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研磨作業とヤスリの使い分け
2008/05/09

以前研磨用道具としてのヤスリについて一度解説しているのですが、研磨作業には大別すると3種類あり、それぞれの作業によってヤスリを使い分けないとなりません。 ここでは研磨作業の種類別と言う切り口で、解説してみようと思います。

3種類の研磨作業とは何かというと、成形研磨、仕上げ研磨、重ね塗り前の研磨です。  どうも色々な方たちと話をしているとこれら3種類のうち成形研磨はやっていてもその後の仕上げ研磨や重ね塗り前の研磨はやられていない事が多いように思います。  仕上げ研磨、重ね塗り前の研磨は塗装の質に多大に影響しますが、その重要性を知らずにいる場合とはなから塗装をあきらめている為に良く理解されていない場合が多いように思います。 それら3種類の研磨の目的について先ず解説しましょう。

成形研磨
この工程はカンナ、電動トリマーなども併用しますが、部材の寸法を設計値どおりに削りだす、直角出しをする、傷・凸凹を削り取る、面取りをする、などが作業目的になります。 ヤスリの粗さとしては#120近辺が研磨効率(研磨速度)を考慮しますが、成形量が大きい、材料表面が粗い、大きな傷や凸凹があって取り除きたい場合には#60とか粗目ヤスリで削るなど初期段階で極低い番手の使用が効率の点で必要になります。 研磨終了は#120を目標とします。

仕上げ研磨
この工程は必ず塗装作業の直前にすることがよいでしょう。 というのは余り前の段階でしてしまうとその後塗装作業に入る前までに材料表面に傷を付けてしまうことがあるからです。 ヤスリの目の粗さとしては#240-#400で磨き上げるのが標準で、工芸品的なものでは#400、一般には#240で磨き上げれば十分だと思います。 完全に#240で磨き上げると材料面はつるつる状態になります。 もしもこの段階で傷や凸凹を何とかせにゃ!ということがあったらそれは「成形研磨不十分!」と考え、成形研磨のやり直しをしたほうが良いでしょう。

重ね塗り前の研磨
2回目以降の塗装をする前に行う研磨で、#400以上の目の細かなヤスリを使います。 ここでいう1回目の塗装はステインでの着色も含みます。 仕上げ研磨が終わった段階で材料表面はつるつるになりますから、この工程は不必要に思えるかもしれません。 しかし木材に塗料を塗ると塗料を吸い込んだ木繊維は膨張して立ち上がってきて、塗料が乾燥後かなりざらざらになってしまいます。(#120以下に粗びてきます。)

これを削り取るのが目的のひとつで#400で表面をさすってやるように研磨すると簡単につるつるになり強研磨の必要はありません。 尚塗装斑を削り取ったり、塗料の細かなぶつぶつを取るのも目的になりますが、#400で簡単に取りきれない場合には塗り斑を少なくする、塗り厚を押さえるなど塗装作業を改善する必要があります。  またこの研磨作業は塗装面が完全に乾燥した状態でやらないとなりません。(完全乾燥していれば研磨屑は細かなさらさらの白い粉となります。 乾燥度が低いと研磨屑がよれてぶつ切りの糸のようになります。) 尚この研磨屑はサンドペーパーの目詰まりを起こしやすいので、それを大幅に改善できる空研ぎペーパーの使用を推奨します。

以上が3種類の研磨作業ですが、それらに対応する研磨の道具を一覧にしたのが次の表です。 これを見ると実に様々な道具がありますが、その理由は研磨効率と研磨の質に影響するためと申し上げておきましょう。 道具名が青くなっている物は私の経験で必要不可欠と考える物です。

研磨工程 研磨の道具 平面(大) 平面(中・小) 木口面 凸曲面 凹曲面 面取り
成形研磨
#120以上が目標
電動トリマー - - -
カンナ - - - - - - - - -
電動サンダー #60-#120 #60-#120 - - - #60-#120 - - - - - -
粗目木工ヤスリ - - - 初期のみ 初期のみ 初期のみ - - - - - -
替刃式ヤスリ - - - M-20GP M-20GP M-20GP 丸棒各種 M-20GP
ハンドサンダー #60-#120 #60-#120 #60-#120 #60-#120 - - - #60-#120
スポンジ研磨剤 - - - - - - - - - 中目 中目 - - -
仕上げ研磨
#240以上が目標
電動サンダー #240-#400 #240-#400 - - - #240-#400 - - - #240-#400
替刃式ヤスリ - - - - - - - - - - - - 丸棒各種 - - -
ハンドサンダー #240-#400 #240-#400 #240-#400 #240-#400 - - - #240-#400
スポンジ研磨剤 - - - - - - - - - 細目 細目 細目
重ね塗り前研磨
空研ぎペーパーを推奨
電動サンダー #400以上 - - - - - - - - - - - - - - -
ハンドサンダー #400以上 #400以上 #400以上 - - - - - - - - -
スポンジ研磨剤 - - - - - - - - - 極細目以上 極細目以上 極細目以上


補足説明:

 1.カンナの使用
   プロ級の腕前であればカンナだけで全ての平面を仕上げ研磨状態に持って行けますが、刃研ぎの技術とカンナの調整技術
   は難易度が高いので、幅の狭い面の切削のみに使用することで表現しています。(技術が伴わない私を含むアマチュア向
   けの考え方です。)


 2.粗目ヤスリ
   目の粗さは#30-#40程度と大変粗いので初期段階のみで使用し成形とは言えどもこの作業を粗目ヤスリだけでは完了でき
   ません。

 3.木口面、小さな面積部分の研磨
   替刃式ヤスリ以外は研磨面が凸面になりやすいので注意が必要です。

 4.凹曲面の仕上げ研磨
   替刃式では理想的な細かさにはなりません。 スポンジ研磨剤或いは目の細かなペーパーを細い棒に貼り付けて使うなど
   工夫を必要とする場合もあります。

 5.電動サンダー
   研磨速度が速いのが優位点ですが、削りすぎの危険性を同時にはらんでいます。 よって仕上げ研磨では大面積以外では
   一考を要します。

良好な結果と優れた作業効率を生む研磨作業を真剣に考えると、万能な研磨用の道具という物は存在しません。 特に大きな面を仕上げるのにカンナの使用は不可能(技術不十分なアマチュアの日曜大工では!)と考えるVIC's D.I.Y.的なやり方では、研磨の道具は大きな面の仕上げをカンナの替わりに実現する重要な道具です。

その意味で、電動サンダーハンドサンダー粗目木工ヤスリ替刃式ヤスリ各種スポンジ研磨剤 に適切な番数のサンドペーパーは、絶対に必要な道具になります。 変わった成形や彫りこみが簡単に出来る電動トリマーはそれらが揃った後に検討すべき道具です。


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