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デスクトップ小型アンプ
   
2010/11/25

構想              (註: 本テーマに関する全てのご質問はお受けできません)

 低周波発振器が完成したので動作をより正確にチェックできるオーディオ
 アンプが作れるようになりましたので、懸案の所有するLPレコードのCD化を
 実現するアンプを作ることにしました。
 とは言ってもそれ程大袈裟なものではなく、右写真に見えるUSBオーディオ
 アダプターとレコードプレーヤーの間に繋ぐ、インターフェース的な物で、
 書斎で使う省スペースアンプという側面も兼ね備えています。

先ず仕様について簡単に説明しておきます。

  1.LPレコード用のイコライザーアンプを内蔵していること。
    LPレコードプレーヤーには電磁型のカートリッジが付いておりますが、
    カートリッジの出力電圧は大変低いので周波数の補正をしながら増幅
    するイコライザーアンプが必要になります。 購入したUSBオーディオ
    アダプターにもイコライザーは内蔵されていますが、ヘッドフォーンアン
    プを含め余り高性能ではなさそうですので、今回製作のアンプに内蔵し
    ます。                                           USBオーディオアダプター (オンキョー SE-U33GXV)

  2.録音レベルを調整できるよう独立したレベルコントロールを有する録音出力端子を持つこと。
    ADコンバーターに送り込む時に適切な信号レベルにする必要がありますが、接続するUSBオーディオアダプターによっては
    その調整が出来ない物があるので、専用のレベルコントロールを持たせます。 尚必要な信号レベルが判らないので、AUX
    標準入力レベルの100mVに対し最大出力レベルを1Vか3.2Vに切り替えられるようにします。

  3.机上のスピーカーを駆動する10W程度の出力を持ったパワーアンプを内蔵すること。(音質はあまり拘らない。)
    私の机の上のスペースの有効利用のために、これまで使ってきたデンオンのアンプは家内の家事スペースで使うアンプとし
    て、今回作るアンプを私のデスクトップアンプとして使いますが、極力薄くして棚の下にぶら下げることを考えています。
    真剣に聴く時はヘッドフォーンを使いますので、音質はそれほど拘りません。

  4.高い音質を持った16-300Ωのヘッドフォーンに対応できる専用アンプを内蔵する事。
    真剣に音を聴く場合にはヘッドーフォーンを使う習慣が身に付いているのと、深夜でも気兼ねせず音量を上げられるので、
    スピーカーよりも重要度が上がっています。 LPのCD化でも音の確認は重要ですからヘッドフォーンアンプの質は十分に
    高めておきたいと考えています。 詳しくは後ほど説明します。

  5.棚の下にスライドイン・アウトが出来極めて薄いこと。
    このアンプは折に触れてポータブルで使用する予定でいます。 従って極力筐体は薄く(45mm程度)で軽量にしておき、
    スライドイン/スライドアウトができる構造と結線がしやすい構造を健闘したいと考えています。 その結果現在置いてある
    アンプは無くなり、310 x 260x 420の空間を別な目的に使えるようになります。


ブロックダイアグラムの検討

 電気回路構成を最初に固める必要がありますが現在の構想は次のとおりです。
 入力は、Phono 1系統、RCA Pin/Mini-Phone Jack AUX 1系統(以上背面)
 RCA Pin/Mini-Phone Jack AUX 1系統(前面)の入力3系統とします。

 RCA Pin/Mini-Phone Jackと
 いう表現は、1つの系統でRCA
 Pin JackかMini-Phone Jack
のどちらかが使えます!ということです。 入力は3系統しか選択できませんが、
2系統はRCA Pin Jack、Mini-Phone jackどちらでもOKになり、勿論アダプター
は要りませんから便利です。 具体的には右のようなMini-Phone Jackに内蔵
されているスイッチで切り替える事になります。

それら3系統からロータリースイッチで選択した信号はバッファー回路に入りま
す。 そして3つの独立したVRを通って録音信号出力、スピーカー駆動パワー
アンプ、ヘッドフォーンアンプに分岐されます。

イコライザーアンプは43倍(32.7dB)のゲインを持ちますので、2.3mVのカートリッジ出力を標準AUX入力レベルの100mVまで増幅することになります。

イコライザーアンプの出力と2系統のAUXから入ってくる信号はロータリースイッチで選択されバッファーアンプに送り込まれます。 その出力には3つのボリュームコントロールが並列に入り、それぞれが録音出力信号アンプ、スピーカー駆動アンプ、ヘッドフォーンアンプのレベルコントロールとなります。

録音信号出力アンプはゲインが10倍(20dB)か32倍(30dB)切替のフラットアンプです。 標準入力レベルに対して最大出力は1Vないし3.2Vということになります。

スピーカー駆動パワーアンプは既に3回使っていて素性の判っている東芝のTA8220Hを使います。 4Ωのスピーカーを標準として考えますが、アンプのゲインは63倍(36dB)に設定します。 このゲインはメーカーの推奨ゲインよりも低いですがポータブルPC用スピーカーで試してみて発振などトラブルが起きない事を確認済みです。 こうすると入力信号100mVでフルパワー(約10W/4Ω)が取り出せます。

ヘッドフォーンアンプは増幅度が切り替えられるようになっていますが、これはハイインピーダンス ヘッドフォーンでは高い出力電圧が要るのに対し、ローインピーダンス ヘッドフォーンでは出力電圧は抑え気味にしたいためです。 詳しくは後述しますが、16-300Ωのヘッドフォーンに対しゆとりを持って駆動が可能!というのが目標です。

以上のイコライザーアンプ、バッファーアンプ、録音出力アンプ、ヘッドフォーンアンプには、物理特性が飛びぬけて優れたオーディオ用オペアンプ(LME49720)を全面的に使用することを考えています。


ヘッドーフォーンアンプをどうするか

微妙な音の聴き分けにヘッドフォーンを使う事が多いので、ここはかなり拘りたいと考えています。 2ヶ月前に完成したChu Moyタイプのアンプは大変簡単な構成ながら非常に高度な音質で気に入っておりまが、ひとつだけ弱い部分があると考えています。

それはインピーダンスが極端に高かったり或いは低いヘッドフォーンを十分に駆動する能力が低い事にありますが、少し突っ込んだ理解をするためにヘッドフォーンを駆動するアンプの出力はどの程度必要かの試算をして見ます。

まず必要な音量レベルですが、鼓膜が破壊するレベルは120dB近辺と言われておりそれより若干低い110dBあれば充分でしょう。(鼓膜破壊レベルの1/10のエネルギーになりますが、指揮者が立っている位置で聴こえる最大音量とも言われています。)

一方ヘッドフォーンの変換能率はメーカーや機種によって様々ですが、ざっと平均すると1mWの入力で100dB前後の音圧レベルです。 従って必要な最大音量レベル110dBを得るには10mWの入力信号が必要になります。 若し使うヘッドフォーンの変換能率が6dB低い94dB/mWであったとすると、必要な入力信号は4倍の40mWが必要になります。(実は現在物色中のヘッドフォーンで音は良いのだが変換能率が低い物として94dB/mWの物があったので触れています。) 最も低い物としては90dB/mWなんて物もあるかもしれません。

さてヘッドーフォンのインピーダンスはスピーカーシステムなどに較べると非常に幅が広く、16Ω-300Ωと考えないとならないと思います。 傾向としては高いインピーダンスの物は高額で高級な物に多いようですが、低いインピーダンスだからと侮れないような力の入ったヘッドフォーンも最近はあるようです。 そこで16Ωと300Ωで変換能率が100dB/mwと94dB/mWのヘッドーフォーンから最大110dBの音量を得るのに必要な入力電力、電圧、電流を一覧にしてみました。

  変換能率 必要入力電力 必要入力電圧 必要入力電流
16Ωヘッドフォーン 100dB/mW 10mW 0.57V 25.0mA
300Ωヘッドフォーン 100dB/mW 10mW 2.45V 5.8mA
16Ωヘッドフォーン 94dB/mW 40mW 0.80V 50.0mA
300Ωヘッドフォーン 94dB/mW 40mW 3.46V 11.5mA

これは私の独断的所見ですが、上の表で緑色で示したのは、9V電池で駆動するChu Moyタイプのアンプにおいて、出力電圧若しくは出力電流が十分に取れない可能性を示しています。  電池が弱って電圧が下がるとこれらは赤字に変わるでしょう。 その赤字で示したのは、9V電池駆動のChu Moyタイプアンプは能力不足で対応できない事を意味しています。

因みに私が現在使っているヘッドフォーンはDENONAH-D1000でインピーダンスは32Ω、変換能率は103dB/mWと僅かながら変換能率が高い事もあり(100dB/Wの物に較べ同じ音量を得るのに半分のアンプ出力でよい。)、9V駆動 Chu Moyタイプアンプでも問題ありません。 

但し音質に満足していないため追加購入しようとあれこれ試聴していますが音が良いだけでは駄目で、締め付け過ぎない装着感でありながら空気漏れが少ない、長時間聴いていて頭が痛くならず軽量である、等々それらの妥協線を見つけるのは容易ではありません。 そしてそれらの候補はインピーダンス55Ω変換能率94dB/mWとかインピーダンス300Ω変換能率103dB等と幅広くばらついています。

それらからどれを選択しても問題ないようにヘッドフォーンアンプを考ないといけない訳ですが、私の大雑把な計算では電源電圧を±6V以上に引き上げる事とアンプの電流出力能力の倍増が図れればほぼ解決できると考えています。

電源については±12Vでイコライザーアンプ、バッファーアンプ、録音出力アンプ、ヘッドフォーンアンプを駆動することにしています。 従って電源電圧の問題は解決しますので、アンプの出力電流の倍増方法を考えれば良いわけです。

 インターネットで色々調べてみると出力電流を増強する方法として最も人気があ
 りそうなのは、トランジスターでプッシュプルのバッファーアンプ(電圧増幅は無くて
 電流増幅を図るアンプ)
を組み、オペアンプに追加するタイプです。
 中でもダイヤモンドバッファーと呼ばれる方式を支持する声が大きいようです。

 これはこれで良いのですが、高性能を得るには特性が良く揃ったトランジスター
 (選別が不可欠)を使う事や、熱暴走問題が起きないための対策を始め色々気を
 つけないとならない点があるので、結構難しい面もあるように思います。

 そこで更に調べまくった所、A47アンプというのものが出てきました。
 左はオペアンプのOPA2604の技術資料に掲載されているものですが、A47アンプ
 の典型的な例で、『負荷に送り込む電流を倍増出来る!』との注釈が付いて
 います。

 このアンプの構成は、Chu Moyタイプのアンプ(青点線内)の出力をボルテージフォロワー(赤点線内)に送り込み、それらの出力を51Ωの抵抗で合成し出力電流増加を図ったものと考えられます。 使われているボルテージフォロワーを追加すれば出力電流は更に増大可能です。 このアンプの良い所は非常にシンプルであることで、Chu Moyタイプのアンプにオペアンプと2本の抵抗を追加するだけで実現します。

試作例を幾つか見たところ低インピーダンス駆動に強いオペアンプを使うと歴然とした効果があるようです。 私の好きな『シンプル イズ ベスト』にも適う事と、熱暴走問題や部品選別などを考えることなく製作できますから、電流出力増強の有力候補として設計を進めてみようと考えています。



2011/12/02

構想の続き

 アンプの上背は最大で50mm程度に抑えたいと既に決めています
 が、幅や奥行をまだ決めていません。 そのうち奥行については
 160mm以下にしないとスピーカーのバスレフポートに被ってしまうの
 で、150mmの奥行と決めました。

 残る幅ですが私がいつも購入するケースの専門店で、350 x 150 x
 40mmのアルミシャーシを販売しているのを発見しました。 高さは
 40mmと若干低すぎる感じがしますが、この上は60mmになってしま
 いますので、40mmで製作可能かどうか仮検討します。
 またシャーシですから蓋をどうするかも別途考えないといけません。

 このシャーシに取り付けるブロック(回路基板)は、スイッチング電源
 基板、スピーカー駆動アンプ基板、イコライザー基板、スタンバイコン
 トロール回路/±電源基板、バッファーアンプ/録音信号アンプ/ヘッ
 ドフォーンアンプ基板の5枚になります。

それらブロック全てを含む回路は上の通りですが、これを元に各基板のレイアウトを組んで基板サイズを決定して、前述のシャーシにうまく収まるかどうかの検討を加えました。(この回路はあくまで構想検討用であり、最終的には定数や使用部品が変更になる可能性があります。)

 但し基板サイズだけはほぼ決まっていますので、それを元に全体のレイアウトを検討し
 ており、左の図がその結果です。

 高周波ノイズ発生源となる 12V 4.3A スイッチング電源と±15V出力DC-DCコンバータ
 ーを含むスタンバイコントロール/±電源基板はシールド板で仕切った中に入れ、左奥
 に追いやります。 スピーカー駆動用アンプはシャーシの背面を放熱用に使いますので
 位置の自由度は低く背面中央に置いています。

 その右側の開いた空間にAUX 1とPhono端子が入ります。 Phono端子の直近にイコ
 ライザーアンプ基板が配置され、シールドケーブルなど使わずに接続できればと思います。 そのイコライザーアンプは雑音源から最も遠い位置に設置されることになります。

そして録音信号アンプ/バッファーアンプ/ヘッドフォーンアンプは細長い基板にまとめて前面パネルに接近させて固定します。

こうした時の問題点としては前面に出るツマミやスイッチの使いやすさやレイアウトの美観ですが、この後説明する問題もあり、上下のほぼ中央横一直線に、ツマミ、スイッチ、コネクター等を並べるレイアウトとしています。


大変変わった使い方

 左の図はこのアンプの極めてユニークな使
 い方を表しています。 この図の上1/3が
 書斎内で使っている時で、棚から5mm程
 隙間を持たして吊り下げる構造です。

 この時アンプの仮面と机の上面の間の距
 離は410mmもありますので、かなりの空間
 が有効利用可能となります。 パネル面に
 入る文字は操作するツマミ等の上方に入
 れることとします。   そしてアンプ全体は
 引き出しと似た構造を使ってスライドイン/
 アウト出来るものとします。

 一方外して使う場合には上下を逆さにして
 置きます。 下2/3がそのイメージ図です。
 どうしてそんな変な事をするのかというと、
 接続端子は常識的な背面パネル取り付け
ではなく、書斎で使う時には底板の一番奥に付き下向きです。 従ってアンプを固定状態でもプラグの抜き差しや配線が可能になります。 一方アンプを外して使う時には逆さに置く事により接続端子が上向きになるようにします。 当然ながら上から覗きこんで配線が出来ます。  ようするにどちらの場合も接続したり外す操作が背面に接続端子がある場合よりもやりやすくなります。 但し外して使う場合には前面パネルに入れた文字が逆さになり読み難いので次のような解決策を考えます。

アルミパネルは断面がL字型の物を使いますが、アンプを外して使う時にアルミパネルの幅の短い部分が上面手前に来るようにし、ここにも文字入れをしておきます。 アンプの厚みが薄ければこちらの文字の方が見やすいのでそれらを読むようになります。 外して使う時には前面の文字は逆さになり目立たない方が良いので、最も低い位置となってツマミに隠れるくらいの方が都合が良いわけです。

これはアンプの厚みが薄いということから考え出したもので、お前あほか? との声が聞こえてきそうですが私は結構真剣に考えています。

 アンプの厚み(高さ)を薄くするのは当然ながら様々な基板が干渉することなく収ま
 るのかどうかが問題です。 そこで筐体の組立構造を含め検討しました。
 組み立て構造としては高さ40mmのシャーシを空いている部分を上に向けて置き、
 その手前にL字型のアルミアングル材を引っ掛けています。 アルミアングル材は
 2mm厚ですので、総高さは42mmとなります。 それに4mm厚の板(多分シナ合板)
 で上下を挟みますが、上の板の一番手前はアルミアングル材のところで止めます。
 従ってこの部分には2mmの段差を生じます。

 こうした時にL字型アングル材の下には高さ、奥行共に2mmの隙間が出来ますが、これはデザインの一部として考えます。 前面の裏に固定する細長い基板は1mmアルミ板を曲げたサブパネルに固定します。 固定方法は基板に高さ10mmの下駄を介して固着された3個の可変抵抗の固定ナットによります。 また基板の後ろ側は4箇所で5mmのスペーサーを挟んで、シャーシー底部分に締結します。

この構造とした時にロータリースイッチ本体は基板に干渉しませんが、ロータリースイッチの端子の先端が電解コンデンサーに接触する可能性があります。(図では縦の茶色の点線が端子の先端位置を表し、青の長方形は電解コンデンサーを表しているがそれらが横方向からは重なって見える。) その場合には端子を少々切り詰めようと考えています。 また上背が最も高い部品は電解コンデンサーですが、その上方には15mmほどの空間があり問題ありません。

取り付ける基板の中で一番心配なのはパワーアンプ基板で、特に今回は大容量電解コンデンサー(2200μF 16V)を2個も載せます。 この電解コンデンサーは高さが25mmありますが、この基板に含まれるパワーアンプICが背面の放熱板中央に取り付けられる位置とした時に、コンデンサーの上面とシャーシの空間は約5mm残ることが判りました。

検討の結果は一応問題はなさそうですが、総高さ48mmと希望の50mm以内に収まります。 そしてこれ以上縮めようがないほぼ限界であることが判りました。 これで各基板の製作、動作確認、調整に進めそうです。



2011/12/09

ヘッドフォーンアンプ回路テスト

このアンプで使う各ブロックの中でヘッドフォーンアンプだけは私は全く未経験な回路を使います。 未経験とは言ってもバッファーアンプをChu Moyアンプに並列に繋ぎ重たい負荷にも耐えられるという単純明解な構造ですから、その辺りを一度確認しておきたいと思います。

実験 1

 最初の実験はバッファーアンプ無しで得られる性能です。 実験回路は左の図のとおりでChu Moy
 アンプそのものですが、回路定数は少し変えました。 繋がるヘッドフォーンのインピーダンスにより
 ゲインを3.2倍(10dB)または10倍(20dB)に切替えますが、最大出力とゲインは直接的に関係すると
 は思えませんので3.2倍だけで測定します。 入力に入った2本直列の抵抗(49KΩ)はボリュームを
 最大にしたときを模しています。
 負荷抵抗は16-300Ωのヘッドフォーンが使用対象ということで、15Ω、
 27Ω、47Ω、82Ω、150Ω、270Ω、470Ωの抵抗を負荷として使い、
 クリッピング出力がどのくらい取れるのかを調べます。
 この抵抗は手持ちの各値の1/4Wの誤差±5%の抵抗を直列・並列で
 1本と同値でワット数は1Wとした物を使いました。(右の図参照)

電源電圧は±12Vを使います。 またオペアンプは2回路入っておりますが、片方は動作している方に悪影響が出ないようボルテージフォロワー結線とし、+入力はGNDに接続しておきます。

実験を始める前には周波数を変えた時に駆動能力の違いが大きく出るのではと考えましたが、スポットチェックではごく僅かの差(1dB以内)でした。 そこで1KHzの時だけに絞り、負荷抵抗は予定通り変えて最大出力電圧を測定しました。 そしてその結果は以下のとおりです。

      バッファー無しA47アンプのクリッピング出力
  ゲイン設定 負荷抵抗 15Ω 27Ω 47Ω 82Ω 150Ω 270Ω 470Ω
  3.2倍(10dB) 入力電圧 134mV 240mV 424mV 707mV 1.27V 2.12V 2.40V
  出力電圧 0.41V 0.78V 1.34V 2.26V 4.10V 6.72V 7.78V
  出力電力 11.2mW 22.5mW 38.2mW 62.3mW 112mW 167mW 129mW

これを見て確認できる事は、まず16Ω時に必要な出力電圧は0.8Vでしたが、1Ω低い15Ωで0.41Vと半分の値になっています。 16Ωの負荷抵抗の場合少し出力電圧は上がりますが、約半分足らないと言っても良いでしょう。 また300Ωの時には3.46Vの出力が必要ですが、それより低い270Ωで既にそれ以上の出力電圧となっていますから十分な値が得られています。

これらよりChu Moyアンプは9Vの電源電圧で、音圧レベルが100dB/mW程度あるヘッドフォーンであれば、10Ω-300Ω位のインピーダンスに対し駆動能力がありそうです。(9Vの時300Ωで20mW位の最大出力が得られると試算!) 改めてChu Moyアンプはバランスが取れた合理的な設計だと思いました。


実験 2

 実験 1を踏まえてChu Moyアンプにバッファーを追加したA47アンプの実験に入りました。
 実験回路は左のとおりで、Chu Moyアンプの出力はバッファーの+入力に入ります。その出力と
 Chu Moyアンプ出力はそれぞれ33Ωを通して結ばれ出力となりますが、2.2KΩの帰還抵抗はそこへ
 接続変更となります。

 実験1と同様ゲインは3.2倍のみとしていますが、Chu Moyアンプとバッファーアンプを接合する部分
 に入る2本の33Ωの抵抗はオリジナルでは51Ωになっています。 これはChu Moyアンプとバッファ
 ーアンプの干渉を防ぐためのものと考えられますが、これまでに試作された方でより低い抵抗にした
 方が出力電圧は高く取れるとした報告があります。

 そこで私も原回路の51Ωとより低い33Ωで実験を進めそれらの違いを確認することにしました。(回路図に33/56と記載してある理由です。)  この実験回路ではもう1個のLME49720を追加して片側だけを使いましたが、1個で実験回路を組む事も可能です。 結果は以下のとおりです。

      バッファー付きA47アンプのクリッピング出力(33Ω使用時)
  ゲイン設定 負荷抵抗 15Ω 27Ω 47Ω 82Ω 150Ω 270Ω 470Ω
  3.2倍(10dB) 入力電圧 269mV 492mV 823mV 1.38mV 2.11V 2.26V 2.33V
  出力電圧 0.85V 1.56V 2.62V 4.39V 6.72V 7.25V 7.43V
  出力電力 48.2mW 90.1mW 146mW 235mW 301mW 195mW 117mW


      バッファー付きA47アンプのクリッピング出力(56Ω使用時)
  ゲイン設定 負荷抵抗 15Ω 27Ω 47Ω 82Ω 150Ω 270Ω 470Ω
  3.2倍(10dB) 入力電圧 276mV 495mV 831mV 1.39mV 1.98V 1.16V 2.31V
  出力電圧 0.85V 1.56V 2.62V 4.41V 6.36V 6.89V 7.43V
  出力電力 48.2mW 90.1mW 146mW 237mW 270mW 176mW 117mW

これらを見ただけでは判然としないので、実験1の結果も含めて、A47アンプの低インピーダンス駆動能力がどうなのかをグラフ化しました。



82Ω以下の低い負荷抵抗の場合にはバッファー無しの時に対して3.8-4.3倍出力電力が増大します。 これはバーブラウンがOPA2604の技術資料で述べている『出力電流を倍増出来る回路!』が正にそのとおりであることを確認できたわけです。
(出力電流が2倍になれば出力電力は4倍になるが、100Ω以下の負荷でそれが出ている。)

但しそのご利益は負荷インピーダンスが82Ωを超えると急激に減少し、150Ω以
上では出力電力が下がり出しバッファーアンプ無しとの差が無くなって来ます。
何故そうなるかを簡単に説明しておきましょう。

右の図をご覧ください。 オペアンプ回路の[電源電圧が一定 = 出力電圧が
一定]
、または[出力電流一定値 = オペアンプの最大出力電流]の場合の
負荷抵抗と出力電力の関係を表しており、電圧一定の場合には反比例、電流
一定の場合には正比例となります。   実際のアンプではどうなるかというと、
負荷抵抗が低い領域では最大出力電力はアンプの出力電流供給能力で決ま
り、負荷抵抗が高い領域では電源電圧で決まりますので、山型のグラフを呈し
ます。(右図の赤と青の実線) 上のグラフは正にそれで150Ωを頂点とした山
型となっており、150Ω近辺がターニングポイントになります。

頂点の左側では電流供給能力が重要になるのでバッファーアンプの効果が大
きいわけですが、頂点の右側では電流供給能力よりも電源電圧が重要になる
領域の為バッファーアンプを入れたご利益が出なくなるわけで、決してオペアンプの問題ではありません。

これを拡張して考えると、更にバッファーアンプを増やしてやれば出力電流供給能力が上がり、150Ω以下の負荷抵抗でのパワーがアップし頂点は左にずれるでしょうし、電源電圧を上げれば150Ωより高い負荷抵抗でのパワーが増大し頂点は右にずれるはずです。

実測の結果では16-300Ωのヘッドフォーンに対し40mW以上の電力を供給できる能力(クリーム色のエリア)が既にありますので、バッファーアンプの更なる追加や電源電圧の増加は不必要だと思います。

Chu Moyアンプとバッファーを接続する部分に挿入する抵抗については、最大出力が電源電圧によって決まる領域で低い値の方が出力電力が大きくなる(駆動能力が高まる。)のが確認できていますが、今回の実験以上に抵抗の値を下げても問題が出ないのかは判断できません。  しかし実験した33Ωでは発振したり動作不安定になることはなかったのと56Ωの時よりも高い負荷抵抗での出力電圧が取れますので、33Ωにて進めて行きます。

A47アンプは幅広いヘッドフォーンに対し十分な駆動能力が得られる事が確認できましたが、ひとつだけ心に留めて置くべき点があります。 それはヘッドフォーンアンプのゲインです。 私の仮説では40mWの出力が得られれば良いわけですが、300Ωの場合3.46Vの出力電圧になります。 また16Ωの場合には0.8Vですが、それらの出力電圧に対し入力電圧は前者の場合はゲイン10倍で346mV、後者はゲイン3.2Vで250mVとなり、標準入力電圧より2.5-3.5倍高い値になります。

と言う事は入力電圧不足で十分な出力が得られない可能性があるわけです。 これを解決するには更にゲインを上げる必要が出てくるのですが、経験則ではそんなことまでしなくても入力電圧不足は感じておりません。 実際にヘッドフォーンアンプのゲインが20dBより高い例なんてお目に掛かった事がありません。 それどころかゲイン1(0dB)のヘッドフォーンアンプすら存在します。 それは実際の信号レベルが100mVよりかなり高いからだと私は理解しています。

これでA47アンプの優秀な低負荷駆動能力が確認できましたので、回路全体をもう一度確認して各基板のレイアウトを最終のものとしたいと考えています。




2011/12/16

各基板レイアウト検討

まだ定数の変更はありうるもののかなり最終に近いと思う回路及び基板レイアウトの検討を致しました。 回路については以前紹介したこちらはアップデートされています。

 A47型アンプの動作が大変満足すべき結果を得ましたので、全ての基板レイアウトを詰めました。
 スピーカー駆動アンプ基板は以前起したレイアウトに大容量電解コンデンサーとショットキーバリヤー
 ダイオードを追加するだけですので、簡単に終わりました。 左の図がそれですが、青点線で示した
 1000PFのコンデンサーだけは裏付けとしました。 それとこの図は部品取り付け面側を見ています
 が、実際にはひっくり返して取り付けるようになります。 それは電源接続点がこの図面では右にありますが、実際にはこの基板の左側に電源回路が配置されるためです。

 次にイコライザーアンプ基板について触れておきましょう。
 イコライザーアンプは入力信号レベルが2-3mVという小信号ですから、周りの
 ノイズを受けやすいため電源回路から最も離れていてしかも入力端子に近い
 所にレイアウトされます。 この回路の中の帰還回路部分は抵抗3本とコンデ
 ンサー2本から成りたち、低域をブーストして高域はカットするRIAA補正をして
 います。
左上の図左側が設計値です。 この中には88.4KΩや0.036μFなど既製品では存在しない値の抵抗やコンデンサーがありますが、図の右側のように抵抗はE12・E24系列、コンデンサーはE12系列の値を組み合わせて設計値に近い値が出るようにしています。 こんなところからこの回路だけはオペアンプの周りに取り付ける部品が多くなってます。 それとレイアウトでは表現されませんが、この基板だけはノイズの発生が少ない金属皮膜抵抗を全面的に使います。

 次がスタンバイコントロールと電源の基板です。 左の基板のレイアウトで中央に位置しているのが
 DC-DCコンバーターで、その左側がスタンバイコントロール回路、右がDC-DCコンバーターの±15V
 出力を電解コンデンサーを通した後に3つのコネクターに導きます。 取り敢えず必要なのは2系統な
 のですが、場合によってはイコライザーの前にMCカートリッジ用のヘッドアンプ追加の可能性がある
 ため3系統としています。
 スタンバイコントロール回路はスピーカー駆動アンプを使う、使わないを制御するわけですが、実は
パワーアンプのON/OFF時に発生するショックノイズを完全に抑えます。 その方法はパワーアンプIC
に含まれるスタンバイ機能を使い、ショックノイズが発生する時(電源ON/OFFの電源電圧の上がり下がり。)にはスタンバイONと
してアンプの動作を停止することによります。

電源ON時には自動的にスタンバイモードはONで(スタンバイピンが0V。)、アンプは動作を停止しておりますからショックノイズは
発生するものの、スピーカーからは何も聞こえません。 スタンバイスイッチをON側に倒すと12Vの電圧がスタンバイピンに掛かり、
アンプは動作状態になります。 これが電源ON時の動作です。

次に電源スイッチがOFFになった、電源コードが抜かれた、スタンバイスイッチをOFF側に倒したのいずれかが発生すると、スタン
バイ回路は即遮断されスタンバイピンの電圧は0Vになり、アンプは通電していても動作を停止し音が止まります。

この間アンプの電源には大容量コンデンサー(4,400μF)が繋がっているので、アンプには短時間継続して電流が送られその後に
電源電圧が下がり出しショックノイズが発生しますが、その際スタンバイモードはONであるためスピーカーからノイズは出ません。

尚アンプ基板にはショットキーバリヤーダイオードが入っていますが、これは大容量電解コンデンサーからスタンバイコントロール回
路に電流が逆流するのを防止し、スタンバイコントロール回路が即遮断する働きをします。

 最後がバッファアンプ、録音信号増幅アンプ、ヘッドフォーンアンプが入った細長い基板で左の図です。

 バッファーアンプはオペアンプを使ったボルテージフォロワーで、ゲインは1倍しかないのですが、出力インピー
 ダンスが低いので信号を3分割することによる損失を最小限に抑えられます。

 録音信号増幅アンプはゲインを切り替えられますが、設計値として34/9.8倍としました。 尚スイッチで切り替
 える際に帰還抵抗が入らない(Open)の状態になるとアンプは裸ゲイン(140dBで10,000,000倍)になり、ショッ
 クノイズ発生を始め大変危険な状態となります。 そこでスイッチが切り替わる時にでもゲインは34倍に留まる
 回路としています。

 これら2つのアンプへは電源基板から送られてきた±15Vを47μFの電解コンデンサーを通して電流供給します
 が、残るヘッドフォーンアンプへはショットキーバリヤーダイオードを通して2,200μFを通過した電流が送り込ま
 れます。 この理由は上のスタンバイ回路と似ており、オペアンプが電源電圧の上昇・下降の際に発生する
 ノイズ(ノイズ発生量はオペアンプによって随分異なる。)を阻止して、耐入力の低いヘッドフォーンを保護する
 という点にあります。

 但しヘッドフォーンアンプ回路にはスタンバイ回路がありませんから、その目的を果たせるよう22KΩ、10μF、
 2SC1815GR、そしてリレー(G6A-274P)を組み合わせた遅延回路を使っています。

 計算上は電源スイッチがONとなってからこのリレーが動作しヘッドーフォーンが繋がるのは0.7秒後になりま
 す。 その前にオペアンプは電源電圧上昇時のショックノイズを発生しますが、ヘッドフォーンが繋がっていま
 せんからショックノイズで壊れる事はありません。

電源がOFFとなった時にリレーは即遮断し、ヘッドフォーンの接続は解除されますが、この間にオペアンプは2,200μFのコンデンサーからの放電電流で動作が若干継続し、その後に減電圧によるショックノイズが発生しますが、ヘッドフォーンは接続解除されているのでセーフという訳です。

ここでもヘッドフォーンアンプのオペアンプのみにコンデンサーからの電流が供給されるようショットキーバリヤーダイオードで逆流を防止しています。 尚ダイオードの後に30Ωの抵抗が入っていますが、これは電源ON時にはDC-DCコンバーターの出力電流が過大になると動作が異常になる可能性があるので、それを0.5A以下に抑える目的で入れてあります。 定常状態ではオペンアプは最大で80mA程度の消費電流になると推測され30Ωにより2.4V、ショットキーバリヤーダイオードで0.3-0.5Vの電圧降下があり駆動電圧は±12V近くまで低下します。

尚ヘッドフォーンアンプだけはLME49720ではなくOPA2134としていますが、最終的ではないものの次の理由によります。

1.低抵抗負荷ではLME49720より最大出力が大きく取れる。
  A47アンプのその後のスポット実験で、OPA2134は82Ω以下の負荷抵抗でLME49720よりクリッピング出力が20%前後大きく
  なることを発見しています。(原因不明)   82Ω以上では逆に若干下がると言う奇妙な結果となっていますが、低負荷抵抗
  での出力増大の方が恩恵を受けます。

2.オフセット出力電圧、ショックノイズが低い。
  FET入力のOPA2134は、構造的にオフセット電圧が低くなっていますし、電源ON/OFF時のショックノイズも低いという実績が
  あります。

3.OPA2134の音が好き。
  人の好みは様々で音の世界も同様ですが、私はOPA2134の音質を大変好んでいます。 これは無論物理特性では説明でき
  ない領域の話ですから理屈抜きです。 まあLME49720を色々いじってみると違った結果が出てくるかもしれませんが。



2012/03/16

一部の設計変更

約3ヶ月中断していましたが実は流し台のLED照明器具を製作している間に何となく電源回路の考え方が気に食わなくて、色々検討しなおした結果、その他のマイナーな回路も含めて設計変更しました。

電源回路の考え方が気に食わなかった!という部分については全面的にスイッチング電源に依存する考え方でした。 スイッチング電源の宿命として高周波ノイズの発生がありこれを完全に取り除くのはほぼ不可能です。 但し残っているノイズが聴感上影響するかと言うと、可聴周波数を遥かに超える領域ですからまず問題は無いのですが、オシロスコープで信号を見れば例え聴こえないとは言っても汚らしいそれらの雑音波形が見えてしまい精神衛生上は極めて良くありません。

これまで考えてきた電源はスイッチング電源でAC100Vから12V 4.3Aを得てパワーアンプを駆動しますが、その電圧を入力とするDC-DCコンバーターで±15Vを得て、ヘッドフォーンアンプを始めパワーアンプ以外の全てのアンプを駆動するという考え方でした。 その中にはmVレベルの小さな信号を増幅するイコライザーアンプも入っていたのです。

 ここまでスイッチング電源に依存するのはやりすぎではないかな?
 というのが気に食わない考え方でした。 その代案を色々考えたの
 ですが、結論としてパワーアンプはスイッチング電源で12V 4.3A供給
 は変更無しとし、その他のアンプ全ては12V-0V-12Vのトランス出力
 を整流しレギュレーターを通して±12Vを得て駆動します。
 この時に電源スイッチはトランスのON/OFFをメインとし、スイッチング
 電源は単独ではONにならないようにします。

 左の回路図は全ての変更を反映したものになっています。
 ポップノイズ対策はヘッドフォーンアンプ用とデジタルアンプ用の2つ
 を組み込みますが、回路的にはヘッドフォーンアンプ2で採用した遅
 延リレーを使う方法で、それぞれヘッドフォーンアンプの出力の
 ON/OFF
パワーアンプのスタンバイ回路ON/OFFを致します。

 音質には無関係の視覚的なことですが、
 パイロットLEDはメイン電源スイッチを入れる
と1本が赤く点灯、約2秒後に青く変わります。 これでヘッドフォーンで聴く準備が出来た事になります。
もう1本のLEDがパワーアンプの電源スイッチを入れスタンバイ機能が解除された時に緑色に点灯します。
 つまりスピーカーを使う時には青と緑の2本のパイロットLEDが点灯
 し、スピーカーがOFFの時には青のLEDのみ点灯となります。

 以上が大きな変更点ですが、マイナーな変更としてヘッドフォーン
 アンプのゲインを固定とした事、フィルターコンデンサーの容量増加
 などがあります。

 左の図のようにスタンバイ/±電源基板のレイアウトを再度検討し
 ました。 DC-DCコンバーターを外してトランスを載せていますが、
 トランスが大きいため基板は約40%近く大きくなっています。

また一番大きな3種類のアンプが載る長い基板も一部変更があり右の図のようになっています。
図の一番上にあるのが、ポップノイズ対策用リレー回路ですが、±電源の消費電流のアンバランスが大き
くならないよう、ここだけは24Vで動作させています。 またヘッドフォーンアンプの電源には大容量のコンデ
ンサーをかまして電源OFF時のアンプ動作を延長していますが、リレー回路は即断させたいのでそれの電
源はかなり下にある逆流防止のショットキーバリヤーダイオード(11DQ04)の前からジャンパーワイヤーで
導いています。
 アンプ全体の寸法には変更がありませんが、フロントパネルのレイ
 アウトには若干の変更があります。 左の図がそれですが、トグル
 スイッチが1個外れたのとLEDが1個追加されています。

 たったスイッチが1個減っただけですが実際にはあまり使わないで
 あろう部材が減り使い勝手は良くなる方向になるでしょう。

 本アンプの変更はこれで終わりでなく思考実験により更にこうしたい!などの変更がある
 や もしれません。 従ってもう少し様子を見ることにします。 それから製作に着手した方
 が賢明と考えています。



2012/04/27

製作開始

先週の3連続大ポカの余波が落ち着くまでちょっと違った事をやろうということで、電源/スタンバイコントロール基板、パワーアンプ基板を組み上げました。 それらは順調に進み簡単な動作テスト(方形波による周波数特性の確認)はOKですし、妙な発振の兆候や動作の不安定さもありませんでした。 但しスタンバイコントロール回路のリレー遅延動作は、コンデンサーの容量を100μFから330μFに増加し、抵抗も100KΩから150KΩにして4.5秒後にスタンバイが解除されるように変更しました。

±12Vの電源回路とスタンバイコントロール基板です。 C・Rの乗数をいじって電源ON後スタンバイが解除されるまで4.5秒後となるようにしました。

同じパワーアンプICを使った3作目のパワーアンプ回路。 ゲインはRfを820Ωとして38dB(80倍)にして、AUXの信号が100mVでフルパワーが出るようにしています。

100Hzの方形波はサグが観察されますが、これは低域が減衰していることを示しています。 この感じですと低域カットオフは5〜7Hz位と推測します。

1KHzの再生波形は正確な方形波そのもので、100Hz〜10KHzの周波数特性は完全にフラットです。

10KHzでは左肩がほーんのすこーし丸くなっているかな?というレベルで、周波数特性は100KHz近くまで素直に伸びています。 オーバーシュート、リンギングが全くなく動作が大変安定しています。

50KHzでは原波形がそもそもなまっていますが、そこからの変化として見ると、左肩は10KHzの時よりも丸みが大きいです。 これからすると周波数特性上限は200KHz辺りです。 動作が安定そのものであることに変わりはありません。


2つの基板が順調に出来上がって気をよくしたので、大きなオフセット電圧問題を片付けようと、このアンプのイコライザーに手をつけました。 イコライザーはもう一つ作るのですが、この基板には容量の大きな電解コンデンサーを取り付けるスペースが全く無く基板の裏側に寝かして取り付けるしかありません。 そうすると違う容量の物に交換するのが容易なので、このアンプのイコライザーで定数を決めてそれと同じコンデンサーをTV連動型でも採用する!という手順を踏みます。

 左図の赤点線内が改造後で
 右の図が改造後の基板レイア
 ウトです。 220Ωを外して少し
 移動して、コンデンサーを接続
 する穴(空色の部分)を確保し
 ます。 そして裏側に電解コン
 デンサーを半田付けするので
 すが、220μF、330μF、
 470μFと3種類を交換してテス
 トし、最終的には330μFとしま
 した。 この値に決定した理由は以下のとおりです。

 このイコライザーの入力のコンデンサー(0.47μF)と抵抗(47KΩ)
 ハイパスフィルターを形成しており、遮断周波数は7.2Hzとなっていま
 す。 一方220Ωと直列に入れるコンデンサーもハイパスフィルターを
 構成しコンデンサーの容量が少なすぎると7.2Hzより高い周波数から
 減衰するようになります。 ただし遮断周波数を下げるために容量を
増加しても7.2Hz以下にはなりません。 そこでカットアンドトライで遮断周波数が7.2Hz近辺となる最低容量を探し、それが330μFだったというわけです。

その後イコライザーとしての補正値がどうなったかについて大雑把な測定をしました。 入力信号レベルを-50dB/V(3.1mV)の一定の値とし、10Hz、20Hz、100Hz、10KHz、20KHzでの出力レベルとRIAA補正値との誤差を測っています。 その結果は、

10Hz -1.5dB、 20Hz -0.9dB、 100Hz +0.1dB、 1KHz ±0dB、 10KHz -0.2dB、 20KHz -0.1dB となっています。

低域端が若干補正不足ですが、これは超低周波雑音による弊害を避けるために前述のように7.2Hzを遮断周波数としているためです。 それを除けばRIAAに対する補償は大変うまく行っているといって良いでしょう。 従ってTV連動型アンプのイコライザーの追加するコンデンサーの値も同じ330μFにして改造する事にします。

残るはうなぎの寝床型のオペアンプが4個搭載される複合アンプですが、大きな穴あき基板がありませんので買出しをしてから製作に入ります。





小さな基板で直径8φの電解コンデンサーを2個付けるスペースなんてひねり出せませんので、こんなやりかたをしました。

左上は改造前の基板ですが、2本の抵抗を矢印の方向に1スペース移動します。 そうすると黄色矢印の部分に3スペースの半田付け可能な場所が出来ます。  それを利用して330μF 16Vを裏づけしました。

こんな固定の仕方をして困るのは、このように置いているとゴロンゴロンと不安定になるだけで、実際には15mmのスペーサーをかましてケースの底にネジ止めします。 基板上部の最も高い部品が12mmで、基板厚みが1.5mmですので、トータル28.5mm、高さ内寸は37mmですから無論取付け上の問題はありません。

その場合は裏付けの電解コンデンサーは見えなくなりますから、改造した事が判らなくなります。

後細長い複合基板が出来れば全体の組み上げに入れます。 上左は上右のパワーアンプ駆動専用のスイッチング電源で4Ω駆動(Max 19W)に対する十分な電流を供給できますが、スピーカーを鳴らさない時にはOFFです。 それ以外の全てのアンプは右手前の定電圧化した±電源でで駆動しますので、スピーカー用アンプがOFFの時には電源のスイッチングノイズは全く介在しません。



2012/05/04

最後の基板組立

イコライザーの大きなオフセット電圧問題が片付いたので残るうなぎの寝床の様な複合基板を組み立てました。 この基板は長さが222mmありますが想像していたよりも組立に手間取り、平行してTV連動型アンプ用の3つの基板を組み立てた事もあり、完成には至りませんでした。  ただ中ポカの発生を未然に食い止めトラブルは全くありませんでした。 その中ポカとは基板のほぼ中央に載せる大きな電解コンデンサー2本です。 基板レイアウトでは3300μF 25Vになっています。 そしてそのように購入してあります。

さて何を気がついたかというと、このコンデンサーまさか天板に当らないよなー?ということです。 ケースの内側の高さは38mmしかありません。 そして基板は5mmのスペーサーで浮かせ基板の厚みは1.5mmですから差し引き31.5mmの空間が残ります。 さて3,300μF 25Vの高さは31.5mm + Max2mmとメーカーのデータブックにあります。 最良の場合でも軽く天板に接触するわけで、これは変更しないとなりません。 候補は外形寸法の規格が全く同じ3,300μF 16Vか2,200μF 25Vで、いずれも 25mm + Max2mmの高さです。

数秒考えた後に3,300μF 16Vとして容量を同じに確保する事にしました。 そうした理由は電源がレギュレーターにより±12Vに安定化されているためです。 例えばTV連動型アンプの場合でしたら2,200μF 25Vにしていたでしょう。 TV連動型アンプではレギュレーターを使わない±電源としており、消費電流の変化や電灯線電圧の変動で供給電圧は大きく変化します。 そして耐圧16Vのコンデンサーでは耐圧不十分になる可能性が若干あります。 ですから25V耐圧を死守し容量減には目をつぶったのです。 どうしても容量も欲しい場合には1,000μFと2,200μFを並列に使う事で高さを抑えたでしょう。

記録を見ると高さ方向の構造検討段階ではどうやら3,300μF 16Vを考えていた形跡が残っていましたが、その後回路定数の検討の中で、コンデンサーの耐圧はかなり余裕を見る私の癖で25Vに変更してしまったようです。(因みに直径はいずれの場合でも16φなので基板レイアウトでは変更してしまっても見つけ難い。)

この基板は3個の可変抵抗を所定の位置に接着して配線を済ませないと動作テストが出来ません。 その3つの可変抵抗のナットでサブパネルに基板を固定しますから適当に接着できないわけで、サブパネルに可変抵抗を固定してそこに基板を接着する!という方法で位置精度を確保します。 それらの作業は次回となります。

配線の量が多いのとTV連動型アンプでも3つの基板を組み上げたためまだ完成していません。 沢山撚った線が見えますが、後ほど基板に固定されるVRに接続されます。

裏側の様子。 ジャンパー線やバイパスコンデンサーはまだ取り付けられていません。

組み上げる前に気が付いて事なきを得た大きな電解コンデンサー。 右端の背の高いやつ(空きスペースに挿し込んだだけ。)を間違って手配していました。



2012/05/11

最後の基板の組立続き

基板に接着する3個の可変抵抗それぞれを基板に接着するよりもサブパネルに可変抵抗を固定してそこに基板を貼り付ける方が遥かに接着位置精度を出しやすいので、サブパネルを加工しました。 高さは35mmですので、40mmの浅いシャーシの内側に立ててやれ好都合です。

基板に可変抵抗が接着できたら可変抵抗と基板の間の結線を済ませます。 残る基板から出るワイヤーは、ヘッドフォーンジャックに行く3本、2色LEDに行く3本、トグルスイッチに行く4本、そしてもうひとつトグルスイッチに行く2本です。

この状態にして動作テストを致しました。 設計時には100mV入力で所定の出力となるよう計算していますが、実際には設計時には無視していた1KΩの抵抗がそれぞれのレベル調整VRの前にシリーズに入るため-0.17dBのロスが発生します。

パワーアンプへの出力はこの1KΩとVRを通るだけですので、最大出力の10W(4Ω)は102mVの入力信号が必要になります。

録音信号アンプは増幅度が2段可変となっておりますが、ハイゲインで32.5倍(設計値34倍ですがロス補正をすると-0.23dBの誤差)、ローゲインで9.54倍(設計値は9.8倍ですがロス補正をすると-0.03dBの誤差)でした。  100mVの入力に対しハイゲインでは3.25Vの出力、ローゲインでは954mVであり、アンプ前段にゲイン調整のVRがありますので、録音レベルがかなりまちまちであってもADコンバーターへ一定の信号レベルに抑えた出力を出せると思います。 尚アンプの最大出力電圧は約10Vです。

ヘッドフォーンアンプのゲインは設計値4.3倍でしたが実測値は4.24倍でした。(ロス補正をすると-0.05dBの誤差)

何れの増幅度も使っている抵抗が±5%ランクの物ですから計算上±0.45dBまでのゲイン誤差は発生しますので、十分満足すべき結果です。 また方形波を使った波形観測もしましたが(最も簡単で大変鋭敏な周波数特性観測でもある。)、100Hzを除き原波形に大変近似した波形出力でした。 100Hzは僅かなサグを生じていますが、10Hzで1dB程度レベルが低下しています。 これは私が欲していた低域低減特性でありこれも合格です。

高さ35mmの既製のサブパネルを所定の幅に切断し穴をあけました。 丸ツマミは全て埋め込み式にしますので、ロータリースイッチや可変抵抗は全てサブパネルに固定します。

下駄となる厚さ10mmの板をサイコロ状に切断し可変抵抗をエポキシ接着剤で貼り付けました。

サブパネルに3個の可変抵抗を固定した上で下駄の下側の面にエポキシ接着剤を塗り、位置関係を慎重に調節の上で基板を接着しました。 この角度では圧着保持の様子が全く見えませんが?!

サブパネルと基板の間には4mmの隙間が出来ますので、4mm厚シナ合板を挿し込んで圧着保持をしています。

サブパネルと基板の間には僅かな隙間があったほうが良いので、0.5mm厚のプラスチック板を切って挟みました。

2時間放置してから可変抵抗を締めていたナットを緩めてサブパネルを外しました。 可変抵抗接着の相対的位置関係はこれ以上ない正確さを得ています。

他のサブパネルに固定する部材(赤矢印先のロータリースイッチとトグルスイッチ)と、サブパネルに首を突っ込むヘッドフォーンジャック(黄色矢印)とRCAピンジャック(空色矢印先)が干渉しないかの確認のため仮組立をしました。 こうなるとスカスカだったこの基板が結構実装密度が高くなるのが判ります。

このテーマの基板製作はこれで一応完了しました。 おおまかにシャーシ内のレイアウトはこのようになります。 そして次には2つの電源基板以外を所定の位置に固定し、入力、出力端子も取り付けてベストな電源基板の位置を動作確認で探し出します。



2012/06/08

ケースの構造詳細検討

このテーマで製作上一番厄介な工程はこれから開始するケースの加工製作だと思います。 製品となっている金属ケースを購入すれば事は簡単なのですが、私が求めている構造のケースは全くないのと、どだい価格が高すぎます。 ちょっとした金属ケースは\7,000以上します。

それをここでは\2,000程度で作ろうと言う計算で、しかも\7,000では手に入らない構造で、所謂特注という方法でないと手に入りません。 その場合の費用は?????です。  従って目論見どおりに完成したらそれこそ万歳と言う事になるでしょう。

そのような背景のケースの詳細構造検討を開始しました。  勿論大雑把な検討は既にしていますが、詳細な寸法の割り出しをしたり、変な矛盾で組立がうまく出来ない!なんてことが起きないかそれこそ念には念を入れてやらないとなりません。

 最初にケースの構造をより判り易くするために、金属部分の基本組立を紹介して
 おきます。  そうしないと後ほどお見せする詳細構造図面を見たら私の稚拙な表
 現力もあって何が何やら判らなくなってしまうでしょう。

 左の図がそれで、空色の部分が既製のシャーシで上の写真に写っているやつで
 す。 その左側にある黄色のL字型の板はデスクトップで使った時にツマミの位置
 が判るようにするカラクリを作るためにあります。 ピンク色のL字型の板はスピー
 カーターミナル4個とRCAジャック6個を固定するトップパネルになります。 最後の
 オレンジ色の網は真鍮製の金網で、黄色とピンク色のアルミ板にまたがって固定
 され静電シールドを確保します。

 この金属ケース全体をすっぽりと木製ケースが覆いますがシャーシの底部分には
 放熱のための穴を沢山あけてやり、そこから入った空気は上部の網目を通って外
 部に抜けます。 ヘッドフォーンアンプ2ではシャーシに電気回路を組み込んで実
 働テスト中に、『放熱口をあけないと駄目だ!』となり大変やりにくい作業をしまし
 た。 従って今回は放熱口は絶対に必要と言う前提で作業を進めてゆきます。

 左はケース・シャシーの横断面詳細を描いたものですが、辛うじて理解できるでし
 ょうか? 左側の上に黄色のL字型パネルを逆さにしたのが見えますが、幅11mmの部分の横方向に白い部分があります。 これは窓でしてその下の方にある紫色の代物は回転軸に固定された目盛板で、0〜10の目盛か、Phono、AUX1、AUX2の文字を入れ、これが窓を通して見えるようにします。 その目盛板は半透明にしておき下からチップLEDで照明してやります。

一方右手上部にはスピーカーターミナルとRCAジャックが見えます。 全て赤くなっているのは、別途黒や白のプラスチックの物を用意するのが面倒だったからで、特に他意はありません。 この図面ではまだ寸法が未記入な部分が沢山ありますが、まだ検討中でして未完です。



2012/06/15

ケースの構造詳細検討 続き

 ケースの断面構造は一応終わりましたが、水平面の構造(特にレイアウト)の検討をしておかなくて
 はなりません。 配慮項目としては、

 1.スイッチング電源がアンプ(特にイコライザーアンプ)から離れること。

 2.パワーアンプは背面に沿って固定されること。(背面全体が2mm厚アルミ板を使った放熱板とな
   り、これにパワーICを固定するため。)


 3.パワーアンプ位置を避けてスピーカーターミナルが固定されること。

 4.PhonoとAUXのRCAピンジャックは、イコライザーやロータリースイッチへ最短配線となるように。


 などです。 以上を守るとレイアウトの自由度は殆ど無く、空きスペースは余り残らなくなります。
 左の図は検討が完了した図で、オレンジ色の部分は天板となりますが、私がよくやる3mm間隔の溝
 を彫ってやります。 その溝は真中から左の方はより黒くしてありますが、これは貫通穴にして放熱
 効果をもたらす部分です。 天板の板厚は4mmですが、溝の深さは2mmと浅めにしておきます。
 その天板の右半分後方には四角の欠き取りが2箇所あり、スピーカーターミナル、RCAジャックが取
 り付きます。

 RCAジャックのすぐ左真下にイコライザーが配置され、配線がごく短くなります。 上の4個のRCAジャ
 ックはロータリースイッチに配線されますが、これも最短になります。
 スピーカーターミナルはパワーアンプの直ぐ右(図では下になる。)になり、配線が最短になりながらターミナル先端がパワーアンプに干渉しません。  パワーアンプの左(図では上。)にはスイッチング電源基板が収まり、前側(図では左側。)には、リニアー電源基板が収まります。

以上のレイアウトは動作上問題が無いかの実験をしてからケースの製作に入らなくてはなりません。 その実験の1番目はリニアー電源から誘導ハムがイコライザーや長いアンプ基板に飛び込まないかどうかです。 そして2番目にはスイッチング電源が動作しているときにどの程度のノイズがイコライザーや長いアンプ基板に飛び込むか? そして音質に影響が出ないか?です。

そんな所から次にはそれらの実験に入ります。 そして問題がなければケースの製作に入りますが、電源基板を遠ざけないと駄目!となったら、ケースのサイズを大きくして再検討するようになるでしょう。




2012/06/22

ケースの構造と内部レイアウトの検証実験

出来上がったレイアウトはうまく収まっているような感じですが、このレイアウトでハムノイズ、ヒスのイズなどの雑音が誘導されないかどうかの検証実験をしておかないとなりません。 そうしておかずにいきなりケースの加工に入ってしまうと、後からレイアウトがまずい!という場合にはケース加工作業が全て無駄になり、材料の購入からやり直しということになりかねません。

方法としてはケースのサイズより大きめの板(端材で十分)に基板を設計したとおりに並べ固定します。 この時に台所で使うアルミフォイールを敷いて周りをセロファンテープで固定した上に基板を固定します。 これは重要な事でして、実験の過程にハムノイズの出具合を確認しつつ基板からのアース接続をアルミフォイールにします。(基板からのアースはむやみやたらにするのではなく、ループハムというノイズが最少となるよう接続場所と箇所数をカットアンドトライで求めます。)

実際にはアルミフォイールよりも分厚いアルミ板になるのでその効果も若干違いますが、何もないよりも実際に近くなりますし、アルミシャーシの価格に較べたら遥かに安いので失敗しても損した気分にはなりません。 また効果を数値的に言い表せないのですが、スイッチング電源が発生するノイズも最も近接している底板を伝わって拡散する傾向にありますから、それをシミュレートすることにもなります。

さて実験の様子の写真は後ほどご覧頂くとして、実験開始して一番悩まされたのはハムノイズでした。 アルミフォイールに色々場所を変えて基板のアースを接続するも多少減少するポイントはあるものの、ここぞと言う劇的に減少するポイントが見つかりません。 半日近くそのような作業をしてフッと、『詳細設計段階では、イコライザーアンプにシールドケースを被せることも考えてたなあ!』と思い出し、ジャンクボックスに転がっていた発振器の製作で使わなかったシールドケースを被せてやったた所、嘘のようにハムが消えました。  このことからハムノイズの原因は誘導ハムであり、ループハムではありません。(ループハムは基板のアースを取る位置や接続個所数で出具合が若干変わります。)

聴感上はボリュームを最大にして入力をPHONO、AUX(何れも入力端子ショート)と切替えても、ブーンはもとよりフーンという微弱なハム音すらありませんし高域ノイズも聞こえません。 PHONO端子をオープンとした場合にはボリューム最大で僅かな高域ノイズが聴こえますがハム音はゼロです。(オシロスコープで見ると可聴範囲外の高周波ノイズがピーク値で5mV程ある。) PHONO端子を開放にするとサーッという高域ノイズが聴こえます。 プレーヤーを接続した時にはこの間の状態になります。 AUX端子開放ではボリューム最大で微量のシーという『音が確認できるかな?』という程度でした。 オシロスコープでざっと見た範囲ではSN比は60〜65dBの間くらいになると思われますが、リニアー電源、スイッチング電源共にそれ程アンプ基板から離れていないので(イコライザーは別として)、十分満足できる結果だと考えています。

キラキラ光って見えるのがアルミフォイールで、シャーシより大きな面積をカバーしています。 固定した基板位置は先週紹介したレイアウトそのものです。 ノイズが最少になった時に撮影しており、右手には真鍮製の仮のシールドボックスも見えます。 写真には見えませんが上方にはスピーカーが2本ありそれに接続してあり、下の方にはヘッドフォーンと音源となるiPod Nanoが見えます。

5つの基板の固定の様子。(1個はシールドボックスの下にある。) 雑音発生には関係ない部分の配線はされておりません。

大きすぎて不細工ですがイコライザーアンプに仮に被せてみたシールドケースです。 劇的なハムノイズの減少効果がありました。

そのシールドボックスを取り払った所です。 このちっぽけな基板を包み込める小さな金属ボックスを作れば良いわけです。



2012/07/20

ケースの製作 その1

IHF Aカーブのフィルター作りという浮気をしたのちケース作りを開始しました。 製作上一番手間が掛かるのはフロントパネルの加工でしょう。 特に4個のツマミは全てツマミがパネル部分を貫通して固定されるため、パネル上にツマミ径+1.5〜2.0mmの正確な穴をあけないとなりません。 穴がいびつになったり芯ずれが出ると台無しになりますので、慎重に採寸と加工を繰り返しながら進める必要があります。 この作業は緊張を強いられしかもその緊張が続くので大変疲れます。 おりしも3連休であったのですが、その2日半を潰してどうやら穴あけが終わりました。

ケースの構造はシャーシの穴の空いた部分を上にして前側にはL字型のアルミ押し出し材を引っ掛けて固定します。 ここで押し出し材を使ったのは角がシャープに仕上がるからで、テーブルトップに置いた場合にこの曲がった部分が分厚いアルミパネルに見えることを狙うと共に、この上面に文字入れをする目的でいます。

先に触れたツマミ4個はシャーシのみならずこの押し出し材パネルをも貫通して取り付けられますので、板厚はシャーシの1mmに押し出し材の1.2mmを加算した2.2mmになります。 よって2.2mm厚のアルミ板を加工するようなものですから手間取ります。 またあける穴位置精度はどんなことがあろうとも0.5mm以下(±0.25mm以下)に抑えないと、シャーシ内に取り付けるサブパネルから出るシャフトの位置とのずれが発生しますので、長時間の緊張に繋がるわけです。  以下にお見せする写真はほんの一部ですが、その辺りをご想像下さい。

墨線はマスキングテープを貼った上に引いています。 こうすれば穴あけ作業時に表面に付く傷はかなり少なくなります。 下のほうにマスキングテープを貼っていない部分がありますが、ここは切り落とします。

切断が終わったのでシャーシの上に載せました。 押し出し材の幅はシャーシの幅ドンピシャになるよう慎重に研摩で調整しています。

それを右横から見下ろした所です。 押し出し材は引っ掛けた状態です。 また矢印の先は1mmほど出っ張っていますが、底板に彫られる溝にはまり込みます。

押し出し材パネルを所定の位置に当ててクランプで締め込みました。 この押し出し材が絶対にずれては困るので、穴あけ作業が終わるまでクランプは3個使い最低でも2個は締め上げた状態にして進めます。

3個のトグルスイッチの穴、2個のRCAピンジャックの穴、2個のヘッドフォーンジャックの穴、小さなツマミ用の穴(直径13mm)がフルに1日掛かってあけ終わりました。 ここまでは1mm、2mm、3mm、5mm、6.5mm、8mmのドリルを使って2mm径、3.5mm径の穴2個(トグルスイッチ用)、6mm径(フォーンジャック1)、8mm径(RCAピンジャックとフォーンジャック2)をあけています。 多くのドリルを使っていますが、いきなり大きな穴をあけるとハンドドリルであける場合には穴位置がずれやすいので、1mmステップでドリルを交換して大きくしています。

取り敢えず良しとした左のトグルスイッチの穴と右の小さなツマミ用貫通穴。 貫通穴はツマミ現物を使って更なる調整研摩を後ほどやります。

3個の18mm貫通穴は6.5mm径まであけています。 この後はユニークな方法で穴を広げます。

ユニークな方法とはこれです。 mini-Shopで販売している木工円切り用ジグソーブレード(No. 5)を使って墨線の0.5mm手前くらいまで沢山の切り込みを入れて穴を広げます。 慎重に作業をしないとなりませんが、ヤスリで削りこんで行くよりも作業効率が良くて楽です。

ジグソーで切り終わった状態です。 切り口はランダムにぎざぎざでお世辞にも綺麗ではありませんが、ここから曲面ヤスリで仕上げて行きます。(曲面ヤスリにはmini-Shpで販売している替刃式のRS-310Pを使いました。)

まだ現物合わせでの調整研摩が必要ですが墨線のところまで削り込みました。 右手に見える赤い道具がこの研摩に使ったRS-310Pです。

2日半をようしてやっと穴あけが終わったフロント部分。 山場は通過しましたが、この後基板固定のネジ穴あけ、蓋を固定するM3のネジ切り、背面に放熱板を固定などが済めば、シャーシの加工は一応終わります。



2012/07/27

ケースの製作 その2

ケースの加工中は常に緊張と集中が強いられる作業はまだ続きます。 第一次のフロント部分の穴あけ加工を済ませましたが、ツマミ埋め込み部分の穴とツマミの隙間を極力均等にする加工がこれから始まります。 最初にサブパネルの左右2箇所を現物合わせでシャーシにネジ止めします。 ここでの絶対的な調整ポイントは3個のボリュームに付いたツマミがそれぞれの穴に平均的に真中に来るよう位置決めする事です。 どういうことかというと、ボリュームは既に基板に固定されており横方向に位置をずらす事は不可能です。 従って横方向の隙間調整はフロントパネルの横方向の固定位置を平均的な真中とし残る隙間のずれは穴の追加研摩で調整します。 縦方向のずれはサブパネルにあけたボリュームの固定穴を上下方向に削る事で調整が可能です。

尚ロータリースイッチはサブパネルに固定しているためサブパネルの穴を削って位置の調整が可能です。 こうしてサブパネルを固定し、フロントパネルを被せると隙間の出来方にムラのあることが判りますのでそれを記録し(どこをどのように削ればよいのか)、フロントパネルの穴のみを調整研摩し極力均等な隙間になるようにします。 そして再びフロントパネルを取り付け確認して納得できなければ再度調整研摩を致します。 私は微量の研磨と取り付け確認を4度ほど繰り返した上でOKとしました。(これだけで1日仕事です。)

これが終わったらサブパネルに固定された基板の後ろ側5箇所にスペーサーを挟んで固定します。 設計時点ではこのスペーサーの厚みは5mmとしていたのですが、どういうわけか現物では4mmになってしまいました。既製品のプラスチックスペーサーは5mmですので替わりに4mm厚シナ合板を2等辺三角形に切断し3.2mmの穴をあけた木製スペーサーとしました。 高電圧が掛かるわけではないので、絶縁不十分にはならないと思います。

次に左側のトグルスイッチ2個とLED固定穴を含むサブパネル2を切断・加工し取り付けました。 1枚のサブパネルではなく2枚に分割したのは、間にスイッチ付きミニフォーンジャックを取り付けるのですが、サブパネルに大きな穴をあける必要があるのと、スイッチ・ツマミの位置の調整は1枚のパネルにしてしまうと、更に難易度が高くなることによります。

以上でようやくフロント部分が形として見られる状態になりました。 残る作業はフロントパネル表面のヘヤーライン加工、文字入れ、そして傷防止のニス塗装ですが、他の加工作業全てが終わってからにします。

サブパネルのシャーシへの固定は2本のM3ネジで。 こちらは前面から見ると左側のネジを内側から見ています。

フロントパネルを当ててみたトグルスイッチと録音出力レベル調整ツマミ。 位置関係はまずまずのように思えます。

この写真では判り難いですが他の大きなツマミ3個の位置は微妙にずれているので、隙間調整のための研摩が必要です。 但し削りすぎると台無しになるので、微調整研摩とフロントパネルを取り付けての確認を4回繰り返してOKとしました。

隙間の均等具合がまずまずである様子はこの写真の方が判りやすいでしょうか?

そうそうRCAピンジャック、2種類のミニヘッドフォーンジャックも取り付け後の問題がないか確認しています。

基板の後ろ側の固定には4mmのスペーサーが市販品には無いのでシナ合板をこのように切断し穴をあけました。

その4mm厚スペーサーを挟み込んでネジ止めしたところです。 これで基板やツマミのぐらつきがほぼ無くなりました。

2つ目のサブパネルを切り出して加工し2つのトグルスイッチを取り付けて所定の位置に固定しました。 間の大きな穴にはLEDを通します。

それを前面から見たところ。 このアンプでは3個のトグルスイッチは横方向に操作します。

残る作業はヘヤーライン加工、文字入れ、ニス塗装となったフロント部分。 一番操作頻度が高いと思われるヘッドフォーンジャックとそのレベル調整が真中にあります。 その左側のRCAピンジャックとミニフォーンジャックは排他使用の入力端子です。

斜め右からみた所ですが、フロントパネルの右端は固定されていないので若干浮いています。 最終的には数箇所に両面接着テープを貼って固定します。

作業中に緊張を強いられることはこの後の作業では殆どありませんので、作業速度も上がって来るでしょう。 ケース加工の残るは、4つの基板の固定、放熱板の固定、側板固定穴あけ、天板の加工、底面と天板に放熱の穴あけです。



2012/08/03

ケースの製作 その3

 ケース製作の様子をお話しする前に最終的なケース断面の構造について触れて
 おきます。 実はこのケース断面構造は希望していたサイズのL字型アルミ板を
 探し続けましたがどうしても見つからなかったので最終的に変更しています。

 左が最終的な構造ですが変更後は黄色の前面に被せるL型断面のアルミ板は
 被る量を16mmとしていたのですが、そのようなアルミ板が無く12mmの被せ量に
 なっています。 また天板は後側1/3を覆うL字型と考えていたのですが、これも
 見つからないので使用を断念し、前面パネルに突き合せるように固定する1mm厚
 の平板に変更します。 従って金属ネットの使用は中止しました。

こうした上で断面の詳細は以下の図のようにしました。


放熱を目的とする穴は以前では金属のメッシュを使う事で楽に実現出来ましたが、
底と天板両方ともアルミ板に沢山の穴をあけねばならなくなります。

そうそう背面の放熱板も仕様が変わります。 以前の構造の場合には41.5mm幅
で2mmの板厚を考えていましたが、50mm幅を詰めるしかなく無駄が多いので
40mm幅にします。 この場合天板が上から被るのと、シャーシの高さは厳密には
40.5mmありますから、放熱板を取り付けた後その上に天板が被るのと同時に僅
かな(上下に0.25mmずつ)隙間が出来ます。

その放熱板にパワーアンプICが固定されますが、放熱板に直接密着させ熱伝導
が良くなるようにしたいので、シャーシ背面にはICが通る穴をあけないとなりません。

尚リニヤー電源基板は高さ5mmのスペーサーで固定すると電源トランスの上部約
1.5mmがアルミ天板に当ります。 従ってトランスが当らないような穴をアルミ天板
にあけねばなりませんし、木製天板にも内側に座繰り穴をあけないとなりません。

上から見た様子もかなり変わっています。 右の図が最終的な上から見た状態で
すが、沢山の穴(この図では直径3φ)があります。 これはアルミ天板にあける穴
で、6mm間隔であけますが、木製天板には穴の列と同じ位置に幅3mmのスリット
を切り込むことにします。 そしてアルミ板の穴はスイッチング電源基板、リニヤー
電源基板、パワーアンプ基板の上だけとしますが、木製天板の方は背面側半分
以上を3mm幅、深さ2mm程度のスリットをトリマーで彫り、放熱のための貫通穴
部分はその一部を切り込むことにします。 木製底板の方はシャーシにあいた穴の
周囲部分を切り抜く簡単な方法にします。

スピーカーターミナル、RCAピンジャックは以前よりも右側に寄せましたが、その周
りは木製板の一部を欠き取ってやります。 その木製天板とアルミ天板は接着剤
で貼り合せた後にシャーシに5箇所(手前両端2箇所に奥の3箇所)でネジ止めしま
す。 その時に前側はアルミフロントパネル板に2mm被るように固定し、見切りが すっきりと見えるようにします。

側板は厚さ14mmの板で単純にシャーシに内部からネジ止めするだけですが、外
側の面には溝を彫ってデスクトップとして使う時に固定するカラクリを作らねばなり
ませんが、それらの詳細はまだ決めていません。

こんな所が構造変更の詳細ですが、以下の加工中の写真をご覧いただければ
より理解しやすいと思います。

手元には15mm、30mmのスペーサーが無かったので、ホームセンターで売っていたアルミのパイプ(外径5mm、内径3mm)を切断して自作しました。

大きな裏付け部品のあるイコライザー基板は15mmのスペーサーで少し浮かしています。

残りの30mmスペーサーはパワーアンプ基板を逆さに固定するのに使いました。 これが前面の細長い基板を除く全ての基板を固定した状態です。

一番混みあっているのはこの部分で、最も熱が発生する部分でもあります。

それを前後反対にして見たところです。 手前左にシャーシの切り欠きがありますがこれはパワーICを放熱板に直接固定するための窓です。

確認した問題点1。 電源トランスがシャーシより1.5mmほど出っ張ります。 現在スペーサーは5mmを使っていますが、薄いスペーサーには変えたくありません。

確認した問題点2。 パワーアンプ基板の配線がシャーシの切り欠き窓に接触しそうです。(黄色矢印先) ヤスリで削って窓を大きくする必要有り。

幅40mm、厚さ3mmのアルミ板を所定の寸法(350.5mm)に切断しました。 これに8個の穴をあけますが、シャーシと一緒に全ての穴を2.5φであけます。 そして14φと記した穴をのぞき放熱板側の穴は全てM3のネジを切ります。 一方シャーシ側はネジ穴の位置にある穴は3.2φに拡大、シャーシの放熱板の14φに相当する穴は9φに拡大します。

放熱板をシャーシ背面にクランプでしっかりと固定した上で穴あけ開始。 全ての穴を2.5φ貫通穴とします。 その後ばらしてそれぞれの穴を最終的な大きさ、或いは雌ネジ切りなどをします。

穴あけ、タップ立てが終わったシャーシと放熱板。 シャーシにコードブッシュを取り付けてあります。

シャーシに放熱板を当てて内側から6個のM3ボルトで固定。 その後パワーアンプICを固定しアンプ基板を固定しました。 またACコードの干渉具合を見るためスイッチング電源基板も取り付けました。

電源コードは90度折り曲げてスイッチの方に引き回しますが、スイッチング電源に干渉して問題を起すような事はなさそうです。

放熱板のシャーシへの固定の様子。 電源コードブッシュはシャーシに固定され放熱板には接触していません。

背面には放熱板をシャーシに固定するネジ穴とパワーICを固定するネジ穴が合計で8個見えます。 外観を尊重してこれらを埋めて隠すてもありますが、そこまではやらないことにします。



2012/08/10

ケースの製作 その4

連日の猛暑で製作意欲は大幅に減退しています。 こんな時に無理をすると大きな失敗をやらかす危険性がありますので、かなりペースを落としてちんたらちんたらと進んでいます。 シャーシ加工の続きとして底部分に放熱の穴をあけました。 熱を発生する基板の周囲から±10mm位の範囲に合計284個の3.2φの穴をあけました。 気を付けるべきは最初にセンターポンチでマーキングをする時で、いきなり3.2φのドリルであけようとするとマーキングの直径や深さはかなり大きいものとしなければなりません。 しかしそうするとアルミ板のように柔らかい材料ではマーキングによって穴をあけるエリア全体が窪んでしまいます。

これを避けるためにはマーキングを加減して深からず大きからずにしないとなりません。 但しそうすると最初に細いドリルを使わないとマーキングが役に立ちません。 そこで最初には2φのドリルで穴あけ後に3.2φで広げる方法を取りました。 これでセンターポンチによるマーキングで穴あけ開始時の横滑りは防げるはずですが、284個のうち7個ほどは1mm近くもずれてしまっています。 その原因はマーキングが浅く小さすぎてドリルが横滑りしたためで、これを減らしたければ最初に使うドリルを更に細い1.5φにするしかありません。

ところで底部の4隅に近い所にゴム脚を固定する穴をあけねばなりません。 その内1個はスイッチング電源の止めネジを使いますので3.2φの大きさになっていますが、残り3個は2.5φとしておきその裏側に1.5mm厚のアルミ板をエポキシ接着剤で貼り付け硬化後に2.5φの貫通穴をあけ、M3のタップでネジを切ります。  そしてこのゴム脚固定ネジで木製の底板をシャーシに固定します。

次に1mm厚アルミ板で天板を作ります。 この天板には電源トランスが干渉しないよう切抜きをしてやると共に木製の天板と共にシャーシに共締めするネジ穴を5箇所に切ります。 その内2箇所は既にネジが切られていますのでそのまま利用しますが、他の3箇所は2.5φの穴をシャーシにあけてM3のタップでネジ切りします。 穴の位置関係を正確にするためには、アルミ天板にあける穴は最初に1.5φとし、シャーシに既にネジが切れている個所の穴は3.5φに拡大します。 そしてアルミ天板を2本のネジで固定し位置関係を十分確認した上で、1.5φのドリルでアルミ天板の既にあけた3箇所からシャーシに貫通穴をあけます。 そうしたら天板を外しそれら3箇所の穴は3.5φのドリルで大きくします。 またシャーシ側の3箇所は2.5φに拡大します。

その後1.5mm厚のアルミ板から9 x 20mmの小さな板を6枚切り出し、シャーシの合計6箇所(上の折り曲げ部分に3箇所と底面の隅に3箇所)にエポキシ接着剤で貼り付け完全硬化後に(一晩置いた)、2.5φのドリルで貫通穴をあけた上でM3のネジを切ります。 それらの作業の様子は以下の写真をご覧下さい。

コピー用紙をセロファンテープで貼り付けて284個の放熱口穴位置を書き込みました。

最初に2φ、次に3.5φのドリルで穴あけをしました。 おおむね良好なのですが、284個中7個は1mm程度すべった状態であいてしまいました。

アルミ天板の寸法を現物合わせで決定します。 この目的でフロントパネルと放熱板を2本のハタ金で仮固定しました。 そして矢印の寸法を測ります。

1mm厚のアルミ板に測った寸法どおりの墨線を引きます。 秋葉で売っているアルミ板には片面に薄いビニールを貼った物がありボールペンで描けるので、大変便利です。

ジグソーで切断後に替刃式ヤスリ(M-20GP)で切り口の仕上げ研摩をしました。

3.2φの穴は位置の微調整をしながら3.5φ程度にヤスリで拡大します。 1.5φの穴はこの後シャーシに固定した後に1.5φ貫通穴をあけます。

2本のネジでシャーシに固定しました。(赤矢印) そして1.5φの貫通穴(黄色矢印)をあけてアルミ板を外し、アルミ板の1.5φの穴を3.5φに拡大、シャーシにあけた3個の1.5φの穴は2.5φに拡大します。

1.5mm厚アルミ板から 9 x 20mmの板を6枚切り出します。 これは雌ネジを切る部分を厚くしてやるためで、接着後に2.5mm厚となります。

底の4隅中3隅にエポキシ接着剤で貼り付けています。(赤矢印はその内の2つ)

小さなC型クランプで固定してるのはシャーシ上部の折り返し部分にあけたネジ穴で3箇所あります。 これで接着剤が完全硬化するまで待ちますので一晩寝かしました。 その後1.5φのドリルで貫通穴をあけ、更に2.5φのドリルで穴を拡大した後にM3のタップでネジを切りました。

確認のためアルミの天板をシャーシに載せて5本のネジで仮止めしました。 天板が固定される位置も正確になっており問題はありません。 天板に新たな線が沢山描かれていますが、スピーカーターミナルとRCAピンジャック等の穴位置です。

穴の中心線だけでは心許ないので、スピーカーターミナルは直径12mmの円を、RCAピンジャック用は8φと直径を書き加えました。 そして最初は1.5φ、次に2.5φ、最後に6.5φのドリルで穴を広げます。

スピーカーターミナル用の穴は12φ、RCAピンジャックの穴は8φになるよう丸棒ヤスリで広げますが、大きい12φは替刃式ヤスリのRS-310P(mini-Shopで販売中)が使え、かなり細かな研摩面になります。 こんな日曜大工用の道具が金工にも役立つのは大変便利です。

スピーカーターミナル、RCAピンジャック、アースターミナルを念のため仮止めしました。 赤線を引いてある内側は天板の放熱口があけられるエリアで、後ほど300個程の3.5φの穴があきます。 また青の線は木製天板の切り欠き部分で、このエリアのアルミ天板が露出します。 尚これを見ると想像が付くと思いますが、最終的なワイヤー接続はスピーカーケーブル、アースケーブルの接続部分にバナナプラグを使うと、上又は下から差し込むだけで接続が終わります。 何れにせよ背面を覗き込むことなく接続できます。



2012/08/17

ケースの製作 その5


次の作業は木工部分が入ってきますが側板にはデスクトップとして使う時に吊り戸棚の下にぶら下げる機構を最終的なものとしないとならないので、それを検討しました。 一番頭を悩ませたのはアンプ本体を受ける部分です。 アンプの総重量は1Kg以下でそれ以外に荷重が加わるような事はありませんから厚さ3mm程度のレール2本で受けてやればよい!と考え幅10mmのアルミサッシ棒を探しました。 ところが7件のホームセンターを探しても見つかりません。 15mm幅ならばあるのですがそれでは側板やブラケットの厚みが大きくなりすぎますし幅10mmに詰める作業もかなり手間取りそうです。 そこで2mm厚の物で行くことにします。 2mm厚というとかなり柔で容易に曲がりますが、これを溝に5mm埋め込んでやれば、アンプ本体は点ではなく線で受けるため1Kgの荷重なら問題なかろうと考えました。(安心感を得るには理想は3mmに思えるのですが?) 上の図が全体のイメージ図です。

 構造の詳細は左の図をご覧下さい。 アンプを受けるレールをどう埋め込むかで即板の仕
 様が決まるのですが、ブラケットにアルミ棒を5mm近く埋め込み、飛出た5mmの上にアンプ
 を載せることで考えブラケット及び即板の厚みは9mmとしました。(シナ合板)
 これで私の思考実験によるアルミ棒はもはや簡単に曲がったり撓んだりしなくなりますし、
 1Kgの荷重にも十分耐えられると想像しています。

 またアンプの底(インストール時には上に来る)と吊り戸棚の底板の間はアンプのゴム脚
 (高さ6.3mm)が当らないよう7.5mmの空間を設けます。 7.5mmの空間は底板にあいた穴
 から出てくる温度の高い空気を抜くのに必要な最低限の空間と考えていますが、ゴム脚と
 吊り戸棚の底板の間に1.5mmという空間が残ります。 吊り戸棚の底板のこの空間位置に
 0.8mm厚または1mm厚の燐青銅板を軽く曲げたバネをネジ止めしてやれば、ゴム脚と摩擦
 で動作する絶妙なストッパーが出来ると考えています。 燐青銅板は秋葉原で間違いなく
 入手できますので、次回行くチャンスがあるときに調達します。

ブラケット自体を吊り戸棚底部に固定するのは幅15mm、厚さ3mmの等辺Lアングルです。 ブラケットへの固定はブラケットを厚み分座ぐってエポキシ接着剤で固定とします。 そして吊り戸棚底部へはネジ止めです。

 以上の構造を前提に本体側板、天板、底板の最終仕様をまとめました。
 左が側板を取り付けたときの断面で、これから側板のサイズは159.5 x 53.5と
 なります。 *印が付いているのは部材をほんの少し大きめに切断し現物合わ
 せで寸法調整をする!という意味です。 また赤の寸法は固定値となります。

 天板の奥行は144.5mmと
 短いですが、前側はL型の
 フロントパネルに2mm被り
 ます。
この側板の表側にはブラケットのレールに嵌りこむ溝を彫りますが、右の図は
それを表しています。 この図は右側板ですが左側板は左右をひっくり返した
ものになります。
 次に底板の詳細は左の図のよ
 うになります。 灰色で示した
 部分は放熱口があいている場所を塞がないための切り抜きとなります。 またこの
 図では全く示しておりませんが、底板をシャーシに固定するネジ穴が後ほど現物合
 わせで4個あけられます。

 そして天板の詳細は右のようにな
 ります。 左下にある大きな切り欠
 きはアルミ天板に取り付けられた
スピーカーターミナル、RCAピンジャック、GNDターミナルが露出する部分です。
この天板には3mm幅の溝が3mmの間隔をもって13本彫られます。 間が12ありますので、3 x 25 = 75mmの総幅になりますが、灰色の部分は2.5mmの深さの座彫りで、白く抜いた153mmの部分は更にカッターナイフとノミを使って抜き穴にします。 この部分の下のアルミ板には溝の位置に穴(3.2-3.5φ)を338個あけます。

 さて本体をブラケットに挿入した状態の確認もしておきます。 アンプを
 取り付ける場所は吊り戸棚の下で奥行が250mmあります。 棚板の前
 面にアンプを合わせますが、アンプの奥行は約160mmありますので壁
 面との間に90mmの空間が出来ます。 実はこれをぶら下げようとして
 いる部分にはスピーカーのバスレフポートが下向きに出ており、この図
 では右手の薄い灰色で表しています。 偶然なのですが辛うじてブロッ
 クされないで済むようになります。

以上を元に底板と天板を切り出して底板には空気の取り入れ口の穴あけ、フロントパネル落とし込みの溝彫りをして底板止めネジ穴をあけました。 天板には13本の飾り溝彫り、そして放熱の為の抜き穴切断、前面の僅かな切削加工を済ませ、ターミナル部分のL字型切り欠き加工をしています。 

上の寸法図に従い作業開始。 先ず天板と底板を切り出しました。 そして天板にはトリマーのガイド板を当てるスケールを髪に印刷して貼り、底板は空気取り入れの穴をあけました。 スケールは6mm間隔で13本の線を引き、一番後ろ側(写真では下側)の溝の中心線とスケールの最初の線の間が45mm(電動トリマーの台座の幅の半分)にしてあります。 またスケールは赤矢印のところで上下に分割され、7本の溝を彫ったら下側のスケールは剥がします。(スケール下半分を研削するようになるので。)

加工する基板の全周を同じ厚さの板で囲み動かないようクランプを合計8個も使って固定しています。 大袈裟なようですが電動トリマーを移動したときにクランプに干渉しないようにした結果です。 ガイド板はスケールの一番右の線に合わせています。

3mmのストレートビットを深さ2.5mmにセットして7本の溝を切削しました。 ここでスケールのほぼ右半分は取り除きます。

残り6本の溝は天板の横幅いっぱいに切削します。 このあと左下の部分を切断します。

天板をひっくり返して前側の3mm幅を0.2mm座繰りました。 これはアルミフロントパネルが1.2mm厚、アルミ天板が1mm厚の差を被せ面で補正するためです。(右上はその部分のクローズアップ)

底板の内面の全面にはフロントパネルが落とし込まれる溝を彫りました。 1.6mmのストレートビットを使って深さ1.5mmで彫っていますが、前後の位置はフロントパネルの全面が溝の壁面に当るようにします。

底板の次の加工は底板固定の4つの穴あけと固定ネジの頭を隠す座繰り穴の位置決めです。 先ず底板を所定の位置になるよう十分確認の上でハタ金とC型クランプ各2で固定しました。

そしてシャーシの内側からシャープペンでネジ穴にマーキングを施します。 穴はゴム脚固定用4個と基板・サブパネル固定ネジ穴12個の合計16個あります。

底板取り付け位置決めの大事な所。 フロントパネルの下部は底板に彫られた溝に落としこまれ、フロントパネルと底板全面とは5mmの差があります。

もうひとつは底板背面先端で、放熱板の面と一致するはずです。

ネジ頭隠しの座繰りはU字型ビットで後ほどしますので、取り敢えず底板取り付けの問題が無いか確認しました。 ゴム脚4個の止めネジでゴム脚・木製底板・シャーシが共締めされます。

ひっくり返したところ。 ゴム脚固定ネジの1本はスイッチング電源基板固定ネジの1本にもなりますので、確認のため仮締めしました。

次が天板の加工です。 マスキングテープで溝貫通部分とその後の切断位置を明確にしておきます。

溝の貫通切断は大きいカッターナイフのみでやりました。(刃の切れ味を維持するため2回刃をおりましたが。)

貫通穴あけが終わりました。 このあと工作用の3mm厚の金工ヤスリで切断面を研摩しました。(研摩しておかないと後の塗装がしにくい。)

そして替刃式ノコギリ(翔220)でL字型の切断をし、その切断面を替刃式ヤスリで仕上ました。 アンプ本体の所定の位置に重ねています。



2012/08/24

ケースの製作 その6

アルミ天板に放熱の穴をあけます。 それらの穴の一部にはトランス干渉防止の穴も含まれ、総数で293個になります。 この暑い最中の加工作業ですから集中力を欠かないよう注意しないとなりません。 これらの穴は最終的には直径を4mmとしましたが、センターポンチで大きく深いマーキングは禁物ですので、浅く小さなマーキングとし、それでも問題なく使える1.5φのドリルから始め、2.5φで次に拡大し、最後に4φのドリルとしています。 そしてバリ取りのために6.5φのドリルで軽く削り取っています。

293個の穴に4回の加工作業を行うわけですから1172回も穴あけとバリ取りをしないとならず手間と時間が掛かります。 しかし間違ってもいきなり4.0φの穴をあけるなんてことをしてはいけません。 というのはセンターポンチでマーキングをするとその周辺はアルミは伸びるようなストレスが掛かります。 マーキング中心付近は特に伸びが大きく離れるに従って伸びの量は急速に減少します。 マーキングが大きくなったり深くなったりするとこのストレスや伸びも増加します。 これらの伸びはマーキングの数が少ないうちは問題ないのですが、ここの実例のように6mm間隔で300個近くもの量になると小さな伸びが集積されてアルミ板はマーキングした部分が飛出てきますしアルミ板全体が大きな反りを生じます。

これを防止する為にマーキングを小さくそして浅くしてやり、ストレスや局部の伸びが減少するようにします。 こうしても293個のマーキング後はアルミ板は明らかに曲がってきてマーキング部位は突出します。 但しこれであせる必要はありません。 穴を所定の4φまで拡大すると伸びやストレスが発生した部分は削り落とされてしまい、嘘のように曲がった板が平らに近づいてきます。 もっとも永久歪として残ってしまう部分もありますから、強制的に曲がりを修正しないとなりませんが、全ての穴が4φになるとアルミ板そのものが曲げやすくなるので強制的な修正も極めて容易です。

いきなり4φのドリルであけるために深く大きいマーキングをした場合には、ストレスや伸びの量が大きくアルミ板の反りは修復不能なほどになってしまいます。 従って1.5φ→2.5φ→4.0φのステップが絶対不可欠になります。

以上の作業は順調に進み穴の周辺を塗装してアルミ天板の加工は終わ
りました。 ところが次の作業(トランスが天板に当るのを防止)に入ったと
ころで大きな作業ミスをやらかしてしまいました。(右写真参照)

深さ1.5mmの座繰り穴を彫っていたのですが、3プライの合板の中の層は
硬めでありながらもろかったようで、綺麗に削れるどころかボロボロに欠き
落とすような状態が多く、遂には表面のシナの層(0.5mm厚)まで破って
しまったのです。

この状態は最悪で修復する事は不可能であり作りなおすしかありません
が、頭も混乱のきわみにありますので暫し作業を中断して作り直しをどの
ようにするか様々な思考をめぐらせました。
半日考えた挙句の結論として、4mmシナ合板と2mm厚の発泡塩ビ板の
貼り合わせで再チャレンジすることにしました。

 今週の作業はここで止
 めてしまったので、反省
 も含め合板の問題点について簡単に触れておきます。

 合板は奇数枚の薄く切断した板を貼り合せた物で各層ごとに木目の方向は90
 度替えてあります。 こうすることで曲げに対する抗力はどちらの方向に対しても
 ほぼ均等になり、構造材としても優秀な物理特性を持つ!というのが売り文句
 です。

 但し薄い合板(5.5mm以下)では殆どの場合3プライ(3枚貼り合わせ)となり、
 特に5.5mm厚の場合入手可能な物はそれぞれの層の厚みは、0.5 - 4.5 - 0.5
 と綺麗な表面層は高価な為か薄くして、あまり物理特性の良くない中心層が厚
 い!と厚みに大きな差があります。(左の図参照)

 この中心層が固めでもろかったら綺麗に切削できずボロボロに崩れてしまう事は
 十分起こるわけで、実際にそのようなケースは殆どのようです。 従って5プライ
 タイプを使いたい所です。(層の厚みが 0.5 - 1.5 - 1.5 - 1.5 - 0.5 となってお
 り、ボロボロに崩れる可能性は非常に低い。)


 但し5プライの合板実物は今までに2回しか見かけておらず、販売店での展示レベルになるとゼロです。 従ってやむなく通常の中心層が厚い物を使って失敗に至っています。

散々考えた挙句の4mmシナ合板に2mm厚低発泡塩ビ板の組み合わせは板厚計が6mmと0.5mm増大しますが、トランスの上部の干渉に対してはゆとりが増えます。 4mmシナ合板の中心層の厚みは3mmと薄くなり薄いながら強度維持では重要な表層を剥ぎ取りませんから、問題はまず発生しないと想像します。 それに貼り合わせる2mmの発泡塩ビ板はアルミ天板の放熱口エリアを大きく切り取ります。 トランスの当たりもこの範囲に含まれます。 発泡塩ビ板はカッターナイフでさくさくと切断できる、寒い冬でも切断中に割れてしまうような事がない、電気的な絶縁特性が優れる、安価、等々私は大変大好きな材料です。(透明な物は入手不能!) ということで今週はごく僅かしか作業の様子をお伝えできません。

アルミ天板にあける穴位置を描き込み、センターポンチで浅く小さなマーキングを施します。 またトランス干渉防止の座繰り部分を線引きしておきます。(赤線部分だが!)

1.5φでスタートし、2.5φ、4.0φと拡大後、6.5φのドリルでバリを取りました。 更に穴のエリアを除きマスキングしました。

艶消し黒のスプレー塗料で塗装しマスキングを剥がした所です。 ここまでは順調に進んできたのですが?



2012/08/31

ケースの製作 その7

天板作りからやり直しの作業を開始しました。 最初に作った天板は5.5mm厚でしたが、今度作る物は4mm厚シナ合板と2mm厚低発泡塩ビ板をエポキシ接着剤で貼り付けた物とします。 最初は1.5mm厚の塩ビ板を探したのですがどうも無さそうなので2mmとしました。 このため貼り合わせ後の板厚は0.5mm厚くなってしまいます。

加工方法としてはシナ合板の裏からの座繰りは止めてしまいました。 その代りに木製天板の抜き穴部分が塩ビ板で覆われないよう大きな穴をあけて貼り合せます。  低発泡塩ビ板を切断するのは極めて容易です。 大型のカッターナイフを使い切断線に定規を当てて3回ほど切れば2mm厚であれば切断できてしまいます。 また寒い季節ですとプラスチックの切断は割れを生じ易いものですが、低発泡プラスチックであればその心配も殆ど無く加工しやすいです。

接着に際しては2液を混合してからかなり大きな面に薄く広げるのに時間が掛かりますので、90分硬化開始型のエポキシ接着剤を使いました。 但し今のように昼間は30℃以上あるような高温下では硬化の化学反応速度が速く60分ぐらいで硬化開始いたします。

実用強度には30℃で7時間とのことですが、はみ出た接着剤を削り落とすには完全硬化を待ちたいので、一晩寝かせています。

ところで私の切削ミスではないものの芯材がかなり荒れている部分があり、表面層は問題ないものの芯材がぼろぼろ欠けて!というトラブルが再び発生しました。 この部分の修復にはウッドエポキシという充填材を使って問題ないレベルにしています。 このウッドエポキシは私にとって従来の木工用パテに代わるものとして標準的な材料になっています。
何が特徴かと言うと、通常の木工パテによくある目痩せ(乾燥すると収縮してしまう現象)が全くないこと、エポキシだけに十分な強度が得られること、充填接着剤として有効な事、完全硬化には1週間ほど掛かりますがその間にカッターナイフでさくさくと切削できる時期があり、多めに使っても成形が楽に出来る事、などが挙げられます。 短所としては完全硬化までに長時間要するので効率的に作業を進め難いのですが、その為に成形に十分な時間を得られるので十分容認できると思います。

それが終わったらアルミ天板の上に載せて位置関係を十分確認の上ネジ穴をあけてやります。

無事溝の切削は終了!と言いたいのですが、私の加工ミスではなく材料の芯材に荒れた部分があったため、溝彫り時に芯材の欠けが発生しました。 この面は艶消し黒で塗りつぶす為後ほどウッドエポキシで埋め込み修正します。 どうも運にも見放されたかな?という心境です。

超スローペースで作りなおした木製天板と低発泡塩ビ板。 塩ビ板にあけた大きな穴は木製天板のスリット状抜き穴を覆いません。 これらを60分硬化開始型エポキシ接着剤にて貼り合わせ完全硬化をねらって一晩寝かせました。

接着後完全硬化するまで寝かせた後の側面。 光っているのははみ出て固まったエポキシ接着剤です。 後ほど側板を当てて現物合わせで研摩します。

前と後の貼り合わせ面と欠き取り部分はこのように平らになるよう、且つ所定の寸法になるよう研摩しました。 少しずつ確認しながら進めたので4時間ほど掛かっています。

芯材がぼろぼろに欠けてしまった部分の修復を致しました。 上が修復作業前、下が修復作業後ですが、材料はウッドエポキシで2種類の粘土のような材料を等量混合し充填部分に若干溢れるくらいに埋め込みます。 その後12時間後くらいに溢れた部分をカッターナイフで削り取り、更に12時間後にヤスリで研摩して仕上ます。 ウッドエポキシは1週間で完全硬化となりますが、そうなると切削・研摩は極めて難しくなります。

修復部分を真上から見たところ。 ウッドエポキシは木工パテ同様木目を潰しますので使う部所は良く考える必要があります。 このようにニスを塗る表層部分には付着していません。

貼り合わせと修復作業が終わった木製天板をひっくり返しました。板の部分は2mm引っ込んだ状態になります。



左上はアルミ天板の位置が横滑りでずれるのを防ぐ為小さく切った両面接着テープをシャーシの折り曲げ部分に貼った所です。

上の写真は180度回転していますが、アルミの天板を所定の位置に載せた所です。 軽くシャーシに押し込んでやれば横方向にずれなくなります。 そして木製天板を仮止めするために大き目の両面接着テープを数箇所貼っています。

その後そっとアルミ天板と木製天板を貼ったまま持ち上げてひっくり返し、4箇所の穴の位置に貫通穴をあけてやれば、ドンピシャの位置に固定ネジ穴があくという次第です。


あけた穴に例の薄い頭の飾りネジを使い天板をシャーシに固定しました。 ターミナル部分の保護シートはインスタントレタリングで文字入れするまで傷防止の為剥がしていません。 この両サイドに側板を当てて天板と底板の幅を微調整カットすれば、箱作りは終了します。



2012/09/07

ケースの製作 その8

側板の製作に入りました。 ここでも製作ミスが発生して側板に彫る溝の位置が左右で0.5mm以上もずれてしまう問題がありましたので作り直しをしました。 この問題はトリマーが切削位置を正しくトレースするガイド板の取り付け位置が正確でないことに起因しており、多くのトリマー加工で起きる問題ですから抜本的な対策を講じる必要がありますが、そのために検討時間を費やしていられませんので、逆の発想で進めました。

それは溝を彫ってから墨線引きをして切り出すという方法です。 こうしてやれば溝の切削位置がずれてもそれなりに切り出せるわけで、後は切断がどこまで正確に出来るか? によります。 正直な所切り出した後に左右の切削面を重ねて溝のずれを見ましたが、0.1-0.2mmのレベルだと思われます。

トリマーで切削する溝は幅3mm、深さ5mm、長さは背面から130mmとしました。 幅3mmというとレールの厚み2mmに対し1mmの隙間が出来ますがこれは大きすぎます。 それを防ぐには切削幅2.4mmのストレートビット(mini-Shopで販売しているSS2-2.4G)で彫ればよいのですが、ここでは3mmで彫った後で0.5mm厚の木口テープを貼り、溝幅を2.5mmに減らしています。 こうすることで切削面はざらついていますが、シナの木目は細かくて滑らかな為レールとの滑り具合が良くなると考えたからです。

さて切り出しに際しては側板の高さはシャーシの高さに合わせます。 もうこの辺りだと現物合わせになりますが、ノギスで測った6箇所の平均値は52.6mm、最大値が52.8mm、最低値が52.2mmでした。 この誤差の原因はシャーシの縁の折り返し部分の加工誤差によります。 そこで切り出しは幅53mm、長さ160mmです。

こうし出来上がった側板をシャーシに貼り付けますが、その前にシャーシには固定ネジ穴の位置に1.5φの穴をあけておきます。 そして側板を両面接着テープでシャーシに貼り付けます。(この時位置の調整を十分にしておきます。) そうしたら1.5φのドリルで3-4mm程度の穴をシャーシ内部からあけてやり側板は一旦外します。 次にシャーシの穴を3.2mmに広げてやつた上で再び側板を当ててネジ止めします。 面倒なようですが、ネジ止め位置がずれない為の方法です。 そして側板の幅微調整研摩を施し、シャーシと同一面からシャーシより0.2mm程の出っ張りくらいとなるようにした上で、側板の木口面にテープを貼って仕上ます。 そうすると木口テープの厚み分(0.5mm)だけ側板の上面が飛び出て丁度良さそうな眼差になります。 同時に底板・天板の前面・背面にも木口テープを貼りました。 

溝彫りをしてから所定の寸法で切り出した側板。 左側が後側になります。

彫った溝の内面を研摩するヤスリ。 2mm厚の塩ビ板に#240のペーパーを巻きつけてセロファンテープで止めた物です。

こんな具合に側面と側面を研摩できます。 次に#400ペーパーに変えて研摩すれば完璧です。

研磨中に発見したことですが、ペーパーを巻きつけると厚みは2.5mmになります。 そうするとここに見える隙間は0.5mm。 具合の良さそうな隙間です。

研摩終了後に木口テープを貼り付けました。 この写真の左側が左の側板、右が右側の側板になります。 そしてはみ出た部分をカッターナイフで切断してペーパーで軽く研摩します。

一応確認の為にレールとなるアルミ棒(2mm厚)を入れてみました。 反射のために隙間部分が実際より黒ずんで隙間幅が広いように見えますが、0.4-0.5mm厚の紙を挿し込むときついので実隙間が判ります。

ターミナルが固定される面の保護シートを剥がし文字入れをした上で水性ウレタンニス透明クリヤー2回塗りで仕上げました。(こうしないとアルミ面の綺麗さが維持できません。)

シャーシ側面4箇所に1.5φの穴をあけました。 穴位置はそれほど正確でなくてもOK。

シャーシ側面に両面接着テープを貼り付けました。 これは後ほど剥がすので前面貼り付けでなくてよいです。

その上から側板を当てて位置を十分調整の上貼り付けます。 そして1.5φのドリルで内側から側板にマーキングをします。 この写真はマーキングが終わった所です。

シャーシ側面の穴は1.5φから3.2φに拡大し側板を当てて内側からネジ止めします。 側板の1.5φの穴がネジ止めの下穴となるので、正確な固定が出来ます。

全ての切断面にシナの木口テープを貼りお化粧をしました。 これによってムク板で作ったかのような外観に変貌します。

前面右側のクローズアップですが。妙な隙間がなくぴったりと収まっています。

背面の様子ですが放熱板には細かな傷が沢山ありますので、研摩してそれらを消した上でペイントで塗りつぶそうと考えています。



2012/09/14

ケースの塗装と残りの作業

木工部分の塗装に入りました。 手順としてはほぼ私の標準工程で、ステインを2倍に薄めた物で5回着色 → 水性ウレタンニス透明クリヤー3回塗り → 水性ウレタンニス艶消しクリヤー2回塗りです。 標準工程よりもステインの塗装回数は2回多く、透明クリヤーニス、艶消しクリヤーニスは1回ずつ塗装回数が多くなっています。 そうした理由は着色濃度を極端に高め木目が僅かに見える程度にしてニスの塗膜も厚めにすることで重厚な感じを出すともに設置場所のチェスナット色に近いが赤味のあるオーク色で映えさせようという期待にあります。

またウレタンニスの厚い塗膜で傷防止の意味も持たせてやります。(何しろ取り外しが容易に出来てポータブルでも使われるので傷付けやすい。)

塗装が終了し完全乾燥した時に底板が表面側に凸に曲がっていることに気付き底板止めネジを1本追加する事にしましたが、同時にネジの頭が底板に当らないようにする座繰り穴あけをやっていないことも思い出しました。 この座繰り穴は全部で12個ありトリマーのストレートビットであけるつもりでいます。 但しネジの頭が6φであるのに対し座繰り穴径は8φであけたいのであける位置精度は0.5mm以内に抑えないとネジの頭と干渉する可能性があります。

そこで予め十字状の墨線で位置が示されている場合に使える『ジグ』を製作しました。 とはいってもジグを正しくセットしたら何も考えなくても(コツは不要!)正確に穴あけが出来るものとしています。 その構造はL型に組んだフレームの先端に電動トリマーの台座の挿入ガイドとなる爪を接着し、3角形のプラスチック板を貼り付けて、ここプラスチック板に設定用の線をカッターナイフによる切込みで作りという仕掛けです。

これを使ってみたところ大変快適であり一過性のジグではなく常備の道具がまた増えた次第です。

次にフロントパネルと放熱板のヘヤーライン加工をしました。 そしてフロントパネルにはインスタントレタリングで文字入れを済ませて、傷と汚れ防止に水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗りました。 

それが終わったら電機回路を含む全ての組立をして完成です。 正しい動作をしている事の確認を済ませて取り敢えずほっとしています。

塗装作業の1番目はオーク色のポアステインを水で2倍に薄めたもので5回着色しています。 木目はほんの僅かしか見えなくなりますので、樹種が何かは判り難いです。 そして重厚な感じになります。

左は水性ウレタン透明クリヤーを3回塗りした状態。 かなり艶が出ていますが表面が平らでないので、あまり上品な艶ではありません。 そして右は水性ウレタン艶消しクリヤーを2回塗った所です。 艶が抑えられて表面が平らでない難点が隠され上品で深みのある感じになりました。 これが正に狙っていたものです。

自作90度接合ジグを使って2本の棒をL字型に接着中。 何とも大袈裟なクランプによる保持ですが、正確に90度を得て密着度の高い接着には不可欠のやりかたです。

L字型先端に爪を接着しました。 そして2等辺三角形の形をしたプラスチック板をエポキシで貼り付けました。 そして設定線を十字状に入れましたが、ここでは見えないので次の写真をご覧下さい。

赤い線を引いて判りやすくしましたが、これがジグ状の設定線です。 その線を板に引かれた墨線に一致するようジグを当ててクランプで固定します。 あとはトリマーを挿入すればご覧のとおり座繰り穴があきます。

実際に底板に穴をあけ終わった状態です。 8φのストレートビットを使っていますが、中心の直径2mm位は完全に切削されないので、3mmのノミを使ってこの後削り取りました。

ヘヤーライン加工をしている所。 サンドペーパーは#400を使っています。 これが終わったら研摩かすを水で洗い落とした方が良いです。

ヘヤーラインのクローズアップ。 大変細かな目になっています。 また折り曲げ角はシャープになっております。

そしてインスタントレタリングで文字入れをしましたが、普通に較べ文字の量は2倍あります。

テーブルトップで使う時の為の表示がフロントパネルの折り曲げ部分に入る為です。 この後水性ウレタンニス透明クリヤーを2回塗ってインスタントレタリングの剥がれ防止としました。

天板の溝の中は水性ペイント艶消し黒で塗りつぶしました。 方法としては少々固めの工作用筆で大目に含ませたペイントをつぎ込むような格好で短時間の内に塗りつけます。

デリカシーのないやり方ですから表面に沢山付着しますがそれらが乾燥しない内に濡れ雑巾で拭き取ってしまいます。 乾燥しないうちに拭き取らないとならないので、一回辺りの塗りこみは溝1本が限度です。 濡れ雑巾は真っ黒に汚れ他に付着すると厄介ですから溝3本位を塗りこんだら水道で一度洗った方が安全です。

こうして塗り終わったら1時間ほど乾燥させてから塗りこみ状況をよく確認します。 多分完全に塗られていない部分が見つかるでしょうからその部分をもう一度塗って完了です。

この方法は水性ペイントの特性を利用した塗りこみ方で、間違っても油性ペイントを使わない事。 ペイントシンナーで拭き取ると水性ニスで塗装した部分が溶ける心配がある。

ケースの製作は完了しましたので早速内部に基板を組み込み配線をしました。 既にバラック状態で配線して動作確認をしていたので短時間に済んでいます。

フロントパネル裏に配置した長い基板と電源部から離したイコライザー基板(左端)の配線の様子。 上下方向に配置される太い導線は入・出力端子から来るシールドケーブルです。

一番混雑しているのが電源部で、左端がスイッチング電源、中央のトランスの見える部分がリニヤー電源、その上の基板が逆さになっているのがメインアンプ基板です。

上面の入・出力端子群。 右上端のGND端子を除き全て挿しこむ作業で接続が完了します。

左のLEDはメインスイッチ ONで赤く点灯。 数秒後青に変化しその時点でヘッドフォーンが接続されます。 右のLEDはパワーアンプ ON後数秒経ってデジタルアンプの動作が安定したらスピーカーが接続され、緑に点灯します。(何れもショックノイズ削除機構です。)

完成したアンプの前面の様子です。 勿論これはテーブルトップモードですから、前面に入った文字は逆さまになっています。 フロントパネル上面に入れた文字で各ツマミの機能が判ります。(右下の写真)

背面は電源コードが引き出されているだけで極めてすっきりしています。 接続は全て上面の端子でなされます。

一通りの動作テストをしました。 スピーカーはバナナプラグを使って接続。 入力はiPod Nanoで、前面のAUX 2端子に繋ぎました。 澄み切ったパンチのある音色は爽快でした。 特筆すべきはノイズが非常に少ないことで、特にヘッドフォーンで聴くとそれが確認できます。



2012/09/21

アンプを収めるブラケットの製作

アンプ本体が完成しましたのでデスクトップで使うブラケットの製作をしました。 ところでデスクトップでの使用モードとテーブルトップの使用モードはアンプが逆さになるという点で異なります。 これはここでだけの定義なのですが、デスクトップとは私の書斎の机の上の吊り戸棚の下側にぶら下げる状態で、テーブルトップとはテーブルの天板の上に載せた状態を指します。

よってデスクトップ用のブラケットとはアンプを逆さにしてぶら下げる為の物です。  大雑把な言い方をするとコの字型の内側にアンプをスライドインするレールを取り付けた物ですから、簡単な構造です。 但し出来るだけ軽く、薄く、そして十分な強度が確保できるよう5件以上のケーススタディーを繰り返して最終的な材料と組立構造を考えました。

 左の図がその結果で材料としてはレールを埋め込む側板を9mm厚のシナ合板、
 天板は5.5mm厚のシナ合板、補強の為のLアングルは幅19mmで厚さ1mmのアル
 ミ押し出し材、レールには幅10mm、厚さ2mmのアルミ押し出し材、背面は1mm厚
 アルミ板、それに断面がJ型をした飾りのアルミ押し出し材といった所です。
以上のうち5.5mmのシナ合板は4mm厚でも問題ないと思われますが、手持ち材料の関係で5.5mmとしています。

これらの材料を60分硬化開始型エポキシ接着剤で組み上げます。 一度に全てを接着するのは不可能ですので4ステップとしますが、それぞれ完全硬化後に次のステップに移ります。 1ステップは15時間ほど掛かりますから、合計で2日半必要と大変時間が掛かりますが、接着強度が必要な強度を得る全てですのでやむを得ません。(因みに30分硬化開始型や5分硬化開始型を使えば作業時間は短縮できますが、経験上接着強度は60分硬化開始型が最も高く安定しているので、60分硬化開始型の採用としています。)

組上げが完了したら木口テープで切断面のお化粧をした上で塗装します。 内側は艶消し黒で塗りつぶしますが、外側はアンプの木部と同様オーク色のステインで濃度を最高に上げてやります。 断面J型の化粧用アルミ棒は塗装が終わってからエポキシ接着剤で貼り付けます。

出来上がったらアンプをスライドインさせますが、後ろ側のゴム脚2個が摩擦で当るような緩いテーパーを与えた木片を現物合わせで削り出して貼り付けて完成とします。

ブラケットを作る材料で断面がJ型の棒と1mm厚アルミの平板を除く物を所定の寸法に加工しています。 板のL字型アルミ板と断面Jの棒を接着する面は段差が出来ないようトリマーで座ぐってあります。(深さ0.8〜1.0mm) 斜めに置いてあるのは溝とレールの間に詰める0.5mm厚のプラスチック板です。

因みにL型アルミアングルはこのように天板と側板の接合を補強する格好で接着されます。 この写真の手前の方に座繰りが見えますが、これは後ほど断面J型のアルミ棒を貼り付ける面です。

上の写真の左下の角のアップです。 ここにJ型アルミ棒を貼り付けると変な事になるのですが、後ほど補修致します。

これはレールに使うアルミ棒(10 x 2mm)ですが、前面の露出する部分の角はアンプ側板の溝を傷つけることなく受け入れる為、中目のヤスリで角を落とした後に#600のサンドペーパーで磨きつるつるにしました。

溝は2.4φのストレートビットで深さ5.2mmとしましたが、#120ペーパーで0.1mm強内壁を研摩し、60分硬化開始型のエポキシ接着剤を溝に流し込み楊子の先で内壁に伸ばした上でレールを落とし込み、更に0.5mm厚プラスチック板を厚入しました。 写真の左側のレールの右側は黒っぽい帯が見えますが、これは0.5mm厚のプラスチック板で、こちらが下側になります。 右のレールはプラスチック板が差し込まれていない上側ですので、黒い帯は見えません。

接着の第二ステップはL字型アルミ板の接着です。 アルミ板の表面を#120のペーパーで荒らした上で接着しクランプで15時間圧着保持しました。

こうして完成した側板ユニットです。 たった0.8mm厚のアルミLアングル材は想像していたよりも曲げ強度が高く、背面の補強板は不要になりそうです。

側板ユニットを天板の両端に接着しました。 予め正確な座繰り切削をしていますからそれに合わせてぴったりと接着しています。

15時間後にクランプを外しコの字型の内側の寸法を測りましたが、手前奥行とも369.5mmでした。 アンプの幅は369mmですから、それよりも0.5mm長いという設計どおりの寸法です。

全ての木口と側板表面に木口テープを貼りお化粧をしました。 側板は35mm幅を2枚貼っていますので?ぎ目の線が見えますが、高濃度の着色をしますので見えなくなると思われます。(右下の写真)

前の方で触れた前側の上の角の欠けた部分はMDF材を切断して貼り付け(左側)、その後木口テープで覆って修復が判らなくなるようにしています。 尚側板の木口テープの?ぎ目がうっすらと見えます。(右側)

そしてニス塗装を済ませました。 天板トップとブラケットの内部は後ほど艶消し黒のペイントで塗りつぶします。 ニス塗装の仕様はアンプ本体木部の仕様と全く同一です。

ブラケット左側板のアップですが、木口テープの継ぎ目は見えません。

0.4mm厚燐青銅板を切断して折り曲げた簡単なブレーキ・ストッパーをエポキシ接着剤で貼り付けました。

ブレーキ・ストッパーの全貌はこんな具合です。 矢印の先はテーパーになっているためアンプをブラケットに装填すると最後の方でアンプのゴム脚が矢印の面に擦れて重くなってきます。

ブラケットの上面と内部を艶消し黒のスプレーペイントで塗装しましたが、この光景ではアンプの後部がブレーキ・ストッパーの先端の90度に曲げた部分に当って止まる!をご覧ください。

最後の作業は断面がJ型のアルミ棒を飾りとして接着しました。 この接着には30分硬化開始型のエポキシ接着剤を使っています。

J型のアルミ棒の接着が終わりました。 あるホームセンターを何気なく物色している時に見つけて求めた物ですが、素晴らしいアクセントになってくれました。

完成したブラケット。 3種類のアルミ押し出し材のそれぞれの特徴をうまく使って出来上がりました。

2モードが良く判るよう18mm厚合板にブラケットを取り付けて写真を撮りました。 デスクトップモードは書斎の吊り戸棚の下に取り付ける前提で、殆どがこの状態で使用されます。 テーブルトップモードはLPレコードをCD化する際に、書斎では狭くて作業できないので、別室でする際の使用を想定しています。 デスクトップモードではフロントパネルの全ての文字が正常に読めますが、テーブルトップモードでは逆さになって読み難いです。

しかしテーブルトップモードでは上から見下ろす使い方が普通になるので、フロントパネルの手前側上部に入れた文字が真っ先に目に入るので(下の拡大写真参照)、操作上の支障はありません。 また同様にスピーカーやレコードプレーヤーの配線もアンプの使用位置に座ったまま、姿勢を変更することなく出来ます。

前の方に記載してあるように、このアンプはスピーカーからの出力、録音出力、ヘッドフォーン出力の3出力のレベルを独立してコントロールできます。 そして変わった2モードの使い方と市販の製品には全く無い機能を有しており、自作して始めて実現できた例です。 そして音質レベルもかなりの質が伴っていると思います。 大変時間が掛かりましたが、やっと一呼吸できます

----- 完 -----


 
  
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