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読者の作品 061
 

2013/10/25

神奈川県相模原市にお住まいの高倉様より寄せられた小さくかわいい作品をご紹介いたします。 とは言っても高い工作精度を保てないと物にはならない面があり決して難易度は低くないのですが、うまく勘所を抑えて完成されているようです。 高倉様の紹介文をそのまま掲載致しますのでご覧ください。

VIC's D.I.Y. 大橋様

投稿作品: 閉じ込められたサイコロ

高倉厚美(男69 歳)
HP: Google 検索「ダボさま木工」

 前略、
VIC's D.I.Y.様のHP は一番のお気に入りページですが、最近は自分の知恵では、逆立ちしても間に合わ ないことばかりで、よく理解できないながらも感嘆するばかりです。 お孫さんの勉強机を計画中と伺ってから、夏休みも過ぎて待ち遠しく楽しみにしているところです。

今回、久しぶりに投稿しようと思い立ったのは、6〜7 年前、旅行中に立ち寄った工芸品店でのこと。 今回の投稿作品のような立方体の中に、本物のゴルフボールが閉じ込められているのを偶然見たことが あり、売り物ではなかったが、折しも自分のホールインワンボールを、何かに飾っておきたいと思って いた時期だったので、とても刺激的な作品でした。
どうやればあの作りができるのか、未だ解明できませんが、本物のゴルフボールが完全に閉じ込められ ていたから不思議です。

 旋盤は勿論、ボール盤も持っていないので、立方体の中をくり抜くというと、手持ちの中で最大の20 φドリル(センターにネジが付いているので、φ5 の下穴を開けてから使用している。それでも喰いつき過 ぎて時々ドリルの回転が止まってしまう状況)を通しておいて、彫刻刀で中をくり抜くしかないかと、非 現実的な発想しか浮かばなかったのが、フォスナービットというものを初めて手にして、これなら大き な穴が簡単に加工できるかなと、とりあえず図面を描く内に、一度に貫通加工するのは難しいのかなと か、ひっくり返し加工すればいいかなど、あれこれ思案する内に、立方体の中にサイコロが残ることに ふと気がついた。

 サイコロは、ギリギリで外に取り出せると思っていたが、図面を眺めるうちに、間口よりサイコロの 対角の方が大きいことから、計算上では取り出せないことが判明。
ホールソーの経験しかないので、取りあえず試したくなったが、ドリルアタッチメントでは喰いつき過 ぎて止まってしまう経験から、35φはとてもじゃないと、友人のボール盤を借りてテストしたところ、 案の定、サイコロは取り出せなかった。

 それにしても、普段の木工ドリルと違い、全く喰い込まずに軽く切れるのにビックリ、
 これならと少しガタのきていたドリルアタッチメントを整備し直して、今度はじっくり
 時間をかけて作り上げたのが右の写真です。

 出来上がったものを妻に見せたら、「不思議だけど、お土産屋で見たことあるよ」と
 一蹴、「えー、そうなんだ!」、考えてみたら、フォスナービットで底面があんなにき
 れいになるのを知らなかったのは自分だけだろうから、経験者なら誰でも思いつく
 現象なのでしょうが、自分としては思いがけず気に入った作品の一つになりました。


製作するための準備としては

・ 素材として正確な立方体を入手する。アートブロックという50□の市販品を使用した。価格は125円で入手でき、加工し
 易いブナ材です。

・ フォスナービット加工としては、ボール盤がベストでしょうが、自前のドリルアタッチメントでもタップリ時間をかければ可能
 だった。

・ 中に残ったサイコロの目が、全て@では面白くないので、工夫して@〜Eまでの目を入れるとよいが、自分は奇数しか
 入れていない。(真ん中の点を利用できる3と5を2面ずつに加工した)

・ サイコロ目の加工には、尖塔型歯先のショートドリルがあるときれいな目になります。

・ 立方体の全面をクルクル回しながらの加工になるので、基準面を統一する必要があり、簡単なセット具は必須です。
 (加工順および治具は、添付図面を参照)


苦労・工夫した点

・ 素材は、どこのホームセンターにも似たような商品が置いてありますが、寸
 法精度は分かりません。その中で、自分の調達したアートブロックという商
 品は、全く修正の必要ない正確なものでした。(アステージ株式会社カイン
 ズにて購入)


・ 立方体の中心に、正確にビットの芯が合うようにするには、簡単なセット治
 具の製作は必須です。フォスナービットの計算上の追い込み量を一発で加
 工するのは無茶なので、立方体を順に廻しながら、サイコロの稜角が首の
 皮一枚でぶら下がるまで加工するのがよい。

・ サイコロに目を入れる場合、もみつけ用の刃物が必要になるが、フォスナー
 ビットと同じような先端形状の尖塔歯先型のショートドリル(11φ)を使用し
 た。

・ サイコロの対辺距離を27 にしてもOK ですが、立方体からの切り離しがカッターナイフに頼ることになるので、結果、サイコ
 ロの稜角を丸く仕上げるしかなく、それはそれで本物のサイコロらしく演出できそうですが、均一な仕上げが面倒なので、
 対辺はサイコロの切り落ちる26.5 まで正確に追い込んだ方が、シャープなサイコロができ、仕上げも楽になります。

・ 立方体の中の狭い空間にサイコロが残るので、ペーパー掛けが大変そうですが、中は案外広く、ペーパー掛けは楽に
 できます。


費用について

・ 素材の立方体□50×50×50 ブナ@125
・ 治具材 残材より              0
・ フォスナービット35φ            ?
                     合計125 円


塗装

とりあえず塗装していないが、汚れ防止のためクリアニス塗装はしようと考えています。サイコロだけは別色に着色した方
が、本物感が出るかもしれません。


図面について

詳細は、添付図面を参照願います。

製作後の感想

・ 費用は殆どかからないのに、工作時間だけはたっぷり楽しめ、子どもたちに触らせて不思議がられるのも又一興です。

・ 大概の人がマジックだと思っているようですので、当分はネタばらしをしないでおこうと思っています。

・ まさかドリルアタッチメントで35φが加工できるとは思ってもいなかった。師匠がスライド蝶番の取付け加工に、フォスナー
 ビットというものを使っているのは知っていたが、てっきりボール盤での加工だろうと思い込んでいた。改めて師匠のドリル
 アタッチメントに乾杯です。(勝手に師匠と呼ばせてもらっています。)

・ それにしても、課題のゴルフボールには少し近づけたのか、まだまだ遠いのか全く分かりませんが、40φのフォスナービ
 ットを購入して、一度は蒸したり冷凍したりしながら、力技で挑戦してみようかと思っています。(ゴルフボールの直径規格
 = 42.67 以上)
 尚、この35φサイズでも、カチ割ってインチキ接着すれば、内部にゴルフボールの入る空間だけはありそ
 うです。

・ インチキでないアイデアがあれば、そうっと教えてください。


完成写真

 

サイコロを浮かせて見せるために、台座を追加してみた。



VICの一言

この作品はアイデア工作とでも言える分野の物です。 構造的には結構簡単ながら製作には慎重さを要求したり科学的な理屈を充分理解したりする必要があることが多いです。 その辺りをうまくまとめられています。 高倉様は上記の後も発展型の工作を続けておられます。 以下にその作品の写真のみを掲載しておきます。 どのように作られたかお考えください。


立方体の中にゴルフボールが入っています。 当然ながらゴルフボールは取り出せません。

こちらは円柱の中に入っているサイコロです。