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研磨用道具の使い分け
2005/11/04

日曜大工でどんな物を作ろうが仮にそれが大きかろうが小さかろうが、研磨工程無しで完成する物は先ず無いといってよい。 その「研磨」という言葉だがこれがまた言いえて妙なる表現だ。 「研」はトグ或いはコスル事を表し「磨」は言うまでも無く磨く事でありそれらの違いはその作業後の表面の粗さの違いになる。 コスル場合には表面にザラツキ感が残るがミガク場合には表面には艶が出てくると言ってよいだろうか。

ということは研磨作業の後の表面の粗さの範囲は大変広いことになる。  この粗さは研磨粒度で表され数値の頭に「#」の記号を付けて表される。 日曜大工で使われる研磨粒度はおおむね#40-#600位と考えてよいが、塗装後の艶出しでの水研ぎ研磨では#1000以上を使う場合もある。  #40 - #1000というと粒度は25倍も違う事になるが、使われる砂粒の細かさは正比例すると考えてよい。

さてそのように広範囲な研磨粒度とそれに対応する道具を適切に選択しているかどうかは、作業効率に大きく拘ってくる。
稚拙な絵で恐縮だがこれら目の粗いヤスリと細かいヤスリで表面が粗い材料を研磨した時には次のような差が生じる。


基本原則としては材料表面の粗さに応じた番数の小さいヤスリでおおざっぱに研磨し後に(上の図の下の状態)、番数を大きくして研磨する(上の図の上の状態)事により効率よく研磨作業を進めることができる。 従って目の粗さとそれに適した作業について十分知っておかねばならない。


目の粗さと適した研磨作業

以下は正確な分類というわけではないが、ヤスリの目の粗さに対しどのような作業に向いているかを分けてみたものである。

目の粗さ(粒度) 説  明
 #30 - #100 粗目(あらめ)と呼ばれる。 カンナが掛っていない荒材の表面を削ったり短時間に深く削り込みたい場合に使用する。 数値が小さいほど目は大きく粗く、金属厚板ヤスリやサンドペーパーで入手可能。
 #100 - #200 中目( 中目)と呼ばれるもので、これでの研磨面は塗装の下地としてはまだ粗過ぎて不十分だが、かなりすべすべした感じになるのでうるさいことを言わない工作用として用途は多く、金属厚板ヤスリ、替刃式ヤスリ、サンドペーパー、スポンジ研磨剤など販売されている種類は多様。
 #200 - #400 細目(さいめ)と呼ばれるかなり細かなもので、塗装前の下地研磨として最適な細かさになってくる。 塗装しない場合でもこれで研磨すれば充分滑らかな面になると言える。 サンドペーパー、スポンジ研磨剤が入手しやすく金属板ヤスリではあまり見当たらない。
 #400 - #600 極細目(ごくさいめ)と呼ばれる更に細かなもので、重ね塗りをする前の研磨に最適な粗さである。 サンドペーパー、スポンジ研磨剤などが入手しやすい。
 #800 以上 超極細目(ちょうごくさいめ)。 普通にはあまり使用する機会は無いが、水研ぎや艶だし研磨、表面の汚れを研磨により落としながら艶を出す、ヘヤーライン仕上などにこの領域のものが使われる。 サンドペーパー、スポンジ研磨剤、研磨フィルムなどがある。



ヤスリの種類

次にヤスリの種類によって適した使い方を整理してみたいと思う。

ヤスリの種類 説  明
金属板ヤスリ 粗さとしては粗目(#40 - #100)から中目(#100 - #200)を受け持つ物が殆どで、強研磨によるヤスリの痛みがすくないから、バッサバッサと言う感じで削り落とせるのが最大の利点。 この中で替刃式ヤスリは中目として最もコストパフォーマンス良く、研磨方向がない利点がある。 但し粗目の領域では古くからの金属厚板ヤスリがベストだ。 
サンドペーパー 粗いものは#40程度から細かなものでは#1000を越える広範な領域をカバーする。 若干の曲面でも手研磨の場合には問題がない。 台となる洋紙・布に研磨砂を接着剤で貼り付けたものであるので、耐久性はあまりなく使い捨てである。 また台の材料や製法により更に使用目的は細分化されるが、それについては後述する。
スポンジ研磨剤 中目から超微粒目(#120 - #1500)をカバーするものが存在するが、曲面研磨に有利な事と空研ぎ・水研ぎ何れの研磨の方法でもOKであり、目詰まりは軽く洗えば取れて繰り返し使用できる特徴がある。 日曜大工を超えた家庭用品のメインテナンスや一般工作用と応用範囲はサンドペーパー以上に広い。
研磨フィルム 粒度の範囲が#320 - #15,000と超微粒の領域までをカバーするポリエステルフィルムに研磨剤をコーティングしたもので、主要な用途は磨いて艶を出すことに特化しているといってよい。



サンドペーパーの種類と適切な使用目的

サンドペーパーは使い捨てとは言え廉価であるので大変ポピュラーであるが、台となる材料の違いや製法により適した使用目的があるので、それを一覧にしてみた。

台の材料 説  明
洋紙 茶色い色で価格が安いことが最大のメリットで、日曜大工から工作全般に適する。 但し電動サンダーと組み合わせた場合には、台紙が破れ易く寿命は短いので余り適切ではない。 粒度は#40 - #400辺りが販売されている。
洋紙(空研ぎ用) 台は洋紙であるが、表面に特殊加工がしてあり色は明るい灰色。 普通の洋紙ペーパーよりも特殊加工により目詰まりが少なく寿命が長い。 この特徴を生かし塗装作業の重ね塗り前に空研ぎ用(水無しでの研磨)に使うのが本領である。 価格も以前に比べるとかなりこなれてきているので積極的に使用したいが、電動サンダーとの組み合わせは破れやすく余り適切ではない。 粒度は#120 - #600と普通の洋紙ペーパーより細かい方にシフトしている。
布地の台で色が黒である場合が殆ど。 上記の紙の台よりもごわごわしており、曲面の研磨には適切さを欠くが、研磨砂が取れにくく台の耐久性が高いので電動サンダーとの組み合わせでその威力を発揮する。 粒度は#30 - #600位が販売されている。
洋紙(水研ぎ用) 紙の台ながら耐水性のある含侵処理がされたもので、塗装面を始め「磨」の領域に特価した水研ぎ作業用に作られている。 粒度は#120 - #2000が販売されている。


ここで使用するサンドペーパーの粒度の選択についてちょっと触れておきたい。
サンドペーパーはかなり細かなステップの粒度で生産されており一例を挙げるとある布下地のペーパーでは、#30、#40、#50、#60、#80、#100、#120、#150、#180、#220、#240、#280、#320、#400、#600 と15種類の粒度が生産されている。  これほどまでに細かなステップのものを選んで使う必要があるかというとその答えはNOである。  通常使用する場合の合理的な粒度としては、粗目、中目、細目、極細目に相当する物を1種類ずつ固定的に選んでしまった方が良い。

私は自分の経験からそれらに相当する粒度として、#60、#120、#240、#400以上 の4種類をお奨めの粒度としている。 
これらの粒度のステップでは間隔があきすぎると考えられる方は多分稀だと思う。 そしてこれらの数字の並びはほぼ倍数系列になっているので覚えるのも簡単で、#60を覚えておきその2倍、更に2倍、また2倍と計算すれば良い。 #240以上は倍数での粒度にはなっていないので、#400以上としているわけで、#600を選んでも差し支えない。
mini-Shopではこれらの粒度のものに限って販売しているが、在庫管理上有利になると共に余計なことで頭を悩まさなくて済むようにそのようにしているという事をご理解願いたい。


研磨道具の長所短所と使い分け

広範囲の粒度の研磨を1種類の研磨剤ではカバーしきれないのと同様、その道具についても1種類では作業性が悪かったり、良い結果が得られない事がある。 そこで研磨用の道具に適した使い道を整理してみた。

 電動サンダー

 モーターの力を利用して研磨する道具で、その長所はなんと言っても作業能率の高さにある。 大きな面
 積や粗目で深く削りこもう? という目的にはその作業時間の速さで適う物は他にない。 但しだからとい
 って万能かというと必ずしもそうではなく、デリケートな研磨は不得手だし研磨面の幅93mmが標準的)
 より狭い面を研磨すると表面がカマボコ状に削られてしまう。
 また研磨する為にかなりの振動を発生し人にもよるが不快感を伴い嫌う方がいるが、これも欠点と言えるだろう。 使用するサンドペーパーは布の下地の物が耐久性が高いので最もお奨めである。 洋紙では短時間で破れてしまう。

 ハンドサンダー

 最近私はこれの有効性を高く評価するようになった。 70 x 230mmの厚手の鉄板にクッションとしてス
 ポンジゴム板を貼りハンドルを付けた物で、電動サンダーを手動にしたようなものだが電動サンダーの弱
 点を見事補ってくれる。

 具体的には研磨圧をコントロールし易く、研磨速度も電動サンダーに比べると遥かに遅いからデリケートな研磨が容易である。 これは塗装前の下地作りや重ね塗り前の研磨に大変有効だ。 例えば厚みがシナ合板の表面部分は電動サンダーで研磨するとあっという間に削れて無くなってしまうのだが、ハンドサンダーではそのような事は起きない。

私は長い間デリケートな研磨はサンドペーパーを切って木片に巻きつけてやってきたのだが、ハンドサンダーを使ったほうがより平面性を保てるし面積の大きい面の研磨で大変効率が良い。 電動サンダーでやりやすい幅の狭い所のカマボコ状研磨も発生しにくい。  組み合わせるサンドペーパーは最も安い洋紙か空研ぎ用が良い。

 替刃式ヤスリ

 替刃式ヤスリは中目でその真価が発揮できると私は考えている。 試しに仕上げ用の替刃式も使ってみ
 たことがあるが、研磨面が完全な平面でないと研磨した所と研磨できなかった所に分かれてしまい、均
 一に研磨するには時間が掛り過ぎる。 その点は僅かなへこみの部分もスポンジのパッドが入っている
 為研磨してしまうハンドサンダーのほうが具合が良い。(完璧な平面を要求するなら別だが!)

また粗目の替刃式は薄い鉄板自身がびびるような振動をしてどうも快適に削れるとは言い難い。 こう書くと、「何だ替刃式ヤスリの出番が無いじゃないか?」と言われそうだが、どっこいこれでなくてはならない局面がある。

それはノコギリで切断後の正確な寸法出しである。 手順としては、ノコギリで0.5mm以内の誤差で大きめに切断。 次にカンナでドンピシャ寸法と切断面の直角出しをする。 そしてその面を替刃式ヤスリで研磨する。 ということになる。

替刃式ヤスリのメリットは完全な平面である事と強圧研磨が可能と言う点にあり、ハンドサンダーや電動サンダーでは出来ない芸当が可能なのだ。  従って板を切断した後には必ず替刃式ヤスリが登場することになる。 要するに木口の研磨には最高の道具であり、特にM-20GPはアルミダイキャストの握りやすく力を入れやすいグリップと相まって最適な作業が実現できる。

 金属厚板ヤスリ

 その昔木工ヤスリというとほとんどこの金属厚板ヤスリを指していた。 但し価格が高い上に柄は別売り
 となっているのが普通だったので、CPのかなり悪い代表みたいな物であった。 しかし分厚い鉄板で出
 来たこれは荒削りに最大の威力を発揮する。 電動サンダーに#40-#80のペーパーを付けても荒削りは
 可能だがそれは大きな面向きであり、幅の狭い部分はお手上げになってしまうから厚板金属板ヤスリの
 ご厄介になるしかない。  厚い鉄板は研磨時の振動をより吸収してくれるので作業効率がよく手首に来るショックも少ない。 荒削りの出番が少ないかもしれないが、格安であれば是非とも持っておきたい道具である。


以上多種多様な研磨剤と研磨の道具を色々な角度から分類・整理してみた。 これらを一挙に揃えるのは無理としても、作業に合った研磨スタイルと言うのは厳然としてあり、作業効率や仕上がりの完成度に結構影響するので充実したいものである。
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