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読者の作品 050
 

2010/02/05

兵庫県にお住まいのKishy様が作られた中型の収納家具をご紹介します。 出来上がった物を拝見しますと、既製品の家具では対応が不可能に近いか何とか対応できる場合でもやたらに大きくなってしまうと思われ、正に自作家具の出番です。 作りやすいサイズであることも含め多くの方に参考になる作品だと思います。


電話台・掃除機収納の製作

発端
 新居マンションに引越したのですが、電話のモジュラジャックの位置のせいで「電話の置き場所が遠い」とクレームや、「出し
 入れしやすいところに掃除機を置きたい」とのリクエストが嫁さんからありました。
 設置場所には掃除機の高さに近いところにインタフォンの端末が出っ張っており、フルスクラッチを考えました。

作品概要
 寸法は幅1m弱、奥行30cm強、高さ1mで、両開き扉と引き出しがひとつ、左扉内に3段可変棚と引き出し棚があります。
 引き出しには宅配便用の印鑑など小物類、引き出し棚にはFAX機を収め、一番下は体重計を滑り込ませています。
 右扉内はまるまる掃除機置場で、立てたまま出し入れでできます。 引き出しが2つ並んでいるように見えますが、右側のは
 飾りで、右扉と一体になっています。  なお扉の把手は、出っ張りをなくすために枠の上部を彫り込んでいます。
 後日IKEAに行ったとき、そっくりな扉を見つけました。 人の考えることは同じかと。

 FAXを扉内に収めたのはホコリよけで、また内部にはテーブルタップをとめて、ACアダプタなどは扉内に収め、天板にあけた
 孔から配線を出して、配線のジャングルを隠しています。

製作
 構造はSPFの2x2材の柱・梁に溝を掘ってt5シナベニアを挿入した壁面、天板はパイン集成材、扉は枠組みを1x3材にした
 壁と同様の構造です。引き出しには2段式スライドレール、蝶番はスライド蝶番(全カブセ)、可変棚はダボレールを柱の裏側
 に設置して目立たないようにしています。

 マンション住まいなのでベランダで大きな音をたてるのも憚られ、充電ドライバドリルの他は全て手工具で製作しました。
 溝堀りは「機械ザグリ」という鉋です。木の窓枠にガラスをはめる溝を削る鉋だそうですが、SPF材程度ならサクサクと溝が掘
 れます。電動工具と違って、鉋屑はほとんど散らず音も出ないので、夜遅く部屋の中でやっても問題ありません。
 また切断でmini-Shopのソーガイドの威力は絶大、素人の手作業とは思えない高精度の切断ができます。 VIC様ご指摘
 のとおりソーガイドの事前調整をきちんとやれば、切りっぱなしでも絶対誤差0.5mm以内に充分収まります。

 組立てについては、柱や枠同士は6φダボで位置を決め(ダボ用マーキングポンチが大活躍。 でも6個同時に欲しい場面が
 多く、二組めを買い足しました)
、木工用ボンド(接着面積の狭い扉枠はエポキシ)と見えない側からスレンダースレッドで締め
 て、強度を確保しています。  なおSPF材には反りや捻じれなど狂いがあり、それによる誤差を背面側に集めてごまかして
 います(2組のスライドレール部の間隔・ねじれ精度を優先した結果、全幅で前後で数ミリの差が出ています)。 また、天板
 幅を本体幅より20mmほど広くして、軸組のゆがみが見えないようにしています。

 仕上げはVIC様推奨の和信ペイント水性ウレタンニスのつや消し仕上げです。 見えるところは数度の#240ペーパー研磨×
 下塗り+#400研磨後仕上げ塗りで滑らかに仕上げ、のつもりでしたが、よく見ると何ヶ所かにホコリが残ってしまっています。
 風通しのよいベランダで塗装したのですが、囲いをすればよかったのかもしれません。 また見えないところは反りを出さない
 ための研磨なし1度塗りで済ませました。その面はザラザラですが、商品ではないのでOKです。

 完成直前で困ったのが、スライド蝶番の扉とスライドレールの引き出し棚の干渉でした。 塗装も済んで、一気に組立ててみ
 ると、扉を開いても引き出し棚がつかえて引き出せない!ことになりました。
 扉内面と側面内面とがツライチになる、と勝手に思い込んだ設計ミスが原因で、アトムリビングテックの資料を見ると、「全カブ
 セは内側に9mm張り出す」、とちゃんと書いてありました。 幸いにもスライド棚は1枚板だったので、幅を詰めるだけで済み
 ました。これが箱状だったらと思うとひやっしました。

 設置では、柱や巾木、既設カウンタとの干渉に対し、本体を現物合わせで切り欠いて、きっちり収めることができました。
 購入品に刃物を当てるのは勇気が要りますが、こうした加工ができるのも、自作品の長所でしょう。

費用など
 さて費用と工期については、材料費が2万円弱のはずです。 ホームセンターのSPF材から節のないところを選別したので
 必要量の倍ぐらい、ニスが意外に多く必要だったのと天板のパイン集成材が大きなところです。 また工期については工作開
 始が5月の連休、完成が年末でしたが、サラリーマンの悲しさ、土日祝の一部しか作業ができず、途中忙しくて全く作業でき
 ない期間もあったので、実働10日程度でしょうか。
 途中長い間、板切れや棒の状態で部屋の片隅に転がしていて、嫁さんは「何これ?」と思っていたようですが、完成品を設置
 すると「すごく便利になった」とご満悦です。こういう家内円満を図れるのもDIYの利点ではないでしょうか。




写真の説明

左上:
左から、カウンタの干渉を避けるための柱左上の切り欠き、前面の引き出し2つ+両開き扉、左下に体重計、右下に掃除機の車輪が見える。

上:
正面。引き出し2つ+両開き扉に見える。天板の高さは壁面のインタフォン端末とスイッチの高さに合わせてある。

左:
引き出し・扉を開いたところ。左側は引き出しではなく、扉の一部。右側扉内は掃除機を立てたまま出し入れできる。

左側は小物用引き出し、FAX用引き出し棚、3段棚、体重計収納。この電話台の前に立てば、インタフォン端末、電話&FAX、防犯カメラ映像(これもDIY)に一ヶ所でアクセスできる。


VICの一言

 肩肘張ってスゲーモノ作ったろー!! という作品ではありません。 しかし私が求め続けてきた、「家具を自作することにより市
 販の家具では得られないより効率的に生活空間を利用する!」
というテーマに正にどんぴしゃ当てはまる痛快な作品です。
 このような作品から入って次第に大型収納家具にまで進むような取り組み方を多くの方にしていただきたいと願っています。

 作業の説明の中で気が付いた点幾つかについて触れておきます。
 水性ウレタンニスの塗装で塗装面にほこりが付いてしまったようですが、水性であれば風通しは余り気にせず例えば部屋を締め
 切ったような状態の所でもよいように思えます。(臭気に超敏感な方でない限り!)

 SPF材の節のないところを選んで使ったとありますが、そうであれば価格は若干高くても最初から節のない材料を使うほうが良い
 と思います。 と言うのはSPF材は節以外にも乾燥不十分で時間経過と共に反りや捻じれが生じる可能性があるからで、折角の
 作品が台無しになるリスクがあるからです。

 一番下の部分の隙間から体重計や掃除機の車輪が見えますが、これはもう一ひねりして見えないように出来ると尚良い!という
 か完成度が上がるように思います。