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スピ−カーセレクター
   
 2004/10/01

構想

 スピーカー製作講習会の準備をしている中で、そうだスピーカーセレクター必要だ!と考
 え急遽製作することにしました。

 正直言うとスピーカーセレクターを使わない方が音質上は有利なのですが、完成したスピー
 カーの比較試聴をする際にいちいち繋ぎ替えていたのでは面倒であると共に、微妙な音質
 の違いは時間が経つと判らなくなってしまいますのであった方が便利です。
 また我が家においても、次々に作るスピーカーのチューニングの際にもバランスの比較・確
 認をする際にも使えます。

 ロータリースイッチや連動プッシュスイッチで切り替える簡単なスピーカーセレクターが幾つ
 か\7,000-\9,000程度で市販されていますが、私の経験ではスイッチの接触抵抗が大き
 かったり、経年変化で接点不良が起きやすく、音質劣化もかなりあると思われます。

 手前味噌ながらサラリーマン時代には仕事柄スピーカーセレクターを何度も作る機会があ
 り、それなりに難しい部分があることを経験しました。
 特に音質劣化が問題で、これを極力押さえるには接点の接触抵抗を減らすことが先ず第一
 ですが、汎用の連動型プッシュスイッチ、ロータリースイッチ何れにおいても接点容量は
 AC125Vで数アンペアしか取れないのが普通で接触抵抗は大きいです。
(1万円以下で買えるスピーカーセレクターの例)

そこでリレーを使って接点容量を上げることを基本構造として考えました。
松下電工のパワーリレーの中に10Aの容量を持つHPシリーズ(定価\1,640.-)というのがあったのでこれを選びました。 本当はその上のHGシリーズという接点容量20Aのものを使いたかったのですが、サイズが一段と大きく装置も大きくなりすぎるのと、価格が2倍以上(定価\3,410.-)とコスト負担が大きいためあきらめました。

このパワーリレーを駆動するのに特別な電源を作る必要のない動作電圧がAC100Vの物としています。 そしてそれらのパワーリレーを別なリレーでON/OFFすることを考えました。 連動プッシュスイッチでパワーリレーのON/OFFをやっても良いのですが、音を聴きながら手許で切り替えるために、AC100V配線を延々と10mも引っ張るようなことをしたくなかったことによります。(最低でも4本のケーブルを束ねる必要があり絶縁の安全性を考えるとケーブルがごつくなりすぎます。)

この目的には\700.-程度で買える汎用の4回路のリレー(動作電圧DC12Vを使います。 セレクターボタンは押している間だけONになるプッシュONタイプを使い、接続保持はリレーの自己保持回路を使うことにします。

駆動用リレーの動作電圧は12Vですが、その電源にはジャンクボックスで見つけたACアダプターを利用しました。 定格はDC10V 800mAとあり一見不十分ですが、テスターで開放電圧を測ったところ12Vあり、回路の予測消費電流は30mA程度しかありませんので電圧がそれほど下がるとは思えず十分使えます。  アンプやスピーカーを接続する端子はスペース効率が良くて、接続も確実なハーモニカ端子と俗に言われるものを使います。 切り替えスピーカー数は3台としましたが、それらの部品は180 x 125 x 70mmのアルミケースに収めます。 またセレクターボックスは、65 x 100 x 35mmのプラスチックケースとして本体との間は4芯の細いシールドワイヤー(約10mで結びます。

このワイヤーは非常に細いですから10mも伸ばすと直流抵抗も相当ありテスターで測った値は1.7Ωありました。 しかしリレーの動作電流は13mAですので、ワイヤーによる電圧降下は0.022Vと無視できる値で問題は起きないでしょう。 むしろ細いワイヤーの断線の方が心配なところです。

全材料の購入費用は約\9,000.-で、これが高いかどうかは価値観のちがいにより変わりますが、10m離れた所からコントロールでき接点容量が10Aあるような一般向けのスピーカーセレクターは市販されていないことは事実です。


設計詳細

 考えた回路図は左のとおりです。
 パワーリレーはスピーカーのプラス側とマイナス側両方をON/OFFするようにしています。 片方の
 ON/OFFだけの方が接触抵抗の増加を押さえるには有利ですが、アンプのスピーカー端子は左
 右のマイナス側が共通で繋がっているものが多く、スピーカーセレクターに極性を間違えて接続す
 るとショートさせることになるため、プラス側とマイナス側両方をON/OFFしないとなりません。

パワーリレーを駆動する汎用リレーは4回路の接点を持っていますが、その内1回路はパワーリレーのON/OFFで残りは自己保持回路と同時に2台のスピーカーを接続しないための動作に使っています。

その汎用リレーの切り替えをプッシュONタイプのスイッチでやりますが、機械的な連動スイッチではありませんから、スイッチを切り替えた時のガチャンという音は全く発生しません。(本体のリレーが作動する音は発生します。) プッシュONタイプスイッチではどのスピーカーが鳴っているのかわからなくなるため、スイッチの横にLEDを取り付けて表示できるように考えています。

 左の図は半実体配線図とも言うべきもので、本当の実体配線図は部品の外形もそれらしく描くの
 ですが、そんなことまでしている時間がありませんので、配線の作業に(本来の配線図を見て結線
 してゆくのは間違いが発生しやすいので。)
使うだけのものとして描きました。

 この実体配線図で配線の色分けをしていますが、流れる電流やかかる電圧により線材を変える為
 の色分けであり、回路図の配線の色分けとは何の関係もありません。
 またRY-2RY-3のリレーと端子盤の間の配線はRY-1と相似となるため描き込んでありませ
 ん。 回路図中にLEDに流れる電流をコントロールする2本の560Ωの抵抗が使われていますが、
 手持ちの抵抗は1/4Wで発熱が多めなので、それぞれ270Ω2本を直列にしています。

 後は以下の写真をご覧ください。 電子工作としては初歩的なものです。

使用した主な部品。 本体ケースは180 x 125 x 70mmのコンパクトなもの。 セレクターは65 x 100 x 35mmのプラスチック製を使います。

最も重要なパワーリレー。 松下電工HPシリーズで4回路あり10Aを遮断できます。

HPシリーズの4回路接点部分を見たところです。

更に接触部分のクローズアップ。(矢印の先) かなり接触面積が大きい。

パワーリレーを駆動する汎用リレー。 オムロンMY4型を使っています。 動作電圧は12V

本体とセレクターを繋ぐ10mの4芯シールド線。 4芯というのに外径3.5mmしかありません。

スピーカーワイヤーを繋ぐ端子盤。 俗称ハーモニカ端子とも言います。

駆動リレーの電源として使った古いACアダプター。 定格はDC 10V 800mAですが十分駆動リレーを動作させられます。

製作開始。 端子盤、LED、スイッチ、ケーブル引出しの穴をあけてそれらの部品を固定し、リレー6個とACアダプターはエポキシ樹脂で接着しました。 これで果報は寝て待てと6時間放置。

パワーリレーとスピーカー端子との間の結線を除き配線終了。 上に見えるボックスがリモコンボックスになりますが、私の勘違いでスイッチが1個不足で後で結線できるようにしていますが、動作は勿論完璧です。

無酸素銅の良質なスピーカーケーブルでスピーカー端子とパワーリレーの間を結線し製作完了です。 もっと太いケーブルを使いたいところですが、配線が極端に困難になるのでやめました。

ふたを閉めて端子盤の結線をまごつかないよう簡単な表示を施しました。 リモートコントロールボックスのスイッチは左からスピーカー1、スピーカー2、スピーカー3となっています。 リレーの作動音がかなり賑やかですが、これは仕方のないところです。 (ケースがひとまわり大きければ硬質のスポンジを内側に貼った上で組立てれば、かなり作動音は静かに出来るのですが?)
作ったスピーカーセレクターの実働テストを兼ねて、バスレフ型ミニタワースピーカー、TQWTスピーカー、インテリア志向スピーカーを接続し比較試聴しているところです。 左手にセレクターBOXを持ち瞬時に切替可能で、それぞれのスピーカーの特色や違いがよく判ります。


大変コンパクトで接触不良の心配のない遠隔操作が可能なスピーカーセレクターが完成しました。 残るスピーカー製作講習会の準備は技術資料ですが、腕によりをかけて作業を進めています。  また参加していただいた方とは特に密接な繋がりというか一過性に終わらないお付き合いをさせていただければと念じています。

----- 完 -----

 
  
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