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脚立製作詳細
   

 2001/11/23

 設計と構造
      外観図と構造図
 脚立の断面構造はアルファベットのAのような形をしており、Aの横棒の部分が脚立の踏み板となります。 この開いたときにΛ
 型となる脚は頂部に取りつけられた蝶番を軸にたたむことが出来ます。 脚の開き具合を加減するのが脚の内側に掘り込まれた
 溝に沿ってスライドするガイド(ニッケルダボを使っています。)で、このガイドは踏み板に固定されています。

 板取りのことを考え脚の長さは600mmとし、踏み板の幅は安定性を考え200mmあれば良いだろうという事にしました。
 また踏み板の高さを360mmとしました。 余り高くないようですが、予備実験では身長の低い私でも(164cm)天井近くのものに
 充分手が届きます。 補強板の内寸を350mmとし、脚の幅を57mm(中途半端な値ですが板取りから来ています)としたので、
 脚立の総幅は464mmとなります。

 構造上最も複雑なのが脚ですが、ガイドがスライドする溝を掘るのは大変なことなので、合板を貼り合わせて溝を作ることにし、
 補強板もその溝を使って固定します。 脚は9mm合板(BC)を12mm合板2枚(A)で挟む構造ですので厚みは33mmとなりま
 す。 9mm合板のBCの一部を欠きとってガイドレールとなります。 補強板は12mm合板と9mm合板の貼り合わせで21mm
 厚となり、9mm厚合板の左右に10mmずつ突出しこの部分が、脚の溝にはまり込むと言うしだいです。 
 踏み板は、設計上は12mm9mmの合板の貼り合わせですが、私の作例では18mm合板の端材があったのでそれを使いまし
 た。  貼り合わせ部分が多くて面倒くさそうですが、こうすることにより溝堀の手間が省けることと、板取りが良くなります。 



 材料
 材料は12mm厚合板と9mm厚合板が主材で、それぞれ910x600mmのカット材1枚ずつで間に合います。 材質はラワンでも
 シナでも結構です。 

 蝶番は51mm中厚のステンレス製が2個と300mm長のステンレス製が1個です。 51mmの蝶番は
 背押しと言って裏面の羽根がフラットでなく回転軸部が僅かに突出したような形をしる物を使いました。 
 このタイプのほうが、蝶番の取付けに際し、僅かな削りこみで脚立の脚をたたんだときの隙間を無くすこと
 が出来るからです。 写真をクリックして確認してください。 
 ガイドとなるニッケルダボは、で長さが9mmの物が2個。 蝶番固定用に2.7φ12mmと16mmの木ネ
 ジ
、補強板の仮止めに隠し釘36mmを使っています。 接合は木工ボンドです。 仕上げは普通のペイン
 トやニスで仕上ても結構ですが、私は長年の耐久性を考え1液性ウレタンニスを使いました。 床を傷つけ
 ないよう硬質のスポンジゴム板。 以上が材料の全てでラワン合板としたときには\2000以内に収まると思います。



 加工と組立
 1.合板の切断
 加工詳細図と板取り図を参考にして合板から切り出してください。 BCの切り欠き部は回し引きノコか
 電動ジグソーで切断します。 この作品はどちらかと言うと加工誤差に対する許容度が高いですが、
 ±0.5mm以内に収めたいですね。 切断が終わりましたら、BCの切り欠き部は木工ヤスリなどで削り
 寸法を出しておきます。 またDEの板の長手方向(370mmと350mm)をカンナで仕上げておきます。 



 2.合板の貼り合わせ
 A-B-Aが2枚、A-C-Aが2枚、D-Eが2枚、G-G'が1枚の、計7枚の脚、補強板、踏み板を貼り合わせます。 合板の貼り合わせは
 この作品の出来映えを決定付ける重要な工程です。 特に合板に反りがある場合には、反りを打ち消し合えるよう、接着面を確
 認して組み合わせを決めます。  (長い蝶番が取り付くD-E1組だけは、3.の作業後貼り合わせます。)

 木工ボンドを全体に薄く出来るだけ均一に塗り、固着するまでクランプで強く締めつけておきますが、隙間
 が発生しますと強度が下がってしまいますので写真のような断面がL字型の鉄棒や厚めの板などで出来
 るだけ全面が密着するよう補強します。 秋も深まり日中の気温も20℃以上に上がりませんので、木工
 ボンドの完全固着には時間が掛かります。 暖かい所に接着後4時間は寝かせてやりましょう。




 3.長い蝶番の取りつけ
 D-Eの組み合わせ1組は、貼り合わせる前に300mmの蝶番を2.7mm12mmの木ネジでEに取りつけます。 
 位置は写真を参考にしてください。 次にDの蝶番が重なる部分をノミか彫刻刀で彫りこみます。 一番上
 の積層板が剥れれば充分ですが木ネジの部分は若干飛出ていると思いますので、そこだけは更に彫り
 こみます。 試しにEDを重ねてみてください。 彫り込みが充分でなければ合わせ目に隙間が出ますの
 で、隙間が出なくなるまで更に彫りこみます。 その後この2枚を接着します。


 4.整形
 木工ボンドが完全に固着しましたら、接着した7枚の接着断面をカンナで削り平らにします。 設計図の寸法から1mm以内の誤差
 に収まれば大きな問題は発生しないと思います。 4本の脚の両端は後で整形しますので何もしなくて結構です。 補強板は脚
 の溝に差し込まれますが、硬からず緩からず、きちっと嵌りこむよう修正しておきます。

 5.補強板と脚の接合
 脚の溝に木工ボンドを流し込み細い棒で壁面に伸ばします。そこに補強板の突出部分を差し込み、隠し
 釘で固定します。 A-B-Aの脚との組立はどうという事ありませんが、A-C-Aの脚のほうは、ガイドが入
 る溝と接合部分が続いていますので、接着位置を間違えないよう十分注意してください。




 6.ニッケルダボの取り付け
 踏み板(GとG'を接合した板)・./../material/zairyou.html#nisuB端から26mmの位置に7.5φ深さ
 10mmの穴をあけニッケルダボのメスを叩きこみます。  そこへオスをねじ込みます。





 7.蝶番の取りつけ
 脚の上部の部分に蝶番(51mm)を取りつけますが、脚の線と2個の蝶番の位置が直角になっていないと
 折りたたんだときに脚の先が合わなくなってしまいますので位置決めに注意します。 位置が決まったら
 蝶番が埋まりこむようノミで取り付け部分を彫りこみます。深さは積層板1枚分で充分です。 
 キリでネジ固定位置に正確に穴をあけ、2.7φ16mmの木ネジで仮止めします。
 (仮止めとは言っても取り付け位置の修正は難しくなりますので慎重にやりましょう) 


 8.踏み板の取り付け
 踏み板に固定されたニッケルダボが、脚の溝にひねりながら入れ、脚と踏み板の間の隙間が均等になる
 ようにし(設計値は各2mmm)、写真のような按配で取り付けます。(この取り付けも仮止めです。)





 9.組上げ後の確認
 蝶番が固定されましたら、起こして使用状態となるよう置いてみます。 脚の開きが440mm位になること
 を確認します。 踏み板の蝶番の取りついていないほうが、補強板の上に載ります。 各部の動き具合を
 確認してください。 接着剤が充分固まっていれば上に乗っても大丈夫です。 脚を閉じたとききちんとた
 ためるかもチェックします。




 以上の加工組立はのんびりとやりましたが、合板の切断に1日、貼り合わせに1.5日(気温が低くて木工ボンドの乾燥時間が長い
 ためで、夏であれば1日で終わるでしょう。)、成形に3時間、組立は慎重にやっても30分ほどで終わります。 合計3日弱というと
 ころでしょうか? しかし早く作ることが目的ではありませんので、加工、接合は念を入れて丁寧に作業してください。



 10.表面仕上げ
 仕上げ工程の最初は脚の両端を斜めに切断する線を引きます。 脚立を開いたまま横に寝かせて線を
 引きますが、左右が平行になるよう十分注意しましょう。 (左の写真クリック)

 これが済みましたら脚立をばらします。 脚を斜めに切断するのは結構難しいものですが、切断する線を
 垂直に2面同時に見ながらゆっくりと切りましょう。 あせりは絶対に禁物です。 


 ところで脚立の頭の部分で蝶番が突出することが気にかかりましたので、頭を斜めに切断した後で薄い
 板をかぶせ蝶番が突出しないようにしました。 4mmの合板の切れ端を使いましたが、3.5-5mm位の
 板でしたら何でも結構です。 タテヨコそれぞれ1mm位大きめに切断し木工ボンドで接着して隠しくぎで
 固定します。(ゴム板を貼るという手もあります。)  また踏み板に小判状の穴をあけてたたんで運ぶ際
 の手がかりとしました。 最初は細い棒を貼って手がかりにしようと考えたのですが、たたんだ時にでっぱ
 ってしまい面白くないので変更しました。  


 この小判状の穴は、15mmの穴を木工キリで2箇所にあけ、電動ジグソーで間を切断します。 脚立の頭
 のカバーが完全に接着しましたら、電動サンダー木工やすりなどで角を落とし整形します。 
 電動サンダーには#240のペーパーを使います。 このとき表面に多少はみ出ている固まった木工ボンド
 を完全に削り取ってしまいます。 多少でも残っていると後でステインで着色したときに木工ボンドの部分
 だけ染み込まないため白っぽくなって見苦しくなります。 (ペイント仕上げとするのであればあまり問題と
 なりませんが)  また油分が表面に付着しているとステインやペイントがうまく塗れません。 シンナー、
 アルコール等で十分に油分を落としておきましょう。  
 この仕上げ作業は最後の塗装よりも時間がかかると思いますが、表面を如何に滑らかにするかによって塗装の出来映えにも大き
 く影響します。 私の場合3時間強を仕上げ作業に費やしました。

 11.ステインによる着色
 ステインの色は一昔前と違って実にさまざまなものがあり、緑色とか黄色のものもあって選択に結構悩む
 ものですが、店頭にある着色サンプルを見て決めるとよいでしょう。 私は仮釘や隠し釘の小さな穴が目
 立ちにくくなるので、もっぱらウォールナット系のダークなものを選ぶことが多いです。 水性ステインは水
 で濃度をコントロールできるので便利です。 ステインの容器を底に溜まっているものが均等になるまでよ
 く振ってから容器にあけます。 店頭の棚に長い間寝かされていた場合など底にドロッと塊が溜まって、
 上のほうは上澄みなんてことがあり、私も一度大失敗をした経験があります。 

 本番の前に端材に塗ってみて濃度を確認します。 恐らく原液のままでは濃すぎると思いますので、少しずつ水を足し(無論水性
 の場合ですが!)希望の濃度より薄めにします。 一度で塗り終えるなんて考えないことです。 作業時間はかかりますが、薄め
 のステインを一度塗ったら2時間以上乾燥させた後に2回目を塗ります。 塗りの回数を重ねるにしたがって段々濃くなりますし、
 薄めのものを塗り重ねるほうが塗り斑が出にくいのもメリットです。 私は3回塗り重ねを標準にしています。 従って着色だけでゆ
 うに半日はかかります。 次の塗装の前に完全乾燥させる必要がありますので、一晩寝かしましょう。

 12.塗装
 私はウレタン系の塗料にこだわりますが、物理的、化学的な丈夫さは一般の家庭塗料にかなうものはあ
 りません。 ここでは扱いやすい1液性ウレタンニスを使いました。 乾燥速度が速いのにも拘わらず、刷
 毛目が残らない点がうれしいです。 私はいつも屋内で塗装しますが、換気は十分にしてシンナーの臭い
 が部屋の中に充満しないようにしましょう。 塗料の容器から少量を塗料バケツに出します。 塗り面積が
 小さいので30mmの刷毛を使いました。 刷毛に十分染み込ませてからバケツの中でしごいて少量含ま
 せた状態にし、隅とか奥まった部分など塗りにくいところから塗って行きます。 

 刷毛目がつきにくいと言いましたが、同じところを何度も塗るのは止めましょう。 せいぜい3回までに止め塗り面が均等になるよう
 にします。 一度塗ったところは1分を過ぎたら絶対に塗り直してはいけません。 必ず塗り斑になります。 塗り残しを発見
 しても2度目の時にしましょう。 また厚塗りを避け薄く塗り重ねるほうがきれいに仕上がります。 今回の作品の中でガイドが入る
 溝の中だけは塗りません。 深い溝だけに中を塗ろうとすると塗料溜まりが出来易く、ガイドがスムーズに動かなくなる可能性が
 あります。 塗装後15-20分で指で触ってもべたつかなくなります。(厚塗りしなければ) 4時間以上寝かした上で、#240以上の
 目の細かいサンドペーパーで表面のざらつきを落とすようなつもりで軽く研磨してから2度目の塗装をします。 2度塗りで通常の
 使用には十分なくらいの艶が出せると思います。 塗装終了後一晩寝かした後に最終組み立てに進みます。

 13.最終組み立て
 既に木ネジの下穴はあいていますので組み立てに難しいところはないはずです。 注意すべきは仮組み
 立てのときのように脚を床に広げて蝶番を取り付けられないことです。(蝶番出っ張り防止のカバーが邪
 魔しますので完全に開いた状態では取り付けられません。) 組み立てが終わりましたら脚の底に、傷つ
 き防止及びすべり止めのゴム板を貼ります。 またトップに貼りつけたカバーの釘穴はかなり目立たなく
 なっている筈ですが、気になる方はチョコレート色のカクレンボウ(床材の傷を埋める物)で埋めてしまいま
 す。 写真では光線の関係でよく見えますが、私はそのままにしてあります。



 あとがき
 大変便利な脚立が完成しました。 使わないときにはわずかな隙間にしまい込めますし、壁にかけておくのもよいと思います。 
 但し今回製作した脚立はなんとなく頑丈過ぎる気がします。 再度強度試験をしないとなりませんが、12-9-12mmの合板貼り
 合わせを、9-9-9mmに変更しても実用上問題がないと思われます。 そのほうが板取りがよくなり、薄くなり(総厚66mm ->
 54mm12mm薄くなる)、重量も軽くなります。 近いうちにもう一度試作しようかと考えていますので、そのときに再び報告致
 します。

参考資料:   外観図と構造図   加工詳細図と板取り図  
  
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