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読者の作品 059
 

2012/03/23

神奈川県横浜市にお住まいの伊藤様から久しぶりの投稿です。

伊藤様は養護学校の先生をされており退官された現在でもまだ養護学校を支える仕事をされているようです。 今回応募された作品も生徒さんをサポートする為に作られています。 詳しくは以下の解説をお読みください。


1.ドリルアタッチメント機能追加版の製作


 大橋様考案の「ドリルアタッチメント」は、私の日曜大工のみならず、養護学校での木工の作業学習で大きな威力を発揮してきました。 3年前の定年退職後、ボランティアで出入りしている養護学校の中学部木工班で、今まで作ってきた「ミニすのこ」の発展版として、その下部に折りたたみの脚を追加して「折りたたみ椅子or花台」をつくることになり、その可動部のボルトナットを入れる位置に正確な穴を開ける必要が生じました。

 学校にあるボール盤にバイスと位置決めのジグを取り付けて生徒の作業を試してみたのですが、ドリル刃の位置が目の前にあり、回転するドリル刃に触りかねない危険性があり、スイッチとハンドル操作も使いにくさを感じました。そこで、生徒にとって安全かつ正確な穴あけ作業ができる道具として「ドリルアタッチメント」の機能追加版を作ることにしました。大橋さんのVIC's D.I.Y.「読者の作品」に2005年に投稿したものと原理的には同じで、それをシンプルにしたものです。「ドリルアタッチメント」の作製は、私用のものを含めて今回で4台目となります。

 使用する電動ドリルは、リョービのCDD-1020とし、取り付け部分の若干の寸法変更と、下右写真のように彫刻刀で削りながら現物合わせで正確かつ確実な垂直保持をねらいました。



ここが肝心部分で最も慎重を要したところです。他にV65Aクイックバイス藤原産業製:某ホームセンター898円)と穴の位置を前後左右に調整できる定規とスライドストッパーを取り付けました。V65Aクイックバイスを選んだ理由は、鉄製の本格バイスに比べ締め付け力は弱く、くわえ口が正確な直角がとれていない等の問題はありますが、安価で締め付けの回転棒が生徒にも操作しやすく、学校教具や日曜大工の実用には十分と考えたからです。

  スライドストッパーの固定用にはダイソー製のFクランプ105円)の不
 要部分を取り除き左写真のように取り付けました。 この方法は、蝶ボルト
 を使う時のように当て木が不要で角度切りのジグ等で材をしっかり固定す
 るにも有効で、色々応用できそうです。

  V65Aクイックバイスは間口66mmなので使用材の幅はそれ以下、今回
 の作例では横のスライドストッパーは230mmまでが限度です。それ以上
 の材を扱う場合は、用途に応じて下写真のように2様にとりはずして使う
 ことになります。

  使用作業台に穴を開けておけば、作業台の高さ以内の角材の木口にも
 対応できます。また、このドリルアタッチメント単体を横にして水平保持の
 アタッチメントを追加すれば、さらに長い角材の木口にも対応できそうです
 し、木球を作る程度の旋盤もどきに転用も可能です。







このような角度のある穴あけにも対応 今回の作製で、本当に活用範囲が広い「ドリルアタッチメント」だと、改めて実感しました。



2.カラコロ三態

カラコロツリー

 養護学校を定年退職して3年目。ボランティアで出入りしている養護学校の若き女性教員から、カラコロツリーとカラコロ
角柱を作るにはどうしたらよいか相談を受けました。 奈良の某養護学校に研修に行った折に教具として見本を仕入れてきて、とくにカラコロツリーは肢体不自由の子どもにはよい刺激になって有効なので是非作りたいとのこと。

  カラコロツリーはネットでみると

  一番上の葉っぱにビー玉を置くと
        ・・・からころからころ♪  美しいグラデーションの葉っぱの上を、
  ビー玉が転がり落ちていきます。 葉っぱの大きさで音の高さが変わるの
  で、ビー玉を置く間隔やスピードで色々な和音が聞こえてきますよ。
  画像右がLサイズ、左はSサイズになります。

  ブランド:マリオブローニ     原産国:スイス
  輸入元:ボーネルンド       対象年齢:4歳から
  サイズL:25×25×72cm   備考・素材等:カエデ材

  …ということのようです。

   その転がる様子は動画でも見ることができます。
  価格は1万円前後。乏しい学校予算ではなかなか買えそうもありません。

   女性教員から借りた角材の見本(切り込み角度)と上記ネットの写真を基
  にいくつか試作してみました。写真で見る限り、一見して単純に見えます
  が、二つの複合された角度と一定の幅で切り込みを入れる必要があります。
  また、その角度設定が安定したビー玉の転がりにつながるようです。

   この切り込みは角度調整のできる昇降盤と送りガイドの角度設定で可能に思えますが、そんな設備はなく、トリマーも無理で、思い至ったのはソーガイド、それも角度フリーの「ソーガイドF」の使用でした。

 実際作ってみると、二つの角度と葉っぱの段差によって、ビー玉の転がり方が色々で、途中で外側に飛び出すこともあったりして微妙です。いくつか試作した結果、転がり傾斜7°と30〜33°、葉の段差15mmで角柱に沿った安定した転がりになりました。角材は35mm〜50mmくらいの正角がよさそうです。

 葉っぱの板は5.5mm厚のシナベニヤを使用。店頭表示は5.5mmですが、実際には5.1〜5.2mm。ものによって違うのでノギスで正確に測った方が無難です。このあたりの規格表示は正確であってほしいものです。 ジグソーで切ってヤスリで修正しました。 このような工作では、リョービのミニジグソウは本当に使い勝手がよいです。電源ON・OFFが片手でできない難点がありますが、電気に詳しい友人に作ってもらった足踏み式のスイッチコードにつなげることで解消しています。

 次のようにやってみました。









 写真のように、金切鋸刃を5枚重ねて固定すると、ちょうど厚さが5mmになる
ので、ゼットソウで切り欠いたあとのギザギザをきれいに修正するのに重宝し
ます。

 「ソーガイドF」を初めて使ってみましたが、90°、45°は勿論、付属の角度
ゲージで正確な角度設定が容易です。 鋸刃のガイド板を上下に調整できるの
も使い勝手がよく、手鋸の日曜大工にはなかなかの優れものだと感じました。

 右が試作品の一つです。米ヒバの35mm角、高さ75p、彩色はダイソウの
アクリル絵の具、ワシンの水性ウレタンニス艶消しで仕上げています。




 カラコロ角柱

  見ての通り、角材の各面から
 20mm径の穴を一定の角度で開
 け、内部でつながるようにして、
 その中をビー玉(17mm径)が転
 がり落ちる単純なものです。

  台面に穴を開けて数字を付け
 て、得点ゲームで遊びながら加算の学習にも使えるようにしてみました。
 角柱はトラス頭ボルト1本と鬼目ナットで固定し、家具保護フェルトをはさみ、
 回転させて任意の穴を狙うビリヤード的な遊び方もできます。

  実際に課題別学習で生徒に試したら、俄然意欲的になって計算学習が成
 立するようになったという報告を受けました。
 うれしい限りです。

 左の作例は58mm角の栂材、使用ドリル刃は
 F型ショートドリル20mm。(右写真参照)
 先端の形状がこの工作には適しています。



 最初は下の写真のような設定で市販の角度フリーのドリルガイドを使用しました。この電動ドリル(リョービCDD-1020)でも何とか穴あけは可能でした。ただ、直径20mmのショートビットでは非力で苦労しました。もっと力の強い電動ドリルの方が楽です。

 4方向からの連結する穴をあける場合は、最初から目的の深さにあけようとすると、すでにあいている別方向からの穴にドリル刃がとられてしまい、方向がそれていびつな穴になってしまいます。面倒でも最初は4方向ともお互いの穴に届かない程度に浅くあけてから、その穴をガイドにして目的の深さにあけるとうまくいきます。


 60mm前後の正角の場合は下図が基本。 径20mmの
穴の中心を一面ずつ15mmずらして一回り(4面)すると
60mm間隔の穴になります。 角材の太さによって、間隔
を変える必要がありますが、ビー玉(17mm径)が通る径
20mm の穴という制約があるので、45mm角より細い角
材は厳しいようです。

 造形的には、後述のミックス版に使った50mm位の角材
で、辺から30mmで10mmずらしの40mm間隔が私の好み
です。


 前述のように最初は市販の電動ドリルガイドを使用し、それはそ れなりに
使えたのですが、やはり不安定さは否めません。

 クランプで固定しても微妙に角度がずれたり、止めたつもりの掘削量ストッ
パーがずり落ちたり結構苦戦しました。

 最近取りかかった2作目では大橋式ドリルアタッチメントにバイスを追加した
もので試してみました。 なんとこのドリルでも楽にしかも確実にあけられるで
はありませんか。

 掘削面が高いため掘削量ストッパーが届かなかったのですが、木切れを
かませればOKでその信頼性は確実です。

 どうして最初からこれを使わなかったのかと後悔しております。
大橋式ドリルアタッチメントは直角用といった先入観があったようです。
実に汎用性の高い傑作アタッチメントだと改めて実感します。





カラコロツリーとカラコロ角柱のミックス版

    見ての通りのミックス版です。 ビー玉の転がりと音に変化があってなかなか楽しいです。 使用角材は、タモ49mm角×1050mmを使いました。

 
       
       
枝に見立てた転がり軌道のガイド

 転がす玉は、小さいプラ球では穴の途中からこぼれ落ちることが多く、17mm径のビー玉専用になります。
ただ、ガラス玉では音が堅く少しうるさく感じるので、木球を作ってみました。「のほほん木工房」のHPに電動ドリルを利用した「旋盤もどき」が紹介されていたのでやってみたらうまくいきました。 18mm径のラミン丸棒で17mmの木球がうまく作れます。

ここでも大橋式ドリルアタッチメント(横置き・水平保持)が活躍しました。





回転させながらの切り込みと大まかな成形
はピラニアUの鋸が具合よく使えました。
他に各種ヤスリで仕上げて、アクリル絵の具
を塗り、生乾きの状態で布で磨いて仕上げま
した。なかなか心地よい音を奏でながら転が
り落ちます。「秋:木の実の響き」などと勝手
に名づけてにんまりしております。




VICの一言

相変わらず緻密な仕事をされる伊藤様にただただ脱帽です。 養護学校に勤務されていた間のみならず退官後も元気に活躍されているようで嬉しいです。 私が提案した電動ドリルアタッチメントを4台も作られてここまで使いこなして頂くのは言いだしっぺとして光栄の限りとしか言いようがありません。

このレポートの随所に創意工夫の跡がちりばめられており、日曜大工にチャレンジされた方は大いに参考にしていただきたいと思います。