電圧の測定により直読しています。


電流値の上昇がなだらかになる部分は10V近辺で、これ以上が使用可能領域になると思います。 LEDに流れる電流は電源電圧12Vの時に18mAと若干少なめですが、電源電圧の上昇に従ってLED電流値は増大して行き20Vでは25mAになりました。  こうなってしまう原因はどうやらVce(コレクターとエミッター間の電圧)が増大すると電流増幅率は増加するので、ベース電流が一定値でもコレクター電流(LEDに流れる電流)が増大するということのようです。 上の方で条件付と申し上げたのはこの点でして、電源電圧が増大してしまう可能性のない場合(電池による直接駆動など。)であれば余り問題にはならないでしょう。

電源電圧の変化に対し大きく変動するので、サーミスターを繋いで温度補償がどうなるかはまだ確認していませんが、電源電圧の変動が少ない環境では定電流回路の損失が小さい(電源電圧10Vの時に約0.9V、11Vの時に約2.0V)のと、回路の占有面積が小さい点は、これまでにご紹介したもっと高級?な回路に対してメリットを見出せます。

以上拘って色々実験しておりますが、安直に抵抗だけでLEDの電流制御をした場合どうなるかの一例をこの項目の最後にお見せします。 この例は3本のLED(Vfが約3V)を直列にし、150Ωの抵抗を電流制御用に加えた(12Vの時に約20mAになる。)ものです。


このグラフを一番最初にお見せした方が良かったかもしれませんが、ご覧の通り電源電圧の変化に対して目を覆いたくなるような電流値の変化があります。 電源電圧が増大すると急激に電流値が増大しLEDの破壊に繋がるため14Vで測定をやめました。 その間のLEDの両端電圧の変化はごく僅かです。 これらが正に定電流駆動に拘っている最大の理由であり、今週紹介した最も賢くない?回路でも抵抗のみの物に比べれば遥かにLEDに対する保護効果があります。



2009/04/24

最後の実験とまとめ

6.超低損失定電流回路                                         この回路の構成部品5点

今回の実験や確認の中では最後になる定電流駆動回路をご紹介します。
この回路が原理的に高性能なことは判っておりましたが、占有面積が大きくなるこ
ととLED駆動用としてはちょっと大袈裟かな?とも考えていましたが、ある必要条件
においてはこれでなくてはならないこともあり、動作確認をこれまでの回路と同一
(電源電圧12VでVf 3VのLEDを20mAで駆動。)条件にて試しました。







 左がその回路図です。 この回路の鍵はオペアンプ
 というICを使った点にあります。 上の写真左端がそ
 れで、小さい物ですが8本脚で2回路分入ってます。

 このオペアンプには入力が+、−の2種類がありま
 すが、それぞれに加わる電圧が異なると出力に変化
 が生じてトランジスターを制御します。
 ここではトランジスターに流れる電流(LEDに流れる
 電流。)
を1Ωの抵抗の両端電圧で検出し、それが−
 入力となっています。 また+入力は定電流ダイオ
 ードに繋がれた抵抗(ここでは調整するために可変
 抵抗。)
の両端電圧となります。

 定電流ダイオード(E-501)はメーカーの発表データ
 によれば、その両端に掛かる電圧が4V以上あれば
 ほぼフラットな電流値となり、このまま電源電圧が60V程度まで使用可能です。 またE-501は温度特性もほぼゼロに近いので極めて安定した電流が取り出せますから、それに繋がる抵抗の両端電圧も安定化され、高精度な基準電圧として動作します。

オペアンプIC (LM358)は2回路分入っているので、同じ定電流回路をもう一組作れます。 青の2点鎖線内がそれですが、基準電圧を個々に設ける必要はないので、2組で共用させています。 確認はしておりませんが、更に数回路分を共用させても問題なはずですので、多系統の定電流回路を作る場合に設置スペースをセーブすることが可能です。

また全系統のLED駆動電流を同時に変化させたい時に、基準電圧の抵抗1本だけを変化させればOKという簡単なやりかたで実現できるのも特徴です。  例えば写真用のリングライトで大光量の物を作ったとします。 それでかなり接近した撮影をするとした場合には露出オーバーになってしまい光量を減らしたくなりますが、ここで述べて方法で実にスマートに光量の調整が可能になります。

とまあ、この回路の独特のメリットは以上のような内容ですが、一番大きなメリットは絶対的な駆動電流の安定性と損失の少ないことでしょう。 以下のテスト結果のグラフをご覧になれば一目瞭然です。


トランジスターを流れる電流は20mAに貼りついたままで微動だにしません。 また電源電圧を5Vから上昇させて行くとLEDに掛かる電圧は徐々に上昇し9V近辺から上昇は頭打ちになります。 この辺りをLEDの輝きが減少するポイントを微細に探ったところ、9.4V付近がその境目であることが判りました。 その時の定電流回路の損失電圧は0.4Vと極めて低い値になっています。 またヘヤードライヤーを使った乱暴な温度上昇テストでも電流の変化は認められませんでした。


低損失定電流駆動回路のまとめ

以上幾つかの方法をとりあえず確認・実験してみました。 更なる調整により若干違う結果が出る可能性もありますが、それぞれの傾向ははっきり出ているように思います。 そしてそれぞれには長所・短所があり、製作コストも考えると単純にどれが良いとは言えません。 それらを判りやすくするため、一覧表にまとめました。 上から掲載順序で並べましたが、各回路方式の部分をクリックするとその解説の場所へジャンプできるようになっています。

回路方式 電圧変化 温度変化 回路損失 占有面積 部品点数 部品入手 部材コスト 製作難易 総合評価
1. 個別部品レギュレーター 4点 約\150
2. LDOレギュレーター 4点 約\300
3. 個別部品電流制限 4点 約\70
4. トランジスタ電流直接制御 4点 約\420
5. 抵抗のみによる制御 X X X 1点 約\5 X
6. オペアンプによる制御 5点 約\250

総合的に見て3番目の個別部品電流制限方式はまずまずの性能で費用負担が小さいですから汎用的に使えます。 高性能さを求めるのであればピカ一は最後のオペアンプを使う方法ですが、占有面積が増えたり配線は少々ややこしくなります。 回路損失がもう少し減れば2番目のLDOレギュレーター方式も高性能で作りやすいです。 原始的な方法であり性能もそれ程高くありませんが、トランジスターの流れる電流を直接制御する方法は損失がかなり小さくなるのが魅力・・・・・ ということで、一長一短があるものの抵抗のみによる制御を除けば、使い物にならない!という物はない!というのが、取り敢えずの結論になるでしょうか?

こんな理由から製作するLED照明の使用条件、使用環境、電源事情に応じて適宜選択ということになります。 例えば、

制御性能重視: LDOレギュレーター、オペアンプによる制御
多系列照度制御: オペアンプによる制御
コスト重視: 個別部品電流制御、個別部品レギュレーター
組込みスペース: トランジスタ電流直接制御
屋内の厳しくない環境: 5.を除く全て
電源は電池: 5.を除く全て

となるでしょう。

この項の最後に、実際の製作前にテスト点灯が簡単に出来るよう、上記中抵抗のみによる制御回路を除
く5方式を一番小さな穴あき基板に組み込んだ物を紹介しておきます。 (右がその基板レイアウトです。)

これを作っておけば今後低電圧によるLED照明を構想する際、組立てる前に購入したLEDの実際のVfを元
に最適な駆動回路(駆動電流安定化回路)を決定することが出来ます。
設定電流は電源電圧が12Vの時に20mA ±1mAとなるようにしています。 他の電流値にしたい場合に
は、*印の抵抗値を変更しないとなりません。  回路定数が上で紹介したものと異なる物がありますが、
部品のバラツキを補正またはその後の調整によります。

また「トランジスタ電流直接制御型」はサーミスタによる温度補償を追加し温度上昇による破壊防止策
が取られています。 その傾向は若干の過補償となっており、25℃での抵抗値が高い物にすれば、より完璧な温度補償になるのですが、現状のままでも支障は出ないと思います。

電流値設定の抵抗*印)は2本を直列または並列にしたものとしていますが、これらの抵抗は使用する全部品の定数のバラツキにより同じ値を使用しても、同じ電流が流れるとは限りません。 従ってテスターで抵抗の両端電圧を確認し、値を補正する必要があります。 こんな点から半固定抵抗を使っても良いのですが、調整段階での使用にとどめ、最終回路では固定抵抗に置き換えるべきです。(長期使用にて半固定抵抗はスライダーの接触不良が起きやすくLEDを破損する場合もあります。)


 上の写真で2番目のLDOレギュレータ型ではLDOレギュレータは、
 表面実装部品のために裏側に半田付けされています。 赤い枠は
 その位置を表しています。

 左の写真は「トランジスタ電流直接制御型」で実装したトランジス
 タのクローズアップです。 トランジスタ本体に接近した小さな黒い
 球体がサーミスタですが、おんぶに抱っこ型というか大変ユーモラ
 スな格好になっています。

 サーミスタの2本の脚はトランジスタの両脚(ベースとコレクター)
 巻きつけて半田付けしてありますので、環境温度のみならずトラン
 ジスタの発熱にもうまく補償動作をするはずです。 更にスペースを
 占有する部品点数は電流設定に2本の抵抗を使っても、最も少ない
 4点となります。

 LEDを効率よく駆動する新たな仕掛けが出揃いました。 いよいよ
 低電圧駆動(電池駆動)のアプリを本格的に検討できます。 


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