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締結材料(ネジと釘)
2004/02/06
「両刃ノコギリにトンカチと釘」
の組合せは家庭における大工作業の基本中の基本の組合せであった。
しかしその中の釘はもはや前時代の遺物といって差し支えない位置付けになってしまっている。 実際に私自身は材料と材料の
締結を目的とした釘の使用は10年程前に完全におさらばした。 そしてもう2度とそれらのご厄介になることはないと思う。 その理由には幾つかあり、
1.ネジの方が締結力が高く長期間締結力を維持する点で優れている。
2.間違って締め付けてしまった場合のやり直しが簡単で、ネジは簡単に外せる。
の2点に集約される。
1.
について少し理屈っぽい原理的な説明をくわえると、釘の持つ締結
力
(緩みにくさ)
は、釘の表面と木材間の摩擦力にのみ依存している。
(左図の
F
はそのまま引き抜く力となる。)
釘を引き抜こうとする力は打ち込んだ釘と平行
に掛かるからである。
この摩擦力を高めようと釘の首辺りのところに
段差と言うか僅かなリング状の出っ張りを設け
た釘もあるが、摩擦力増大にはあまり寄与しな
い。
(右写真参照)
釘の中には引き抜き力の増大を図ったスクリュー釘というものがある
が、これはピッチを粗くしたネジのような物で確かに引き抜き力は高ま
るものの、間違って打ち込んでしまったときに抜けなくて大変なことにな
る。
(抜けやすいのは意味がないのだが!?)
昔小学生の頃大工さんが釘を沢山口に含んでトントンと打っているのを
見て不思議に思ったことがあるが、あれは唾で濡らして滑りやすく
(打
ち易く)
するためと釘の表面を早く錆びさせて摩擦力を上げようという工
夫だったのではないかと思った。
(大工さんには確認しなかったが)
一方ネジの場合にはどうかというと、引き抜く力は左の図のように
F1
と
F2
という2つの力に分散してしまう。
F1
はネジの斜面に平行な方向
で、
F2
は斜面と直角方向である。
F1
はネジを引き抜く力として作用するが、元々の
F
より大幅に力が弱くなる。 一方
F2
の方はネジの表面に押し付ける力となる
ので、これは摩擦力増大の効果をもたらし引き抜きにくさが増加する。
ネジの傾斜が立って来るほど
(ピッチが細かくなる。)
分散された
F1
の比率は
F2
に対して小さくなるから引きにくさは増大する。
従って実際には引き抜くことは不可能であり、引き抜く力を上げるとネジが緩むより木材の周りが破壊されて引き抜けるという状
態しか起きない。
2.
については、釘を引き抜くのに釘抜きを使うのに対しネジの場合には電動ドライバーの逆転で実現ということになるが、釘の
場合埋め込んでしまった時は、
周りの木材を削らない限り引き抜けない!
なんていうことになるがネジの場合には、捻じ込
めたのであれば間違いなく緩められるし力任せにという必要もないから極めて簡単。
以上でもう十分にネジを使った締結の優位性はご理解願えると思う。 実際の所最近の建築では釘からネジへの転換が急速に進んでおり、釘に依存しているような工法であったら質を疑っても良いのではないかという気がする。
(一部に釘ではないと駄目な部分も多少は残ってはいるが。)
ということでネジの優位性は絶対であるとして実際にどのようなネジを使えばよいのかに移りたい。
1.コーススレッドネジ
建築用に急速に普及したネジがコーススレッドネジで、長年なじみ親しんだ木ネジと比較すると、ネジ
のピッチが粗いことと、先端にナイフ状に削り取った構造となっている点が大きく異なる。
家屋の柱や梁など構造体を締結する目的であるので、太めで引っ張りやネジレに対する強度がかなり
高い。 また下穴無しで締めこむことが出来先端のナイフ状の切り欠きは捻じ込みを容易にしてくれ作
業性が大変良い。
太くて長い物を使う可能性が高いコーススレッドでは、電動ドリルドライバーでは締め付けトルク不足でインパクトドライバーが欲
しくなるケースが多いが、我々の日曜大工でこのネジを使用するケースはかなり稀である。
2.スレンダースレッドネジ
軸細コーススレッド、スリムビス、Fビス、造作ビスなどメーカーにより名称が色々あるが、コーススレッ
ドネジの一種である。 建築用としてはコーススレッドネジの構造用とは異なり、様々な造作物の組み
上げに使われている。 強度をそれほど重要視しない用途のためか、硬い木材などに捻じ込むと折れ
てしまう
(捻じ切れる)
ケースがたまに生じるが、家具や日曜大工用の対象となる工作物用には十分な
締結力を有し圧倒的に主力のネジである。
コーススレッドネジとの一番の違いはネジの軸が細いことであり、短い物では3.3φ、長い物で3.8φとなっている。
(参考までにmini-Shopで扱って扱っており、25mmから75mmで5mm刻みの11種類あります。)
何れの物も最も廉価な電動ドリルドライバー
FDD-1000
でも十分に締め付け可能だ。 長さの選び方としては、締結する板厚
の2倍から3倍の長さを標準と考えればよい。 例えば
12mm
の板なら
25mm-35mm
を、
18mm
の板なら
35mm-55mm
、
25mm
の板なら
50mm-75mm
といった具合だ。
使用上の注意としては頭が皿状になっているがこの皿の面が木材表面下に深くめりこまないよう注意したい。
(ネジ穴をパテで
埋めるような意図的にめり込ませる場合は別として)
その理由はネジを抜きたくなったときに、穴の周りが大幅に傷付いてしま
うからである。 電動ドリルドライバーでは締め付けトルクが調整できる物が多いので締め過ぎ防止は容易だが、インパクトドライ
バーを使う場合にはトルクリミッターが付いていないので特に注意を要する。
2つの材料を締め付ける際に2つの材料間に隙間が出来たまま締め付けると、いくら締め付けてもその隙間は残ったままになる
ので、完全な締結を目指すのであれば、上の材料に貫通穴をあけてネジが上の材料には食い込まないようにしてやると良い。
又締め付け時に2つの材料が横方向にずれて締め付け位置が狂うことも置き易い。 このような場合には予め隠し釘で締結位
置を確定してからネジ締めすることによりずれの防止を押さえることも出来る。
(詳しくは後述します。)
また下穴あけは材料の割れの防止にも繋がるので、若干面倒ではあるが、割れの出やすいムク材の締結時には是非とも実施
したい。
3.タッピングネジ
タッピングネジはもともと金属などに予め雌ネジを切ることなく捻じ込むことが出来るネジとして生まれ
てきたが、木工の世界でも従来の木ネジよりも締結力が高いことにより多用されている。 木ネジとの
違いは木ネジが先端方向に緩いテーパーで細くなるのに対し、先端部分を覗いた大半の軸径が一定
していることで、これが引き抜き強度を高くしている。
日曜大工においてはその引き抜き強度の高さを利用し家具金物の取り付けな
どに使うと良いが、細めの物は上記スレンダースレッドネジの替わりとして薄
い材料
(
10mm
以下)
の締結に使うと良い。
4.隠し釘
ネジ万能であり釘など要らない!と言っているにも拘らず特別な目的には釘がまだ登場する。 ここで
は多数ある釘の中から一段と日曜大工の腕を上げられる材料として隠し釘について解説しておく。
隠し釘は一時的にに締結する目的で使う釘であり、
その目的を果たしたら頭
を折ってしまう!
という使い方をする。
大工さんがこの釘を使いプリント合板や銘木合板を壁に貼り付ける場合に使用
する。 この場合壁への固定は木工ボンドが主役なのだが木工ボンドが固まるまでの仮止めに使い、
プラスチックの付いた頭先端
5mm
の部分を玄翁で横から払うように打てば簡単に折れて軸だけが残り
釘が目立たなくなる!という仕掛けだ。
細い釘を使って木工ボンドが乾燥後引き抜けば同様の目的を達することは可能だが、引き抜く時に材料面に傷が付きやすく作
業性が良くないし、太さも隠し釘よりも太くなってしまうので穴が目立つ。
私はこの隠し釘の作業性のよさを生かして日曜大工に全面的に利用している。 それは仮止めの目的以外に接合位置の精度
を高める点にある。 詳しい例は最近作った
ベッド横の引き出し付き収納ボックス
の一節をご覧頂きたい。
手法としては
1.締結する材料の上側になる材料に
予め隠し釘を打ち込み先端を
1.0-1.5mm
程度出しておく
。
2.締結する相手側に木工ボンドを塗りそれに隠し釘を打った材料を当てて
位置を十分に調節・確認してから押し込む
と、飛び出
た隠し釘の先端が相手側に刺さり横方向にずれなくなる。
3.その後隠し釘を打ち込んでやれば
精度の高い接合が実に容易に実現できる
のである。
木工ボンドを塗り締結材料に当てて釘やネジを打ち込んだら、
横方向にぬるっとずれて位置が狂う!
こういった経験をかな
りの方がお持ちだろうが、この方法でやれば完璧そのものの位置合せがきわめて容易だ。
接合力をそれほど求めない時には木工ボンドが乾燥したら隠し釘の頭を落とせばよく、高い接合力が必要であれば隠し釘を打
ち込んでからネジを締めればよい。
(無論横方向にはずれない!)
但し隠し釘の使用時には2つのことに注意しよう。
第一は斜めに打ち込んでしまったものは横から叩いて修正できないと言うこと。 曲げた場合も同様で、何れの場合にも釘の先
端が折れて用を成さなくなる。 従って打ち込みは玄翁を垂直に打ち下ろさねばならない。 僅かな力で刺さりこむから、慎重に
作業されたい。
第二は最終的に残る釘の長さは公称の長さよりも
5mm
短くなる。
22mm
、
36mm
、
45mm
などの長さの隠し釘が良く利用さ
れるが、それぞれ最終的には
17mm
、
31mm
、
40mm
の長さしか残らない。
よって
22mm
の物は
8mm
以下の板厚用、
36mm
は
12mm
以下の板厚用、
45mm
が
15m
m以下の板厚用と考えておいたほう
が良い。
隠し釘はかなり割高な材料ですが、
mini-Shop
では一般的な価格よりリーズナブルな50本入り/100本入りパックを扱っていま
すので是非ご利用ください。
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