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ワゴン型収納棚
2006/05/19

構想

相変わらず2つの多目的置き台を作業台としてリビングルームを主たる作業場としている私ですが、連続して作業するとなると2階に道具・工具の保管場所がある現在では毎日全ての道具・工具を上げ下げしなければならず大変億劫です。

そして最近は連続して作業する場合には作業台の上がそれらの道具・工具の一時保管場所になってしまっていますが、たかだか300mm x 600mmの面積ですから2台使ってもそのスペースはたかが知れてる似も拘わらず、ごちゃごちゃ汚らしく見えるために家内には不評です。   また大きな板を切断する場合には流石に2台の作業台だけでは材料を支えきれないことがあります。 そんな時には椅子を支えの補助に使いますが高さが違うため余り都合がよくありません。

 こんな問題を解決しようとワゴンスタイルの小型の収納棚を作ることにしました。 
 ワゴンスタイルという意味は底にキャスターが付いていて簡単に移動が出来ることを意味します。
 製作構想のきっかけは上記のような次第ですが、一般性を持たせたいので「ワゴン型収納棚」
 という名称にしました。  多目的の移動可能な収納棚として使えるよう考えていますが、恐らく
 お子様をお持ちの方は子供部屋でおもちゃやお子さんの色々な道具を整理させるのにもってこい
 かもしれませんし、このワゴンそのものが大きなおもちゃになるだろうとも想像しています。

 日曜大工入門テーマとして位置付けますので、製作難易度は高
 くありませんし材料費も抑える方向で考えており、主材料はワンバイフォー材15mm厚のMDFです。  外観イメージは左のようなものですがその寸法図は右の図のようにまとめています。  それらのポイントを簡単に説明します。 

ワゴンの幅は663mmというしかる中途半端な値になっていますが、最初は余り考えずに600mmで図を描きだしました。  ところがその寸法では棚の中に入らない道具が出てきました。  使用頻度の極めて高い替刃式ノコギリ「翔265」がそれで、長さが605mmあります。 そこで棚の幅を625mmとしてワンバイフォーの厚み19mm x 2を加算し663mmということになりました。  発想がそのようなところにありますから、他の目的で使う場合には更に長くしてもまたは短くしても構いません。 

棚の側板はワンバイフォー材を使ったフレーム構造です。 そしてトップ部分も含む棚の段数は4段として15mm厚のMDFを使いますが66mm間隔で棚の高さを可変できるようにしています。 その可変は幅50mm9mm厚の横板で、左右に9枚ずつ内側に貼られます。

また棚板の前後には移動中に内部の物が落下しないよう幅30mmの板を貼り付けます。

棚の高さ可変の間隔が66mmとなったのには寸法図の一番左側にコメントした理由があります。 床から419mmの高さに図中の棚板の上面が来るようにしていますが、実はこの419mmという高さは作業台の高さと同じです。 つまり図中の棚板が大きな板材を加工する際の支えのひとつになる!という按配です。  従って一般の使用目的では棚可変の間隔も66mmに拘る理由はありませんので、好みの値に変更可能です。

この作品で私が心配しているのは横方向の撓みです。 殆どロの字型の構造ですから横方向に撓みやすいので、上面の中央横方向と底板の裏側に(赤で補強としている部分。)撓み防止の補強を入れていますが、これらだけで撓みが抑えられるかどうか今の所確実ではありません。  一番簡単なのは裏板を貼ってしまえばよいのですがそれでは両面使用できなくなるので、この点だけは作りながら確認し駄目だった時には対策を考えることにします。

また高さ可変できる棚板3枚は引き出し的な使い方が可能ですが、それは製作詳細のところで改めて触れます。



2006/05/26

製作 1

 製作の詳細に入る前に構造を少し変更しましたのでそれ
 について触れておきます。
 左が最終的な寸法図で作業図面として使うため部材ナン
 バーを入れてあります。 この中で真中の側面外観図を
 見ると上と下の横板(BC)は縦の板(A)の一部を欠き
 とって接合するように変えてあります。  こうした理由は
 ネジによる締結を容易にするためです。

以前の構造では、この部分は木ダボを使って接合することを考えていました。 
しかし容易に作ることを重要視するとネジで締結したくなります。 そうした場合元のままですと120mm以上の長さのネジ(しかもかなり太くなる!)が必要になり、板から飛び出な
いように打ち込むのは恐らく困難です。 そしてネジの頭が見えるのも面白くありません。

そこで欠きとってやることにより必要なネジの長さを短くししかもネジの頭を見えなくするた
めネジそのものを埋め込んでしまいます。  この結果使うネジは50mmあれば充分で太
さものスリムな物になり楽に締めこめます。
ネジの頭を隠すにはラミン材で作られた直径8mmの棒を使います。 当然ながら板の木口
にはの穴をあける必要がありますが、この方法は実際にやってみると意外に簡単に出
来ます。(右の図を参照)
このテーマの製作上の鍵は殆どこの締結部分ですので、後ほどお見せする写真ではかなり丁寧に説明します。

今回板取り図は掲載しませんが部材寸法はこちらを参考にしてください。
さあ百聞は一見にしかず!です。 以下の写真と解説にて作業手順と要領をご理解ください。

(註: カメラの調子が悪いのと悪天候の影響で撮影した写真の発色は最悪になっています。 ご容赦ください。)

切り出したワンバイフォー材を使った部材。 切断には翔265で一部ソーガイド併用と電動ジグソーとし、電動ジグソーでの切断面はカンナと替刃式ヤスリで研磨し寸法出しをしています。

AC50mmのスレンダースレッドネジで締結するとネジはこんな位置に収まります。  ABも同様です。

ネジ締結の最初の手順。 の木工ドリルで深さ25mmの穴を1箇所辺り2個あけます。 ドリルに巻いたビニールテープは深さを知るためです。

4枚のA両端にこのように穴があきますが注意としては極力垂直になるようにすることです。

穴の底の中心には円錐状の窪みがあるので、50mmのスレンダースレッドネジを入れて探り、中心に手回しで捻じ込みます。 鉄工ドリルであけると明瞭な円錐状の窪みが出来ません。

そうしたら電動ドリルでネジが飛び出さない範囲で尚且つ中心を維持するよう締めこみます。

この写真には見えませんが、C又はBAをぴったりと当ててネジを完全に締めこんでしまいます。  これで締結が出来ました。 (木工ボンドは使いません。)

続いてその穴に木工ボンドを少量垂らしこみます。

その上でのラミン棒を差し込んで玄翁で底当りするまで打ち込みます。(約25mm入る筈)

左側からのこぎりを当てて掃うようにラミン棒を切断します。 左からとしたのは右利きの場合、こうすることによりノコギリの刃先で怪我をする危険性が減少するためです。

ラミン棒を切断後はこのようになります。  ラミン棒は僅かに突出していますが後で成形します。 同様に他の穴もラミン棒で埋めてしまいます。

Aの上部角を電動ジグソーで丸く切断します。

その後にラミン棒の突出面はカンナで削り落とした後に替刃式ヤスリ(M-20GP)で研磨して側板枠の組立ては完了です。

次に底板EF45mmスレンダースレッドネジ4本で締結します。 木工ボンドは不要です。

L字型に組み立てたEFをこのように置き、その上にGを当てて4本の30mmスレンダースレッドネジで締め付けます。Gの位置は端から120mm内側にずれた所です。)

Gの反対側下にもう一組のEFで作ったL型の部材を挟み込み、曲尺を当てて正しく直角に揃うよう調整した上で、ネジで固定します。
最後に残りのEを中心に挿入して同様にネジで固定します。 これで最下段の台座部分が出来上がりですが、裏から見たのがこの状態です。

ひっくり返すとこんな具合で、すのこ板のように見えますが上面に見えるネジの頭はFに固定した8本のみです。

組み上がった台座部分に側板枠を当ててみました。 実は側板枠の接合部には極僅かなガタがあります。 これは材料の反り、加工誤差、組立て誤差をどこかで吸収させるために利用します。  側板枠を木工ボンド併用でがっちりと締結しなかったのはその修正ができるようにと言う意味でした。  後ほど内部に貼る棚板受けの接着でそれらを実行し全くガタのない物に仕上がる予定です。



2006/06/02

製作の続きから完成まで

残る作業で重要なのはどうしても若干残る捩れをどこで修正するかにあります。  その第一のポイントは側板枠と台座の仮固定で、このときに台座を水平に置いたときに側板枠は垂直に立つかどうかにあります。 そうならなかった場合には側板枠を外し側板枠底部をカンナで削って調整します。  再組立てし側板枠が垂直に立つことが確認できたら真上から側板枠を見下ろして見ます。 多分多少の捩れを発見するかもしれませんがそれは上部の固定棚を締結するときに修正します。

第二のポイントのは、「上部の固定棚締結の際に捩れを側板枠組立てのがたの中に吸収してしまう!」点にあります。 ほんの少し荒っぽい方法ですが、真上から見て発見した捩れは固定棚が正確な長方形になっていれば、締結時にその捩れはがたに吸収されます。 もしもがたが無かったとしたら、上部固定棚を締結すると側板枠には再び垂直に立たないような力が加わってしまいます。 これが側板枠を組み立てる際僅かながたが自動的に出来るよう意識して木工ボンドを使わなかった理由です。

多少の反りを許容しないとならないワンバイフォー材を使いこなす高等戦術とも言える方法で、この応用は色々出来ます。

ところでワンバイフォーで作った側板枠をMDFの固定棚にネジで締結するわけですが、MDFはネジがバカになり易い材料でしかも木口面は割れやすく締結力が不安定になります。  これを避けるには細身のネジ(コーススレッドは不可。 スレンダースレッドネジの方が良い!)を使うこと、あまり深く捻じ込まないこと、そしてゆっくり締めこむことです。  こうしても締結部分に横から力が加わると一編に割れてしまうことがありますから、木工ボンドの併用が不可欠です。

私が密着度の保持に良く使う隠し釘は、細いにも拘わらずMDFの木口に打ち込んだときにはスレンダースレッドネジよりもひびが入りやすく、締結力が低いのでこの場合は適していません。 (これは後ほど実験結果の写真でお見せします。)

ここまでうまく進めれば捩れは殆ど無く変なぐらつきも無い骨格が完成するはずです。

その後棚受け板を内側に貼り付けますが、高い締結力を必要としないため22mmの隠し釘を併用して木工ボンドで固定します。 板の枚数が18枚と大変多いので作業時間は掛かりますが難しいことはありません。  ところでこれらの板を側板枠組立て後にすぐ貼り付けた方が簡単ではないかと考えられる方がいるかもしれませんが、それは駄目です。  理由は側板枠の捻れ矯正が出来なくなってしまうためで、その理屈は皆さんでお考え下さい。

最後の加工作業は落下防止の板を締結ですが、これも22mm隠し釘併用で木工ボンドにより接着しています。 ひびの入りやすいMDFの木口に打ち込むわけですが、MDFに刺さる部分の長さは8mmと短いのでひびに至ることは殆どありません。 また締結力は期待できませんがこの場合密着保持が目的ですので、木工ボンドが完全硬化すれば問題ありません。

最後に底にキャスターをネジ止めして完成なのですが、引き出し的な使い方をしたとき棚板全体を引き出して落下するのを防止したければニッケルダボを使ったストッパーを追加してもよいでしょう。 またスムーズに引き出したい場合にはスライドレールを使用するのがベストですが、この場合は棚板受けの板は使わず替わりにレールを固定する位置に横板をはさみこむ必要があります。 スライドレールを使用する分材料代は少しかさみますが、大変使い勝手が良くなります。 

それと私の使用目的では塗装の必要性はありませんでしたが、一般の収納家具として使うのであれば塗装は是非とも施すべきです。

以上の説明では理解しにくい部分も多々あるかと思いますが、以下の写真とその説明を併せてご理解ください。

50mmの棚板受けK 18枚)を貼り付ける位置を線引きしておきます。

もうひとつの予備加工はトップの板(H625mm)に補強の板(D)を接着し45mmのネジで固定しておきます。


 ところでMDFの木口にはネジや釘を安易には打てません。 最良の場合でもひびが入って締結力が低下し、最悪の場合
 には割れてしまうためです。  次の作業で側板枠をHの木口に圧着保持しないとならないのでそのベストな方法を探る
 べく実験をしました。 その結果を次の写真でご覧下さい。




 

 

左上は36mmの隠し釘を打ち込んだ場合です。 太さが1.24mmしかないにも拘わらず僅かなひびが入っています。 上は45mm隠し釘の場合で、太さは1.47mmと僅かに太くなっただけですが、ひびの量は増大しています。 そして左は太さ3.3mm、長さ45mmのスレンダースレッドネジをゆっくりと30mmの深さまで締めこんだ例で、太いにも拘わらず36mm隠し釘と同程度のひびで済んでいます。

この結果では36mm隠し釘が最も安全といえますが、実際に締結に寄与するのは、36 - 5(頭の折る部分) - 19(ワンバイフォーの厚み) = 12mmしか残りません。 その点ではスレンダースレッドネジのほうが遥かに締結力があり、この例では30mm捻じ込んでいますが、もう少しネジこむ量を減らせばひびの量も更に減らせると考えられます。

そこで今回は45mmのスレンダースレッドネジを使うことにしました。(締結に寄与するのは、45 - 19 =26mmです。)
 

 

次の作業は確認しやすくネジも打ち込みやすいのでご覧のようにテーブルの上に載せてやりました。

側板枠を台座に仮固定します。 使ったネジはスレンダースレッドネジ50mmで黄色矢印の6本です。 木工ボンドは使いません。

その上でAの端上下(赤矢印先)が2枚の側板枠で完全に平行になっていることを確認します。

もし平行にならないようでしたら仮固定をばらして側板枠の下側の角の直角度を調べて修正する必要があります。

その結果OKとなったら更にネジを2本追加して(左下の写真参照)本締めとします。 この場合も木工ボンドは使いません。

尚真上から見ると側板枠は僅かにねじれていることを発見していますが、次の作業で矯正します。
 

側板枠は合計で8本の50mmスレンダースレッドネジで台座に固定されています。 木工ボンドは使いません。

予め組み立てておいたDHを上部に木工ボンド併用でネジ止めします。 黄色矢印は50mm、赤矢印はMDFに締結するので実験結果の判断で45mmを使いました。

完成した本体枠。 途中で発見した捩れは矯正されて殆どありません。 上部のDHだけを木工ボンド併用したのは、MDFに対してネジだけで締結するのは経時変化で割れたり隙間が発生したりする可能性があるからです。 従って木工ボンドが完全硬化するまでは問題を起こしますから、最低でも3時間は寝かせてから次の作業に入る必要があります。

尚上部の補強(D)の挿入効果は絶大で、長手方向の撓みはかなり減少し実用性を損なうことはなくなりました。

次は落下防止の幅30mmの板の切り出しです。 手間の3本と奥の3本は長さが違っていますが、実は奥の短い方は2本で長い方は4本が正解で、後で切りなおしています。

棚受け板18枚を切り出しました。 これらの板の幅は正確に50mmでないと棚受けのがたが増大したり棚が出し入れできなくなったりします。

HH'、そしてKは何れも9mm合板で作りますが、替刃式ヤスリM-20GP)にて木口を丁寧に研磨しておきます。 他の方法で研磨するとシャープな感じが無くなりだれてきたりカマボコ状になります。

予め線引きした線に沿ってKを木工ボンドで接着し22mm隠し釘で圧着保持しますが、棚板が挿入される隙間には写真のように15mmMDFの端材を差込み僅かな隙間が残ることを確認します。

18枚の棚板受けを貼り付け終わった状態です。 外観的にはご覧のように横の面がすのこのような見え方になります。 
Kの端は裏側はAの木口と同一面で、前面は写真のように若干10mm引っ込むようになります。

Lの木口にHH'を木工ボンドで貼り付け22mm隠し釘で密着保持します。 H'Lより幅が狭いですが?

H'Lの両端から9mm引っ込めて接着します。 後で棚板を出し入れするときに棚板がAに引っ掛かるようでしたら、矢印の部分を僅かに斜めに削ってやります。

組み立てた棚板は前面からこのように挿入できます。 こんな加工は面倒なようですがH及びH'は収納物の落下防止のみならず、棚板の撓み防止と棚の出し入れの際棚がAに引っ掛からないようなガイドの役目もする重要な役目を果たします。

キャスターは設計時より1段小さな物を使いましたが、1個辺り最大荷重20kgなので強度上の問題はありません。 但し上背が56mmから50mmに減少するので、5.5mmの合板を切って高さ調整の下駄としました。

取り付けは現物合わせですが、矢印先に約2mmの隙間が出るよう固定しています。

もうひとつの壁も同様で車輪を回しても当らないよう約2mmの隙間を残しています。

キャスターを取り付けた後の床との隙間は10mmしかありませんので実際にはキャスターは見えません。

私が拘った部分のひとつ。 棚板のある高さで作業台(右側)と全く同じ高さになる所があります。

それを利用すると材料を受ける助けになります。 このように材料を切断しても切り落とした材料が落下することはなくなります。

こんな風に棚板を途中まで引き出せますので、作業中も道具などを取る、置く、いずれも使い勝手がかなり良いです。

ワゴン型収納棚を作るのに使った道具・工具、材料などを全て載せてみました。  まだかなりゆとりがありますから十分実用になります。 実際にはこの状態でがらがらと押して、玄関横のクローゼットにそのまま入れてしまいます。(左下)

私は皆さんに紹介するため常に写真撮影をしながら作業を進めるのと、今回は手持ちの材料を使ったため全て自前で切断しましたから、正味で3日掛かりましたが、材料をホームセンターで購入するのであれば切断してもらえますから、その場合には実作業日数は2日以内で作れるでしょう。 

また冒頭に申し上げたようにこのテーマは私のちょっぴり特殊な目的で作っていますが、構造的にはキッチンワワゴン、おもちゃの整理棚を始め大変応用が利きますから皆さんの生活に合わせて再設計し試していただきたいと思います。 その場合には出来上がった表面をきちんと研磨し塗装すれば、立派な物になります。
----- 完 -----