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金属ヤスリについて
2004/06/13

ヤスリは研削から研磨までの作業をするための道具でその種類は極めて多いが形や機能的な分類からすると、

   ・鉄の棒状または板状のヤスリ
   ・薄い鋼板で出来た替刃式のヤスリ
   ・紙又は布に砂粒を貼り付けたペーパータイプのヤスリ
   ・砂粒そのものを研磨剤として使うタイプ


に分けられ一般的に言うと上から下に行くにつれ研磨面の粒状性は細かくなってゆく。 ここでは金属製の木工用ヤスリについて解説したい。

私が持っている全てのヤスリで、右側4本は金工用。 左側の4本が替刃式金属板タイプ、残りが鋼鉄厚板製の木工用だが、木工の場合99%のケースにおいて○印の4本とサンドペーパーがあれば十分に事足りる。



・鋼鉄厚板製の木工ヤスリ
 厚い鋼鉄板の両面に粗目と中目のヤスリ目を刻んだものである。 粗目の方は研削の部類に入り削ったあとは極めて表面ので
 こぼこが激しいが削るという意味での能力は大変高い。 丸ヤスリでは片面の使用で殆どが粗目だが、平ヤスリでは反対側の
 中目は表面をかなり平滑に仕上ることが可能であり、デリカシーさを要求するのでなければ、この両面で研磨作業を終わらせる
 ことが可能である。(屋外用工作物など)

左が平ヤスリ、右が丸ヤスリで何れも鋼鉄厚板製の粗削り用だが、仕上きりのジグソーやフォスナービットであけた穴の場合丸目の必要性は薄い。

こちらは鋼鉄厚板製平ヤスリの表裏を比較した写真で、左が粗目で右が中目だ。 正直言って私は中目の場合金属板替刃式の方を使うことが多い。


 粗削りするのに次に述べる薄い鋼板タイプ(あるメーカーはアラカンなどと称している。)のものもあるのだが、私の経験からする
 と粗削りには向いていないと思う。 それは粗削りの際に発生する振動をヤスリ自身が軽いため吸収しにくく、ヤスリを握る腕に
 もろに伝わってくるので使い心地が良くないためだ。 粗削りをするにはヤスリ自身が重い方が良いのである。
 このタイプのヤスリは決して安くはないが、粗削りの能力の高さの観点からすると今のところこれ以外の選択はなさそうだ。

 従って中目以上があれば十分というような場合には、これらのヤスリの必要性は余り無いといってよい。

このタイプのヤスリの研削・研磨方向は1方向になっている。 ヤスリの先を当てて先の方に押した時に削れ、手前歩行に引いた時には空滑りに近い。

よく前後に同じ力でゴシゴシとせっかちにやられる方を見掛けるが、押す時にしっかりと力を入れ、引く時には力を抜くのが原則で、研削・研磨効率を上げながら無益な疲労が出にくい方法である。




・薄い鉄板で出来た替刃式のヤスリ
 木工作業においてサンドペーパーに次ぐ使用頻度が高いであろう研磨の道具で、私のお奨め度が極めて高い道具である。
 
その理由はヤスリ面が交換できる替刃式になっていることと、中目と呼ばれるものでも上記の鋼鉄厚板タイプの場合より目が細かく、そのまま仕上研磨としても差し支えない場合が多いためだ。

最もメーカーにより結構差があるようで、私の経験ではアルミダイキャストグリップのNTドレッサーM-20GPが優れている。 しっかりとグリップできて力を入れやすいこと、アルミダイキャストなので、プラスチックグリップのものと比較すると研磨時に発生する微振動をボディーが吸収しやすく快適であるからだ。

殆どのホームセンターで販売されていないようだが大変優れものなのでmini-Shopで取り扱っている。

(左写真: 特に木口の研磨がやりやすく電動サンダーを使うとかまぼこ状となる木口もフラットに仕上がる。)

 このタイプの特徴のひとつに研磨の方向性が無いことが挙げられるが、これを勘違いして使う方が居るが正しくは常に木目と平
 行にヤスリを移動させることだ。 さもないと研磨痕が残ってニス仕上などしたときに目立ちやすい傷になってしまう。

方向性がないM-20GPの正しい使い方。 木目に沿って平行研磨ならOKだ。 また往復両方向で研磨可能。

M-20GPを握って斜めに当てているのだが、木目に平行に使うのであればOKである。

極端な例だがこんな使い方も問題ないので、幅が25mmしかないM-20GPでも大きな面の研磨が可能になる。

但し木目に平行ではないこのような使い方をすると研磨痕が残ってしまうので駄目だ!

平目で仕上研磨用のものもあり実は私はも使っておりなかなか優秀だが、仕上研磨の領域では次回に述べるサンドペーパーの方がコスト的にまた広範な使い勝手では有利だと思う。

平目以外に曲面状になったものも便利で、RS-310P(直径10mm以上の曲面用)RL-330P(直径30mm以上の曲面用)mini-Shopで扱っているが、丸棒金属製のものより低価格でCPが良い。

またこれら替刃式の共通の特徴として木工用のみならずアルミ研磨に使える点もありがたい。 別項で解説しているピンホールレンズ製作の中でもアルミ製ボディーキャップの研磨に使用している。

金属板替刃式の平ヤスリM-20GP。 左が中目で方向性無くつかえる。 右は仕上げ用で優秀だがサンドペーパーで代用可能。(何れもNTカッター製の製品。)

RL-330PRS-310Pのような丸ヤスリも方向性が無く、こんな使い方が出来る。

RL-330Pで直径30mm以上の曲面研磨に最適。 これはピンホールレンズ製作でアルミの内面を削っているところ。

RS-310Pは直径10mm以上の場合に使える。 丸棒ヤスリよりも安くアルミの研磨にも使え大変CPが良い。



最後に実物を見たときの違いはもっと大きいが 1.鋼鉄厚板製粗目の鑢を掛けた時2.同じヤスリの中目で削った時3.替刃式M-20GPの中目で削った時、4.M-20GPの仕上げ用で削った時と、同じ場所を削っていった時の違いを写真でお見せしよう。

研削・研磨面のサンプルで、これは厚板鉄製のヤスリの粗目で削ったサンプル。

同一の場所を反対側の中目で削った。 かなり平らになってきている。

その上をM-20GPで研磨。 僅かな研磨痕は残るが更に滑らかになる。(木目がよりはっきり見えてくる。)

M-20GP+仕上刃により研磨。 大変綺麗な面になるがサンドペーパーの#240-#400でも同様の結果が得られる。

以上投資効果と作業性の向上を考えた木工ヤスリの選択のガイドラインである。



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