2004/09/24
日曜大工をやるに当って設計をきちんとした方が良い!と私は述べているのですが、その設計図に記載した各種の寸法はあくまで計算により求められたもので、実際に加工・組み立てをする際にそれらの寸法がきちっと守られているかというと、現実では多少なりの誤差が切断や組立ての際に生じるのが普通です。 無論誤差が無視できる程度まで高い精度の作業をしようと考えたら出来なくはないのですが、そんなことをしていたら緊張の連続で精神的に疲れてしまい、決して楽しくはならないでしょう。
よってそれら発生する誤差に対する考え方を整理してどんな方法で対処できるのかの基本をお話したいと思います。 それらを元に応用を考えればぐっと要領の良い作業が出来て尚且つ精度の高い作品が出来ます。 但しお断りしておきますが、元々寸法精度など関係ないケースは除外いたします。
絶対誤差と相対誤差について
誤差と言っても実際には絶対誤差と相対誤差があり、この二つの考え方をしっかりと理解することが、良い意味で手抜きをするのに大変重要です。
絶対誤差とは指定された寸法(或いは量)に対してずれた量を表し、この誤差の持つ意味は最も理解されていると言ると思います。 例えばここに温度計があり測定するものの温度が30度あってその温度計で測定したら29.5度を指したとしたらそれは絶対誤差が-0.5度あることになります。
日曜大工的に言うと、この板は指定した寸法に対し+0.5mm、−0.0mmの範囲の切断誤差に収めなければならない! なんていうのも、絶対誤差を指しています。 (因みにこれをやわらかい表現ですれば、ちょっぴり大きめに切るようにして絶対に短くならないようにしましょう!というのと同じ事です。)
それらにたいして相対誤差というのは、複数の部材のある部分の寸法がそれらの部材間でどれ位ブレているかを表し、そのブレの量を問題とする考え方です。 この表現では判りにくいと思うので、実際の設計例でもって説明してみましょう。
左の図面は今週全ての製作作業が終了したバスレフ型ミニトールボーイスピーカーの設計図です。
この図面の中でB、D、Cの合計4枚は1辺を126mmとしています。
この126mmという値が実は128mmや124mmとかなり大きくブレても実際には全く問題が生じません。
但しB、D、C、のそれらの寸法の間の差異(誤差)が大きくては困るのです。
(私は±0.1mm以下にしたいと考えています。)
ここでいう±0.1mmの誤差が相対誤差です。
VICさん! そんなこと言ったって村内厳しい切断精度は保てないよーッ! との声が聴こえてきそうですが、この誤差を小さくする手があります。 それは木工機械で切断してしまうことです。 ホームセンターで切断サービスに使っているパネルソーやテーブルソーで切断できれば、±0.1mmの切断精度は容易に実現できます。(作業がいい加減でない限り)
その際既に述べたように126mmが128mmや124mmになっても実害はありません。(実際にはそんなにブレる事はないと思いますが。) 仮に128mmで切り出したら機械のの設定はそのままで全ての部材のその寸法部分を切断すれば、微量の相対誤差に収まるのです。
スピーカーの箱でこれを特に問題視するのは、側板であるAを貼り付けるときに絶対に隙間が生じては困るからです。 仮に隙間が接着剤で埋まるとしてもそれは音質の劣化に繋がるのでシビアーに考えているわけですが、似たような考え方は一般の日曜大工でも出てくるということは想像願えると思います。
閑話休題
ただいま募集中のスピーカーシステム製作講習会で木工機械を使って切断する意味と重要さがここにあります。
うまく箱が組みあがらない!、隙間があちこちに出来た!などはこの相対誤差に起因するものが多いからです。 更に工作機械を自分で実際に使って作るという体験がより深い理解に繋がります。 通常はこんなチャンスはまずないでしょう。
今までに全くないスタイルの講習会として企画した意図がここにあります。
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以上で2種類の誤差について御わかりいただけたと思いますが、それらに対するアマチュア的対処法を簡単に述べます。
絶対誤差にたいしての対処法
なあーんだと言われそうですが、手引きノコギリで切断する場合には、少々大きめに切っておきその後カンナで削って所定の寸法に収める。
これが王道です。 そうするためにはノコギリの使い方で述べている切断する際の姿勢を守り、切断線を効き目で見てそれを超えないように切り進むことでちょっぴり大きめに切れます。 私は効き目が左なので、常に切断線を左目で見たいために、線の右側を切ることにしています。 効き目が右目の方は線の左側を切った方が良いでしょう。 当然ながら線引き(墨入れ)は線のどちら側を切るのか考えてやらねばなりません。
相対誤差に対しての対処法
先ほど述べたように木工機械により得られる精度には到底適いません。 従ってホームセンターなどで切断してもらった方が遥かに簡単ですが、手引きノコギリで切断後、それらの部材をクランプで束ねて片方を揃えカンナで削る方法で実現することも可能ですが、重ねる枚数が多いとカンナを水平に掛けられなかった場合には、悲劇的なことになります。 やはり木工機械での加工が安全でしょう。
組立て上の誤差と修正方法
これはほんの一例ですがここで述べる方法を使うと絶対誤差まで
気楽に考えられるようになります。
左の図をご覧ください。 簡単な例ですが、ロの字型の枠を作ろう
という設計図です。
60mm幅厚さ20mmの部材から、200mmと80mmの長さにそれ
ぞれ2本ずつ切り出して接合すればよいのですが、私が作業する
としたら80mmの部材は細心の注意を払って高精度に切断する
でしょうが、200mmの部材は201mm位長めにしかも大きな注意
をはらうことなく気楽に切断します。
これは良い意味の手抜きであるだけでなく結果としてこの方法の
ほうが精度が高く外観も良くなる可能性が高いからです。
その理由は左の図をご覧ください。
設計図の円内部分の実際に組立ての様子を表しています。 枠の総幅が200mmに
なるよう接合すると、200mmの部材は201mmなどと長めに切断していますから図
のように突出させないとなりません。 この突出部分を接合後にカンナや木工ヤスリ
で削って所定の寸法に仕上れば、繋ぎ目の段差は容易になくなります。
最初から200mmぴったしに切断しても段差ゼロで接合するのはほぼ不可能ですし、
万が一200mmの部材が出っ張るのではなくて逆に引っ込んでしまうと段差の修正
は極めて困難になります。
先ほどのスピーカーの設計図で言えば、Aの奥行き150mmと高さ639mmやDの奥
行き138mmは実際には1mm程度長く切断して、組み上げ後に出っ張りを削って仕
上げました。 その結果がどうなったかは塗装後の写真でご理解願えるでしょう。
今回の解説はどちらかと言えば高騰戦術です。 設計図を描けるようになったら、寸法値に絶対誤差が大事かそれとも相対誤差が大事か或いは誤差を気にしないで済むかの印を付けてから板取り検討をするのが良いでしょう。 これらをマスターすると精度を出すために切断組立てにかりかりにならずとも結果として精度を出せることが可能になります。
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