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読者の作品 060
 

2012/09/07

宮城県岩沼市にお住まいの鈴木様から寄せられた作品をご紹介します。

製作されたものは吊り本棚で家本体に固定されています。 詳しくは以下の鈴木様の説明をお読み下さい。

註) 説明の中に幾つかの図面が出てきますが、小さなそれらの図面をクリックすると大きな図をご覧頂けます。


吊り本棚の設計,製作について


1 構想
  日頃から部屋にあふれている本,CDを整理したいと思っていると,書斎コーナーの机上部の空間が目につきました。


  そのスペースを有効活用する方法として,吊り本棚を設置することとしました。ちょうど夏休みを利用して,家内と子ど
  も(小2)が実家に1週間ほど遊びに行き、家を空けます。少々の騒音,悪臭OKな格好のタイミングです。
  本当は,先ず工作ありきで,理由は後付けです(笑)。タイミング,設置場所,何を工作するのかの流れで構想が進み
  ました。子どもの安全を考えると,家族が帰ってくるまでに完成させなければなりません。(この期限が後々問題となり
  ます)


2 設計方針

  @吊り本棚なので,あまり突出して違和感をあたえないこと,強度的に無理がことを考慮し,あまり奥行きを深くしな
    い。
     問題となっている物は新書,文庫,CDが多いので,収納する対象を限定して,前面の棚は新書サイズ,側面は
     「CD」サイズとしました。

  A壁の石膏ボードに大穴をあけることはしない。
     設置場所の下に新築時に作り付けの壁内の棚(穴?)があります(写真1,写真3)。家の構造から,仮に今回作
     成する本棚を壁内に設置しても,奥行きは十分とれ,強度的にも理想的です。ただ残念なことに,壁に大穴をあ
     けることには家族(というか妻)の理解が得られないでしょうし,粉塵,断熱材の処理(間仕切り壁ですが入ってい
     ます),工期などの問題が山積しそうなので,今回は断念しました。

  B強度には十分配慮する。
     本棚なので収納物は集まると大変な重量がある本です。その重さを配慮して壁に十分に固定できるよう,壁に固
     定する部分=裏板は強度のあるものを利用し,棚は固定としました。

  C地震に配慮する。
     宮城県で震災を経験した者として,頭上に大量の本を置く以上,地震への配慮を欠くことはできません。

  D外観を多少は考慮する。
     設置場所の書斎コーナーは寝室の奥まった一角にありますが,部屋の中にさらされるので,一見して違和感を与
     えないよう配慮します。

3 設計

  @石膏ボードの下地材の所在を確認
     建物のマニュアルを参照し,ワンプッシュで下地の桟
     を確認しました(右の写真)

  A設計
     ア 正面の棚には本(新書サイズ),側面の棚は
       CD専用とする。
     イ 材料は,シナランバーコア18tを2枚とする。
        部材に応じて数種類の材料を使うことも考慮しま
        したが(裏板を構造用合板とする等),結局に仙
        台地区のホームセンターでは,シナベニアの厚
        手の物は入手困難であること,軽量化,作業時
        間の短縮を考慮しシナランバーコアとしました。
     ウ 正面の棚は3ブロックの構造,側面の棚は一体構
       造とします。
        側面の棚については,板取の結果とスペースから,3段→4段が可能となりました。
     エ ランバーコアを使用したため板に方向性があり,板取が難しく,かなり不合理な板取りとなってしまった。
        挙げ句,ホームセンターのカットサービスを利用したら精度が出ない原因にもなりました。 余りが多すぎる
        ように感じられますが,ジグや作業台にも利用したので,全て無駄にした訳ではありません。
     オ 最終的な設計図,板取図は以下のとおりです。


       設計図は終始エクセルファイルで作成しましたが,板取は方眼紙と鉛筆で試行錯誤しました。


4 製作

  @板材のカットは,板を購入したホームセンターで行いまし
   た。(右写真参照)
     パネルソーの設置場所は,一般人出入禁止です。
     遠くから眺めていると「あぁ・・・」な順序でカットが進み
     ます。家に帰ってから板を並べてガッカリな気持ちが
     写真から伝わるでしょうか。 この規模の工作なら吸
     収できる程度の誤差でしたが・・・。

  A表面に出る木端に,シナの木端テープを貼ります。
   下の写真6/7を参照下さい。


  B正面の棚は3ブロック、側面の棚は全体を床面で組み立てました。(写真8参照)
     組立は60ミリのFビスと木工用ボンド併用です。裏板と棚板は3カ所、側板は棚板ごとに2カ所ずつと、裏板4カ
     所にFビスを使用しています。 (正面の棚の各ブロックの区分けは次の「正面の棚 ブロック図」を参照下さい。


  C側面の棚の右側板は部屋に面することから,ビスの頭がでないよう,棚板側からFビス30ミリを斜め打ちしました。
     事前に棚板に下穴を開け直角クランプで固定しましたが、角度が急すぎて板がずれて狂いが生じてしまいまし
     た。(写真9,写真10,「斜め打ち失敗」を参照下さい。)


  D塗装は、ワシンの水性ステイン(マボガニ)と、水性ニス行いました。ニス塗りは2回です。(写真11)
     どんどん期限が迫り,焦った挙げ句,ニスを塗った後で着色漏れに気付きガッカリです(写真12),設置後は下か
     ら見えないので,今もこのままです(なにより予算が尽きています)。


  E正面の棚の一番左のブロックから壁に固定、横桟が有る位置に側板(2カ所)と裏板(5カ所)を70ミリのFビスで固
   定しました。(写真13)ビスを打つ場所には当然,下穴を開けています。
     左手一本で工作物を支え,右手でビスを打つ今回の工程(補助者なし)では,この重量が限界でした。左手がプ
     ルプルしながらの作業でした。

  F以下、中央ブロック、右ブロックを,各々裏板(5カ所)と縦桟の位置(3カ所)で70ミリのFビスで固定しました。 ブロ
   ックの間は各棚板ごと2カ所にFビス60ミリを斜めうちして固定(固定より,棚板の加重を負担する意味が大)してい
   ます。(写真14)
     ブロックの区分けは,利き手(右手)でドリルドライバーを使うことを前提としています。


  G側面の棚も,同様に裏板(5カ所)に加え、写真4に記載がありませんが、右端の縦桟(4カ所)にFビス70ミリで固
   定しました。(写真15)

  H地震対策として、自転車用の荷物固定用のゴム紐を,棚の全面に張り渡しました(写真16)
     ゴム紐の張力が過大となって使い勝手が悪くならないよう、正面の棚は左右のみ固定し、中間はフリーとしてい
     ます。(写真17)エンドはビスの頭隠し用のワッシャとキャップを利用しました。(写真18,写真19)


  I本、CDを収納した状態です。(写真20)




5 材料費,制作費

   シナランバーコア18t @3580円×2枚
   木端テープ @1000円×2本
   ステイン1000円
   ニス1980円
   その他 カット代,コテ刷毛1本,刷毛2本,木工用ボンド,ビス,この機会に購入した若干の工具や小物の追加等
   合計15000円位。
   なお,電動工具等の主要な工具は既存のものを使用しました。
     決算が正確に分からないところが,予算管理の問題を表しています。


6 反省点や感じたこと

  @事前に設計図を書くことの意味を実感しました。
     ぶっつけ本番で,この規模の工作は悲惨な失敗を招いたと思います。

  A事前に,工程表と,予算書(お買い物リスト程度)を作っておけば,余計な時間と金銭のロスを避けられた。
     予算管理をして設計を見直していれば,1万円以下も可能だったと思います。
     次回の工作では,設計図,工程表,予算書(購入リスト)を事前に作成ようと考えています。

  B側面の棚の高さはCD限定でなく,文庫本まで可とした方が,収納物の柔軟性があり良かった。

  C正面の棚と側面の棚の間はデッドスペースとなってしまった。
     もっとも,隅はいずれデットスペースになりがちなので,施工の容易性から折り込み済です。

  D本やCDを収納した後で見えるところだけ,仕上げに注力すれは良かった。
     収納物を入れると,板の木端部分しか見えないので,木端の処理さえ力を入れれば,大幅なコストダウンが可能
     だった。(ラワンランバーコアや場合によっては構造用合板を使用する)

  Eランバーコアはあまり優れた材料ではないが,軽量化の観点から,今回の工作には良い選択たった。
     日程的,強度的にフラッシュ構造は難しかったし,このように大規模(私にとって)で,各部材をしっかり結合した
     構造を組めば,強度も十分と考えています。棚板に体重をかけても不安はありません。
     (経年劣化は心配ですが)

  F工程管理が不十分だったため,時間が足りなくなり,塗装等の仕上げが汚くなってしまった。
     美観を意識した仕上げには思った以上に時間がかかる,特に下地調整や木端テープ張りとその後の処理が,規
     模が大きいと大変でした。

  G塗装のステインの色が事前の予想と異なる発色をして(赤い),やや違和感がある。
     一度塗った後は変更できない。なにより複数の在庫から選択する訳ではないので,買った以上は使わざるを得ま
     せん。

  H側面の棚の側板にビスの頭がずれてしまったことについては,良い方法があった。
     後日ネットを調べると,ビスを斜め打ちする角度が浅くなるよう,もっと横長の下穴を準備すれば良いことが分か
     りました。この点は経験してはじめて腑に落ちるところです。(「斜め打ち失敗」を参照下さい。)

  I耐震用のゴム紐について,見栄えが今ひとつ。
     実用性,効果とも目的を達成していると考えていますが,本質的な問題として,結局のところ次の大地震まで実
     際の効果は分からない。次の震災(400年後?)は冗談としても,次の大地震(30年後)まで,この本棚どころ
     か建物が存在しているのか?

  J当初から応募を意識していましたが、いざ応募しようとすると写真が足りない。さらに写真のフォーマットが4:3でなく
   16:9であることに気づく

  K実体験を伴うと,ネット,本での知識取得がより深くなることを痛感しました。
     ネット上の100時間の知識は,実体験の1時間に劣る場合もありえます。

  L結論として,今回の工作は目的に対し,実用上,十分な成果が得られました。
     特に家族から重大な反発をかわない点,目標を達成しました。妻の目から、とんでもない大工事に写ったようで
     す。 仕上がりに罵声が飛ばなかったのでOKでしょう。側面の棚の板のずれは、制作者にとって痛恨ですが、
     知らなければ気づかないようです。(そのような仕様と思うのか?)


VICの一言

かなりの力作のようでご苦労様でした。 ただ一部気になる点がありますがここでは触れません。 但し材料としてのシナ ランバーコアだけは物理的な性能がシナ合板より格段に劣り構造材としては不適当です。 特に最近では軽くて柔らかいファルカタを芯材に使っている事が多く、釘はまともに効きませんし接着による接合強度も上がりません。

お住まいの地域ではシナ合板が入手できなかったとの事ですが、切断も含めてインターネット通販で購入すれば良いと思います。 その方が切断精度も単なるサービスぐらいの感覚でしかやらないことの多いホームセンターよりも良いショップがあります。

経験則から生まれる知恵も色々ありますので、あまり構えすぎないようにし少しずつ技量を積み上げた方が良いように思います。