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大型本棚
2002/10/31 Up
発想と留意点
リフォームに先駆けて是非とも持っている本を1箇所にまとめて整理したいと考え大雑把に計算し
た所、幅、高さ共に2400mmあれば空きが3割ほど残るような結果が出ましたので、4畳の書斎兼
工作台の反対の壁(間口2700mm)に本棚を作ることにしました。
そのような計画をリフォームが始まってすぐに作業の合間の大工さんに話した所顔色が変わり、
そんな大きな本棚を作ったら2トン位になり床が持たない!!と言われ、設計変更をして鉄骨の梁
を追加する工事をしてもらいました。
その上に根太を通常の量の倍とし、床板はコンパネ(12mm)を貼った上にフローリング材(12mm)を木工ボンドを併用して張る。というようなかなりやりすぎともいえる補強をしてもらっています。
この大型本棚は一連のリフォーム後に製作した大型家具の中では一番最後に完成したものです。 その一番大きな理由は他の家具を作ったときに余った材料を全面的に流用した為です。 従って私が基本的に好んで使っているシナ合板のみならずラワン合板も混在しております。
こういった事情がある為
「端材を有効に利用出きる寸法を積極的に使いながら、無駄な空間無しに本がびっしりと埋る。」
といういささか虫の良い条件を満たそうとしたので、出来上がった外観こそ平凡ですが10回近くも各部寸法の配分をやり直すという事前の検討に随分時間が掛かっています。
従って単に大型の本棚を作ったと言う説明だけでは面白くも何ともないので、合理性を随所に追求した勘所について特に詳しく解説してゆきたいと思います。
1.所有する本の分析
様々なサイズの本がバランスよく収まらないと意味がありませんから所有する本のサイズ別の量をかなり細かく分析しました。
方法としては、A3、B4、A4、B5、A5、B6、A6 そしてレターサイズ、リーガルサイズとそれらから大幅に異なるサイズに分け、
それぞれを積み上げたときの厚さを計りました。
2.本棚の側板の間隔と大きな本の棚板段数の決定
他の家具を作ったときの端材の長さには、2430mmと1820mmの2種類があります。 何れの長
さでも無駄が出ない棚板幅を考えると、600mmが極めてうまい数字となります。
いうまでもなく2430mmの場合4枚、1820mmの場合3枚切り出して僅かな残りが出ます。 板厚
が18mmですから600mm幅を3列繋げると1872mm、4列で2490mmということになり間口
2700mmの壁面には横4列が最大になります。 (
左の図をクリックすると寸法図詳細が見れます。)
一方上記の各種本サイズの内、A3、B4、A4、レターサイズの本の合計の厚みは3000mm強と
なっていましたので、それらを入れる棚板の奥行きは300mmとし段数は合計6段と決めてしまい
ました。
(1段分近い空きが出るはずです。)
こうすると奥行き300mmの部分は横に3列上下に2段あればよいことになります。 (4列目は後述しますが奥行き200mmです。
その理由は書斎の椅子の真後ろに当たる位置に来る為出来るだけスペースを取りたかったことによります。)
またこれらより小さな本を入れる部分の奥行きは200mmと決めてしまいました。
(奥行きが300mmと200mmにしたのは、そのような幅の端材がたくさんでることを判っていたからです。)
3.大きな本用の棚の高さ決定
A3用の棚の高さを444mmとして下段
に、B4用の高さを380mmとして上段に
配すると床から67mm上に最初の棚が
来るようにしたとき、67 + 444 + 18 +
380 + 18 = 927mmとなりますが、トップ
の板を上乗せとすると側板の高さは
909mmとなりサブロクの合板の長さの
半分910mmに近く合理的です。
以上でA3、B4、A4、レターサイズの入る
高さが決まりました。
4.上乗せ部分の棚板配分
床から天井までの高さが2367mmです
ので上記の大きな本用の上に残る空間
は1440mmということになります。
結論から言うと270mmの高さの棚を5段
作れます。 そしてB5以下のサイズの
本はここに僅かな隙間を残し入ります。
横に3列あるわけですから、総幅は
9000mmとなりますが、B5サイズに分類
された本は8000mm近くありますので、
適当な空きスペースが残ります。
5.4列目の配分
4列目は下から上まで奥行き200mmとしていますが、残るA5、B6サイズの本はかなりゆとりを持って入りそうなので、バランス
を考えて配分しそれぞれの高さを225mmと199mmと決定し各5段としました。
(67 + 225 x 5 + 199 x 5 + 18 x 10 = 2367mm)
B6サイズ以下の本もここに入れることにします。
6.その他の部分の構想
4列目の右側からドア枠まで300mmほどの空きが出ます。 この部分がもったいないのでCD、
CD-ROMを保管する場所とすることにしました。 300mmを全て使うと窮屈になりますので、内寸
225mm幅とし上下2ブロックに分けて更に窮屈感をなくすと共に書斎の電灯のスイッチ操作の支障が
ないようにしました。
(奥行きは150mm。)
更にドアの上の空間に本棚・CD収納に連続して200mm奥行きの棚を2段設け上段は家庭内LANの
ハブやTVのブースターを設置するスペースとし、下段はA6サイズの本棚としています。
以上文章にするといかにもとんとん拍子に各部のサイズが決まったように思えますが、
本のサイズ、
本の量、棚の高さ配分、棚の段数
の計4つのパラメーターを使ってバランスを取るわけですから、
結構時間が掛かっています。 しかしじっくりと十分な検討をしただけのことがあり、今後増える本も含めてスペース配分の矛盾は2年を過ぎた今でも発生しておりません。
構造設計
他の大型収納家具に比較してこの本棚が構造上大きく違うのは、棚の段数が極めて多いことです。 棚には固定棚と高さ可変の棚があるわけですが、本のサイズ別の量を分析した上で作るわけですから、可変棚の意味はあまりありません。
しかしながら上から下まで固定棚というのは組み上げが非常に困難になりますので、高さ可変ではないのですがニッケルダボで受ける棚をかなり設けるようにしてあります。
当然その部分は荷重によるたわみが相当出ますが、これまでの経験でたわみが出ても600mm幅であ
れば強度的には問題はなかろうと結論付けました。 公共の場ではなく私の書斎内ですから実用上問題
なければ多少の外観のまずさは我慢しようと割り切ったわけです。
寸法図中青線で示したのはそれら固定されない棚で組み上げには関係しません。 尚最上部の天井に
固定する板も青で示されていますが、これは側板組み上げ時には関係ないことを意味しています。
構造設計でもうひとつ大事なことは側板を1枚板で作るかどうかです。
言うまでもなく床から天井まで通しの1枚板で作った方が強度が取れますが、材料の無駄が出てきます。 というのは、下2段の部分は奥行き300mm、その上は200mmとしたため、2400mm通しで側板を加工すると幅100mmの端材が出てしまいます。 100mm幅を有効に使うのはちょっと難しいですから無駄な端材となる可能性が多いのです。
ということで今回左側3列は側板を300mmの部分と200mmの部分に分けてしまいました。 こうすることは組立の容易さにも繋がります。 また200mm奥行きと300mm奥行きの境目は幅が狭いながら横方向がフラットなカウンターのような感じとなり見映えも良くなります。
4列目の右側の側板は上から下まで200mmの奥行きですので1枚板としています。
こんな構造は自立型の本棚の場合には横方向の揺れが加わったときに大変不安定になりますが、基本的な考え方が壁と壁の間に嵌め込んでしまうことにありますし一番左の側板は壁に太いネジで固定してしまいますので不安定になることは皆無です。
私が壁と壁の間に嵌め込んでしまうタイプの収納家具を好む大きな理由がこのにもあります。 最小限の手間と簡単な構造で強度的に非常に高いものが作れるのです。
本棚横のCD、CD-ROM収納スペースはどうと言うことありませんが、奥行きを安易に150mmとしたのは失敗でした。 CDケースの奥行きは142mm程ですので150mmの奥行きですとCDケースが奥にもぐりこんでしまいます。 これでは沢山入っていると取り出しにくくてどうしようもありません。 従って現在は18mm厚の合板を20mm幅に切った棒を奥にいれCDケースの手前が若干飛び出たままとなるようにしてあります。
学習効果とでも言いましょうか、この後に作ったCDアルバムラックの場合には、この経験を生かし最初から奥行きを130mmとしました。 上部のCD収納スペースは、上からぶら下がるような固定方法となりますが、最も右手の下の棚はドア枠の上に乗りますのでこれと木ダボで締結することにより、CD収納スペースを支える力を高めてあります。 見映えを考えこれら2つのCD収納スペースは壁に固定しておりませんが、頑丈そのものになっています。
組立上の勘所
何しろ床から天井まで届く代物ですから、他で組み立ててから持ち込むなんていう手は使えませ
ん。 組立の手順は左の図をクリックしていただくと一目瞭然でご理解願えると思います。
最初に奥行き300mmの部分を作ってしまいます。 全て固定棚ですが木工ボンド接合に木ダボと
スレンダースレッドネジ併用の
極めて頑強になる接合方法
で組み立てます。
その上に奥行き200mmの棚を形成するのですが、12時間以上経過して木工ボンドの接合力が
最大になってから作業します。
以下に述べる側板と箱或いは棚板の接合は全て木ダボとスレンダースレッドネジで強化した
木工ボンドによる接合です。
この箱の左側に500mm程の空間を取った上で左端の側板を立てます。 木ダボを使っている為位置決めが簡単ですれることがありません。その上で固定棚2枚を側板に嵌め込み左側からスレンダースレッドネジで固定します。
次に左から2番目の側板を箱の木ダボに落とし込み、下の棚板からその上の棚板へと嵌め込んでゆきます。(2人で作業できます。) そうして右側からスレンダースレッドネジを打ち込みます。 多少横に揺れてもこれで自立していますが、そっと左端に組み立てたものを移動し壁に押し付け位置関係を確認しましたら、ネジで壁に固定してしまいます。
3番目の側板と棚板2枚を同様に嵌め込み固定しますが、2番目の側板と棚板の接合にはスレンダースレッドネジを左から斜め打ちで対処します。 同様に4番目の側板と棚板も組み上げてしまいます。
ここまでは2人で比較的簡単に組み上がりますが厄介なのは5番目の側板と棚板の接合です。 ここに入る本が小さいことと天井までの通しであることから棚板の数が多くニッケルダボで受ける棚を除いた固定棚が5枚もあります。 3人で何とか棚板を支えながら側板を木ダボに嵌め込むのがやっとでしょうが、家内と2人で組み立てるしかありません。 一計を案じて次のような手順で2人で組み立てられました。
端材で長さが49mmの板を1枚、468mmが2枚、442mmが1枚、416mmが1枚用意しました。 一番下の棚を左側の側板に木ダボで嵌め込みネジで左側から固定します。 そして49mmの板を床と棚板の間に挟みます。 その上の棚を同様に固定し下の棚との間に468mmの板を挟みます。こうして順々に切断した端材を固定した棚板の間に挟めば、全ての棚板は水平になっています。
こうしておいて、接合する側板を下の棚板から木ダボに嵌め込んでゆきます。嵌め込んだ部分が外れないよう一番下の棚板だけはネジを軽く締めこみます。 こうして家内と2人だけで無事全ての棚板の木ダボに側板がうまく嵌め込めました。
最後に天井に固定する最上段の棚板を固定して終了です。 この場合も側板との接合は、スレンダースレッドネジの斜め打ちを使います。
仕上げと塗装
取り立てて特殊なことをしておりませんが、#240のペーパーで表面仕上げをした上で全体をポアステインのチェスナットでかなり濃い目に着色した上で1液性ウレタンニス(速乾ドリーム)を塗装しました。 その理由はラワン合板とシナ合板の色調のかなり違う材料が混在していたのをほぼ同じにしたかったのと、速乾ドリームの作業性の良さ(1日で2回塗りが可能)による所です。 このニスの高性能さは大変すばらしく、極めて表面は固くなりしかも艶が綺麗です。
詳細解説は以上ですが殆どが端材で出来たとは思えないような出来栄えで満足度は高く多量にあった本も合理的に整理できました。
(完)
参考資料:
寸法図
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