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玄翁(げんのう)について
2004/06/18

釘を打つ、叩く道具として大工道具の中で最も古い歴史を持つものが玄翁だが、これを考え出したのが何とお坊さんらしくその名をつけて玄翁と呼ぶようになったと聞いたことがある。(玄翁和尚というわけだ!) また玄能と書く場合もある。

 この類の道具には、かなづちとんかちハンマーなど他にも様々な呼び名があり、それ
 ぞれの定義がはっきりしない部分があるが、玄翁という場合には正確には両口玄翁と言
 い、対称的に打面が2つある物を指す。 またハンマーは欧米で考えられたもので、打面
 はひとつであり対称的にはなっていない。(左の写真はハンマーと玄翁の違いを表す。)

 この釘抜き兼用のものは大工仕事には向かない。 というか、デリカシーの無いただ打て
 ればよいという道具である。 その理由は玄翁には何故打面が2つあるかにある。
 気をつけないと見過ごしてしまうかもしれないが、片方の打面は平らであり、もう一方は僅
 かな曲面をしている。

 この平らなほうがガンガン打ち込むときに使う面で、釘の頭に当たるとき滑らないようそう
 なっているのだが、曲面のほうは釘の最後の締め打ちに使う。  締め打ちは釘の面がご
 く僅かに材料面より沈んで欲しいのだが、平面でそれをやると材料面に凹み傷を作ってし
    (左2つがハンマーで右端が玄翁)     まう。 それを防ぐために僅かな曲面になっているのだ。
                       これで釘抜き兼用のハンマーはデリカシーが無いことがお判りだろう。

さて玄翁には頭の断面が楕円型のものと八角形のものとがあるが、基本的にはその間の優劣は無い。 好みで選んでよいだろう。 但し玄翁の重量については良く考える必要がある。 販売されている玄翁はヘッド重量が150gから400gの間にあるものが殆どだが、これから買うのであれば、225gのものを買うようお勧めしたい。  その理由は釘に替わってネジを使用するようになったため、太くて長い釘を打つ機会が無いためだ。  玄翁を使う機会は隠し釘仮釘化粧釘小釘を打つこと、カンナの刃の出具合調整センターポンチを打つなどが殆どでこの場合225gが適当であり女性でも使いやすい。

ノミを使う場合と太くて長い釘を打つには300g以上の玄翁が必要になるが、その場合は買い増しということになる。

その225g玄翁には安いものになると\300台から売られているが、本腰を入れて日曜大工をしようと考えているのならお勧めしない。 その理由は頭の焼入れが甘くて使っているうちに潰れたり丸まってきてしまうのである。(店頭では絶対に判らない。)
価格的には\1000近くのものであれば先ず間違いないといってよいだろう。(一生物というか孫子の代まで使える。)

釘を打つから釘抜きも必要という場合もハンマーに付いている中途半端なものではなく別な釘抜きを買う方が良いし、小釘を抜くならばニッパーを使った方が遥かに綺麗に抜ける事は覚えておいた方が良い。

私の玄翁。 左から225g375g300gのもので使用頻度が高いのは圧倒的に225g。 300gのものは後述する。

釘抜きは専用のものを使った方が良い。 下は釘締めと小さな釘抜きが一体になったもの。 今では使用頻度が低く過去1年これらを使ったことは無い。

30年以上使った375g玄翁の打面でこちらは平らな方だ。 釘をガンガン打ち込むのに使う。 歴戦の勇士だが打面が全くへたっていない優れもの。

反対側の僅かな曲面。 これで釘の最後の打ち締めをすれば、材料面に与える傷は少なくなる。

玄翁の使い方はそれほど難しくないが、初心者であるほど柄を短く握りたがる傾向があるようでこれは駄目だ。
(その方が正確に打てるように錯覚しているようだが実は違う。)

正しくは柄の先端が30mm程残るように握って(こうするとすっぽ抜ける危険を少なく出来る。)やれば、少ない力でその玄翁の打ち付ける力を最大に出来る。  その打ち付ける力は腕力ではなく慣性の力を利用することに着目して欲しい。

玄翁の頭は鋼鉄で出来ているから玄翁全体では重心は頭にかなり近く、この重心と回転の中心となる肘の距離は約50cmとなるが、考え方としては半径50cmで玄翁ヘッドを振り回したときの慣性力で打ち込むのだ。

打ち込む力を大きくするにはヘッドの重量を上げることにより実現するのであって決して腕力ではない。 腕力で打とうとするとヘッドの振り下ろされる軌道が不安定になり正確に打てなくなる。

短く握ることは慣性力が低下して打ちつけ力が下がるだけでなく、実はこれもヘッドの軌道は不安定になり正確に打てなくなるという副作用が出てきてしまうのである。 正確な玄翁の使い方は次の写真をご覧願いたい。

打つ位置に玄翁をヘッドを当て、肩の力を抜いて肘を支点にして玄翁を振り上げる。 打つ力は振り上げ量によりコントロールする。

打ち下ろす直前だが、手首が曲がっておらず肘の位置がずれていない点を注目。 このまま肘位置がずれないよう振り下ろせば正確に打ち込める。

最後に最近手に入れた300g玄翁をお見せしておこう。 名工が作った飛び切り上等の一品というほどではないが、かなり拘りを見せた手の込んだ作られ方をしておりながら、目の玉飛び出るような価格ではない。 300gという丁度225g375gの中間の重量で、これからの玄翁としては最も手頃な重量では?と一目惚れも交えて求めたものだ。

最近入手した300g磨き八角玄翁。 柄が変わった形状に成形されているのが目に付く。

ヘッドの付け根近くはこのように削ぎ落としたようになっている。 この柄だけでも手の込んだ作りだ。

柄の先端から見た。 断面がオムスビ状になっており実にしっくりとしたグリップが実現する。 こんな柄は量産することはほぼ不可能だろう。(カタクリ柄というのだそうだ。)

ヘッドの両打面には別なハガネを付けた構造が判る。 これまた拘りの一つ。

平面側打面のアップ。 見事に磨き上げてあり使うのがもったいないくらい。

こちらはヘッドの曲面側である。 これも正確に磨き上げてある。


  この玄翁を購入ご希望の方がございましたら、こちらよりお買い求め出来ます。




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